JP7506681B2 - 非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物、非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品 - Google Patents

Description

本発明は、非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物、非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品に関する。

非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物を備える電気加熱式たばこ製品において、その使用時の満足度を高めることは重要である。特に、たばこ充填物に含まれる香喫味成分をエアロゾル生成基材とともに揮発させて使用者の口腔内にデリバリーする形態の電気加熱式たばこ製品において、従来のシガレットに近い香喫味を呈することが求められている。このような非燃焼型加熱喫煙物品において、充填物に酸を添加する技術が報告されている（例えば、特許文献１参照。）。

国際公開第２０１７／２０３６８６号

特許文献１には、特定の範囲内の第一酸乖離定数及び沸点を有する酸をたばこ充填物に添加することで、たばこ充填物に含まれる香喫味成分との塩の形成を抑制すること、さらに、ケミカル臭を抑制することが記載されている。特許文献１に記載の発明は酸塩基反応を利用するものである。
電気加熱式たばこ製品の使用時に、たばこ充填物に含まれる香喫味成分がエアロゾル生成基材とともに揮発すると、冷却され凝縮生成したエアロゾル粒子内に香喫味成分が取り込まれる。そのため、使用者の口腔内に香喫味成分が安定してデリバリーされるためには、生成したエアロゾル粒子が使用者の口腔内にデリバリーされるまで揮発せずに安定して存在することが重要であることが分かってきた。エアロゾル粒子の表面の成分組成は、エアロゾル粒子の物性に大きく寄与し、エアロゾル粒子の表面を難揮発性の成分にて被覆することがエアロゾル粒子の安定化には有効であると考えられる。生成するエアロゾル粒子が口腔内にデリバリーされるまでの間に揮発せずに安定して存在するために、例えば水やグリセリンといった親水性の物質から構成されるエアロゾル粒子の表面に局在的に存在し得る、特定の脂肪酸をたばこ充填物に添加するとよいことが分かってきた。

このようなことから、本発明では、使用者に対して、たばこ充填物に含まれる香喫味成分を効率良くデリバリーできる非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物等を提供することを課題とする。

本発明者が鋭意検討した結果、たばこ材料とエアロゾル生成基材とを含む、非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物において、前記たばこ充填物に飽和脂肪酸を含有するエアロゾル安定剤が添加されており、該エアロゾル安定剤が含有する脂質における、炭素数１６～１８の飽和脂肪酸の割合が５０重量％以上であることで、上記課題を解決できることを見出した。

すなわち、本発明は、以下のとおりである。
［１］ たばこ材料とエアロゾル生成基材とを含む、非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物であって、前記たばこ充填物は、脂質を含有するエアロゾル安定剤が添加されており、該エアロゾル安定剤が含有する脂質における、炭素数１６～１８の飽和脂肪酸の割合が５０重量％以上である、非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
［２］ 前記たばこ充填物への前記エアロゾル安定剤の添加量が、たばこ充填物全量の乾燥重量に対して０．１～５．０重量％である、［１］に記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
［３］ 前記炭素数１６～１８の飽和脂肪酸のグリセリンへの溶解度が０．１３ｍｇ/ｇ以下である、［１］又は［２］に記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
［４］ 前記炭素数１６～１８の飽和脂肪酸がパルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの混合物から選ばれる１以上である、［１］～［３］のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
［５］ 前記たばこ充填物は、たばこ刻みから構成されるたばこ材料の成形体である、［１］～［４］のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
［６］ 前記たばこ充填物は、たばこシートから構成されるたばこ材料の成形体である、［１］～［４］のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
［７］ 前記たばこ充填物が、顆粒状のたばこ材料から構成される、［１］～［４］のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
［８］ 前記エアロゾル安定剤は、前記たばこ材料の成形体の表面に添加されている、［５］又は［６］に記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
［９］ 前記エアロゾル安定剤は、前記たばこ材料に均一に添加されている、［５］～［７］のいずれか一項に記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
［１０］ ［１］～［９］のいずれかに記載のたばこ充填物からなるたばこロッド部と、該たばこロッド部とは反対側の端部を構成するマウスピース部とを有する非燃焼加熱式たばこ。
［１１］ 前記マウスピース部は、冷却部を備える、［１０］に記載の非燃焼加熱式たばこ。
［１２］ ［７］に記載のたばこ充填物と、当該たばこ充填物が収容された容器と、を備える、非燃焼加熱式たばこ。
［１３］ 前記たばこロッド部の内部にたばこ充填物を加熱するサセプタを有する、［１０］又は［１１］に記載の非燃焼加熱式たばこ。
［１４］ ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱式デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、［１０］～［１２］のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成され、
非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部が２５０～４００℃に加熱される、電気加熱式たばこ製品。
［１５］ 前記ヒーター部材が円筒形である、［１４］に記載の電気加熱式たばこ製品。
［１６］ インダクタと、該インダクタに電力を供給する電池ユニットと、電力の供給を制御する制御ユニットとを備える電気加熱式デバイスと、該インダクタに近接するように挿入される、［１３］に記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成され、
非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部が２５０～４００℃に加熱される、電気加熱式たばこ製品。
［１７］ 脂質を含有し、該脂質における炭素数１６～１８の飽和脂肪酸の割合が５０重量％以上であるエアロゾル安定剤を、成形前又は成形後のたばこ材料に添加する工程を含む、たばこ充填物の製造方法。
［１８］ 前記成形前のたばこ材料にエアロゾル安定剤を添加する工程が、前記たばこ材料と前記エアロゾル安定剤を混合する工程である、［１７］に記載のたばこ充填物の製造方法。
［１９］ 前記成形後のたばこ材料にエアロゾル安定剤を添加する工程が、前記成形後のたばこ材料に前記エアロゾル安定剤を噴霧又は塗布する工程である、［１７］に記載のたばこ充填物の製造方法。

本発明によれば、使用者に対して、たばこ充填物に含まれる香喫味成分を効率良くデリバリーできる、非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物等を提供できる。

非燃焼加熱式たばこの一態様を示す概略図である。 電気加熱式たばこ製品の一態様である、たばこロッドの外周面を加熱する態様を示す概略図である。 電気加熱式たばこ製品の一態様である、たばこロッドの内部を加熱する態様を示す概略図である。 電気加熱式たばこ製品の一態様である、たばこロッドをＩＨにより加熱する態様を示す概略図である。 各脂質のグリセリンへの溶解度と、たばこ感の関係を示す図である。 各脂質におけるＣ１６～Ｃ１８飽和脂肪酸の重量割合と、たばこ感の関係を示す図である。 脂質（パルミチン酸）の添加量とたばこ感の関係を示す図である。

以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
なお、本明細書において「非燃焼加熱式たばこ」とは、従来のシガレットとは異なり、燃焼を伴わない加熱により、たばこ材料に含まれる香喫味成分を使用者の口腔内にデリバリーできるたばこのことをいう。
本明細書において、「たばこ原料」は、例えば、たばこ葉のラミナ、中骨、茎等、そのままではたばこ充填物として用いないものである。「たばこ材料」とは、たばこ充填物を構成する材料であり、例えば後述する「たばこシート」や「たばこ顆粒」、「たばこ刻み」、「たばこ細粉」のような、「たばこ原料」を用いて製造される物品である。

＜非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物＞
本発明の実施形態にかかる非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物は、たばこ材料とエアロゾル生成基材とを含み、該たばこ充填物は、脂質を含有するエアロゾル安定剤が添加されており、該エアロゾル安定剤が含有する脂質における、炭素数１６～１８の飽和脂肪酸の割合が５０重量％以上である。その割合で炭素数１６～１８の飽和脂肪酸を含むことで、本発明の課題を解決することができる。
また、脂質における炭素数１６～１８の飽和脂肪酸の割合は、８０重量％以上であることがより好ましく、９０重量％以上であることがさらに好ましく、９９重量％以上であることが特に好ましい。炭素数１６～１８の飽和脂肪酸以外の脂質については特に制限はない。ただし、炭素数１６～１８の飽和脂肪酸以外の脂質についてはできるだけ含まない方が好ましい。
エアロゾルを主に形成する水やグリセリンに対し炭素数１６～１８の飽和脂肪酸の溶解度は極めて小さく、エアロゾル粒子の被覆に影響を与えると考えられる。しかし所定量以上の溶解度の高い脂質が混ざることで、炭素数１６～１８の飽和脂肪酸の元来持つ被覆効果が十分に発揮できなくなる可能性がある。そのため、個々の脂質の溶解度と、複数脂質の混合物である場合、溶解度の低い脂質と高い脂質の割合は効果を予測するための指標として重要である。
本明細書における「エアロゾル安定剤」とは、非燃焼加熱式たばこから生じたエアロゾル粒子の空気中での安定性を維持するためのものであり、上記のように特定の脂質を含有するものである。
なお、上記飽和脂肪酸を含有するエアロゾル安定剤は、脂質に加えて他の成分を含んでもよいが、エアロゾル安定剤における脂質の含有量は、９０重量％以上であることが好ましく、９５重量％以上であることがより好ましく、９９重量%以上であることが特に好ましい。

