JP7492819B2 - ロールイン用油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、デニッシュペストリー等の層状ベーカリー製品の製造に用いられる、ロールイン用油脂組成物に関する。
デニッシュペストリー、クロワッサン、パイ等の層状ベーカリー製品の製造では、シート状の油脂を生地の間に挟み込んだ後、折り畳み、圧延を繰り返すことで生地中に薄い油脂層を多数形成させる。この油脂層は、生地層の相互の付着を防止する役割を果たし、続く焼成において、生地から発生する水蒸気や炭酸ガスの発散を遮り、その結果として製品を層状に膨張させる。焼成中、生地に折り込まれた油脂は、最終的に溶けて生地に吸収される。その生地では、生地中の澱粉が固化し、蛋白質が熱変性することによって凝固し、独特の層状構造が形成される。
ロールイン用油脂組成物に関し、得られる層状ベーカリー製品の改善等を目的に、幾つかの検討が行われてきた。例えば、特許文献1は、マイグレーションの抑制効果を有し、特にチョコレート類、ナッツ類又はクリーム類を含有させた場合において、白色化現象、チョコレート類の軟化、ブルーム減少を抑制することができるものとして、エステル化度が8以上であり、結合脂肪酸中の飽和脂肪酸の割合が65質量%以上であり、グリセリンの重合度が6以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.01~10質量%含有するロールイン用油脂組成物を製造する方法であり、該ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する油相45~87質量%と、水相55~13質量%とを乳化し、冷却可塑化することを特徴するロールイン用油脂組成物の製造方法を提案する。特許文献2は、焼き上げ直後にさくく、且つ経日的に水分が戻ってもさくい食感を維持でき、また、長期間保存した後にベーカリー製品の原料として用いても、浮きや内層が良好で形状にばらつきが生じないベーカリー製品が得られるものとして、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルを0.2~4質量%、及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを0.01~1.5質量%含有し、且つ該ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルと該グリセリンコハク酸脂肪酸エステルとの質量比率が1:1~20であり、さらにプロピレングリコール脂肪酸エステルを0.01~1.5質量%含有することを特徴とするロールイン用油中水型乳化組成物を提供する。
また特許文献3は、保形性に優れ、油の染み出しが起こりにくく、かつ、これが添加された焼成品の口溶け、歯切れ及びソフトさに優れる可塑性油脂組成物として、SSU型トリグリセリドに対するSUS型トリグリセリドの質量比が0.2以上、1.5未満であり、2飽和-1不飽和型トリグリセリドと3飽和型トリグリセリドとの合計含有量が、油脂全体の質量に対して30~65質量%であり、コハク酸モノグリセリン脂肪酸エステルを、組成物全体の質量に対して、0.05~2.5質量%含有し、油脂の構成脂肪酸中のトランス酸の含有量が、油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して、3.0質量%未満であり、構成脂肪酸の総炭素数が40~48であるトリグリセリドを、油脂全体の質量に対して、5.0~25質量%含有する可塑性油脂組成物を提案する。特許文献4は、生地との伸展性が良好でさくさのある食感が得られ、層の形成状態が良くボリュームのある焼成品を得ることができ、かつ液状油の染みだしや層状食品用可塑性油脂の硬さ変化が少なく高温や経時に対する安定性に優れたものとして、焼成品の生地に折り込んで使用される層状食品用油脂組成物であって、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上であるラウリン系油脂(A1)と、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上であるパーム系油脂(A2)とのエステル交換油脂であって、かつヨウ素価が20~45であるエステル交換油脂(A)を含有し、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を2個、不飽和脂肪酸(U)を1個含む2飽和トリグリセリドと、構成脂肪酸として飽和脂肪酸(S)を3個含む3飽和トリグリセリドとの合計割合が油脂全量に対して40~65質量%、2飽和トリグリセリドのうち、対称型トリグリセリド(SUS)と非対称型トリグリセリド(SSU)との質量比(SUS/SSU)が0.3~1.2、構成脂肪酸の総炭素数が40~48であるトリグリセリドの割合が油脂全量に対して10~30質量%である層状食品用油脂組成物を提案する。特許文献5は、生地との伸展性が良好でさくさのある食感が得られ、層の形成状態が良くボリュームのある焼成品を得ることができ、かつ液状油の染みだしや層状食品用可塑性油脂の硬さ変化が少なく高温や経時に対する安定性に優れたものとして、1位および3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合したSUS型トリグリセリドと、1位および2位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位に不飽和脂肪酸Uが結合したSSU型トリグリセリドと、1位、2位、および3位の全てに飽和脂肪酸Sが結合したSSS型トリグリセリドとを含んでなり、前記SUS型トリグリセリドと前記SSU型トリグリセリドの質量比が0.3:1.0~1.5:1.0であり、かつ前記SUS型トリグリセリド、前記SSU型トリグリセリド、および前記SSS型トリグリセリドの合計含有量が40質量%以上65質量%以下である、油脂と、前記油脂の質量に対して0.05質量%以上5.0質量%以下の、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させる、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、を含んでなり、油脂組成物中の油脂が前記油脂のみからなる、製菓製パン用油脂組成物を提案する。特許文献6は、可塑性油脂として生地に練り込み、あるいは折り込むことで、ソフトさ、しとり、歯切れがいずれも良好な食感のパンを得ることができるものとして、飽和脂肪酸の含有量が油脂の構成脂肪酸全体の質量に対して35~62質量%、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量が油脂の2位構成脂肪酸全体の質量に対して35~55質量%である油脂と、脂肪酸の炭素数が12~18であるプロピレングリコール脂肪酸エステルとを含有する製パン用油脂組成物を提案する。
