JPH0130224B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は磁気記録媒体の製造方法に関するもの
で、特に強磁性体蒸着薄膜型磁気記録媒体の膜面
強度、滑り性の改良に関するものである。

従来より磁気記録媒体としてはγ―Fe₂O₃、Co
をドープしたγ―Fe₂O₃、Fe₃O₄、CrO₂あるいは
強磁性体合金等の微小粉末磁性材料を塩化ビニル
―酢酸ビニル共重合体、スチレン―ブタジエン共
重合体、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の有
機バインダ中に分散させ、非磁性体基板上に塗
布、乾燥させる塗布型のものが広く使用されてい
る。近年、高密度記録への要求の高まりと共にス
パツタリング、真空蒸着、イオンプレーテイング
等の方法により形成される強磁性体金属薄膜はバ
インダを使用しないいわゆる非バインダ型の磁気
記録媒体として注目を浴びており実用化への努力
が種々行なわれている。しかしながら、これらは
単に非磁性体基板上に強磁性体薄膜を形成したの
みであり、従来の塗布型のものに比較して走行中
にヘツドと接触により磁性体層が剥離したり傷つ
いたりする欠点を有している。

上記の欠点を改良するために、特開昭52―
153707に非バインダ型磁気記録媒体表面に高分子
材料を塗布することにより被覆する方法が開示さ
れている。また特開昭53―88704にはHLB値が５
〜30の界面活性剤を湿布により設ける方法が述べ
られている。これらの方法は湿式法であるため溶
媒を使用し、公害発生の恐れがあり、また防爆等
のため附帯設備を必要とする。さらに強磁性体薄
膜を蒸着した後真空装置から取り出したり高分子
材料や界面活性剤を塗布するために取り扱う際
に、強磁性体薄膜が空気に触れ、表面が酸化等に
より変質したり、摩擦によりピンホールが増加し
たりして、ドロツプアウトの原因となる等の問題
がある。

本発明の目的は上記の欠点を改良した新規な磁
気記録媒体の製造方法を提供することである。

本発明は非磁性基板上に強磁性体薄膜を蒸着に
より設けた後、前記強磁性体薄膜を大気に曝する
ことなく、その表面に室温における蒸気圧が５×
10^-5トール以下の固体状の有機物滑剤を蒸着する
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供
するものである。

本発明において蒸着とは、通常の抵抗加熱式真
空蒸着はもちろんであるが、電子ビーム加熱式真
空蒸着、スパツタリング法、イオンプレーテイン
グ法等を含むものである。

また本発明において滑剤とは、JISK6900に規
定されている如くプラスチツク成形材料を加熱成
形する際、その流動性をよくする作用又は成形品
の型離れをよくする作用を持つ化合物のことであ
る。上記滑剤のうち蒸着可能な有機物滑剤とは、
有機物、有機金属化合物滑剤で室温における蒸気
圧が５×10^-5トール以下の固体状のものである。
蒸着前の化合物の組成と蒸着膜被膜の組成とが異
つていても差し支えはない。上記の蒸着可能な有
機物滑剤のうち好ましいものは、パラフイン系炭
化水素、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸、脂肪酸アミ
ド、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、金属石け
ん等である。以下にこれらのうち代表的なものを
例示する。パラフイン系炭化水素としては、天然
パラフイン、マイクロワツクス等がある。高級脂
肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パル
ミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン
酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等で
ある。オキシ脂肪酸としては、オキシステアリン
酸、ラノパルミチン酸等がある。脂肪酸アミドと
しては、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミ
ド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、
ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、リノール酸
アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロ
アミド、エチレンビスステアロアミド、硬化牛脂
アミド等がある。脂肪酸エステルとしては、ステ
アリン酸メチル、パルミチン酸セチル、ステアリ
ン酸モノグリセリド等がある。脂肪アルコールと
しては、セチルアルコール、ステアリルアルコー
ル等がある。金属石けんとしては、炭素数12〜30
の脂肪酸と種々の金属とから得られる化合物であ
り、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、
ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール
酸、リノレン酸、アラキドン酸等の亜鉛、銅、マ
グネシウム、ニツケル、鉄、アルミニウム、鉛、
クロム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、ス
トロンチウム等の塩である。

上記の滑剤は一種だけ蒸着してもよいし、二種
以上蒸着して積層したり、あるいは同時蒸着して
混合層にしてもよい。

滑剤の蒸着量は膜面強度、滑り性が良好であれ
ば特に限定されるものではないが、少量であれば
少量であるほど好ましい。通常は0.5ｇ／m²以下
であるが、0.2ｇ／m²以下が特に好ましい。また
蒸着された滑剤層はいわゆる層状構造ではなくて
島状構造であつても効果は同じであり、必ずしも
均一な層状である必要はない。