脂質のグリセリンへの溶解度は０．１３ｍｇ/ｇ以下、好ましくは０．１２ｍｇ／ｇ以下、より好ましくは０．１１ｍｇ／ｇであり、一方、０．０１ｍｇ／ｇ以上を挙げることができる。ここで、「グリセリンへの溶解度」は以下のようにして求める。

＜グリセリンへの溶解度の測定法＞
グリセリンの溶解度は、２ｇのグリセリンに溶解した脂肪酸を定量する方法が最も良い。具体的には、グリセリンに過剰量の脂肪酸を添加した後、常温で２４時間以上静置又は遠心分離等により２層分離を行い、１００ｍｇのグリセリンを分取し、２ｍLのメタノールに転溶してグリセリンに溶解した脂肪酸量をGas Chromatograph - Flame Ionized Detector (GC-FID)やGas Chromatograph - Mass Spectrometer (GC-MS) にて定量する。

炭素数１６～１８の飽和脂肪酸としては、パルミチン酸、マルガリン酸及びステアリン酸を挙げることができ、これらの中でもパルミチン酸、ステアリン酸及びこれらの混合物を好ましく挙げることができる。
炭素数１６～１８の飽和脂肪酸としては、混合物であってもよく、それぞれの飽和脂肪酸を単独で含むものを用いてもよい。例えば、パルミチン酸及びステアリン酸をそれぞれ単独で用いることも好ましい。
脂質として炭素数１６～１８の飽和脂肪酸のみを含み、さらに、エアロゾル安定剤として炭素数１６～１８の飽和脂肪酸のみを含むものを用いることができる。

前記たばこ充填物の前記エアロゾル安定剤の添加量は、たばこ充填物全量の乾燥重量に対して０．１重量％以上、５．０重量％以下を挙げることができ、０．５重量％以上、２．０重量％以下であることがより好ましく、０．５重量％以上、１．５重量％以下であることがより好ましく、０．７５重量％以上、１．２５重量％以下であることが特に好ましい。このような添加量であることで、使用時に発生するエアロゾルを安定して存在させることができ、シガレットに近い安定性を有したエアロゾル物性となることで香喫味がシガレットに類似したものとなる。
たばこ充填物に対する炭素数１６～１８の飽和脂肪酸の添加量としては、たばこ充填物全量の乾燥重量に対して０．１重量％以上、２．０重量％以下であることが好ましく、０．５重量％以上、１．５重量％以下であることがより好ましく、０．７５重量％以上、１．２５重量％以下であることが特に好ましい。エアロゾル安定剤の添加量と炭素数１６～１８の飽和脂肪酸の添加量が同一の範囲であってもよいのは、エアロゾル安定剤が脂質から構成され、その脂質の全てが炭素数１６～１８の飽和脂肪酸であってもよいことを示す。

＜たばこ充填物の具体的態様＞
本発明の実施形態にかかる非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物の具体的態様として、たばこ刻みを含むたばこ材料から構成される成形体（以下、第一のたばこ充填物ともいう）と、後述するたばこシートから構成されるたばこ材料の成形体（以下、第二のたばこ充填物ともいう）と、たばこ原料を用いて調製した顆粒から構成されるもの（以下、第三のたばこ充填物ともいう）を挙げることができる。
これらの成形体として、いずれもロッド状のものを挙げることができる。
なお、本発明において非燃焼加熱型式たばこの長手方向は、図１におけるｈの方向が長手方向である。また、非燃焼加熱式たばこがロッド状である場合、係る非燃焼加熱式たばこにおける長手方向をたばこロッドの長手方向と同一とみなしてもよい。本発明の非燃焼加熱式たばこにおけるたばこ充填物は、以下のように定義されるアスペクト比が１以上である形状を満たす柱状形状を有していることが好ましい。
アスペクト比＝ｈ／ｗ
ｗは柱状体の底面の幅、ｈは高さであり、ｈ≧ｗであることが好ましい。しかし、本発明においては、上述した通り、長手方向はｈで示された方向であると規定している。したがって、ｗ≧ｈである場合においてもｈで示された方向を便宜上長手方向と呼ぶ。底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅ｗは当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形又は角丸多角である場合は外接円の直径又は外接楕円の長径である。例えば、図１に示す態様においては、底面が円であるのでその直径を認定できる。当該直径が幅ｗ、これに直交する長さが高さｈとなる。たばこロッドを構成するたばこ充填物の高さｈは１２ｍｍ以上、７０ｍｍ以下程度、幅ｗは４ｍｍ以上、９ｍｍ以下程度であることが好ましい。

まず、第一の充填物から説明する。第一の充填物を構成するたばこ材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のたばこ原料を裁刻、粉砕等の処理を施したものを用いることができる。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が２０μｍ以上、２００μｍ以下程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工したもの（以下、単に均一化シートともいう）を刻んだものであってもよい。たばこ刻の幅は０．５ｍｍ以上、２．０ｍｍ以下程度がたばこロッドとして成形する上で好ましい。成形したたばこロッド中のたばこ充填物の含有量は、円周２２ｍｍ、長さ２０ｍｍのたばこロッドの場合、２００ｍｇ／ロッド以上、８００ｍｇ／ロッド以下を挙げることができ、２５０ｍｇ／ロッド以上、６００ｍｇ／ロッド以下が好ましい。前記たばこ刻み及び均一化シートの作製に用いるたばこ葉について、使用するたばこの種類は、様々なものを用いることができる。例えば、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、その他のニコチアナ－タバカム系品種、ニコチアナ－ルスチカ系品種、及びこれらの混合物を挙げることができる。混合物については、目的とする味となるように、前記の各品種を適宜ブレンドして用いることができる。前記たばこの品種の詳細は、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、２００９．３．３１」に開示されている。前記均一化シートの製造方法、すなわち、たばこ葉を粉砕して均一化シートに加工する方法は従来の方法が複数存在している。１つ目は抄紙プロセスを用いて抄造シートを作製する方法である。２つ目は水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化した後に金属製板もしくは金属製板ベルトの上に均一化物を薄くキャスティングし、乾燥させてキャストシート（スラリーシート）を作製する方法である。３つ目は水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化したものをシート状に押し出し成型して圧延シートを作製する方法である。前記均一化シートの種類については、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、２００９．３．３１」に詳細が開示されている。

たばこ充填物の水分含有量は、たばこ充填物の全量に対して１０重量％以上、１５重量％以下を挙げることができ、１１重量％以上、１３重量％以下であることが好ましい。このような水分含有量であると、巻染みの発生を抑制し、たばこロッドの製造時の巻上適性を良好にする。
第一のたばこ充填物に含まれるたばこ刻みの大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅０．５ｍｍ以上、２．０ｍｍ以下に刻んだものを用いてもよい。
また、均一化シートの粉砕物を用いる場合、乾燥したたばこ葉を平均粒径が２０μｍ以上、２００μｍ以下程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅０．５ｍｍ以上、２．０ｍｍ以下に刻んだものを用いてもよい。

第一のたばこ充填物は、エアロゾルを生成するエアロゾル生成基材を含む。当該エアロゾル生成基材の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質及び／又はそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル生成基材としては、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、１，３－ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
第一のたばこ充填物中のエアロゾル生成基材の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを生成させるとともに、良好な喫味の付与の観点から、たばこ充填物の全量に対して通常５重量％以上であり、好ましくは１０重量％以上であり、また、通常５０重量％以下であり、好ましくは１５重量％以上、２５重量％以下である。

