JP7448819B2 - 方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板及び方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、変圧器の鉄心材料として多用されており、特にエネルギーロスを少なくするために鉄損の小さい材料が求められている。鉄及び珪素を含有する鉄合金は結晶磁気異方性が大きいため、外部張力を付加すると磁区の細分化が起こり、鉄損の主要素である渦電流損失を低下させることができる。特に、5%以下の珪素を含有する方向性電磁鋼板の鉄損の低減には鋼板に張力を付与することが有効であることが知られている。この張力は、表面に形成された被膜によって付与される。
特許文献1には、特に高い張力を発生する被膜を有する方向性電磁鋼板として、硼酸アルミニウム結晶を主とする被膜を表面に有する方向性電磁鋼板が開示されている。
硼酸アルミニウム被膜は鋼板表面に形成すると張力付与効果が高いので、方向性電磁鋼板の次世代の絶縁被膜として有望であるが、現在使われている絶縁被膜に比較して防錆効果が弱いので、この点を改善することが必要である。
特許文献2には、燐酸塩とコロイダルシリカを主体とする従来の絶縁被膜を形成した後に低結晶性アルミナゾルを用いて塗布液の経時的安定性が良く、耐錆性の良い硼酸アルミニウム被膜を形成する方法が開示されている。
特許文献3には、燐酸塩とコロイダルシリカを主体とする従来の絶縁被膜を形成した後に低結晶性アルミナゾルを用いて硼酸アルミニウム被膜を形成する際に硝酸を添加して、同じく塗布液の経時的安定性が良く、耐錆性の良い硼酸アルミニウム被膜を形成する方法が開示されている。
特開平6-65754号公報 特開2002-309381号公報 特開2004-99929号公報
特許文献2及び3に開示された技術によれば、いずれも燐酸塩を含む被膜が厚くなることで耐錆性が良好になる。しかしながら、途中高温での熱処理が複数回必要になるなど複雑な生産プロセスが必要になる。さらに、耐錆性は良好なものの、燐酸塩とコロイダルシリカを主体とする絶縁被膜の存在に起因して、占積率が十分高くないという問題があった。
そこで、本発明は、硼酸アルミニウム被膜を有する方向性電磁鋼板の耐錆性を向上する簡便な方法を提供することを課題とする。
方向性電磁鋼板には、一般的に、仕上げ焼鈍後の、フォルステライト被膜が表面に形成された鋼板が用いられる。このフォルステライト被膜は、方向性電磁鋼板で一般に一次被膜あるいはグラス被膜と呼称される被膜と同じものである。鋼板がフォルステライト被膜に完全に覆われていれば、十分な耐錆性が得られると考えられる。したがって、硼酸アルミニウム被膜の防錆効果が低いことが問題となるのは、フォルステライト被膜に欠陥が存在することによって、鋼板上がフォルステライト被膜に覆われていない部分が生じ、直接硼酸アルミニウムに接しているその部分の耐錆性が低下するためと考えられる。
そこで、本発明者らは、硼酸アルミニウム被膜形成材での耐錆性を改善するためには、フォルステライト被膜に覆われていない鋼板表面に保護膜を形成すればよいと考え、種々の方法を検討した。その結果、硼酸アルミニウム被膜形成前の鋼板表面を燐酸で処理することにより、所望の耐錆性が得られることを見出した。
本発明は上記の知見に基づきなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
(1)鋼板と、前記鋼板の表面に設けられたフォルステライトを主体とする中間層と、前記中間層の表面に設けられた硼酸アルミニウム被膜を備える方向性電磁鋼板であって、前記中間層内に燐酸鉄を含む燐酸塩被膜が存在し、前記燐酸塩被膜の付着量が0.003~0.300g/m2であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
(2)前記(1)の方向性電磁鋼板を製造する方法であって、フォルステライトからなる被膜を有する仕上げ焼鈍後の鋼板を燐酸水溶液で処理する工程と、燐酸処理後の鋼板を洗浄、乾燥する工程と、硼素源、及びアルミニウム源を含む塗布液を洗浄、乾燥後の鋼板の表面に塗布する工程を含むことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)前記燐酸水溶液への鋼板の浸漬時間は、30~300秒であることを特徴とする前記(2)の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明提案によれば、硼酸アルミニウム被膜の鋼板への張力付与能力、占積率に影響を与えず、簡便に耐錆性を改善できる。
