JP7498043B2 - 金属粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属粉末を製造する方法に関する。
金属粉末は産業において重要な素材であり、その特性に応じて電子材料、触媒、電池の活物質、工具、医薬品、宝飾品など様々な用途に使用されている。
金属粉末の製造方法としては、湿式還元反応、アトマイズ法、プラズマ法など各種の方法があり、金属粉末の用途や許容されるコストなどの観点から、最適の製造方法が選択される。
特許文献1には、溶融金属を保持するタンディッシュと、当該タンディッシュの溶融金属ノズルから落下する溶融金属に向けて高圧流体を噴射する噴霧流体ノズルと、を備えた金属粉末の製造装置において、前記タンディッシュと前記噴霧流体ノズルとを上下に相対移動する昇降装置を備えたことを特徴とする金属粉末の製造装置が開示されている。
また特許文献1には、溶湯逆噴射により溶融金属ノズルの閉塞が生じた場合には、タンディッシュを昇降装置により上方に移動させ、作業者が酸素吹込み管を用いて溶融金属ノズル内に酸素を吹き込み、溶融金属ノズル内に詰まった物質を溶かし出すことが開示されている。溶湯逆噴射とは、アトマイズ法において流体と溶融金属(溶湯)が衝突する部位において、流体の衝突力の一部が上向きに作用して溶湯の一部が上方に飛散する現象であり(特許文献2)、上方に飛散した溶湯(の一部)が溶融金属ノズルに付着・固化してノズルを閉塞させる。閉塞させた物質(金属)へ前記の通り酸素を吹き込むことで、金属を酸化させ、その酸化反応による発熱により閉塞部位やその近傍の金属が融点以上に加熱され、溶けるものと考えられる。
更に特許文献3には、製錬技術により高エントロピー合金の地金を製造したうえで、この地金をガスアトマイズして、いわゆる3Dプリンティングに使用される高エントロピー合金粉末を製造する方法として、以下の方法が開示されている。
原料金属塊を溶融し溶湯を生成する溶融工程と、前記溶湯に酸素ガスを吹き込んでスラグを形成する過酸化工程と、前記溶湯の液面に浮上した前記スラグと前記溶湯とを分離する分離工程と、前記スラグと分離された前記溶湯にアルゴンガスを吹き込んで前記溶湯中のガス成分を脱気する脱気工程と、脱気された前記溶湯を鋳造して鋳込み合金を形成する鋳込み工程と、を備えた鋳込み合金の製造方法において、
前記鋳込み合金は、前記鋳込み合金を真空中で溶融して溶融合金とする工程と、前記溶融合金を流下させ、流下する前記溶融合金に不活性ガスを吹き付けて合金粉末を形成する粉末化工程と、前記合金粉末を層状に展延する粉末展延工程と、展延された前記合金粉末を局所加熱して溶融させた後に凝固させて凝固組織を形成し、前記局所加熱による被加熱領域を前記合金粉末が展延された面に対して平行に移動させて凝固層を形成する凝固層造形工程と、前記粉末展延工程と前記凝固層造形工程とを交互に繰り返すことで複数の層状の凝固層を形成する一連の工程に用いられ、
前記鋳込み合金は、Al、Co、Cr、Fe及びNiをそれぞれ5at%以上30at%以下の原子濃度の範囲で含有すると共に、前記元素のうち少なくとも4種の元素の原子濃度の差が3at%未満の範囲にあり、不可避的不純物として、Pを0.005wt%以下、Siを0.040wt%以下、Sを0.002wt%以下、Snを0.005wt%以下、Sbを0.002wt%以下、Asを0.005wt%以下、Mnを0.050wt%以下、Oを0.001wt%以下、Nを0.002wt%以下の原子濃度の範囲で含有することを特徴とする鋳込み合金の製造方法。
特開平6-220508号公報 特開昭62-151503号公報 特開2016-28821号公報
一般に金属粉末のアトマイズ法による製造では、炉中で原料金属を加熱して金属溶湯とし、この溶湯を前記炉の底部に設けられた出湯ノズルから落下させながら、落下する溶湯の流れに水などの流体を吹き付けて溶湯を粉砕・凝固することで粒子化し、得られた金属粉末を回収する。さらに、所望の粒度分布とするために得られた金属粉末に対して分級プロセスを実施して、最終の金属粉末製品を得る。そして分級の副産物として、最終製品からは排除された金属粉末が生成される。本明細書では最終製品から排除された側の金属粉末を、「分級残」と呼ぶこととする。