さらに特許文献7は、使用量を減じた場合であっても良好な伸展性と良好なコシを両立することのできるものとして、油脂I(トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、ラウリン酸残基を5~40質量%含有するランダムエステル交換油脂)及び油脂II(トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、ラウリン酸残基が5質量%未満であり、かつ炭素数16以上の飽和脂肪酸残基を50質量%以上含有し、炭素数16以上の飽和脂肪酸残基で構成されたトリ飽和トリグリセリド(SSS)に占めるPPPとStStStとの合計の割合(PPP+StStSt)/SSSが0.3~0.5(質量比)。(式中、PPPはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてPを3個有するトリグリセリドを表し、StStStはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてStを3個有するトリグリセリドを表し、Stはステアリン酸を表し、Pはパルミチン酸を表す。))を合計で50質量%以上含有し、さらに油脂Iと油脂IIの質量比である油脂II/油脂Iが0.1~5であるロールイン用可塑性油脂組成物を提案する。
一方、風味良好な層状ベーカリー製品を得るには、ロールインする油脂組成物として無塩バターのような乳脂含有油脂を用いることが、有効な方法として知られている。しかし乳脂は、低温では固形脂含量(SFC)が大きく硬いため、生地圧延時の伸展性が悪く、油脂切れを起こしたり薄く延びた生地を傷つけたりする。また高温では乳脂のSFC値は急速に小さくなり油脂が軟化するため、圧延時に折り込んだ油脂が溶解したり生地に練り込まれたりする。この点、特許文献8は、バター等の乳脂含有油脂を折り込み油脂として用いても、良好な浮き、ボリューム、内層を備える積層構造を有するベーカリー製品が短時間で得られる方法として、10℃以下に調温してから350~1500g/cm2の硬さに練った油脂を、折り込み油脂として用いることを特徴とする積層構造を有するベーカリー製品の製造方法を提案する。
特開2003-038097号公報 特開2013-013374号公報 特開2015-139428号公報 特開2015-142570号公報 特開2016-106597号公報 特開2017-163892号公報 特開2018-042478号公報 特開平6-046738号公報
ロールイン用油脂組成物は、生地圧延時にドウに練り込まれず、割れやヒビが生じることなく折り込まれること(コシ)が求められ、かつドウとともに均一に伸展すること(伸展性)が求められる。しかし乳脂は、構成脂肪酸残基組成中に短鎖の脂肪酸残基が多く、乳脂を含むロールイン用油脂組成物は全体として柔らかい物性になり、コシや伸展性に乏しくなりがちであった。また、乳脂入りのロールイン用油脂組成物を使用すると、得られる層状ベーカリー製品の内層や層の浮きが悪化し易い。このため、ロールイン用油脂組成物の油相の組成を調整し、油脂組成物の物性を調整することが求められる。特にロールイン用油脂組成物の使用量が多いベーカリー製品にとっては、油脂組成物の物性の調節が重要である。
また、内層や層の浮きの悪化に対しては、油脂だけでなくドウ生地の改質やロールイン用油脂組成物をロールインしたベーカリー生地の改質も重要であると考えられる。
本発明者らは、乳脂を含む場合であっても、コシや伸展性に優れたロールイン用油脂組成物であって、得られる層状ベーカリー製品における内層、層の浮きを良好とすることのできるものを得ることを目的に種々検討した。その結果、油脂組成物の物性を調製するための乳化剤とロールインされたベーカリー生地の改質のための乳化剤とを油脂組成物に含有させることにより、油脂組成物の物性を調節でき、また油脂組成物がロールインされたベーカリー生地を良好に改質できることを見出した。さらにこのような乳化剤を用いた油脂組成物をロールイン用として用いることにより、得られる層状ベーカリー製品の食感が優れたものとなることを見出した。
本発明は上記知見に基づきなされたものである。本発明は、以下を提供する。
[1]下記を含有する、ロールイン用油脂組成物:
(a)乳脂以外の油脂
(b)乳脂
(c)コハク酸モノグリセリド 0.10~5.0質量%
(d)ポリグリセリン脂肪酸エステル 0.10~5.0質量%
(e)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR) 0.05~2.0質量% 。
[2]さらに
(f)プロピレングリコール脂肪酸エステル 0.10 ~1.5質量%
を含有する、1に記載のロールイン用油脂組成物。
[3](d)と(e)との含有質量比((d)/(e))が、0.50~3.0である、1または2に記載のロールイン用油脂組成物。
[4](c)と(e)との含有質量比((c)/(e))が、0.50~7.0である、1~3のいずれか1項に記載のロールイン用油脂組成物。
[5](b)乳脂の含有量が、3.0~30質量%である、1~4のいずれか1項に記載のロールイン用油脂組成物。
[6](a)と(b)からなる油脂配合物の10℃におけるSFCが20~60%であり、20℃におけるSFCが10~40%である、1~5のいずれか1項に記載のロールイン用油脂組成物。
[7]1~6のいずれか一項に記載のロールイン用油脂組成物を含有する、層状ベーカリー生地。
[8]7に記載の層状ベーカリー生地の加熱処理品である、層状ベーカリー製品。
[9](c)、(d)及び(e)を含有する、ロールイン用油脂組成物の改良剤。
本発明によれば、乳脂を用いた場合であっても良好なコシと伸展性を有するロールイン用油脂組成物を得ることができる。
また本発明にしたがってロールイン用油脂組成物の配合を適切にすることにより、ロールイン用油脂組成物がロールインされたベーカリー生地の改質を行うことができ、内層や層の浮きに優れ、且つ、さくさにも優れた層状ベーカリー製品を得ることができる。
以下、本発明のロールイン用油脂組成物を、好ましい実施形態を挙げながら詳細に説明する。
[ロールイン用油脂組成物]
<乳化剤>
本発明のロールイン用油脂組成物は、乳化剤として、下記を含む。
(c)コハク酸モノグリセリド
(d)ポリグリセリン脂肪酸エステル
(e)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)
<コハク酸モノグリセリド>
本発明のロールイン用油脂組成物には、コハク酸モノグリセリドを用いる。コハク酸モノグリセリドは、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルともいい、グリセリンのモノ脂肪酸エステル(モノグリセリド)の水酸基にさらにコハク酸が結合したものである。コハク酸モノグリセリドを用いることにより、ロールイン用油脂組成物がロールインされたベーカリー生地を改質することができる。コハク酸モノグリセリドをドウに直接含有させた場合、ベーカリー生地が調整されるタイミングが早すぎる場合があり、この際、ベーカリー生地が過度に軟らかくなり、扱いにくくなる場合があるが、本願発明においては、コハク酸モノグリセリドをロールイン用油脂組成物に含有させることにより、改質するタイミングを調整することができる。なお、本発明に関してドウ(ベース生地ということもある。)というときは、特に記載した場合を除き、ロールイン用油脂組成物を折り込む前のものを指し、ロールイン用油脂組成物を折り込んだベーカリー生地とは区別される。
コハク酸モノグリセリドにおける結合脂肪酸は、飽和脂肪酸が主体であってよく、好ましくは炭素数16以上の飽和脂肪酸が主体である。ここでいう主体とは、結合脂肪酸中の飽和脂肪酸の割合を示し、飽和脂肪酸が好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、一層好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であることを意味する。
