JP7448804B2 - ラインパイプ用電縫鋼管、及びラインパイプ用熱延鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、ラインパイプ用電縫鋼管、及びラインパイプ用熱延鋼板に関する。
海底に敷設されるパイプラインは、高圧流体を内部に通す。パイプラインはさらに、波浪による繰り返し歪みと、海水圧とを受ける。そのため、海底のパイプラインに使用される鋼管には、高い強度と高い低温靭性とが要求される。
パイプラインは、複数のラインパイプで構成される。ラインパイプ用の鋼管として、電気抵抗溶接鋼管(以下、電縫鋼管という)が利用される場合がある。電縫鋼管の肉厚を厚くすれば、高強度が得られる。しかしながら、肉厚が厚くなれば、脆性破壊が生じやすく、低温靭性が低下する。
低温靭性の指標として、DWTT(Drop Weight Tear Test:落重試験)保証温度がある。DWTT保証温度は、DWTTにおいて85%以上の延性破面率を有する温度を意味する。DWTT保証温度が低いほど、低温靭性が高いことを意味する。近年、ラインパイプ用電縫鋼管では、優れた低温靭性が要求されている。
特許文献1は、厚さ中央部の組織において、平均結晶粒径が15μm以下及び粗大結晶粒率が20%以下であり、フェライト分率が65%以上及び硬質相分率が10~20%であり、硬質相のサイズが6.0μm以下であるラインパイプ用鋼材を開示している。このような組織とすることにより、優れた低温靭性と十分な強度とを有するラインパイプ用鋼材が得られる。
一方、結晶粒を微細化する手段として、仕上げ圧延における歪みの蓄積を活用した組織制御が知られている。
特許文献2は自動車用高強度鋼板に関し、最終の3つの圧延スタンドのそれぞれの圧延荷重が1つ前の圧延スタンドの圧延荷重の80%以上となるように仕上げ圧延し、鋼板に連続して高負荷をかけることにより、鋼板中にオーステナイトの動的再結晶を発現させ、オーステナイトの結晶粒を細かくしかつオーステナイト粒界に高い転位密度を導入し、以降の強制冷却の際にオーステナイト粒界から核生成するフェライトの生成頻度を高めて微細なフェライト粒の生成を増加させることを開示している。
特開2018-104757号公報 国際公開第2019/88104号
原油・天然ガスを長距離輸送するパイプラインに使用するラインパイプ用電縫鋼管は、深海への適用が活発化しており、厚肉と低温靭性の両立が技術的な課題となっている。近年では、厚肉12mm以上で、パイプ段階でのDWTT保証温度が-40℃以下であるラインパイプ用電縫鋼管の要求もある。しかしながら、上述のとおり、肉厚が厚くなれば、脆性破壊が生じやすく、低温靭性が低下するので、肉厚を厚くする場合は、低温靭性をさらに向上させる必要がある。
本発明は、上記の事情に鑑み、たとえば12mm以上の厚肉で、DWTT保証温度が-40℃以下である優れた低温靭性を有するラインパイプ用鋼材を提供することを課題とする。
厚肉高靭性化には最終組織の結晶粒微細化が有効であることが知られている。特に板厚中心部における結晶粒微細化が重要である。
最終組織の結晶粒微細化には、変態前のオーステナイトの制御が重要である。具体的には、オーステナイトの粒界面積の増加、変形体の導入と、転位密度の増加のため、オーステナイト中に歪みを蓄積させることが重要である。上述のとおり、自動車用を始めとした熱延鋼板では、仕上げ圧延における歪みの蓄積を活用した組織制御、商品開発が多く検討されている。
しかしながら、厚肉の熱延鋼板では、たとえば自動車用の熱延鋼板と比べ板厚が厚く、仕上げ圧延機での圧下量が制約されるため、仕上げ圧延において歪みは蓄積しにくい。
本発明者らは、厚肉の熱延鋼板に仕上げ圧延において歪みを蓄積させ、結晶粒を微細化する方法について鋭意検討した。その結果、仕上げ圧延に入る前の工程において、板厚中心と表層において大きな温度差が生じるように制御することで、熱歪みにより、仕上げ圧延工程において板厚中心に大きな歪みを蓄積させることができ、板厚中心において、従来よりも結晶粒を微細にすることができることがわかった。本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を進めてなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
[1]母材部、及び電縫溶接部を含むラインパイプ用電縫鋼管であって、前記母材部の化学組成が、質量%で、C:0.0030~0.120%、Si:0.05~0.30%、Mn:0.50~2.00%、P:0.030%以下、S:0.0100%以下、Al:0.010~0.035%、N:0.0010~0.0080%、Nb:0.010~0.080%、Ti:0.005~0.030%、Ni:0.01~0.50%、Mo:0.05~0.20%、O:0.0050%以下、V:0~0.10%、Ca:0~0.0050%、Cr:0~0.30%、Cu:0~0.30%、Mg:0~0.0050%、REM:0~0.0100%、及び残部:Fe及び不純物からなり、下記式(1)で定義されるF1が0.30~0.38であり、前記母材部の肉厚中央部の金属組織において、面積率で、フェライト分率が80~95%であり、残部はパーライト及び/又はベイナイトであり、平均結晶粒径が5.0μm以下であり、前記母材部の表層部の金属組織において、平均結晶粒径が5.0μm以下であり、前記表層部と前記肉厚中央部の前記平均結晶粒径の差が2.0μm以下であるラインパイプ用電縫鋼管。
F1 = C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3
