JP7487915B2 - エネルギー吸収ランヤード - Google Patents
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Description
命綱としては、落下時に人体に急激に大きな力(衝撃)が掛からないように落下エネルギーを徐々に吸収するエネルギー吸収(ショックアブソーバー)の機能と、最終的に体を支える最終強力を担う強力な綱としての機能と、が求められる。
このようなランヤードとしては、伸度や破断強度が異なる複数種の糸を経糸に併用することで上記二つの機能を併せ持つものが知られている。
また、別体として作られたショックアブソーバーをランヤードに取り付けて、エネルギー吸収するランヤードとすることもある。
しかし、一つのベルトに最終強力を担う糸とエネルギー吸収を担う糸(伸張糸や寸断糸)とを共存して織り込むような構成では上記の規格を満たすことがもはや難しくなっている。
エネルギー吸収を担う部分と最終強力を担う部分とを別体として作成した後に二つを合わせてエネルギー吸収ランヤードとするものもあるが、径が太い、重い、といった問題があり、作業者の作業の妨げにもなっていた。
新しい規格に合致するように安全性能を満たしつつ、使いやすさや見た目がさらに向上したエネルギー吸収ランヤードが求められている。
筒状に織られた筒綱部と、
前記筒綱部とは別体として織られたものであって、前記筒綱部の内側に収容された状態で設けられた芯綱部と、を有し、
前記筒綱部は、その経糸の一部に、負荷が掛かったときに伸張してエネルギーを吸収するエネルギー吸収用高伸度経糸を含み、
前記筒綱部に衝撃が掛かったとき、前記筒綱部は、無負荷状態のときの長さLTsから徐々にエネルギーを吸収しながら徐々に伸びて衝撃吸収後長さLTeまで伸びるものであって、
前記芯綱部は、最終破断強力が15kN以上となる綱であり、その長さが少なくとも前記筒綱部の衝撃吸収後長さLTeよりも長い長さLCを有し、
前記芯綱部の始端と前記筒綱部の始端とは固定され、前記芯綱部の末端と前記筒綱部の末端とは固定され、前記芯綱部は、折り畳まれた状態で前記筒綱部の内側に収容されている
ことを特徴とする。
さらに、前記筒綱部の内側に、自然長が前記筒綱部の無負荷状態のときの長さLTsよりも短い伸縮性のひも部材を設け、
前記筒綱部の始端と前記伸縮性ひも部材の始端とを固定し、前記筒綱部の末端と前記伸縮性ひも部材の末端とを固定し、無負荷状態のときの前記筒綱部が蛇腹状になって長さが縮んでいる
ことが好ましい。
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
図1は、本発明に係るエネルギー吸収ランヤード100(以下では単にランヤード100と称する)の第一実施形態を示す図である。
ランヤード100は、端に設けられた固定具110と、綱部120と、を備える。
図2は、綱部120を説明するための断面図である。
綱部120は、筒綱部200と、芯綱部300と、を備える。
図3は、筒綱部200を長さ方向に対して垂直な方向で切断したときの断面模式図である。
図4は、長さ方向に沿う方向で筒綱部200を切断したときの断面模式図である。
筒綱部200を筒状に織る織り組織としては、平織り(平二重織り)、綾織り(綾二重織り)などで筒状に織ればよい。
上層210、下層230の経糸211、231に緯糸212、232が織り込まれていき、このとき、袋織りとして、緯糸212、232は上層210、下層230の経糸211、231に織り込まれ、上層210と下層230とからなる両端開口の筒が形成される。
緯糸212、232のループがばらけないように補強するロック糸として絡み糸240で留める。
筒綱部200を構成する経糸211、231は未延伸糸を使用する。
緯糸212、232、絡み糸(ロック糸)240は、未延伸糸を使用するが延伸糸を使用しても良い。
例えば、経糸211、231は、未延伸のポリエステルで1100T~6600Tの糸を使用する。
例えば、未延伸のポリエステル糸で560Tを6本束ねて撚糸し、これを経糸としたとする。
経糸の本数を145本~200本として、綱(ベルト)の強力を理論上計算すると図5のようになる。
例えば、(ポリエステルの)延伸糸を(熱加工等で)収縮させて高伸度糸とした糸(加工糸)若しくは高伸度糸として特別に紡糸した糸を経糸にいれてもよい。