本発明のロールイン用油脂組成物中のコハク酸モノグリセリドの含有量は、例えば0.10~5.0質量%であり、好ましくは0.30~3.5質量%であり、より好ましくは0.40~3.0質量%であり、さらに好ましくは0.50~2.5質量%であり、最も好ましくは1.1~2.2質量%である。この範囲であればドウが改質され、内層と層の浮きがよい層状ベーカリー製品が得られるからである。
<ポリグリセリン脂肪酸エステル>
本発明のロールイン用油脂組成物には、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる。ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることにより、ロールイン用油脂組成物自体の物性を調整することができる。ロールイン用油脂組成物の物性がコシがなく、固い物性であるとドウにロールインして折り畳んだときに、ロールイン用油脂組成物が折りに追従できず、ロールイン用油脂組成物に、割れやヒビが発生することがある。ロールイン用油脂組成物油の割れやヒビは、ドウ同士の結着を招き、ひいては層状ベーカリー製品における内層や層の浮きの不均一化を招きうる。ドウとともに均一に伸展でき、ドウに練り込まれない物性と、圧延と折りを繰り返しても割れ・ヒビが生じない物性がロールイン用油脂組成物に求められる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化度は、例えば8以上であり、好ましくは9以上であり、さらに好ましくは10以上である。またポリグリセリン脂肪酸エステルの結合脂肪酸は、飽和脂肪酸が主体であってよく、好ましくは炭素数16以上の飽和脂肪酸が主体であり、より好ましくは炭素数18以上の飽和脂肪酸が主体である。ここでいう主体とは、結合脂肪酸中の飽和脂肪酸の割合を示し、飽和脂肪酸が好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、一層好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であることを意味する。ポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリンの重合度は、6以上であり、好ましくは7以上であり、より好ましくは8以上である。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは6以下であり、より好ましくは5以下である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例の一つは、デカグリセリンドデカエステルである。
本発明のロールイン用油脂組成物中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、例えば0.10~5.0質量%であり、好ましくは0.25~3.5質量%であり、より好ましくは0.40~3.0質量%であり、さらに好ましくは0.60~2.5質量%であり、最も好ましくは0.80~2.0質量%である。この範囲であれば良好なコシがあり、かつ良好な伸展性を有するロールイン用油脂組成物が得られるからである。
<ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)>
本発明のロールイン用油脂組成物には、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)を用いる。PGPRは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基にさらに縮合リシノレイン酸が結合したものである。リシノレイン酸は1個の水酸基をもった不飽和脂肪酸で、リシノレイン酸同士でエステル結合して縮合物を作ることができる。本発明ではロールイン用油脂組成物中にPGPRを用いることにより、ベーカリー生地を改質することができる。PGPRをベーカリー生地に直接投入しても、ベーカリー生地を改質する効果は得られない。本発明のロールイン用油脂組成物中にPGPRを含有することでベーカリー生地が改質される機序については不明だが、ロールイン用油脂組成物中にPGPRを含有させることで乳化界面にPGPRが配向することにより、他の乳化剤、例えばコハク酸モノグリセリドが乳化界面に配向しにくくなり、その代わりにドウに作用し易くなるためであると推定している。
PGPRのエステル化度は、例えば8以上であり、好ましくは9以上であり、さらに好ましくは10以上である。またポリグリセリン脂肪酸エステルの結合脂肪酸は、飽和脂肪酸が主体であってよく、好ましくは炭素数16以上の飽和脂肪酸が主体であり、より好ましくは炭素数18以上の飽和脂肪酸が主体である。ここでいう主体とは、結合脂肪酸中の飽和脂肪酸の割合を示し、飽和脂肪酸が好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、一層好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であることを意味する。ポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリンの重合度は、6以上であり、好ましくは7以上であり、より好ましくは8以上である。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは6以下であり、より好ましくは5以下である。PGPRの縮合リシノレイン酸以外の部分は、上述のポリグリセリン脂肪酸エステルと同じであってよい。
本発明のロールイン用油脂組成物中のPGPRの含有量は、例えば0.050~2.0質量%であり、好ましくは0.080~1.5質量%であり、より好ましくは0.10~1.2質量%であり、さらに好ましくは0.20~1.0質量%であり、最も好ましくは0.30~0.70質量%である。この範囲であればドウが改質され、内層と層の浮きがよい層状ベーカリー製品が得られるからである。
<プロピレングリコール脂肪酸エステル>
本発明のロールイン用油脂組成物には、プロピレングリコール脂肪酸エステルを用いてもよい。プロピレングリコール脂肪酸エステルを用いることにより、ロールイン用油脂組成物がロールインされたベーカリー生地をさらに十分に改質することができ、プロピレングリコール脂肪酸エステルをベーカリー生地に直接投入しても、ベーカリー生地を改質する効果は得られ難い。本発明のロールイン用油脂組成物中にプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有することでベーカリー生地が改質される機序については不明だが、ロールイン用油脂組成物中にプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有させることで、油脂の結晶が微細になり、ドウ中に細かく分散し易くなった結果、他の乳化剤、例えばコハク酸モノグリセリドがドウに作用し易くなるためであると推定している。
プロピレングリコール脂肪酸エステルの例として、プロピレングリコールモノ脂肪酸
エステル、プロピレングリコールジ脂肪酸エステルが挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルが好ましい。