なお、金属粉末の流動性を高めるために、有機化合物で粒子表面を被覆する表面処理が行われる場合がある。粉末の流動性が高まっていないと、上記分級プロセスでうまく分級できない場合があるので、前記の表面処理は分級プロセスの前に行うのが一般的である。
そして、分級プロセスで生じた(有機化合物で被覆された)分級残は廃棄処分することが考えられるが、これを溶湯の原料として再利用することができれば、金属粉末の製造コストの点でも環境負荷の点でも有利である。本発明者らは分級残を再利用して溶湯を調製し、アトマイズの連続操業を実施したところ、途中で湯ブレや出湯ノズルの詰まりが発生し、アトマイズの長期連続操業が実施できなかった。なお湯ブレとは、出湯ノズルから出る溶湯の少なくとも一部が鉛直方向に落下せず、横に飛び散る現象を指す。
本発明は、分級残のような有機化合物を含む金属を利用したアトマイズ法による金属粉末の製造方法であって、湯ブレや出湯ノズルの詰まりが抑制され、長期の連続操業が可能な金属粉末の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するため、まず上記の湯ブレや出湯ノズルの詰まりの原因について検討した。出湯ノズルに詰まった物質を分析したところ、これは炭素を多量に含んでいることがわかった。本発明者は、これが、分級残の粒子表面に付着した有機化合物の炭化物であると推測し、これが生じないようにするため、溶湯という高温環境下で有機化合物(の分解物)を酸素と反応させることで二酸化炭素などのガスとして追い出すことを着想し、実際の検証を経て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]原料金属を加熱溶融して溶湯とし、この溶湯を落下させ、落下する溶湯の流れに流体を吹き付けて溶湯を粉砕・凝固して金属粉末を得る金属粉末の製造方法であって、
前記原料金属が、有機化合物を含む金属Mを含み、前記溶湯の温度を、下記条件(1)を満足する温度Tに保持しながら、当該溶湯中に酸化性ガスを吹き込んだ後に溶湯を落下させる、金属粉末の製造方法:
(1)温度Tにおける前記溶湯の構成金属の酸化物の生成自由エネルギーΔGが、温度Tにおける炭素の酸化物の生成自由エネルギーΔGよりも大きい。
[2]原料金属を加熱溶融して溶湯とし、この溶湯を落下させ、落下する溶湯の流れに流体を吹き付けて溶湯を粉砕・凝固して金属粉末を得る金属粉末の製造方法であって、
前記原料金属が、有機化合物を含む金属Mを含み、前記溶湯の温度を、下記条件(1)を満足する温度Tに保持しながら、当該溶湯中に酸化性ガスを吹き込んだ後に溶湯を落下させる、金属粉末の製造方法:
(1)前記溶湯の構成金属の92質量%以上の金属について、温度Tにおける該金属の酸化物の生成自由エネルギーΔGが、温度Tにおける炭素の酸化物の生成自由エネルギーΔGよりも大きい。
[3]前記原料金属のうち、前記金属Mが占める割合が、5~100質量%である、[1]又は[2]に記載の金属粉末の製造方法。
[4]前記金属Mの炭素含有量が、0.01~0.3質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
[5]前記金属Mが、ガスアトマイズ法又は水アトマイズ法で製造されたものである、[1]~[4]のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
本発明によれば、分級残のような有機化合物を含む金属を利用したアトマイズ法による金属粉末の製造方法であって、湯ブレや出湯ノズルの詰まりが抑制され、長期の連続操業が可能な金属粉末の製造方法が提供される。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[金属粉末の製造方法]
