JP7440051B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、及びポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、及びポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、及びポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法に関する。
本願は、2021年12月24日に、日本に出願された特願2021-211352号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐熱性、耐薬品性等に優れ、電気電子部品、自動車部品、機械部品、給湯機部品、繊維、フィルム用途等に幅広く利用されている。
従来、溶融混練プロセスによりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する技術があった。このような技術によれば、2種類以上の樹脂のペレットを混合し、混合されたペレットをスクリュウで回転させることにより撹拌しながら加熱し、混練された樹脂を押し出すことによりポリマーブレンドを行う(例えば、特許文献1を参照)。
また、なかでも自動車等の車両用部品の用途では、軽量化を目的とした金属の代替材料として、耐衝撃性等の機械的物性に優れた樹脂材料が要求されている。
従来、ポリアリーレンスルフィド樹脂の耐衝撃性を高めるため、エラストマー成分の配合方法が検討される場合がある。
特許文献2には、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、体積平均粒子径が0.1mm~3.0mmの熱可塑性エラストマー粒子(B)とを、前記熱可塑性エラストマー粒子(B)が全配合成分に対して0.1質量%~2.0質量%となる割合で溶融混練するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法が開示されている。
特開2017-149002号公報 特開2008-163112号公報
しかしながら、優れた耐衝撃性を示すポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の提供にあたっては、未だの検討の余地がある。
そこで、本発明は、耐衝撃性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供することを目的とする。
また本発明は、耐衝撃性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物において、特定のモルフォロジーを有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、優れた耐衝撃性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の態様を有する。
<1> ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、
前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相と、
前記連続相と前記一次分散相との界面に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)の反応物を含有する反応層と、
を有し、
前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径に対する前記反応層の部分の平均厚さの比(前記反応層の部分の平均厚さ/前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径)が0.15~0.22である、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<2> 前記反応層の平均厚さが10~24nmである、前記<1>に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<3> 前記一次分散相内に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む二次分散相を有する、前記<1>又は<2>に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<4> USAXS分析により測定された、前記一次分散相の体積および前記二次分散相の体積の総和100体積%に対する、前記二次分散相の含有割合が8体積%以上80体積%以下である、前記<3>に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<5> ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、
前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相と、
前記一次分散相内に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む二次分散相と、を有し、
USAXS分析により測定された、前記一次分散相の体積および前記二次分散相の体積の総和100体積%に対する、前記二次分散相の含有割合が8体積%以上80体積%以下である、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<6> 前記連続相と前記一次分散相との界面に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)の反応物を含有する反応層を有する、前記<5>に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<7> 前記反応層の平均厚さが10~24nmである、前記<6>に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<8> 前記一次分散相の平均分散径が100~170nmである、前記<1>~<7>のいずれか一つに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<9> 前記一次分散相の分散径の、(D84-D16)/2で表される粒度分布幅が50nm以下である、前記<1>~<8>のいずれか一つに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<10> 前記一次分散相の分散径の粒度分布において、前記分散径が200nm以上である前記一次分散相の占める割合が18%以下である、前記<1>~<9>のいずれか一つに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<11> 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、カルボキシル基を分子構造中に有する、前記<1>~<10>のいずれか一つに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<12> 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、下記構造式(1)で表される構造部位を繰り返し単位として有する、前記<1>~<11>のいずれか一つに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
Figure 0007440051000001
(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、又はエトキシ基を表す。)
<13> 前記熱可塑性エラストマー(B)が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである、前記<1>~<12>のいずれか一つに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<14> 前記熱可塑性エラストマー(B)が、エポキシ基を分子構造中に有するグリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである、前記<1>~<13>のいずれか一つに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<15> 前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相の含有割合が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の総質量に対し、5~40質量%である、前記<1>~<14>のいずれか一つに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<16> 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形物である、長さ80mm×幅10.0mm×厚さ4.0mmの試験片に対して、ISO179-1に準拠して測定された、23℃におけるノッチ付(B:8mm)のシャルピー衝撃値が40kJ/m以上である、前記<1>~<15>のいずれか一つに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
<17> 前記<1>~<16>のいずれか一つに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、
原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、原料熱可塑性エラストマー(B)と、を押出機によって溶融混練する工程を含み、
前記押出機のスクリュウはニーディングゾーンを備え、前記ニーディングゾーンは、複数個の攪拌羽を有し、前記ニーディングゾーンの前記スクリュウのスクリュウ径aに対する前記攪拌羽1枚あたりの厚さT(T/a)が0.09~0.19である、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
<18> 前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンの長さが、前記スクリュウ径aに対して0.5a~20aの長さである、前記<17>に記載の製造方法。
<19> 前記押出機のシリンダーの全長に対して3/15以上の長さの領域で、前記シリンダーの設定温度が300℃未満である、前記<17>又は<18>に記載の製造方法。
<20> 前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンのシリンダー内壁に対する前記スクリュウのスクリュウ回転より生じるせん断速度が1000~6500s-1である、前記<17>~<19>のいずれか一つに記載の製造方法。
<21> 前記原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、カルボキシル基を分子構造中に有する、前記<17>~<20>のいずれか一つに記載の製造方法。
<22> 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、下記構造式(1)で表される構造部位を繰り返し単位として有する、前記<17>~<21>のいずれか一つに記載の製造方法。
Figure 0007440051000002
(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、又はエトキシ基を表す。)