プロピレングリコール脂肪酸エステルの結合脂肪酸は、炭素数が12~18であることが好ましい。飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。結合脂肪酸の例として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ヒラゴン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。これらの中でも、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
本発明のロールイン用油脂組成物中のプロピレングリコール脂肪酸エステルの含有量は、例えば0.10~1.5質量%であり、好ましくは0.30~1.2質量%であり、より好ましくは0.30~0.80質量%である。この範囲であれば良好なコシがあり、かつ良好な伸展性を有するロールイン用油脂組成物が得られるからである。
<乳化剤の質量比>
好ましい態様においては、ロールイン用油脂組成物における(d)ポリグリセリン脂肪酸エステルと(e)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとの含有質量比((d)/(e))が特定の範囲にある。具体的には、(d)/(e)は、0.50~3.0であり、好ましくは1.0~2.5であり、より好ましくは1.5~2.5である。親水基を同じくする両乳化剤の比が特定の範囲にあることで、乳脂を含有する場合であっても、ロールイン用油脂組成物として良好な物性を発揮することができる。
別の好ましい態様においては、ロールイン用油脂組成物における(c)コハク酸モノグリドと(e)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとの含有質量比((c)/(e))が特定の範囲にある。具体的には、(c)/(e)は、0.50~7.0であり、好ましくは2.0~6.0であり、より好ましくは3.0~5.0である。このような範囲であれば、ロールインされるドウの改質がタイミングよく十分に発揮することができる。
<他の乳化剤>
本発明のロールイン用油脂組成物には、上記以外の他の乳化剤を用いてもよい。このような乳化剤の例としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化成分が挙げられる。本発明のロールイン用油脂組成物では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
<乳脂>
本発明のロールイン用油脂組成物は、乳脂を含有する。乳脂の由来としては、バターオイル、無水乳脂肪、生クリーム、バター、クリーム、クリームチーズ、デイリースプレッド等の乳脂原料が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を使用することができる。
本発明のロールイン用油脂組成物において乳脂の含有量は、ロールイン用油脂組成物中、3質量%以上であり、好ましくは5質量%以上、例えば10質量%以上とすることができ、20質量%以上とすることもできる。一般に、乳脂を含むロールイン用油脂組成物は、全体としてコシや伸展性が不足する物性になりがちであるが、本発明では上述の乳化剤を用いることにより、乳脂を比較的多く含む場合であってもロールイン用油脂組成物のコシや伸展性が十分なものが得られる。本発明のロールイン用油脂組成物における乳脂の含有量の上限値は、ロールイン用油脂組成物のコシや伸展性が十分であり、ドウにロールインでき、またロールインされたベーカリー生地において目的の改質が達成される限り、特に制限されないが、例えば30質量%以下とすることができ、好ましくは25質量%以下、例えば21質量%以下とすることができ、18質量%以上とすることができ、13%以下とすることができる。本発明のロールイン用油脂組成物には、乳脂を、乳製品として配合することもでき、この場合は配合する乳製品中に含まれる乳脂の総量を、上記の範囲とすればよい。
<乳脂以外の油脂>
本発明のロールイン用油脂組成物は、乳脂以外の油脂を含有する。
本発明のロールイン用 油脂組成物に用いることのできる乳脂以外の油脂の好ましい例の一つは、トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、ラウリン酸残基が5質量%未満、かつ炭素数16以上の飽和脂肪酸残基を50質量%以上含有し、さらに炭素数16以上の飽和脂肪酸残基で構成されたトリ飽和トリグリセリド(SSS)に占めるPPPとStStStの合計の割合(PPP+StStSt)/SSSが0.3~0.5(質量比)(式中、PPPはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてPを3個有するトリグリセリドを表し、StStStはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてStを3個有するトリグリセリドを表し、Stはステアリン酸を表し、Pはパルミチン酸を表す。)を満たす、エステル交換油Aである。エステル交換油Aにおいて、ラウリン酸残基が5質量%以上だったり、飽和脂肪酸残基が50質量%未満であると、後述のエステル交換油Bと、併用した際の相乗効果が期待できなくなってしまう。エステル交換油Aを一定量含有することにより、結晶が安定しコシの良好なロールイン用油脂組成物が得られやすくなり、エステル交換油Bと特定条件で併用されることで幅広い範囲において本発明の効果であるコシと伸展性の両立が達成されるようになる。
(PPP+StStSt)/SSSは、好ましくは0.3~0.45、より好ましくは0.3~0.4である。(PPP+StStSt)/SSSが0.3~0.5という範囲から外れた場合、エステル交換油Bと併用した際の相乗効果が得られなくなってしまう。
相乗効果が得られる理由としては、次のように考えている。PPPやStStStはβ型結晶へ速やかに誘導するため、コシが良好となる一方で硬く伸展性の劣ったものとなりやすい。一方で、PPStやPStStはβプライム型結晶へ誘導するため、伸展性が良好となるがコシが不十分となりやすい。エステル交換油Bとの相乗効果を得るためには、エステル交換油Aに含まれる相反する成分について微妙なバランスが必要になるのではないかと考えている。
本発明においては、エステル交換油Aは、下記条件(A)を満たすことが好ましい。
(A) PPP/StStSt=5~15(質量比)
PPP/StStStの値が15よりも大きかったり、5よりも小さくなると本発明の効果が不十分になる場合がある。PPP/StStStの値は、より好ましくは5.5~13、さらに好ましくは6~10である。
また、本発明においては、エステル交換油Aに含まれるSSSが10~40質量%が好ましく、15~35質量%であることがより好ましい。SSSが10質量%よりも少なかったり、40質量%よりも多いと、エステル交換油Bとの併用効果が十分に得られない場合があり好ましくない。
エステル交換油Aは、例えば、PPPを多く含有する油脂、StStStを多く含有する油脂、PPPとStStStの両方を多く含有する油脂等を原料として用いて、それらの油脂を要件を満たすように配合したものをエステル交換することにより得ることができ、好ましくは、以下の油脂配合物Aをランダムエステル交換して得られるランダムエステル交換油脂である。油脂配合物Aは、パーム極度硬化油を好ましくは20~60質量%含有し、より好ましくは25~55質量%、さらに好ましくは30~50質量%含有する。
