以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る軌道生成装置について説明する。図1に示すように、この軌道生成装置1は、自動運転可能な四輪車両3(以下「自車両3」という)に適用されたものである。なお、本実施形態では、自車両3が移動体に相当する。この軌道生成装置1では、自車両3の自動運転制御を実行するために、後述するアルゴリズムによって、自車両3の未来の走行軌道が決定される。
この軌道生成装置1は、ECU2を備えており、このECU2には、情報検出装置4、原動機5及びアクチュエータ6が電気的に接続されている。この情報検出装置4は、カメラ、ミリ波レーダ、LIDAR、レーザーレーダ、ソナー、GPS、各種のセンサ、及び、ITSやVTSと呼ばれるインフラからの情報受信装置などで構成されている。
情報検出装置4は、自車両3の位置及び自車両3の進行方向の周辺情報を検出してECU2に出力する。この場合、周辺情報としては、車道、歩道、横断歩道、信号、車道と歩道の境界及び交通参加者(歩行者、他の車両、障害物)の情報などが含まれている。なお、本実施形態では、情報検出装置4が周辺状況認識部に相当する。
原動機5は、例えば、電気モータなどで構成されており、自車両3の未来の走行軌道が決定されたときに、自車両3がこの走行軌道で走行するように、ECU2によって原動機5の出力が制御される。
また、アクチュエータ6は、制動用アクチュエータ及び操舵用アクチュエータなどで構成されており、自車両3の未来の走行軌道が決定されたときに、自車両3がこの走行軌道で走行するように、ECU2によってアクチュエータ6の動作が制御される。
一方、ECU2は、CPU、RAM、ROM、I/Oインターフェース及び各種の電気回路(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、後述するように、上述した情報検出装置4からの周辺情報に基づいて、自車両3以外の交通参加者(例えば、後述する交通参加者TP1)の行動を予測するとともに、交通参加者の行動の予測結果、自車両3の位置及び自車両3の周辺の交通環境などに基づいて、自車両3の未来の走行軌道を決定する。
なお、本実施形態では、ECU2が、周辺状況認識部、予測軌道生成部、干渉度合いパラメータ算出部、修正量決定部及び演算処理装置に相当する。
次に、図2を参照しながら、本実施形態の軌道生成装置1の機能的な構成について説明する。この軌道生成装置1は、自車両3の自動運転制御を実行するために、以下に述べるアルゴリズムによって、自車両3の走行軌道を決定するものである。
また、以下の説明では、自車両3の走行に対して干渉する対象を「干渉対象」という。この場合、後述するように、自車両3以外の交通参加者、及び交通環境(道路環境や信号の状態など)が干渉対象に相当する。
図2に示すように、軌道生成装置1は、交通参加者検出部10、行動予測部11、第1~第3評価関数算出部21~23及び軌道決定部30を備えている。これらの要素10~11,21~23,30は、具体的には、ECU2によって構成されており、これらの要素10~11,21~23,30での演算処理は、所定の制御周期ΔT(例えば5msec)で実行される。
なお、本実施形態では、第1~第3評価関数算出部21~23が干渉度合いパラメータ算出部に相当し、軌道決定部30が予測軌道生成部及び修正量決定部に相当する。
まず、交通参加者検出部10では、情報検出装置4からの周辺情報に基づき、所定の機械学習アルゴリズム(例えば、DNN及びCNNなどのニューラルネットワークを適用したアルゴリズム)を用いて、交通参加者の現在検出位置W_vj(k)が検出/算出される。
この場合、現在検出位置W_vj(k)における記号「(k)」は、制御時刻を表しており、以下の説明では、この記号「(k)」などを適宜省略する。また、現在検出位置W_vj(k)における添え字「j」は、存在する交通参加者の番号/数を表している。すなわち、交通参加者が1個の場合には、j=1となり、交通参加者がn(nは複数)個の場合には、j=1~nとなる。
以下、図3に示すように、他の車両である交通参加者TP1のみが自車両3の前方に存在する場合(すなわちj=1の場合)を例にとって説明する。ここで、自車両3の座標系は、後述するように、自車両3の現在位置の中心を原点とし、自車両3の進行方向及び左方向をX軸及びY軸とする直交2次元座標系として規定される。また、図中のZ_m11,Z_m12,Z_m13は、自車両3の後述する予測位置である。
一方、交通参加者TP1の座標系は、交通参加者TP1の中心を原点とし、交通参加者TP1の進行方向及び横方向をX_v軸及びY_v軸とし、X_v軸のX軸に対する傾きをθ_v1とする直交2次元座標系として規定される。
この直交2次元座標系において、交通参加者TP1のX_v座標値をx_v1とし、Y_v座標値をy_v1とした場合、交通参加者TP1の現在検出位置W_v1(k)は、3つの値[x_v1(k),y_v1(k),θ_v1(k)]を要素とする値として算出される(ただし、x_v1(k)=y_v1(k)=0)。また、図3中の交通参加者TP1の周囲における1点鎖線で示すラインは、後述するリスクポテンシャルを表している。
行動予測部11では、交通参加者検出部10による現在検出位置W_vj(k)の検出結果に基づき、所定の機械学習アルゴリズム(例えば、DNN及びCNNなどのニューラルネットワークを適用したアルゴリズム)を用いて、交通参加者TP1の現在位置W_v1(k:k)と、5個の予測位置W_v1(k:k+km11),W_v1(k:k+km12),W_v1(k:k+km13),W_v1(k:k+km2),W_v1(k:k+km3)とが算出される。
この場合、予測位置W_v1(k:k+km11)の括弧内における「:」の左側の値kは、現在の制御時刻を表しており、「:」の右側の値k+km11は、予測時刻を表している。また、現在の制御時刻kと予測時刻k+km13との間隔、予測時刻k+km13と予測時刻k+km2の間隔、及び、予測時刻k+km2と予測時刻k+km3の間隔は、互いに同一に設定されている。
さらに、現在の制御時刻kと予測時刻k+km11との間隔、予測時刻k+km11と予測時刻k+km12の間隔、及び、予測時刻k+km12と予測時刻k+km13の間隔は、互いに同一に設定されている。すなわち、2つの予測時刻k+km11,k+km12は、現在の制御時刻kと予測時刻k+km13の間を3等分したときの、現在の制御時刻kと予測時刻k+km13の間における2つの時刻に相当する。また、現在位置W_v1(k:k)は、現在検出位置W_v1(k)に設定される。
以上のように、行動予測部11では、交通参加者が1個の場合、交通参加者の6個の位置(現在位置及び5個の予測位置)が算出され、交通参加者がn個の場合には、n×6個の位置が算出される。この点は、前述した各要素11,21~23,30,40の演算においても同様である。以下、交通参加者が1個の場合を例にとって説明する。
なお、行動予測部11において、所定の機械学習アルゴリズに代えて、後述する第2実施形態の手法を用いて、5個の予測位置W_v1(k:k+km11),W_v1(k:k+km12),W_v1(k:k+km13),W_v1(k:k+km2),W_v1(k:k+km3)を算出してもよい。また、行動予測部11において、4個以下又は6個以上の予測位置を算出するように構成してもよい。
次に、本実施形態の軌道生成装置1における自車両3の未来の走行軌道(以下「自車軌道」という)の定義及びその決定原理について説明する。
例えば、図4に示すように、自車両3が左車線を走行中、歩行者である交通参加者TP2が左前方に存在し、この交通参加者TP2が左車線側に向かって歩行している場合、交通参加者TP2との干渉を回避するために、自車両3が右車線に移動するように、自車軌道を決定する必要がある。それと同時に、自車両3が右車線から右外側にはみ出さないように、自車軌道を決定する必要がある。
また、例えば、図5に示すように、自車両3が左車線を走行中、図4と同様の交通参加者TP2に加えて、歩行者である交通参加者TP3が右車線内に存在する場合、交通参加者TP2との干渉を回避するために、自車両3が右車線側に移動した後、交通参加者TP3との干渉を回避するために、自車両3が左車線側に移動するように、自車軌道を決定する必要がある。
以上の条件を満たすために、本実施形態では、図6に示すように、自車軌道が3つの円弧状の第1~第3予測軌道を組み合わせたものとして決定される。最初に、第1予測軌道について説明する。まず、自車両3の現在位置の中心を原点とし、自車両3の前方をX軸とし、自車両3の左方をY軸とするX-Y座標系を定義する。
そして、このX-Y座標系における原点から第1予測時間T_m1後の位置を第1予測位置Z_m1とし、原点から第1予測位置Z_m1までの自車軌道を円弧状の第1予測軌道と定義する。ここで、自車両3の現在速度をV_egoとした場合、第1予測軌道の距離L_m1は、下式(1)のように定義される。
さらに、第1予測軌道の曲率半径をR_m1とした場合、第1予測軌道の回転角度θ_m1は、下式(2)のように定義される。この回転角度θ_m1は、Y軸と後述するY’軸の間の角度に相当する。
また、原点から第1予測位置Z_m1までの自車軌道を3等分したときの予測位置を、原点から第1予測位置Z_m1に向かって順に、3つの予測位置Z_m11,Z_m12,Z_m13(=Z_m1)とする。その場合、予測位置Z_m11のX座標値x_m11及びY座標値y_m11は、下式(3),(4)のように定義される。
また、予測位置Z_m12のX座標値x_m12及びY座標値y_m12は、下式(5),(6)のように定義される。
さらに、予測位置Z_m13のX座標値x_m13及びY座標値y_m13は、下式(7),(8)のように定義される。
以上の式(1)~(8)が第1予測軌道のモデル式(モデル軌道)に相当する。
次に、第2予測軌道について説明する。まず、第1予測位置Z_m1(=予測位置Z_m13)を原点とし、第1予測軌道の第1予測位置Z_m1における接線方向をX’軸とし、この接線と直交する方向をY’軸とするX’-Y’座標系を定義する。
さらに、このX’-Y’座標系における原点すなわち第1予測位置Z_m1から第2予測時間T_m2後の位置を第2予測位置Z_m2とし、第1予測位置Z_m1から第2予測位置Z_m2までの自車軌道を円弧状の第2予測軌道と定義する。この場合、第2予測軌道の距離L_m2は、下式(9)のように定義される。
さらに、第2予測軌道の曲率半径をR_m2とした場合、第2予測軌道の回転角度θ_m2は、下式(10)のように定義される。この回転角度θ_m2は、Y’軸と後述するY”軸の間の角度に相当する。
そして、第2予測位置Z_m2のX’座標値x’_m2及びY’座標値y’_m2は、下式(11),(12)のように定義される。
さらに、第2予測位置Z_m2のX座標値x_m2及びY座標値y_m2は、下式(13),(14)のように定義される。
以上の式(9)~(14)が第2予測軌道のモデル式(モデル軌道)に相当する。
次に、第3予測軌道について説明する。まず、第2予測位置Z_m2を原点とし、第2予測軌道の第2予測位置Z_m2における接線方向をX”軸とし、この接線と直交する方向をY”軸とするX”-Y”座標系を定義する。
さらに、このX”-Y”座標系における原点(すなわち第2予測位置Z_m2)から第3予測時間T_m3後の位置を第3予測位置Z_m3とし、第2予測位置Z_m2から第3予測位置Z_m3までの自車軌道を円弧状の第3予測軌道と定義する。この場合、第3予測軌道の距離L_m3は、下式(15)のように定義される。
さらに、第3予測軌道の曲率半径をR_m3とした場合、第3予測軌道の回転角度θ_m3は、下式(16)のように定義される。
そして、第3予測位置Z_m3のX”座標値x”_m3及びY”座標値y”_m3は、下式(17),(18)のように定義される。
さらに、第3予測位置Z_m3のX座標値x_m3及びY座標値y_m3は、下式(19),(20)のように定義される。
以上の式(15)~(20)が第3予測軌道のモデル式(モデル軌道)に相当する。
以上のように、第1予測軌道は、第2予測軌道及び第3予測軌道よりも短い3つの予測軌道を組み合わせたものとして決定される。具体的には、現在位置から予測位置Z_m11までの軌道と、予測位置Z_m11から予測位置Z_m12までの軌道と、予測位置Z_m12から予測位置Z_m13までの軌道を組み合わせたものとして、第1予測軌道が決定される。
これは、第1予測軌道は、第2予測軌道及び第3予測軌道と比べて、自車両3との距離が近いことに起因して、干渉対象との干渉をより確実に回避できるように、予測軌道を生成する必要があるので、それを実現するためである。なお、第1予測軌道を2つ又は4つ以上の予測軌道を組み合わせたものとして決定してもよい。
次に、前述した第1~第3評価関数算出部21~23について説明する。これらの第1~第3評価関数算出部21~23では、以上のように決定された5つの予測位置Z_m11,Z_m12,Z_m13,Z_m2,Z_m3を用いて、自車両3と干渉対象との干渉度合いを表すものとして、第1評価関数J_1、第2評価関数J_2及び第3評価関数J_3がそれぞれ算出される。
ここで、第1評価関数J_1、第2評価関数J_2及び第3評価関数J_3は、後述するように、5つの予測位置Z_m11,Z_m12,Z_m13,Z_m2,Z_m3の算出に用いられるので、第1評価関数J_1、第2評価関数J_2及び第3評価関数J_3の今回値は、5つの予測位置Z_m11,Z_m12,Z_m13,Z_m2,Z_m3の前回値に基づいて算出されることになる。
なお、以下の説明では、5つの予測位置Z_m11,Z_m12,Z_m13,Z_m2,Z_m3をまとめて「予測位置Z_mi」と表記する。すなわち、「予測位置Z_mi」の添え字iは、i=11~13,2,3を表すものである。
以下、第1~第3評価関数算出部21~23において、第1~第3評価関数J_1~J_3の算出に用いる手法及びその原理について説明する。
まず、リスクポテンシャルR_p_mi_vj_vの算出手法について説明する。このリスクポテンシャルR_p_mi_vj_vは、自車両3が予測位置Z_miにあり、かつ交通参加者などの干渉対象が予測位置W_vjにあると想定した場合の、自車両3と干渉対象との干渉度合いを表すものである。
まず、x座標偏差dx_mi_vj及びy座標偏差dy_mi_vjが、下式(21),(22)により算出される。
これらの偏差dx_mi_vj,dy_mi_vjは、自車両3の予測位置Z_miと干渉対象の予測位置W_vjとの偏差を表している。この場合、例えば、自車両3の予測位置Z_mi=Z_m11である場合、これと干渉対象の予測位置W_vj(k:k+km11)との偏差が算出される。
次いで、変換x座標偏差dx_mi_vj_v及び変換y座標偏差dy_mi_vj_vが、下式(23),(24)により算出される。これらの偏差dx_mi_vj_v,dy_mi_vj_vは、上記2つの偏差dx_mi_vj,dy_mi_vjを、干渉対象の座標系に変換したものである。
次に、変換x座標偏差dx_mi_vj_vに応じて、図7に示すマップを検索することにより、x方向リスクポテンシャルR_px_mi_vj_vが算出される。このx方向リスクポテンシャルR_px_mi_vj_vのマップ値の横幅及び形状などは、干渉対象の種類(例えば、歩行者、自転車、4輪車両、オートバイなど)に応じて設定される。