通常の延伸糸は破断伸度が40%以下(通常は破断伸度が30%程度)であるが、これを(熱)加工等して、破断伸度が50%以上、好ましくは、破断伸度60%以上になるようにした糸(高伸度糸)を経糸にいれてもよい。
筒綱部200は、綱部120の外側を構成することにため、耐摩耗性を確保するように、緯糸打ち込みピッチをできるため細かくして、密に緯糸を入れるのがよい。
緯糸打ち込みピッチを、例えば、30pic/30mm以上にすることが例として挙げられる。
筒綱部200は、綱部120のうちの外側を構成することになるので、耐候性材(特には耐光性材)(樹脂)や耐摩耗性材(樹脂)を筒綱部200の外面に塗布したり、あるいは、耐候性材(特には耐光性材)(樹脂)や耐摩耗性材(樹脂)でコーティングした糸を用いて筒綱部200を織るようにしてもよい。
芯綱部300は、例えば、最終破断強力が15kN以上、望ましくは、最終破断強力が18kN以上の綱である。
ここで最終破断強力が15kN以上とするのは、規格(例えばISO)で定められている基準に応じているものであり、芯綱部300に求められる最終破断強力は、命綱として最終的に体を支えるために求められる値である。
芯綱部300は、平織り、平2重織りや綾織りなどの一般的な織組織でよい。
芯綱部300は、最終強力が必要であるとともに、筒綱部200のなかに収容されなければならないので、芯綱部300に使用する糸としては、(細くて強い)高強力のポリエチレンやアラミド繊維等を使用するのがよい。
例えば、芯綱部300の経糸は1100T以上、できれば撚り糸、芯綱部300の緯糸は560T以上とすることが例として挙げられる。
無負荷状態のときの筒綱部200の長さが無負荷時長さLTsであるとする。筒綱部200が徐々にエネルギーを吸収しながら徐々に伸び、衝撃吸収後の長さが衝撃吸収後長さLTeになるとする。このとき、芯綱部300は、その長さが筒綱部200の衝撃吸収後長さLTeよりも長くなるように形成されている。そして、図2に例示されるように、芯綱部300は、折り畳まれた状態で筒綱部200の内側に収容されている。芯綱部300の始端と筒綱部200の始端とは固定され、芯綱部300の末端と筒綱部200の末端とは固定されている。
本実施形態のランヤード100を装着した作業者が落下したような場合に両端の固定金具110、110が引っ張られると、筒綱部200も芯綱部300も同じように両端が引っ張られる。
このとき、まず、外側の筒綱部200が徐々にエネルギーを吸収しながら徐々に伸び、作業者の体に急に大きな力が掛かることを防ぐ。例えば、作業者の体に掛かる最大衝撃が4kNを越えないようにできる。筒綱部200が伸びてエネルギーを吸収しきった後、筒綱部200の内側の芯綱部300が最終的に作業者の体重を支えて地面との衝突を防ぐように吊り下げる。
従来のランヤードでは、単体のベルトで最終強力とエネルギー吸収との両方を兼ねることを企図したものが多かったが、一つのベルトに最終強力を担う糸とエネルギー吸収を担う糸(伸張糸や寸断糸)とを共存して織り込むような構成では上記の規格を満たすことがもはや難しい。
しかし、最終強力を担うベルトを筒状に織ると、それだけでかなりの太さと重さになる。
最終強力を担う筒状ベルトは、内側のエネルギー吸収ベルトの伸びを許容できるように長く織られているから、これを手作業で蛇腹に折り畳むのはかなりの労力を要することになる。それを蛇腹に畳むと、その直径はかなり太くなってしまう。
また、最終強力を担う筒状ベルトが外側にあると、光や摩耗によって劣化や損傷が早く進んでしまうことになり、作業者の体を支える最終強力が保たれているのか懸念も生じる。
実験例1、実験例2を示す。
実験例1,2ともに、筒綱部200は次のように構成した。
経糸として、未延伸ポリエステル糸560Tを6本束ねた糸を201本用いる。
緯糸は、延伸ポリエステル糸1100Tを用いる。
緯糸の打ち込みピッチは、30pic/30mmとし、平二重織りとした。
絡み糸は、延伸ポリエステル糸560Tを用いた。
なお、未延伸ポリエステル糸560T×6本で3360Tであるから、1100T~6600Tの範囲に入る。
延伸ポリエステル糸1100Tは、560T~2200Tの範囲に入る。
経糸として、ポリエチレン糸1670T(撚り数80t/m)を72本用いた。