油脂配合物Aをランダムエステル交換する場合、エステル交換反応は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよく、常法に従って行うことができる。化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が用いられる。また、酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。尚、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土やセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
本発明のロールイン用油脂組成物における、エステル交換油Aの含有量は、油分基準で、好ましくは10~70質量%、より好ましくは15~65質量%、さらに好ましくは20~60質量%である。
本発明のロールイン用油脂組成物に用いることのできる好ましい油脂の他の例の一つは、トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、ラウリン酸残基を5~40質量%含有するランダムエステル交換油(エステル交換油B)である。エステル交換油Bは結晶性に優れることから、これを用いることで伸展性に特に優れたロールイン用油脂組成物を得ることができる。
エステル交換油Bのトリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、ラウリン酸残基は好ましくは7~35質量%、より好ましくは9~25質量%である。ラウリン酸残基が5質量%未満、あるいは40質量%を超えると、上述のエステル交換油Aとエステル交換油Bとを、併用した際の相乗効果が得られにくくなってしまう。エステル交換油Bは、トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、炭素数20以上の飽和脂肪酸残基の占める割合が1~10質量%であることが好ましく、2~8質量%であることがより好ましい。炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を一定量含有することで、エステル交換油Aと併用した際の効果がより大きいものとなる。また、エステル交換油Bのトリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、炭素数16以上の飽和脂肪酸残基を20~60質量%含有することが好ましく、25~55質量%含有することがより好ましく、30~50質量%がさらに好ましい。ラウリン酸残基の条件に加え、炭素数16以上の飽和脂肪酸残基を上記範囲で含有することで、伸展性のより良好なロールイン用油脂組成物が得ることができる。
エステル交換油Bは、例えば、以下に示す油脂配合物Bをエステル交換することにより得ることができ、好ましくはランダムエステル交換することにより好適に得ることができる。この油脂配合物Bは、トリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてラウリン酸残基を多く含有する油脂を含むことが好ましい。また、該油脂に加え、トリグリセリドを構成する脂肪酸残基として炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を含有する油脂等を含むことも好ましい。ラウリン酸残基を多く含有する油脂としては、パーム核油、ヤシ油、ババス油、乳脂等を挙げることができるが、本発明においては、とくにラウリン系油脂と称されるトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてラウリン酸残基含有率が40質量%を超えるような油脂を使用することが好ましい。具体的なラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油、またはその硬化、分別、エステル交換を実施した油脂などが例示できる。ラウリン酸残基を含有する油脂は、単独で用いることもでき、二種以上を組み合わせて用いることもできる。このラウリン酸残基を多く含有する油脂は、油脂配合物Bのトリグリセリドにおけるラウリン酸残基の割合が5~40質量%、好ましくは7~35質量%、更に好ましくは9~25質量%となるように配合される。
また、炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を含有する油脂としては、ハイエルシンナタネ油、魚油、サル脂、これらの油脂に水素添加、分別及びエステル交換から選択される1種又は2種以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。上記の、トリグリセリドを構成する脂肪酸残基として炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を含有する油脂は、エステル交換油Bのトリグリセリドを構成する脂肪酸残基中に占める該炭素数20以上の飽和脂肪酸残基含有率が1~10質量%、好ましくは1.5~8質量%、更に好ましくは2~5質量%となるように配合される。ここで、エステル交換油Bのトリグリセリドを構成する脂肪酸残基中に占める該炭素数20以上の飽和脂肪酸残基含有率が1~10質量%から外れてしまうと、本発明の効果が得られにくい場合がある。
エステル交換油Bを得るために、油脂配合物Bに対して行われるエステル交換反応は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよく、常法に従って行うことができる。化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が用いられる。酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。尚、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土やセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
本発明のロールイン用油脂組成物における、エステル交換油Bの含有量は、油分基準で、好ましくは10~70質量%、より好ましくは15~65質量%、さらに好ましくは20~60質量%である。
本発明のロールイン用油脂組成物においては、エステル交換油A及びエステル交換油Bを合計で50質量%以上含有することができ、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、最も好ましくは75質量%以上含有する。また、本発明のロールイン用油脂組成物においては、エステル交換油Aに対するエステル交換油Bの割合(エステル交換油B/エステル交換油A)が、0.1~5であり、0.2~3であることが好ましく、0.25~1.5であることがより好ましい。
エステル交換油Aに対するエステル交換油Bの割合(エステル交換油B/エステル交換油脂A)が5以下とすることにより、ロールイン用油脂組成物のコシをより十分なものとすることができ、ロールイン用油脂組成物がロールイン時にドウへ練り込まれ難くなる。また、エステル交換油脂Aに対するエステル交換油Bの割合(エステル交換油B/エステル交換油脂A)を0.1以上とすることにより、ロールイン用油脂組成物の伸展性をより十分なものとすることができ、特にロールイン用油脂組成物の使用量が少ない場合であってもドウへの折り込みを十分に行える。このように、本発明のロールイン用油脂組成物は、、乳脂以外の油脂として、エステル交換油Aとエステル交換油Bを特定の比率で併存させることにより、ロールイン用油脂組成物の物性をより好ましく調整できる。