本発明の方向性電磁鋼板は、鋼板と、鋼板上に設けられた、フォルステライトを主体とする中間層と、さらに中間層の上に形成されたアルミニウムと硼素とを含む酸化物(以下「硼酸アルミニウム被膜」という)からなる絶縁被膜とを有する。本発明の方向性電磁鋼板においては、中間層のフォルステライト被膜に欠陥があれば、その部分に燐酸塩被膜が形成される。その結果、鋼板と硼酸アルミニウム被膜が直接接触することはない。本発明においては、フォルステライト被膜と燐酸塩被膜を合わせて中間層と称する。
はじめに、本発明者らが、上記の被膜構造を実現する前に行った、絶縁被膜の耐錆性向上を実現する条件について調査及び検討について説明する。
本発明の方向性電磁鋼板の硼酸アルミニウム被膜の組成は、硼酸アルミニウム結晶(Al429)の化学量論組成よりも硼酸が過剰な組成となっている。このような被膜を形成した場合、グラス被膜の欠陥により鋼板が露出している個所があり、かつ鋼板が暴露される雰囲気が湿潤であると、過剰な硼酸の影響で鋼板が露出している部分では酸性環境となり、鉄が溶出するため、錆が形成されると推定される。本発明者らは、このような発生機構での錆を防ぐために、鋼板が露出している個所をなくすことで耐錆性を改善する方法を検討した。この方法の考え方は以下のとおりである。
フォルステライト被膜が鋼板を完全に覆っていれば、硼酸アルミニウム被膜が湿潤環境に晒された場合であっても、余剰硼酸による酸性環境は鋼板表面には実現しない。したがって、錆の形成は起こらないと考えられる。
しかしながら、フォルステライト被膜は数μm程度のフォルステライト結晶(Mg2SiO4)を主体とした酸化物からなる被膜であり、通常、この被膜には微細な欠陥がある。この欠陥の部分では鋼板はフォルステライト被膜に覆われていないと考えられ、耐錆性を低下させる原因になると考えられる。したがって、この欠陥の部分での鋼板の露出を防ぎ、硼酸アルミニウム被膜と直接接することの無いようにすれば耐錆性は改善すると考えられる。
本発明者らの検討の結果、フォルステライト被膜の欠陥部に燐酸塩被膜を形成することによって、低コストで入手可能な燐酸での短時間処理で、形成に必要な燐酸塩の付着量も少なく、簡便で占積率および張力に影響を与えずに、耐錆性を改善することが可能であることが分かった。
<1.方向性電磁鋼板>
以下、本発明の方向性電磁鋼板について説明する。
本発明の方向性電磁鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に設けられたフォルステライトを主体とする中間層と、中間層の表面に設けられた硼酸アルミニウム被膜を備える。そして、中間層内に燐酸鉄を含む燐酸塩被膜が存在し、燐酸塩被膜の付着量は0.003~0.300g/m2である。
燐酸塩被膜の付着量が0.003g/m2未満では、本発明の効果を得ることができない燐酸塩被膜の付着量が0.300g/m2超では、本発明の効果が飽和するとともに、占積率が低下する傾向となり、望ましくない。
フォルステライトを主体とする中間層、及び硼酸アルミニウム被膜は、公知の方向性電磁鋼板が備えるものと同様である。本発明の方向性電磁鋼は、中間層内に燐酸塩被膜を備える点に特徴がある。
中間層内の燐酸塩被膜は、後述する燐酸処理工程により形成され、主に、燐酸と鋼板の鉄が反応して形成される燐酸鉄を含む。すなわち、この被膜はグラス被膜の欠陥部で鋼板が露出している個所に形成される。このプロセスでは、溶出した鉄がフォルステライト被膜内の鋼板表面で燐酸鉄を含む燐酸塩を形成する。この際、燐酸鉄を含む燐酸塩の被膜中には酸化鉄や燐酸、また不純物由来の燐酸鉄以外の燐酸塩を含む場合もあるが、燐酸塩被膜中に鉄が含まれれば燐酸鉄を含む燐酸塩とみなすことができ、問題はない。フォルステライト被膜の欠陥は、通常、面積率で1~10%程度であり、この欠陥に本発明の燐酸塩被膜の付着量の範囲で形成される燐酸塩膜の厚さは、0.05~0.5μm程度である。
フォルステライト被膜の欠陥部で鋼板が露出している個所に燐酸塩被膜が形成されることにより、鋼板がフォルステライト被膜に覆われていない個所が燐酸塩によって塞がれ、硼酸アルミニウム被膜と直接接することがなくなり、耐錆性が改善する。
燐酸塩の付着量が前述の量よりも少ないと、燐酸塩の厚さが薄くなり、防錆効果が十分に得られない。燐酸塩の付着量が多すぎると、防錆効果に変化はなく、また、占積率に悪影響を与える。