緯糸としては、ポリエステル糸1100Tを用いた。
緯糸の打ち込みピッチは、25pic/30mmとし、平二重織りとした。
絡み糸として、ポリエステル糸470Tを用いた。
無負荷時のランヤード100の長さは2320mmであった。
経糸として、ポリエチレン糸1670T(撚り数80t/m)を80本用いた。
緯糸としては、ポリエステル糸1100Tを用いた。
緯糸の打ち込みピッチは、18pic/30mmとし、綾織りとした。
絡み糸として、ポリエステル糸470Tを用いた。
無負荷時のランヤード100の長さは2270mmであった。
最大衝撃荷重、および、平均衝撃荷重が4kN以下に抑えられているのがわかる。
最大衝撃荷重、および、平均衝撃荷重が4kN以下であることはもちろん、その立ち上がりも滑らかで徐々にエネルギーを吸収し始め、最大衝撃荷重が4kNの手前でほぼ一定値となり最後まで一定の安定かつ滑らかなエネルギー吸収性能が発揮されていることがわかる。
この対比例は、製品名Gカットランヤードとして市販されているものである。
従来品では、衝撃荷重が最初の立ち上がりからいきなり大きく、その後何度も大きな衝撃がある。
また、エネルギー吸収が安定しはじめ、エネルギーを徐々に吸収して衝撃が滑らかに下がっていくが、どうしても最後に尻上がりに大きな衝撃が発生する傾向がある。
これが実際に人の体に作用すると、体に何度も比較的大きな衝撃が作用することになるので望ましいことではなかった。
エネルギー吸収性を限りなく良くすれば規格の伸び以内で3kN以下でエネルギーを吸収させることもでき、より一層、体に優しいランヤードとすることが可能となる。
さらに、自然長が筒綱部200の無負荷状態のときの長さLTsよりも短い伸縮性のひも部材400を筒綱部200のなかにいれ、筒綱部200、芯綱部300および伸縮性のひも部材400の端同士を固定しておくとよい。伸縮性のひも部材400としては、伸縮性の糸で織ったゴムベルトでもよいし、単体の合成樹脂(ゴム)の紐でもよい。
この構成によれば、図9に例示のように、筒綱部200が蛇腹に折り畳まれて全体が短くなり、蛇腹状の伸縮性を備えたランヤード100とできる。また、本発明の筒綱部200は比較的柔らかいので、伸縮性のひも部材(ゴムベルト)の収縮によって自然と蛇腹状に畳まれる。
筒綱部200の経糸のすべてが高伸度糸であってもよいし、筒綱部200にはその他複数種類の糸(経糸、緯糸)が含まれてもよいのであり、例えば、低伸度、破断強度が低い、といった寸断糸が含まれていてもよい。
例えば、エネルギー吸収部(ショックアブソーバー部)500は、通常は折り畳まれた状態に縫製されており、所定値以上の急激な引張力が掛かったときに縫製の糸が切れて伸びるとともに、糸が切れるときに衝撃(エネルギー)を吸収するものである。
110 固定具
120 綱部
200 筒綱部
300 芯綱部
400 伸縮性ひも部材
Claims (2)
- 筒状に織られた筒綱部と、
前記筒綱部とは別体として織られたものであって、前記筒綱部の内側に収容された状態で設けられた芯綱部と、を有し、
前記筒綱部は、その経糸の一部に、負荷が掛かったときに伸張してエネルギーを吸収するエネルギー吸収用高伸度経糸を含み、
前記筒綱部に衝撃が掛かったとき、前記筒綱部は、無負荷状態のときの長さLTsから徐々にエネルギーを吸収しながら徐々に伸びて衝撃吸収後長さLTeまで伸びるものであって、
前記芯綱部は、最終破断強力が15kN以上となる綱であり、その長さが少なくとも前記筒綱部の衝撃吸収後長さLTeよりも長い長さLCを有し、
前記芯綱部の始端と前記筒綱部の始端とは固定され、前記芯綱部の末端と前記筒綱部の末端とは固定され、前記芯綱部は、折り畳まれた状態で前記筒綱部の内側に収容されている
ことを特徴とするエネルギー吸収ランヤード。 - 請求項1に記載のエネルギー吸収ランヤードにおいて、
さらに、前記筒綱部の内側に、自然長が前記筒綱部の無負荷状態のときの長さLTsよりも短い伸縮性のひも部材を設け、
前記筒綱部の始端と前記伸縮性ひも部材の始端とを固定し、前記筒綱部の末端と前記伸縮性ひも部材の末端とを固定し、無負荷状態のときの前記筒綱部が蛇腹状になって長さが縮んでいる
ことを特徴とするエネルギー吸収ランヤード。
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