<23> 前記原料熱可塑性エラストマー(B)が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである、前記<17>~<22>のいずれか一つに記載の製造方法。
<24> 前記原料熱可塑性エラストマー(B)が、エポキシ基を分子構造中に有するグリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである、前記<17>~<23>のいずれか一つに記載の製造方法。
本発明によれば、耐衝撃性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供できる。
また、本発明によれば、耐衝撃性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法を提供できる。
第一実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のモルフォロジーの一例を説明する模式図である。 実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物における、一次分散相及び反応層の部分の平均分散径に対する前記反応層の部分の平均厚さの比について説明する模式図である。 第二実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のモルフォロジーの一例を説明する模式図である。 第三実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のモルフォロジーの一例を説明する模式図である。 実施形態に係る二軸押出機の機能構成について説明するための図である。 実施形態に係る二軸押出機のスクリュウ構成の一例を説明するための図である。 実施形態に係る二軸押出機のニーディングゾーンに配置されてよいニーディングエレメントの一例を示す正面図である。 実施形態に係る二軸押出機のニーディングゾーンに配置されてよいニーディングエレメントの一例を示す側面図である。 USAXS分析に用いた実施例1の測定対象試料の観察画像である。 STEM-EDS分析により得られた測定対象試料の観察画像である。
以下、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、及びポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法の実施形態を説明する。
本明細書において、実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を、単に「実施形態の樹脂組成物」又は「樹脂組成物」ということがある。また、実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法を、単に「実施形態の製造方法」又は「製造方法」ということがある。
≪樹脂組成物≫
[第一実施形態]
本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相と、前記連続相と前記一次分散相との界面に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)の反応物を含有する反応層と、を有し、前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径に対する前記反応層の部分の平均厚さの比(前記反応層の部分の平均厚さ/前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径)が0.15~0.22である。
図1は、本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のモルフォロジーの一例を説明する模式図である。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物101は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相1と、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相10とを有し、前記連続相1と前記一次分散相10との界面に、反応層30とを有する。
前記連続相は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を主成分として含むものであってよく、前記連続相におけるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の含有割合は、前記樹脂組成物における前記連続相の総質量100質量%に対して、50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、75質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、前記連続相がポリアリーレンスルフィド樹脂(A)からなるものであってよい。
同様に前記一次分散相は、前記熱可塑性エラストマー(B)を主成分として含むものであってよく、一次分散相における前記熱可塑性エラストマー(B)の含有割合は、前記樹脂組成物における前記一次分散相の総質量100質量%に対して、50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、75質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、前記一次分散相が熱可塑性エラストマー(B)からなるものであってよい。
なお、一次分散相が後述の二次分散相を更に含む場合、二次分散相の質量は、一次分散相の総質量には含まれないものとする。ただし、後述のUSAXS分析により測定された一次分散相の体積及び二次分散相の総和の体積の算出に関してはその限りではなく、分布1として算出された体積には、一次分散相の体積及び二次分散相の体積が包含されていると考えてよい。
反応層30には、連続相1に含まれるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、一次分散相10に含まれる熱可塑性エラストマー(B)との反応物が含有される。反応層の存在は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いたエネルギー分散型X線分析[STEM-EDS(Energy-Dispersive-Spectroscopy)分析]により確認できる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物において反応層が形成されると、反応層部分におけるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)に由来するS原子の含有割合が、連続相の他の部分に比べて相対的に低くなる現象が観察される。このことから、例えば、S原子の含有割合を基準として、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)との反応性官能基同士が反応して形成された結合に起因してその含有割合が相対的に高くなる原子の含有割合を評価対象とすることで、反応層の存在を確認できる。
後述の実施例に示されるように、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)がカルボキシル基を分子構造中に有するものであり、熱可塑性エラストマー(B)がエポキシ基を分子構造中に有するグリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである組み合わせを原料として用いた場合、前記反応層は、STEM-EDS分析により検出される炭素原子、酸素原子、及び硫黄原子の総検出量(100質量%)に対する酸素原子の質量%が、STEM-EDS分析により検出される炭素原子、酸素原子、及び硫黄原子の総検出量(100質量%)に対する硫黄原子の質量%に対して相対的に高く検出される層と定義できる。例えば、STEM-EDS分析により分析される炭素原子、酸素原子、及び硫黄原子の総検出量(100質量%)に対する酸素原子の質量%(O)が、STEM-EDS分析により検出される炭素原子、酸素原子、及び硫黄原子の総検出量(100質量%)に対する硫黄原子の質量%(S)に対する比(O/S)で2以上である層を、反応層と特定できる。前記O/Sが2以上である層の確認は、前記酸素原子の質量%が、前記硫黄原子の質量%に対して相対的に高く検出されると認められる領域を、予め算出の対象位置と定めて行なってよい。
前記反応層を有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、連続相1と一次分散相10との界面における結合が形成されているために、連続相1と一次分散相10との間の密着が強固であり、樹脂組成物への衝撃により発生するクラックの伸展の抑制効果が高まることで、樹脂組成物の耐衝撃性が向上すると考えられる。
本発明の一実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径に対する前記反応層の部分の平均厚さの比(反応層の部分の平均厚さ/一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径)の下限値が、0.15以上であり、0.17以上であることが好ましく、0.18以上であることがより好ましい。
前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径に対する前記反応層の部分の平均厚さの比(反応層の部分の平均厚さ/一次分散相及び反応層の部分の平均分散径)の上限値は、0.22以下であり、0.21以下であることが好ましく、0.20以下であることがより好ましい。
上記の比(反応層の部分の平均厚さ/一次分散相及び反応層の部分の平均分散径)の上限値と下限値とは自由に組み合わせてよく、上記数値範囲としては、0.15~0.22であり、上記数値範囲の一例としては、0.17~0.21であることが好ましく、0.18~0.20であることがより好ましい。
後述の実施例に示されるように、前記反応層の部分の平均厚さ/一次分散相及び反応層の部分の平均分散径の比が、上記数値範囲内であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、上記数値範囲を満たさないポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に比べ、耐衝撃性に優れる。
図2(A)~(B)は、一実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物における、一次分散相及び反応層の部分の平均分散径に対する前記反応層の部分の平均厚さの比を説明するための模式図である。ここでは、一次分散相及び反応層の部分の観察画像が真円で、反応層の厚さも均一であると仮定している。図2(A)~(B)中、一次分散相及び反応層の部分の平均分散径をdで表し、反応層の厚さを30dで表す。平均分散径dは、一次分散相の径と反応層の厚さとを合わせた値である。
図2(A)及び図2(B)に示される各模式図では、平均分散径dの値が同一であり、図2(A)の反応層の厚さ30dよりも、図2(B)の反応層の厚さ30d’の値が大きい。ここでは、反応層の厚さ/一次分散相及び反応層の部分の平均分散径の値、即ち30d×2/dの値が小さいほど、一次分散相及び反応層の部分に占める反応層の厚さの割合が小さく、当該30d×2/d値が大きいほど、一次分散相及び反応層の部分に占める反応層の厚さの割合が大きい。
