JP7460129B2 - 多色蛍光タンパク質を含む金属検出用試薬および被検液の金属検出方法、ならびに組み換えベクター、金属挙動の評価方法 - Google Patents

多色蛍光タンパク質を含む金属検出用試薬および被検液の金属検出方法、ならびに組み換えベクター、金属挙動の評価方法 Download PDF

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Description

本発明は多色蛍光タンパク質を含む金属検出用試薬に関する。また、多色蛍光タンパク質を利用する金属検出方法に関する。また、多色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む細胞やこのような細胞を利用する評価方法に関する。
金属に対するキレート剤には、2,2',2'',2'''-(Ethane-1,2-diyldinitrilo)tetraacetic acid(EDTA、エチレンジアミン四酢酸)、Ethylene glycol-bis(2-aminoethylether)-N,N,N′,N′-tetraacetic acid(EGTA、別称:グリコールエーテルジアミン四酢酸)など多種類ある。これらのキレート剤は、重金属などの滴定用試薬などとして利用されている。キレート剤としては、例えば非特許文献1や非特許文献2のようにその測定法やそのための製品等が開示され実用化されている。
ところで、多色蛍光タンパク質として、超長波長の蛍光を含む複数の蛍光を発することのできる多色蛍光タンパク質として、特許文献1が開示されている。この多色蛍光タンパク質であるアカネタンパク質は225残基である。
特許第5334007号公報
DOJINDO製品カタログ・キレート試薬、補足資料「キレート滴定法の原理」[令和2年3月17日検索]、インターネット〈URL:https://www.dojindo.co.jp/download/che/che1.pdf> DOJINDO製品カタログ、GEDTA(EGTA)[令和2年3月17日検索]、インターネット〈URL:https://www.dojindo.co.jp/products/G002/>
EDTAやEGTAなど、金属と金属キレートを形成するものを用いて金属濃度等の測定などが行われている。しかし、測定対象によっては、これらのEDTAやEGTA等を用いることができない場合や、測定波長との関係などから検出できない場合がある。このため、新たな金属を検出する手法が求められている。かかる状況下、本発明は、測定対象物の金属の検出などを行うことができる新たな被検液の金属検出方法等を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 下記(a)~(c)からなる群から選択される1以上の多色蛍光タンパク質を含む金属検出用試薬と、被検液とが混合された混合液を調整する調整工程と、
前記混合液の蛍光を評価する評価工程とを有する、被検液の金属検出方法。
(a)配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク質
(b)上記(a)において、少なくとも一つのタンパク質が、それぞれ対応する配列番号で表されたタンパク質に対して、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク質
(c)上記(a)において、少なくとも一つのタンパク質が、それぞれ対応する配列番号で表されたタンパク質の配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなるタンパク質
<2> 前記被検液に含まれる検査対象の金属が、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、リチウム(Li)、およびカルシウム(Ca)からなる群から選択される1以上の金属、または遷移金属から選択される1以上の金属である<1>記載の金属検出方法。
<3> 前記評価工程における前記混合液のpHが、10~13である<1>または<2>に記載の金属検出方法。
<4> (a)~(c)からなる群から選択される1以上の多色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む組み換えベクターを宿主に導入する工程と、
前記組み換えベクターが導入された前記宿主における励起光-蛍光を評価することで、前記宿主における金属挙動の評価方法。
<5> 前記金属挙動を評価する金属がリチウム(Li)であり、前記宿主が細胞、動物、動物組織、および動物器官からなる群から選択されるいずれかである<4>記載の評価方法。
<6> (a)~(c)からなる群から選択される1以上の多色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含み、導入される宿主の微量金属挙動の評価に用いられるための組み換えベクター。
<7> (a)~(c)からなる群から選択される1以上の多色蛍光タンパク質を含む金属検出用試薬。
本発明によれば、特定のアミノ酸配列を有する多色蛍光タンパク質が測定対象物の金属とキレートを形成して蛍光状態が変化することから、その蛍光状態の変化から被検液などの測定対象物の金属を検出することができる。
