JP7465198B2 - 複合成形体及び車両用ステップ - Google Patents

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Description

本発明は、複合成形体に関するもので、特に、車両用ステップとして使用されるインサートナットが埋設された複合成形体に関するものである。
一般にピックアップトラックや一部の多目的スポーツ車などの比較的車高の高い車両においては、フロントドアやリヤドア、バックドアなどのドアの開口部の下方に、乗降性や荷物の積み下ろし性が良好になるように、乗降用や足掛け用のステップ(以下、「車両用ステップ」ともいう)が設けられている。
この車両用ステップに関し、昨今、金属製に替わって樹脂成形体も使われ始めている。樹脂成形体の車両用ステップとしては、中空部を有する熱可塑性樹脂中空ブロー成形体からなるものがある。この従来の熱可塑性樹脂中空ブロー成形体からなる車両用ステップにあっては、その機械的強度等を高めるために、リブ構造を有したものとするとともに肉厚の厚いものとされており、結果として製品重量は重いものとなっていた。
一方、中空状の樹脂製表皮材とその内部に充填された発泡粒子を成形してなる発泡粒子成形体とを備える複合成形体が知られている。
この複合成形体を製造する方法として、例えば特許文献1、2などには、熱可塑性樹脂の溶融物を押し出して形成された軟化状態のパリソンを成形型内でブロー成形して中空ブロー成形体を形成し、この中空ブロー成形体の壁部に発泡粒子充填管を打ち込み該中空ブロー成形体内に熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、その後、同じく中空ブロー成形体の壁部に挿通した加熱媒体供給管を介してスチームを供給して中空ブロー成形体内に充填した発泡粒子を加熱し、発泡粒子どうしを融着させて発泡粒子成形体とするとともに、発泡粒子成形体と中空ブロー成形体の内面とを融着させる方法が提案されている。
このような製造方法で得られる複合成形体は、中空ブロー成形体のみで構成された成形体よりも曲げ剛性に優れ、表皮材となる中空ブロー成形体の厚みを薄くして軽量化しても、中空ブロー成形体のみで構成された成形体と同等以上の曲げ剛性を有するものを調製することが可能であった。そこで、このような複合成形体は、軽量で、曲げ剛性に優れることから、近年、さまざまな用途で利用されはじめている。
特開平06-166112号公報 特開2008-273117号公報
ここで、上記した中空ブロー成形体、或いは中空ブロー成形体を表皮材としてその中空部に発泡粒子成形体を位置させた複合成形体に、取付具であるナットを備えたものとする場合には、いずれもブロー成形によりインサートナットを中空ブロー成形体に埋設させることがなされていた。しかしながら、上記した表皮材となる中空ブロー成形体の厚みを薄くし、軽量化を図った場合には、複合成形体の形状や用途によっては、該表皮材である中空ブロー成形体に埋設させたインサートナットの取付強度、具体的には取付具であるインサートナットの複合成形体からの引抜強度が低下するという課題があった。
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑み成されたものであって、その目的は、インサートナットが埋設される部位の樹脂厚みが薄い場合であっても、中空ブロー成形体に埋設されたインサートナットを介して締結された部材に引き抜き荷重を加えた際の、引き抜きに対する強度に優れる複合成形体を提供することにある。
上記した目的を達成するため、本発明は、次の〔1〕~〔10〕に記載した複合成形体及び車両用ステップとした。
〔1〕インサートナットが埋設された熱可塑性樹脂中空ブロー成形体からなる表皮材と、該熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の中空部に位置する熱可塑性樹脂発泡粒子成形体とを有する複合成形体であって、
上記インサートナットは、底壁と、該底壁の中央部に設けられた雌ネジ部と、上記底壁の外縁から立ち上がり上記雌ネジ部を取り囲む周壁とを備え、
上記周壁は、該周壁の上端部から外方に張り出した張出片を有しており、
上記張出片の上端から上記底壁の外底面までの高さは、10mm以下であり、
上記周壁の上端から上記底壁の内底面までの高さと上記張出片の厚みとの差は、2mm以上であり、
上記底壁と上記周壁とによって形成される上記雌ネジ部を取り囲む空間の容積は、2cm3以下であり、
上記表皮材である熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の平均厚みに対する上記インサートナットの張出片の上端から底壁の外底面までの高さの比は、3以下であり、
上記インサートナットの底壁の外底面は、上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の外表面側に位置しており、
上記インサートナットの底壁と周壁とによって形成される雌ネジ部を取り囲む空間に、上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体を構成する熱可塑性樹脂が入り込んでいるとともに、上記インサートナットの張出片は、上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体を構成する熱可塑性樹脂に埋設されていることを特徴とする、複合成形体。
〔2〕上記インサートナットの周壁の上端から底壁の内底面までの高さに対する上記張出片の張出長さの比は、0.2以上1.0以下であることを特徴とする、上記〔1〕に記載の複合成形体。
〔3〕上記インサートナットの底壁は、上面視多角形状であり、該多角形状の底壁の外縁から立ち上がる周壁は、該周壁の角部において厚み方向に貫通する切欠きにより分断されていることを特徴とする、上記〔1〕または〔2〕に記載の複合成形体。
〔4〕上記インサートナットの周壁と張出片との屈曲部に、曲げ変形を抑制する補強リブが設けられていることを特徴とする、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔5〕上記インサートナットにおける底壁、周壁及び張出片は、板厚が0.4mm以上3mm以下、ヤング率が60GPa以上250GPa以下である金属板により形成されていることを特徴とする、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔6〕上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の平均厚みは、2mm以上5mm以下であることを特徴とする、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔7〕上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体は、ポリプロピレン系樹脂中に強化繊維を含有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とすることを特徴とする、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔8〕上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の基材樹脂の曲げ弾性率は、1000MPa以上4000MPa以下であることを特徴とする、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔9〕上記発泡粒子成形体は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体であることを特徴とする、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の複合成形体。