本発明のロールイン用油脂組成物では乳脂以外の油脂として、エステル交換油A及びエステル交換油Bの他、一般的な食用油脂を含有することができる。食用油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明のロールイン用油脂組成物に含まれる油脂の全構成脂肪酸残基は、トランス脂肪酸残基を実質的に含有しないことが好ましい。ここでいう「トランス脂肪酸残基を実質的に含有しない」とは、トランス脂肪酸残基の含有量が、本発明のロールイン用油脂組成物に含まれる油脂の全構成脂肪酸残基において、好ましくは5質量%未満、更に好ましくは3質量%未満、最も好ましくは2質量%未満であることを意味する。
水素添加は油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、これによって得られる水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常その構成脂肪酸中にトランス脂肪酸が10~50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス脂肪酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス脂肪酸残基を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものが要求されている。本発明では、エステル交換油Aとエステル交換油B、及びその他の食用油脂として、それぞれ実質的にトランス脂肪酸残基を含有しない油脂を使用することで、水素添加油脂を使用せずとも良好なコンステンシーを有し、トランス脂肪酸残基を実質的に含有しないロールイン用油脂組成物を簡単に得ることができる。
本発明のロールイン用油脂組成物における、乳脂及び乳脂以外の油脂(エステル交換油A、エステル交換油B、その他食用油脂)を含めた油分含有量は、例えば40~99質量%とすることができ、好ましくは50~90質量%であり、より好ましくは60~85質量%である。なお、後述するその他の原材料に油分が含まれる場合には、上記油分含有量として算入するものとし、乳脂として乳製品等の油分以外の成分を含む原材料を用いる場合等、原材料に含まれる油分以外の成分は上記油分含有量として算入しない。
<SFC>
本発明のロールイン用油脂組成物は、乳脂以外の油脂と乳脂の混合物(以下、この項において混合油ということがある。)のSFC(Solid Fat Content、固形脂肪含量)が、好ましくは10℃で20~60%、20℃で10~40%であり、さらに好ましくは10℃で20~50%、20℃で15~35%である。SFCが10℃で20%未満、又は20℃で10%未満のときはロールイン用油脂組成物としては軟らかすぎて、良好な層状ベーカリー製品が得られにくい。一方、SFCが10℃で60%を超えるか、又は20℃で40%を超えると、伸展性が悪くなりやすい。
SFCは、次のようにして測定する。即ち、混合油を60℃に30分保持し、油脂を完全に融解し、そして0℃に30分保持して固化させる。さらに25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度に順次30分保持後、SFCを測定する。
<その他の原材料>
本発明のロールイン用油脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲において、その他の原材料を含有させることができる。その他の原材料としては、水、糖類・甘味料、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、CMC、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等の増粘安定剤、澱粉類、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、アミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ホスフォリパーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料類、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、卵類、調味料、アミノ酸、pH調整剤、原料アルコール、焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ブランデー等の蒸留酒、ワイン、日本酒、ビール等の醸造酒、各種リキュール、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、コーヒー、紅茶、緑茶、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、着香料等を挙げることができる。
水としては水道水や天然水等の水や、本発明のロールイン用油脂組成物で含有させることのできるその他の原材料に由来する水分も含めたものとする。本発明のロールイン用油脂組成物における、水の含有量は好ましくは0~49.9質量%、さらに好ましくは9.7~39.7質量%、最も好ましくは12.5~29.7質量%である。
なお、本発明のロールイン用油脂組成物が水を含有する場合、その乳化型は油中水型であっても水中油型であってもよく、さらには2重乳化等の多重乳化型であってもよいが、好ましくは油中水型とする。なお、本発明における油中水型には、油中水中油型や油中油型も含むものとする。
糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
甘味料としては、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、甘草、羅漢果等があげられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
[製造方法]
次に、本発明のロールイン用油脂組成物の好ましい製造方法について以下に説明する。
本発明のロールイン用油脂組成物は、その製造方法が特に制限されるものではなく、例えば、乳脂、及び乳脂以外の油脂を加熱・混合して得た油相に、乳化剤、及び必要に応じてその他の油溶性の原材料を添加した後、必要に応じて別途調製された水相を加えて、冷却・可塑化後、成形することにより得ることができる。
より具体的には、まず乳脂及び乳脂以外の油脂(例えば、エステル交換油A、エステル交換油B、及びその他の油脂)を50~80℃になるよう加温し、均一になるよう攪拌・混合する。続いて、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)、必要に応じてプロピレングリコール脂肪酸エステルやその他の油溶性の成分をさらに添加し、混合し、油相を得る。本発明においては水相は必須ではないが、必要に応じて水、その他水溶性の原材料を混合した水相を油相と混合乳化することができる。
水相を用いる場合、油相と水相との質量比率(油相:水相)は、例えば60~97:3~40とすることができ、好ましくは70~93:7~30である。油相を60質量%以上とすることにより、乳化が安定となりうる。また、油相を97質量%以下とすることにより、良好な伸展性が得られうる。