実施例に係るAkane3と亜鉛(Zn)含有液または、銅(Cu)含有液との接触時の蛍光スペクトルの評価結果を示すグラフである。(試験例1)亜鉛(Zn)とキレート形成すると、蛍光強度が155%まで増加する。銅(Cu)とキレート形成すると、蛍光強度が51%まで減少する。(励起波長Ex434nm-蛍光波長Em508nm) 実施例に係るAkane3と亜鉛(Zn)含有液との接触時の蛍光スペクトルの評価結果を示すグラフである。(試験例2)励起波長Ex428nmを用いて、緑色蛍光波長Em483nmを得た。亜鉛(Zn)0.5mmol/Lを50μL加えてキレート形成したものは、Akane3のみと比較して蛍光強度が195%増加している。(励起波長Ex428nm-蛍光波長Em483nm) 実施例に係るAkane3と亜鉛(Zn)含有液との接触時の蛍光スペクトルの評価結果を示すグラフである。(試験例3)(試験例2)の試料において、励起波長Ex536nmを用いて、赤色蛍光波長Em604nm(150%に増加)及び、640nm(160%に増加)の蛍光スペクトルを得た。(励起波長Ex536nm-蛍光波長Em(604nm,640nm)) 実施例に係るAkane3と亜鉛(Zn)含有液との接触時の蛍光スペクトルの評価結果を示すグラフである。(試験例4)亜鉛(Zn)含有液の亜鉛濃度を、0~5mmol/Lと変化させ、蛍光スペクトルのEm604nm及び、640nmの変化を順次測定し、評価結果を示すグラフである。結果は、Zn濃度が、0.25mmol/L~2.5mmol/Lまで、順次蛍光強度が増加している。(励起波長Ex536nm-蛍光波長Em(604nm,640nm)) 実施例に係るAkane3と亜鉛(Zn)含有液との接触時の蛍光スペクトルの評価結果を示すグラフである。(試験例5)に係るAkane3と亜鉛(Zn)含有液との接触時の時間を30分間から120分間と比較したところ、120分後のほうが、0.25mmol/L~5.0mmolまで、蛍光強度は増加している。(励起波長Ex536nm-蛍光波長Em(604nm,640nm)) 実施例に係るAkane3と銅(Cu)含有液との接触時の蛍光スペクトルの評価結果を示すグラフである。(試験例6)銅(Cu)含有液のCu濃度を、0~25mmol/Lと段階的に変化させ、蛍光波長のEm604nm及び、640nmの蛍光スペクトル変化を順次測定した。結果は、Cu濃度が、順次蛍光強度は減少している。(励起波長Ex536nm-蛍光波長Em(604nm,640nm)) 実施例に係るAkane3と銅(Cu)含有液との接触時の蛍光スペクトルに基づく解析結果を示すグラフである。(試験例6)(励起波長Ex536nm-蛍光波長Em(604nm,640nm)) 実施例に係る天然型RFPとリチウム(Li)含有液との接触時の蛍光スペクトルに基づく解析結果を示すグラフである。(試験例7)励起波長Ex434nm,蛍光波長Em503nmにおいて、リチウム(Li)濃度が、0.025~2.0mmol/Lでは蛍光強度は顕著に増加を示していることがわかる。蛍光の測定はHitachi(F-7000)でおこなった。(励起波長Ex434nm-蛍光波長Em503nm,Ex543nm-Em572nm,Ex564nm,Em637nm) 実施例に係る天然型RFPと亜鉛(Zn)含有液との接触時の蛍光スペクトルに基づく解析結果を示すグラフである。(試験例8)蛍光波長が475nm、508nmで強度が顕著に増加していることを示す。 実施例に係る天然型RFPとカルシウム(Ca)含有液との接触時の蛍光スペクトルに基づく解析結果を示すグラフである。(試験例9) 多色蛍光タンパク質アカネと金属がキレート結合した時の推定構造を示す図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
[本発明に用いる多色蛍光タンパク質]
本発明に用いる多色蛍光タンパク質は、下記(a)~(c)からなる群から選択される1以上の多色蛍光タンパク質である。
(a)配列番号1~4(akane, akane1, akane2, akane3)のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク質
(b)上記(a)において、少なくとも一つのタンパク質が、それぞれ対応する配列番号で表されたタンパク質に対して、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク質
(c)上記(a)において、少なくとも一つのタンパク質が、それぞれ対応する配列番号で表されたタンパク質の配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなるタンパク質
本願はこの本発明に用いる多色蛍光タンパク質を利用するものであり、このタンパク質は、後述等する本発明の金属検出用試薬や組み換えベクター、被検液の金属検出方法、金属挙動の評価方法などに用いることができる。なお、本願において本発明に用いる多色蛍光タンパク質を利用することで、本発明の金属検出用試薬、本発明の被検液の金属検出方法、本発明の組み換えベクター、本発明の金属挙動の評価方法は互いに関連し、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
本願の発明は、蛍光法を用いる高感度(nmol)で、励起波長及び、蛍光波長の選択が可能であり、生体内の必須微量金属を検出する新たな方法として、蛍光タンパク質という微量で特徴ある蛍光を発する物質が、生体内の必須微量金属とキレートを形成するという特徴を利用する。