〔10〕上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の複合成形体からなる、車体のドア開口部の下方に取り付けられる車両用ステップ。
上記した本発明に係る複合成形体によれば、インサートナットが埋設される部位の熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の樹脂厚みが薄い場合であっても、該中空ブロー成形体に埋設されたインサートナットを介して締結された部材に引き抜き荷重を加えた際の、引き抜きに対する強度に優れる複合成形体となる。
本発明に係る複合成形体からなる車両用ステップの一実施形態を斜め上方から示した斜視図である。 図1に示した車両用ステップを斜め下方から示した斜視図である。 図1のI-I線に沿う部分(インサートナットが埋設された部分)の拡大断面図である。 本発明において用いるインサートナットの一実施形態を示した斜視図である。 インサートナットの複合成形体への埋設状態を示した斜視図である。 本発明において用いるインサートナットの他の実施形態を示した斜視図である。 本発明に係るインサートナットを備えた複合成形体の製造装置の一例を概念的に示した断面図である。 図1に示した車両用ステップに取付ステーを取り付けた状態を示した断面図である。
以下、本発明に係る複合成形体の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明に係るインサートナットを備える複合成形体は、後述する実施形態として説明する車両用ステップの他、農業用トラクターのルーフ等、各種車両に取り付けて用いられる取付部材等として好適に用いることができるものである。
図1は、本発明に係る複合成形体からなる車両用ステップの一実施形態を斜め上方から示した斜視図、図2は、同車両用ステップを斜め下方から示した斜視図である。また図3は、図1のI-I線に沿う部分(インサートナットが埋設された部分)の拡大断面図である。これらの図に示すように、車両用ステップ1は、インサートナット10を備える表皮材Xと、該表皮材Xの中空部に位置する発泡粒子成形体Yとを有する複合成形体Zとにより形成されている。
なお、複合成形体Zを車両用ステップ1として用いる場合において、車体に取り付けられた状態における複合成形体Zの上部の面(車体の上下方向における上方の面)を上部面、複合成形体Zの下部の面(車体の上下方向における下方の面)を下部面と呼ぶ。
上記表皮材Xは熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20からなり、上部面を形成する第一壁20aと、下部面を形成する第二壁20bとがそれらの周縁で融着して内部に中空部が形成されている。なお、軽量化を達成できる範囲において、熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20は、上記第一壁20aと第二壁20bとを、その周縁以外の部位で突き当てて融着させて形成したリブ構造を有しているものとしてもよい。
上記表皮材Xを構成する熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の外形は、車体のドア開口部の下方に取り付けられる長尺な板状体、具体的には、例えば2000×200×100mm程度の板状体に形成され、車体に取り付けられた状態でドア開口部の下方から略水平方向に外方に延びる略平板状のステップ部21と、該ステップ部21の幅方向内側(車体側)に上方に突出して形成された取付部22とを有する断面略L字状に形成されている。ステップ部21の上部面を形成する第一壁20aには、乗員が足を載置した際のスリップを防止する凹凸状のスリップ防止部23が長さ方向に延設されている。また、ステップ部21の下部面を形成する第二壁20bには、車体への取付ステー(図示せず)を固定する部位となる取付凹部24が複数カ所、図示した実施形態においては3カ所形成されており、該取付凹部24に、インサートナット10がそれぞれ2個埋設されている(図2、図3参照)。
上記表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などを用いることができるが、中でも、機械的強度と耐熱性とのバランスに優れるとともに、靭性が高く、引き抜き時にインサートナット10が表皮材Xから引き抜かれにくくなることから、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。さらには強度、曲げ剛性を高める観点から、ポリプロピレン系樹脂中に強化繊維を含む繊維強化ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂として成形されていることがより好ましい。また、この場合の繊維強化ポリプロピレン系樹脂中の強化繊維の含有量は、10重量%以上30重量%以下が好ましく、12重量%以上25重量%以下であることがより好ましい。強化繊維の含有量が10重量%以上であることで、表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体は曲げ剛性により一層優れたものとなる。強化繊維の含有量が30重量%以下であることで、該熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の成形が容易なものとなる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(h-PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体やプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体などのランダムポリプロピレン(r-PP)、ブロックポリプロピレン(b-PP)或いはそれらの混合物などを例示することができる。なお、ブロックポリプロピレンは、プロピレン-エチレンブロック共重合体などのブロック共重合体だけではなく、オレフィン系熱可塑性エラストマーやオレフィン系ゴムの存在下でプロピレンを重合したものや、ポリプロピレンとオレフィン系熱可塑性エラストマーやオレフィン系ゴムとを混錬したものも包含する。