前記比(反応層の部分の平均厚さ/一次分散相及び反応層の部分の平均分散径)が上記下限値以上であることで、一次分散相が本来持つ耐衝撃性能を非常に良好に発揮できる。
前記比(反応層の部分の平均厚さ/一次分散相及び反応層の部分の平均分散径)が上記上限値以下であることにより、樹脂組成物の耐衝撃性がより良好と傾向にあることの理由の詳細は必ずしも明らかではないが、反応層自体を構成する成分が反応により高分子量化することで、熱可塑性エラストマー(B)の本来の弾性率よりも反応層の弾性率が高められて耐衝撃性能が低下していると考えられるため、反応層の部分の平均厚さが占める割合を上記上限値以下とすることで、一次分散相の熱可塑性エラストマー(B)の有する本来の耐衝撃性が良好に発揮されやすいと考えられる。
そのうえ、前記比(反応層の部分の平均厚さ/一次分散相及び反応層の部分の平均分散径)の値が上記範囲内であることで、後述の二次分散相に関し、一次分散相内への二次分散相の含有割合をより高める作用が得られ、樹脂組成物の耐衝撃性をより一層向上させることができる。
なお、一次分散相が後述の二次分散相を更に含む場合、前記比の算出にあたり、二次分散相の部分も一次分散相の部分の平均分散径に含まれるものとする。
前記比(反応層の部分の平均厚さ/一次分散相及び反応層の部分の平均分散径)の値は、後述のSTEM-EDS分析によって得られる反応層の厚さの平均値の2倍の値を、該反応層の厚さの平均値の2倍の値に、後述の一次分散相の平均分散径の値を足した値で除することで取得する。
反応層の厚さの平均値×2/[(反応層の厚さの平均値×2)+一次分散相の平均分散径]
(反応層)
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる観点から、前記反応層の平均厚さは、10nm以上であることが好ましく、13nm以上であることがより好ましく、15nm以上であることがさらに好ましい。
同様に、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる観点から、前記反応層の平均厚さは、24nm以下であることが好ましく、22nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。
前記反応層の平均厚さの上記数値範囲の一例としては、10~24nmであってよく、13~22nmであってよく、15~20nmであってよい。
反応層の平均厚さは、以下の方法により求めることができる。
[反応層の平均厚さ]
測定対象の樹脂組成物を成形材料として、シリンダー設定温度300℃、金型設定温度130℃の条件にて射出成形機で成形し、前記樹脂組成物からなる長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を得る。この試験片をクライオミクロトームで切削して得られる100nmの薄膜片を50℃のキシレン中に30分浸漬させ、断面にある熱可塑性エラストマー(B)を含む分散物をキシレン抽出にて取り除く。得られた薄膜片を用い、STEM-EDS分析により取得された薄膜片断面の観察画像において、無作為に選定した20個以上の分散物の粒子跡に対して、元素マッピングを行い、反応層の存在を確認する。
上記のように、炭素、酸素、硫黄をマッピング対象とする場合、取り除かれた分散物の粒子跡の境界面にある、硫黄に対して酸素が相対的に多く検出される領域(例えば、上記で説明した酸素原子の質量%が、硫黄原子の質量%に対する比で2以上の領域)を、反応層の存在位置とする。
また、取り除かれた分散物の粒子跡部分の、硫黄も酸素も検出されない領域を、一次分散相の存在位置とする。
マッピングで得られた観察画像から、画像解析ソフト(例えば、ImageJ)を用い、一次分散相及び反応層を含む粒子面積と、反応層を含まない一次分散相の面積を算出する。それぞれの面積を真円換算した円面積相当径(円状物の面積に相当する真円の直径を求めた値)を求め、その差(一次分散相及び反応層の円面積相当径-一次分散相の円面積相当径)を2で除した値の平均値を、反応層の平均厚さとして取得する。
(一次分散相)
樹脂組成物の成形物に衝撃が与えられ、成形物に新たに亀裂が発生又は伸展すると、耐衝撃性の評価を下げることとなる。一次分散相が含む熱可塑性エラストマー(B)が、亀裂の発生又は伸展の抑制作用を主として発揮すると考えられるため、一次分散相の平均分散径の値が小さいことや、一次分散相の分散性が良好であることにより、亀裂の発生又は伸展の抑制作用が高まり、樹脂組成物の耐衝撃性の向上に寄与するものと考えられる。
かかる観点から、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の前記一次分散相の平均分散径は、170nm以下であることが好ましく、160nm以下であることがより好ましく、140nm以下であることがさらに好ましい。
一方で、一次分散相の平均分散径が小さくなるにつれ、一次分散相のサイズに対して前記反応層の厚みが占める割合が高くなる傾向にある。
かかる観点からは、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の前記一次分散相の平均分散径は、100nm以上であることが好ましく、110nm以上であることがより好ましく、120nm以上であることがさらに好ましい。
前記一次分散相の平均分散径の数値範囲の一例としては、100~170nmであることが好ましく、110~160nmであることがより好ましく、120~140nmであることがさらに好ましい。
一次分散相の平均分散径は、以下の方法により求めることができる。
[一次分散相の平均分散径]
測定対象の樹脂組成物を成形材料として、射出成形機により、ISO 3167タイプAの多目的試験片(成形物)を成形する。次に該多目的試験片を長さ方向の中心位置で切断して切断面を研磨し、キシレン中に浸し、50℃の温度条件で超音波処理を実施し、断面にある熱可塑性エラストマー(B)を含む分散物をキシレン抽出にて取り除く。その後130℃で2時間乾燥し、断面をSEMで観察し画像を取得する。熱可塑性エラストマー(B)を含む分散物が取り除かれた箇所は空隙相となり、明度が低い黒色の円状に表示される。画像解析ソフト(例えば、ImageJ)により、画像視野内に認められる当該黒色の円状物の円面積相当径(円状物の面積に相当する真円の直径を求めた値)を全て(n=300個以上)計測し、円状物の個数で割った平均値を一次分散相の平均分散径とする。
なお、反応層部分を構成する成分は、一次分散相を構成する成分よりも、連続相と一次分散相との反応により高分子量化しており、キシレン抽出では取り除かれない。
なお、樹脂組成物が後述する二次分散相を有する場合については、二次分散相が一次分散相内に分散しているため、キシレン抽出により一次分散相が取り除かれるとともに、二次分散相も取り除かれる。
前記一次分散相の分散径の、(D84-D16)/2で表される粒度分布幅は、50nm以下であることが好ましい。
前記粒度分布幅が上記上限値以下である一次分散相を有する樹脂組成物は、一次分散相の分散径のばらつきの程度が小さく、均質な分散状態が得られ、亀裂の伸展抑制に有効となり、樹脂組成物の発揮する耐衝撃性をより一層向上させることができる。
D84の値は、前記一次分散相の平均分散径を求める際に得た全粒子数を基準とした粒度分布において、径の小さい側からの累積84%の値である径である。
D16の値は、前記一次分散相の平均分散径を求める際に得た全粒子数を基準とした粒度分布において、径の小さい側からの累積16%の値である径である。
前記一次分散相の平均分散径を求める際に得られるn=300個以上の粒子を全て計測した全粒子数を基準とした粒度分布において、前記分散径が200nm以上である前記一次分散相の割合は、18%以下であることが好ましく、16%以下であることがより好ましく、14%以下であることがさらに好ましい。
分散径が200nm以上である一次分散相の割合が、上記上限値以下である一次分散相を有する樹脂組成物は、一次分散相の分散状態が更に良好であり、かつ連続相中に分散する一次分散相の個数の割合が増すことにより、亀裂の伸展を効果的に抑制することができ、樹脂組成物の発揮する耐衝撃性をより一層向上させることができる。
前記一次分散相の分散径において、分散径が200nm以上である一次分散相の割合の下限値は、特に制限されるものではないが、一例として、0%以上であってよく、1%以上であってよく、2%以上であってよい。
前記一次分散相の分散径において、分散径が200nm以上である一次分散相の割合の、上記数値範囲の一例としては、0~18%であってよく、1~16%であってよく、2~14%であってよい。
反応層を有する実施形態の樹脂組成物を得るためには、例えば、後述のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法において、互いに反応して結合を形成可能な反応性官能基同士を有する、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)および原料熱可塑性エラストマー(B)を適宜選定すればよい。ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び熱可塑性エラストマー(B)の好ましい種類や組み合わせについては、後に詳述する。
また例えば、後述のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法において、押出機のスクリュウ径aに対する攪拌羽1枚あたりの厚さT(T/a)や、スクリュウの回転数、後述するせん断速度などを調節することで、反応層の厚みや一次分散相の平均分散径を制御することができる。
[第二実施形態]
本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相と、前記一次分散相内に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む二次分散相とを有し、USAXS(Ultra-Small-Angle X-ray Scattering、超小角X線散乱)分析により測定された、前記一次分散相の体積および前記二次分散相の体積の総和100体積%に対する、前記二次分散相の含有割合が8体積%以上80体積%以下である。
以下、上記第一実施形態の樹脂組成物と同様の構成を有する部分については詳細な説明を省略する。
図3は、本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のモルフォロジーの一例を説明する模式図である。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物102は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相1と、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相10とを有し、一次分散相10内に、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む二次分散相20を有する。
前記二次分散相は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を主成分として含んでよく、二次分散相におけるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の含有割合は、前記樹脂組成物における前記二次分散相の総質量100質量%に対して、50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、75質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、前記二次分散相がポリアリーレンスルフィド樹脂(A)からなるものであってよい。