配列番号1~4で表される多色蛍光タンパク質は、多色蛍光を示すものであり、多色蛍光タンパク質アカネともよばれている。本発明者らは、この多色蛍光タンパク質アカネの特性を評価した結果、多色蛍光タンパク質アカネは、タンパク質であるにも関わらず、微量金属と金属キレート形成能を有することを見出した。
このとき、金属キレート形成により、発色の蛍光が変化する。さらに、微量金属の濃度に応じて、その蛍光強度が変化することによって、その発色の程度から、金属キレートの対象となる微量金属の有無や濃度を把握することができる。さらに、この金属キレート形成後も多色発光を示し、蛍光が生じる期間も長い。これらの物性から、多色蛍光タンパク質アカネを生体内微量金属の検出などに利用することができる。本発明はかかる知見等に基づくものである。
[配列番号1~4のアミノ酸配列で表されるタンパク質]
本発明に用いる多色蛍光タンパク質は、(a)配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク質に関する。
配列番号1は「akane」のアミノ酸配列である。配列番号2は「akane1」のアミノ酸配列である。配列番号3は「akane2」のアミノ酸配列である。配列番号4は「akane3」のアミノ酸配列である。本願においては、これらのアミノ酸配列からなる発現したタンパク質を総称して多色蛍光タンパク質アカネと呼ぶ場合がある。なお、これらのタンパク質は、超長波長の蛍光色を含むマルチカラー多色蛍光タンパク質に係る特許文献1(特許第5334007号公報)において、配列番号5~7がそれぞれ本願における配列番号1~4に対応するものとして開示されている。
Akane,Akane1,Akane2,Akane3は、それぞれ配列番号1~4(akane,akane1,akane2,akane3)の各遺伝子を用いて、例えば、大腸菌にベクターを挿入し、挿入された大腸菌体を増殖させてアカネを大量発現させ、各種カラムなどで精製して得られた、タンパク質を示している。
また、本発明に用いる多色蛍光タンパク質は、(b)上記(a)において、少なくとも一つのタンパク質が、それぞれ対応する配列番号で表されたタンパク質に対して、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク質に関する。
また、本発明に用いる多色蛍光タンパク質は、(c)上記(a)において、少なくとも一つのタンパク質が、それぞれ対応する配列番号で表されたタンパク質の配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなるタンパク質に関する。この同一性は、92%以上が好ましく、95%以上や、97%以上、98%以上としてもよい。
(安定性)
多色蛍光タンパク質アカネは、冷蔵保存したとき蛍光寿命が1年~数年程度続き、また、凍結乾燥後、冷蔵保存では数年~20年程度と、非常に安定な蛍光物質である点で優れている。
(多色発光)
また、多色蛍光タンパク質アカネは多色蛍光を発するので、緑、青、オレンジ、赤、濃赤などの蛍光色を使い分けることもできる。
(作成方法の特徴)
本発明に用いる多色蛍光タンパク質は、天然由来のものや、遺伝子組み換え技術によって人工的に作製されたタンパク質(リコンビナントタンパク質)などを用いることができる。本発明の多色蛍光タンパク質は、適宜特許第5334007号などを参照して得ることができる。例えば、軟サンゴ(Scleronephthya gracillimum)に由来する多色蛍光タンパク質を用いることができる。また、本発明に用いる多色蛍光タンパク質の配列を、大腸菌や酵母、昆虫細胞、動物細胞などを用いる発現系により発現させて発現、精製して得ることができる。本発明の多色蛍光タンパク質は修飾の必要や影響が少ないため、比較的安価な大腸菌(E.coli)を用いる発現系により発現させたものを大腸菌体の破砕後、樹脂カラムで精製を行うことで、アカネ遺伝子発現体を提供し、利用できる。このため大腸菌を用いて製造したものを利用することが好ましい。
(キレート形成能)
多色蛍光タンパク質アカネは金属と金属キレート形成能を有し、金属の種類でキレート形成の影響が変わる。この金属は、例えば、亜鉛や銅、リチウムを対象とすることができる。また、X線吸収微細構造の測定結果から、金属の違いによるキレート構造が推定できる。
(長寿命の安定な蛍光物質)
多色蛍光タンパク質アカネは、赤色蛍光色においても冷蔵保存したとき蛍光寿命が1年~数年程度続き、または凍結乾燥後、冷蔵保存では数年~20年程度と、非常に安定な蛍光物質である点で優れている。他の蛍光タンパク質と比べて、赤色蛍光色においても、非常に長寿命の安定な蛍光物質である。
(金属検出用試薬)
本発明の金属検出用試薬は、本発明に用いる多色蛍光タンパク質を含む。
(金属検出用試薬の有効性)
本発明の金属検出用試薬は、本発明に用いる多色蛍光タンパク質を含む。金属検出用試薬は、多色蛍光タンパク質が失活しない範囲で任意の組成で任意の条件のものとしてよい。本発明の多色蛍光タンパク質は相当に安定性が高いため、水系溶媒等に分散させた状態で冷蔵や冷凍で保管したり、常温で保管してよい。
金属検出用試薬は、例えば、多色蛍光タンパク質の分散媒や溶媒として、水を含むことができる。また、金属検出用試薬において、分散媒等を用いるとき、対象とする金属の種類にもよるが、多色蛍光タンパク質の濃度は、例えば、1nmol/L~200mmol/Lや、3μmol/L~100mmol/Lとすることができる。