また、上記強化繊維の種類としては、ガラス繊維、グラスウール、炭素繊維、セルロースナノファイバーなどの繊維材料が例示される。
表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20は多層構造のものとしてもよく、例えば、外層は、繊維強化ポリプロピレン系樹脂から構成され、内層は、外層よりは少ない量の強化繊維を含む繊維強化ポリプロピレン系樹脂又は強化繊維を含まないポリプロピレン系樹脂から構成されているものとすることができる。このような多層構造の中空ブロー成形体を用いることで、中空部に充填される発泡体がポリプロピレン系樹脂発泡体である場合に、発泡体と中空ブロー成形体とを強固に融着させることができ、複合成形体の曲げ剛性をより高めることができる。なお、この場合の強化繊維の含有量は、多層とした全体の強化繊維の含有量が上記した範囲内のものであればよい。
また、表皮材Xに埋設されたインサートナット10を介して締結された部材に引き抜き荷重を加えた際に、インサートナットが表皮材から引き抜かれにくくなり、引き抜きに対する強度を高めやすくなる観点から、表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の基材樹脂の曲げ弾性率は、1000MPa以上4000MPa以下であることが好ましく、1500MPa以上3500MPa以下であることがより好ましい。
なお、上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の基材樹脂の曲げ弾性率は、JIS K 7171:2008に記載の測定法に準拠して測定した値である。
また、表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の厚みは、強度と軽量性との兼ね合いから、平均厚み(平均肉厚)Tで2mm以上5mm以下であることが好ましく、2.5mm以上4.5mm以下であることがより好ましい。
なお、熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の平均厚み(平均肉厚)は、次のようにして測定される。熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の長手方向中央部および長手方向両端部付近から選択された計3つの位置の長手方向に対する垂直断面に対して肉厚が測定される。そして、それぞれの位置の垂直断面について、各垂直断面の周方向に沿って等間隔に6箇所の垂直断面の厚み方向の厚さ(壁部の肉厚)の測定が行われる(図3参照)。得られた18カ所の厚みの値が算術平均され、その平均値が熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の平均厚み(平均肉厚)Tとなる。
上記表皮材Xを構成する熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20には、上記したようにインサートナット10が埋設されている。インサートナット10の一実施形態を、図4に示す。この図4に示されているように、インサートナット10は、底壁11と、該底壁11の中央部に設けられた雌ネジ部12と、上記底壁11の外縁から立ち上がり上記雌ネジ部12を取り囲む周壁13と、該周壁13の上端部から外方に張り出した張出片14とを有している。なお、インサートナット10は、ブロー成形により熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20に埋設されている。
上記インサートナット10の張出片14の上端から上記底壁11の外底面までの高さHは、10mm以下であり、上記周壁13の上端から上記底壁11の内底面までの高さと上記張出片14の厚みとの差δは、2mm以上である。上記高さHが高すぎると、ブロー成形時において金型と該インサートナットの張出片との間に樹脂が回り込みにくくなり、成形性が低下して中空ブロー成形体の外観が低下するおそれがある。また、上記差δが小さすぎると、引抜き荷重が生じた時に、該インサートナットの周壁が変形しにくくなり、引抜き強度が低下するおそれがある。かかる観点から、上記高さHは、9mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。また上記差δは、2.5mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。
一方、ブロー成形時における成形性がより安定して高められるとともに、引抜き強度がより安定して高められる観点から、上記高さHは、3mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましい。また、引抜き時に周壁が樹脂を挟み込みやすくなり、引抜き強度がより安定して高められる観点から、上記差δは、6mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。
また、上記インサートナット10の上記底壁11と上記周壁13とによって形成される上記雌ネジ部12を取り囲む空間αの容積は、2cm3以下である。雌ネジ部を取り囲む空間αの容積が大きすぎると、該インサートナットの周壁が雌ネジ部を取り囲む空間に入り込んだ熱可塑性樹脂を挟み込みにくくなり、引抜き強度が低下するおそれがある。また、インサートナットが重くなりやすいとともに、外形寸法が大きくなりやすいので、複合成形体の軽量化がしにくくなるおそれや、複合成形体への配置の自由度が低下するおそれがある。かかる観点から、上記空間αの容積は、1.8cm3以下であることが好ましく、1.5cm3以下であることがより好ましい。
一方、雌ネジ部12を取り囲む空間αに入り込む樹脂量を安定して確保する観点から、空間αの容積は、0.2cm3以上であることが好ましく、0.3cm3以上であることがより好ましく、0.5cm3以上であることがさらに好ましい。
上記底壁11と周壁13とによって形成される雌ネジ部12を取り囲む空間αの容積は、インサートナットから直接測定しても良く、インサートナットの外形寸法やインサートナットを作製するための図面等をもとに算出しても良い。例えば、底壁の内底面の面積に、周壁の上端から底壁の内底面までの高さを乗じる等して、底壁と周壁とにより形成される領域の容積を求め、該容積から、該領域に含まれる雌ネジ部の体積(雄ネジが挿入される雌ネジ部の空間を含む雌ネジ部の体積)を減じることで、空間αの容積を求めることができる。