+Nb/3 … 式(1)
〔式(1)において、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、及びNbは、それぞれ、各元素の含有量(質量%)を表す。〕
[2]前記母材部の化学組成が、質量%で、V:0%超0.10%以下、Ca:0%超0.0030%以下、Cr:0%超0.30%以下、Cu:0%超0.30%以下、
Mg:0%超0.0050%以下、及びREM:0%超0.0100%以下からなる群から選択される1種以上を含有する前記[1]のラインパイプ用電縫鋼管。
[3]管軸方向の降伏強度が450~540MPaであり、管軸方向の引張強度が510~625MPaである前記[1]又は[2]のラインパイプ用電縫鋼管。
[4]肉厚が12~25mmであり、外径が304.8~660.4mmである前記[1]~[3]のいずれかのラインパイプ用電縫鋼管。
[5]前記[1]~[4]のいずれかのラインパイプ用電縫鋼管の製造に用いられる熱延鋼板であって、化学組成が、質量%で、C:0.0030~0.120%未満、Si:0.05~0.30%、Mn:0.50~2.00%、P:0.030%以下、S:0.0100%以下、Al:0.010~0.035%、N:0.0010~0.0080%、Nb:0.010~0.080%、Ti:0.005~0.030%、Ni:0.01~0.50%、Mo:0.05~0.20%、V:0~0.10%、O:0.0050%以下、Ca:0~0.0050%、Cr:0~0.30%、Cu:0~0.30%、Mg:0~0.0050%、REM:0.0100%、及び残部:Fe及び不純物からなり、下記式(1)で定義されるF1が0.30~0.38であり、前記熱延鋼板の肉厚中央部の金属組織において、面積率で、フェライト分率が80~95%であり、残部はパーライトもしくはベイナイトであり、平均結晶粒径が5.0μm以下であり、前記熱延鋼板の表層部の金属組織において、平均結晶粒径が5.0μm以下であり、前記表層部と前記肉厚中央部の前記平均結晶粒径の差が2.0μm以下であるラインパイプ用熱延鋼板。
F1 = C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3
+Nb/3 … 式(1)
〔式(1)において、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、及びNbは、それぞれ、各元素の含有量(質量%)を表す。〕
本発明によれば、厚肉で優れた低温靭性と十分な強度とを有するラインパイプ用電縫鋼管、及び該ラインパイプ用電縫鋼管を製造するのに用いるラインパイプ用熱延鋼板を得ることができる。
図1は、引張試験に用いた引張試験片の平面図である。 図2は、DWTT試験に用いたDWTT試験片の採取位置を示す図である。 図3は、DWTT試験に用いたDWTT試験片の正面図及び側面図である。
以下、本実施形態のラインパイプ用電縫鋼管及びラインパイプ用熱延鋼板(以下、両者をまとめて「ラインパイプ用鋼材」という)について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
[化学組成]
本実施形態のラインパイプ用鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.0030~0.120%
Cは、鋼の強度を高める元素である。この効果を得るために、C含有量は0.0030%以上とする。C含有量が高すぎると、鋼の低温靭性及び延性が低下し、さらに、溶接性が低下することがある。したがって、C含有量は0.120%以下とする。C含有量の好ましい下限は0.040%であり、さらに好ましくは0.050%である。C含有量の好ましい上限は、0.100%であり、さらに好ましくは0.080%である。
Si:0.05~0.30%
Siは、鋼の脱酸剤として機能する元素である。さらに、電縫鋼管の母材及び溶接部に粗大な酸化物が生成されることを抑制し、母材及び溶接部の靭性を向上させる。これらの効果を得るために、Siの含有量は0.05%以上とする。Si含有量が高すぎると、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Si含有量は0.30%以下とする。Si含有量の好ましい下限は、0.07%であり、さらに好ましくは0.10%である。Si含有量の好ましい上限は0.20%であり、さらに好ましくは0.19%である。
Mn:0.50~2.00%
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める元素である。この効果を得るために、Mn含有量は0.50%以上とする。Mn含有量が高すぎると、鋼の強度が高くなりすぎ、鋼の低温靭性が低下することがある。したがって、Mn含有量は2.00%以下とする。Mn含有量の好ましい下限は、0.70%であり、さらに好ましくは1.00%である。Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、さらに好ましくは1.50%である。
P:0.030%以下
Pは不純物である。Pは、鋼の低温靭性を低下する。したがって、P含有量は0.030%以下とする。P含有量の好ましい上限は0.015%であり、さらに好ましくは0.01%である。P含有量はなるべく低い方が好ましく、0であってもよい。
S:0.0100%以下
