JP7460887B2 - 複層めっき鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、複層めっき鋼板に関する。
Zn系めっき鋼板は、切断端面、曲げ加工部などの鋼素地露出部において犠牲防食作用を示し、優れた耐食性を有する。一方、Al系めっき鋼板は、Zn系めっき鋼板のように犠牲防食作用を示さないが、Zn系めっき鋼板よりもめっき面の耐食性に優れる。そのため、海岸近傍などの飛来塩分量の多い地域など、Zn系めっきでは適用困難な高い耐食性が要求される用途に好適に使用される。Zn系めっき鋼板およびAl系めっき鋼板の両者の特性を兼ね備えためっき鋼板として、特許文献1には、Si:0~12%、Zn:0~1%、残部がAlからなる第1のめっき層(下層)と、下層の上にAl:3~22%、Mg:0.5~8%、残部がZnからなる第2のめっき層(上層)とを有する複層めっき鋼板が開示されている。
特開2010-144193号公報
特許文献1に開示された複層めっき鋼板は、上記の構成を有することにより、従来のZn系めっき鋼板およびAl系めっき鋼板と比較して優れた耐食性を有する。しかしながら、特許文献1に開示された複層めっき鋼板は、海しぶきが直接めっき鋼板に飛散するような沿岸部や、雨樋など流水経路となる箇所などの環境のより厳しい条件下使用した場合、腐食が進行し、赤錆が発生してしまうことがある。そのためより耐食性の高い複層めっき鋼板が求められている。
本発明の一態様は、耐食性の高い複層めっき鋼板を実現することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る複層めっき鋼板は、基材鋼板と、前記基材鋼板の表面に施された溶融Al系めっき層と、前記溶融Al系めっき層の上に施された、溶融Zn系めっき層と、を有し、前記溶融Zn系めっき層は、前記溶融Al系めっき層よりも80℃以上低い融点を有し、前記溶融Zn系めっき層は、前記溶融Al系めっき層との界面が他の領域よりも前記基材鋼板側に位置している侵入部を有しており、前記侵入部は、Zn-Al化合物を主に含む、質量%でAlの濃度が30%以上となる第1領域を前記界面に有しており、前記第1領域と前記溶融Al系めっき層との間に、前記溶融Al系めっき層から前記第1領域に向かうにつれて、Alの濃度が小さくなる第2領域が形成されており、前記複層めっき鋼板の厚さ方向における前記侵入部の平均厚みは、1μm以上であり、前記第2領域におけるAlの濃度は、50%以上である。
本発明の一態様によれば、耐食性の高い複層めっき鋼板を実現することができる。
本発明の一実施形態における複層めっき鋼板のめっき層の断面の一例を示す電子顕微鏡写真である。 図1に示す複層めっき鋼板を概略化した図である。 図2に示す侵入部付近の領域を拡大した図である。 図1に示した複層めっき鋼板に対して腐食実験を行った後の複層めっき鋼板層の断面の一例を示すものであり、下層と上層との界面付近の電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をよりよく理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものでは無い。また、本出願において、「A~B」とは、A以上B以下であることを示している。また、本明細書中では、特に言及がない限り、成分の濃度は、質量%濃度で表す。
〔用語の定義〕
以下の説明において、基材鋼板を溶融Al系めっき浴に浸漬して、基材鋼板の表面に溶融Al系めっき層(下層)を形成することを第1の溶融めっき処理と称することがある。そして、上記第1の溶融めっき後の鋼板を溶融Zn系めっき浴に浸漬して、表面に溶融Zn系めっき層(上層)を形成することを第2の溶融めっき処理と称することがある。