金属検出用試薬である、Akane含有液は、使用時は適宜pH3.5~13としてもよい。また、金属検出用試薬は、保管時は、使用時と同様のpHとしてもよいが、pH6~8やpH7.0~7.5程度の中性付近で保管したほうがより保管しやすく、使用時のpH調整等も行いやすい。このため、金属検出用試薬は、Tris緩衝液などを分散媒や溶媒として用いたものとしてもよい。
(金属検出方法)
本発明の被検液の金属検出方法は、本発明に用いる多色蛍光タンパク質を含む金属検出用試薬と、被検液とが混合された混合液を調整する調整工程と、前記混合液の蛍光を評価する評価工程とを有する。本発明の被検液の金属検出方法により、被検液に金属が含まれているか否かの測定や、その金属の濃度の測定などを行うことができる。
(調整工程)
本発明の被検液の金属検出方法は、金属検出用試薬と被検液とが混合された混合液を調整する調整工程を有する。
(被検液)
被検液は、金属の含有の有無や、濃度を検出する対象となる液である。この被検液は、試験管等に収容したものや、細胞内の液、動物組織・動物器官内の液も対象とすることができる。
(反応する金属の種類)
被検液に含まれ得る検出対象となる金属は、本発明に用いる多色蛍光タンパク質とキレートを形成して発色が変わる任意の金属を適宜対象とすることができる。これらの金属は、被検液と金属検出試薬とを混合した混合液において、イオン化するものを対象とすることができる。
検出対象となる金属としては、化学的分類による分類として、次の分類のものがあげられる。アルカリ金属:Li、Na、K、Rb、Csがあげられる。アルカリ土類金属:Ca、Sr、Ba、Raがあげられる。マグネシウム族元素:Be、Mg、Zn、Cd、Hgがあげられる。鉄族元素:Fe、Co、Niがあげられる。マンガン族元素:Mn、Reがあげられる。貴金属:Cu、Ag、Auがあげられる。
(遷移金属の検出)
被検液に含まれる検査対象の金属は、遷移金属を対象とすることが好ましい。遷移金属の中でも、第一遷移元素を対象とすることが好ましい。ここでの第一遷移元素は、Scや、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znとする。
(生体内必須微量金属の検出)
被検液に含まれる金属は、生体内必須微量金属としてもよい。本発明に用いる多色蛍光タンパク質は、生体内でも毒性がないため、生体内に導入等して、生体内必須微量金属の動態解明に用いることができる。本発明に用いる多色蛍光タンパク質は、微量の金属ともキレートを形成して発色が変わるため、生体内の元素でも微量のものや検出されにくいものを対象としてもよい。例えば、Feや、Zn、Cu、Mn、Se、Mo、Co、Cr、V、Ni、As、Sn、Si、V、Crを対象とすることができる。
被検液に含まれる検査対象の金属は、これらの複合的な観点から、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、およびリチウム(Li)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される1以上のものを対象とすることが好ましい。
(金属検出の濃度)
被検液に含まれる測定対象となる金属元素の濃度は、多色蛍光の使い分けなどを行い検出できる範囲で特に限定は無い。被検液に含まれる金属元素が無い場合、金属元素とのキレートによる多色蛍光の蛍光強度の変化が生じないため、金属元素が含まれない、または検出下限以下と判断される。金属元素が多量に含まれすぎている場合、キレートを形成しにくくなり、発光が生じなかったりして検出されない場合があるため、金属元素の濃度が、100mmol/L以下を上限としてもよい。さらに、50mmol/L以下や、30mmol/L以下、20mmol/L以下としてもよい。
(実験上の検出)
混合液は、被検液と、金属検出用試薬とが混合されたものである。混合液は、例えば試験管内に、微量の被検液と微量の金属検出用試薬とを加えて適宜撹拌などして得ることができる。また、微量の金属検出用試薬をマイクロプレートに配置し、このマイクロプレート上で被検液と接触させて緩やかに混合してもよい。
マイクロプレート上での、多色蛍光タンパク質と微量金属のキレート錯体の測定には以下の特徴がある。微量の多色蛍光タンパク質と微量メタルのキレート錯体を、蛍光領域で、迅速に測定でき、定量性がある。多くの試料数の測定が微量試料で、短時間測定可能である。多色蛍光タンパク質の蛍光波長を選択できる。
被検液と、金属検出用試薬とは、いずれも液状としたほうが混合させやすいことから、液状で混合させてもよい。被検液と金属検出用試薬との混合比率は、それぞれに含まれる金属濃度やタンパク質濃度、キレートの形成しやすさ、蛍光強度などを考慮して適宜設定される。操作性などを鑑みて、例えば、被検液:金属検出用試薬の液(容積比)=10:1~1:10としてもよい。この容積比は、5:1~1:5や、3:1~1:3、2:1~1:2としてもよく、管理しやすいように1:1で行うものとしてもよい。
(評価工程)
本発明の被検液の金属検出方法は、前記混合液の蛍光を評価する評価工程を有する。蛍光の評価は、被検液に含まれる金属とのキレートの種類等に応じて、励起光を照射したとき、その励起光に対応する蛍光が生じるか否か、その蛍光が生じた蛍光波長などの測定をしたり、蛍光の強度などを測定することで評価することができる。