Sは不純物である。Sは、Mnと結合してMn系硫化物を形成し、鋼の低温靭性及び耐SSC性を低下させる。したがって、S含有量は0.0100%以下とする。S含有量の好ましい上限は0.0010%であり、さらに好ましくは0.0005%である。S含有量はなるべく低い方が好ましく、0であってもよい。
Al:0.010~0.035%
Alは鋼の脱酸剤として機能する元素である。さらに、電縫鋼管の母材及び溶接部に粗大な酸化物が生成されることを抑制し、母材及び溶接部の靭性を向上させる。この効果を得るために、Al含有量は0.010%以上とする。Al含有量が高すぎると、Al窒化物が粗大化し、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Al含有量は、0.035%以下とする。Al含有量の好ましい下限は0.012%であり、さらに好ましくは0.015%である。Al含有量の好ましい上限は0.020%であり、さらに好ましくは0.016%である。本明細書において、Al含有量は鋼中の全Al含有量を意味する。
N:0.0010~0.0080%
Nは、窒化物を形成して、加熱工程中のオーステナイト粒の粗大化を抑制する元素である。具体的には、圧延工程においてオーステナイト粒が微細化し、変態後の結晶粒が微細になる。その結果、鋼の低温靭性が高まる。Nはさらに、固溶強化により鋼の強度を高める。これらの効果を得るために、N含有量は0.0010%以上とする。N含有量が高すぎると、炭窒化物を粗大化し、鋼の低温靭性が低下することがある。したがって、N含有量は0.0080%以下とする。N含有量の好ましい下限は、0.0020%であり、さらに好ましくは0.0030%である。N含有量の好ましい上限は0.0060%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
Nb:0.010~0.080%
Nbは、鋼中のCやNと結合して微細なNb炭窒化物を形成する元素である。Nb炭窒化物が形成されることにより、結晶粒の粗大化が抑制され平均結晶粒径が小さくなる。そのため、鋼の低温靭性を高める。さらに、微細なNb炭窒化物は、分散強化により鋼の強度を高める。これらの効果を得るために、Nb含有量は0.010%以上とする。Nb含有量が高すぎると、Nb炭窒化物が粗大化し、鋼の低温靭性が低下することがある。したがって、Nb含有量は0.080%以下とする。Nb含有量の好ましい下限は、0.012%であり、さらに好ましくは0.020%である。Nb含有量の好ましい上限は0.070%であり、さらに好ましくは0.060%である。
Ti:0.005~0.030%
Tiは、鋼中のNと結合してTiNを形成し、固溶したNによる鋼の低温靭性の低下を抑制する元素である。さらに、微細なTiNが分散析出することにより、結晶粒の粗大化が抑制され、これにより、鋼の低温靭性が高まる。これらの効果が得るために、Ti含有量は0.005%以上とする。Ti含有量が高すぎると、TiNが粗大化したり、粗大なTiCが生成し、鋼の低温靭性が低下することがある。したがって、Ti含有量は0.00.030%以下とする。Ti含有量の好ましい下限は、0.008%であり、さらに好ましくは0.010%である。Ti含有量の好ましい上限は0.020%であり、さらに好ましくは0.015%である。
Ni:0.01~0.50%
Niは、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める元素である。この効果を得るために、Ni含有量は0.01%以上とする。Ni含有量が高すぎると、この効果は飽和する。したがって、Ni含有量は0.50%以下とする。Ni含有量の好ましい下限は、0.05%であり、さらに好ましくは0.08%である。Ni含有量の好ましい上限は0.20%であり、さらに好ましくは0.15%である。
Mo:0.05~0.20%
Moは、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める元素である。Moはさらに、オーステナイト粒を微細化し、鋼の低温靭性を高める。これらの効果を得るために、Mo含有量は0.05%以上とする。Mo含有量が高すぎると、鋼の現地溶接性が低下する。したがって、Mo含有量は0.20%以下とする。Mo含有量の好ましい下限は、0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Mo含有量の好ましい上限は0.19%であり、さらに好ましくは0.18%である。
O:0.0050%以下
Oは不純物である。Oは酸化物を形成して、鋼の耐水素誘起割れ性を低下させる。Oはさらに、鋼の低温靭性を低下させる。したがって、O含有量は0.0050%以下とする。O含有量の好ましい上限は0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%である。O含有量はなるべく低い方が好ましく、0であってもよい。
V:0~0.10%
Vは、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Vは巻取り工程において鋼中のCやNと結合して微細な炭窒化物を形成し、鋼の強度を高める。微細なV炭窒化物はさらに、結晶粒の粗大化を抑制して鋼の低温靭性を高める。これらの効果は微量の含有でも得られるが、効果を確実に得るためには、V含有量を0.01%以上とすることが好ましい。V含有量が高すぎると、V炭窒化物が粗大化し、鋼の低温靭性が低下することがある。したがって、V含有量は、0.10%以下とする。V含有量のより好ましい下限は、0.02%であり、さらに好ましくは0.05%である。V含有量の好ましい上限は0.08%であり、さらに好ましくは0.07%である。