さらに、変換y座標偏差dy_mi_vj_vに応じて、図8に示すマップを検索することにより、y方向リスクポテンシャルR_py_mi_vj_vが算出される。このy方向リスクポテンシャルR_py_mi_vj_vのマップ値の横幅及び形状なども、x方向リスクポテンシャルR_px_mi_vj_vのマップ値と同様に、干渉対象の種類(例えば、歩行者、自転車、4輪車両、オートバイなど)に応じて設定される。
そして、下式(25)に示すように、x方向リスクポテンシャルR_px_mi_vj_vとy方向リスクポテンシャルR_py_mi_vj_vの積として、リスクポテンシャルR_p_mi_vj_vが算出される。
以上の手法により、リスクポテンシャルR_p_mi_vj_vは、自車両3と干渉対象との干渉度合が大きくなるほど、より大きい値になるように算出される。
次に、右側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_mi及び左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbl_miの算出手法について説明する。これらの2つのリスクポテンシャルR_p_rbr_mi,R_p_rbl_miは、自車両3が予測位置Z_miにあると想定した場合の、自車両3が走路逸脱を生じる可能性を表す値である。
まず、自車両3の走路の右側境界線LR及び左側境界線LLが、例えば図9に示すようになっている場合、これらの境界線LR,LLは、下式(26),(27)に示す2つの1次関数として定義することができる。
上式(26)におけるa_rbr,b_rbrは、右側境界線LRを規定するパラメータであり、上式(27)におけるa_rbl,b_rblは、左側境界線LLを規定するパラメータである。これらの4つのパラメータa_rbr,b_rbr,a_rbl,b_rblは、前述した情報検出装置4の検出結果に基づき、リアルタイムで算出される。
次に、右側走路境界関数σ_r及び左側走路境界関数σ_lを、下式(28),(29)に示すように定義する。
これらの式(28),(29)は、上式(26),(27)の左辺を右辺に移項したものに相当する。したがって、右側走路境界関数σ_rが正値である場合、自車両3の中心が右側境界線LRよりも左側の走路内の領域に存在し、右側走路境界関数σ_rが負値である場合、自車両3の中心が右側境界線LRよりも右側の走路外の領域に存在することになる。
これと同様に、左側走路境界関数σ_lが正値である場合、自車両3の中心が左側境界線LLよりも左側の走路外の領域に存在し、左側走路境界関数σ_lが負値である場合、自車両3の中心が左側境界線LLよりも右側の走路内の領域に存在することになる。
以上の原理に基づき、右側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbrは、下式(30),(31)により算出され、左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rblは、下式(32),(33)により算出される。
以上の式(30)~(33)におけるσ_mrgは、自車両3が走路逸脱を確実に回避できるようにするためのマージン(正の所定値)である。ここで、右側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbrと右側走路境界関数σ_rの関係、及び、左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rblと左側走路境界関数σ_lの関係を図式化した場合、図10,11に示すものとなる。
次に、以上と同じ原理により、自車両3の予測位置Z_miにおける右側走路境界関数σ_r_mi及び左側走路境界関数σ_l_miを、下式(34),(35)に示すように定義する。
さらに、前述した原理により、自車両3の予測位置Z_miにおける右側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_miは、下式(36),(37)により算出され、自車両3の予測位置Z_miにおける左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbl_miは、下式(38),(39)により算出される。
なお、自車両3が中央分離帯又はセンターラインが存在する道路を走行中の場合には、以上と同じ手法により、中央分離帯又はセンターラインに対する走路境界リスクポテンシャルを算出することが可能である。
次に、前述した第1評価関数算出部21における第1評価関数J_1の算出手法について説明する。この第1評価関数算出部21の算出に用いる各種パラメータの添え字「i」は、i=11~13を表すものである。
第1評価関数算出部21では、前述したリスクポテンシャルR_p_mi_vj_v、右側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_mi及び左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbl_miの算出手法及び算出原理に基づき、以下に述べるように、軌道決定部30からの3つの印加予測位置Z_mi_rを用いて、第1評価関数J_1が算出される。これらの印加予測位置Z_mi_rは、後述するように、前述した3つの予測位置Z_miに後述する参照入力rを印加したものである。
第1評価関数算出部21では、予測位置Z_miに参照入力rを印加した印加予測位置Z_mi_rが用いられる関係上、以下の説明では、印加予測位置Z_mi_rと同様に、前述した各種パラメータの最後に「_r」を付加したものを用いる。この点は、第2評価関数算出部22及び第3評価関数算出部23においても同様である。
第1評価関数算出部21では、まず、下式(40),(41)により、現在の制御時刻でのx座標偏差dx_mi_vj_r(k:k)及びy座標偏差dy_mi_vj_r(k:k)が算出される。
上式(40)のx_mi_rは、印加予測位置Z_mi_rのX座標値であり、x_vj(k:k)は、交通参加者などの干渉対象の現在位置W_vj(k:k)のX座標値である。また、上式(41)のy_mi_rは、印加予測位置Z_mi_rのY座標値であり、y_vj(k:k)は、干渉対象の現在位置W_vj(k:k)のY座標値である。
次いで、下式(42),(43)により、予測時刻k+kmiでのx座標偏差dx_mi_vj_r(k:k+kmi)及びy座標偏差dy_mi_vj_r(k:k+kmi)が算出される。
上式(42)のx_vj(k:k+kmi)は、干渉対象の予測位置W_vj(k:k+kmi)のX座標値であり、上式(43)のy_vj(k:k+kmi)は、干渉対象の予測位置W_vj(k:k+kmi)のY座標値である。
さらに、下式(44),(45)により、現在の制御時刻での変換x座標偏差dx_mi_vj_v_r(k:k)及び変換y座標偏差dy_mi_vj_v_r(k:k)が算出される。
これらの偏差dx_mi_vj_v_r,dy_mi_vj_v_rは、上記の自車両3の座標系における偏差dx_mi_vj_r,dy_mi_vj_rを、干渉対象の座標系に変換した値に相当する。
次に、下式(46),(47)により、予測時刻k+kmiでの変換x座標偏差dx_mi_vj_v_r(k:k+kmi)及び変換y座標偏差dy_mi_vj_v_r(k:k+kmi)が算出される。
これらの偏差dx_mi_vj_v_r(k:k+kmi),dy_mi_vj_v_r(k:k+kmi)は、上記の自車両3の座標系における偏差dx_mi_vj_r(k:k+kmi),dy_mi_vj_r(k:k+kmi)を、干渉対象の座標系に変換した値に相当する。
さらに、前述した変換x座標偏差dx_mi_vj_v_r(k:k)に応じて、図示しないマップを検索することにより、x方向リスクポテンシャルR_px_mi_vj_v_r(k:k)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図7と同様のものが用いられる。
また、変換y座標偏差dy_mi_vj_v_r(k:k)に応じて、図示しないマップを検索することにより、y方向リスクポテンシャルR_py_mi_vj_v_r(k:k)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図8と同様のものが用いられる。
次いで、下式(48)により、現在の制御時刻kでのリスクポテンシャルR_p_mi_vj_v_r(k:k)が算出される。
さらに、前述した変換x座標偏差dx_mi_vj_v_r(k:k+kmi)に応じて、x方向リスクポテンシャルR_px_mi_vj_v_r(k:k)の算出に用いたマップを検索することにより、x方向リスクポテンシャルR_px_mi_vj_v_r(k:k+kmi)が算出される。
また、前述した変換y座標偏差dy_mi_vj_v_r(k:k+kmi)に応じて、y方向リスクポテンシャルR_py_mi_vj_v_r(k:k)の算出に用いたマップを検索することにより、y方向リスクポテンシャルR_py_mi_vj_v_r(k:k+kmi)が算出される。
次いで、下式(49)により、予測時刻k+kmiでのリスクポテンシャルR_p_mi_vj_v_r(k:k+kmi)が算出される。なお、本実施形態では、リスクポテンシャルR_p_mi_vj_v_r(k:k),R_p_mi_vj_v_r(k:k+kmi)が干渉度合いパラメータに相当する。
また、自車両3の予測位置Z_miにおける右側走路境界関数σ_r_mi_r及び左側走路境界関数σ_l_mi_rは、下式(50),(51)に示すように定義される。
さらに、右側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_mi_rは、下式(52),(53)によって算出され、左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbl_mi_rは、下式(54),(55)によって算出される。なお、本実施形態では、右側及び左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_mi_r,R_p_rbl_mi_rが干渉度合いパラメータに相当する。
そして、最終的に、第1評価関数J_1が、下式(56)によって算出される。
上式(56)において、nは、自車両3の前方に位置する交通参加者などの干渉対象の数を表している。この式(56)に示すように、第1評価関数J_1は、現在の制御時刻k及び予測時刻k+kmi(i=11~13)における、3つの予測位置Z_mi(i=11~13)のリスクポテンシャルR_p_mi_vj_v_rの総和と、右側及び左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_mi_r,R_p_rbl_mi_rとの和として算出される。
次に、前述した第2評価関数算出部22における第2評価関数J_2の算出手法について説明する。この第2評価関数算出部22では、以下に述べるように、軌道決定部30からの印加第2予測位置Z_m2_rを用いて、第1評価関数算出部21と同様の手法により、第2評価関数J_2が算出される。この印加予測位置Z_m2_rは、第2予測位置Z_m2に参照入力rを印加したものである。
第2評価関数算出部22では、まず、下式(57),(58)により、予測時刻k+km2でのx座標偏差dx_m2_vj_r(k:k+km2)及びy座標偏差dy_m2_vj_r(k:k+km2)が算出される。
上式(57)のx_vj(k:k+km2)は、干渉対象の予測位置W_vj(k:k+km2)のX座標値であり、上式(58)のy_vj(k:k+km2)は、干渉対象の予測位置W_vj(k:k+km2)のY座標値である。
さらに、下式(59),(60)により、予測時刻k+km2での変換x座標偏差dx_m2_vj_v_r(k:k+km2)及び変換y座標偏差dy_m2_vj_v_r(k:k+km2)が算出される。
次に、前述した変換x座標偏差dx_m2_vj_v_r(k:k+km2)に応じて、図示しないマップを検索することにより、x方向リスクポテンシャルR_px_m2_vj_v_r(k:k+km2)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図7と同様のものが用いられる。
また、前述した変換y座標偏差dy_m2_vj_v_r(k:k+km2)に応じて、図示しないマップを検索することにより、y方向リスクポテンシャルR_py_m2_vj_v_r(k:k+km2)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図8と同様のものが用いられる。
次いで、下式(61)により、予測時刻k+km2でのリスクポテンシャルR_p_m2_vj_v_r(k:k+km2)が算出される。
また、自車両3の第2予測位置Z_m2における右側走路境界関数σ_r_m2_r及び左側走路境界関数σ_l_m2_rは、下式(62),(63)に示すように定義される。
さらに、右側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_m2_rは、下式(64),(65)によって算出され、左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbl_m2_rは、下式(66),(67)によって算出される。
そして、最終的に、第2評価関数J_2が、下式(68)によって算出される。
この式(68)に示すように、第2評価関数J_2は、第2予測位置Z_m2におけるリスクポテンシャルR_p_m2_vj_v_rの総和と、右側及び左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_m2_r,R_p_rbl_m2_rとの和として算出される。
次に、前述した第3評価関数算出部23における第3評価関数J_3の算出手法について説明する。この第3評価関数算出部23では、以下に述べるように、軌道決定部30からの印加第3予測位置Z_m3_rを用いて、第1及び第2評価関数算出部21,22と同様の手法により、第3評価関数J_3が算出される。この印加予測位置Z_m3_rは、第3予測位置Z_m3に参照入力rを印加したものである。
第3評価関数算出部23では、まず、下式(69),(70)により、予測時刻k+km3でのx座標偏差dx_m3_vj_r(k:k+km3)及びy座標偏差dy_m3_vj_r(k:k+km3)が算出される。
上式(69)のx_vj(k:k+km3)は、干渉対象の予測位置W_vj(k:k+km3)のX座標値であり、上式(70)のy_vj(k:k+km3)は、干渉対象の予測位置W_vj(k:k+km3)のY座標値である。
さらに、下式(71),(72)により、予測時刻k+km3での変換x座標偏差dx_m3_vj_v_r(k:k+km3)及び変換y座標偏差dy_m3_vj_v_r(k:k+km3)が算出される。
次に、前述した変換x座標偏差dx_m3_vj_v_r(k:k+km3)に応じて、図示しないマップを検索することにより、x方向リスクポテンシャルR_px_m3_vj_v_r(k:k+km3)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図7と同様のものが用いられる。