二次分散相20が含むことのできるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、連続相1が含むことのできるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)とは、互いに同一の種類であってもよく、互いに異なる種類であってもよい。後述のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法により、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、原料熱可塑性エラストマー(B)と、を押出機によって溶融混練するによって得られる樹脂組成物では、通常、二次分散相20が含むポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、連続相1が含むポリアリーレンスルフィド樹脂(A)とが、互いに同一の組成となると考えられる。
このような、一次分散相内に二次分散相を更に有する構造は、サラミ構造と称される場合がある。樹脂組成物がサラミ構造を有することで、樹脂組成物の発揮する耐衝撃性を向上させることができる。
本実施形態においては、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、前記熱可塑性エラストマー(B)を含む樹脂組成物において、サラミ構造を有し、かつサラミ構造を形成する二次分散相の含有量が多い樹脂組成物を提供できる。本実施形態の樹脂組成物において、どのようにしてサラミ構造が耐衝撃性を向上させるのかについては、以下のようなキャビテーション仮説による説明が可能である。
樹脂組成物の成形物に衝撃が与えられると、一次分散相と二次分散相の境界付近に応力集中によるキャビテーションが発生し、その影響により連続相と一次分散相の境界付近が流動し易くなることによる塑性変形がおこり、局所的にエネルギーが吸収(耐衝撃性が発揮)されると考えられる。実施形態の樹脂組成物によれば、樹脂組成物がサラミ構造を有することで、連続相と一次分散相との境界付近でもキャビテーションが発生し、さらなる耐衝撃性が発揮される効果も考えられる。
その他の推定される仮説として、同原料比率から製造された組成物同士の比較であれば、サラミ構造では一次分散相に二次分散相が含まれることで、みかけの一次分散相の体積分率が増加し、一次分散相の熱可塑性エラストマー(B)の有する本来の耐衝撃性が良好に発揮されやすくなることが挙げられる。
さらにその他の推定される仮説として、サラミ構造を有することによりモルフォロジーが複雑化することで応力の集中起点の数が増え、耐衝撃性が向上されることが挙げられる。
本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、USAXS分析により測定された、前記一次分散相の体積および前記二次分散相の体積の総和100体積%に対する、前記二次分散相の含有割合の下限値が、8体積%以上であり、10体積%以上であることが好ましく、15体積%以上であることがより好ましい。前記二次分散相の含有割合が上記下限値以上であると、樹脂組成物の耐衝撃性が向上される。
前記二次分散相の含有割合の上限値は、80体積%以下であり、50体積%以下であってよく、30体積%以下であってよい。
前記二次分散相の含有割合の数値範囲としては、8~80体積%であり、10~50体積%であることが好ましく、15~50体積%であることがより好ましい。
前記一次分散相および前記二次分散相の総体積100体積%に対する、前記二次分散相の含有割合が上記の数値範囲内であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、上記数値範囲を満たさないポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に比べ、耐衝撃性に優れる。
二次分散相の含有割合は、以下の方法により求めることができる。
[二次分散相の含有割合]
樹脂組成物のペレット(円柱状、切断面の直径2.7±0.3mm、長さ3.0±0.2mm)を5g計り取り、プレス温度300℃、プレス圧力×時間:0.5MPa×2分の後5MPa×2分の条件で、厚さ0.5mmのフィルム状となるよう円柱の側面方向から加熱プレスを実施する。得られたフィルムを15mm角に切り取り、金属試料板に固定し透過用試料台に取り付けて測定する。
X線回折装置(例えば、SmartLab、リガク製)を用い、測定条件:USAXS法 2θ=0~1.0°、step=0.001°、測定モード:ステップ、計測時間:6秒の条件にて透過測定を行う。
得られた2θの散乱強度の結果から、粒子解析ソフト(例えば、Nano-Solver3)を用い、散乱体となるドメインモデルを球状ドメインとし、粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、粒径分布モデルによるフィッティングにより粒径分布の解析を行う。粒径(nm)を指標とする分布において2つの分布(分布1、分布2)のピークの有無を確認し、粒径の大きなほうの分布を分布1とし、粒径の小さなほうの分布を分布2とする。分布1および分布2に対して算出される粒子の体積の総和を100体積%として、分布1に対して算出される粒子の含有率(体積%)と、分布2に対して算出される粒子の含有率(体積%)とを求める。
分布1に対して算出される粒子の含有率(体積%)を、前記一次分散相の体積および前記二次分散相の体積の総和100体積%とする。ここで算出される分布1の体積は、包含される二次分散相を含めた一次分散相と反応層との境界部分よりも内側の体積%に相当すると考えられる。
分布2に対して算出される粒子の含有率(体積%)を、前記一次分散相の体積および前記二次分散相の体積の総和100体積%に対する、二次分散相の含有割合とする。
なお、分布2として測定される二次分散相の含有割合が高いほど、上述したSTEM像による二次分散相の量が多く認められる傾向にある。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の発揮する耐衝撃性を向上させる観点から、USAXS分析により測定された前記二次分散相の平均分散径は、75nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましく、65nm以下であることがさらに好ましい。
同様に、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の発揮する耐衝撃性を向上させる観点から、USAXS分析により測定された前記二次分散相の平均分散径は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることがさらに好ましい。
USAXS分析により測定された前記二次分散相の平均分散径の数値範囲の一例としては、10~75nmであることが好ましく、20~70nmであることがより好ましく、30~65nmであることがさらに好ましい。
二次分散相の平均分散径は、上記の[二次分散相の含有率]における、分布2のピーク面積が50%となる値を二次分散相の平均分散径として採用する。
[第三実施形態]
本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相と、前記連続相と前記一次分散相との界面に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)の反応物を含有する反応層と、前記一次分散相内に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む二次分散相と、を有する。
図4は、本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のモルフォロジーの一例を説明する模式図である。
本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物103は、上記第一実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物101が、更に上記第一実施形態で説明した二次分散相20を有するので、上記第一実施形態の樹脂組成物の構成と、第二実施形態の樹脂組成物の構成とを、自由に組み合わせることができる。
上記第一実施形態の樹脂組成物と同様の構成を有する部分、及び上記第二実施形態の樹脂組成物と同一の構成を有する部分については詳細な説明を省略する。連続相、一次分散相、反応層及び二次分散相については、上記の第一実施形態又は第二実施形態で説明したものと同一の構成が挙げられる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、前記反応層と前記二次分散相の両方を有することで、反応層及び二次分散相の両方の耐衝撃性向上効果により、極めて優れた耐衝撃性を発揮するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供できる。
本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、一例として、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、
前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相と、
前記一次分散相内に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む二次分散相と、 前記連続相と前記一次分散相との界面に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)の反応物を含有する反応層と、を有し、
前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径に対する前記反応層の部分の平均厚さの比(前記反応層の部分の平均厚さ/前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径)が0.15~0.22であることが好ましく、0.17~0.21であることがより好ましく、0.18~0.20であることがさらに好ましい。
前記反応層の部分の平均厚さ/一次分散相及び反応層の部分の平均分散径の比が、上記数値範囲内であることで、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の発揮する耐衝撃性が、より一層向上される。
前記反応層を有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、二次分散相がより多く含まれる傾向にあり、前記二次分散相の含有割合が8体積%以上である前記樹脂組成物を容易に提供できる。これは、後述の樹脂組成物の製造方法での押出機内での混練により、一次分散相10に含まれる熱可塑性エラストマー(B)内に、連続相1に含まれるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)および、連続相1に含まれるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、一次分散相10に含まれる熱可塑性エラストマー(B)との反応物が取り込まれた状態が、反応層を有することでより得られ易くなるからであると考えられる。
本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、