Ca:0~0.0030%
Caは、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Caは、MnSの形態を制御して球状化し、鋼の低温靭性が高められる。この効果は微量の含有でも得られるが、効果を確実に得るためには、Ca含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。Ca含有量が高すぎると、粗大な酸化物系介在物が形成される。その結果、酸化物が破壊の起点となり、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Ca含有量は0.0030%以下である。Ca含有量のより好ましい下限は、0.0002%であり、さらに好ましくは0.0005%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
Cr:0~0.30%
Crは、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Crは鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。この効果は微量の含有でも得られるが、効果を確実に得るためには、Cr含有量を0.01%以上とすることが好ましい。Cr含有量が高すぎると、焼入れ性が高くなりすぎて鋼の低温靭性が低下する。したがって、Cr含有量は0.30%以下とする。Cr含有量の好ましい下限は、0.05%であり、さらに好ましくは0.06%である。Cr含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.2%である。
Cu:0~0.30%
Cuは任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Cuは鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。この効果は微量の含有でも得られるが、効果を確実に得るためには、Cu含有量を0.02%以上とすることが好ましい。Cu含有量が高すぎると、焼入れ性が高くなりすぎて靭性が低下する。したがって、Cu含有量は0.30%以下とする。Cu含有量の好ましい下限は、0.05%であり、さらに好ましくは0.07%である。Cu含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.20%である。
Mg:0~0.0050%
Mgは、任意の元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Mgは脱酸剤及び脱硫剤として機能する。また、微細な酸化物を生じて、HAZの靭性の向上にも寄与する。これらの効果は微量の含有でも得られるが、効果を確実に得るためには、Mg含有量を0.0001%以上とするのが好ましい。Mg含有量が高すぎると、酸化物が凝集又は粗大化しやすくなり、その結果、耐HIC性の低下、又は、母材部若しくはHAZの靱性の低下がおこるおそれがある。したがって、Mg含有量は0.0050%以下とする。Mg含有量の好ましい下限は、0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Mg含有量の好ましい上限は0.040%であり、さらに好ましくは0.0030%である。
REM:0~0.0100%、
REMは、任意の元素であり、含有されなくてもよい。ここで、「REM」は希土類元素、即ち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を指す。REMが含有される場合は、REMは、脱酸剤及び脱硫剤として機能する。この効果は微量の含有でも得られるが、効果を確実に得るためには、REM含有量を0.0001%以上とするのが好ましい。REM含有量が高すぎると、粗大な酸化物を生じ、その結果、耐HIC性の低下、又は、母材部若しくはHAZの靱性の低下をもたらすおそれがある。したがって、REM含有量は0.0100%以下とする。REM含有量の好ましい下限は、0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。REM含有量の好ましい上限は0.070%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
本実施の形態によるラインパイプ用鋼材の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、ラインパイプ用鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態のラインパイプ用鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[式(1)について]
上記化学組成はさらに、式(1)を満たす。
F1 = C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3
+Nb/3 … 式(1)
ここで、式(1)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。また、式(1)中の元素記号に対応する元素が含有されていない場合、式(1)中の対応する元素記号には「0」が代入される。