(金属との応答性の特徴)
本発明に用いる多色蛍光タンパク質と、金属とのキレートは、その組み合わせによって、蛍光が減少するものや増加するものなどが存在し得る。例えば、亜鉛やリチウムとは、キレートを形成することで蛍光が増加する傾向がみられる。また、銅とは、キレートを形成することで蛍光が減少する傾向がみられる。
(含有する金属濃度の決定)
本発明に用いる多色蛍光タンパク質と、金属とのキレートは、金属の濃度に対する蛍光影響の飽和や、キレート形成能の飽和、キレート形成能への干渉、他の外乱要因の影響などを確認するものとしてもよい。このために、複数の希釈段階の濃度調整を行った被検液を準備し、それらの被検液に対して、金属検出用試薬と混合して、蛍光を評価してもよい。このとき、近似曲線などを用いて解析を行い、ピーク強度が得られる希釈率との関係から原液の被検液における金属の濃度を求めることができる。または、複数の蛍光色を評価して、それらの蛍光色の励起光-蛍光の強度分布の依存性から、金属の濃度を求めることができる。
(多色蛍光での反応性)
例えば、akane3から発現された多色蛍光タンパク質Akane3は、428nm励起光に対して483nm蛍光(青色蛍光)が生じ、536nm励起光に対して604nmと640nmのダブルピークの蛍光(赤色蛍光)が生じる。このAkane3と亜鉛(Zn)とのキレートを形成させると、蛍光の増強強化が確認される。Znとのキレートによる蛍光の増強効果は、青色蛍光の増強効果の方が、赤色蛍光の増強効果よりも強く、青色蛍光が約200%増強されるとき、赤色蛍光は約150~160%程度の増強となる。
(評価工程のpH)
前記評価工程における前記混合液のpHが3.5~13の範囲で安定した蛍光を観測することができる。多色蛍光タンパク質アカネは、特に、塩基性領域(pH10~13)で強い赤色蛍光を発し非常に安定である。よって、混合液を塩基性領域として評価することで、蛍光の観察や測定を行いやすくなる。例えば、膵臓の中の膵液は強塩基性であることが多いが、慢性膵炎ではこの膵液中の亜鉛(Zn)濃度が著しく低下するため、本評価工程を使って膵液の亜鉛濃度の評価にも応用可能となる。
(本発明の金属挙動の評価方法)
本発明の金属挙動の評価方法は、本発明に用いる多色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む組み換えベクターを宿主に導入する工程と、前記組み換えベクターが導入された前記宿主における励起光-蛍光を評価することで、前記宿主における金属挙動の評価をおこなうものである。
本発明の金属挙動の評価方法によれば、本発明に用いる多色蛍光タンパク質が、宿主における金属とキレートを形成して、そのキレートによる蛍光の有無や蛍光波長、蛍光強度などから、宿主における金属挙動を視覚的に観察することなどができる。
(本発明の組み換えベクター)
本発明の組み換えベクターは、本発明に用いる多色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む。この組み換えベクターを用いて、宿主に、導入すると、宿主で多色蛍光タンパク質を発現して、この多色蛍光タンパク質が金属とキレートを形成して、所定の金属の有無や場所、濃度などを評価することができる。
本発明の組み換えベクターを用いて、前記細胞内における励起光-蛍光を評価することで、前記細胞内の金属挙動を評価することができる。
本発明に用いる多色蛍光タンパク質をコードする遺伝子は、前述等した(a)配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク質などをコードする遺伝子である。このような遺伝子は、各多色蛍光タンパク質の配列を翻訳ソフトなどにより翻訳して用いたり、この多色蛍光タンパク質を有する軟サンゴの対応する遺伝子を用いたりすることができる。
例えば、akane2に関するものとして、配列番号3をコードする遺伝子としては、配列番号5で表す遺伝子などがあげられる。また、akane3に関するものとして、配列番号4をコードする遺伝子としては、配列番号6で表す遺伝子などがあげられる。
組み換えベクターは、プラスミドやウイルスをベクターとして、これらに、本発明に用いる多色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を導入したものを用いることができる。これらのベクターとしては、対象とする宿主や本発明に用いる多色蛍光タンパク質の導入しやすさなどを考慮して構築する任意のものを用いてよい。例えば、pBR322や、pUCプラスミドベクター、pET系プラスミドベクター、アデノ随伴ウイルスや、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルスなどを用いることができる。
(宿主)
本発明の組み換えベクターを導入する宿主は、金属挙動を評価する対象とする任意のものを選択することができる。宿主は、微生物や、植物、動物を対象とすることができる。また、これらの細胞や、組織、器官などの一部を対象としてもよい。金属挙動の評価は、特に薬物動態の評価手法として有用と考えられる。このことから、宿主は、マウスやラットなどの実験動物としてもよい。また、動物の細胞を培養して適宜分化等させた動物組織や動物器官などを対象としてもよい。また、膵臓や脳などを対象とすることができる。