前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相と、
前記一次分散相内に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む二次分散相と、
前記連続相と前記一次分散相との界面に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)の反応物を含有する反応層と、を有し、
USAXS分析により測定された、前記一次分散相の体積および前記二次分散相の体積の総和100体積%に対する、前記二次分散相の含有割合が8体積%以上であることが好ましく、10体積%であることがより好ましく、15体積%であることがさらに好ましい。
前記二次分散相の含有割合が上記下限値以上であると、樹脂組成物の耐衝撃性が向上される傾向にある。
前記二次分散相の含有割合の上限値は、一例として、80体積%以下であってよく、50体積%以下であってよく、30体積%以下であってよい。
前記二次分散相の含有割合の数値範囲としては、8~80体積%であり、10~50体積%であることが好ましく、15~50体積%であることがより好ましい。
前記一次分散相および前記二次分散相の体積の総体積100体積%に対する、前記二次分散相の含有割合が上記の数値範囲内であることで、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の発揮する耐衝撃性が、上記数値範囲を満たさないポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に比べ、より一層向上される。
本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、
前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相と、
前記一次分散相内に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む二次分散相と、 前記連続相と前記一次分散相との界面に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)の反応物を含有する反応層と、を有し、
前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径に対する前記反応層の部分の平均厚さの比(前記反応層の部分の平均厚さ/前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径)が0.15~0.22であることが好ましく、0.17~0.21であることがより好ましく、0.18~0.20であることがさらに好ましく、
USAXS分析により測定された、前記一次分散相の体積および前記二次分散相の体積の総和100体積%に対する、前記二次分散相の含有割合が8体積%以上であることが好ましく、10体積%であることがより好ましく、15体積%であることがさらに好ましい。
本実施形態における、前記反応層の平均厚さの一例としては、10~24nmであってよく、13~22nmであってよく、15~20nmであってよい。
以下、実施形態の樹脂組成物が含む、又は含み得る各成分について説明する。実施形態の樹脂組成物とは、上記第1~第3実施形態のいずれか一以上を例示する。
<ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)>
実施形態の樹脂組成物に含有されるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、芳香族環と硫黄原子とが結合した構造を繰り返し単位とする樹脂構造を有するものであり、具体的には、下記構造式(1)で表される構造部位を繰り返し単位として有する樹脂が挙げられる。
Figure 0007440051000003
(式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、又はエトキシ基を表す。)
ここで、前記構造式(1)で表される構造部位は、特に該式中のR及びRは、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の機械的強度の点から水素原子であることが好ましく、その場合、下記構造式(2)で表されるパラ位で結合するもの、及び下記構造式(3)で表されるメタ位で結合するものが挙げられる。
Figure 0007440051000004
これらの中でも、特に繰り返し単位中の芳香族環に対する硫黄原子の結合は前記構造式(2)で表されるパラ位で結合した構造であることが前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の耐熱性や結晶性の観点より好ましい。
また、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、前記構造式(1)で表される構造部位のみならず、下記の構造式(4)~(7)で表されるいずれか1種以上の構造部位を、前記構造式(1)で表される構造部位との合計を100モル%とした量に対して30モル%以下で含んでいてもよい。
Figure 0007440051000005
特に上記構造式(4)~(7)で表されるいずれか1種以上の構造部位を10モル%以下で含むことが、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の耐熱性、及び機械的強度の点から好ましい。前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)中に、上記構造式(4)~(7)で表されるいずれか1種以上の構造部位を含む場合、それらの結合様式としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体の何れであってもよい。
前記したポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、架橋型のポリアリーレンスルフィド樹脂、及び実質的に線状構造を有する所謂リニア型のポリアリーレンスルフィド樹脂が挙げられる。かかるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、反応の制御が容易であり、工業的生産性に優れることから、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp-ジクロルベンゼンとを反応させる方法によって製造することができる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の反応性をより高められる点から、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の分子構造中に、カルボキシル基を有するものであることが好ましく、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の主鎖末端にカルボキシル基を有するものであることがより好ましい。具体的には、中和滴定法で測定した該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)中の、前記のカルボキシル基の含有量が10μmol/g~200μmol/gの範囲にあることが好ましく、10μmol/g~100μmol/gの範囲にあることがより好ましい。前記した中和滴定法で測定した該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)中の、カルボキシル基の含有量が10μmol/g以上の場合、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の反応性を高めることができ、一方200μmol/g以下の場合、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の反応性の制御が容易になる。
なお、樹脂組成物が反応層を有する場合であっても、樹脂組成物は、反応層の形成に寄与しない未反応のカルボキシ基を含有することができる。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、カルボキシル基以外の官能基を有していても構わない。
前記の分子構造中に活性水素原子を有する官能基としてカルボキシル基を有するポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の製造方法は、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の重合終了後、室温まで冷却し水で洗浄した後、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)をろ別し、酸で処理した後、次いで水で洗浄する方法が挙げられ、この際使用し得る酸は、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸、シュウ酸、又はプロピオン酸が前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を分解することなく、残存金属イオン量を効率的に低減できる点から好ましく、これらのなかでも酢酸、又は塩酸がより好ましい。
さらに実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、300℃で測定した溶融粘度が、60Pa・s~240Pa・sの範囲にあるものが好ましい。該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の溶融粘度が60Pa・s以上の場合、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の靭性が向上し、一方、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の溶融粘度が240Pa・s以下の場合、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の高せん断下の発熱を抑制することが容易になる。これらの中でも、前記熱可塑性エラストマー(B)の添加による強度改善効果と、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の流動性とのバランスの点から、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の溶融粘度は、特に80Pa・s~180Pa・sの範囲にあることが好ましい。
ここで、前記した300℃で測定したポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の溶融粘度とは、高下型フローテスターを用い、長さ10mm、径1mmのオリフィスを使用して、300℃、試験荷重50kgの条件で、6分間保持した後に測定した前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の溶融粘度(Pa・s)を示す。
実施形態の樹脂組成物における、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相の含有割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の総質量(100質量%)に対して、50~95質量%であることが好ましく、70~90質量%がより好ましく、75~85質量%がさらに好ましい。上記で例示した、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相の含有割合の数値範囲の上限値と下限値とは、自由に組み合わせることができる。