また、前述した変換y座標偏差dy_m3_vj_v_r(k:k+km3)に応じて、図示しないマップを検索することにより、y方向リスクポテンシャルR_py_m3_vj_v_r(k:k+km3)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図8と同様のものが用いられる。
次いで、下式(73)により、予測時刻k+km3でのリスクポテンシャルR_p_m3_vj_v_r(k:k+km3)が算出される。
また、自車両3の第3予測位置Z_m3における右側走路境界関数σ_r_m3_r及び左側走路境界関数σ_l_m3_rは、下式(74),(75)に示すように定義される。
さらに、右側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_m3_rは、下式(76),(77)によって算出され、左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbl_m3_rは、下式(78),(79)によって算出される。
そして、最終的に、第3評価関数J_3が、下式(80)によって算出される。
この式(80)に示すように、第3評価関数J_3は、第3予測位置Z_m3におけるリスクポテンシャルR_p_m3_vj_v_rの総和と、右側及び左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_m3_r,R_p_rbl_m3_rとの和として算出される。
次に、前述した軌道決定部30について説明する。図12に示すように、軌道決定部30は、第1~第3極値探索コントローラ31~33及び第1~第3予測軌道算出部34~36を備えている。これらの第1~第3極値探索コントローラ31~33では、後述する手法により、第1~第3予測軌道の曲率である予測曲率ρ_m1~ρ_m3が算出される。これらの予測曲率ρ_m1~ρ_m3は、前述した図6における曲率半径R_m1~R_m3の逆数に相当する。
以下、第1~第3極値探索コントローラ31~33の算出手法及びその原理について、図13に示す極値探索コントローラ50を例にとって説明する。同図に示すように、この極値探索コントローラ50は、印加探索入力u_sk_rが入力された際に評価関数Jを出力する系が探索対象70である場合において、評価関数Jを用いて、探索入力u_sk及び印加探索入力u_sk_rを算出するものである。
この極値探索コントローラ50は、ハイパスフィルタ51、参照入力発生器52、2つの遅延要素54,58、乗算器53、移動平均フィルタ55、増幅要素56、及び2つの加算要素57,59を備えている。
このハイパスフィルタ51では、下式(81)により、フィルタ値hが算出される。
上式(81)に示すように、フィルタ値hは、評価関数Jの今回値J(k)と前回値J(k-1)の差分として算出される。また、ハイパスフィルタ51は、評価関数値Jに含まれている、後述する参照入力rに起因する周波数成分を通過させるためのものである。この場合、上式(81)に代えて、後述する参照入力rの周波数成分を通過させるフィルタアルゴリズム(バタワースハイパスフィルタアルゴリズム又はバンドパスフィルタアルゴリズム)を用いて、フィルタ値hを算出するように構成してもよい。
また、参照入力発生器52は、参照入力rを発生する。なお、参照入力rの波形としては、例えば、正弦波、余弦波、三角波、台形波及び矩形波などが用いられる。
さらに、この参照入力rは、遅延要素54を介して乗算器53に入力され、乗算器53では、下式(82)により、中間値P_hrが算出される。
また、移動平均フィルタ55では、下式(83)により、移動平均値P_cが算出される。
この式(83)において、移動平均値P_cのタップ数n_r+1は、移動平均値P_cから参照入力rの周波数成分を除去するために、タップ数n_r+1と制御周期ΔTの積ΔT・(n_r+1)が参照入力rの周期Trと等しい値又は周期Trの整数倍になるように設定されている。
次いで、加算要素57には、移動平均値P_cが増幅要素56によって所定ゲインK_sk分、増幅された状態で入力されるとともに、遅延要素58を介して、探索入力u_skが入力される。
そして、加算要素57では、下式(84)に示す積分制御アルゴリズムより、探索入力u_skが算出される。
さらに、加算要素59では、下式(85)により、印加探索入力u_sk_rが算出される。
次に、以上の算出アルゴリズムを用いて、探索入力u_sk及び印加探索入力u_sk_rを算出した理由及びその原理について説明する。本実施形態の場合、前述したように、評価関数Jが各種のリスクポテンシャルの総和を含むように算出される関係上、評価関数Jが極小値になるように算出することによって、リスクポテンシャルの総和を減少させることができることになる。
この理由により、本実施形態では、評価関数Jが極小値となるように探索入力u_skを算出するために、以下の原理が用いられる。まず、評価関数Jは、印加探索入力u_sk_rを用いて算出される関係上、印加探索入力u_sk_rに含まれる参照入力rの特性(周期関数)に起因して、所定振幅の振動的な挙動を示すことになる。
ここで、印加探索入力u_sk_rと評価関数Jの関係が例えば図14に示す曲線として表されると仮定した場合、参照入力rに起因する評価関数Jの振動的な挙動は、図中の矢印に示すように、ある傾きを持った状態となる。なお、図14のu_sk_opは、印加探索入力u_sk_rの所定値である。
一方、前述した移動平均値P_cは、評価関数Jのフィルタ値hと参照入力rの乗算値の移動平均値であるので、評価関数Jと参照入力rの相関関数に相当する疑似相関関数と見なすことができる。
そのため、疑似相関関数と見なせる移動平均値P_cが正値であれば、評価関数Jの傾きが正値を示し、移動平均値P_cが負値であれば、評価関数Jの傾きは負値を示すことになる。これに加えて、移動平均値P_cは、前述した式(83)で算出されることにより、参照入力rの周波数成分が除去された状態で算出される。以上の理由により、移動平均値P_cと印加探索入力u_sk_rの関係は、例えば、図15に示すような単調増加の関数として表すことができる。すなわち、移動平均値P_cは、印加探索入力u_sk_rを変更したときに、評価関数Jが変化する方向を表すことになる。
したがって、評価関数Jが極小値になるように、印加探索入力u_sk_rを算出するには、図15に示す関数の傾きが値0になるように、移動平均値P_cを算出すればよいことになる。すなわち、移動平均値P_cが値0に収束するように、フィードバック制御アルゴリズムを用いて、印加探索入力u_sk_r言い換えれば探索入力u_skを算出すればよいことになる。
以上の原理により、極値探索コントローラ50では、式(84)の積分制御アルゴリズムを用いて、評価関数Jが極小値になるような解として、探索入力u_skが算出される。
本実施形態の第1~第3極値探索コントローラ31~33の場合、以上の極値探索コントローラ50と同様の原理に基づき、探索入力u_skとしての予測曲率ρ_m1~ρ_m3が算出される。
まず、第1極値探索コントローラ31について説明する。第1極値探索コントローラ31は、以下に述べる手法によって、予測曲率ρ_m1を算出するものであり、この予測曲率ρ_m1は、前述した第1予測軌道の曲率半径R_m1の逆数に相当する。
図13に示すように、第1極値探索コントローラ31は、ハイパスフィルタ31a、参照入力発生器31b、2つの遅延要素31d,31h、乗算器31c、移動平均フィルタ31e、3つの増幅要素31f,31j,31k、及び2つの加算要素31g,31iを備えている。
このハイパスフィルタ31aでは、下式(86)により、フィルタ値h_1が算出される。
また、参照入力発生器31bは、前述した参照入力rを発生する。この参照入力rは、遅延要素31dを介して乗算器31cに入力され、乗算器31cでは、下式(87)により、中間値P_hr1が算出される。
また、移動平均フィルタ31eでは、下式(88)により、移動平均値P_c1が算出される。なお、本実施形態では、移動平均値P_c1が修正量に相当する。
次いで、加算要素31gには、移動平均値P_c1が増幅要素31fによって所定ゲインK_sk1分、増幅された状態で入力され、後述する移動平均値P_c2が増幅要素31kによってゲインK_sk1・K_bp_21分、増幅された状態で入力されるとともに、後述する移動平均値P_c3が増幅要素31jによってゲインK_sk1・K_bp_32分、増幅された状態で入力される。
ここで、ゲインK_bp_21は、P_c2≧0のときには、移動平均値P_c1に応じて、図16に示すマップを検索することにより算出される。図16のPref1は、正の所定値である。このマップでは、ゲインK_bp_21は、0<P_c1の範囲では値1に、P_c1<-Pref1の範囲では値0にそれぞれ設定されているとともに、-Pref1≦P_c1≦0の範囲では、移動平均値P_c1が大きいほど、より値1に近づくように設定されている。
また、ゲインK_bp_21は、P_c2<0のときには、移動平均値P_c1に応じて、図17に示すマップを検索することにより算出される。図17のPref2は、正の所定値であり、Pref1とPref2は同一の値でもよく、互いに異なる値でもよい。このマップでは、ゲインK_bp_21は、P_c1<0の範囲では値1に、Pref2<P_c1の範囲では値0にそれぞれ設定されているとともに、0≦P_c1≦Pref2の範囲では、移動平均値P_c1が大きいほど、より値0に近づくように設定されている。
さらに、ゲインK_bp_31は、P_c2≧0&P_c3≧0のときには、移動平均値P_c1に応じて、図18に示すマップを検索することにより算出される。このマップでは、ゲインK_bp_31は、0<P_c1の範囲では値1に、P_c1<-Pref1の範囲では値0にそれぞれ設定されているとともに、-Pref1≦P_c1≦0の範囲では、移動平均値P_c1が大きいほど、より値1に近づくように設定されている。
また、ゲインK_bp_31は、P_c2<0&P_c3<0のときには、移動平均値P_c1に応じて、図19に示すマップを検索することにより算出される。このマップでは、ゲインK_bp_31は、P_c1<0の範囲では値1に、Pref2<P_c1の範囲では値0にそれぞれ設定されているとともに、0≦P_c1≦Pref2の範囲では、移動平均値P_c1が大きいほど、より値0に近づくように設定されている。
さらに、ゲインK_bp_31は、2つの移動平均値P_c2,P_c3の符号が異なるときには値0として算出される。
2つのゲインK_bp_21,K_bp_31が以上のように算出される理由と、値P_c2・K_sk1・K_bp_21が第2極値探索コントローラ32から第1極値探索コントローラ31に入力される理由と、値P_c3・K_sk1・K_bp_31が第3極値探索コントローラ33から第1極値探索コントローラ31に入力される理由については後述する。
さらに、加算要素31gには、予測曲率ρ_m1が遅延要素31hを介して入力される。そして、加算要素31gでは、下式(89)により、予測曲率ρ_m1が算出される。
上式(89)に示すように、予測曲率ρ_m1は、その前回値ρ_m1(k-1)に、値P_c1・K_sk1と、値P_c2・K_sk1・K_bp_21と、値P_c3・K_sk1・K_bp_31とを加算することによって算出されるので、これらの移動平均値P_c1~P_c3によって修正(更新)されることになる。すなわち、3つの移動平均値P_c1~P_c3は、予測曲率ρ_m1を修正する修正量として作用することになる。
さらに、加算要素31iでは、下式(90)により、印加予測曲率ρ_m1_rが算出される。
そして、以上のように算出された予測曲率ρ_m1及び印加予測曲率ρ_m1_rは、第1極値探索コントローラ31から第1予測軌道算出部34に入力される。
次に、第2極値探索コントローラ32について説明する。第2極値探索コントローラ32は、以下に述べる手法によって、予測曲率ρ_m2及び印加予測曲率ρ_m2_rを算出するものであり、この予測曲率ρ_m2は、前述した第2予測軌道の曲率半径R_m2の逆数に相当する。
図13に示すように、第2極値探索コントローラ32は、ハイパスフィルタ32a、参照入力発生器32b、2つの遅延要素32d,32h、乗算器32c、移動平均フィルタ32e、2つの増幅要素32f,32j及び2つの加算要素32g,32iを備えている。
このハイパスフィルタ32aでは、下式(91)により、フィルタ値h_2が算出される。
また、参照入力発生器32bは、前述した参照入力rを発生する。この参照入力rは、遅延要素32dを介して乗算器32cに入力され、乗算器32cでは、下式(92)により、中間値P_hr2が算出される。
また、移動平均フィルタ32eでは、下式(93)により、移動平均値P_c2が算出される。なお、本実施形態では、移動平均値P_c2が修正量に相当する。
次いで、加算要素32gには、移動平均値P_c2が増幅要素32fによって所定ゲインK_sk2分、増幅された状態で入力され、後述する移動平均値P_c3が増幅要素32jによってゲインK_sk2・K_bp_32分、増幅された状態で入力される。
ここで、ゲインK_bp_32は、P_c3≧0のときには、移動平均値P_c2に応じて、図20に示すマップを検索することにより算出される。図20のPref3は、正の所定値である。このマップでは、ゲインK_bp_32は、0<P_c2の範囲では値1に、P_c2<-Pref3の範囲では値0にそれぞれ設定されているとともに、-Pref3≦P_c2≦0の範囲では、移動平均値P_c2が大きいほど、より値1に近づくように設定されている。
また、ゲインK_bp_32は、P_c3<0のときには、移動平均値P_c2に応じて、図21に示すマップを検索することにより算出される。図21のPref4は、正の所定値である。ここで、Pref3とPref4は、同一の値でもよく、互いに異なる値でもよい。
このマップでは、ゲインK_bp_32は、P_c2<0の範囲では値1に、Pref4<P_c2の範囲では値0にそれぞれ設定されているとともに、0≦P_c2≦Pref4の範囲では、移動平均値P_c2が大きいほど、より値0に近づくように設定されている。
ゲインK_bp_32が以上のように算出される理由と、値P_c3・K_sk2・K_bp_32が第3極値探索コントローラ33から第2極値探索コントローラ32に入力される理由については後述する。
さらに、加算要素32gには、予測曲率ρ_m2が遅延要素32hを介して入力される。そして、加算要素32gでは、下式(94)により、予測曲率ρ_m2が算出される。
上式(94)に示すように、予測曲率ρ_m2は、その前回値ρ_m2(k-1)に、値P_c2・K_sk2と、値P_c3・K_sk2・K_bp_32とを加算することによって算出されるので、これらの移動平均値P_c2,P_c3によって修正(更新)されることになる。すなわち、2つの移動平均値P_c2,P_c3は、予測曲率ρ_m2を修正する修正量として作用することになる。
さらに、加算要素32iでは、下式(95)により、印加予測曲率ρ_m2_rが算出される。
そして、以上のように算出された予測曲率ρ_m2及び印加予測曲率ρ_m2_rは、第2極値探索コントローラ32から第2予測軌道算出部35に入力される。