本発明の金属粉末の製造方法の実施の形態は、金属の溶湯に流体を吹き付ける、いわゆるアトマイズ法により金属の粉末を得る方法であり、有機化合物を含む金属を溶湯原料の少なくとも一部として利用し、溶湯に流体を吹き付ける前に、特定の温度条件下で、溶湯中に酸化性ガスを吹き込むことを特徴としている。有機化合物は、分級残においては典型的には粒子表面に付着しているが、例えば湿式合成反応(所望の効果を狙って、有機化合物を反応系に添加する場合がある)で金属粉末を製造し、これから分級残が発生した場合には、有機化合物が粒子内部に巻き込まれている場合もあると考えられる。
<溶湯の保持温度T>
本発明では、例えば、特定の原料金属を底部に出湯ノズルを有する通常のアトマイズ用の炉に仕込み、前記原料金属を加熱溶融して溶湯を調製する。前記原料金属は、有機化合物を含む金属Mを含んでいる。なお溶湯は、溶解炉など別の炉で調製して、その溶湯を前記出湯ノズルを有する炉に注湯してもよい。
本発明では、調製した溶湯の温度を、下記条件(1)を満足する温度Tに保持しながら、当該溶湯中に酸化性ガスを吹き込んだ後に溶湯を出湯ノズルから落下させて、アトマイズを実施する。
(1)温度Tにおける前記溶湯の構成金属の酸化物の生成自由エネルギーΔGが、温度Tにおける炭素の酸化物の生成自由エネルギーΔGよりも大きい。
なお前提として、温度Tは溶湯が凝固しない(溶湯の状態を維持する)温度である。「溶湯が凝固しない温度」とは、溶湯が実質的に単一種の金属で構成される場合は、その金属の融点以上の温度である。一方溶湯が複数種の金属で構成される合金溶湯である場合には、その合金の融点以上の温度である。複数種の金属で構成されるが合金を形成していない金属が存在する溶湯の場合には、融点が最も高い金属の融点以上の温度である。
上記条件(1)について、酸化物の生成自由エネルギーΔGは、その数値が小さいほど酸化物が安定であることを示し、反応の起こりやすさの目安とすることができる。ΔGがマイナスの数値であれば、酸化物の生成反応が自発的に起こる。
本発明において、以上説明した高温の温度Tに溶湯を保持してそこに酸化性ガスを吹き込むと、溶湯になる前の金属Mが含んでいた有機化合物(又はその分解物)が酸化し、また有機化合物を構成する炭素鎖の炭素-炭素結合が切断されて二酸化炭素又は一酸化炭素が発生し、溶湯から離脱していくものと考えられる。これにより、炭化物の発生による湯ブレや出湯ノズルの詰まりが防止されるものと考えられる。しかも温度Tにおいては、溶湯の構成金属よりも炭素の方が酸化しやすい状況であるので、前記構成金属の酸化よりも前記の二(一)酸化炭素の発生が優先して起こるものと考えられる。これにより前記構成金属の無用な酸化が防止されるものと考えられる。金属が酸化すると融点が変わり(融点が上昇する場合が多い)、溶湯の粘度も変化し、湯ブレの原因となり得るので、前記の酸化防止は湯ブレ防止の点でも有用である。
本発明において、溶湯が複数の構成金属を含んでいる場合には、必ずしも温度Tにおいて全ての構成金属が上記条件(1)を満足する必要はないが、前記の通り金属の酸化は湯ブレの原因となり得るので、条件(1)を満足する構成金属が多いことが好ましい。具体的には、溶湯の構成金属のうち、前記条件(1)を満足する金属の割合が92質量%以上であることが好ましく、96質量%以上であることがより好ましい。反対に言えば、溶湯の構成金属のうち好ましくは92質量%以上、より好ましくは96質量%以上が条件(1)を満足するように、温度Tを設定することが好ましい。
ここで、溶湯が合金溶湯である場合には、その構成金属の酸化について、合金の酸化物を形成する場合や、そのような酸化物を形成せずに各構成金属単体の酸化物を生成する場合がある。ΔGは前者の場合は合金の酸化物の生成自由エネルギーであり、後者の場合はΔGは複数存在することになり、それぞれΔGと比較する。