上述のとおり、本実施の形態の化学組成において、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、及びNb含有量は鋼の焼入れ性を高める。
F1が低すぎると、CCT線図のS曲線(フェライト領域、パーライト領域、ベイナイト領域)が左側(短時間側)にシフトする。この場合、CCT線図において、核生成サイトが十分に生成する前に、鋼材温度がフェライト領域に入る。その結果、フェライトの結晶粒が粗大化し、平均結晶粒径が大きくなる。さらに、混粒が発生しやすく、粗大結晶粒率が大きくなる。その結果、鋼の低温靭性が低下する。F1が低すぎると、さらに、焼入れ性が低下し、十分な強度が得られない。
F1が高すぎると、CCT線図のS曲線が右側(長時間側)にシフトする。この場合、硬質組織が生成しやすくなり、組織中のフェライト分率が低下する。その結果、鋼の低温靭性が低下する。F1が高すぎると、さらに、焼入れ性が高くなり、鋼の強度が高くなりすぎる。
F1が0.30~0.38であれば、鋼の温度をフェライト領域に保持しやすく、鋼材の厚さ中央部のフェライト分率を80%以上にすることができ、鋼の低温靭性を高めることができる。
[フェライト分率について]
本実施形態によるラインパイプ用鋼材の肉厚中央部の組織は、面積率で80~95%のフェライトからなり、残部は、パーライト及び/又はベイナイトである。ベイナイトには粒内または粒界にセメンタイトを含まないベイニティックフェライトも含むものとする。ベイニティックフェライトの粒界にはMA(Martensite-Austenite constituent)を含む場合がある。ここで、厚さ中央部とは、板厚又は肉厚をtmmとした場合、板厚中央又は肉厚中央から、板厚方向又は肉厚方向に±10%tの範囲(つまり、表面から板厚方向又は肉厚方向に40~60%tの範囲)を意味する。
上述のとおり、鋼の厚さ中央部の組織のフェライト分率が、面積率で80%以上であれば、結晶粒が微細化し、その結果、鋼の低温靭性が高まる。フェライト分率の好ましい下限は、83%であり、さらに好ましくは85%である。一方、フェライト分率が、面積率で95%を超えると、所望の強度が得られなくなる。
フェライト分率は次の方法で測定される。
ラインパイプ用鋼材の厚さ中央部から試料を採取する。採取された試料をコロイダルシリカ研磨剤で30~60分研磨する。研磨された試料をEBSP-OIM(商標)(Electron Back Scatter Diffraction Pattern-Orientation Image Microscopy)を用いて解析し、フェライト分率を求める。
具体的には、EBSP-OIMに装備されているKAM(Kernel Average Misorientation)法にてフェライト分率を求める。
KAM法では、測定データのうちのある正六角形のピクセル(中心のピクセル)と、このピクセルに隣り合う6個のピクセルを用いた第1近似(全7ピクセル)、もしくはこれらの6個のピクセルのさらにその外側の12個のピクセルも用いた第2近似(全19ピクセル)、もしくはこれら12個のピクセルのさらに外側の18個のピクセルも用いた第三近似(全37ピクセル)について、各ピクセル間の方位差を平均し、得られた平均値をその中心のピクセルの値とする。この操作をピクセル全体に対して行う。
粒界を越えないようにこの計算を実施して、粒内の方位変化を表現するマップを作成する。すなわち、このマップは粒内の局所的な方位変化に基づく歪みの分布を表している。本実施の形態では、第三近似により隣接するピクセル間の方位差5°以下となるものを表示させる。本実施の形態では、方位差第三近似1°以下と算出されたピクセルの面性分率をフェライト分率と定義する。方位差第三近似1°を超えるものは、ベイナイト等のフェライト以外の組織とする。
[平均結晶粒径について]
本実施形態のラインパイプ用鋼材ではさらに、ラインパイプ用鋼材の肉厚中央部での平均結晶粒径が5.0μm以下である。平均結晶粒径が大きすぎると、鋼の低温靭性が低下する。本実施形態では、上述の平均結晶粒径が5.0μm以下であるため、優れた低温靭性が得られる。平均結晶粒径の好ましい上限は、4.8μmであり、さらに好ましくは4.5μmである。
平均結晶粒径は、EBSP-OIM法を用いて測定する。フェライト分率の測定と同様に試料を採取及び研磨する。研磨された試料をEBSP-OIMを用いて解析する。具体的には、一定測定ステップごとの方位測定で、隣り合う測定点の方位差が、15°を超えた位置を粒界とする。15°は大傾角粒界の閾値であり、一般的に結晶粒界として認識されている。粒界に囲まれた領域を結晶粒として、その粒径及び結晶粒の表面積を求める。得られた粒径及び表面積からエリア平均粒径を求める。本実施形態においては、求めたエリア平均粒径を平均結晶粒径とする。
本実施形態のラインパイプ用鋼材ではさらに、ラインパイプ用鋼材の表層部での平均結晶粒径が5.0μm以下である。ここで、表層部とは、板厚又は肉厚をtmmとした場合、表面から板厚方向又は肉厚方向に5~10%tの範囲、及び90~95%tの範囲を意味する。平均結晶粒径が大きすぎると、鋼の低温靭性が低下する。本実施形態では、ラインパイプ用鋼材の表層部でも平均結晶粒径が5.0μm以下であるため、優れた低温靭性が得られる。平均結晶粒径の好ましい上限は、4.8μmであり、さらに好ましくは4.5μmである。
本実施形態のラインパイプ用鋼材ではさらに、表層部と肉厚中央部の平均結晶粒径の差が2.0μm以下である。これにより、表層部、肉厚中央部で均一な低温靭性を得ることができる。