第一のたばこ充填物は、香料を含んでいてもよい。当該香料の種類は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、２－アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス－アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、２，３－ブタンジオン、２－ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β－カロテン、ニンジンジュース、Ｌ－カルボン、β－カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミル油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、ＤＬ－シトロネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ－デカラクトン、γ－デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、３，４－ジメチル－１，２－シクロペンタンジオン、４，５－ジメチル－３－ヒドロキシ－２，５－ジヒドロフラン－２－オン、３，７－ジメチル－６－オクテン酸、２，３－ジメチルピラジン、２，５－ジメチルピラジン、２，６－ジメチルピラジン、２－メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、２－エチル－３，（５又は６）－ジメチルピラジン、５－エチル－３－ヒドロキシ－４－メチル－２（５Ｈ）－フラノン、２－エチル－３－メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ－ヘプタラクトン、γ－ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス－３－ヘキセン－１－オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、４－ヒドロキシ－３－ペンテン酸ラクトン、４－ヒドロキシ－４－（３－ヒドロキシ－１－ブテニル）－３，５，５－トリメチル－２－シクロヘキセン－１－オン、４－（パラ－ヒドロキシフェニル）－２－ブタノン、４－ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β－イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、マルトール、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸Ｌ－メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル－２－ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、４’－メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、３－メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ－ノナラクトン、ナツメグ油、δ－オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω－ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、３－プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α－テルピネオール、酢酸テルピニル、５，６，７，８－テトラヒドロキノキサリン、１，５，５，９－テトラメチル－１３－オキサシクロ（８．３．０．０（４．９））トリデカン、２，３，５，６－テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、２－トリデカノン、クエン酸トリエチル、４－（２，６，６－トリメチル－１－シクロヘキセニル）２－ブテン－４－オン、２，６，６－トリメチル－２－シクロヘキセン－１，４－ジオン、４－（２，６，６－トリメチル－１，３－シクロヘキサジエニル）２－ブテン－４－オン、２，３，５－トリメチルピラジン、γ－ウンデカラクトン、γ－バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート、Ｎ－エチル－ｐ－メンタン－３－カルボアミド（ＷＳ－３）、エチル－２－（ｐ－メンタン－３－カルボキサミド）アセテート（ＷＳ－５）が挙げられ、特に好ましくはメンソールである。また、これらの香料は１種を単独で、又は２種以上を併用してもよい。

第一のたばこ充填物中の香料の含有量は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、通常１００００ｐｐｍ以上であり、好ましくは２００００ｐｐｍ以上であり、より好ましくは２５０００ｐｐｍ以上であり、また、通常５００００ｐｐｍ以下であり、好ましくは４００００ｐｐｍ以下であり、より好ましくは３３０００ｐｐｍ以下である。

第一のたばこ充填物における充填密度は、特に限定されないが、非燃焼加熱式たばこの性能を担保し、良好な喫味の付与の観点から、通常２５０ｍｇ／ｃｍ^３以上であり、好ましくは３２０ｍｇ／ｃｍ^３以上であり、また、通常８００ｍｇ／ｃｍ^３以下であり、好ましくは６００ｍｇ／ｃｍ^３以下である。
上記の第一のたばこ充填物は、それが内側になるように巻紙によって巻装されてたばこロッドを形成する。なお、たばこ充填物については、それを構成するたばこ材料をランダムに配置してもよく、たばこロッドの長手方向に沿うように配置したストランド形式であってもよい。

第二のたばこ充填物は、一枚以上のたばこシートから構成され、二枚以上の場合には同心状に配置される。本発明において、同心状に配置されているとは、すべてのたばこシートの中心が略同じ位置にあるように配置されていることをいう。本発明においてシートとは、略平行な１対の主面、及び側面を有する形状をいう。シートは抄紙によって製造されることが好ましい。第二の充填物として、非燃焼加熱式たばこの長手方向と直交する方向に、１枚のたばこシートを巻き回して成形体を構成するものと、複数のたばこシートを同心状に巻き回して成形体を構成するものを例示できる。さらに、１枚又はそれ以上のたばこシートを非燃焼加熱式たばこの長手方向と平行に複数回折り返されて充填物を形成する、いわゆるギャザーシートであってもよい。
シート基材としては、例えば、たばこ粉末等のたばこ材料等が挙げられる。本発明において、シート基材としてはたばこ材料が好ましい。たばこ材料の基材シートに、必要に応じて香味を発生じうる成分を担持したたばこシートであることが好ましい。たばこシートは、加熱に伴ってエアロゾルを生成する。エアロゾル生成基材としてグリセリン、プロピレングリコール、１，３－ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を添加する。かかるエアロゾル生成基材の添加量は、たばこシートの乾燥重量に対して５重量％以上、５０重量％以下が好ましく、１５重量％以上、２５重量％以下がより好ましい。

成形体として構成される前の素材としてのたばこシートについて説明する。
たばこシートは抄造、スラリー、圧延、等の公知の方法で適宜製造できる。なお、第一のたばこ充填物で説明した均一化シートを用いることもできる。
抄造の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。１）乾燥たばこ葉を粗砕し、水で抽出して水抽出物と残渣に分離する。２）水抽出物を減圧乾燥して濃縮する。３）残渣にパルプを加え、リファイナで繊維化した後、抄紙する。４）抄紙したシートに水抽出物の濃縮液を添加して乾燥し、たばこシートとする。この場合、ニトロソアミン等の一部の成分を除去する工程を加えてもよい（特表２００４－５１０４２２号公報参照）。
スラリー法の場合は、以下の工程を含む方法で製造できる。１）水、パルプ及びバインダーと、砕いたたばこ葉を混合する。２）当該混合物を薄く延ばして（キャストして）乾燥する。この場合、水、パルプ及びバインダーと、砕いたたばこ葉を混合したスラリーに対して紫外線照射もしくはＸ線照射することでニトロソアミン等の一部の成分を除去除去する工程を加えてもよい。
この他、国際公開第２０１４／１０４０７８号に記載されているように、以下の工程を含む方法によって製造された不織布状のたばこシートを用いることもできる。１）粉粒状のたばこ葉と結合剤を混合する。２）当該混合物を不織布によって挟む。３）当該積層物を熱溶着によって一定形状に成形し、不織布状のたばこシートを得る。
前記の各方法で用いる原料のたばこ葉の種類は、第一の充填物で説明したものと同じものを用いることができる。
たばこシートの組成は特に限定されないが、例えば、たばこ原料（たばこ葉）の含有量はたばこシート全重量に対して５０重量％以上、９５重量％以下であることが好ましい。また、たばこシートはバインダーを含んでもよく、係るバインダーとしては、例えば、グアーガム、キサンタンガム、ＣＭＣ（カルボキシメチルセルロース）、ＣＭＣ－Ｎａ（カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩）等が挙げられる。バインダー量としては、たばこシート全重量に対して１重量％以上、２０重量％以下であることが好ましい。たばこシートはさらに他の添加物を含んでもよい。添加物としては、例えばパルプなどのフィラーを挙げることができる。本発明においては複数のたばこシートを用いるが、係るたばこシートはすべて同じ組成あるいは物性であってもよいし、各たばこシートの中の一部又は全部が異なる組成あるいは物性であってもよい。

第二のたばこ充填物は、１枚のたばこシートから構成される場合は、そのたばこシートを巻管に通して重畳的に巻き上げ成形することで製造できる。第二のたばこ充填物が複数のたばこシートから構成される場合は、幅の異なる複数のたばこシートを準備して、底部から頂部に向かって幅が小さくなるように積層した積層体を調製し、これを巻管に通して巻き上げ成形することで製造できる。この製造方法によれば、１枚又は複数のたばこシートが、長手方向に延在するとともに、該長手方向軸を中心として同心状に配置されるようになる。
また、該長手方向軸と、最内層のたばこシートとの間に、前記開口部として長手方向に延在する貫通口が形成される。

この製造方法において、巻上げ成形後に、隣接するたばこシート間に非接触部が形成されるように調製されることが好ましい。
１枚のたばこシートが重畳的に巻き上げられて成形体を形成する場合と、複数のたばこシートから成形体が構成される場合のそれぞれにおいて、たばこシート間に、当該たばこシートが接触しない非接触部（隙間）が存在すると、香味流路を確保して香味成分のデリバリー効率を高めることができる。他方で、たばこシートの接触部分を介してヒーターからの熱を外側のたばこシートに伝達できるので高い伝熱効率を確保することができる。
たばこシート間に、当該たばこシートが接触しない非接触部を設けるために、例えば、エンボス加工したたばこシートを用いる、複数のたばこシートを用いる場合、隣接するたばこシート同士の全面を接着せずに積層する、隣接するたばこシート同士の一部を接着して積層する、あるいは隣接するたばこシート同士の全面あるいは一部を、巻上げ成形後に剥がれるように軽度に接着して積層することで積層体（成形体）を調製する方法を挙げることができる。
巻紙を含めたたばこロッドを調製する場合には、積層体（成形体）の最底部に上記の巻紙を配置してもよい。

また、積層体（成形体）の最頂部にマンドレル等の筒状ダミーを載置して第二のたばこ充填物を形成した後に、当該ダミーを除去することで、開口部を形成することもできる。
各たばこシートの厚みについては制限されないが、伝熱効率と強度の兼ね合いから、２００μｍ以上、６００μｍ以下が好ましい。各たばこシートの厚みについては、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
第二のたばこ充填物を構成するたばこシートの枚数は１枚以上であれば特に制限されないが、例えば１枚、２枚、３枚、４枚、５枚、又は６枚を挙げることができる。