上記したことから、本発明においてブロー成形により熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20に埋設されて用いられるインサートナット10は、底壁11と、該底壁11の中央部に設けられた雌ネジ部12と、上記底壁11の外縁から立ち上がり上記雌ネジ部12を取り囲む周壁13とを備え、上記周壁13は、該周壁13の上端部から外方に張り出した張出片14を有しており、上記張出片14の上端から上記底壁11の外底面までの高さHは10mm以下であり、上記周壁13の上端から上記底壁11の内底面までの高さと上記張出片14の厚みとの差δは2mm以上であり、上記底壁11と上記周壁13とによって形成される上記雌ネジ部12を取り囲む空間αの容積は2cm3以下のものである。
そして、上記構成のインサートナット10は、その底壁11の外底面が上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の外表面側に位置しており、上記インサートナット10の底壁11と周壁13とによって形成される雌ネジ部12を取り囲む上記空間αに、上記中空ブロー成形体20を構成する熱可塑性樹脂が入り込んでいるとともに、上記インサートナット10の張出片14が上記中空ブロー成形体20を構成する熱可塑性樹脂に埋設されている(図3の拡大図参照)。このようにインサートナット10が張出片14を備えるとともに、該張出片14が中空ブロー成形体20を構成する熱可塑性樹脂に埋設されることで、インサートナットに、インサートナットを中空ブロー成形体から引抜く引き抜き荷重を加えたときに、前記周壁が周壁によって囲まれた樹脂を挟み込むように変形可能な状態となっている。そのため、中空ブロー成形体の厚みが薄い場合であっても、引き抜き荷重が加わった際に、インサートナットが引き抜かれにくいものとなる。また、引き抜き荷重が加わった際に、インサートナットの周壁が雌ネジ部を取り囲む空間に入り込んだ熱可塑性樹脂を挟み込むように雌ネジ部側に変形することで、引抜き強度が向上したものとなる。
引抜き強度をより安定して向上させる観点から、上記インサートナット10の張出片14と、上記インサートナット10の周壁13とが、上記中空ブロー成形体20を構成する熱可塑性樹脂に埋設されていることがより好ましい。また、埋設されたインサートナット10への取付部材(例えば、図8に示した取付ステー)の取付性の観点から、インサートナット10における底壁11の外底面は、熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の外表面側に位置しており、熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20から露出していることが好ましい(図5参照)。
ここで、上記インサートナット10の周壁の高さH(張出片の上端から底壁の外底面までの高さ)の上記表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の上記した平均厚みTに対する比H/Tは、3以下である。上記比H/Tが大きすぎると、ブロー成形時において、金型とインサートナットの張出片との間に樹脂が回り込みにくくなり、成形性が低下して中空ブロー成形体の外観が低下するおそれがある。また、引き抜き荷重が加わった際に、インサートナットの周壁によって囲まれた樹脂が挟み込まれにくくなり、引き抜き荷重に対する強度が低下する。かかる観点から、上記比H/Tは、2.5以下であることが好ましく、2.2以下であることがより好ましい。
一方、引き抜き強度がより安定して高められる観点から、上記比H/Tは、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。
また、上記インサートナット10の上記張出片14の張出長さLの上記周壁の高さHに対する比L/Hは、0.2以上1.0以下であることが好ましい。この場合、ブロー成形時に、インサートナットを中空ブロー成形体に十分に埋設できるとともに、引抜き時に、該インサートナットの周壁を良好に変形させることができるので好ましい。また、複合成形体の軽量化もしやすいものとなる。かかる観点から、上記比L/Hは、0.4以上0.8以下がより好ましい。
上記インサートナット10の底壁11の外形形状は、本発明の所期の目的を達成できるものであれば、特に限定されるものでないが、上面視多角形状、例えば四角形状、正四角形状、三角形状、正三角形状などであることが好ましく、引抜き強度をより安定して高めることができる観点から、上記インサートナット10の底壁11の外形形状は略四角形状であることがより好ましい。なお、該多角形状は、その頂点部が面取りされているような形状でも良い。
また、該多角形状の底壁11の外縁から立ち上がる周壁13は、該周壁の角部において周壁の厚み方向に貫通する切欠き15により分断されていることが好ましい(図4参照)。これは、周壁が角部において分断されていることにより、引抜き時に、該周壁を良好に変形させることができるために好ましい。なお、切欠き15は周壁が内方に変形できるように形成されていればよく、必ずしも完全に分断されている必要はない。
複合成形体Zへの配置の自由度をより高める観点から、インサートナット10の底壁の一辺の長さは、10mm以上30mm以下であることが好ましく、15mm以上25mm以下であることがより好ましい。
また、上記インサートナット10の周壁13と張出片14との屈曲部に、屈曲部の辺における曲げ変形を抑制する補強リブ16が設けられていることは好ましい(図6参照)。これは、引抜き時に、張出片の過度な変形を防ぐことができ、これにより周壁を良好に変形させることができる。そのため、インサートナットの外形寸法を小さくした場合であっても、インサートナットを中空ブロー成形体から引き抜かれにくくすることができる。
上記した構成のインサートナット10の材質は、強度を有する金属製のものであることが好ましい。より具体的には、インサートナット10の底壁11、周壁13及び張出片14が、板厚が0.4mm以上3mm以下、より好ましくは0.5mm以上2mm以下であり、ヤング率が60GPa以上250GPa以下、より好ましくは120GPa以上240GPa以下、さらに好ましくは180GPa以上230GPa以下である金属板により形成されたインサートナットであることが好ましい。インサートナット10の底壁11、周壁13及び張出片14は、金属板をプレス加工等により曲げ加工することにより好ましく形成することができる。
また、インサートナット10における雌ネジ部12の加工法については、コスト面、環境適合面に優れる観点からプレス加工及び/又はタップ加工を行うことにより雌ネジ部を形成することが好ましく、プレス加工とタップ加工とを行うことにより雌ネジ部を形成することがより好ましい。なお、この場合、プレス加工とタップ加工とは別工程で行っても良く、一工程で同時に行っても良い。
このような金属材料を用いてインサートナット10を構成することで、引抜き時に、インサートナットが破壊されにくくなるとともに、インサートナットの周壁が雌ネジ部を取り囲む空間に入り込んだ熱可塑性樹脂を挟み込むように変形しやすくなることで、引抜き強度をより高めることができる。