なお、上記第2の溶融めっき後の複層めっき鋼板は、基材鋼板と、該基材鋼板の表面に施された下層である溶融Al系めっき層と、該溶融Al系めっき層の上に施された上層である溶融Zn系めっき層とを有する。下層および上層をまとめて複層めっき層と称することがある。
<複層めっき鋼板>
図1は、本発明の一実施形態における複層めっき鋼板10のめっき層の断面の一例を示す電子顕微鏡写真である。なお、図1に示す電子顕微鏡写真は、後述する下層の組成がAl-9%Siであり、上層の組成がZn-6%Al-3%Mgである複層めっき鋼板の電子顕微鏡写真である。図2は、図1に示す複層めっき鋼板10を概略化した図である。図3は、図2に示す侵入部20付近の領域を拡大した図である。
図1~図3に示すように、本実施形態における複層めっき鋼板10は、基材鋼板1と、基材鋼板1の表面に形成された下層2と、下層2の表面に形成された上層3と、拡散層30(第2領域)とを有している。以下に、基材鋼板1、下層2、上層3および拡散層30について詳細に説明する。
〔基材鋼板〕
めっき原板となる基材鋼板1としては、一般に、Zn系めっき鋼板やAl系めっき鋼板の基材として使用されている各種鋼板が適用可能である。
〔下層〕
本明細書において「下層」とは、第1の溶融めっき処理(溶融Al系めっき処理)および第2の溶融めっき処理(溶融Zn系めっき処理)を施した後の複層めっき層中に存在する、第1の溶融めっき処理により形成された溶融Al系めっき層に由来する層を意味する。
下層2は、溶融Al系めっき層に特有の優れた耐食性を発揮して鋼板表面の長期耐食性の役割を担う。下層2の成分組成(上記第1の溶融めっき処理の際の溶融Al系めっき浴組成)は、質量%でSi:0~20%およびZn:0~1%を含む。残部はAlであってよい。また、残部は各種の添加元素(例えば、Zn、Mg、Ti、B、Fe、Cr、Sr、アルカリ土類元素、Sc、Y、およびランタノイド元素から選択される元素)を含んでいてもよい。残部は不可避的不純物を含んでいてもよい。
下層2におけるSiは、Al系めっき浴の液相線温度を低減する作用を有する。ただし、めっき浴のSi含有量が20質量%を超えると共晶組成を過ぎて逆に液相線温度が上昇する領域に入りやすい。また、そのように多量のSiを含有すると下層2と後述の上層3との界面に多量のSi晶出相が形成して、下層2と上層3の密着性が低下しやすくなる。この場合、曲げ加工によって下層2と上層3の間に亀裂が生じることがあり、上層3のZnによる犠牲防食作用が十分に発揮されない原因となる。したがってSiは無添加(0%)とするか、20質量%以下の範囲で含有させる。
下層2におけるZnの含有量が1質量%を超えると、溶融Al系めっき層に特有の優れた耐食性を示さなくなり、下層2の耐食性低下の原因となる。また、Znの含有量が1質量%を超えると、第2の溶融めっき処理を施した際に第1の溶融めっき処理で形成しためっき層と第2の溶融めっき浴に含まれるめっき金属との反応が促進され、その結果、めっき層全体にわたって明瞭な下層2および上層3が形成されず、単層のめっき層となる部分が形成されやすくなる。このような単層部分は、溶融Al系めっき層に特有の優れた耐食性が失われ得る。
〔上層〕
本明細書において「上層」とは、第1の溶融めっき処理および第2の溶融めっき処理を施した後の複層めっき層中に存在する、第2の溶融めっき処理により形成されたZn系めっき層に由来する層を意味する。上層3は、Alを随意的に含有するZn系めっき層であり、主として基材鋼板(鋼素地)に対する犠牲防食作用の役割を担う。また、上層3は、Mgを含有することが好ましい。上層3は、AlまたはMgを含有したZn系腐食生成物の形成によるめっき面の保護作用およびMgを含有したZn系腐食生成物による鋼素地露出部の保護作用の役割を担う。
上層3の成分組成(上記第2の溶融めっき処理の際の溶融Zn系めっき浴組成)は、Al濃度が22質量%より小さい。残部はZnであってよい。また、残部は各種の添加元素(例えば、Al、Si、Mg、Ti、B、Fe、Cr、Sr、アルカリ土類元素、Sc、Y、およびランタノイド元素から選択される元素)を含んでいてもよい。残部は不可避的不純物を含んでいてもよい。