本発明のロールイン用油脂組成物の製造方法は、殺菌処理工程を含むことが望ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続方式でも構わない。また殺菌温度は好ましくは80~100℃であり、より好ましくは80~95℃であり、さらに好ましくは80~90℃である。その後、必要により油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行なう。予備冷却の温度は好ましくは40~60℃であり、より好ましくは40~55℃であり、さらに好ましくは40~50℃である。
本発明のロールイン用油脂組成物の製造方法は、冷却・可塑化工程を含むことができ、好ましくは急冷可塑化を含む。この急冷可塑化は、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーターなどの密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機等を用いて、また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターの組み合わせを用いて行うことができる。この急冷可塑化を行なうことにより、伸展性の良いロールイン用油脂組成物となる。
急冷可塑化の際に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
ロールイン用油脂組成物の製造工程において、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
このようにして得られた本発明のロールイン用乳化組成物は、その形状に関して、シート状、ブロック状、円柱状、直方体等の形状としても良い。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ1~50mm、ブロック状:縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ50~500mm、円柱状:直径1~25mm、長さ5~100mm、直方体:縦5~50mm、横5~50mm、高さ5~100mmである。
シート状にする場合、方法は特に制限されず、冷却可塑化後に成形ノズルを使用して押し出し、カットする方法などを挙げることができる。また、冷却可塑化時にロールイン用油脂組成物をいったんブロック状に成形し、これを麺棒やローラーで圧延成形したり、バターポンプ等でシート状に押出す方法などによって得ることもできる。
[用途]
本発明のロールイン用油脂組成物は、ロールイン用としてデニッシュペストリー、クロワッサン、パイ等のベーカリー製品の製造のために好適に用いられる。具体的には、本発明のロールイン用油脂組成物をロールインして得られたベーカリー生地を焼成することにより、層状ベーカリー製品を製造することができる。
具体的には、本発明のロールイン用油脂組成物は、ドウで包み込み、延展することにより用いられる。ドウでロールイン用油脂組成物を包んだ後、延展・折りを所望の回数繰り返すことにより、ロールイン用油脂組成物とドウの層状構造を有するベーカリー生地を得ることができる。ドウに対するロールイン用油脂組成物の使用量は、ドウ100質量部に対して10~70質量部であることが好ましい。得られたベーカリー生地を成形し、焼成して、層状ベーカリー製品を得ることができる。
次に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明をなんら制限するものではない。
<エステル交換油Aの調製>
ヨウ素価52のパーム油65質量部及びヨウ素価0.8のパーム極度硬化油35質量部を70℃にて混合溶解して得た油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油Aを得た。
<エステル交換油Bの調製>
パーム油70質量%とパーム核油24質量%とハイエルシン菜種極度硬化油6質量%とからなる油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油B(ラウリン酸残基:12.2質量%、炭素数20以上の飽和脂肪酸残基:3.6質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸残基:42質量%)を得た。
<ロールイン用油脂組成物の製造>
各表に示す質量比で、油脂類(エステル交換油A、エステル交換油B、液状油、乳脂、豚脂、パームステアリン、液状油、大豆極度硬化油、及びバターのうち、各表に記載されたもの)を70℃に加熱・混合し、混合油を得た。
次に、各表に示す質量比で、得られた混合油に乳化剤(コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びモノグリセリドのうち、各表に記載されたもの)を混合・溶解した油相と、水に調味料、色素、抗酸化剤、及び香料を混合・溶解した水相とを常法により、油中水型の乳化物とし、急冷可塑化工程(冷却速度-20℃/分以上)にかけた後、縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し、各ロールイン用油脂組成物を得た。
なお、下記を用いた。
液状油:菜種油(ADEKA社製)
乳脂:バターオイル(Fonterra社製)
豚脂:ADEKA社製
パームステアリン:ADEKA社製
大豆極度硬化油:大豆極度硬化油フレーク(横関油脂工業株式会社製)
バター(油脂含有量80%):(Sill社製 発酵バター使用)
コハク酸モノグリセリド:ポエムB-10(理研ビタミン株式会社製)
ポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンドデカエステル):SYグリスター DDB-750(阪本薬品工業株式会社製、HLB2.5)
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル:サンソフト818UX(太陽化学株式会社製)
プロピレングリコール脂肪酸エステル:リケマールPS-100(理研ビタミン株式会社製)
モノグリセリド:エマルジーMP(理研ビタミン株式会社製)
<パイ生地、及びパイの製造>
強力粉70質量部、薄力粉30質量部、食塩1質量部、ショートニング7質量部、水53質量部を混合し、これを分割した上で、5℃で15~20時間のリタードを取りパイ生地製造に用いるベース生地を得た。次にこのベース生地100質量部をシーターで展延し、実施例及び比較例のロールイン用油脂組成物各30部を包み、生地厚を5mmとしたのち、3つ折り1回、続いて4つ折り1回し、生地厚7~8mmで-7~-8℃で30分間リタードをとって休ませた後、3つ折り1回、続いて4つ折りを1回行い、計144層とした。さらに、-7~-8℃で30分間リタードをとって休ませた後、生地厚約2.5mmに圧延し、100mm×180mmの長方形にカットした。これを天板に乗せ、ピケを4か所入れたのち、霧を吹いてオーブン焼成し、パイを得た。焼成は上火180℃、下火170℃で20分行った。
<デニッシュペストリー生地、及びデニッシュペストリーの製造>
強力粉80質量部、薄力粉20質量部、イースト4質量部、イーストフード0.2質量部、上白糖15質量部、全卵(正味)10質量部、純植物性マーガリン5質量部、水45質量部をミキサーボールに入れ、フックを用い、縦型ミキサーにて低速3分、中速3分ミキシングし、ベース生地を得た。得られたベース生地はフロアタイム20分、-5℃の冷凍庫で24時間リタードさせた後、定法により、各ロールイン用油脂組成物50質量部をロールイン(3つ折り3回)し、デニッシュペストリー生地を得た。