なお、上記金属板のヤング率は、金属材料引張試験方法(JIS Z 2241:2011)により測定される、応力-ひずみ曲線から算出される引張弾性率を意味する。
また、上記したインサートナット10を形成する金属板としては、例えば、冷間圧延鋼板、熱間圧延鋼板、アルミニウム板、ステンレス鋼板等を用いることができる。これらの中でも、強度に優れると共に、引抜き時に適度に曲げ変形を生じさせることができる観点から、冷間圧延鋼板を用いることがより好ましい。
また、インサートナット10を構成する金属板のヤング率(GPa)に対する、熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の基材樹脂の曲げ弾性率(GPa)の比は、0.005以上0.03以下であることが好ましく、0.01以上0.02以下であることがより好ましい。上記比を満たすことで、引抜き時に、周壁が雌ネジ部を取り囲む空間に入り込んだ熱可塑性樹脂を挟み込むように変形した際に、インサートナットが引き抜かれにくくなるとともに、該変形により、熱可塑性樹脂中空ブロー成形体を構成する熱可塑性樹脂がより強固に挟み込まれるため、より安定して引抜き強度を高めることができる。
なお、インサートナット10における底壁11、雌ネジ部12、周壁13、張出片14は、同じ材質の材料から形成されていることが好ましく、金属材料により形成されていることが好ましい。また、雌ネジ部12は、例えば、雌ネジ部以外のインサートナットの各部位(底壁、周壁、張出片)とは別体として形成しておき、後加工により、雌ネジ部と、雌ネジ部以外のインサートナットとを一体化することができる。また、上記した金属板等から雌ネジ部以外のインサートナットの各部位を形成する際に、金属板と雌ネジ部を構成するための材料とを加工装置に配置してプレス加工及びタップ加工等を行うことにより、インサートナットの各部位及び雌ネジ部の形成と同時に、雌ネジ部と、雌ネジ部以外のインサートナットとを一体化することもできる。
また、インサートナット10の底壁11と雌ネジ部12との強度をより高める観点から、雌ネジ部のネジ軸の軸方向に直交する方向における、雌ネジ部の厚みが2mm以上となるように形成されていることが好ましい。
上記したインサートナット10を備える表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の中空部に充満されている、表皮材Xの中空部に位置する上記発泡粒子成形体Yとしては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂との複合樹脂、ポリウレタンなどを基材樹脂とする発泡体とすることができるが、中空ブロー成形体20がポリプロピレン系樹脂から形成されている場合には、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とした発泡粒子成形体Yが好ましい。発泡粒子成形体Yを構成する樹脂の種類が、表皮材Xである上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の樹脂の種類と同じくポリプロピレン系樹脂となっていることで、表皮材Xと発泡粒子成形体Yとの融着性を高めることができ、より曲げ剛性に優れた複合成形体Zが得られるようになる。
発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合、プロピレン-ブテンランダム共重合、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合が好ましい。また、発泡粒子としては、発泡層であるポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡状態の芯層の表面を、該芯層を形成するポリプロピレン系樹脂の融解温度よりも低い融解温度又は軟化温度を示す樹脂により被覆した多層構造の発泡粒子や、メタロセン系重合触媒により重合されてなるポリプロピレン系樹脂を含む基材樹脂からなる発泡粒子等を使用することができる。これらの発泡粒子を使用することにより比較的低いスチーム加熱圧力で発泡粒子同士を融着させることができる。
発泡粒子成形体Yの見掛け密度には特に制限はなく、一般に使用されている見掛け密度のものを広く用いることができるが、軽量性と機械的強度のバランスに優れることから、30kg/m3以上150kg/m3以下であることが好ましく、32kg/m3以上120kg/m3以下であることがより好ましく、35kg/m3以上90kg/m3以下であることが特に好ましい。
なお、発泡粒子成形体Yの見掛け密度は、発泡体の重量を発泡体の体積で割算した値を意味する。発泡体の体積は、発泡体を水中に沈めた際の水位の上昇分から測定する方法(水没法)などにより求めることができる。
また、表皮材Xを構成する上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の重量に対する上記発泡粒子成形体Yの重量の比は、強度と軽量性との兼ね合いから、0.2以上0.5以下であることが好ましく、0.25以上0.35以下であることがより好ましい。
上記したインサートナット10を備える複合成形体Z(車両用ステップ1)、より具体的には、インサートナットが埋設された熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の中空部に熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、該中空ブロー成形体内に加熱媒体を供給することにより該発泡粒子を相互に加熱融着させてなる、インサートナット10が埋設された熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20からなる表皮材Xと、該表皮材Xの中空部に位置する発泡粒子成形体Yとを有する複合成形体Zは、例えば、次の製造方法により製造することができる。
先ず、成形型の内面に配置した保持ピンに、インサートナット10を保持させる。
続いて、例えば強化繊維を含む繊維強化ポリプロピレン系樹脂の溶融物をダイから押し出して形成された軟化状態の円筒状のパリソン又は2枚のシートバリソンを成形型で挟み込み、それからパリソンにブロー管を介してパリソン内にエアーなどの加圧気体(以下、ブローエアとも言う)を吹き込む。これにより、成形型のキャビティ内でパリソンが膨らみ、成形型の内壁に押し当てられることでパリソンが賦形されるとともに、インサートナット10がバリソンに埋設され、インサートナット10が埋設された中空ブロー成形体20が形成される。
このブロー成形工程において、ブローエアを吹き込んでいる間、成形型側から真空引きして、パリソンを成形型の内壁に密着させることが好ましい。この場合、より容易に、成形型の形状が忠実に反映された中空ブロー成形体20を形成することができ、且つ、インサートナット10が樹脂に取り囲まれた状態で埋設したものとなる。