ここで、下層2のめっき層成分に相当するAl-Si系の状態図から示されるように、下層2における最も融点が低くなる(すなわち、上層との融点の差が最も小さくなる)のは、Si:12.1%のときであり、その融点は577℃である。後述するように、上層3に含まれるAlの濃度が22%を超えるとめっき層が単層となり、このときの融点は、約495℃である。そのため、本実施形態における複層めっき鋼板10では、上層3が下層2よりも80℃以上低い融点を有する構成とすることにより、第2の溶融めっき処理を行う際に、下層2が多量に溶融することを防止することができる。
上層3は、Mg:0~8%を含むことが好ましい。上層3は、必要に応じてさらに、Ti:0.1%以下、B:0.05%以下、Si:2%以下の1種以上を含有してもよい。
上層3におけるAlは、めっき層の耐食性を向上させる作用を有する。また、めっき浴中にAlを含有させることでMg酸化物系ドロスの発生を抑制する作用もある。Al含有量が22%を超えるとめっき浴の融点が高くなり、第2の溶融めっき処理を施したときに第1 の溶融めっき処理で形成された下地のめっき層との反応が過度に進行して局部的に単層のめっき層となる部分が生じやすい。また、基材鋼板1および下層2に対する犠牲防食作用が低下する。Al含有量は15%以下とすることがより好ましい。
上層3におけるMgは、めっき層表面に生成する腐食生成物を保護性腐食生成物として安定に維持し、めっき層の耐食性を著しく高める作用を有する。また、切断端面等の鋼素地露出部には、犠牲防食作用により生成したMg含有Zn系腐食生成物が堆積して保護皮膜を形成し、鋼素地露出部を保護する作用を発揮する。
また、めっき浴中に存在するMgは、第1の溶融めっき処理により形成されたAl系めっき層の表面を活性化する作用を有するので、第2の溶融めっき浴との濡れ性を向上させて、上層3における点状めっき欠陥の発生防止、および下層2との密着性向上に寄与する。上記の活性化作用は、下地であるAl系めっき層の表面酸化皮膜を第2の溶融めっき浴中のMgが還元することにより発現するものと考えられる。Mgが8%を超えると、めっき浴中にMg系酸化物ドロスが発生し易くなる。
上層3におけるめっき金属成分として、さらにTi、B、Siの1種以上を含有させることができる。めっき浴中にTi、Bの1種または2種を含有させると、斑点状の外観不良の要因となるZn11Mg相の生成・成長が抑制される。Siを含有させると、めっき層の黒色化が防止され、表面の光沢性が維持される。これらの成分の1種以上を含有させる場合は、Ti:0.1%以下、B:0.05%以下、Si:2%以下の範囲とする。
上層3における不可避的不純物として2%以下の範囲でFeの混入が許容され、他の不純物元素は合計1%以下の範囲とすることが好ましい。
上層3には種々の晶出相が観察されるが、上層3を構成する元素の成分組成はほぼ第2の溶融めっき処理におけるめっき浴組成を反映したものとなる。このような上層めっき組成とすることにより、下層2および下地鋼板に対して上層3の犠牲防食作用が有効に働き、切断端面などの鋼素地露出部はZn、Mgを含有する安定な腐食生成物皮膜に覆われる。この皮膜が鋼素地表面での酸素還元反応を抑制することで、鋼素地露出部は長期にわたって保護される。上層3の腐食(溶解)が進行して下層2が露出し、犠牲防食作用が低下した場合であっても、Zn、Mgを含有する腐食生成物により鋼素地露出部の保護性は維持される。
また、上層3においては、Zn系めっきの付着量を10g/m以上とすることが望ましい。上層3が薄すぎると上層3のめっき欠陥が多くなる。また、上層3による犠牲防食作用や腐食生成物による保護作用が十分に発揮されないこともある。ただし、過剰に厚いと不経済となるので、例えば300g/m以下の範囲とすることが好ましい。