組み換えベクターの宿主への導入は、遺伝子組み換えしたウイルスベクターを宿主の細胞に感染させるなど、各ベクターと宿主との組み合わせに応じた手法を採用して導入することで行うことができる。
そして、本発明の金属挙動の評価方法は、前記組み換えベクターが導入された前記宿主における励起光-蛍光の評価を行う。金属挙動の評価対象とする金属は、一部前述した被検液の生体内金属とすることができる。これらの金属が、対象の宿主に存在し、宿主が接触して、宿主の細胞内や、組織内、器官内、またそれらの間で代謝などに伴い移動したとき、その金属が存在する位置で、本発明に用いる多色蛍光タンパク質とキレートを形成して励起光-蛍光が生じる。よって、この励起光-蛍光の有無や位置、強度を評価することで、宿主における金属挙動を評価することができる。
(細胞への導入)
本発明の多色蛍光タンパク質を、生細胞へ導入する方法で、細胞内被検液の金属の量を検出することができると考えられる。これは次のように行うことなどが考えられる。(1)多色蛍光タンパク質のみを、生細胞へ導入し、本発明の励起波長Ex(535nm~)を照射し蛍光顕微鏡などで蛍光を検出する。次に(2)多色蛍光タンパク質に数段階の既知量の金属を結合させたものを生細胞へ導入し、励起波長Ex(535nm~)を照射し蛍光顕微鏡などで蛍光を検出する。
(細胞を損傷しない励起波長)
本発明の多色蛍光タンパク質を、生細胞へ導入する方法では、採用する励起波長Exは、535nmや、Ex564nmという長波長域なので、励起光で照射したときに、生細胞を損傷することがほとんどない。これまでの従来法では励起波長は、紫外光Ex350nm~が使われており、紫外光なので生細胞の損傷が危惧されていたが、本法はこの欠点を改良できる。
(薬物動態試験)
本発明の被検液の金属検出方法や、本発明の金属挙動の評価方法を利用して、例えば、薬物動態のモニタリングを行うことができる。躁病や抗うつ治療の補助薬として、炭酸リチウム(LiCO3)が多用されているが、その薬物動態は不明ともいわれている。また、本発明の多色蛍光タンパク質が、塩基性下で、蛍光強度が強く、また安定であることを利用して、塩基性の膵臓内におけるZnイオンや、脳内における薬物中のLi存在量の把握などは、薬物動態を評価する対象として特に有用と考えられる。
本発明に用いる多色蛍光タンパク質は、リチウム(Li)とキレート錯体を形成し、発色が上昇する。このため、本発明の多色蛍光タンパク質を被試験動物の被試験部位に投与して発色の程度をモニタリングすることで、炭酸リチウム由来のLiの薬物動態をモニタリングすることができる。モニタリング対象は体内滞留時間や部位とすることができ、その結果から、炭酸リチウムの適正投与濃度などの適正な処方の把握に資する。これは、被試験動物に、本発明の組み替えベクターを導入して、本発明に用いる多色蛍光タンパク質を発現させるものとしておくことで達成することもできる。
一般的にキレート剤として用いられているEDTAなどの化学薬品は、キレート効果が生じるとしても、その量は他の試薬で別に試験する必要があり、細胞や臓器等にトランスフェクションすることができず細胞内で発現しない。しかし、本発明によれば上述のように細胞や臓器での発現にも利用できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[評価項目]
1.分光光度計:Perkin Elmer UV/Vis Spectrometer Lambda35
2.蛍光分光光度計:Hitachi F-7000 Fluorescence Spectrometer
3.蛍光及び分光光度計測定プレートリーダー:Tecan社 Infinite 200 PRO
[天然型アカネ試料(天然型RFP)]
専門家により種を同定された、軟サンゴをPBS溶液中でホモジナイズし、抽出液を遠心分離したものについて硫安沈殿を行い、その沈殿タンパク質を透析膜により透析した。透析した溶液を凍結乾燥したものを粗抽出試料とした。この粗抽出試料を、ゲルろ過カラム、次に陰イオンカラムにかけて、Tris-HCl buffer(pH8.5)で流し、次に塩濃度を順次変えて溶出し、分光光度計の波長280nmでタンパク質量を測定した。タンパク質の吸光度の高い画分を、さらに分離精製したのちの溶出画分をウルトラフィルターで濃縮した。ポリアクリルアミドゲルでSDS-PAGE電気泳動後に染色を行うことで、27kDaおよび21kDaの分子量のタンパク質バンドが得られたものを、天然型アカネ試料(以下、「天然型RFP」と表記)として用いた。なお、天然型アカネ試料のより詳しい調製方法は、特許第5334007号公報の実施例に係る天然型の蛍光タンパク質に準じるものである。
[Akane3タンパク質のリコンビナント合成(Akane3)]
・akane3遺伝子の作成:軟サンゴベニウミトサカ種からmRNAを抽出し、F1,R1のプライマーを作成後、RT-PCR増幅させ、PCR産物をもとにクローニングを行った。複数の遺伝子をえた中で、akane3をコードする遺伝子(配列4)を選んだ。
・Akane3タンパク質の回収:akane3遺伝子をpET15bベクター(クロンテック社製)に組み込み、組み替えベクターを作成した。そのベクターを大腸菌に挿入し発現させた。その後、大腸菌からAkane3タンパク質(以下、単に「Akane3」)を回収した。
[試験用試薬等]
・Akane3含有液:前述のAkane3を用いて、530μg/1mL(20nmol/L)溶液を使用した。