続いて、成形型内において、上記したブロー成形により形成した表皮材Xである中空ブロー成形体20内に、例えばポリプロピレン系樹脂発泡粒子を充填する。この発泡粒子の充填工程は、ブロー成形用の成形型に発泡粒子充填管を設け、ブロー成形後、中空ブロー成形体が冷却固化する前に、該発泡粒子充填管を外部から内部(中空部)に打ち込み、この打ち込んだ発泡粒子充填管を介して圧送空気とともに発泡粒子を中空ブロー成形体内に充填することにより行う。
この発泡粒子の充填のタイミングは、中空ブロー成形体が軟化状態となっている段階において発泡粒子を中空ブロー成形体内(中空ブロー成形体の中空部)に充填することが好ましい。このように中空ブロー成形体内に発泡粒子が充填されることにより、加熱媒体により中空ブロー成形体の内部空間に充填された発泡粒子が相互に融着してなる発泡粒子成形体Yと、表皮材Xとなる中空ブロー成形体20の内面とをより確実に融着させることができる。
続いて、中空ブロー成形体内に充填された発泡粒子に対して加熱媒体を供給し、発泡粒子同士を加熱融着させる。この加熱媒体の供給工程は、ブロー成形用の成形型に設けられた加熱媒体供給管を中空ブロー成形体の内部に向かって挿入し、該挿入した加熱媒体供給管を介して加熱媒体(例えば、スチーム)を中空ブロー成形体内に供給することにより行う。
この加熱媒体の供給工程では、供給された加熱媒体で加熱された発泡粒子どうしが融着し、発泡粒子成形体Yが形成される。さらに、発泡粒子成形体の形成が進行するとともに、表皮材Xである中空ブロー成形体20の内面とその内面に接触する発泡粒子成形体Yの部分とが融着されることとなる。
続いて、成形型を冷却し、成形された中空ブロー成形体及びその内部に位置する発泡粒子成形体を冷却固化させ、その後、脱型することにより、インサートナット10を備える複合成形体Zを得ることができる。
複合成形体の製造装置の一例を、図7に概念的に示す。この製造装置100は、押出機、ダイ(これらは図示しない)及び成形用の成形型101を備える。成形型101には、インサートナット10を保持する保持ピン102が設けられ、また、軟化状態のパリソンをブロー成形して中空ブロー成形体を形成するためのブローエアを供給するブロー管103、形成した中空ブロー成形体内に発泡粒子を充填する発泡粒子充填管104、及び充填した発泡粒子を相互に加熱融着させる加熱媒体を供給する加熱媒体供給管105がそれぞれ設けられている。上記したインサートナットの保持ピン102は、複合成形体の成形後、脱型前に成形型101内から引き抜けるように構成されている。また、上記したブロー管103、発泡粒子充填管104、そして加熱媒体供給管105は、成形型101内部に対して挿入可能にそれぞれ構成されるとともに、ブロー管103はブローエアを、発泡粒子充填管104は発泡粒子を、そして加熱媒体供給管105は加熱媒体(例えばスチーム)をそれぞれ供給可能に構成されている。また、図示した成形型101は分割成形型に形成されており、表皮材Xの上部面を形成する第一壁20a側を成形する成形型片101aと、下部面を形成する第二壁20b側を成形する成形型片101bとからなり、上記した保持ピン102、ブロー管103、発泡粒子充填管104、そして加熱媒体供給管105は、その全てが表皮材Xの下部面を形成する第二壁20b側を成形する成形型片101bに配置されている。これにより、中空ブロー成形体20からなる表皮材Xと、該表皮材Xの中空部に充満している発泡粒子成形体Yとを有する複合成形体Zは、その製造時において上記ブロー管103、発泡粒子充填管104などにより形成された跡の全てが、外方から見え難い下部面に存在するものとなり、外観性の良好な複合成形体Zを製造することができる。
上記したインサートナット10を備える複合成形体Zからなる車両用ステップ1は、図8に示したように、取付ステー50が、ボルト51をインサートナット10に螺合することにより車両用ステップ1に取り付けられ、該取付けられた取付ステー50を介して、図示しない車体に取り付けることができる。そして、かかる車両用ステップ1を車体に取り付けた状態では、乗員が表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20のステップ部21に足を載置することにより車内への乗降が容易となり、このとき、本発明に係る車両用ステップ1は樹脂成型品であるものの、その構造は熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20からなる表皮材Xと、該表皮材Xの中空部に位置する発泡粒子成形体Yとを有する複合成形体Zから構成されているので、十分な剛性を有し、変形や破損が生じにくいとともに、中空部に位置する発泡粒子成形体Yの持つエネルギー吸収性能により衝突時の緩衝性能も良好なステップとなる。また、表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20は、その中空部に位置する発泡粒子成形体Yによってその補強が図られているため、肉厚を薄くすることやリブ構造を無くすことができ、軽量化を実現できるものとなる。また、その軽量化により取付作業時の労力も軽減することができるものとなる。
更に、本発明に係るインサートナット10を備える複合成形体Zである車両用ステップ1は、表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20に埋設されたインサートナット10は、底壁11と、該底壁11の中央部に設けられた雌ネジ部12と、上記底壁11の外縁から立ち上がり上記雌ネジ部12を取り囲む周壁13とを備え、上記周壁13は、該周壁の上端部から外方に張り出した張出片14を有しており、上記張出片14の上端から上記底壁11の外底面までの高さHは10mm以下であり、上記周壁13の上端から上記底壁11の内底面までの高さと上記張出片14の厚みとの差δは2mm以上であり、上記底壁11と上記周壁13とによって形成される上記雌ネジ部12を取り囲む空間αの容積は2cm3以下であり、上記表皮材Xである熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の平均厚みTに対する上記インサートナット10の張出片14の上端から底壁11の外底面までの高さHの比H/Tは3以下であり、上記インサートナット10の底壁11の外底面は上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の外表面側に位置しており、上記インサートナット10の底壁11と周壁13とによって形成される雌ネジ部12を取り囲む空間αに上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20を構成する熱可塑性樹脂が入り込んでいるとともに、上記インサートナット10の張出片14は上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20を構成する熱可塑性樹脂に埋設されているものとしたので、インサートナット10が埋設される部位の熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20の樹脂厚みが薄い場合であっても、該中空ブロー成形体20に埋設されたインサートナット10に螺合されたボルト51によって締結された取付ステー50に引き抜き荷重を加えた際の、引き抜きに対する強度に優れるものとなる。そのため、軽量であるとともに該取付ステー50を介して車体に安定的に装着できる車両用ステップとなる。