上層3は、図3に示すように、下層2との界面の位置が他の領域と比べて下層2の内部に侵入している侵入部20を有している。換言すれば、上層3は、下層2との界面が他の領域よりも基材鋼板1側に位置している侵入部20を有している。侵入部20は、Zn-Al化合物を主に含む、質量%でAlの濃度が30%以上となる第1領域21を、下層2との界面に有している。すなわち、第1領域21は、侵入部20と下層2との界面に形成され、Zn-Al化合物を主に含む、質量%でAlの濃度が30%以上となる領域である。
侵入部20の平均厚みは、1μm以上である。本明細書において、「侵入部の平均厚み」は、複層めっき鋼板10を厚み方向に平行な平面で切断した断面写真を用いて、幅1000μmにわたる侵入部20の面積を測定し、当該面積を1000μmで除することにより算出した値を意味する。侵入部20の平均厚みが1μm以上であることにより、第2の溶融めっき処理を施す際に、第1領域21が形成されやすくすることができる。また、侵入部20が基材鋼板1に到達すると耐食性低下の原因となることから、侵入部20の平均厚みは、(下層2の厚み)-(侵入部20の厚み)≧5μmとなる厚みであることが好ましい。これにより、腐食環境の厳しい用途においても高い耐食性を発揮できる複層めっき鋼板10とすることができる。
〔拡散層〕
拡散層30は、侵入部20(より詳細には、侵入部20の第1領域21)と下層2との間に形成される領域(層)である。ここで、複層めっき鋼板10の厚さ方向と平行な平面で複層めっき鋼板10を切断したときの断面に表れた侵入部20の外縁の形状から導き出される曲線に対して引いた接線に垂直な方向を基準方向とする。拡散層30は、当該基準方向に沿って下層2から第1領域21に向かうにつれて、Alの濃度が小さくなっている。拡散層30におけるAl濃度は、質量%で50%以上となっている。
表1は、図1に示す点A~点Gの成分組成を示す表である。なお、各濃度は、質量%で示している。
Figure 0007460887000001
表1に示すように、図1に示す複層めっき鋼板は、(1)点Cおよび点Dを含む領域であり、Alの濃度が30%以上である第1領域21と、(2)点E~点Gを含む領域であり、Alの濃度が50%以上であり、下層2から第1領域21に向かうにつれて、Alの濃度が小さくなっている拡散層30を備えている。
以上のように、本実施形態における複層めっき鋼板10は、第1領域21と、拡散層30とを備えている。ここで、Al濃度が約20%以上の場合、Al濃度が増加するにしたがって耐食性が向上する傾向があることが知られている。上述のように、第1領域21および拡散層30は、Al濃度が30%以上であるため、耐食性を向上させることができる。
また、本発明者らは、Al濃度が50%以上である拡散層30を有することにより、腐食抑制効果がとりわけ高くなり、その結果、下層2側への腐食の到達を抑制することができることを見出した。
また、Alめっきは、Znめっきと比べて、局部的な腐食が生じやすく、基材鋼板1まで腐食が到達すると、FeとAlとのガルバニック腐食となり、腐食が促進されることが知られている。これに対して、本実施形態に複層めっき鋼板10は、拡散層30を備えている。換言すれば、下層2側にZnが拡散し侵入している。これにより、均一に腐食していくため、腐食が基材鋼板1に到達することを抑制することができるので、耐食性をさらに向上させることができるようになっている。
また、拡散層30では、ZnおよびAlの濃度がなだらかに変化しているため、ZnよびAlによる局部電池が形成されにくくなっている。
また、下層2の厚みを5μm以上とすることが好ましい。これにより、侵入部20が基材鋼板1に達することなく、かつ腐食環境の厳しい用途においても高い耐食性を発揮できる複層めっき鋼板10とすることができる。