条件(1)における炭素の酸化物の生成自由エネルギーΔGについて、炭素と酸素が反応して二酸化炭素が生成する反応の、二酸化炭素の生成自由エネルギーは、いずれの温度においてもおよそ-390kJ/molOで一定である。一方炭素と酸素が反応して一酸化炭素が生成する反応の、一酸化炭素の生成自由エネルギーは、温度の上昇とともに小さくなり、700℃程度で二酸化炭素の生成自由エネルギー(およそ-390kJ/molO)と同じになり、更に温度が上昇すると二酸化炭素の生成自由エネルギーより小さくなる。本発明において、炭素の酸化物の生成自由エネルギーΔGは、700℃以下の温度では-390kJ/molO、700℃より高い温度では一酸化炭素が生成する反応の、一酸化炭素の生成自由エネルギーであるものとする。
上記温度TにおけるΔGとΔGの差(ΔG-ΔG)は、溶湯の構成金属の酸化が効果的に防止される観点から、好ましくは80kJ/molO以上であり、より好ましくは150kJ/molO以上である。上限値は特にないが、前記差(ΔG-ΔG)は好ましくは240~700kJ/molOである。溶湯の構成金属のうち、このような差(ΔG-ΔG)を満足する金属の割合が92質量%以上であることが好ましく、96質量%以上であることがより好ましい。
本発明を好適に適用できる金属(比較的広い温度範囲(特に金属の融点を含み得る低温側)において差(ΔG-ΔG)が前記の好ましい範囲に入る金属)の具体例としては、銀、銅、鉄、ニッケル及び錫が挙げられる。各金属についてΔGがΔGよりも大きい温度は、鉄がおよそ750℃以上、ニッケルがおよそ220℃以上、錫がおよそ650℃以上である。なお、銀および銅はどの温度域においてもΔGがΔGよりも大きい。
また、温度Tは、溶湯の凝固を確実に防止する観点から、溶湯の構成金属の融点より50℃以上高いことが好ましく、炉にかかる負担や熱コストとの兼ね合いから、構成金属の融点より50~350℃高いことがより好ましい。なお溶湯が合金の溶湯の場合には前記「構成金属の融点」は合金の融点である。
<金属M>
加熱溶融され温度Tで保持される原料金属は、有機化合物を含む金属Mを含む。この金属Mの例としては、粉末の流動性向上などのために有機化合物で表面処理された金属粉末や、樹脂が付着ないしコーティング等された金属塊といった、表面に有機化合物が付着した金属が挙げられる。
前記有機化合物で表面処理された金属粉末は、代表的には[発明が解決しようとする課題]の項で説明した、ガスアトマイズ法や水アトマイズ法で製造され、有機化合物で表面処理がされた金属粉末のうち分級で排除された分級残であり、これにおける有機化合物は、例えば、炭素数が2~36のアルコール、アミン、脂肪酸又はチオールである。また表面処理の態様の例としては、金属粉末と(固体又は液体である)有機化合物とを混合することで実施する態様や、金属粉末と有機化合物とを液中で混合することで実施する態様や、金属粉末と有機化合物とを反応させて、有機化合物を金属粉末に化学的に結合させることで実施する態様がある。
上記樹脂が付着ないしコーティング等された金属塊の例としては、廃棄された電気製品や電子部品をリサイクルして製造したものが挙げられる。これらは「ナゲット」などと呼称されているが、安価であることから溶湯の調製原料として好適である。樹脂は有機化合物であり、この金属塊を溶湯の調製原料として使用した場合にも湯ブレや出湯ノズルの詰まりが発生し得るが、本発明の適用により、これらの発生を抑制して、アトマイズの長期の連続操業が可能である。
以上説明した、有機化合物を含む金属Mの炭素含有量は、前記有機化合物の量の指標となるものであり、特に制限されないが、例えば0.01~0.3質量%であり、湯ブレ等が発生しやすく本発明を適用することでこれらを好適に抑制できることから、好ましくは0.02~0.2質量%である。金属M中の有機化合物量は(炭素換算で)代表的にはこの程度であるので、本発明の実施により発生する二酸化炭素等のガスの量は少量である。
本発明の金属粉末の製造方法の実施の形態において、原料金属としては、以上説明した有機化合物を含む金属Mだけを用いてもよいし、これと有機化合物を実質的に含まない金属を混合したものでもよい。溶湯原料における金属Mの使用割合(原料金属全体に占める割合)は、金属Mの使用によるコストメリットの観点から好ましくは5~100質量%であり、より好ましくは10~100質量%であり、更に好ましくは30~100質量%である。