実施形態の樹脂組成物が二次分散相を有する場合、樹脂組成物における、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相及び二次分散相の合計質量の含有割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の総質量(100質量%)に対して、50~95質量%であることが好ましく、70~90質量%がより好ましく、75~85質量%がさらに好ましい。上記で例示した、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相及び二次分散相の合計質量の含有割合の数値範囲の上限値と下限値とは、自由に組み合わせることができる。
<熱可塑性エラストマー(B)>
実施形態の樹脂組成物における前記熱可塑性エラストマー(B)は、加熱により軟化する性質(熱可塑性)を有し、例えば、融点が300℃以下であり、室温でゴム弾性を有するものであることが好ましい。かかる熱可塑性エラストマー(B)は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に与える耐衝撃性の改善効果に優れるため好ましい。また、耐熱性に優れる点から、熱可塑性エラストマー(B)は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーまたはニトリル系熱可塑性エラストマーであることが好ましく、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであることがより好ましい。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとは、オレフィンに由来する構成単位を含む熱可塑性エラストマーを例示できる。オレフィンとしては、α-オレフィンが好ましい。
熱可塑性エラストマー(B)は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、酸無水物構造、エステル構造及びイソシアネート基からなる群の中から選ばれる一つ以上の官能基または構造を分子構造中に有するものであることが、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)との反応性に優れ、上記の反応層を形成する観点から好ましい。これらのなかでもカルボキシル基、エポキシ基、酸無水物構造またはエステル構造を分子構造中に有する前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)との反応性により優れ、相溶性がより向上し均一混合された前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得られる点でより好ましい。
なお、樹脂組成物が反応層を有する場合であっても、樹脂組成物は、反応層の形成に寄与しない未反応の官能基または構造として、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、酸無水物構造、エステル構造及びイソシアネート基からなる群の中から選ばれる一つ以上の官能基または構造を含有することができる。
なかでも、熱可塑性エラストマー(B)は、エポキシ基を分子構造中に有するグリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。エポキシ基を分子構造中に有するグリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、優れた耐衝撃性を付与可能である一方、従来、樹脂組成物中に含有比率を高めた該エラストマーを良好に分散させることは困難であった。
後述の実施形態の製造方法によれば、熱可塑性エラストマー(B)がグリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである場合でも、その分散性を良好な状態とすることができ、優れた耐衝撃性を示すポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造可能である。
反応層を効果的に形成可能であるとの観点から、好ましくは、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、カルボキシル基を分子構造中に有するものであり、熱可塑性エラストマー(B)が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、酸無水物構造、エステル構造及びイソシアネート基からなる群の中から選ばれる一つ以上の官能基または構造を分子構造中に有するものである組み合わせを例示できる。
上記のなかでも、反応効率が高く、反応層の形成が良好となる観点から、より好ましくは、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、カルボキシル基を分子構造中に有するものであり、熱可塑性エラストマー(B)が、エポキシ基を分子構造中に有するグリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである組み合わせを例示できる。
前記したカルボキシル基、エポキシ基、酸無水物構造、またはエステル構造を分子構造中に有するポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、例えば、α-オレフィンと、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物構造、またはエステル構造を分子構造中に有するビニル重合性化合物との共重合で得ることができる。前記α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等の炭素数2~8のα-オレフィン等が挙げられる。
前記したカルボキシル基を分子構造中に有する前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸、またはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他炭素数4~10の不飽和ジカルボン酸と前記α-オレフィンとの共重合で得ることができる。
前記したエポキシ基を分子構造中に有する前記グリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等と前記α-オレフィンとの共重合で得ることができる。
前記した酸無水物構造を分子構造中に有するポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他炭素数4~10の不飽和ジカルボン酸の酸無水物等のα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物と前記α-オレフィンとの共重合で得ることができる。
前記したエステル構造を分子構造中に有するポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のα,β-不飽和カルボン酸のアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他炭素数4~10の不飽和ジカルボン酸のモノ及びジエステルと前記α-オレフィンとの共重合で得ることができる。
また、これらの二種以上の官能基又は構造を複数個、同時に含有した共重合体を用いることができる。これらの好ましい例としては、α-オレフィン、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸グリシジルの三元共重合体が挙げられる。
熱可塑性エラストマー(B)は、熱可塑性エラストマー(B)を構成する構成単位の総質量(100質量%)に対して、α-オレフィンに由来する構成単位を40~95質量%含むことが好ましく、50~90質量%含むことがより好ましく、60~80質量%含むことがさらに好ましい。
熱可塑性エラストマー(B)は、熱可塑性エラストマー(B)を構成する構成単位の総質量(100質量%)に対して、グリシジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を0.1~30質量%含むことが好ましく、0.5~15質量%含むことがより好ましく、1~7質量%含むことがさらに好ましい。ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念とする。
熱可塑性エラストマー(B)は、熱可塑性エラストマー(B)を構成する構成単位の総質量(100質量%)に対して、メチルアクリレートに由来する構成単位を0.1~50質量%含むことが好ましく、3~40質量%含むことがより好ましく、10~35質量%含むことがさらに好ましい。
上記共重合体の一例として、熱可塑性エラストマー(B)を構成する構成単位の総質量(100質量%)に対して、
グリシジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を0.1~30質量%含み、
メチルアクリレートに由来する構成単位を0.1~50質量%含むものが挙げられる。
上記共重合体の一例として、熱可塑性エラストマー(B)を構成する構成単位の総質量(100質量%)に対して、
α-オレフィンに由来する構成単位を40~95質量%含み、
グリシジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を0.1~30質量%含み、
メチルアクリレートに由来する構成単位を0.1~50質量%含むものが挙げられる。
次に、前記ニトリル系熱可塑性エラストマーとしては、不飽和ニトリルと共役ジエンとの共重合体が挙げられる。前記不飽和ニトリルは例えばアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルが挙げられ、前記共役ジエンは例えば1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3ブタジエン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。これらの中でもアクリロニトリル-ブタジエン共重合体が好ましく、さらに前記共役ジエンの二重結合の一部または全部を水素添加し、ニトリル基の三重結合を維持したまま耐熱性を高めた水添ニトリル系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
また、前記水添ニトリル系熱可塑性エラストマーは、ビニル基、水酸基、カルボキシル基、酸無水物構造、グリシジル基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、オキサゾリン基、イソシアヌレート基、マレイミド基からなる群の中から選ばれる一つ以上の官能基を分子構造中に有するものであることが、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)との反応性に優れ、相溶性に優れる点から好ましく、これらの中でもカルボキシル基を有する水添ニトリル系熱可塑性エラストマーが、耐熱性及び反応性に優れる点から特に好ましい。