また、上層3の厚みを薄くしすぎると、不めっきが発生しやすくなる。不めっきが発生した領域には拡散層30が形成されないことから、十分な耐食性向上効果が得られない。このため、上層3の厚みは3μm以上であることが好ましい。
また、本実施形態における複層めっき鋼板10では、上層3が下層2よりも80℃以上低い融点を有している。これにより、第2の溶融めっき処理を施す際に、Alが溶け出すことにより、侵入部20を形成することができる。
なお、拡散層30は、上記基準方向に沿った方向における平均厚みが0.1μm以上であることが好ましい。これにより、腐食の進行をさらに抑制することができる。
図4は、図1に示した複層めっき鋼板に対して腐食実験を行った後の複層めっき鋼板層の断面の一例を示すものであり、下層2と上層3との界面付近の電子顕微鏡写真である。図4に示すように、本実施形態の複層めっき鋼板10を腐食させた場合、腐食領域40は、拡散層30よりも上層3側に形成されていることがわかる。すなわち、腐食の進行が拡散層30によって抑制されていることがわかる。
(製造方法)
本発明の一態様における複層めっき鋼板は、第1めっき工程、クラック形成工程、および第2めっき工程を含む。
第1めっき工程は、質量%でSi:0~20%およびZn:0~1%を含む溶融Al系めっき浴に基材鋼板を浸漬して、該基材鋼板の表面に下層2(溶融Al系めっき層)を形成する工程である。
クラック形成工程は、第1めっき工程により形成された下層2の表面にクラックを形成する工程である。
クラックを形成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、第1めっき工程により形成された下層2の表面(より詳細には、下層2の表面に形成される酸化被膜)に対してスキンパスを施すことによって形成することができる。具体的には、圧下率0.4%の条件でスキンパスを施すことによってクラックを形成することができる。
また、第1めっき工程により形成された下層2に対して、加熱および冷却を行うことにより、酸化被膜と母材との熱膨張の差を利用してクラックを形成してもよい。
第2めっき工程は、クラック形成工程においてクラックが形成された下層2を、質量%でAl:22%を含む溶融Zn系めっき浴に浸漬して、下層2の表面に上層3(溶融Zn系めっき層)を形成する工程である。
第2めっき工程では、クラック形成工程において下層2の表面にクラックが形成されているため、クラックを起点として侵入部20が形成することができる。また、クラックが形成されていることにより、クラックが形成されていない場合に比べて、侵入部20の形成領域を大きくすることができるので、下層2と溶融Zn系めっき浴との接触面積が多くすることができる。その結果、下層2に存在しているAlが溶融Zn系めっき浴に溶け出しやすくなり、拡散層30を形成することができる。
なお、下層2と上層3との密着性に優れる複層めっき層を形成するためには、第1の溶融めっき処理および第2の溶融めっき処理におけるめっき浴組成が重要である。また、第1の溶融めっき処理を終えた中間製品を第2の溶融めっき処理に供する際の、中間製品の鋼板温度が重要となる。中間製品のめっき鋼板を、インレット温度を360℃以上に調整された状態で第2の溶融めっき浴に浸漬することが効果的である。鋼板温度が低すぎると下層2と上層3との界面に隙間(空孔)が生じやすくなる。また、鋼板温度が高すぎると下層2と上層3との界面における拡散が進行し、単層のめっき層となる部分が形成されやすい。場合によっては下地である溶融Al系めっき層が再溶融してめっき層全体が単層のめっき層となることもある。
第1の溶融めっき処理においては、Al系めっき付着量を10g/m以上とすることが望ましい。これより薄いと、第2の溶融めっき処理の条件をかなり厳密にコントロールしない限り、下層2の基材近傍まで第2の溶融めっき処理に由来するZnが拡散して耐食性の低下を招きやすい。また単層のめっき層となる領域が生じやすくなる。Al系めっき付着量の上限は特に規定されないが、例えば300g/m以下の範囲とすることができる。