本発明においては、燐酸塩被膜はフォルステライト被膜の欠陥部のみに存在することが好ましく、フォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面に存在する燐酸塩被膜は極力少なくすることが好ましい。方向性電磁鋼板の占積率を低下させないために、フォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面(ただし、フォルステライト被膜の欠陥部は除く)における燐酸塩被膜は、面積率で10%以下とするのが好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。最も好ましくは、フォルステライト被膜の欠陥部を除くフォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面における燐酸塩の付着量は0である。なお、燐酸塩の付着量が上記の範囲であれば、フォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面に存在する燐酸塩被膜は、面積率で10%以下となるものと考えられる。
本発明の燐酸塩被膜は、前述のように燐酸鉄および燐酸、鉄以外の金属元素を含む燐酸塩および酸化鉄からなるが、本発明では燐酸塩被膜がすべて燐酸鉄(FePO4)からなるとして付着量を定義する。したがって燐酸塩の付着量は、被膜中に含まれる鉄の量を分析することにより得られる。
具体的には本発明のプロセスを終えた鋼板の被膜をアルカリ溶液で除去し、被膜除去後のアルカリ溶液中に含まれる鉄の量を測定することにより以下の式に従って燐酸塩付着量を決定する。
Figure 0007448819000001
ここで、FePO4のモル質量は150.85(g/mol)、鉄のモル質量は55.85(g/mol)である。被膜の除去は、例えば80℃の20質量%水酸化ナトリウム溶液に30分間浸漬することで実現できる。被膜中の鉄の量はこの水酸化ナトリウム溶液中の鉄の量を分析することにより得られる。
本発明では上式で求められる燐酸塩の付着量を、0.003~0.300g/m2とする。
燐酸塩がフォルステライト被膜の欠陥部に形成され、フォルステライト被膜の欠陥部を除くフォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面に形成される燐酸塩が面積率で10%以下であることは、試料の断面観察によって確かめることができる。本発明の方向性電磁鋼では、断面試料を作製し、走査型電子顕微鏡によりフォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面を1万倍での観察、及びエネルギー分散型X線分析を行い確認することができる、
<2.方向性電磁鋼板の製造方法>
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
はじめに、仕上げ焼鈍が終了した鋼板を用意する。本発明の方向性電磁鋼板の製造方法に用いる鋼板は、二次再結晶が完了し、フォルステライトを主体とした一次被膜を有するものであれば特に制限はない。
続いて、フォルステライトを主体とする一次被膜を有する鋼板に対して、(i)フォルステライト被膜欠陥部への燐酸塩被膜形成、(ii)洗浄、及び(iii)硼酸アルミニウム被膜形成を行う。
(i)フォルステライト被膜欠陥部への燐酸塩被膜形成
はじめに、仕上げ焼鈍を終えたフォルステライト被膜を有する鋼板を軽酸洗して表面に残存している未反応のMgO等を除去する。酸洗は、硫酸を1~5質量%含む水溶液を50~90℃に温度を保ち、これに10~60秒浸漬した後流水で10~30秒洗浄後、乾燥するのが好ましい。硫酸の濃度及び水溶液の温度、浸漬時間が上記の範囲を外れると、未反応のMgOが除去できなかったり、あるいは鋼板が浸食されて一次被膜がはがれやすくなる場合がある。
次に、鋼板を燐酸浴に浸漬する。燐酸処理は、燐酸溶液で行う。燐酸の濃度は0.1~15質量%にするのが好ましい。燐酸の濃度が低いとフォルステライト被膜に覆われていない鋼板上に十分な量の燐酸塩の被膜が形成されず、十分な耐錆性が得られなくなる場合がある。一方、燐酸の濃度が高いと、鋼板上の燐酸塩の制御が困難になり、付着量が多くなりすぎ、占積率が悪化する場合がある。
燐酸溶液はpHを調整するためにアルカリ溶液、例えば水酸化ナトリウム等を加えるとよく、その量は燐酸抜きの溶液で0.01~10質量%の範囲とすると燐酸鉄被膜が形成されやすくなる。
燐酸溶液での処理は、溶液の温度を40~60℃に保ち、処理時間を30~300秒とするのが好ましい。溶液の温度が低すぎると、十分な量の燐酸塩被膜が得られなくなる場合がある。温度が高すぎると、鋼板上の燐酸塩量の制御性が悪くなり、占積率が悪化する場合がある。