第三のたばこ充填物は、たばこ顆粒から構成される。
第三のたばこ充填物の原料は、特に限定されないが、（ａ）たばこ材料、（ｂ）水分、（ｃ）炭酸カリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも１種のｐＨ調整剤、、（ｄ）プルラン及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群の中から選ばれる少なくとも１種のバインダー、並びに（ｅ）エアロゾル生成基材を挙げることができる。

第三のたばこ充填物に含まれる、たばこ材料（成分（ａ））には、粉砕されたたばこ葉や粉砕されたたばこシート等が含まれる。たばこの種類には、バーレー種、黄色種、オリエンタル種が含まれる。たばこ材料は、２００μｍ以上、３００μｍ以下のサイズに粉砕されていることが好ましい。
第三のたばこ充填物の原料混合物は、たばこ材料を、通常、２０重量％以上、８０重量％以下の量で含有する。

第三のたばこ充填物に含まれる、水分（成分（ｂ））は、たばこ顆粒の一体性を維持するためのものである。
第三のたばこ充填物の原料混合物は、水分を、通常、３重量％以上、１３重量％以下の量で含有する。また、第三のたばこ充填物は、水分を、通常、乾燥減量の値が５重量％以上、１７重量％以下となるような量で含有し得る。乾燥減量とは、試料の一部を測定のために採取し、採取された試料中の全水分を蒸発させることにより試料を完全乾燥させたとき（たとえば、一定の温度（１０５℃）で１５分間乾燥させたとき）の乾燥前後での重量変化を指し、具体的には、試料に含まれている水分の量及び上記乾燥条件で揮発する揮発性成分の量の合算値の、試料重量に対する割合（重量％）を指す。すなわち、乾燥減量(重量％)は、以下の式で表すことができる。
乾燥減量(重量％)＝
{(完全乾燥前の試料の重量)－(完全乾燥後の試料の重量)}×１００／完全乾燥前の試料の重量

第三のたばこ充填物に含まれるｐＨ調整剤（成分（ｃ））は、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム又はそれらの混合物からなる。これらｐＨ調整剤は、第三のたばこ充填物のｐＨをアルカリ側に調整し、もって第三のたばこ充填物に含まれる香喫味成分をたばこ顆粒から放出させることを促進し、使用者に満足され得る喫味をもたらす。
第三のたばこ充填物の原料混合物は、ｐＨ調整剤を、通常、５重量％以上、２０重量％以下の量で含有し得る。

第三のたばこ充填物に含まれるバインダー（成分（ｄ））は、たばこ顆粒成分を結着させてたばこ顆粒の一体性を保持するものである。バインダーは、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース（ＨＰＣ）又はそれらの混合物から構成される。
第三のたばこ充填物の原料混合物は、バインダーを、通常、０．５重量％以上、１５重量％以下の量で含有し得る。

第三のたばこ充填物に含まれるエアロゾル生成基材（成分（ｅ））は、エアロゾルを生成するものである。該エアロゾル生成基材は、多価アルコールから構成され、該多価アルコールには、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール及びエリスリトールが含まれ得る。これらの多価アルコールは、単独で、又は２種以上を組み合わせて使用することができる。
第三のたばこ充填物の原料混合物におけるエアロゾル生成基材の含有量は、５重量％以上、１５重量％以下を挙げることができる。
また追加の成分としては、（ｆ）香喫味成分以外の香味材（固体又は液体）が挙げられる。かかる香味材には、糖（スクロース、フルクトース等）、ココア粉、キャロブ粉、コリアンダー粉、リコリス粉、オレンジピール粉、ローズピップ粉、カモミールフラワー（flower)粉、レモンバーベナ粉、ペパーミント粉、リーフ粉、スペアミント粉、紅茶粉、メントール等が含まれる。
第三のたばこ充填物の原料混合物は、上記香味材を、通常、０．５重量％以上、３０重量％以下の量で含有し得る。上記香味材は、成分（ａ）、（ｂ）、（ｃ）、（ｄ）及び（ｅ）と直接混練することにより上記成分に添加してもよいし、あるいは、サイクロデキストリンなどの公知の包接ホスト化合物に担持して包接化合物を調製してからそれを上記成分と混練することにより上記成分に添加してもよい。
第三のたばこ充填物は、上記成分（ａ）、（ｂ）、（ｃ）、（ｄ）及び（ｅ）からなる場合、その第三のたばこ充填物の原料混合物は、成分（ａ）を、通常、約３３重量％以上（約９０重量％以下）の量で含有し得る。

第三のたばこ充填物は、成分（ａ）、（ｃ）、（ｄ）及び（ｅ）、所望により成分（ｆ）を混合し、その混合物に成分（ｂ）を加えて混練し、得られた混練物を湿式押出し造粒機で造粒（長柱状）した後、短柱状あるいは球状に整粒することによって得られる。得られるたばこ顆粒の平均粒径（Ｄ５０）は、通常、０．２ｍｍ以上、１．２ｍｍ以下であり、０．２ｍｍ以上、１．０ｍｍ以下であることが好ましく、０．２ｍｍ以上、０．８ｍｍ以下であることがより好ましい。
押出し造粒に際しては、混練物を周囲温度で、２ｋＮ以上の圧力で押出すことが好ましい。この高圧での押出しにより、押出し造粒機出口での混練物は温度が周囲温度から例えば９０℃以上、１００℃以下まで瞬間的に急激に上昇し、水分及び揮発性成分が２重量％以上、４重量％以下蒸発する。したがって、混練物を作るために配合する水は、最終製品であるたばこ顆粒中の所望水分よりも上記蒸発量だけ多くの量で用いることができる。

押出し造粒により得られたたばこ顆粒は、水分調整のために、必要に応じてさらに乾燥させてもよい。たとえば、押出し造粒により得られたたばこ顆粒の乾燥減量を測定し、それが、所望の乾燥減量（たとえば５重量％以上、１７重量％以下）より高い場合、所望の乾燥減量を得るためにたばこ顆粒をさらに乾燥させてもよい。所望の乾燥減量を得るための乾燥条件（温度及び時間）は、乾燥減量を所定の値だけ減少させるために必要な乾燥条件（温度及び時間）を予め決定し、その条件に基づいて設定することができる。

第三のたばこ充填物は、上記のたばこ顆粒のみからなることができるが、その他に、追加のたばこ材料をさらに含むことができる。追加のたばこ材料は、通常、たばこ葉の刻もしくは細粉である。追加のたばこ材料は、本発明の実施形態にかかるたばこ顆粒と混合して使用することができる。

＜たばこ充填物の製造方法＞
本発明の実施形態にかかるたばこ充填物の製造方法は、上記で説明した第一～第三のたばこ充填物の製造方法にかかるものである。
本発明の実施形態にかかるたばこ充填物の製造方法は、第一～第三のたばこ充填物のいずれにおいても、脂質を含有し、該脂質における炭素数１６～１８の飽和脂肪酸の割合が５０重量％以上であるエアロゾル安定剤を、成形前又は成形後のたばこ材料に添加する工程を含む。
上記エアロゾル安定剤を成形前のたばこ材料に添加する場合、その添加の態様によって、たばこ材料に上記エアロゾル安定剤を均一に添加することができる。
第一及び第三のたばこ充填物の場合、たばこ充填物の調製の際に上記のエアロゾル安定剤を粉砕したたばこ葉や刻み、シートたばこの粉砕物等の他の材料と混合することで、上記のエアロゾル安定剤を成形前のたばこ材料に均一に添加することができる。
第二のたばこ充填物の場合、たばこシートの作製時に上記のエアロゾル安定剤を、原料とするたばこ材料（粉砕したたばこ葉など）に混合することでたばこ材料に上記のエアロゾル安定剤を添加することができる。具体的には、上記で説明した抄造の場合、４）の工程において水抽出物の濃縮液に上記のエアロゾル安定剤を混合し、それを抄紙したシートに添加することで、上記のエアロゾル安定剤を成形前のたばこ材料に添加することができる。
上記で説明したスラリー法により作製する場合、１）の工程において、水、パルプ及びバインダーと砕いたたばこ葉に加え、上記のエアロゾル安定剤を成形前のたばこ材料に均一に添加することができる。
上記で説明した不織布状のたばこシートを得る場合には、１）の工程において、粉粒状のたばこ葉と結合剤を混合する際に、上記のエアロゾル安定剤も混合することで、上記のエアロゾル安定剤を成形前のたばこ材料に均一に添加することができる。
成形前のたばこ材料に上記のエアロゾル安定剤を均一に添加することで、香喫味が安定するので好ましい。