また、第2の溶融めっき処理においては、Zn系めっき付着量を10g/m以上とすることが望ましい。薄すぎると上層3のめっき欠陥が多くなる。また犠牲防食作用や腐食生成物による保護作用が十分に発揮されないこともある。ただし、過剰に厚いと不経済となるので、例えば300g/m以下の範囲とすることが好ましい。
なお、第2めっき工程の後には必要に応じて化成処理等の表面処理を施すことができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の一実施例について以下に説明する。本実施例1では、発明例としてのNo.1~10、25、および26の複層めっき鋼板と、比較例としてNo.11~2023、および24の複層めっき鋼板を作製した。各複層めっき鋼板の製造条件を表2に示す。表2に示す「インレット温度」とは、第2めっき工程において、第2の溶融めっき浴に浸漬させる鋼板の温度である。また、表2に示す「SKP」とはスキンパスを意味している。なお、実施例および比較例の複層めっき鋼板は、上層3が下層2よりも80℃以上低い融点を有していた。
Figure 0007460887000002
No.1~24の複層めっき鋼板について、圧下率0.4%の条件でスキンパスを行った。
作製したNo.1~24の複層めっき鋼板に対して、耐食性試験を以下の方法で行った。(1)5%NaClを含む塩水の2時間噴霧、(2)60℃、30%RHの条件下での4時間の乾燥、および、(3)50℃、98%RHの条件下での22時間の保持、を1サイクルとし、赤錆が発生するまでの上記サイクル数を求めた。
表2に示すように、No.1~3の複層めっき鋼板は、No.11~No.13の複層めっき鋼板と組成がそれぞれ同じである。また、No.4および5の複層めっき鋼板は、No.14の複層めっき鋼板と組成が同じである。また、No.6および7の複層めっき鋼板は、No.15の複層めっき鋼板と組成が同じである。また、No.8~10の複層めっき鋼板は、No.18~No.20の複層めっき鋼板と組成がそれぞれ同じである。また、No.21および22の複層めっき鋼板は、No.23および24の複層めっき鋼板と組成がそれぞれ同じである。
2に示すように、No.1~10、No.21およびNo.22の複層めっき鋼板は、それぞれ同じ組成を有するNo.11~15、18~20、23および24の複層めっき鋼板と比べて、赤錆が発生するまでのサイクル数が多かった。すなわち、本発明例の複層めっき鋼板は、比較例の複層めっき鋼板よりも耐食性が高かった。これは、No.1~10、No.21およびNo.22の複層めっき鋼板は、下層2にクラックを発生させるためにスキンパスを施されており、侵入部20の平均厚みが1μm以上であり、拡散層が形成されたためであると考えられる。
No.11~16および18~20の複層めっき鋼板は、作製時にスキンパスを施さなかったため、下層2の酸化被膜に形成されるクラック間の間隔が大きくなりすぎてしまい。侵入部20が十分に形成されなかった。そのため、それぞれ同じ組成を有するNo.1~6および8~10の複層めっき鋼板よりも耐食性が劣っていた。
No.17の複層めっき鋼板は、第2めっき工程においてインレット温度が300℃と低すぎたため、拡散層30が形成されなかった。そのため、同じ組成を有するNo.16の複層めっき鋼板よりも耐食性が劣っていた。
本発明の他の実施例について以下に説明する。本実施例2では、発明例としてのNo.25~28の複層めっき鋼板と、比較例としてNo.29および30の複層めっき鋼板を作製した。各複層めっき鋼板の製造条件を表2に示す。No.25~30の複層めっき鋼板の作製においては、すべて上記と同じ条件にてスキンパスを行った。
Figure 0007460887000003