次に、第3極値探索コントローラ33について説明する。第3極値探索コントローラ33は、以下に述べる手法によって、予測曲率ρ_m3及び印加予測曲率ρ_m3_rを算出するものであり、この予測曲率ρ_m3は、前述した第3予測軌道の曲率半径R_m3の逆数に相当する。
図13に示すように、第3極値探索コントローラ33は、ハイパスフィルタ33a、参照入力発生器33b、2つの遅延要素33d,33h、乗算器33c、移動平均フィルタ33e、増幅要素33f及び2つの加算要素33g,33iを備えている。
このハイパスフィルタ33aでは、下式(96)により、フィルタ値h_3が算出される。
また、参照入力発生器33bは、前述した参照入力rを発生する。この参照入力rは、遅延要素33dを介して乗算器33cに入力され、乗算器33cでは、下式(97)により、中間値P_hr3が算出される。
また、移動平均フィルタ33eでは、下式(98)により、移動平均値P_c3が算出される。なお、本実施形態では、移動平均値P_c3が修正量に相当する。
次いで、加算要素33gには、移動平均値P_c3が増幅要素33fによって所定ゲインK_sk3分、増幅された状態で入力され、予測曲率ρ_m3が遅延要素33hを介して入力される。
そして、加算要素33gでは、下式(99)により、予測曲率ρ_m3が算出される。
さらに、加算要素33iでは、下式(100)により、印加予測曲率ρ_m3_rが算出される。
そして、以上のように算出された予測曲率ρ_m3及び印加予測曲率ρ_m3_rは、第3極値探索コントローラ33から第3予測軌道算出部36に入力される。
次に、前述した第1予測軌道算出部34について説明する。この第1予測軌道算出部34では、第1極値探索コントローラ31からの予測曲率ρ_m1及び印加予測曲率ρ_m1_rを用いて、前述した原理に基づき、3つの予測位置Z_m11~Z_m13と、3つの印加予測位置Z_m11_r~Z_m13_rが算出される。
まず、前述した式(1)~(8)により、予測位置Z_m11のX座標値x_m11及びY座標値y_m11と、予測位置Z_m12のX座標値x_m12及びY座標値y_m12と、予測位置Z_m13のX座標値x_m13及びY座標値y_m13とが算出される。
次いで、下式(101),(102)により、第1予測軌道の曲率半径R_m1_rが算出される。
上式(101),(102)のρ_minは、所定の最小曲率(正値)である。また、式(102)のSignは、G≧0の場合にはSign(G)=1となり、G<0の場合にはSign(G)=-1となる符号関数である。この点は、他の数式の符号関数Signにおいても同様である。
次に、下式(103)により、第1予測軌道の回転角度θ_m1_rが算出される。
さらに、下式(104),(105)により、印加予測位置Z_m11_rのX座標値x_m11_r及びY座標値y_m11_rが算出される。
次いで、下式(106),(107)により、印加予測位置Z_m12_rのX座標値x_m12_r及びY座標値y_m12_rが算出される。
次いで、下式(108),(109)により、印加予測位置Z_m13_rのX座標値x_m13_r及びY座標値y_m13_rが算出される。
次に、前述した第2予測軌道算出部35について説明する。この第2予測軌道算出部35では、第2極値探索コントローラ32からの予測曲率ρ_m2及び印加予測曲率ρ_m2_rを用いて、前述した原理に基づき、第2予測位置Z_m2及び印加第2予測位置Z_m2_rが算出される。
まず、前述した式(9)~(14)により、第2予測位置Z_m2のX座標値x_m2及びY座標値y_m2が算出される。
次いで、下式(110),(111)により、第2予測軌道の曲率半径R_m2_rが算出される。
次に、下式(112)により、第2予測軌道の回転角度θ_m2_rが算出される。
さらに、下式(113),(114)により、前述したX’-Y’座標系(図6参照)における印加第2予測位置Z_m2_rのX’座標値x’_m2_r及びY’座標値y’_m2_rが算出される。
次いで、下式(115),(116)により、X-Y座標系(図6参照)における印加第2予測位置Z_m2_rのX座標値x_m2_r及びY座標値y_m2_rが算出される。
次に、前述した第3予測軌道算出部36について説明する。この第3予測軌道算出部36では、第3極値探索コントローラ33からの予測曲率ρ_m3及び印加予測曲率ρ_m3_rを用いて、前述した原理に基づき、第3予測位置Z_m3及び印加第3予測位置Z_m3_rが算出される。
まず、前述した式(15)~(20)により、第3予測位置Z_m3のX座標値x_m3及びY座標値y_m3が算出される。
次いで、下式(117),(118)により、第3予測軌道の曲率半径R_m3_rが算出される。
次に、下式(119)により、第3予測軌道の回転角度θ_m3_rが算出される。
さらに、下式(120),(121)により、前述したX”-Y”座標系(図6参照)における印加第3予測位置Z_m3_rのX”座標値x”_m3_r及びY”座標値y”_m3_rが算出される。
次いで、下式(122),(123)により、X-Y座標系(図6参照)における印加第3予測位置Z_m3_rのX座標値x_m3_r及びY座標値y_m3_rが算出される。
以上のように、軌道決定部30では、第1~第3極値探索コントローラ31~33によって、第1~第3予測軌道の予測曲率ρ_m1~ρ_m3が算出され、これらの予測曲率ρ_m1~ρ_m3に基づいて、前述した5つの予測位置Z_mi(i=11~13,2,3)及び5つの印加予測位置Z_mi_rが算出される。
次に、前述した値P_c2・K_sk1・K_bp_21及び値P_c3・K_sk1・K_bp_31が第1極値探索コントローラ31に入力される理由と、値P_c3・K_sk2・K_bp_32が第2極値探索コントローラ32に入力される理由と、3つのゲインK_bp_21,K_bp_31,K_bp_32が前述したように設定されている理由について説明する。
例えば、第1~第3極値探索コントローラ31~33において、予測曲率ρ_m1~ρ_m3を互いに無関係に算出した場合、以下に述べるような状態が発生することがある。
すなわち、図22に示すように、自車両3の右前方に干渉対象が存在する場合、第1予測軌道(現在位置~予測位置Z_m13)と、第2予測軌道(予測位置Z_m13~第2予測位置Z_m2)とが直線状に決定される一方、第2予測位置Z_m2から第3予測位置Z_m3までの第3予測軌道が円弧状に決定されることがある。
このように予測軌道が決定された場合、自車両3は、第2予測位置Z_m2に達した時点で急激に左方に旋回する状態となるため、横加速度が急増することで、不安定な走行状態となってしまう。これに加えて、自車両3の運動性能によっては、第3予測軌道に沿って旋回することができず、干渉対象との間での干渉を回避するためのマージンが減少する可能性がある。
以上の問題を解消するために、軌道決定部30では、例えば、図23に示すように、第1予測軌道、第2予測軌道及び第3予測軌道が同じ旋回方向に決定されている場合、すなわち、3つの移動平均値P_c1~P_c3の符号が互いに同一である場合には、予測曲率ρ_m1を2つの移動平均値P_c2,P_c3を反映させながら算出するとともに、予測曲率ρ_m2を移動平均値P_c3を反映させながら算出する必要がある。
一方、例えば、図24に示すように、第1予測軌道と第2予測軌道が逆の旋回方向に決定され、第2予測軌道と第3予測軌道が逆の旋回方向に決定されている場合、すなわち、移動平均値P_c1,Pc_2の符号の正負が異なるとともに、移動平均値P_c2,P_c3の符号の正負が異なる場合において、予測曲率ρ_m1を2つの移動平均値P_c2,P_c3を反映させながら算出したときには、干渉対象に対する回避マージンを減少させてしまうことになる。さらに、予測曲率ρ_m2を移動平均値P_c3を反映させながら算出した場合にも、同じ問題が発生することになる。したがって、予測曲率ρ_m1を2つの移動平均値P_c2,P_c3を反映させないように算出するとともに、予測曲率ρ_m2を移動平均値P_c3を反映させないように算出する必要がある。
以上の理由により、2つのゲインK_bp_21,K_bp_31が前述したように設定されているとともに、前述した値P_c2・K_sk1・K_bp_21及び値P_c3・K_sk1・K_bp_31が第1極値探索コントローラ31に入力されるように構成されている。
同じ理由により、ゲインK_bp_32が前述したように設定されているとともに、値P_c3・K_sk2・K_bp_32が第2極値探索コントローラ32に入力されるように構成されている。
以上の構成により、3つの移動平均値P_c1~P_c3の符号と、2つの値P_c2・K_bp_21,P_c3・K_bp_31と、予測曲率ρ_m1に対する移動平均値P_c2,P_c3の反映状態との関係は、図25に示す12個のパターンA1~A12になる。この場合、前述した図23の状態では、パターンA1(又はA2)のようになり、前述した図24の状態では、パターンA9~A12のいずれかのようになる。
また、2つの移動平均値P_c2,P_c3の符号と、値P_c3・K_bp_32と、予測曲率ρ_m2に対する移動平均値P_c3の反映状態との関係は、図26に示す6個のパターンB1~B6になる。
以上のように、本実施形態の軌道決定部30では、5つの予測位置Z_m11~Z_m13,Z_m2,Z_m3が算出された後、これらの値が車両制御部40に入力される。
車両制御部40では、5つの予測位置Z_m11~Z_m13,Z_m2,Z_m3及び現在速度V_egoに応じて、原動機5及びアクチュエータ6が制御される。それにより、自車両3は、5つの予測位置Z_m11~Z_m13,Z_m2,Z_m3によって決定される第1~第3予測軌道に沿って走行することになる。
以上のように、第1実施形態の軌道生成装置1によれば、第1~第3予測軌道の各々において、交通参加者などの干渉対象との干渉度合いを表す各種のリスクポテンシャルR_p_mi_vj_v_r,R_p_rbr_mi_r,R_p_rbl_mi_rが算出され、これらのリスクポテンシャルR_p_mi_vj_v_r,R_p_rbr_mi_r,R_p_rbl_mi_rの総和を含むように、第1~第3評価関数J_1~J_3が算出される。
そして、これらの第1~第3評価関数J_1~J_3が極小値になるように、予測曲率ρ_m1~ρ_m3が算出され、これらの予測曲率ρ_m1~ρ_m3に基づいて、第1~第3予測軌道が決定される。すなわち、5つの予測位置Z_mi(i=11~13,2,3)は、第1~第3評価関数J_1~J_3が極小値になるように決定されることになる。
この場合、上述したように、第1~第3評価関数J_1~J_3は、干渉対象との干渉度合いを表すリスクポテンシャルR_p_mi_vj_v_rの総和を含むように算出されるので、そのような第1~第3評価関数J_1~J_3が極小値になるように決定されることによって、第1~第3予測軌道を、干渉対象との干渉渉度合いが減少するように決定することができる。
さらに、予測曲率ρ_m1は、第1極値探索コントローラ31における移動平均値P_c1と第2極値探索コントローラ32における移動平均値P_c2とが同符号の場合には、移動平均値P_c2を反映させながら決定される(図23及び図25参照)。
また、予測曲率ρ_m2は、第2極値探索コントローラ32における移動平均値P_c2と第3極値探索コントローラ33における移動平均値P_c3とが同符号の場合には、移動平均値P_c3を反映させながら決定される(図23及び図26参照)。
この場合、3つの移動平均値P_c1~P_c3は、3つの予測曲率ρ_m1~ρ_m3をそれぞれ修正するための修正量、すなわち第1~第3予測軌道を修正するための修正量として算出される。したがって、第1予測軌道及び第2予測軌道の修正量の符号が同一の場合、第1予測軌道は、それよりも自車両3の現在位置から遠い第2予測軌道の修正方向と同方向にさらに修正されることになる。
これと同様に、第2予測軌道及び第3予測軌道の修正量の符号が同一の場合、第2予測軌道は、それよりも自車両3の現在位置から遠い第3予測軌道の修正方向と同方向にさらに修正されることになる。
ここで、干渉対象が自車両3の進行方向に存在する場合には、現在位置から遠い方の予測軌道の方が、自車両3の現在位置から近い方の予測軌道と比べて、干渉対象により近い軌道となる。したがって、干渉対象に近い方の予測軌道を修正するための修正量を反映させながら、干渉対象から遠い方(すなわち自車両3に近い方)の予測軌道を生成することによって、自車両3に近い方の予測軌道において、干渉対象との干渉を回避するための回避マージンをより増大させることができる。その結果、実現可能な軌道が制限される自車両3においても、干渉対象との干渉を回避するためのマージンが十分に確保されるように、自車両3の未来の軌道を適切に生成することができる。
一方、隣り合う2つの予測軌道の修正量が異符号である場合、2つの予測軌道が干渉対象を回避するために互いに異なる方向に修正されていることになる。したがって、そのような条件下において、自車両3の現在位置から遠い方の予測軌道を修正するための修正量を、現在位置から近い方の予測軌道に反映させたときには、現在位置から近い方の予測軌道において、干渉対象に対する回避マージンを減少させてしまうことになる。
これに対して、本実施形態の場合、移動平均値P_c1と移動平均値P_c2が異符号である場合には、予測曲率ρ_m1は、移動平均値P_c2を反映させることなく決定される(図24及び図25参照)。これと同様に、移動平均値P_c2と移動平均値P_c3が異符号である場合には、予測曲率ρ_m2は、移動平均値P_c3を反映させることなく決定される(図24及び図26参照)。それにより、現在位置から近い方の予測軌道においても、干渉対象との干渉を回避するためのマージンを十分に確保することができる。
また、第1予測軌道は、第2予測軌道及び第3予測軌道よりも短い3つの予測軌道を組み合わせたものとして決定される。それにより、第2予測軌道及び第3予測軌道と比べて、自車両3との距離が近い第1予測軌道においても、干渉対象との干渉をより確実に回避することができるように、第1予測軌道を生成することができる。
なお、第1実施形態は、自車両3を移動体とした例であるが、これに代えて、2輪車両、ロボット、航空機又は船舶などを移動体としてもよい。
さらに、第1実施形態は、本発明の軌道生成装置1を自動運転可能な4輪車両3に搭載した例であるが、これに代えて、軌道生成装置を4輪車両以外の移動体(例えば、2輪車両、ロボット、航空機又は船舶など)に搭載してもよく、軌道生成装置を単独で使用してもよい。
また、第1実施形態は、交通参加者検出部10において、所定の機械学習アルゴリズム(例えば、DNN及びCNNなどのニューラルネットワークを用いたアルゴリズム)を用いて、交通参加者の現在検出位置W_vj(k)を算出した例であるが、これに代えて、画像認識アルゴリズムなどを用いて、交通参加者の現在検出位置W_vj(k)を算出してもよい。
さらに、第1実施形態は、行動予測部11において、5個の予測位置W_v1(k:k+km11),W_v1(k:k+km12),W_v1(k:k+km13),W_v1(k:k+km2),W_v1(k:k+km3)を、所定の機械学習アルゴリズム(例えば、DNN及びCNNなどのニューラルネットワークを用いたアルゴリズム)を用いて、算出した例であるが、これに代えて、ニューラルネットワーク以外の機械学習アルゴリズムを用いて、5個の予測位置W_v1(k:k+km11),W_v1(k:k+km12),W_v1(k:k+km13),W_v1(k:k+km2),W_v1(k:k+km3)を算出してもよい。