上記エアロゾル安定剤を成形後のたばこ材料に添加する場合、上記たばこ材料の表面に上記エアロゾル安定剤を添加することができる。その方法として、エアロゾル安定剤をたばこ材料の成形体の表面に適当な手段により噴霧又は塗布することを挙げることができる。たばこ材料の表面にエアロゾル安定剤が添加されていることでたばこ材料内での内部拡散を考慮せずに、エアロゾル安定剤がエアロゾル中に移行でき、且つ、その移行率が上昇するので好ましい。
第一のたばこ充填物の場合、ロッド状に成形されたたばこ材料（第三のたばこ充填物の場合は顆粒）の表面に上記エアロゾル安定剤を上記の方法により添加することができる。
第二のたばこ充填物の場合、1枚以上のたばこシートが巻き上げられて形成されたロッド状のたばこ材料の表面に上記エアロゾル安定剤を上記の方法により添加することができる。

上記の工程を経て、以下の（１）又は（２）の態様のたばこ充填物を作製できる。
（１）前記たばこ材料の成形体の表面に添加されている
（２）前記たばこ材料に均一に添加されている
上記の（１）又は（２）のいずれの態様のたばこ充填物についても、その成形体を巻紙でさらに巻き上げることで、非燃焼加熱式たばこに用いることができる。
その後、成形されたたばこ充填物を巻紙により巻装することで非燃焼加熱式たばこに供するたばこロッドを作製できる。なお、巻装の際には公知の巻取装置を用いることができる。
巻紙の構成は、特段制限されず、一般的なものを用いることができる。例えば、巻紙に用いられる原紙としては、セルロース繊維紙を用いることができ、より具体的には、麻もしくは木材あるいはそれらの混合物を挙げることができる。なお、ここでいう「巻紙」とは、たばこ充填物を巻装するためのものである。
巻紙は填料を含んでいてもよく、填料の種類は限定されるものではなく、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの金属硫酸塩、硫化亜鉛などの金属硫化物、石英、カオリン、タルク、ケイソウ土、石膏などが挙げられ、特に、白色度・不透明度の向上及び加熱速度の増加の観点から炭酸カルシウムを含んでいることが好ましい。
巻紙中の填料の配合割合は、特に限定されるものではなく、通常１重量％以上、５０重量％以下であり、５重量％以上、４５重量％以下であることが好ましく、１０重量％以上、４２重量％以下であることがより好ましく、２０重量％以上、４０重量％以下であることが特に好ましい。なお、例えば、炭酸カルシウムの含有量を求める場合、灰分測定により、又は、抽出後、カルシウムイオンを定量することにより求めることができる。
上記範囲の下限を下回ると巻紙が焦げやすくなり、また、上限を上回ると巻紙の強度が大きく低下し、巻上性が悪化し得る。

巻紙には、原紙や填料以外の種々の助剤を添加してもよく、例えば、耐水性を向上させるために、耐水性向上剤を添加することができる。耐水性向上剤には、湿潤紙力増強剤（ＷＳ剤）及びサイズ剤が含まれる。湿潤紙力増強剤の例を挙げると、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン（ＰＡＥ）等である。また、サイズ剤の例を挙げると、ロジン石けん、アルキルケテンダイマー（ＡＫＤ）、アルケニル無水コハク酸（ＡＳＡ）、ケン化度が９０％以上の高ケン化ポリビニルアルコール等である。
助剤として、紙力増強剤を添加してもよく、例えば、ポリアクリルアミド、カチオンでんぷん、酸化でんぷん、ＣＭＣ、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール等を挙げられる。特に、酸化でんぷんについては、極少量用いることにより、通気度が向上することが知られている（特開２０１７－２１８６９９号公報）。
また、巻紙は、適宜コーティングされていてもよい。

巻紙には、その表面及び裏面の２面うち、少なくとも１面にコーティング剤が添加されてもよい。コーティング剤としては特に制限はないが、紙の表面に膜を形成し、液体の透過性を減少させることができるコーティング剤が好ましい。例えばアルギン酸及びその塩（例えばナトリウム塩）、ペクチンのような多糖類、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロースのようなセルロース誘導体、デンプンやその誘導体（例えばカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシアルキルデンプン及びカチオンデンプンのようなエーテル誘導体、酢酸デンプン、リン酸デンプン及びオクテニルコハク酸デンプンのようなエステル誘導体）を挙げることができる。

巻紙の坪量は、通常２０ｇ／ｍ^２以上、４５ｇ／ｍ^２以下であり、２０ｇ／ｍ^２以上、４５ｇ／ｍ^２以下であることが好ましい。この範囲内であると、適度な強度及び巻上性を維持することができる。
巻紙の通気度は、通常０コレスタ単位以上、１２０コレスタ単位以下であり、５コレスタ単位以上、１００コレスタ単位以下であることが好ましく、１０コレスタ単位以上、８０コレスタ単位以下であることがより好ましい。この範囲内であると、適度な強度及び喫味を維持することができる。

＜非燃焼加熱式たばこ＞
本発明の実施形態にかかる非燃焼加熱式たばこの一実施形態として、例えば図１の構成を有するものを挙げることができる。
図１の非燃焼加熱式たばこ１は、たばこ充填物１０と、たばこ充填物１０を巻装する巻紙（図示せず）から構成されるたばこロッドと、該たばこロッドとは反対側の端部を構成するマウスピース部１１とを有し、前記たばこロッドと前記マウスピース部は、前記たばこ充填物を巻装する巻紙と同じ又は別の巻紙１２（図１ではチップペーパー）を用いて連結されている。
図１の実施形態は、たばこ充填物として上記の第一のたばこ充填物を用いたものである。第一のたばこ充填物に含まれる刻み（たばこ葉を刻んだもの、又は均一化シートを刻んだもの：例えば０．５ｍｍ以上、２．０ｍｍ以下の幅）の長さは、１．０ｍｍ以上、４．０ｍｍ以下程度となることが多く、これらの刻みは、たばこ充填物中において、ランダムな配向で配置していることが多い。一方、刻みの長さをたばこロッドの長さと略同一の長さに加工して、たばこロッドの長手方向と同方向に刻みを配列して充填することもできる。
図１に示すように、マウスピース部１１は、エアロゾル冷却部（単に冷却部ともいう）１３及びフィルター部１４とを備えてもよい。また、これらを連結するための巻紙としてチップペーパー１２を備える。なお、図１ではマウスピース部１１は２つのセグメントから構成されているが、マウスピース部１１は単一のセグメントから構成されていてもよく、３つのセグメントから構成されていてもよく、４つ以上のセグメントから構成されてもよい。また、マウスピース部を構成するセグメントは、図１のように冷却部とフィルター部の両方が含まれるように構成されていてもよいし、どちらかのみから構成されていてもよい。

図１には図示していないが、たばこロッドの直ぐ下流側、かつ、冷却部１３との間に、支持部を配置してもよい。該支持部を設ける場合、該支持部をたばこロッドの後端と当接した状態で配置する。支持部は、例えば、中空のセルロースアセテート管体であってもよい。言い換えると、支持部は、円柱状のセルロースアセテート繊維束の横断面中央にセンターホールを貫通形成したものであってもよい。また、支持部は、例えば篩目５メッシュ以上、３５メッシュ以下の金属性の網でもよい。支持部は、下記で説明する図３の態様の電気加熱式デバイスのヒーター部材がたばこロッド内に刺突した際に、たばこ充填物が非燃焼加熱式たばこ内で冷却部１３に向かって下流側に押し込まれるのを防ぐための要素である。支持部１３はたばこ充填物が下流側に押し込まれるのを防ぐ機能に加えて、通気抵抗が低くエアロゾル濾過能力が低いものであることが望ましい。支持部は、非燃焼加熱式たばこの冷却部１３をたばこロッドから離間させるためのスペーサとしても機能する。

前記たばこロッドが加熱されることで生じるエアロゾル生成基材とたばこ香味成分とを含む蒸気が、冷却部１３を通過するのに従って、冷却部１３内の空気と触れ合って冷却されることで液化してエアロゾルが生成する。
図１において、非燃焼加熱式たばこ１は、冷却部１３と、冷却部１３の周囲を覆う巻紙１２（チップペーパー）の一部に、外部からの空気を取り入れるための微小孔を有してもよい（図示せず）。そのような微小孔が存在することで、使用時に外部から冷却部１３の内部に空気が流入し、前記たばこロッドが加熱されることで生じるエアロゾル生成基材とたばこ香味成分とを含む蒸気が、外部からの空気と接触して温度が低下することで液化し、エアロゾルの生成がより確実になる。微小孔は、径が１００μｍ以上、１０００μｍ以下であることが好ましい。微小孔は、略円形もしくは略楕円形であることが好ましく、略楕円形の場合の前記径は長径を表す。微小孔は１つでもよいし、複数でもよい。複数の場合は巻紙１２（チップペーパー）の円周上に列を形成して配置されることが好ましい。
冷却部１３は、例えば厚紙を円筒状に加工したものを挙げることができる。この場合は円筒状の内側は空洞であり、エアロゾル生成基材とたばこ香味成分とを含む蒸気が空洞内の空気と接触して冷却される。前記微小孔を配置している場合はこの空洞内で前記蒸気が外部空気とも接触し、さらに冷却効果が増大する、また、円筒の内側に、紙、ポリマーフィルム、又は金属箔などシート形状の部材をギャザー加工したものを充填してもよい。この場合、これら部材の比熱を利用して前記蒸気を冷却することもできる。