作製したNo.25~30の複層めっき鋼板に対して、耐食性試験を以下の方法で行った。複層めっき鋼板に対して幅3mmの流水経路を形成した。次に、塩化物イオンClが5ppm、硝酸イオンNO が10ppm、硫酸イオンSO 2-が20ppm、pHが5の、雨水を模擬した模擬水を6ml/分で上記流水経路に滴下し、上記流水経路に模擬水が常時流れる状態とした。そして、流水経路において赤錆が発生した面積が5%以上となる日数を求め、以下のように評価した。本耐食性試験では、赤錆が発生した面積が5%以上となる日数が70日以上(すなわち、評価値が4または5)であれば、良好であると評価した。
評価値5・・・100日以上赤錆発生無し
評価値4・・・赤錆発生日数70~99日
評価値3・・・赤錆発生日数40~69日
評価値2・・・赤錆発生日数20~39日
評価値1・・・赤錆発生日数20日未満
表3に示すように、No.25~28の複層めっき鋼板は、耐食性件において、赤錆が発生した面積が5%以上となる日数が70日以上であった。すなわち、No.25~28の複層めっき鋼板は、耐食性が高かった。これは、No.25~28の複層めっき鋼板は、侵入部20の平均厚みが1μm以上であり、拡散層が形成されたためであると考えられる。
これに対して、No.29の複層めっき鋼板は、下層2の付着量が3μmと薄かったため、耐食性が劣っていた。
また、No.30の複層めっき鋼板は、上層3の付着量が2μmと薄かったため、上層3のめっきが行われない領域が存在した(換言すれば、不めっきの領域があった)。そのため、侵入部20および拡散層30が十分に形成されなかったため、耐食性が劣っていた。
1 基材鋼板
2 下層(溶融Al系めっき層)
3 上層(溶融Zn系めっき層)
10 複層めっき鋼板
20 侵入部
21 第1領域
30 拡散層(第2領域)

Claims (3)

  1. 複層めっき鋼板であって、
    基材鋼板と、
    前記基材鋼板の表面に施された溶融Al系めっき層と、
    前記溶融Al系めっき層の上に施された、溶融Zn系めっき層と、を有し、
    前記溶融Al系めっき層は、質量%でSi:0~20%、Zn:0~1%および各種の添加元素を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
    前記溶融Zn系めっき層は、質量%で0%より大きく22%未満のAlおよび各種の添加元素を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、
    前記溶融Al系めっき層の片面の付着量は、10g/m以上300g/m以下であり、
    前記溶融Zn系めっき層は、片面の付着量、10g/m以上300g/m以下であり、かつ、片面の厚さが、3μm以上であり、
    前記溶融Zn系めっき層は、前記溶融Al系めっき層よりも80℃以上低い融点を有し、
    前記溶融Zn系めっき層は、前記溶融Al系めっき層との界面が他の領域よりも前記基材鋼板側に位置している侵入部を有しており、
    前記侵入部は、Zn-Al化合物を主に含む、質量%でAlの濃度が30%以上となる第1領域を前記界面に有しており、
    前記第1領域と前記溶融Al系めっき層との間に、前記溶融Al系めっき層から前記第1領域に向かうにつれて、Alの濃度が小さくなる第2領域が形成されており、
    前記複層めっき鋼板の厚さ方向における前記侵入部の平均厚みは、1μm以上であり、
    前記第2領域におけるAlの濃度は、50%以上である、複層めっき鋼板。
  2. 前記第2領域の平均厚みが0.1μm以上である、請求項1に記載の複層めっき鋼板。
  3. 前記溶融Zn系めっき層は、質量%で8%以下のMgを含む、請求項1または2に記載の複層めっき鋼板。
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