本発明に用いられる強磁性体薄膜としては、
Fe、Co、Niその他の強磁性金属、あるいはFe―
Co、Fe―Ni、Co―Ni、Fe―Rh、Fe―Cu、Fe
―Au、Co―Cu、Co―Au、Co―Ｙ、Co―La、
Co―Pr、Co―Gd、Co−Ga、Co―Sn、Co―Pt、
Ni―Cu、Fe―Si、Fe―Co―Ni、Mn―Bi、Mn
―Sb、Mn―Alのような磁性合金、γ―Fe₂O₃、
Fe₃O₄、CrO₂などの酸化物磁性体、Fe₃Nのよう
な窒化物磁性体、さらにバリウムフエライト、ス
トロンチウムフエライトのようなフエライト系磁
性体が用いられる。

上記の強磁性体薄膜の製造方法としては、真空
蒸着法、イオンプレーテイング法、スパツタリン
グ法、反応性蒸着法などがある。

また上記強磁性体薄膜が非磁性体との混合層で
あつたり、強磁性体薄膜上に非磁性体層を設けた
ような多層膜であつたり、また非磁性体基板と強
磁性体との間に他の非磁性体を設けたような構造
であつたりしても本発明の強磁性体薄膜として用
いることができるのは言うまでもない。

さらに本発明に使用される非磁性体基板として
はポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポ
リ塩化ビニル、三酢酸セルロース、ポリカーボネ
ート、ポリエチレンナフタレートあるいはガラ
ス、セラミツクスのような非磁性体基板、アルミ
ニウム、ステンレススチール、黄銅のような金属
基板のいずれでもよい。さらに上記の基板上に蒸
着、メツキ等の方法により金属膜を形成せしめた
もの、接着剤等を塗布したものも本発明の強磁性
体薄膜の基板としてよい。基板の形状についても
テープ、シート、カード、デイスク、ドラム等い
ずれの形状でも使用され得る。

本発明によれば、高密度記録に適した磁気記録
媒体を製造することができ磁性体製造、塗布液製
造、塗布といつた複雑な製造工程を必要とせず溶
剤を一切使用しないため溶剤回収、公害対策等の
問題がなく、かつ防爆設備を必要としない。また
強磁性体薄膜を蒸着した蒸着装置中で連続工程で
有機物滑剤を蒸着することにより、真空を破る必
要はなく、空気による強磁性体薄膜の変質や、擦
り傷によるピンホールの発生、磁性体膜の剥離、
ゴミその他の異物の付着を防止することが可能で
あり、ドロツプアウトを格段に減少させることが
でき記録・再生特性を改良することができるため
工業的価値は大なるものである。

以下、実施例により本発明を説明するが本発明
がこれらに限定されるものでないことは言うまで
もない。

実施例 １ 25μ厚のポリエチレンテレフタレートフイルム
基板を蒸発源に対して60゜の傾きになるように真
空蒸着装置内に配置した。１×10^-5トールの真空
度で99.99％のコバルト金属を電子ビーム加熱法
により２Å／secの速度で200Å蒸着した。次に５
×10^-5トールの真空度でベヘン酸を抵抗加熱法に
より５Å／secの速度で300Å蒸着した。尚、膜厚
は米国スローン社製DTM200水晶振動子型膜厚
モニターに付着した量で換算した値である。この
試料の膜面強度を新東科学(株)製“HEIDON―18”
膜面強度計によりＲ球針（Ｒ＝0.1mm）を用いて
測定し、表面に傷がつく最小荷重をもつて膜面強
度の指標とした。ベヘン酸を蒸着した試料は130
ｇ、ベヘン酸を蒸着しない試料（比較試料）では
30ｇで傷つきベヘン酸蒸着により４倍以上の膜面
強度が得られた。磁気特性はベヘン酸の有無で変
化はなく出力損失も認められなかつた。

実施例 ２ 実施例１と同様にして鉄を200Å蒸着した。次
にステアリン酸アミドを５Å／secの速度で200Å
蒸着した。実施例１と同様にして膜面強度を測定
したところ、100ｇで傷がつきステアリン酸アミ
ドがない場合の３倍以上の膜面強度であつた。磁
気特性はステアリン酸アミドの有無で変化はなく
出力損失も認められなかつた。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 非磁性基板上に強磁性体薄膜を蒸着により設
   けた後、前記強磁性体薄膜を大気に曝することな
   く、その表面に室温における蒸気圧が５×10^-5ト
   ール以下の固体状の有機物滑剤を蒸着することを
   特徴とする磁気記録媒体の製造方法。