<酸化性ガスの吹き込み>
上記で説明した温度Tに溶湯を保持しながら、溶湯中に酸化性ガスを吹き込むことで、上記の通り、有機化合物(又はその分解物)が二酸化炭素等のガスとなって、溶湯から離脱していくものと考えられる。これにより、分級残のような有機化合物を含む金属Mを溶湯原料として利用したアトマイズにおいて、湯ブレや出湯ノズルの詰まりの発生が抑制され、長期の連続操業が可能となる。
酸化性ガスは酸素を含む。酸化性ガスは酸素100%のガスでもよいし、酸素と他のガスの混合ガスでもよい。他のガスは酸素の酸化作用を邪魔せず、溶湯に対して不活性であれば特に制限されない。なお溶湯を調製したり出湯する炉の素材としては耐熱性や原料金属との反応性の観点からカーボンが使用される場合(カーボンるつぼ)もあるが、この場合に酸素100%のガスを使用すると、ガスによって炉の内面が摩耗する可能性がある。酸化性ガスは、有機化合物を溶湯から除去する観点と、炭素を含む素材で形成された炉を使用する場合にその摩耗を防止する観点から、酸素を5~50体積%含むことが好ましく、8~40体積%含むことがより好ましい。大気はこの条件を満たし、また安価であることから非常に好ましい。
酸化性ガスの使用量は、有機化合物を全て除去する観点から、金属Mが含む有機化合物全量を酸化するのに必要な理論量を100%としたときに、100%以上の量とすることが好ましい。なお、溶湯の構成金属が、例えば銀などの非常に酸化されにくい金属である場合には、前記理論量に対して過剰量の酸化性ガスを吹き込めば、有機化合物の除去が万全となる(酸化性ガスの使用量の上限は特に無い)。一方前記構成金属が(温度Tにおいて炭素よりは酸化されにくいものの)酸化されやすい金属である場合には、前記理論量を100%としたときに、80~120%の量の酸化性ガスを吹き込むことが好ましく、90~110%の量の酸化性ガスを吹き込むことがより好ましい。湯ブレや出湯ノズルの詰まりの抑制を重視する場合は吹き込み量を理論量の100%以上とすることが望ましく、構成金属の酸化防止を重視する場合は吹き込み量を理論量の100%以下とすることが望ましい。
なお、前記の理論量は、予め金属Mの炭素含有量を測定しておき、この炭素を全て一酸化炭素又は二酸化炭素にするのに必要な量として求められるものとする。上述の通り、一酸化炭素の生成自由エネルギーは、温度の上昇とともに小さくなり、700℃程度で二酸化炭素の生成自由エネルギーと同じになり、更に高温では二酸化炭素の生成自由エネルギーより小さくなる。以上から、前記の理論量は、温度Tが700℃以下の場合は金属Mが含む炭素の全てを二酸化炭素に変換するのに必要な量とし、温度Tが700℃を超える場合には金属Mが含む炭素の全てを一酸化炭素に変換するのに必要な量とする。
溶湯の調製及び酸化性ガスの吹き込みは、いずれも、大気圧下、加圧下、減圧下のいずれの条件で実施してもよい。コストの点からは大気圧下での実施が好ましい。
<流体の吹き付け>
所定温度Tで酸化性ガスを吹き込まれた溶湯を、例えば炉の出湯ノズルから落下させ、落下する溶湯の流れに流体を吹き付けることで、溶湯を粉砕・凝固して金属粉末を得る。
なお酸化性ガス吹込み後に当該ガスが溶湯の上部の空間に存在する場合、これが溶湯に溶け込んで金属酸化物を形成する場合があるので、溶湯の上部空間を非酸化性ガス(例:He、ArやNなどの不活性ガス、HやCOなどの還元性ガス)でパージした後に溶湯を落下させてもよい。
落下する溶湯の流れに吹き付ける流体としては、水や、溶湯の融点未満の温度のガスが挙げられる。ガスは溶湯に対して不活性である必要がある。
流体を吹き付ける際の溶湯の温度は、粘度を低くして流体による粉砕力を高めて微細な金属粉末を得る観点と、炉にかかる負担や熱コストの観点から、溶湯の融点より50~800℃高いことが好ましく、100~700℃高いことがより好ましい。なお溶湯の融点について、溶湯が合金溶湯である場合は、溶湯の融点はその合金の融点であるものとする。