後述の製造工程を実施することにより、鋼材の肉厚中央部の金属組織において、面積率で、フェライト分率が80~95%、残部はパーライト及び/又はベイナイト、平均結晶粒径を5.0μm以下とし、鋼材の表層部の金属組織において、平均結晶粒径を5.0μm以下とし、表層部と肉厚中央部の平均結晶粒径の差を2.0μm以下とすることができる。
その結果、DWTT保証温度を-40℃以下として低温靭性を高めることができる。さらに、電縫鋼管において、450~540MPaの管軸方向の降伏強度、及び535~760MPaの管軸方向の引張強度を得ることができる。
[製造方法]
上述のラインパイプ用鋼材の製造方法の一例を説明する。
[素材準備工程]
はじめに、上述の化学組成を有する溶鋼を製造し、溶鋼を用いて、スラブを製造する。たとえば、連続鋳造法によりスラブを製造することができる。
[加熱工程]
加熱工程では、製造されたスラブを加熱炉で加熱する。加熱炉でのスラブの加熱温度は1060~1200℃とするのが好ましい。加熱温度が高すぎると、結晶粒(オーステナイト粒)が粗大化し、低温靭性が低下する。加熱温度が低すぎると、圧延中の結晶粒の微細化及び圧延後の析出強化が得られず、強度が低下する。
[熱間圧延工程]
熱間圧延工程は粗圧延工程、仕上げ圧延工程に分けられる。加熱工程で加熱されたスラブを、粗圧延機、及び仕上げ圧延機を用いて熱間圧延を施し、熱延鋼板とする。粗圧延機及び仕上げ圧延機ともに、一列に並んだ複数の圧延スタンドを備え、各圧延スタンドはロール対を備える。
粗圧延工程では、最終圧延温度を900~1000℃、圧下率を60%以上としてスラブに粗圧延を施す。粗圧延の圧下率は、(スラブ厚さ-仕上げ圧延前厚さ)/スラブ厚さ×100(%)で求められる。
本実施形態では、仕上げ圧延機入側における板厚中心温度を770~850℃として、仕上げ圧延機入側で鋼板の表層を冷却することにより、板厚中心と表層下2mmの温度差を80℃以上とする。鋼板の温度は、たとえば、鋼板の厚さ及び長さ、比熱などの物性値、冷却水量、搬送速度から、熱伝導解析を行って求めることができる。表層の冷却は、たとえば、冷却水を鋼板に噴射することで行うことができる。これにより、板厚中心に歪みが集中するため、結晶粒が微細とすることができる。
仕上げ圧延機出側では、鋼板の表層温度は復熱により上昇する。仕上げ圧延機出側の表層温度は、鋼板の圧延抵抗が増加して生産性が低下しないように、720~760℃とするのが好ましい。
[ROT冷却工程]
ROT(ランアウトテーブル)冷却工程では、熱間圧延工程で製造された鋼板を冷却する。具体的には、仕上げ圧延終了後の鋼板を、たとえば、水冷装置による水冷により今日冷却する。水冷直前の鋼板の表面温度は特に限定しないが、Ar3変態点以上であるのが好ましい。水冷直前の鋼板の表面温度がAr3変態点以上であれば、粒成長して結晶粒が粗大化することによる強度の低下を防止できる。
冷却工程では、冷却速度を板厚中央部で5~20℃/sとし、550~750℃まで強冷するのが好ましい。冷却速度が小さいと、冷却による歪みの導入が不足するため、フェライトの核生成サイトを十分に得ることができない。この場合、フェライト粒の生成量が少なくなるため、フェライト粒が粗大化し、鋼の低温靭性が低下することがある。冷却速度が大きいと、組織がベイナイト主体となり、鋼の低温靭性が低下することがある。
[巻取り工程]
巻取り工程では、ROT冷却工程で冷却された鋼板を巻取り、コイル状のラインパイプ用熱延鋼板にする。
コイル状のラインパイプ用熱延鋼板巻取り時の鋼板の表面温度(以下「巻取り温度」という)は、450~650℃とするのが好ましい。巻取り温度が低すぎると、粗大な結晶粒が増え、低温靭性が低下することがある。巻取り温度が高すぎると、結晶粒が粗大化して、鋼の低温靭性が低下することがある。
以上の製造工程により、本実施形態のラインパイプ用熱延鋼板が製造される。
本実施形態のラインパイプ用電縫鋼管は、上述のラインパイプ用熱延鋼板を用いて、次の製管工程で製造される。
[製管工程]
コイル状のラインパイプ用熱延鋼板を巻き戻しながら、周知の方法により、ラインパイプ用電縫鋼管を製造する。具体的には、ラインパイプ用熱延鋼板を連続した成形ロールによる曲げ加工により筒状(オープンパイプ)にする。続いて、オープンパイプの継ぎ目部、つまりラインパイプ用熱延鋼板の長手方向の両端面を電縫溶接法により溶接する。以上の工程により、ラインパイプ用電縫鋼管を製造する。
以上の製造工程により製造されたラインパイプ用鋼材(熱延鋼板及び電縫鋼管)では、肉厚中央部の金属組織において、面積率で、フェライト分率が80~95%、残部がパーライト及び/又はベイナイトであり、平均結晶粒径が5.0μm以下となる。また、母材部の表層部の金属組織において、平均結晶粒径が5.0μm以下となり、表層部と肉厚中央部の平均結晶粒径の差が2.0μm以下となる。その結果、DWTT保証温度を-40℃以下とし、低温靭性を高めることができる。さらに、450~540MPaの降伏応力、及び510~625MPaの引張強度を得ることができる。
本実施形態のラインパイプ用電縫鋼管の肉厚や外径は特に限定されるものではない。一例として、肉厚が12~25mm、外径が304.8~660.4mm(12~26インチ)の厚肉ラインパイプ用の電縫鋼管として好適である。
表1に示す鋼A~鋼Jの溶鋼を連続鋳造してスラブを製造した。
Figure 0007448804000001
鋼A~Oの複数のスラブを用いて、肉厚が12~25mm、外径が304.8~660.4mm(12~26インチ)の範囲にて、表2に示す試験番号1~24のラインパイプ用電縫鋼管を製造した。