フィルター部１４は、例えばセルロースアセテートトウを材料として用いたものを挙げることができる。セルロースアセテートトウの単糸繊度、総繊度は特に限定されないが、円周２２ｍｍのフィルター部の場合は、単糸繊度は５ｇ／９０００ｍ以上、１２ｇ／９０００ｍ以下であることが好ましく、総繊度は１２０００ｇ／９０００ｍ以上、３００００ｇ／９０００ｍ以下であることが好ましい。セルロースアセテートトウの繊維の断面形状は、Ｙ断面でもよいしＲ断面でもよい。セルロースアセテートトウを充填したフィルターの場合は、フィルター硬さを向上するためにトリアセチンをセルロースアセテートトウ重量に対して、５重量％以上、１０重量％以下添加してもよい。
また、フィルター部１４は、パルプから作製されるいわゆるペーパーフィルターから構成されてってもよい。
図１ではフィルター部１４は単一のセグメントから構成されているが、複数のセグメントから構成されていてもよい。複数のセグメントから構成されている場合、例えば上流側に中空のセグメントを配置し、下流側（使用者の吸口端側）のセグメントとして吸口断面がセルロースアセテートトウで充填されている態様を挙げることもできる。このような態様によれば、生成するエアロゾルの無用な損失を防ぐとともに、非燃焼加熱式たばこの外観を良好にすることができる。
また、フィルターの製造において、通気抵抗の調整や添加物（公知の吸着剤や香料、香料保持材等）の添加を適宜設計できる。
巻紙１２（チップペーパー）の材料は特に制限されず、一般的な植物性の繊維（パルプ）で作製された紙や、ポリマー系（ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなど）の化学繊維を用いたシート、ポリマー系のシート、アルミ箔のような金属箔等を用いることができる。
巻紙１２の厚さは、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、通常３０μｍ以上であり、３５μｍ以上であることが好ましい。一方で、通常１５０μｍ以下であり、１４０μｍ以下であることが好ましい。
巻紙１２の坪量は、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、通常３０ｇ／ｍ^２以上であり、３５ｇ／ｍ^２以上であることが好ましい。一方で、通常１５０ｇ／ｍ^２以下であり、１４０ｇ／ｍ^２以下であることが好ましい。
巻紙の通気度は、特段制限されないが、エアロゾルのデリバリー量や製造適正の観点から、１０コレスタ単位以下であることが好ましい。
巻紙は、例えば酢酸ビニル系の糊を用いて、上記のたばこロッド、冷却部１３、フィルター部１４、及び必要に応じて支持部の周囲を巻装した後に固定する態様を挙げることができる。

図１で示した実施形態においては、非燃焼加熱式たばこ１の長手方向の長さは、４０ｍｍ以上、１００ｍｍ以下であることが好ましく、４０ｍｍ以上、８０ｍｍ以下であることがより好ましく、４５ｍｍ以上、６０ｍｍ以下であることがさらに好ましい。また、非燃焼加熱式たばこの円周は１５ｍｍ以上、２５ｍｍ以下であることが好ましく、１７ｍｍ以上、２４ｍｍ以下であることがより好ましく、２１ｍｍ以上、２３ｍｍ以下であることがさらに好ましい。また、図１で示した実施形態においては、たばこロッドの長さは約１２ｍｍ、冷却部の長さは約２０ｍｍ、支持部の長さは約８ｍｍ、フィルター部の長さは約７ｍｍである態様を挙げることができるが、これら個々のセグメント長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。

本発明の非燃焼加熱式たばこの第二の実施形態として、底面に貫通孔を有する椀状の容器と、当該容器に充填された上記たばこ充填物と、該容器の上面を覆う、使用時に貫通孔を形成する孔形成部と、ヒーターとを有する蓋と、を有するものを挙げることができる。当該容器の形状としては特に制限はないが、後述する電気加熱式たばこ製品のハウジングが有する凹部に挿入可能である形状であることが望ましい。例えば、側面が底面に向かって傾斜するテーパー状になっている態様が挙げられる。
上記底面が有する貫通孔は、たばこ充填物が外に漏れださない程度の径を有する。本発明の非燃焼加熱式たばこの第二の実施形態では、上記容器に、上記の第一のたばこ充填物又は第二のたばこ充填物を充填したものを例示できる。

＜電気加熱式たばこ製品＞
＜第一の実施形態＞
電気加熱式たばこ製品の第一の実施形態は、ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、上記の第一の実施形態の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品である。
電気加熱式たばこ製品の態様としては図２に示すような、非燃焼加熱式たばこの外周面を加熱する態様であってもよく、図３に示すような、非燃焼加熱式たばこにおけるたばこロッド部の内部から加熱する態様であってもよい。なお、図２及び図３に示す電気加熱式デバイス２には空気導入孔が設けられているが、ここでは図示しない。以下、図２を用いて電気加熱式たばこ製品を説明する。
電気加熱式たばこ製品３は、電気加熱式デバイス２の内部に配置された、ヒーター部材２３に、上記で説明した非燃焼加熱式たばこ１が接触するように挿入されて使用される。
電気加熱式デバイス２は、例えば樹脂性の躯体２２の内部に、電池ユニット２０と制御ユニット２１とを有する。
非燃焼加熱式たばこ１を電気加熱式デバイス２に挿入すると、たばこロッド部の外周面が電気加熱式デバイス２のヒーター部材２３と接触し、やがてたばこロッド部の外周面の全部と巻装部の外周面の一部がヒーター部材に接触する。
電気加熱式デバイス２のヒーター部材２３は、制御ユニット２０による制御により発熱する。その熱が非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部に伝わることで、たばこロッド部のたばこ充填物に含まれるエアロゾル生成基材や香味成分等が揮発する。

該ヒーター部材は、例えばシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーターであってよい。シート状ヒーターとは柔軟なシート形のヒーターであり、例えばポリイミド等の耐熱性ポリマーのフィルム（厚み２０～２２５μｍ程度）を含むヒーターが挙げられる。平板状ヒーターとは剛直な平板形のヒーター（厚み２００～５００μｍ程度）であり、例えば平板基材上に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターとは中空又は中実の筒形のヒーター（厚み２００～５００μｍ程度）であり、例えば金属製等の筒の外周面に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。また、内部に抵抗回路を有し、当該部分を発熱部とする金属製等の棒状ヒーター、錐状ヒーターも挙げられる。筒状ヒーターの断面形状は円、楕円、多角、角丸多角等であってよい。
図２に示すような、非燃焼加熱式たばこの外周面を加熱する態様である場合、上記のシート状ヒーター、平板状ヒーター、円筒状ヒーターを用いることができる。一方で、図３に示すような、非燃焼加熱式たばこにおけるたばこロッド部の内部から加熱する態様である場合は、上記の平板状ヒーターや柱状ヒーター、錐状ヒーターを用いることができる。
該ヒーター部材の長軸方向の長さは、たばこロッド部の長軸方向の長さをＬｍｍとしたときに、Ｌ±５．０ｍｍの範囲内とすることができる。該ヒーター部材の長軸方向の長さは、たばこロッド部に十分に熱を伝え、たばこ充填物に含まれるエアロゾル生成基材や香味成分等を十分に揮発させる、すなわちエアロゾルデリバリーの観点から、Ｌｍｍ以上であることが好ましく、喫味等へ不所望な影響を及ぼす成分の発生を抑制する観点からＬ＋０．５ｍｍ以下、Ｌ＋１．０ｍｍ以下、Ｌ＋１．５ｍｍ以下、Ｌ＋２．０ｍｍ以下、Ｌ＋２．５ｍｍ以下、Ｌ＋３．０ｍｍ以下、Ｌ＋３．５ｍｍ以下、Ｌ＋４．０ｍｍ以下、Ｌ＋４．５ｍｍ以下又はＬ＋５．０ｍｍ以下であることが好ましい。