また、第1実施形態は、干渉度合いパラメータとして、各種のリスクポテンシャルを用いた例であるが、本発明の干渉度合いパラメータは、これに限らず、自車両3の周辺における干渉対象の自車両3との干渉度合いを表すものであればよい。
第1実施形態は、軌道決定部30において、予測曲率ρ_miを算出し、これに基づいて予測位置Z_miを算出した例であるが、予測曲率ρ_miに代えて、特許第6580087号公報の図18に記載したような線分と角度の組み合わせの予測値を算出し、これらに基づいて予測位置Z_miを算出するように構成してもよい。
次に、第2実施形態に係る軌道生成装置100(図27参照)について説明する。本実施形態の軌道生成装置100は、自車両3の自動運転制御を実行するために、以下に述べるアルゴリズムによって、自車両3の前方に存在する交通参加者の予測軌道を決定するものである。なお、本実施形態では、自車両3が第1移動体に相当し、交通参加者が第2移動体に相当する。
ここで、交通参加者としては、歩行者、自転車、4輪車及び2輪オートバイなどの移動可能なものが相当するが、以下、交通参加者が歩行者M1(図29参照)である場合を例にとって説明するとともに、歩行者M1の移動に対して干渉する対象を「干渉対象」という。この場合、歩行者M1以外の交通参加者及び交通環境(道路環境や信号の状態など)が干渉対象に相当する。
図27に示すように、軌道生成装置100は、交通参加者検出部110、行動予測部111、第1~第3評価関数算出部121~123及び軌道決定部200を備えている。これらの要素100~111,121~123,200は、具体的には、ECU2によって構成されており、これらの要素100~111,121~123,200での演算処理は、前述した所定の制御周期ΔTで実行される。
なお、本実施形態では、第1~第3評価関数算出部121~123が干渉度合いパラメータ算出部に相当し、軌道決定部200が予測軌道生成部及び修正量決定部に相当する。
まず、交通参加者検出部110では、前述した第1実施形態の交通参加者検出部10と同様の手法により、歩行者M1の現在検出位置と、歩行者M1以外の交通参加者の現在検出位置W_vj(k)が検出/算出される。まず、1人の歩行者である交通参加者TP4のみが歩行者M1の前方に存在する場合(すなわちj=1の場合)を例にとって説明する。
本実施形態の場合、歩行者M1の座標系は、図28に示すように、歩行者M1の中心を原点とし、歩行者M1の進行方向及び横方向をX軸及びY軸として定義される。なお、図中のZ2_m1h0は歩行者M1の現在位置であり、Z2_m11,Z2_m12,Z2_m13は、歩行者M1の後述する予測位置である。
また、交通参加者TP4の座標系は、交通参加者TP4の進行方向及び横方向をX_v軸及びY_v軸とし、X_v軸のX軸に対する傾きをθ2_v1とする直交2次元座標系として定義される。
この直交2次元座標系において、X_v座標値をx2_v1とし、Y_v座標値をy2_v1とした場合、交通参加者TP4の現在検出位置W2_v1(k)は、3つの値[x2_v1(k),y2_v1(k),θ2_v1(k)]を要素とする値として算出される。また、図28中の交通参加者TP4の周囲における1点鎖線で示すラインは、後述するリスクポテンシャルを模擬的に表している。
交通参加者検出部111では、前述した第1実施形態の交通参加者検出部10と同様の手法により、交通参加者TP4の現在位置W2_v1(k:k)と、5個の予測位置W2_v1(k:k+km11),W2_v1(k:k+km12),W2_v1(k:k+km13),W2_v1(k:k+km2),W2_v1(k:k+km3)とが算出される。
以上のように、交通参加者検出部111では、交通参加者が1個(1人)の場合、交通参加者の6個の位置(現在位置及び5個の予測位置)が算出され、交通参加者がn個の場合には、n×6個の位置が算出される。この点は、前述した各要素121~123,200の演算においても同様である。以下、交通参加者が1個の場合を例にとって説明する。
次に、本実施形態の軌道生成装置100における歩行者M1の未来の予測軌道の定義及びその決定原理について説明する。図29に示すように、本実施形態の軌道生成装置100では、第1実施形態の軌道生成装置1と同様に、歩行者M1の未来の予測軌道が、3つの円弧状の第1~第3予測軌道を組み合わせたものとして決定される。
最初に、第1予測軌道について説明する。まず、前述したように、歩行者M1の現在位置の中心を原点とし、歩行者M1の進行方向をX軸とし、歩行者M1の横方向をY軸とするX-Y座標系を定義する。
そして、このX-Y座標系における原点から第1予測時間T2_m1後の位置を第1予測位置Z2_m1とし、原点から第1予測位置Z2_m1までの予測軌道を円弧状の第1予測軌道と定義する。ここで、歩行者M1の現在速度をV_trgtとした場合、第1予測軌道の距離L2_m1は、下式(124)のように定義される。
さらに、第1予測軌道の曲率半径をR2_m1とした場合、第1予測軌道の回転角度θ2_m1は、下式(125)のように定義される。この回転角度θ2_m1は、Y軸と後述するY’軸の間の角度に相当する。
また、歩行者M1の所定時刻Th1前(例えば、1制御周期前)の推定移動距離L2_mh1は、下式(126)のように定義される。この推定移動距離L2_mh1は、歩行者M1が所定時刻Th1前の制御時刻から今回の制御時刻までの間、第1予測軌道を延長した円弧軌道に沿って移動したと推定したときの移動距離である。
さらに、歩行者M1の所定時刻Th1前の推定位置Z2_m1h1における回転角度θ2_mh1は、下式(127)のように定義される。この所定時刻Th1前の推定位置Z2_m1h1は、歩行者M1が所定時刻Th1前の制御時刻から今回の制御時刻までの間、第1予測軌道を延長した円弧軌道に沿って移動したと推定したときの所定時刻Th1前の制御時刻での位置である。
さらに、歩行者M1の所定時刻Th2前(例えば、2制御周期前)の推定移動距離L2_mh2は、下式(128)のように定義される。この推定移動距離L2_mh2は、歩行者M1が所定時刻Th2前の制御時刻から今回の制御時刻までの間、第1予測軌道を延長した円弧軌道に沿って移動したと推定したときの移動距離である。
さらに、歩行者M1の所定時刻Th2前の推定位置Z2_m1h2における回転角度θ2_mh2は、下式(129)のように定義される。所定時刻Th2前の推定位置Z2_m1h2は、歩行者M1が所定時刻Th2前の制御時刻から今回の制御時刻までの間、第1予測軌道を延長した円弧軌道に沿って移動したと推定したときの所定時刻Th2前の制御時刻での位置である。
一方、原点から第1予測位置Z2_m1までの予測軌道を3等分したときの予測位置を、原点から第1予測位置Z2_m1に向かって順に、3つの予測位置Z2_m11,Z2_m12,Z2_m13(=Z2_m1)とする。その場合、予測位置Z2_m11のX座標値x2_m11及びY座標値y2_m11は、下式(130),(131)のように定義される。
また、予測位置Z2_m12のX座標値x2_m12及びY座標値y2_m12は、下式(132),(133)のように定義される。
さらに、予測位置Z2_m13のX座標値x2_m13及びY座標値y2_m13は、下式(134),(135)のように定義される。
一方、現在位置Z2_m1h0のX座標値x2_m1h0及びY座標値y2_m1h0は、下式(136),(137)のように定義される。
また、歩行者M1の所定時刻Th1前の推定位置Z2_m1h1のX座標値x2_m1h1及びY座標値y2_m1h1は、下式(138),(139)のように定義される。
さらに、歩行者M1の所定時刻Th2前の推定位置Z2_m1h2のX座標値x2_m1h2及びY座標値y2_m1h2は、下式(140),(141)のように定義される。
以上の式(124)~(125),(130)~(135)が第1予測軌道のモデル式(モデル軌道)に相当する。
次に、第2予測軌道について説明する。まず、第1予測位置Z2_m1(=予測位置Z2_m13)を原点とし、第1予測軌道の第1予測位置Z2_m1における接線方向をX’軸とし、この接線と直交する方向をY’軸とするX’-Y’座標系を定義する。
さらに、このX’-Y’座標系における原点すなわち第1予測位置Z2_m1から第2予測時間T2_m2後の位置を第2予測位置Z2_m2とし、第1予測位置Z2_m1から第2予測位置Z2_m2までの予測軌道を円弧状の第2予測軌道と定義する。この場合、第2予測軌道の距離L2_m2は、下式(142)のように定義される。
さらに、第2予測軌道の曲率半径をR2_m2とした場合、第2予測軌道の回転角度θ2_m2は、下式(143)のように定義される。この回転角度θ2_m2は、Y’軸と後述するY”軸の間の角度に相当する。
そして、第2予測位置Z2_m2のX’座標値x2’_m2及びY’座標値y2’_m2は、下式(144),(145)のように定義される。
さらに、第2予測位置Z2_m2のX座標値x2_m2及びY座標値y2_m2は、下式(146),(147)のように定義される。
以上の式(142)~(147)が第2予測軌道のモデル式(モデル軌道)に相当する。
次に、第3予測軌道について説明する。まず、第2予測位置Z2_m2を原点とし、第2予測軌道の第2予測位置Z2_m2における接線方向をX”軸とし、この接線と直交する方向をY”軸とするX”-Y”座標系を定義する。
さらに、このX”-Y”座標系における原点すなわち第2予測位置Z2_m2から第3予測時間T2_m3後の位置を第3予測位置Z2_m3とし、第2予測位置Z2_m2から第3予測位置Z2_m3までの予測軌道を円弧状の第3予測軌道と定義する。この場合、第3予測軌道の距離L2_m3は、下式(148)のように定義される。
さらに、第3予測軌道の曲率半径をR2_m3とした場合、第3予測軌道の回転角度θ2_m3は、下式(149)のように定義される。
そして、第3予測位置Z2_m3のX”座標値x2”_m3及びY”座標値y2”_m3は、下式(150),(151)のように定義される。
さらに、第3予測位置Z2_m3のX座標値x2_m3及びY座標値y2_m3は、下式(152),(153)のように定義される。
以上の式(148)~(153)が第3予測軌道のモデル式(モデル軌道)に相当する。
次に、前述した第1~第3評価関数算出部121~123について説明する。これらの第1~第3評価関数算出部121~123では、以上の5つの予測位置Z2_m11,Z2_m12,Z2_m13,Z2_m2,Z2_m3と、現在位置Z2_m1h0と、2つの推定位置Z2_m1h1,Z2_m1h2とを用いて、歩行者M1と干渉対象との干渉度合いを表すものとして、第1評価関数J2_1、第2評価関数J2_2及び第3評価関数J2_3がそれぞれ算出される。
ここで、第1評価関数J2_1、第2評価関数J2_2及び第3評価関数J2_3は、後述するように、5つの予測位置Z2_m11,Z2_m12,Z2_m13,Z2_m2,Z2_m3の算出に用いられるので、第1評価関数J2_1、第2評価関数J2_2及び第3評価関数J2_3の今回値は、5つの予測位置Z2_m11,Z2_m12,Z2_m13,Z2_m2,Z2_m3の前回値に基づいて算出されることになる。
なお、以下の説明では、5つの予測位置Z2_m11,Z2_m12,Z2_m13,Z2_m2,Z2_m3をまとめて「予測位置Z2_mi」と表記する。すなわち、「予測位置Z2_mi」の添え字iは、i=11~13,2,3を表すものである。
以下、第1~第3評価関数算出部121~123において、第1~第3評価関数J2_1~J2_3の算出に用いる手法及びその原理について説明する。
まず、リスクポテンシャルR2_p_mi_vj_vの算出手法について説明する。このリスクポテンシャルR2_p_mi_vj_vは、歩行者M1が予測位置Z2_miにあり、かつ交通参加者が予測位置W2_vjにあると想定した場合の、歩行者M1と交通参加者との干渉度合いを表すものである。
まず、x座標偏差dx2_mi_vj及びy座標偏差dy2_mi_vjが、下式(154),(155)により算出される。
これらの偏差dx2_mi_vj,dy2_mi_vjは、歩行者M1の予測位置Z2_miと交通参加者の予測位置W2_vjとの偏差を表している。
次いで、変換x座標偏差dx2_mi_vj_v及び変換y座標偏差dy2_mi_vj_vが、下式(156),(157)により算出される。これらの偏差dx2_mi_vj_v,dy2_mi_vj_vは、上記2つの偏差dx2_mi_vj,dy2_mi_vjを、交通参加者の座標系に変換したものである。
次に、変換x座標偏差dx2_mi_vj_vに応じて、図30に示すマップを検索することにより、x方向リスクポテンシャルR2_px2_mi_vj_vが算出される。このx方向リスクポテンシャルR2_px2_mi_vj_vのマップ値の横幅及び形状などは、干渉対象の種類(例えば、歩行者、自転車、4輪車両、オートバイなど)に応じて設定される。
さらに、変換y座標偏差dy2_mi_vj_vに応じて、図31に示すマップを検索することにより、y方向リスクポテンシャルR2_py2_mi_vj_vが算出される。このy方向リスクポテンシャルR2_py2_mi_vj_vのマップ値の横幅及び形状なども、x方向リスクポテンシャルR2_px2_mi_vj_vのマップ値と同様に、干渉対象の種類(例えば、歩行者、自転車、4輪車両、オートバイなど)に応じて設定される。
そして、下式(158)に示すように、x方向リスクポテンシャルR2_px2_mi_vj_vとy方向リスクポテンシャルR2_py2_mi_vj_vの積として、リスクポテンシャルR2_p_mi_vj_vが算出される。
以上の手法により、リスクポテンシャルR2_p_mi_vj_vは、歩行者M1と交通参加者との干渉度合が大きくなるほど、より大きい値になるように算出される。
次に、右側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbr_mi及び左側走路境界リスクポテンシャルR_p_rbl_miの算出手法について説明する。なお、本実施形態の説明では、歩行者M1が移動する歩道などの経路を「走路」という。これらの2つのリスクポテンシャルR2_p_rbr_mi,R2_p_rbl_miは、歩行者M1が予測位置Z2_miにあると想定した場合の、歩行者M1が走路逸脱を生じる可能性を表す値である。
まず、歩行者M1の走路の右側境界線LR2及び左側境界線LL2が、例えば図32に示すようになっている場合、これらの境界線LR2,LL2は、下式(159),(160)に示す2つの1次関数として定義することができる。
上式(159)におけるa2_rbr,b2_rbrは、右側境界線LR2を規定するパラメータであり、上式(160)におけるa2_rbl,b2_rblは、左側境界線LL2を規定するパラメータである。これらの4つのパラメータa2_rbr,b2_rbr,a2_rbl,b2_rblは、前述した情報検出装置4の検出結果に基づき、リアルタイムで算出される。
次に、右側走路境界関数σ2_r及び左側走路境界関数σ2_lを、下式(161),(162)に示すように定義する。