得られたデニッシュペストリー生地は厚さ4mmに圧延し、10mm×10mmの板状に切り出し、34℃60分ホイロ後、固定オーブンで200℃15分焼成し、デニッシュペストリーを得た。
<評価>
得られたパイ生地またはデニッシュペストリー生地について、専門パネラーにより作業性を評価した。
また、得られたパイまたはデニッシュペストリーについて、焼成1日後の内層と層の浮き、及び焼き上げ直後、3日後の食感について10名の専門パネラーにより評価した。評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
各評価結果は、次のように集計し、各表に示した。
+++:43~50点、++:37~42点、+:30~36点、-:24~29点、--:18~23点、---:17点以下
なお、すべての項目について+以上の評価を得たものを合格品として評価した。評価基準は下記とした。
<作業性評価(コシ)>
5点:ロールイン用油脂組成物がベース生地に練り込まれず、ヒビが生じることなく折り込まれており、非常に良好である。
3点:ロールイン用油脂組成物がベース生地にほとんど練り込まれず、ヒビがほぼ生じることなく折り込まれ、良好である。
1点:ロールイン用油脂組成物が一部ベース生地に練り込まれる部分、若しくはヒビが生じる部分があり、やや不良である。
0点:ロールイン用油脂組成物がベース生地に練り込まれる部分、若しくは割れが確認される部分があり、不良である。
<作業性評価(伸展性)>
5点:ベース生地とロールイン用油脂組成物の伸展が均一であり、非常に良好である。
3点:ベース生地とロールイン用油脂組成物の伸展にわずかな違いが見られるものの良好である。
1点:ベース生地とロールイン用油脂組成物の伸展に部分的な差が見られ、やや不良である。
0点:ベース生地とロールイン用油脂組成物の伸展に明確な差が見られ、不良である。
<内層評価>
5点:薄い膜のきれいな層状で且つ、均一な内層である。
3点:きれいな層状で且つ、均一な内層である。
1点:やや不均質な部分が見られる内層である。
0点:層状の部分とパン目の部分があり、不均一な内層である。
<浮きの評価>
5点:層の暴れがなく、層毎の浮きが均質である。
3点:層の暴れはないが、層毎の浮きがやや均質でない。
1点:層の暴れはないが、層毎の浮きが不均一である。
0点:層の暴れがややみられ、層毎の浮きが不均一である。
<さくさの評価>
5点:焼き上げ直後、3日後共に、極めてさくい。
3点:焼き上げ直後、3日後共に、非常にさくい。
1点:焼き上げ直後、3日後共に、さくい。
0点:焼き上げ直後はややさくいが、3日後にひきがあり、さくさがない。
<比較例1~5、実施例1~12:乳脂5%を含有するロールイン用油脂組成物を用いたパイ>
乳脂5%を含有するロールイン用油脂組成物を用いたパイを製造し、評価した。配合質量比と評価結果を下表に示した。
Figure 0007492819000001
<比較例6~10、実施例13~24:乳脂10%を含有するロールイン用油脂組成物を用いたパイ>
乳脂10%を含有するロールイン用油脂組成物を用いたパイを製造し、評価した。配合質量比と評価結果を下表に示した。
Figure 0007492819000002
<比較例11~15、実施例25~36:乳脂20%を含有するロールイン用油脂組成物を用いたパイ>
乳脂20%を含有するロールイン用油脂組成物を用いたパイを製造し、評価した。配合質量比と評価結果を下表に示した。
Figure 0007492819000003
<比較例16~20、実施例37~48:バター28%を含有するロールイン用油脂組成物を用いたデニッシュペストリー>
バター28%(乳脂22.4%)を含有するロールイン用油脂組成物を用いたデニッシュペストリーを製造し、評価した。配合質量比と評価結果を下表に示した。
Figure 0007492819000004
<比較例・実施例についての評価のまとめ>
乳脂5%の系に関し、乳化剤として、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)を用いた実施例1~12のすべてで、作業性(ロールイン用油脂組成物のコシ、伸展性)、内層、内層の浮き、及びさくさのすべての項目でよい評価が得られた。いずれかを欠く比較例1~4、ならびにコハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びPGPRを比較的少量用いる比較例5ではこのような結果は得られなかった。また、実施例5~8、特に実施例5で、作業性(ロールイン用油脂組成物のコシ、伸展性)が優れていた。これらの結果から、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びPGPRの配合比には、目的の効果をより大きく得るための好ましい範囲があることが示唆された。
また、乳化剤として、プロピレングリコール脂肪酸エステルをさらに用いた実施例9~12に関しては、実施例10及び11で、作業性(ロールイン用油脂組成物のコシ、伸展性)が優れていることに加えて、焼成後のパイの内層の状態も優れていた。特に実施例10では、層の浮き、及びさくさにも優れたものとなった。これらの結果から、プロピレングリコール脂肪酸エステルの使用が好ましく、またその量には、目的の効果をより大きく得るための好ましい範囲があることが示唆された。
他の乳脂10%の系、20%の系、バター28%を用いたデニッシュペストリーの系でも、同様の傾向がみられた。

Claims (9)

  1. 下記を含有する、ロールイン用油脂組成物:
    (a)乳脂以外の油脂
    (b)乳脂
    (c)コハク酸モノグリセリド 0.10~5.0質量%
    (d)ポリグリセリン脂肪酸エステル 0.10~5.0質量%
    (e)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR) 0.05~2.0質量%。
  2. さらに
    (f)プロピレングリコール脂肪酸エステル 0.10~1.5質量%
    を含有する、請求項1に記載のロールイン用油脂組成物。
  3. (d)と(e)との含有質量比((d)/(e))が、0.50~3.0である、請求項1または2に記載のロールイン用油脂組成物。
  4. (c)と(e)との含有質量比((c)/(e))が、0.50~7.0である、請求項1~3のいずれか1項に記載のロールイン用油脂組成物。
  5. (b)乳脂の含有量が、3.0~30質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載のロールイン用油脂組成物。
  6. (a)と(b)からなる油脂配合物の10℃におけるSFCが20~60%であり、20℃におけるSFCが10~40%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のロールイン用油脂組成物。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載のロールイン用油脂組成物を含有する、層状ベーカリー生地。
  8. 請求項7に記載の層状ベーカリー生地の加熱処理品である、層状ベーカリー製品。
  9. コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有する、乳脂を含有するロールイン用油脂組成物の改良剤。
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