燐酸処理の時間が短すぎると、健全な燐酸塩の層が一次被膜欠陥部の露出鋼板上に形成されず、耐錆性が改善されない場合がある。一方、処理時間が長すぎると、占積率が悪化しない限り問題は生じないが、プロセス時間が長くなるので、簡便に耐錆性を改善するという本発明の利点が失われる。
この燐酸処理は燐酸鉄皮膜処理工程として、例えば燐酸の水溶液を満たした槽に浸漬する方法、スプレーにて一定時間塗布し続ける方法等が利用できる。
上述のような燐酸処理によって、フォルステライト被膜の欠陥部に燐酸塩の付着量が0.003~0.300g/m2以下となる燐酸塩被膜が形成された鋼板が得られる。
(ii)洗浄
燐酸水溶液で処理した鋼板は、余剰の燐酸水溶液を除去するため、水等により洗浄することが重要である。この条件は、例えば、常温の流水での水洗を10~60秒、純水浸漬を常温で10~60秒とすることができる。
洗浄工程が無いと、燐酸で処理した後、フォルステライト被膜の欠陥部に必要以上の量の燐酸塩層が形成されたり、フォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面にも燐酸塩層が形成されたりし、占積率が悪化の原因となる。水洗を行うと、フォルステライト被膜の欠陥部では燐酸と鋼板が反応した極薄い層を除いて余剰の燐酸が除去される。また、フォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面からは実質的に燐酸塩が除去されるために、本発明の目的である、フォルステライト被膜の欠陥部のみに燐酸塩を形成し、占積率に影響を与えずに耐錆性を向上させるとの目的を達成することができる。すなわち、本発明によれば、フォルステライト被膜を有する鋼板に防錆処理をまったく行わずに硼酸アルミニウム被膜を形成した方向性電磁鋼板と、占積率はほとんど変わらない。
上記の水洗後、50~80℃で1~30分間の熱処理した後、鋼板を40℃以下まで一旦冷却をする。この処理によって燐酸塩層の強化と鋼板の乾燥を同時の行い、次の工程の硼酸アルミニウム被膜の形成を安定的に行えるようになる。本発明では、燐酸処理ののちに高温での熱処理は不要であり、100℃以下の低い熱処理温度で耐錆性向上効果を得ることができる。さらに、硼酸アルミニウム被膜による高張力効果を安定的に得ることができる。
(iii)硼酸アルミニウム被膜形成
硼酸アルミニウム被膜の形成については、特に限定はなく、公知の技術によることができる。たとえば、以下の方法が採用できる。
洗浄、乾燥後の鋼板に対して、硼酸アルミニウム被膜を形成するための塗布液を塗布する。この塗布液は硼酸アルミニウム被膜を形成するための公知の塗布液でよく、その組成は、Al23/B23換算の質量比が1.5~2.6の硼素源及びアルミニウム源を含む。
Al23/B23換算の質量比が1.5未満である場合、絶縁被膜中の硼素量が多くなりすぎ、その結果、硼素が界面に集積しすぎ、絶縁被膜中での硼素の存在が不均一となり、絶縁被膜の一部では硼酸アルミニウム結晶の形成が十分ではなくなって、被膜張力が低下する場合がある。また、Al23/B23換算の質量比が2.6を超えると、アルミニウム源が多くなりすぎ、その結果、絶縁被膜と鋼板との界面付近における硼素が十分な量とならず、生成する硼酸アルミニウム結晶が少なくなり、被膜張力が高くならない場合がある。
硼素源としては、H3BO3で表されるオルト硼酸が作業性、価格等の点から最も好ましいが、HBO2で表されるメタ硼酸、B23で表される酸化硼素、あるいはこれらの混合物も用いることができる。
アルミニウム源としては、酸化アルミニウムや酸化アルミニウム前駆体化合物が挙げられる。酸化アルミニウム前駆体化合物としては、例えば、ベーマイトのような酸化アルミニウムの水和物、水酸化アルミニウム等や、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムをはじめとする各種のアルミニウム塩類等が好適に用いられる。
これらの原料を分散媒に分散させて塗布液としてのスラリーを作製する。分散媒は水が最も良いが、他の工程で特に支障がなければ有機溶媒、あるいはこれらの混合物が使用できる。スラリーの固形分濃度は、その作業性等に応じて適宜選択され特に限定されない。
得られたスラリー(塗布液)は、ロールコーター等のコーター、ディップ法、スプレー吹き付けあるいは電気泳動等、従来公知の方法によって燐酸塩処理が完了した方向性電磁鋼板表面に塗布される。
塗布したスラリーを乾燥した後の焼き付け条件としては、硼酸アルミニウム被膜の公知の方法が利用でき、例えば露点が0~40℃で水素を0~25体積%含む不活性ガス雰囲気中で、鋼板を750~1000℃まで昇温し、この温度域で20~120秒の間熱処理する。750~1000℃の間で20~120秒熱処理する必要があるのは、750℃以上で硼酸アルミニウムの結晶成長が起こり、結晶化が進行するためである。なお、温度(均熱温度)あるいは熱処理時間がこの範囲を超えても問題はないが、温度高温化あるいは長時間化の効果が得られなくなる。