流体の吹き付けは、大気雰囲気で行ってもよいが、溶湯及び形成される金属粉末の酸化を抑制する観点から、非酸化性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。非酸化性ガス雰囲気としては、例えば、He、ArやNなどの不活性ガス、HやCOなどの還元性ガスが挙げられる。
<その他の工程>
本発明の金属粉末の製造方法においては、以上説明した流体の吹き付けにより得られた金属粉末に対して、以下の任意工程を実施してもよい。
(固液分離工程)
流体が水などの液体である場合には、金属粉末が液体中に分散したスラリーが得られる。このスラリーを固液分離することにより、金属粉末を回収する。固液分離の手法としては従来公知のものを特に制限なく採用することができ、例えばフィルタープレスなどを用いて前記スラリーを加圧ろ過すればよい。なお回収した金属粉末は洗浄してもよい。
(乾燥工程)
固液分離工程で得られた金属粉末を乾燥させてもよい。乾燥は室温(25℃)で実施してもよく、乾燥速度向上の観点から高温(40~120℃)で実施してもよい。また乾燥は大気圧下で実施してもよいが、乾燥速度向上の観点から、大気圧に対して-0.05MPa以下の減圧環境で乾燥を実施してもよい。真空環境(-0.095MPa以下)で乾燥を実施してもよい。
(解砕工程、表面処理工程、分級工程)
金属粉末を解砕したり分級したりして、その粒度分布を調整してもよい。解砕と同時に、又は解砕の前後に、金属粉末を有機化合物で表面処理してもよい。有機化合物の例としては、炭素数2~36のアルコール、アミン、脂肪酸及びチオールが挙げられる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
[実施例1]
<分級残(金属M)の発生>
ショット銀を大気雰囲気中において1600℃に加熱して溶解した溶湯をカーボンるつぼ底部の出湯ノズルから落下させながら、水アトマイズ装置により大気雰囲気中において水圧103MPa、水量160L/分でアトマイズ水を吹き付けて急冷凝固させた。得られたスラリーを固液分離し、固形物を水洗し、乾燥した。
乾燥した固形物に、表面処理剤としてオレイン酸(固形物100質量部に対して0.06質量部)を加えて、固形物を解砕しながら、固形物に表面処理剤を混合して、オレイン酸で表面処理された銀粉を得た。
そして表面処理された銀粉を分級して、微粉側の粉として平均粒子径が3μmの銀粉を得た。なお前記平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製のへロス粒度分布測定装置(HELOS&RODOS(気流式の分散モジュール)))を使用して、分散圧5barで測定した、体積基準の累積50%粒子径である。
一方分級の副産物として、粗粉側の粒径の大きな銀粉(分級残(金属M))も発生した。この分級残の炭素含有量は、0.08質量%だった。炭素含有量は、炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製のEMIA-22V)により測定した。
<分級残の再利用水アトマイズ>
ショット銀25.675kgと、上記の操業で発生した分級残(金属M)14.325kgとをカーボンるつぼに仕込み(原料金属全体に占める金属Mの割合は約35.8質量%)、大気雰囲気中において1260℃に加熱して溶融した。この溶湯の温度を1260℃に保持しながら(銀の融点は962℃)、耐熱性のスリーブを利用して、溶湯中の、溶湯の深さの半分より深い箇所に流量2L/minで空気を15分間吹き込んだ。ここで使用したカーボンるつぼは、上記<分級残の発生>で使用したカーボンるつぼから取り換えた新品である。また溶湯の温度は、光ファイバー式温度計で実測した。
また、空気の吹き込みによる酸素の供給量は、上記分級残に含まれる炭素(0.08質量%)の全てが一酸化炭素に変換されると仮定した場合の、その変換に必要な酸素の量に対して大過剰な量である。また1260℃における、銀の酸化物の生成自由エネルギーΔGと炭素の酸化物の生成自由エネルギーΔGとの差(ΔG-ΔG)は、約500kJ/molOである。なお、1260℃におけるΔGは約0kJ/molOで、1260℃における炭素の酸化物の生成自由エネルギーΔGは、一酸化炭素の生成自由エネルギーであって、約-500kJ/molOである。