また、本発明で用いられるインサートナット10は、ブロー成形により熱可塑性樹脂中空ブロー成形体20に埋設されて用いられるインサートナットであって、上記インサートナット10は、底壁11と、該底壁11の中央部に設けられた雌ネジ部12と、上記底壁11の外縁から立ち上がり上記雌ネジ部12を取り囲む周壁13とを備え、上記周壁13は、周壁の上端部から周壁の外方に張り出した張出片14を有しているインサートナットである。より具体的には、上記インサートナット10は、上記張出片14の上端から上記底壁11の外底面までの高さHは10mm以下であり、上記周壁13の上端から上記底壁11の内底面までの高さと上記張出片14の厚みとの差δは2mm以上であり、上記底壁11と上記周壁13とによって形成される上記雌ネジ部12を取り囲む空間αの容積は2cm3以下である、インサートナットである。
このようなインサートナット10とすることで、インサートナットが埋設される部位の樹脂厚みが薄い場合であっても、中空ブロー成形体に埋設されたインサートナットに引き抜き荷重を加えた際の、引き抜きに対する強度を高めることができる。
次に、本発明について、実施例及び比較例を示してさらに詳細に説明する。但し、本発明は、何らこの実施例によって限定されるものでない。
板厚1mm(比較例4のみ板厚2mm)、ヤング率206GPaの冷間圧延鋼板と、雌ネジ部形成用のヤング率206GPaの冷間圧延鋼板とをプレス加工(曲げ加工)及びタップ加工することにより、表1に示した種々の形状寸法のインサートナットを製作した。
また、次の方法により、表1に併記した種々の平均厚みの熱可塑性樹脂中空ブロー成形体にインサートナットを埋設させた複合成形体(車両用ステップ)を作製した。複合成形体は、図1に示すような形状を有し、概略寸法として、複合成形体の長さが2100mm、ステップ部の幅が180mm、ステップ部の厚さが80mm、取付部の高さが110mmであった。なお、中空ブロー成形体の基材樹脂は、ガラス繊維を20重量%含有させた繊維強化ポリプロピレン系樹脂を用いた。この基材樹脂の曲げ弾性率は3200MPa、融点は164℃、メルトフローレート(MFR)は0.9g/10minであった。
まず、内径65mmの押出機に、上記繊維強化ポリプロピレン系樹脂を供給し、210℃で加熱、混練して溶融樹脂とした。
次に、該溶融樹脂をアキュムレータ(設定温度210℃)に充填し、アキュムレータから溶融樹脂をダイを通して筒状に押出して軟化状態のパリソンとした。該パリソンを、ダイ直下に配置された分割金型で挟み込んだ。なお、金型の型締め前に、保持ピンにより、表1に示した種々の形状寸法のインサートナットを、インサートナットの底壁の外底面が金型と対向するように配置した。また、金型温度は70℃に調整した。その後、ブロー管を打ち込み、ブロー管から0.50MPa(G:ゲージ圧)の加圧空気をパリソン内に吹き込むと同時にパリソン外面と金型内面との間を減圧して、前記金型のキャビティ形状を賦形した。このようなブロー成形によりインサートナットが埋設された、表1の平均厚みを有する中空ブロー成形体を形成した。
なお、中空ブロー成形体の成形においては、上記車両用ステップの概略寸法と同等の成形キャビティを有する成形金型を用いた。
次に、軟化状態の中空ブロー成形体内に、一方の分割金型から他方の分割金型に向けて9本の加熱媒体供給管を挿入し、該加熱媒体供給管から中空ブロー成形体の中空部内の気体を排気することにより中空ブロー成形体の中空部の圧力を0.15MPa(G)に調整しながら、中空ブロー成形体内に発泡粒子充填管を挿入し、発泡粒子充填管を通してプロピレン―エチレンランダム共重合体を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子(見掛け密度45kg/m3)を充填した。
発泡粒子充填後、中空ブロー成形体内に挿入された9本の加熱媒体供給管のうち4本の加熱媒体供給管A群から排気しながら、残りの5本の加熱媒体供給管B群から0.4MPa(G)のスチームを10秒間供給し、次に加熱媒体供給管B群から排気しながら、加熱媒体供給管A群から0.4MPa(G)のスチームを8秒時間供給し最後に、全ての加熱媒体供給管A群及びB群から0.4MPa(G)のスチームを8秒間供給して発泡粒子相互を加熱融着させるとともに、中空ブロー成形体の内面と発泡粒子とを融着させた。
その後、金型に取り付けられた面圧計の圧力が0.05MPa(G)となるまで成形体を冷却し、加熱媒体供給管を抜き取ったのち、金型を開き、金型から離型することにより、インサートナットが埋設された中空ブロー成形体からなる表皮材と、表皮材の中空部に位置する発泡粒子成形体とを有する複合成形体を得た。
なお、得られた複合成形体は、上記概略寸法を有しており、発泡粒子成形体の見掛け密度は45kg/m3であった。
上記製造したインサートナットを備えた複合成形体について、それぞれ、引張試験機(テンシロン万能試験機:オリエンテック社製)を用いて、次の手順にてインサートナットの引き抜き試験を実施した。
まず、インサートナットが上面(ステップの下部面が上面)となるようにして、複合成形体を冶具に固定した。
次に、それぞれの複合成形体における一つのインサートナットと、引張試験機とをボルトにて連結し、試験速度20mm/分にて、表皮材と発泡粒子成形体との融着面に対して垂直な方向に引き抜き荷重を加え、ボルトの引き抜き試験を実施した。
得られた最大点荷重を引抜き荷重として、表1に記載する。
また、引抜き荷重を強度の観点から次の基準で評価し、表1に併記する。

×:1500N未満
〇:1500N以上2000N以下
◎:2000N超

なお、強度に優れる複合成形体となる観点から、引抜き荷重が1500N以上であることが好ましく、2100N以上であることがより好ましく、2300N以上であることがさらに好ましい。
また、製造したインサートナットを備えた中空ブロー成形体について、それぞれ、外観を次の基準で評価し、表1に併記する。

〇:インサートナットが埋設された部分の複合成形体の外表面において、インサートナットの底壁の外底面以外のインサートナットの部位が中空ブロー成形体により十分に覆れていると共に、インサートナットの底壁の外底面と、中空ブロー成形体とが面一に形成されている。
×:インサートナットが埋設された部分の複合成形体の外表面において、インサートナットの底壁の外底面以外のインサートナットの部位が中空ブロー成形体により十分に覆れていない、あるいはインサートナットの底壁の外底面と、中空ブロー成形体とが面一に形成されていない。