以上のようにして、上述したような絶縁被膜を有する、高い張力を有する方向性電磁鋼板が得られる。
以下に本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、以下に示す実施例は、本発明のあくまでも一例であって、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。
市販の燐酸(H3PO4)を表1の濃度となるような溶液を作製しこれにそれぞれ表1に示す濃度の水酸化ナトリウムを加えてこれを50℃に保ち、これにSiを3.2%含有する厚さ0.23mmの仕上げ焼鈍が完了した一方向性珪素鋼板(フォルステライト質の一次被膜あり)を表1に示す時間浸漬した。この鋼板を表1に示す条件で流水で洗浄した後、純水に浸漬し、その後、電気炉中で70℃の板温に20分間保った後空冷した。
その後、市販の硼酸試薬及び、酸化アルミニウム(Al23)粉末(平均粒径:0.4μm)を酸化アルミニウム200gに対して硼酸を80.4gの比率で混合し、これに蒸留水を加えてスラリーを作製した。なお、硼酸は酸化硼素(B23)相当に換算して秤量した。
得られたスラリーを、冷却後の鋼板に焼き付け後の被膜質量で4g/m2となるように塗布した。これを乾燥後に850℃まで昇温し、この温度で均熱時間を100秒として焼き付け、絶縁被膜を形成した。乾燥時の鋼板の到達温度は500℃とした。乾燥、冷却、昇温、焼き付け時の雰囲気は、水素を10%含む窒素雰囲気で、露点は30℃とした。
このようにして得られた試料に対し、断面試料を走査型電子顕微鏡でフォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面に燐酸塩が存在するかを確認し、また耐錆性、占積率および被膜張力を評価した。
フォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面に燐酸塩が存在していないかどうかについては、前述のとおり試料の断面試料を作製し、走査型電子顕微鏡によりフォルステライト被膜と硼酸アルミニウム被膜の界面を1万倍での観察およびエネルギー分散型X線分析を行い、フォルステライト被膜と硼酸アルミニウムの界面を確認した。その結果、界面に存在する燐酸塩被膜が面積率で10%以下の場合を良好(○)とした。
耐錆性は50℃、98%RHとした恒温恒湿槽中にて鋼板を保持し、48時間後に目視で錆の発生が無ければ耐錆性良好(○)とした。
占積率はJIS C2550-5の方法で測定し、97.5%以上を良好(○)とした。
被膜張力は、絶縁被膜を形成した鋼板の片側の被膜を除去し、鋼板の曲りから算出した。この張力は、中間層を含まない、硼酸アルミニウム被膜のみの張力である。絶縁被膜の除去には水酸化ナトリウム水溶液を用いた。張力は12.0MPa以上を高い張力と定義した。
表1の結果から、実施例では耐錆性を有し、かつ占積率が目標範囲内で張力の高い被膜が得られていることがわかる。
Figure 0007448819000002

Claims (3)

  1. 鋼板と、
    前記鋼板の表面に設けられたフォルステライトを主体とする中間層と、
    前記中間層の表面に設けられた硼酸アルミニウム被膜
    を備える方向性電磁鋼板であって、
    前記中間層内に燐酸鉄を含む燐酸塩被膜が存在し、
    前記燐酸塩被膜の付着量が0.003~0.300g/m2である
    ことを特徴とする方向性電磁鋼板。
  2. 請求項1に記載の方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
    フォルステライトからなる被膜を有する仕上げ焼鈍後の鋼板を燐酸水溶液で処理する工程と、
    燐酸処理後の鋼板を洗浄、乾燥する工程と、
    硼素源、及びアルミニウム源を含む塗布液を洗浄、乾燥後の鋼板の表面に塗布する工程
    を含むことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記燐酸水溶液への鋼板の浸漬時間は、30~300秒であることを特徴とする請求項2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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