・亜鉛(Zn)含有液:Zn(NO32・6H2O(MW:297.5)(和光純薬・特級)を溶媒に溶解させて用いた。
・銅(Cu)含有液:Cu(NO32・3H2O(MW:241.6)(和光純薬・特級)を溶媒に溶解させて用いた。
・リチウム(Li)含有液:Li2(CO3)(MW:73.85)(和光純薬・特級)を溶媒に溶解させて用いた。
・カルシウム(Ca)含有液:Ca(NO32・4H2O(MW:236.15)(和光純薬・特級)を溶媒に溶解させて用いた。
・溶媒:10mmol/L Tris buffer pH 7.5 (和光純薬・生化学用)
[試験例1](Zn、Cuとの混合試験(励起波長Ex434nm-蛍光波長Em508nm))(図1)
Akane3と、亜鉛含有液または銅含有液とを混合したときの励起波長Ex434nmにおける蛍光スペクトルを評価した。
・試験例1-1
多色蛍光タンパク質濃度530μg/1mL(20nmol/L)のAkane3含有液0.5mLと、亜鉛含有液(亜鉛濃度:100μmol/L)1mLとを混合して、励起光波長434nmに対する蛍光スペクトルを、Hitachi 蛍光分光光度計「F-7000」で評価した。なお、スペクトルの評価は混合後2時間(120分)後を基本とした。
・試験例1-2
多色蛍光タンパク質濃度530μg/1mL(20nmol/L)のAkane3含有液0.5mLと、銅含有液(銅濃度:100μmol/L)1mLとを混合して、励起光波長434nmに対するスペクトルを、Hitachi蛍光分光光度計「F-7000」で評価した。なお、スペクトルの評価は混合後2時間(120分)後を基本とした。
試験例1-1、1-2の評価結果を合わせて図1に示す。図1に示すように、Akane3と金属の金属キレート形成能は金属の種類により異なる。励起波長Ex434nmにおける、蛍光波長Em508nmにおけるAkane3のみの蛍光波長を観察したものを基準(100%)とする。Akane3と亜鉛(Zn)を反応させると基準の155%まで増強された蛍光強度が確認された。Akane3と銅(Cu)を反応させると基準の51%まで減少した蛍光強度が確認された。
[試験例2](亜鉛混合時の蛍光特性(Ex428nm-Em483nm))(図2)
試験例2の評価結果を図2に示す。図2に示すように、励起波長Ex428nmにおけるAkane3のみの緑色の蛍光波長Em483nmを観察したものを基準(100%)とすると、Akane3と亜鉛(Zn)を反応させると基準の195%の蛍光強度が確認された。
[試験例3](亜鉛混合時の蛍光特性(Ex536nm-Em604nm、640nm)(図3)試験例2に準じて、励起波長Ex536nmに対するスペクトルを評価した。
試験例3の評価結果を図3に示す。図3に示すように、赤色の蛍光波長Em604nm,640nmにおけるAkane3のみの蛍光波長を観察したものを基準(100%)とすると、Akane3とZnを反応させると150~160%の蛍光強度が確認された。
[試験例4](亜鉛濃度の影響)(図4)
亜鉛濃度を変更し、励起光波長Ex536nmに対するスペクトルを評価した。
試験例4の評価結果を図4に示す。
Akane3含有液、22.4nmol/L濃度の溶液を、マイクロプレートの各プレート穴に50μLずつマイクロピペットを使い分注する。被検液に含まれる検査対象の亜鉛(Zn)0, 0.25, 0.50, 2.5, 5.0(mmol/L)濃度の溶液を、50μLずつマイクロピペットを使い分注する。次に、攪拌機で緩やかに撹拌し、Akane3と被検液に含まれる検査対象の金属が、亜鉛(Zn)が、接触することで、Akane3と亜鉛はキレートを形成する。
図4に示すように、蛍光波長Em604nm,640nmにおける蛍光強度が、亜鉛濃度2.5mmol/Lまで、上昇傾向が確認された。
[試験例5](亜鉛濃度と経時変化)(図5)
試験例4に準じて、反応開始後30分後と、2時間後の励起光波長536nmに対するスペクトルを評価した。
試験例5の評価結果を図5に示す。図5(a)は30分後の試験結果で、(b)は2時間後の試験結果である。蛍光波長Em604nm、640nmにおける蛍光強度は、亜鉛濃度5mmol/Lまで上昇傾向が確認され、2時間経過後も強い蛍光強度を有することが確認された。
[試験例6](銅濃度の影響)(図6、図7)
Akane3含有液、22.4nmol/L濃度の溶液を、マイクロプレートの各プレート穴に50μLずつマイクロピペットを使い分注する。被検液に含まれる検査対象の銅(Cu)0, 0.125、 0.25、 0.50、 1.25、 2.5、 5.0、 25.0(mmol/L)濃度の溶液を、50μLずつマイクロピペットを使い分注する。次に、攪拌機で緩やかに撹拌し、Akane3と被検液に含まれる検査対象の金属が、銅(Cu)が、接触することで、Akane3と銅はキレートを形成する。
亜鉛含有液に代えて銅含有液を用い、銅濃度を変更しながら、励起光波長536nmに対するスペクトルを評価した。なお、図中の銅の量は混合溶液中の銅含有量で表記したものである。
試験例6の評価結果を図6、図7に示す。図6、図7に示すように、蛍光波長Em604nm,640nmにおける蛍光強度は、銅濃度(0~25mmol/L)が高いほど、減少傾向が確認された。
[試験例7](Liとの混合試験)(図8)
試験例1に準じて、Akane3に代えて天然型RFPを用いて、天然型RFPとLi含有液を混合したときの励起光-蛍光スペクトルを評価した。