具体的には、各試験番号のスラブを、加熱炉で加熱した。加熱温度(℃)は表2に示すとおりとした。加熱後のスラブを粗圧延機を用いて圧延して、その後、仕上げ圧延機で仕上げ圧延を実施した。その際、仕上げ圧延機の入側で鋼板表面を冷却し、板厚中心と表層に温度差をつけた。
仕上げ圧延後の鋼板に対して、ROT冷却を実施した。ROT冷却では、表2に示す冷却停止温度まで、表2に示す冷却速度で冷却した。
以上の製造工程により鋼板を製造後、表2に示す巻取り温度で巻取りを実施してラインパイプ用熱延鋼板を製造した。さらに、ラインパイプ用熱延鋼板を用いて上述の方法で製管し、ラインパイプ用電縫鋼管を製造した。
Figure 0007448804000002
得られたラインパイプ用熱延鋼板、ラインパイプ用電縫鋼管について、以下の試験を行った。
[ミクロ組織]
前述の方法に基づいて、EBSP-OIMを用いて、肉厚中央部及び表層部の平均結晶粒径、肉厚中央部のフェライト分率を測定した。平均結晶粒径測定でのEBSP-OIMの測定条件は倍率:400倍、視野面積:200μm×500μm、測定ステップ:0.3μmとした。
[歪み]
板厚中心の歪みはFEM解析により算出した。解析ソフトにはMSC社のMarkを用い、分割数(要素)は12、メッシュサイズは2.5mm×2.5mmとした。また、変形抵抗は下記式(a)から求めた。
σ=6310.6ε0.407×ε´0.115×exp(-2.62×10-3
-0.669ε) ・・・(a)
ここで、σは応力、εは歪み、ε´は歪み速度である。また、εとε´は、tを圧延後の板厚、t0を圧延前の板厚としたとき、下記式(b),(c)で求められる値ある。
ε=1.15ln(t/t0) ・・・(b)
ε´=50s-1 ・・・(c)
なお、板厚中心の歪みは、結晶粒の微細化と、板厚方向の均一化を促進し、低温靭性を向上するために蓄積させるものであって、歪みの値自体は特に限定されるものではない。本実施例からは、板厚中心に2.8以上の歪みが蓄積された場合に結晶粒を微細化できることが確認できた。
[強度試験]
各試験番号のラインパイプ用熱延鋼板、ラインパイプ用電縫鋼管から引張試験片を採取した。ラインパイプ用熱延鋼板は、試験片の中心が板厚方向1/2になるように、試験片の軸が圧延方向に対して垂直になるように採取した。ラインパイプ用電縫鋼管の引張試験片は、ラインパイプ用電縫鋼管を軸方向に見てラインパイプ用電縫鋼管の溶接部から90°の位置から全厚の引張試験片を採取した。引張試験片の横断面は弧状とし、引張試験片の長手方向は、鋼管の長手方向と平行とした。引張試験片のサイズは図1に示すとおりであり、平行部の長さは50.8mm、平行部の幅は38.1mmとした。図1中の数値は、試験片の対応する部位の寸法(単位はmm)を示す。引張試験片を用いて、API規格の5CTの規定に準拠して、常温にて引張試験を実施した。試験結果に基づいて、ラインパイプ用電縫鋼管の降伏強度YS(MPa)及び引張強度TS(MPa)を求めた。
[低温靭性試験]
各試験番号のラインパイプ用電縫鋼管からDWTT試験片を採取した。採取位置は引張り試験片と同様に溶接部から90°位置とし、90°位置にノッチを加工した(図2)。DWTT試験片のサイズは図3に示すとおりであった。図3中の数値は、試験片の対応する部位の寸法(単位はmm)を示す。tは肉厚(単位はmm)を示す。DWTT試験片の長手方向は、ラインパイプ用電縫鋼管の円周方向に相当した。DWTT試験片をASTM E 436の規定に準拠して、各温度で3本試験を行い、3本の延性破面率の平均値が85%以上になる最低温度をDWTT保証温度と定義した。
[試験結果]
表3に試験結果を示す。
Figure 0007448804000003
表1~3を参照して、試験番号1~13の鋼の化学組成は適切であり、式(1)を満たした。さらに、いずれの試験番号の製造条件も適切であった。そのため、試験番号1~13では、母材部の肉厚中央部の金属組織において、フェライト分率が80~95%であり、残部はパーライト又はベイナイトであり、平均結晶粒径が5μm以下であり、母材部の表層部の金属組織において平均結晶粒径が5μm以下であり、表層部と肉厚中央部の平均結晶粒径の差が2μm以下であった。
さらに、ラインパイプ用電縫鋼管の管軸方向の降伏強度YSはいずれも450~540MPaであり、引張強度TSはいずれも510~625MPaであった。
一方、試験番号14、15では、製造条件は適切であったものの、F1が式(1)下限未満であった。そのため、結晶粒が粗大化した。
試験番号16、17では、製造条件は適切であったものの、F1が式(1)の上限を超えた。そのため、フェライト分率が75%未満となり、ベイナイト主体組織となった。ベイナイト主体組織であるため結晶粒径が粗大化した。さらに、ラインパイプ用電縫鋼管の降伏強度YSが540MPaを超え、引張強度TSが625MPaを超え、高すぎた。
試験番号18では、加熱温度が1200℃を超えた。そのため、γ粒径が粗大化し、最終組織の結晶粒径が粗大化した。
試験番号19では、加熱温度が1060℃未満であった。そのため、加熱工程において、Nbが未固溶になり、強度に寄与する巻取り中の微細なNb析出物の量が少なくなったため、強度が低くなった。
試験番号20では、粗圧延最終温度が1000℃より高くなった。そのため、仕上げ圧延前のγ粒径が粗大化し、最終組織の結晶粒径が粗大化した。
試験番号21では、粗圧延圧下率が60%未満であった。そのため、仕上げ圧延前のγ粒径が粗大化し、最終組織の結晶粒径が粗大化した。