これらの式(161),(162)は、上式(159),(27)の左辺を右辺に移項したものに相当する。したがって、右側走路境界関数σ2_rが正値である場合、歩行者M1の中心が右側境界線LRよりも左側の走路内の領域に存在し、右側走路境界関数σ2_rが負値である場合、歩行者M1の中心が右側境界線LRよりも右側の走路外の領域に存在することになる。
これと同様に、左側走路境界関数σ2_lが正値である場合、歩行者M1の中心が左側境界線LLよりも左側の走路外の領域に存在し、左側走路境界関数σ2_lが負値である場合、歩行者M1の中心が左側境界線LLよりも右側の走路内の領域に存在することになる。
以上の原理に基づき、右側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbrは、下式(163),(164)により算出され、左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rblは、下式(165),(166)により算出される。
以上の式(163)~(166)におけるσ2_mrgは、歩行者M1が走路逸脱を確実に回避できるようにするためのマージン(正の所定値)である。ここで、右側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbrと右側走路境界関数σ2_rの関係、及び、左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rblと左側走路境界関数σ2_lの関係を図式化した場合、図33,34に示すものとなる。
また、上式(163)のΩ_cross(a2_rbr(k))は、横断意思パラメータであり、前述した右側境界線LR2を規定するパラメータa2_rbrに応じて、図35に示すマップを検索することにより算出される。同図において、ax1,ax2は、0<ax1<ax2が成立するパラメータa2_rbrの所定値であり、Ω_1は、横断意思パラメータΩ_crossの正の所定値である。
図35に示すように、このマップでは、横断意思パラメータΩ_crossは、パラメータa2_rbrが-ax1≦a2_rbr≦ax1の範囲内にある場合には、所定値Ω_1に設定され、パラメータa2_rbrがa2_rbr≦-ax2,ax2≦a2_rbrの範囲内にある場合には、値0に設定されている。さらに、横断意思パラメータΩ_crossは、パラメータa2_rbrが-ax2<a2_rbr<-ax1の範囲内にある場合には、パラメータa2_rbrが大きいほど、所定値Ω_1に向かって増大するように設定され、パラメータa2_rbrがax1<a2_rbr<ax2の範囲内にある場合には、パラメータa2_rbrが大きいほど、値に0に向かって減少するように設定されている。
さらに、上式(165)のΩ_cross(a2_rbl(k))も、横断意思パラメータであり、前述した左側境界線LL2を規定するパラメータa2_rblに応じて、図36に示すマップを検索することにより算出される。このマップでは、横断意思パラメータΩ_crossは、パラメータa2_rblの値に対して、図35と同様に設定されている。
上式(163),(165)においてこれらの2つの値Ω_cross(rbr(k)),Ω_cross(rbl(k))を用いるのは以下の理由による。例えば、図37に示すように,歩行者M1が歩道から横断歩道に向かっている際において、上式(163),(165)の値Ω_cross(rbr(k)),Ω_cross(rbl(k))を省略した式を用いた場合、2つの走路境界関数σ2_r,σ2_lの効果に起因して、予測軌道が歩道内に留まるように決定されてしまうことになる。
したがって、本実施形態の場合、図37に示すような事象を回避し、図38に示すように、歩行者M1が歩道から横断歩道に向かっている際、予測軌道が横断歩道側に向かう状態で決定されるように、2つの値Ω_cross(rbr(k)),Ω_cross(rbl(k))が用いられる。
次に、以上と同じ原理により、歩行者M1の予測位置Z2_miにおける右側走路境界関数σ2_r_mi及び左側走路境界関数σ2_l_miを、下式(167),(168)に示すように定義する。
さらに、前述した原理により、歩行者M1の予測位置Z2_miにおける右側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbr_miは、下式(169),(170)により算出され、歩行者M1の予測位置Z2_miにおける左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbl_miは、下式(171),(172)により算出される。
次に、図39を参照しながら、トレースポテンシャルTrの算出手法について説明する。同図において、Z2_h1は、所定時刻Th1前の制御時刻における歩行者M1の実測位置であり、Z2_h2は、所定時刻Th2前の制御時刻における歩行者M1の実測位置である。
また、前述したように、図中の所定時刻Th1前の推定位置Z2_m1h1は、歩行者M1が所定時刻Th1前から今回の制御時刻までの間、第1予測軌道を延長した円弧軌道に沿って移動したと推定したときの所定時刻Th1前の制御時刻での位置であり、所定時刻Th2前の推定位置Z2_m1h2は、歩行者M1が所定時刻Th2前から今回の制御時刻までの間、第1予測軌道を延長した円弧軌道に沿って移動したと推定したときの所定時刻Th2前の制御時刻での位置である。
本実施形態では、第1予測軌道の算出において、歩行者M1の2つの実測位置Z2_h1,Z2_h2に対する第1予測軌道の追従性を確保するために、トレースポテンシャルTrが以下に述べる手法により算出される。
まず、下式(173),(174)により、所定時刻Th1前のx座標偏差δxh1及び所定時刻Th1前のy座標偏差δyh1が算出される。
次いで、下式(175),(176)により、所定時刻Th2前のx座標偏差δxh2及び所定時刻Th2前のy座標偏差δyh2が算出される。
そして、下式(177)により、トレースポテンシャルTrが算出される。
上式(177)に示すように、トレースポテンシャルTrは、2つの推定位置Z2_m1h1,Z2_m1h2と、2つの実測位置Z2_h1,Z2_h2との二乗和誤差に相当する値として算出される。したがって、トレースポテンシャルTrが小さいほど、2つの推定位置Z2_m1h1,Z2_m1h2と、2つの実測位置Z2_h1,Z2_h2との差分が小さいことになる。
なお、トレースポテンシャルTrを以下に述べるように算出してもよい。例えば、所定時刻Th1前及び所定時刻Th2前の推定位置Z2_m1h1,Z2_m1h2に加えて、所定時刻Th2よりも前の時刻である所定時刻Th3前の推定値を算出し、所定時刻Th1前及び所定時刻Th2前の歩行者M1の実測位置Z2_h1,Z2_h2に加えて、所定時刻Th3前の歩行者M1の実測位置を取得し、3つ以上の推定値の各々と3つ以上の実測位置の各々との偏差の二乗和を、トレースポテンシャルTrとして用いてもよい。
次に、前述した第1評価関数算出部121における第1評価関数J2_1の算出手法について説明する。この第1評価関数算出部121の算出に用いる各種パラメータの添え字「i」は、i=11~13を表すものである。
第1評価関数算出部121では、前述したリスクポテンシャルR2_p_mi_vj_v、右側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbr_mi及び左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbl_miの算出手法及び算出原理に基づき、以下に述べるように、軌道決定部200からの3つの印加予測位置Z2_mi_rを用いて、第1評価関数J2_1が算出される。これらの印加予測位置Z2_mi_rは、後述するように、前述した3つの予測位置Z2_miに参照入力rを印加したものである。
第1評価関数算出部121では、予測位置Z2_miに参照入力rを印加した印加予測位置Z2_mi_rが用いられる関係上、以下の説明では、印加予測位置Z2_mi_rと同様に、前述した各種パラメータの最後に「_r」を付加したものを用いる。この点は、第2評価関数算出部122及び第3評価関数算出部123においても同様である。
第1評価関数算出部121では、まず、下式(178),(179)により、現在の制御時刻でのx座標偏差dx2_mi_vj_r(k:k)及びy座標偏差dy2_mi_vj_r(k:k)が算出される。
上式(178)のx2_mi_rは、印加予測位置Z2_mi_rのX座標値であり、x2_vj(k:k)は、交通参加者の現在位置W2_vj(k:k)のX座標値である。また、上式(179)のy2_mi_rは、印加予測位置Z2_mi_rのY座標値であり、y2_vj(k:k)は、交通参加者の現在位置W2_vj(k:k)のY座標値である。
次いで、下式(180),(181)により、予測時刻k+kmiでのx座標偏差dx2_mi_vj_r(k:k+kmi)及びy座標偏差dy2_mi_vj_r(k:k+kmi)が算出される。
上式(180)のx2_vj(k:k+kmi)は、交通参加者の予測位置W2_vj(k:k+kmi)のX座標値であり、上式(181)のy2_vj(k:k+kmi)は、交通参加者の予測位置W2_vj(k:k+kmi)のY座標値である。
さらに、下式(182),(183)により、現在の制御時刻での変換x座標偏差dx2_mi_vj_v_r(k:k)及び変換y座標偏差dy2_mi_vj_v_r(k:k)が算出される。
これらの偏差dx2_mi_vj_v_r,dy2_mi_vj_v_rは、上記の歩行者M1の座標系における偏差dx2_mi_vj_r,dy2_mi_vj_rを、交通参加者の座標系に変換した値に相当する。
次に、下式(184),(185)により、予測時刻k+kmiでの変換x座標偏差dx2_mi_vj_v_r(k:k+kmi)及び変換y座標偏差dy2_mi_vj_v_r(k:k+kmi)が算出される。
これらの偏差dx2_mi_vj_v_r(k:k+kmi),dy2_mi_vj_v_r(k:k+kmi)は、上記の歩行者M1の座標系における偏差dx2_mi_vj_r(k:k+kmi),dy2_mi_vj_r(k:k+kmi)を、交通参加者の座標系に変換した値に相当する。
さらに、前述した変換x座標偏差dx2_mi_vj_v_r(k:k)に応じて、図示しないマップを検索することにより、x方向リスクポテンシャルR2_px2_mi_vj_v_r(k:k)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図30と同様のものが用いられる。
また、変換y座標偏差dy2_mi_vj_v_r(k:k)に応じて、図示しないマップを検索することにより、y方向リスクポテンシャルR2_py2_mi_vj_v_r(k:k)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図31と同様のものが用いられる。
次いで、下式(186)により、現在の制御時刻kでのリスクポテンシャルR2_p_mi_vj_v_r(k:k)が算出される。
さらに、前述した変換x座標偏差dx2_mi_vj_v_r(k:k+kmi)に応じて、x方向リスクポテンシャルR2_px2_mi_vj_v_r(k:k)の算出に用いたマップを検索することにより、x方向リスクポテンシャルR2_px2_mi_vj_v_r(k:k+kmi)が算出される。
また、前述した変換y座標偏差dy2_mi_vj_v_r(k:k+kmi)に応じて、y方向リスクポテンシャルR2_py2_mi_vj_v_r(k:k)の算出に用いたマップを検索することにより、y方向リスクポテンシャルR2_py2_mi_vj_v_r(k:k+kmi)が算出される。
次いで、下式(187)により、予測時刻k+kmiでのリスクポテンシャルR2_p_mi_vj_v_r(k:k+kmi)が算出される。なお、本実施形態では、リスクポテンシャルR2_p_mi_vj_v_r(k:k),R2_p_mi_vj_v_r(k:k+kmi)が干渉度合いパラメータに相当する。
また、歩行者M1の予測位置Z2_miにおける右側走路境界関数σ2_r_mi_r及び左側走路境界関数σ2_l_mi_rは、下式(188),(189)に示すように定義される。
さらに、右側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbr_mi_rは、下式(190),(191)によって算出され、左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbl_mi_rは、下式(192),(193)によって算出される。なお、本実施形態では、右側及び左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbr_mi_r,R2_p_rbl_mi_rが干渉度合いパラメータに相当する。
次いで、下式(194),(195)により、所定時刻Th1前のx座標偏差δxh1_r及び所定時刻Th1前のy座標偏差δyh1_rが算出される。
さらに、下式(196),(197)により、所定時刻Th2前のx座標偏差δxh2_r及び所定時刻Th2前のy座標偏差δyh2_rが算出される。
また、下式(198)により、トレースポテンシャルTr_rが算出される。
以上の式(194)~(198)に示すように、トレースポテンシャルTr_rは、2つの推定位置Z2_m1h1_r,Z2_m1h2_rと、2つの実測位置Z2_h1,Z2_h2との二乗和誤差に相当する値として算出される。したがって、トレースポテンシャルTrが小さいほど、2つの推定位置Z2_m1h1_r,Z2_m1h2_rと、2つの実測位置Z2_h1,Z2_h2との差分が小さいことになる。
そして、最終的に、第1評価関数J2_1が、下式(199)によって算出される。
上式(199)において、ω_trは、所定の重み係数であり、nは、歩行者M1の前方に位置する干渉対象の数を表している。この式(199)に示すように、第1評価関数J2_1は、現在の制御時刻k及び予測時刻k+kmi(i=11~13)における、3つの予測位置Z2_mi(i=11~13)のリスクポテンシャルR2_p_mi_vj_v_rの総和と、右側及び左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbr_mi_r,R2_p_rbl_mi_rと、重み係数とトレースポテンシャルの積ω_tr・Tr_rとの和として算出される。
次に、前述した第2評価関数算出部122における第2評価関数J2_2の算出手法について説明する。この第2評価関数算出部122では、以下に述べるように、軌道決定部200からの印加第2予測位置Z2_m2_rを用いて、第1評価関数算出部121とほぼ同様の手法により、第2評価関数J2_2が算出される。この印加予測位置Z2_m2_rは、第2予測位置Z2_m2に参照入力rを印加したものである。
第2評価関数算出部122では、まず、下式(200),(201)により、予測時刻k+km2でのx座標偏差dx2_m2_vj_r(k:k+km2)及びy座標偏差dy2_m2_vj_r(k:k+km2)が算出される。
上式(200)のx2_vj(k:k+km2)は、交通参加者の予測位置W2_vj(k:k+km2)のX座標値であり、上式(201)のy2_vj(k:k+km2)は、交通参加者の予測位置W2_vj(k:k+km2)のY座標値である。