試験例7の評価結果を図8に示す。図8に示すように、蛍光波長Em503、572、637nmにおける蛍光強度は、Li濃度(0, 0.025, 0.05, 0.2, 0.4, 2.0mmol/L)が高いほど、上昇傾向が確認された。しかし、いずれも蛍光強度が低く、蛍光波長Em434nm、543nmの蛍光強度は特に低いものとなった。(Hitachi、F-7000 で測定)
[試験例8](亜鉛混合時の蛍光(図9))
試験例1-1に準じて、亜鉛濃度を変更しながら、励起波長Ex434nm、536nmに対するスペクトルを評価した。
試験例8の評価結果を、励起波長Ex434nm-蛍光波長Em(475nm、508nm)、励起波長Ex564nm-蛍光波長Em(596nm、641nm)についてまとめた結果を図9に示す。図9に示すように、それぞれの蛍光波長によって上昇傾向に違いがみられた。
[試験例9](Ca混合時の発光(図10)
Ca濃度を変更しながら、励起波長Ex434nm-蛍光波長Em(475nm,508nm)、励起波長Ex564nm-蛍光波長Em(596nm,641nm)に対するスペクトルを評価した。
試験例9の評価結果を、蛍光波長Em(475nm、508nm、596nm、641nm)についてまとめた結果を図10に示す。図10に示すように、蛍光波長によって上昇傾向に違いがみられた。
[構造の推定]
図11は、多色蛍光タンパク質アカネの推定構造である。多色蛍光タンパク質アカネのクロモフォア(発色団)は、微量金属(亜鉛、銅、リチウム)とのキレート錯体を形成すると考えられる。すなわち、多色蛍光タンパク質はキレート剤として働く。X線吸収微細構造によりこの錯体形成状態の構造を明らかにすることができると考えられる。
本発明は、特定の遺伝子を有するタンパク質を用いることで、細胞や被検液等に含まれる金属の検出剤として利用することができ、産業上有用である。また、金属イオンを含む薬物動態への利用に非常に有用と考えられる。

Claims (7)

  1. 下記(a)および(c)からなる群から選択される1以上の多色蛍光タンパク質を含む金属検出用試薬と、被検液とが混合された混合液を調整する調整工程と、前記混合液の蛍光を評価する評価工程とを有する、被検液の金属検出方法。
    (a)配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク
    c)上記(a)において、少なくとも一つのタンパク質が、それぞれ対応する配列番号で表されたタンパク質の配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなるタンパク質
  2. 前記被検液に含まれる検査対象の金属が、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、リチウム(Li)、およびカルシウム(Ca)からなる群から選択される1以上の金属、または遷移金属から選択される1以上の金属である請求項1記載の金属検出方法。
  3. 前記評価工程における前記混合液のpHが、10~13である請求項1または2に記載の金属検出方法。
  4. 下記(a)および(c)からなる群から選択される1以上の多色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む組み換えベクターを宿主に導入する工程と、前記組み換えベクターが導入された前記宿主における励起光-蛍光を評価することで、前記宿主における金属挙動の評価方法。
    (a)配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク
    c)上記(a)において、少なくとも一つのタンパク質が、それぞれ対応する配列番号で表されたタンパク質の配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなるタンパク質
  5. 前記金属挙動を評価する金属がリチウム(Li)であり、前記宿主が細胞、動物、動物組織、および動物器官からなる群から選択されるいずれかである請求項4記載の評価方法。
  6. 下記(a)および(c)からなる群から選択される1以上の多色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含み、導入される宿主の微量金属挙動の評価に用いられるための組み換えベクター。
    (a)配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク
    c)上記(a)において、少なくとも一つのタンパク質が、それぞれ対応する配列番号で表されたタンパク質の配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなるタンパク質
  7. 下記(a)および(c)からなる群から選択される1以上の多色蛍光タンパク質を含む金属検出用試薬。
    (a)配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク
    c)上記(a)において、少なくとも一つのタンパク質が、それぞれ対応する配列番号で表されたタンパク質の配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなる多色蛍光タンパク質
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