試験番号22では、仕上げ圧延入側の板厚中心の温度が850℃を超えた。そのため、仕上げ圧延での蓄積される板厚中心の歪みが2.8より小さくなり、結晶粒が粗大化した。
試験番号23では、仕上げ圧延入側の板厚中心の温度が770℃未満であった。そのため、仕上げ圧延が二相域(γ+α)が実施されたため、加工フェライトが生成し、ラインパイプ用電縫鋼管の降伏強度YSが540MPaを超え、引張強度TSが625MPaを超え、高すぎた。
試験番号24では、仕上げ圧延における板厚中心と表層下2mmの温度差が80℃未満であった。そのため、仕上げ圧延において、板厚中心に蓄積される歪みが2.8より小さくなり、結晶粒が粗大化した。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
1 電縫溶接部
2 DWTT試験片
3 ノッチ

Claims (5)

  1. 母材部、及び電縫溶接部を含むラインパイプ用電縫鋼管であって、
    前記母材部の化学組成が、質量%で、
    C :0.0030~0.120%、
    Si:0.05~0.30%、
    Mn:0.50~2.00%、
    P :0.030%以下、
    S :0.0100%以下、
    Al:0.010~0.035%、
    N :0.0010~0.0080%、
    Nb:0.010~0.080%、
    Ti:0.005~0.030%、
    Ni:0.01~0.50%、
    Mo:0.05~0.20%、
    O :0.0050%以下、
    V :0~0.10%、
    Ca:0~0.0050%、
    Cr:0~0.30%、
    Cu:0~0.30%、
    Mg:0~0.0050%、
    REM:0~0.0100%、及び
    残部:Fe及び不純物
    からなり、
    下記式(1)で定義されるF1が0.30~0.38であり、
    前記母材部の肉厚中央部の金属組織において、面積率で、フェライト分率が80~95%であり、残部はパーライト及び/又はベイナイトであり、平均結晶粒径が5.0μm以下であり、
    前記母材部の表層部の金属組織において、平均結晶粒径が5.0μm以下であり、
    前記表層部と前記肉厚中央部の前記平均結晶粒径の差が2.0μm以下
    であるラインパイプ用電縫鋼管。
    F1 = C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3
    +Nb/3 … 式(1)
    〔式(1)において、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、及びNbは、それぞれ、各元素の含有量(質量%)を表す。〕
  2. 前記母材部の化学組成が、質量%で、
    V:0%超0.10%以下、
    Ca:0%超0.0030%以下、
    Cr:0%超0.30%以下、
    Cu:0%超0.30%以下、
    Mg:0%超0.0050%以下、及び
    REM:0%超0.0100%以下
    からなる群から選択される1種以上を含有する請求項1に記載のラインパイプ用電縫鋼管。
  3. 管軸方向の降伏強度が450~540MPaであり、管軸方向の引張強度が510~625MPaである請求項1又は2に記載のラインパイプ用電縫鋼管。
  4. 肉厚が12~25mmであり、外径が304.8~660.4mmである請求項1~3のいずれか1項に記載のラインパイプ用電縫鋼管。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のラインパイプ用電縫鋼管の製造に用いられる熱延鋼板であって、
    化学組成が、質量%で、
    C :0.0030~0.120%未満、
    Si:0.05~0.30%、
    Mn:0.50~2.00%、
    P :0.030%以下、
    S :0.0100%以下、
    Al:0.010~0.035%、
    N :0.0010~0.0080%、
    Nb:0.010~0.080%、
    Ti:0.005~0.030%、
    Ni:0.01~0.50%、
    Mo:0.05~0.20%、
    V :0~0.10%、
    O :0.0050%以下、
    Ca:0~0.0050%、
    Cr:0~0.30%、
    Cu:0~0.30%、
    Mg:0~0.0050%、
    REM:0.0100%、及び
    残部:Fe及び不純物
    からなり、
    下記式(1)で定義されるF1が0.30~0.38であり、
    前記熱延鋼板の肉厚中央部の金属組織において、面積率で、フェライト分率が80~95%であり、残部はパーライトもしくはベイナイトであり、平均結晶粒径が5.0μm以下であり、
    前記熱延鋼板の表層部の金属組織において、平均結晶粒径が5.0μm以下であり、
    前記表層部と前記肉厚中央部の前記平均結晶粒径の差が2.0μm以下
    であるラインパイプ用熱延鋼板。
    F1 = C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/3
    +Nb/3 … 式(1)
    〔式(1)において、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、及びNbは、それぞれ、各元素の含有量(質量%)を表す。〕
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