該ヒーター部材による非燃焼加熱式たばこの加熱時間や加熱温度といった加熱強度は、電気加熱式たばこ製品ごとにあらかじめ設定することができる。例えば、電気加熱式デバイスに非燃焼加熱式たばこを挿入した後に、一定時間の予備加熱を行うことで、非燃焼加熱式たばこにおける、該デバイスに挿入されている部分の外周面の温度がＸ（℃）になるまで加熱し、その後、該温度がＸ（℃）以下の一定温度を保つように、あらかじめ設定することができる。
上記Ｘ（℃）は、エアロゾルデリバリー量の観点から、８０℃以上４００℃以下であることが好ましい。具体的には、８０℃、９０℃、１００℃、１１０℃、１２０℃、１３０℃、１４０℃、１５０℃、１６０℃、１７０℃、１８０℃、１９０℃、２００℃、２１０℃、２２０℃、２３０℃、２４０℃、２５０℃、２６０℃、２７０℃、２８０℃、２９０℃、３００℃、３１０℃、３２０℃、３３０℃、３４０℃、３５０℃、３６０℃、３７０℃、３８０℃、３９０℃、４００℃とすることができる。
ヒーター部材の温度として上記の範囲を挙げることができるが、上記の電気加熱式たばこ製品のヒーター部材に挿入される本発明の実施形態にかかる非燃焼加熱式たばこは、概ね２５０℃～４００℃に加熱されることが好ましい。本発明の実施形態にかかる非燃焼加熱式たばこがこのような温度範囲で加熱されることは、使用時のエアロゾルの安定性を良好に保つことに寄与する。
ヒーター部材による加熱により、たばこロッド部から生じるエアロゾル生成基材や香味成分等を含む蒸気は、冷却部やフィルター部等から構成されるマウスピース部を通して使用者の口腔内に到達する。

＜第二の実施形態の電気加熱式たばこ製品＞
電気加熱式たばこ製品の第二の実施形態は、上記の第二の実施形態の非燃焼加熱式たばこを用いるものであり、電源と、制御ユニットと、これらを収容するハウジングとを有し、当該ハウジングは第二の実施形態の非燃焼加熱式たばこを収容するための凹部と、ベンチレーション孔を有する。また、第二実施形態にかかる電気加熱型たばこ製品は、上記凹部に収容された非燃焼加熱式たばこから生成するエアロゾルと香喫味成分を吸引するための着脱可能なマウスピースを有する。
マウスピースは、上記非燃焼加熱式たばこの容器の蓋と電気的に接続する電気接点を有し、マウスピースが上記ハウジングに取り付けられると、上記容器の蓋が有するヒーターと電気的に接続する。また、その接続により、ハウジング内に収容された制御ユニットとも電気的に接続する。
使用者は、第二の非燃焼加熱式たばこを電気加熱式たばこ製品のハウジングの凹部に設置し、マウスピースを電気加熱式たばこのハウジングに取り付ける。マウスピースを電気加熱式たばこのハウジングに取り付けると、上記容器の蓋の孔形成部が開口し、マウスピースの吸い口と上記容器の流路が連通する。使用者は電気加熱式たばこに設置されたスイッチを押すことで制御ユニットを介して電源からヒーターに電力を供給し、発熱したヒーターにより非燃焼加熱式たばこが有する容器が加熱される。当該容器が加熱されることで、容器内のたばこ充填物からエアロゾル生成基材と香喫味成分が揮発してエアロゾルが生成する。使用者による吸引操作により、電気加熱式たばこのハウジングが有するベンチレーション孔から空気が流入し、非燃焼加熱式たばこの容器底面が有する貫通孔を通じて当該容器内にも空気が流入する。その空気と、生成した香喫味成分を含むエアロゾルは、共にマウスピースを介して使用者により吸引される。

＜第三の実施形態の電気加熱式たばこ製品＞
誘導加熱により非燃焼加熱式たばこを加熱する電気加熱式たばこ製品について説明する。
誘導加熱により非燃焼加熱式たばこを加熱する電気加熱式たばこ製品４は、図２で示す第一の実施形態にかかる電気加熱式たばこ製品のヒーター部材２３の代わりに、インダクタ３３を備えるとともに、インダクタに電力を供給して作動させる電池ユニット３０と、電力の供給を制御する制御ユニット３１を備える（図４）。作動は手動でもよく、又は電気加熱式デバイス５の中に挿入される非燃焼加熱式たばこでの使用者の挿入に応答して自動的に起こってもよい。
電池ユニット３０はＤＣ電流を供給する。制御ユニット３１はインダクタに高周波ＡＣ電流を供給するためのＤＣ/ＡＣインバータを含む。
装置が作動する時、高周波の交流電流がインダクタ３３の一部を形成する誘電コイルを通過する。これにより、インダクタ３３が変動電磁場を生成する。
電磁場の周波数は１ＭＨｚ以上、３０ＭＨｚ以下、好ましくは２ＭＨｚ以上、１０ＭＨｚ以下、例えば５ＭＨｚ以上、７ＭＨｚ以下変動することが好ましい。
非燃焼加熱式たばこ１’は、電気的に動作する電気加熱式デバイス５の使用と連動するように設計されており、たばこ充填物から構成されるロッド部の内部に、たばこ充填物を加熱するサセプタ３５を有する。サセプタ３５の材料として、アルミニウム、鉄、鉄合金、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金のいずれかを例示できる。
インダクタ３３は非燃焼加熱式たばこ製品の受け入れチャンバ３４の内壁に隣接して位置する。
使用時には、使用者は、サセプタ３５を有する部位がインダクタ３３に近接した位置になるように、非燃焼加熱式たばこ１’を電気加熱式デバイス５に挿入する。
非燃焼加熱式たばこ１’が電気加熱式デバイス５の受け入れチャンバ３４に正しく設置されると、非燃焼加熱式たばこ１’が有するサセプタ３５が変動電磁場内に位置する。
変動電磁場がサセプタ３５内に渦電流を生成し、その結果これが加熱される。さらなる加熱がサセプタ３５内の磁気ヒステリシス損失により提供される。
加熱されたサセプタ３５はエアロゾルを形成するのに十分な温度まで非燃焼加熱式たばこ１’のたばこロッド部を加熱する。この時の加熱温度として、たばこロッド部が２５０℃以上、４００℃以下に加熱される態様を挙げることができる。
加熱により生成したエアロゾルは非燃焼加熱式たばこ製品内を通り、使用者に吸引される。

本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨から逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。

＜実験例１＞異なる物性を持つ添加物種類による検討
＜たばこロッドの作製＞
たばこ充填物として、あらかじめ、エアロゾル生成基材（グリセリン）１５／１００ｇをシートたばこの刻みに混合したもの(抄造シート)を準備した。たばこ刻はバーレー種、黄色種、オリエント種=４:４:２（重量比）を混合したものを用いた。エアロゾル安定剤として表１に記載の脂肪酸又は脂質を用いた。表１に記載のエアロゾル安定剤を０．１～１重量％の割合でエタノールに溶解させ、ガラス製噴霧器(茶３０ｍｌ,４型)を用いて、１１５ｍｍ×１１５ｍｍにあらかじめカットした抄造シートに対して表１中の重量添加割合になるように均一に表面に噴霧をし、添加した。巻紙として、１００％バージンパルプ（７０重量％）と填料として炭酸カルシウム（白石工業株式会社製ＰＣＸ８５０、３０重量％）を使用した通常のシガレット用巻紙を準備した。上記の抄造シートの刻９２０ｍｇを手巻用インジェクションマシーン(MUS20, Daughers & Ryan Inc.)を用いて、巻円周は２２ｍｍ、巻き長さは５５ｍｍの巻状にした。これを実験例１のたばこロッドとした。

＜非燃焼加熱式たばこの作製＞
前記方法で作製した実験例１のたばこロッドを長さ１２ｍｍに切断した。これらのたばこロッドを、支持部材のセンターホール(８．０Ｙ４００００)８ｍｍ及び長さ２０ｍｍの紙管の外周に希釈空気孔(ベンチレーション率２０％)を施した冷却部、さらに、長さ７ｍｍの酢酸セルロース繊維（５．０Ｙ３５０００）が充填されたフィルター部とを、巻紙にて手作りで接続して非燃焼加熱式たばこを作製した。

＜官能評価試験＞
実験例１で作製した各非燃焼加熱式たばこを使用試験に供した。使用試験に供した電気加熱式たばこ製品として、上述した構成を有するものを使用した。非燃焼加熱式たばこのたばこロッドが挿入される際のヒーター温度を３２０℃（円筒型ヒータΦ３．２ｍｍ）に設定して使用試験を行なった。官能評価は１０人の社内パネルに対して実施をした。評価はVisual Analog Scale法(VAS法)を用いて、たばこ感(シガレット様)に対して「全く感じない」、「非常に弱い」、「弱い」、「やや弱い」、「どちらでもない」、「やや強い」、「強い」、「非常に強い」の８段階の尺度にて評価を行った。たばこ感(シガレット様)は「シガレットに類する香味及び刺激感を含む体性感覚」として評価を行った。１日の最大評価本数は５本とし、評価日ごとに無添加ロットの評価も行った。評価は加熱開始後３０秒から喫煙を開始し、その後３０秒間隔で喫煙を行い、最大で５分まで喫煙可能とし評価を行った。安定的な評価を行うことを企図して加熱開始から２分間は評価対象外とした。評価終了後から次のロットの評価を行うまでには必ず５分間の休憩をとることとした。たばこ感(シガレット様)は表１に記載の物質を添加したロットの官能評価結果から無添加ロットの官能評価結果を差し引いた値で示した。