実施形態の樹脂組成物における、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相の含有割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の総質量(100質量%)に対して、5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましく、上記の二次分散相を含有することによる耐衝撃性の向上効果がより顕著に反映されやすいとの観点からは15~25質量%がさらに好ましい。上記で例示した、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相の含有割合の数値範囲の上限値と下限値とは、自由に組み合わせることができる。
また別の側面からは、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物におけるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相との総含有量(100質量部)に対して、前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相の含有割合は、5~40質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、15~25質量部がさらに好ましい。
実施形態の樹脂組成物が二次分散相を有する場合、更に別の側面からは、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物におけるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相及び二次分散相と、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相との総含有量(100質量部)に対して、前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相の含有割合は、5~40質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、15~25質量部がさらに好ましい。
前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量が増えるほど、耐衝撃性が向上される傾向にあるため、前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相の含有割合が上記下限値以上であることで、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に与える耐衝撃性の向上効果が良好に発現される。前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相の含有割合が上記上限値以下であることで、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形時のガス発生量を効果的に低減できる。
実施形態の樹脂組成物における、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相との好ましい含有割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の総質量(100質量%)に対して、
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相が50~95質量%で、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相が5~40質量%であってもよく、
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相が70~90質量%で、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相が10~30質量%であってもよく、
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相が75~85質量%で、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相が15~25質量%であってもよい(ただし、連続相、一次分散相、及び反応層の合計質量がポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の総質量100質量%を超えないものとする)。
実施形態の樹脂組成物が二次分散相を有する場合、樹脂組成物における、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相及び二次分散相と、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相との好ましい含有割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の総質量(100質量%)に対して、
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相及び二次分散相の合計質量が50~95質量%で、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相が5~40質量%であってもよく、
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相及び二次分散相の合計質量が70~90質量%で、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相が10~30質量%であってもよく、
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相及び二次分散相の合計質量が75~85質量%で、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相が15~25質量%であってもよい(ただし、連続相、一次分散相、二次分散相、及び反応層の合計質量がポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の総質量100質量%を超えないものとする)。
(その他の成分)
実施形態の樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)の他に、その他の任意成分を、それらの含有量(質量%)の合計がポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の総質量100質量%を超えないよう含有することができる。
例えば、前記連続相、一次分散相及び二次分散相の少なくとも1つに、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)に該当しない、その他の樹脂を更に含んでもよい。
その他の樹脂としては、エチレン、ブチレン、ペンテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどの単量体の単独重合体または共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアリルサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、液晶ポリマー、ポリアリールエーテルなどの単独重合体、ランダム共重合体またはブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。
実施形態の樹脂組成物は、前記各成分に加え、更にエポキシシランカップリング剤(C)を含有することができる。前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)と該エポキシシランカップリング剤との優れた反応性のため、前記熱可塑性エラストマー(B)の均一分散性が改善されるとともに、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との界面における密着性が向上し前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の強度改善効果が一層顕著なものとなる点から好ましい。
前記エポキシシランカップリング剤(C)は、アルキル基として炭素原子数1~4の直鎖型アルキル基を有する、グリシドキシアルキル基、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル基のようなエポキシ構造含有基と、2個以上のメトキシ基及びエトキシ基とが珪素原子に結合した構造を有するシラン化合物が好ましい。
このようなエポキシシランカップリング剤(C)は、具体的には、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及びエポキシ系シリコーンオイルが挙げられる。
前記エポキシ系シリコーンオイルは炭素原子数2~6アルコキシ基を繰り返し単位として2単位乃至6単位で構成されるポリアルキレンオキシ基を有する化合物が挙げられる。
前記エポキシシランカップリング剤(C)のなかでも、特に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)、及び前記熱可塑性エラストマー(B)との反応性に優れる点からγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランに代表されるグリシドキシアルキルトリアルコキシシラン化合物が特に好ましい。
前記エポキシシランカップリング剤(C)の含有率は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物全質量100質量%に対する含有率として、0.1質量%~5質量%の範囲にあることが好ましく、0.1質量%以上の場合前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との相溶性が良くなり、5質量%以下の場合前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の溶融成型時の発生ガスが減少する。これらのなかでも前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物全量に対する含有率として、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との相溶性、及び前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の溶融成型時の発生ガスの量のバランスの点から、特に0.1質量%~2質量%の範囲にあることが好ましい。
実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物において、前記した配合物に加え、適宜無機フィラーを含有することができる。前記無機フィラーは、繊維状無機フィラーと非繊維状無機フィラーとを挙げることができる。
前記繊維状無機フィラーは、例えば、ガラス繊維、PAN系又はピッチ系の炭素繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、チタン酸カリウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真ちゅう等の金属の繊維状物の無機質繊維状物質、及びアラミド繊維等の有機質繊維状物質等が挙げられる。