さらに、下式(202),(203)により、予測時刻k+km2での変換x座標偏差dx2_m2_vj_v_r(k:k+km2)及び変換y座標偏差dy2_m2_vj_v_r(k:k+km2)が算出される。
次に、前述した変換x座標偏差dx2_m2_vj_v_r(k:k+km2)に応じて、図示しないマップを検索することにより、x方向リスクポテンシャルR2_px2_m2_vj_v_r(k:k+km2)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図30と同様のものが用いられる。
また、前述した変換y座標偏差dy2_m2_vj_v_r(k:k+km2)に応じて、図示しないマップを検索することにより、y方向リスクポテンシャルR2_py2_m2_vj_v_r(k:k+km2)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図31と同様のものが用いられる。
次いで、下式(204)により、予測時刻k+km2でのリスクポテンシャルR2_p_m2_vj_v_r(k:k+km2)が算出される。
また、歩行者M1の第2予測位置Z2_m2における右側走路境界関数σ2_r_m2_r及び左側走路境界関数σ2_l_m2_rは、下式(205),(206)に示すように定義される。
さらに、右側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbr_m2_rは、下式(207),(208)によって算出され、左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbl_m2_rは、下式(209),(210)によって算出される。
そして、最終的に、第2評価関数J2_2が、下式(211)によって算出される。
この式(211)に示すように、第2評価関数J2_2は、第2予測位置Z2_m2におけるリスクポテンシャルR2_p_m2_vj_v_rの総和と、右側及び左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbr_m2_r,R2_p_rbl_m2_rとの和として算出される。
次に、前述した第3評価関数算出部123における第3評価関数J2_3の算出手法について説明する。この第3評価関数算出部123では、以下に述べるように、軌道決定部200からの印加第3予測位置Z2_m3_rを用いて、第2評価関数算出部122と同様の手法により、第3評価関数J2_3が算出される。この印加予測位置Z2_m3_rは、第3予測位置Z2_m3に参照入力rを印加したものである。
第3評価関数算出部123では、まず、下式(212),(213)により、予測時刻k+km3でのx座標偏差dx2_m3_vj_r(k:k+km3)及びy座標偏差dy2_m3_vj_r(k:k+km3)が算出される。
上式(212)のx2_vj(k:k+km3)は、交通参加者の予測位置W2_vj(k:k+km3)のX座標値であり、上式(213)のy2_vj(k:k+km3)は、交通参加者の予測位置W2_vj(k:k+km3)のY座標値である。
さらに、下式(214),(215)により、予測時刻k+km3での変換x座標偏差dx2_m3_vj_v_r(k:k+km3)及び変換y座標偏差dy2_m3_vj_v_r(k:k+km3)が算出される。
次に、前述した変換x座標偏差dx2_m3_vj_v_r(k:k+km3)に応じて、図示しないマップを検索することにより、x方向リスクポテンシャルR2_px2_m3_vj_v_r(k:k+km3)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図30と同様のものが用いられる。
また、前述した変換y座標偏差dy2_m3_vj_v_r(k:k+km3)に応じて、図示しないマップを検索することにより、y方向リスクポテンシャルR2_py2_m3_vj_v_r(k:k+km3)が算出される。この場合、マップとしては、前述した図31と同様のものが用いられる。
次いで、下式(216)により、予測時刻k+km3でのリスクポテンシャルR2_p_m3_vj_v_r(k:k+km3)が算出される。
また、歩行者M1の第3予測位置Z2_m3における右側走路境界関数σ2_r_m3_r及び左側走路境界関数σ2_l_m3_rは、下式(217),(218)に示すように定義される。
さらに、右側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbr_m3_rは、下式(219),(220)によって算出され、左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbl_m3_rは、下式(221),(222)によって算出される。
そして、最終的に、第3評価関数J2_3が下式(223)によって算出される。
この式(223)に示すように、第3評価関数J2_3は、第3予測位置Z2_m3におけるリスクポテンシャルR_p_m3_vj_v_rの総和と、右側及び左側走路境界リスクポテンシャルR2_p_rbr_m3_r,R2_p_rbl_m3_rとの和として算出される。
次に、前述した軌道決定部200について説明する。図40に示すように、軌道決定部200は、第1~第3極値探索コントローラ210~230及び第1~第3予測軌道算出部241~243を備えている。
まず、第1極値探索コントローラ210について説明する。この第1極値探索コントローラ210は、以下に述べるように、第1実施形態の第1極値探索コントローラ31と同様の手法により、予測曲率ρ2_m1及び印加予測曲率ρ2_m1_rを算出するものである。この予測曲率ρ2_m1は、前述した図29における第1予測軌道の曲率半径R2_m1の逆数に相当する。
図40に示すように、第1極値探索コントローラ210は、ハイパスフィルタ211、参照入力発生器212、2つの遅延要素214,218、乗算器213、移動平均フィルタ215、3つの増幅要素216a,216b,216c、及び2つの加算要素217,219を備えている。
このハイパスフィルタ211では、下式(224)により、フィルタ値h2_1が算出される。
また、参照入力発生器212は、前述した参照入力rを発生する。この参照入力rは、遅延要素214を介して乗算器213に入力され、乗算器213では、下式(225)により、中間値P2_hr1が算出される。
また、移動平均フィルタ215では、下式(226)により、移動平均値P2_c1が算出される。なお、本実施形態では、移動平均値P2_c1が修正量に相当する。
次いで、加算要素217には、移動平均値P2_c1が増幅要素216aによって所定ゲインK2_sk1分、増幅された状態で入力され、後述する移動平均値P2_c2が増幅要素216cによってゲインK2_sk1・K2_bp_21分、増幅された状態で入力されるとともに、後述する移動平均値P2_c3が増幅要素216bによってゲインK2_sk1・K2_bp_32分、増幅された状態で入力される。
ここで、ゲインK2_bp_21は、P2_c2≧0のときには、移動平均値P2_c1に応じて、図41に示すマップを検索することにより算出される。図41のPref5は、正の所定値である。このマップでは、ゲインK2_bp_21は、0<P2_c1の範囲では値1に設定され、P2_c1<-Pref5の範囲では値0に設定されているとともに、-Pref5≦P2_c1≦0の範囲では、移動平均値P2_c1が大きいほど、より値1に近づくように設定されている。
また、ゲインK2_bp2_21は、P2_c2<0のときには、移動平均値P2_c1に応じて、図42に示すマップを検索することにより算出される。図42のPref6は、正の所定値であり、Pref5とPref6は同一の値でもよく、互いに異なる値でもよい。このマップでは、ゲインK2_bp2_21は、P2_c1<0の範囲では値1に設定され、Pref6<P2_c1の範囲では値0に設定されているとともに、0≦P2_c1≦Pref6の範囲では、移動平均値P2_c1が大きいほど、より値0に近づくように設定されている。
さらに、ゲインK2_bp2_31は、P2_c2≧0&P2_c3≧0のときには、移動平均値P2_c1に応じて、図43に示すマップを検索することにより算出される。このマップでは、ゲインK2_bp2_31は、0<P2_c1の範囲では値1に設定され、P2_c1<-Pref5の範囲では値0に設定されているとともに、-Pref5≦P2_c1≦0の範囲では、移動平均値P2_c1が大きいほど、より値1に近づくように設定されている。
また、ゲインK2_bp2_31は、P2_c2<0&P2_c3<0のときには、移動平均値P2_c1に応じて、図44に示すマップを検索することにより算出される。このマップでは、ゲインK2_bp2_31は、P2_c1<0の範囲では値1に設定され、Pref6<P2_c1の範囲では値0に設定されているとともに、0≦P2_c1≦Pref6の範囲では、移動平均値P2_c1が大きいほど、より値0に近づくように設定されている。
さらに、ゲインK2_bp2_31は、2つの移動平均値P2_c2,P2_c3の符号が異なるときには値0として算出される。
2つのゲインK2_bp_21,K2_bp_31が以上のように算出される理由と、値P2_c2・K2_sk1・K2_bp_21が第2極値探索コントローラ220から第1極値探索コントローラ210に入力される理由と、値P2_c3・K2_sk1・K2_bp_31が第3極値探索コントローラ230から第1極値探索コントローラ210に入力される理由については後述する。
さらに、加算要素217には、予測曲率ρ2_m1が遅延要素218を介して入力される。そして、加算要素217では、下式(227)により、予測曲率ρ2_m1が算出される。
さらに、加算要素219では、下式(228)により、印加予測曲率ρ2_m1_rが算出される。
そして、以上のように算出された予測曲率ρ2_m1及び印加予測曲率ρ2_m1_rは、第1極値探索コントローラ210から第1予測軌道算出部241に入力される。
次に、第2極値探索コントローラ220について説明する。第2極値探索コントローラ220は、第1実施形態の前述した第2極値探索コントローラ32と同様の手法によって、予測曲率ρ2_m2及び印加予測曲率ρ2_m2_rを算出するものである。この予測曲率ρ2_m2は、前述した第2予測軌道の曲率半径R2_m2の逆数に相当する。
図40に示すように、第2極値探索コントローラ220は、ハイパスフィルタ221、参照入力発生器222、2つの遅延要素224,228、乗算器223、移動平均フィルタ225、2つの増幅要素226a,226b及び2つの加算要素227,229を備えている。
このハイパスフィルタ221では、下式(229)により、フィルタ値h2_2が算出される。
また、参照入力発生器222は、参照入力rを発生する。この参照入力rは、遅延要素224を介して乗算器223に入力され、乗算器223では、下式(230)により、中間値P2_hr2が算出される。
また、移動平均フィルタ225では、下式(231)により、移動平均値P2_c2が算出される。なお、本実施形態では、移動平均値P2_c2が修正量に相当する。
次いで、加算要素227には、移動平均値P2_c2が増幅要素226aによって所定ゲインK2_sk2分、増幅された状態で入力され、後述する移動平均値P2_c3が増幅要素226bによってゲインK2_sk2・K2_bp_32分、増幅された状態で入力される。
ここで、ゲインK2_bp_32は、P2_c3≧0のときには、移動平均値P2_c2に応じて、図45に示すマップを検索することにより算出される。図45のPref7は、正の所定値である。このマップでは、ゲインK2_bp_32は、0<P2_c2の範囲では値1に、P2_c2<-Pref7の範囲では値0にそれぞれ設定されているとともに、-Pref7≦P2_c2≦0の範囲では、移動平均値P2_c2が大きいほど、より値1に近づくように設定されている。
また、ゲインK2_bp_32は、P2_c3<0のときには、移動平均値P2_c2に応じて、図46に示すマップを検索することにより算出される。図46のPref8は、正の所定値である。ここで、Pref7とPref8は、同一の値でもよく、互いに異なる値でもよい。
このマップでは、ゲインK2_bp_32は、P2_c2<0の範囲では値1に、Pref8<P2_c2の範囲では値0にそれぞれ設定されているとともに、0≦P2_c2≦Pref8の範囲では、移動平均値P2_c2が大きいほど、より値0に近づくように設定されている。
ゲインK2_bp_32が以上のように算出される理由と、値P2_c3・K2_sk2・K2_bp_32が第3極値探索コントローラ230から第2極値探索コントローラ220に入力される理由については後述する。
さらに、加算要素227には、予測曲率ρ2_m2が遅延要素228を介して入力される。そして、加算要素227では、下式(232)により、予測曲率ρ2_m2が算出される。
上式(232)のλ_fgtは、忘却係数であり、0<λ_fgt<1が成立するように設定される。この忘却係数λ_fgtは、リスクポテンシャルがゼロのときに第2予測軌道を直線状に戻すため(すなわち、予測曲率ρ2_m2を値0に近づけるため)の値である。
さらに、加算要素229では、下式(233)により、印加予測曲率ρ2_m2_rが算出される。
そして、以上のように算出された予測曲率ρ2_m2及び印加予測曲率ρ2_m2_rは、第2極値探索コントローラ220から第2予測軌道算出部242に入力される。
次に、第3極値探索コントローラ230について説明する。第3極値探索コントローラ230は、第1実施形態の前述した第3極値探索コントローラ33と同様の手法によって、予測曲率ρ2_m3及び印加予測曲率ρ2_m3_rを算出するものである。この予測曲率ρ2_m3は、前述した第3予測軌道の曲率半径R2_m3の逆数に相当する。
図40に示すように、第3極値探索コントローラ230は、ハイパスフィルタ231、参照入力発生器232、2つの遅延要素234,238、乗算器233、移動平均フィルタ235、増幅要素236及び2つの加算要素237,239を備えている。
このハイパスフィルタ231では、下式(234)により、フィルタ値h2_3が算出される。
また、参照入力発生器232は、参照入力rを発生する。この参照入力rは、遅延要素234を介して乗算器233に入力され、乗算器233では、下式(235)により、中間値P2_hr3が算出される。
また、移動平均フィルタ235では、下式(236)により、移動平均値P2_c3が算出される。なお、本実施形態では、移動平均値P2_c3が修正量に相当する。
次いで、加算要素237には、移動平均値P2_c3が増幅要素236によって所定ゲインK2_sk3分、増幅された状態で入力され、予測曲率ρ2_m3が遅延要素238を介して入力される。
そして、加算要素237では、下式(237)により、予測曲率ρ2_m3が算出される。
上式(237)の忘却係数λ_fgtは、リスクポテンシャルがゼロのときに第3予測軌道を直線状に戻すため(すなわち予測曲率ρ2_m3を値0に近づけるため)の値である。
さらに、加算要素239では、下式(238)により、印加予測曲率ρ2_m3_rが算出される。
そして、以上のように算出された予測曲率ρ2_m3及び印加予測曲率ρ2_m3_rは、第3極値探索コントローラ230から第3予測軌道算出部243に入力される。