＜溶解度測定＞
溶解度の測定はグリセリン２gに、溶け残りが発生する過剰量の脂肪酸を添加し、グリセリン中に溶解した脂肪酸量を測定した。添加する過剰の脂肪酸が多量となる場合、２層分離が容易ではなくなるため、僅かに過剰となる量を添加する必要がある。脂肪酸添加後４８時間静置し、２層分離後、グリセリンを１００ｍｇ採取し、２ｍｌのメタノールに転溶させＧＣ－ＦＩＤ(model 7890A, Agilent)にて脂肪酸量の定量を行った。

＜希釈時残渣の個数粒子数中央径の測定＞
生成したエアロゾル粒子が使用者の口腔内にデリバリーされるまで揮発せずに安定して存在するための指標として、本実験例ではＤＭＳ(Differential Mobility Spectrometer, Cambustion)にて測定可能な個数粒子数中央径 (Count Median Diameter)を用いた。ＤＭＳは、エアロゾルを減圧(０．２５bar)及び高希釈条件下にて計測するため、揮発性の高いエアロゾルは容易に消失しガス化する。比較的揮発性が低いエアロゾルの場合、エアロゾルは揮発により縮小するものの、残渣エアロゾルとして粒子径分布が得られる。このとき、生成したエアロゾル粒子径が同一であれば、揮発性の多寡によって残渣エアロゾルの粒子径分布は異なる。本実施例では、個数基準でのピーク粒径が減圧及び高希釈条件下での安定性を示すと考え、指標として用いた。個数粒子数中央径が大きいほどエアロゾルは安定して存在しており、個数粒子数中央径が小さいほどエアロゾルは不安定であることを示す。本実験条件では、一次希釈を２５Ｌ／ｍｉｎで行い、二次希釈を２００倍の設定にて実施した。なお別途Spraytec (Model STP5321, Mulvern)を用いて、希釈や減圧を伴う前の発生直後の質量ピーク粒径を測定しており、本実施例の添加物の種類及び添加量範囲では、差異は見られず約２００ｎｍ付近に個数粒子数中央径が存在した。

＜試験結果＞
表２に試験結果を示す。また併せて図５に、グリセリンとの溶解度と各単一の脂肪酸におけるたばこ感の効果を示し、図６に、C16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸と、混合物としてオレイン酸を添加した際のたばこ感を示すとともに、一般的に脂質として添加されることが多いパーム油やカンデリラろうを用いた際のたばこ感の効果を示す。図５から明らかなように、C16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸及びC18の飽和脂肪酸であるステアリン酸を用いた際に、最も高いたばこ感を得ることができ、他の単一の脂肪酸では効果が低い結果が得られた。また不飽和脂肪酸は比較的グリセリンへの溶解度が高いため、C18であるものであっても、その効果は、飽和脂肪酸と比較して低いことが明らかとなった。C19の飽和脂肪酸においても効果が確認されたが、C19は天然に存在する量として非常に少なく、使用に際しては製造上の課題が存在する。そのためC16～C18に該当する飽和脂肪酸を添加することで、高いたばこ感を得ることができると考えられる。
一方、C16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸に不飽和脂肪酸であるオレイン酸を添加した場合、たばこ感は添加に伴い低下することが分かり、パルミチン酸が割合として５０重量％に満たない条件下では、効果が十分発揮されない結果が得られた。パルミチン酸及びステアリン酸を合計で４８重量％含む脂質であるパーム油においても同様の傾向が確認でき、パルミチン酸の重量割合が不足しているため効果が十分ではないと考えられる。ＤＭＳの測定結果については、たばこ感の値と関連性が認められ、ＤＭＳの個数粒子数中央径が大きいほどたばこ感の値は高い結果となった。なかでもC16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸及びC18の飽和脂肪酸であるステアリン酸は個数粒子数中央径が大きい結果が得られ、エアロゾルの安定化には有効であることが分かった。

＜実験例２＞Ｃ１６パルミチン酸の添加量を変更した際の効果
実験例２で用いるたばこロッドとして、エアロゾル安定剤としてＣ１６であるパルミチン酸を用いた。実験例１と同じようにたばこ充填物を巻装し添加するパルミチン酸の量を変更した以外は実験例１と同様の寸法のたばこロッドを作製し、実験例１と同様の官能評価及び測定を行った。

＜試験結果＞
試験水準及び結果を表３及び図７に示す。脂質としてパルミチン酸のみを０．１～１．９重量％添加した試験品では、無添加の試験品に対してたばこ感（シガレット様）が増加した。脂質の添加量が少なすぎる条件では、効果は期待できないが、一方で多量に添加した場合には、エアロゾル物性が過剰に安定化し、本来感じることのできる味／香りや体性感覚が感じられなくなると推定される。そのため、たばこ感（シガレット様）は低下する傾向が得られた。本実施例及び比較例の結果より、最も好ましいＣ１６～１８の飽和脂肪酸を含む脂質の添加量の範囲は概ね０．１～１．９重量％であると推察される。

１、１’ 非燃焼加熱式たばこ
１０ たばこロッド部
１１ マウスピース部
１２ チップペーパー
１３ 冷却部
１４ フィルター部
２、５ 電気加熱式デバイス
２０、３０ 電池ユニット
２１、３１ 制御ユニット
２２、３２ 躯体
２３ ヒーター部材
３３ インダクタ
３４ 受け入れチャンバ
３５ サセプタ
３、４ 電気加熱式たばこ製品

Claims (16)

1. たばこ材料とエアロゾル生成基材とを含む、非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物であって、前記たばこ充填物は、脂質を含有するエアロゾル安定剤が添加されており、該エアロゾル安定剤が含有する脂質における、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの混合物から選ばれる１以上の割合が５０重量％以上であり、前記たばこ充填物への前記エアロゾル安定剤の添加量が、たばこ充填物全量の乾燥重量に対して０．１～２．０重量％である、非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
2. 前記たばこ充填物は、たばこ刻みから構成されるたばこ材料の成形体である、請求項１に記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
3. 前記たばこ充填物は、たばこシートから構成されるたばこ材料の成形体である、請求項１に記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
4. 前記たばこ充填物が、顆粒状のたばこ材料から構成される、請求項１に記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
5. 前記エアロゾル安定剤は、前記たばこ材料の成形体の表面に添加されている、請求項２又は３に記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
6. 前記エアロゾル安定剤は、前記たばこ材料に均一に添加されている、請求項２～４のいずれか一項に記載の非燃焼加熱式たばこ用のたばこ充填物。
7. 請求項１～６のいずれか一項に記載のたばこ充填物からなるたばこロッド部と、該たばこロッド部とは反対側の端部を構成するマウスピース部とを有する非燃焼加熱式たばこ。
8. 前記マウスピース部は、冷却部を備える、請求項７に記載の非燃焼加熱式たばこ。
9. 請求項４に記載のたばこ充填物と、当該たばこ充填物が収容された容器と、を備える、
   非燃焼加熱式たばこ。
10. 前記たばこロッド部の内部にたばこ充填物を加熱するサセプタを有する、請求項７又は８に記載の非燃焼加熱式たばこ。
11. ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱式デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、請求項７～９のいずれか一項に記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成され、
    非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部が２５０～４００℃に加熱される、電気加熱式たばこ製品。
12. 前記ヒーター部材が円筒形である、請求項１１に記載の電気加熱式たばこ製品。
13. インダクタと、該インダクタに電力を供給する電池ユニットと、電力の供給を制御する制御ユニットとを備える電気加熱式デバイスと、該インダクタに近接するように挿入される、請求項１０に記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成され、
    非燃焼加熱式たばこのたばこロッド部が２５０～４００℃に加熱される、電気加熱式たばこ製品。
14. 脂質を含有し、該脂質における、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの混合物から選ばれる１以上の割合が５０重量％以上であるエアロゾル安定剤を、成形前又は成形後のたばこ材料に添加する工程を含む、たばこ充填物の製造方法であって、前記たばこ充填物への前記エアロゾル安定剤の添加量が、たばこ充填物全量の乾燥重量に対して０．１～２．０重量％である、たばこ充填物の製造方法。
15. 前記成形前のたばこ材料にエアロゾル安定剤を添加する工程が、前記たばこ材料と前記エアロゾル安定剤を混合する工程である、請求項１４に記載のたばこ充填物の製造方法。
16. 前記成形後のたばこ材料にエアロゾル安定剤を添加する工程が、前記成形後のたばこ材料に前記エアロゾル安定剤を噴霧又は塗布する工程である、請求項１４に記載のたばこ充填物の製造方法。
    
    

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