Figure 0007465198000001
実施例1のインサートナットに図6に示す補強リブを設けた以外は、実施例1と同様にして、インサートナットを備える複合成形体を作製し、これを実施例6とした。
実施例6に対して上記の引抜き試験を行った結果、その引抜き荷重は2600Nであった(引抜強度評価:◎)。また、実施例6の外観評価は〇であった。
本発明によれば、インサートナットが埋設される部位の樹脂厚みが薄い場合であっても、中空ブロー成形体に埋設されたインサートナットを介して締結された部材に引き抜き荷重を加えた際の、引き抜きに対する強度に優れる複合成形体を提供できるため、例えば、ピックアップトラックや一部の多目的スポーツ車などの比較的車高の高い車両における車両用ステップとして、広く使用することができるものとなる。
1 車両用ステップ
10 インサートナット
11 底壁
12 雌ネジ部
13 周壁
14 張出片
15 切欠き
16 補強リブ
20 熱可塑性樹脂中空ブロー成形体
20a 上部面を形成する第一壁
20b 下部面を形成する第二壁
21 ステップ部
22 取付部
23 スリップ防止部
24 取付凹部
50 取付ステー
51 ボルト
100 複合成形体の製造装置
101 成形型
101a 表皮材の第一壁側を成形する成形型片
101b 表皮材の第二壁側を成形する成形型片
102 インサートナットの保持ピン
103 ブロー管
104 発泡粒子充填管
105 加熱媒体供給管
X 表皮材
Y 発泡粒子成形体
Z 複合成形体
T 熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の平均厚み
H インサートナットの張出片の上端から底壁の外底面までの高さ(「周壁の高さ」ともいう)
δ インサートナットの周壁の上端から底壁の内底面までの高さと張出片の厚みとの差
α インサートナットの底壁と周壁とによって形成される雌ネジ部を取り囲む空間
H/T インサートナットの周壁の高さの熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の平均厚みに対する比
L インサートナットの張出片の張出長さ
L/H インサートナットの張出片の張出長さの周壁の高さに対する比

Claims (10)

  1. インサートナットが埋設された熱可塑性樹脂中空ブロー成形体からなる表皮材と、該熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の中空部に位置する熱可塑性樹脂発泡粒子成形体とを有する複合成形体であって、
    上記インサートナットは、底壁と、該底壁の中央部に設けられた雌ネジ部と、上記底壁の外縁から立ち上がり上記雌ネジ部を取り囲む周壁とを備え、
    上記周壁は、該周壁の上端部から外方に張り出した張出片を有しており、
    上記張出片の上端から上記底壁の外底面までの高さは、10mm以下であり、
    上記周壁の上端から上記底壁の内底面までの高さと上記張出片の厚みとの差は、2mm以上であり、
    上記底壁と上記周壁とによって形成される上記雌ネジ部を取り囲む空間の容積は、2cm3以下であり、
    上記表皮材である熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の平均厚みに対する上記インサートナットの張出片の上端から底壁の外底面までの高さの比は、3以下であり、
    上記インサートナットの底壁の外底面は、上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の外表面側に位置しており、
    上記インサートナットの底壁と周壁とによって形成される雌ネジ部を取り囲む空間に、上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体を構成する熱可塑性樹脂が入り込んでいるとともに、上記インサートナットの張出片は、上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体を構成する熱可塑性樹脂に埋設されていることを特徴とする、複合成形体。
  2. 上記インサートナットの周壁の上端から底壁の内底面までの高さに対する上記張出片の張出長さの比は、0.2以上1.0以下であることを特徴とする、請求項1に記載の複合成形体。
  3. 上記インサートナットの底壁は、上面視多角形状であり、該多角形状の底壁の外縁から立ち上がる周壁は、該周壁の角部において厚み方向に貫通する切欠きにより分断されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の複合成形体。
  4. 上記インサートナットの周壁と張出片との屈曲部に、曲げ変形を抑制する補強リブが設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の複合成形体。
  5. 上記インサートナットにおける底壁、周壁及び張出片は、板厚が0.4mm以上3mm以下、ヤング率が60GPa以上250GPa以下である金属板により形成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の複合成形体。
  6. 上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の平均厚みは、2mm以上5mm以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の複合成形体。
  7. 上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体は、ポリプロピレン系樹脂中に強化繊維を含有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とすることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の複合成形体。
  8. 上記熱可塑性樹脂中空ブロー成形体の基材樹脂の曲げ弾性率は、1000MPa以上4000MPa以下であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の複合成形体。
  9. 上記発泡粒子成形体は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体であることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の複合成形体。
  10. 請求項1~9のいずれかに記載の複合成形体からなる、車体のドア開口部の下方に取り付けられる車両用ステップ。
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