次に、前述した第1予測軌道算出部241について説明する。この第1予測軌道算出部241では、第1極値探索コントローラ210からの予測曲率ρ2_m1及び印加予測曲率ρ2_m1_rを用いて、前述した原理に基づき、3つの予測位置Z2_m11~Z2_m13と、3つの印加予測位置Z2_m11_r~Z2_m13_rが算出される。
まず、前述した式(124)~(125),(130)~(135)により、予測位置Z2_m11のX座標値x2_m11及びY座標値y2_m11と、予測位置Z2_m12のX座標値x2_m12及びY座標値y2_m12と、予測位置Z2_m13のX座標値x2_m13及びY座標値y2_m13とが算出される。
次いで、下式(239),(240)により、第1予測軌道の曲率半径R2_m1_rが算出される。
上式(239),(240)のρ2_minは、所定の最小曲率(正値)である。
次に、下式(241)により、第1予測軌道の回転角度θ2_m1_rが算出される。
さらに、下式(242),(243)により、印加予測位置Z2_m11_rのX座標値x2_m11_r及びY座標値y2_m11_rが算出される。
次いで、下式(244),(245)により、印加予測位置Z2_m12_rのX座標値x2_m12_r及びY座標値y2_m12_rが算出される。
また、下式(246),(247)により、印加予測位置Z2_m13_rのX座標値x2_m13_r及びY座標値y2_m13_rが算出される。
さらに、下式(248),(249)により、所定時刻Th1前の推定位置Z2_m1h1_rのX座標値x2_m1h1_r及びY座標値y2_m1h1_rが算出される。
次に、下式(250),(251)により、所定時刻Th2前の推定位置Z2_m1h2_rのX座標値x2_m1h2_r及びY座標値y2_m1h2_rが算出される。
次に、前述した第2予測軌道算出部242について説明する。この第2予測軌道算出部242では、第2極値探索コントローラ220からの予測曲率ρ2_m2及び印加予測曲率ρ2_m2_rを用いて、前述した原理に基づき、第2予測位置Z2_m2及び印加第2予測位置Z2_m2_rが算出される。
まず、前述した式(142)~(147)により、第2予測位置Z2_m2のX座標値x2_m2及びY座標値y2_m2が算出される。
次いで、下式(252),(253)により、第2予測軌道の曲率半径R2_m2_rが算出される。
次に、下式(254)により、第2予測軌道の回転角度θ2_m2_rが算出される。
さらに、下式(255),(256)により、前述したX’-Y’座標系(図29参照)における印加第2予測位置Z2_m2_rのX’座標値x’_m2_r及びY’座標値y’_m2_rが算出される。
次いで、下式(257),(258)により、X-Y座標系(図29参照)における印加第2予測位置Z2_m2_rのX座標値x2_m2_r及びY座標値y2_m2_rが算出される。
次に、前述した第3予測軌道算出部243について説明する。この第3予測軌道算出部243では、第3極値探索コントローラ230からの予測曲率ρ2_m3及び印加予測曲率ρ2_m3_rを用いて、前述した原理に基づき、第3予測位置Z2_m3及び印加第3予測位置Z2_m3_rが算出される。
まず、前述した式(148)~(153)により、第3予測位置Z2_m3のX座標値x2_m3及びY座標値y2_m3が算出される。
次いで、下式(259),(260)により、第3予測軌道の曲率半径R2_m3_rが算出される。
次に、下式(261)により、第3予測軌道の回転角度θ2_m3_rが算出される。
さらに、下式(262),(263)により、前述したX”-Y”座標系(図29参照)における印加第3予測位置Z2_m3_rのX”座標値x”_m3_r及びY”座標値y”_m3_rが算出される。
次いで、下式(264),(265)により、X-Y座標系(図29参照)における印加第3予測位置Z2_m3_rのX座標値x2_m3_r及びY座標値y2_m3_rが算出される。
以上のように、軌道決定部200では、第1~第3極値探索コントローラ210~230によって、第1~第3予測軌道の予測曲率ρ2_m1~ρ2_m3が算出され、これらの予測曲率ρ2_m1~ρ2_m3に基づいて、前述した5つの予測位置Z2_mi(i=11~13,2,3)と、5つの印加予測位置Z2_mi_r(i=11~13,2,3)と、所定時刻Th1前及び所定時刻Th2前の推定位置Z2_m1h1,Z2_m1h2とが算出される。
次に、前述した値P2_c2・K2_sk1・K2_bp_21及び値P2_c3・K2_sk1・K2_bp_31が第1極値探索コントローラ210に入力される理由と、値P2_c3・K2_sk2・K2_bp_32が第2極値探索コントローラ220に入力される理由と、3つのゲインK2_bp_21,K2_bp_31,K2_bp_32が前述したように設定されている理由について説明する。
例えば、第1~第3極値探索コントローラ210~230において、予測曲率ρ2_m1~ρ2_m3を互いに無関係に算出した場合、以下に述べるような状態が発生することがある。
すなわち、図47に示すように、歩行者M1の右前方に干渉対象が存在する場合、第1予測軌道(現在位置~予測位置Z2_m13)と、第2予測軌道(予測位置Z2_m13~第2予測位置Z2_m2)とが直線状に決定される一方、第2予測位置Z2_m2から第3予測位置Z2_m3までの第3予測軌道が円弧状に決定されることがある。
これに対して、通常の場合、歩行者M1は、図47に示すような軌道で移動することはなく、第2予測位置Z2_m2に達する前に干渉対象との干渉を回避できるように予め旋回を開始しながら移動するのが一般的である。
したがって、軌道決定部200では、そのような歩行者M1の移動軌道を予測して決定する必要がある。例えば、図48に示すように、第1予測軌道、第2予測軌道及び第3予測軌道が同じ旋回方向に決定されている場合、すなわち、3つの移動平均値P2_c1~P2_c3の符号が互いに同一である場合には、予測曲率ρ2_m1を2つの移動平均値P2_c2,P2_c3を反映させながら算出するとともに、予測曲率ρ2_m2を移動平均値P2_c3を反映させながら算出する必要がある。
一方、例えば、図49に示すように、第1予測軌道と第2予測軌道が逆の旋回方向に決定され、第2予測軌道と第3予測軌道が逆の旋回方向に決定されている場合、すなわち、移動平均値P2_c1,Pc_2の符号の正負が異なるとともに、移動平均値P2_c2,P2_c3の符号の正負が異なる場合において、予測曲率ρ2_m1を2つの移動平均値P2_c2,P2_c3を反映させながら算出したときには、干渉対象に対する回避マージンを減少させてしまうことになる。さらに、予測曲率ρ2_m2を移動平均値P2_c3を反映させながら算出した場合にも、同じ問題が発生することになる。したがって、予測曲率ρ2_m1を2つの移動平均値P2_c2,P2_c3を反映させないように算出するとともに、予測曲率ρ2_m2を移動平均値P2_c3を反映させないように算出する必要がある。
以上の理由により、2つのゲインK2_bp_21,K2_bp_31が前述したように設定されているとともに、前述した値P2_c2・K2_sk1・K2_bp_21及び値P2_c3・K2_sk1・K2_bp_31が第1極値探索コントローラ210に入力されるように構成されている。
同じ理由により、ゲインK2_bp_32が前述しように設定されているとともに、値P2_c3・K2_sk2・K2_bp_32が第2極値探索コントローラ220に入力されるように構成されている。
以上の構成により、3つの移動平均値P2_c1~P2_c3の符号と、2つの値P2_c2・K2_bp_21,P2_c3・K2_bp_31と、予測曲率ρ2_m1に対する移動平均値P2_c2,P2_c3の反映状態との関係は、図50に示す12個のパターンC1~C12になる。この場合、前述した図48の状態では、パターンC1(又はC2)のようになり、前述した図49の状態では、パターンC9~C12のいずれかのようになる。
また、2つの移動平均値P2_c2,P2_c3の符号と、値P2_c3・K2_bp_32と、予測曲率ρ2_m2に対する移動平均値P2_c3の反映状態との関係は、図51に示す6個のパターンD1~D6になる。
以上のように、本実施形態の軌道決定部200では、5つの予測位置Z2_m11,Z2_m12,Z2_m13,Z2_m2,Z2_m3が算出された後、これらの値が車両制御部40に入力される。
車両制御部40では、5つの予測位置Z2_m11,Z2_m12,Z2_m13,Z2_m2,Z2_m3に応じて、原動機5及びアクチュエータ6が制御される。それにより、自車両3は、歩行者M1の第1~第3予測軌道に基づき、歩行者M1との干渉を回避しながら走行することが可能になる。
以上のように、第2実施形態の軌道生成装置100によれば、第1~第3予測軌道の各々において、干渉対象との干渉度合いを表すリスクポテンシャルR2_p_mi_vj_v_r,R2_p_rbr_mi_r,R2_p_rbl_mi_rが算出され、これらのリスクポテンシャルR2_p_mi_vj_v_r,R2_p_rbr_mi_r,R2_p_rbl_mi_rの総和を含むように、第1~第3評価関数J2_1~J2_3が算出される。
そして、これらの第1~第3評価関数J2_1~J2_3が極小値になるように、予測曲率ρ2_m1~ρ2_m3が算出され、これらの予測曲率ρ2_m1~ρ2_m3に基づいて、第1~第3予測軌道が決定される。すなわち、5つの予測位置Z2_mi(i=11,12,13,2,3)は、第1~第3評価関数J2_1~J2_3が極小値になるように決定されることになる。
この場合、上述したように、第1評価関数J2_1は、歩行者M1と干渉対象との干渉度合いを表すリスクポテンシャルの総和と、重み係数とトレースポテンシャルの積ω_tr・Tr_rとの総和として算出され、第2及び第3評価関数J2_2,J2_3は、歩行者M1と干渉対象との干渉度合いを表すリスクポテンシャルの総和として算出される。そのため、そのような第1~第3評価関数J2_1~J2_3が極小値になるように決定されることによって、第1~第3予測軌道は、干渉対象との干渉渉度合いが減少するように決定されることになる。
さらに、予測曲率ρ2_m1は、第1極値探索コントローラ31における移動平均値P2_c1と第2極値探索コントローラ32における移動平均値P2_c2とが同符号の場合には、移動平均値P2_c2を反映させながら決定される(図48及び図50参照)。
また、予測曲率ρ2_m2は、第2極値探索コントローラ32における移動平均値P2_c2と第3極値探索コントローラ33における移動平均値P2_c3とが同符号の場合には、移動平均値P2_c3を反映させながら決定される(図48及び図51参照)。
この場合、3つの移動平均値P2_c1~P2_c3は、3つの予測曲率ρ2_m1~ρ2_m3をそれぞれ修正するための修正量、すなわち第1~第3予測軌道を修正するための修正量として算出される。したがって、第1予測軌道及び第2予測軌道の修正量の符号が同一の場合、第1予測軌道は、それよりも歩行者M1の現在位置から遠い第2予測軌道の修正方向と同方向にさらに修正されることになる。
これと同様に、第2予測軌道及び第3予測軌道の修正量の符号が同一の場合、第2予測軌道は、これよりも歩行者M1の現在位置から遠い第3予測軌道の修正方向と同方向にさらに修正されることになる。
ここで、干渉対象が歩行者M1の進行方向に存在する場合には、現在位置から遠い方の予測軌道の方が、歩行者M1の現在位置から近い方の予測軌道と比べて、干渉対象により近い軌道となる。したがって、干渉対象に近い方の予測軌道を修正するための修正量を反映させながら、干渉対象から遠い方(すなわち歩行者M1に近い方)の予測軌道を生成することによって、干渉対象から遠い方の予測軌道において、干渉対象との干渉を回避するための回避マージンをより増大させることができる。このように、干渉対象に対する歩行者M1の回避行動をより早く予測することができることで、歩行者M1の予測行動に基づいて自車両3の走行軌道を決定する際、実現可能な走行軌道が制限される自車両3においても、歩行者M1との干渉を回避できるように、車両3の未来の走行軌道を適切に決定することができる。
一方、隣り合う2つの予測軌道の修正量が異符号である場合、2つの予測軌道が干渉対象を回避するために互いに異なる方向に修正されていることになる。したがって、そのような条件下において、歩行者M1の現在位置から遠い方の予測軌道を修正するための修正量を、現在位置から近い方の予測軌道に反映させたときには、現在位置から近い方の予測軌道において、干渉対象に対する回避マージンを減少させてしまうことになる。その結果、干渉対象に対する歩行者M1の回避行動の変化を小さく予測してしまうことになり,歩行者M1の予測行動に基づいて自車両3の走行軌道を決定する際、その実現可能な走行軌道が制限される自車両3においては、歩行者M1との干渉を回避できる十分なマージンの確保が難しくなり、自車両3の未来の走行軌道を適切に決定できなくなる。
これに対して、本実施形態の場合、移動平均値P2_c1と移動平均値P2_c2が異符号である場合には、予測曲率ρ2_m1は、移動平均値P2_c2を反映させることなく決定される(図49及び図50参照)。これと同様に、移動平均値P2_c2と移動平均値P2_c3が異符号である場合には、予測曲率ρ2_m2は、移動平均値P2_c3を反映させることなく決定される(図49及び図51参照)。それにより、現在位置から近い方の予測軌道において、干渉対象に対する回避マージンを適切に確保することができる。
また、第1予測軌道は、第2予測軌道及び第3予測軌道よりも短い3つの予測軌道を組み合わせたものとして決定される。それにより、第2予測軌道及び第3予測軌道と比べて、歩行者M1との距離が近い第1予測軌道においても、干渉対象との干渉を回避するための回避マージンを適切に確保することができる。
さらに、第1評価関数J2_1は、前述した式(199)に示すように、リスクポテンシャルの総和に加えて、重み係数とトレースポテンシャルの積ω_tr・Tr_rを含むものとして算出される。このトレースポテンシャルTr_rは、2つの推定位置Z2_m1h1_r,Z2_m1h2_rと、2つの実測位置Z2_h1,Z2_h2との二乗和誤差に相当する値として算出される。
したがって、第1評価関数J2_1が極小値になるように、第1予測軌道を決定することによって、2つの推定位置Z2_m1h1_r,Z2_m1h2_rと、2つの実測位置Z2_h1,Z2_h2との差分が小さくなるように、第1予測軌道を決定することができる。それにより、歩行者M1の過去の軌道に対する追従性を考慮しながら、第1予測軌道を決定することができる。
なお、第2実施形態は、自車両3を第1移動体とした例であるが、これに代えて、2輪車両、ロボット、航空機又は船舶などを第1移動体としてもよい。
また、第2実施形態は、本発明の軌道生成装置100を自動運転可能な4輪車両3に搭載した例であるが、これに代えて、軌道生成装置を4輪車両以外の移動体(例えば、2輪車両、ロボット、航空機又は船舶など)に搭載してもよく、軌道生成装置を単独で使用してもよい。
また、第2実施形態は、歩行者M1を第2移動体とした例であるが、これに代えて、2輪車両、ロボット、航空機又は船舶などを第2移動体としてもよい。
また、第2実施形態は、交通参加者を干渉対象とした例であるが、これに代えて、2輪車両、ロボット、航空機又は船舶などを干渉対象としてもよい。