空気の吹き込みを停止し、溶湯の上部の空間にNガスを流量10L/minで吹き込み、このNパージを5分実施した後、以下の水アトマイズを開始した。
溶湯(温度:1260℃)をカーボンるつぼ底部の出湯ノズルから落下させながら、水アトマイズ装置により大気雰囲気中において水圧103MPa、水量160L/分でアトマイズ水を吹き付けて急冷凝固させた。得られたスラリーは、上記と同様に固液分離、水洗、乾燥、解砕しながらの表面処理、そして分級した。
以上の一連の操業を、カーボンるつぼを取り換えずに同じもので繰り返し実施したところ(ショット銀と分級残(金属M)の使用量は毎回25.675kgと14.325kgとした)、4回(4バッチ)実質的な問題なく実施することができた(わずかな湯ブレはあったものの、すべての溶湯をカーボンるつぼ底部の出湯ノズルから出し切ることができた)。
[実施例2~4]
ショット銀と分級残(金属M)の使用量を下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、同じカーボンるつぼを使用しての水アトマイズ繰り返し操業を実施した。結果、いずれの例においても、4回実質的な問題なく水アトマイズの操業を実施することができた。
[比較例1]
ショット銀の使用量を26.1kg、分級残(金属M)の使用量を13.9kgとし、溶湯中への空気吹込みを実施せずに直ちに水アトマイズ(溶湯温度:1260℃、水圧:150MPa、水量:160L/分)を実施した以外は、実施例1と同様にして、同じカーボンるつぼを使用しての水アトマイズ繰り返し操業を実施した。その結果、4回目にして湯ブレ及び出湯ノズルの詰まりが発生した。
Figure 0007498043000001

Claims (4)

  1. 原料金属を加熱溶融して溶湯とし、この溶湯を落下させ、落下する溶湯の流れに流体を吹き付けて溶湯を粉砕・凝固して金属粉末を得る金属粉末の製造方法であって、
    前記原料金属が、表面処理により炭素を含む有機化合物で被覆され、銀、銅、鉄、ニッケルおよび錫から選択される金属粉末のうち分級により排除された分級残である金属Mを含み、前記金属Mにおける前記有機化合物に由来する炭素含有量が0.01~0.3質量%であり、
    前記溶湯の温度を、下記条件(1)を満足する温度Tに保持しながら、当該溶湯中に酸化性ガスを吹き込んだ後に溶湯を落下させる、金属粉末の製造方法:
    (1)温度Tにおける前記溶湯の構成金属の酸化物の生成自由エネルギーΔGMが、温度Tにおける炭素の酸化物の生成自由エネルギーΔGCよりも大きい。
  2. 原料金属を加熱溶融して溶湯とし、この溶湯を落下させ、落下する溶湯の流れに流体を吹き付けて溶湯を粉砕・凝固して金属粉末を得る金属粉末の製造方法であって、
    前記原料金属が、表面処理により炭素を含む有機化合物で被覆され、銀、銅、鉄、ニッケルおよび錫から選択される金属粉末のうち分級により排除された分級残である金属Mを含み、前記金属Mにおける前記有機化合物に由来する炭素含有量が0.01~0.3質量%であり、
    前記溶湯の温度を、下記条件(1)を満足する温度Tに保持しながら、当該溶湯中に酸化性ガスを吹き込んだ後に溶湯を落下させる、金属粉末の製造方法:
    (1)前記溶湯の構成金属の92質量%以上の金属について、温度Tにおける該金属の酸化物の生成自由エネルギーΔGMが、温度Tにおける炭素の酸化物の生成自由エネルギーΔGCよりも大きい。
  3. 前記原料金属のうち、前記金属Mが占める割合が、5~100質量%である、請求項1又は2に記載の金属粉末の製造方法。
  4. 前記金属Mが、ガスアトマイズ法又は水アトマイズ法で製造されたものである、請求項1~3のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
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