また、前記非繊維状無機フィラーは、例えば、マイカ、タルク、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、クレー、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、ゼオライト、パイロフィライトなどの珪酸塩や炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化鉄などの金属酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウムなどが挙げられる。これらの前記繊維状無機フィラー、及び前記非繊維状無機フィラーは、単独使用でも2種以上を併用してもよい。これらの非繊維状無機フィラーの配合時期は特に限定されないがナウタミキサー等により前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)とがドライブレンドされるときに配合されることが好ましい。
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と前記無機フィラーとの含有割合は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の溶融特性やその成型品の力学的特性の観点からポリアリーレンスルフィド樹脂(A)/無機フィラーの比で30質量部~100質量部/70質量部~0質量部となる範囲にあることが好ましい。さらに、前記繊維状無機フィラーと前記非繊維状無機フィラーとの混合割合は成型品に要求される力学的特性の観点から任意の含有割合でよいが、繊維状無機フィラー/非繊維状無機フィラーの比で20質量部~100質量部/80質量部~0質量部となる範囲にあることが好ましい。
(成形物)
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、例えば、ペレットとして提供できる。このポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを成形機に供して溶融成形することにより、目的とする成形物を得ることができる。前記溶融成形法は、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形等が挙げられ、特に限定するものでない。
なお、実施形態の樹脂組成物のペレットや成形物も、上記に説明した特有のモルフォロジー(反応層及び/又は二次分散相)を有するものである限り、本実施形態の樹脂組成物に包含される。
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形物は、上記の特有のモルフォロジー(反応層及び/又は二次分散相)を有するものであるため、格別良好な耐衝撃性を発揮する。
実施形態の製造方法によって得られた前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、例えば自動車部品や、自動車部品として用いられる電気又は電子部品の車両部品用又は車両部材用途に好適に用いることができる。
車両部品としては、エンジンルーム内での駆動系部品(例えば、トランスミッションギア、駆動モータ部品等)、制御部品(PCU等)、冷却部品(配管、バルブやポンプ部品等)、電池部品を例示できる。
実施形態の樹脂組成物によれば、優れた耐衝撃性を示すポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供可能である。
実施形態の樹脂組成物の耐衝撃性としては、下記の[シャルピー衝撃試験]における試験片に対して測定される、実施形態の樹脂組成物の成形物のシャルピー衝撃値を採用することができる。
樹脂組成物の成形物のシャルピー衝撃値は、以下の[シャルピー衝撃試験]により求めることができる。
[シャルピー衝撃試験]
測定対象の樹脂組成物を成形材料として、シリンダー設定温度300℃、金型設定温度130℃の条件にて射出成形機で成形し、前記樹脂組成物からなる長さ80mm×幅10.0mm×厚さ4.0mmの試験片を得る。次にISO 2818に従って試験片にノッチ(B:8mm)を切削し、ISO 179-1に従い試験を行い、23℃におけるノッチ付のシャルピー衝撃値(kJ/m)を得る。
実施形態の樹脂組成物は、上記試験片(樹脂組成物の成形物)の、ISO179-1に準拠して測定された、23℃におけるノッチ付のシャルピー衝撃値が、40kJ/m以上であることが好ましく、50kJ/m以上であることがより好ましく、60kJ/m以上であることがさらに好ましく、62kJ/m以上であることがさらに好ましく、64kJ/m以上であることが特に好ましい。
上記シャルピー衝撃値の上限値は特に制限されるものではないが、一例として、160kJ/m以下であってよく、120kJ/m以下であってよく、80kJ/m以下であってよい。
上記数値範囲の一例として、実施形態の樹脂組成物は、上記試験片(樹脂組成物の成形物)の、ISO179-1に準拠して測定された、23℃におけるノッチ付のシャルピー衝撃値が、40kJ/m以上160kJ/m以下であってよく、50kJ/m以上100kJ/m以下であってよく、60kJ/m以上120kJ/m以下であってよく、62kJ/m以上120kJ/m以下であってよく、64kJ/m以上80kJ/m以下であってよい。
≪樹脂組成物の製造方法≫
実施形態の樹脂組成物の製造方法は、上記実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、
原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、原料熱可塑性エラストマー(B)と、を押出機によって溶融混練する工程を含み、
前記押出機のスクリュウはニーディングゾーンを備え、前記ニーディングゾーンは、複数個の攪拌羽を有し、前記ニーディングゾーンの前記スクリュウのスクリュウ径aに対する前記攪拌羽1枚あたりの厚さT(T/a)が0.09~0.19である。
上記実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とは、上記第1~第3実施形態のいずれか一以上を例示する。
実施形態の製造方法では、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相の構成成分の原料と、原料熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相の構成成分の原料とを押出機に投入して、押出機により、上記の条件にて溶融混練することで、前記連続相と、前記一次分散相と、前記反応層及び/又は二次分散相と、を有する実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造できる。
前記押出機は、シリンダーの内部に配設されたスクリュウの数が一本の一軸押出機、該スクリュウの数が二本の二軸押出機が挙げられるが、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の全配合成分の混練効率が高いことから、前記二軸押出機を用いる方法が好ましい。
図5は、実施形態の製造方法に用いられてよい二軸押出機100の機能構成について説明するための図である。同図を参照しながら、実施形態に係る二軸押出機100の機能構成について説明する。 二軸押出機100は、駆動装置11と、フィーダー12と、シリンダー13と、スクリュウ14と、赤外線温度センサIRとを備える。
フィーダー12は、実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の原料を投入するための投入口である。
本実施形態において、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とは、ポリアリーレンスルフィドを含む樹脂組成物を広く包含する。ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の原料は、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含むことができる。原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)としては、ポリフェニレンスルフィドを例示できる。なお、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の原料とは、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成する配合成分、及び配合成分の前駆体を含む。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の原料には、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と混合される任意の成分を更に用いることができる。原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と原料熱可塑性エラストマー(B)とを混合する場合、原料熱可塑性エラストマー(B)についてもフィーダー12から投入されてよい。フィーダー12の個数は1個であっても、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の原料を個別に投入するために2個以上あっても構わない。
シリンダー13は、筒状の形状を有する。シリンダー13は、一端がフィーダー12に接続され、他端がダイス19に接続される。以後の説明において、シリンダー13のフィーダー12側を上流側と記載し、ダイス19側を下流側と記載する場合がある。シリンダー13は内部にスクリュウ14を収容する。フィーダー12から投入された原料は、不図示の加熱器により加熱され、原料の少なくとも一部(例えばポリアリーレンスルフィド)はシリンダー13の内部で溶融するとともに、投入された原料全体がスクリュウ14により混練される。シリンダー13内では、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の原料が混練される。以下、溶融混練時のシリンダー内の内容物を、混練物と称する。
本実施形態において、不図示の加熱部は、x軸方向に沿って異なる位置に複数設置されていてもよい。x軸方向において異なる位置に設置された複数の加熱部は、それぞれ異なる温度によりシリンダー13を加熱することができる。二軸押出機100は、複数の加熱部を備え、それぞれ異なる温度によりシリンダー13を加熱することにより、シリンダー13の上流側と下流側において異なる温度で混練物を加熱することができる。加熱部としては、シリンダー13を覆うバレルを例示できる。
赤外線温度センサIRは、シリンダー13の温度を測定する。具体的には、赤外線温度センサIRは、シリンダー13の内部に存在する成形材料の、溶融混練時の混練物の温度を測定する。二軸押出機100は、複数の赤外線温度センサIRを備えていてもよい。本実施形態においては、二軸押出機100は、赤外線温度センサIRとして、シリンダー13の上流側から順に、第1赤外線温度センサIR1と、第2赤外線温度センサIR2と、第3赤外線温度センサIR3と、第4赤外線温度センサIR4とを備える。
スクリュウ14は、駆動装置11により回転駆動されてよい。スクリュウ14は、回転駆動されることにより、シリンダー内部の混練物を、上流側から下流側に移送できる。フィーダー12に投入された原料は、シリンダー13を介し、溶融混練されて得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物として、ダイス19から押し出される。
駆動装置11は、不図示のモータ及びギアボックス等を備える。駆動装置11は、予め規定されたスクリュウ回転数(rpm)となるように、モータの回転数やトルク等を制御し、スクリュウ14を回転させる。
図6は、前記二軸押出機100のスクリュウ構成の一例を説明する模式図である。ここでは二軸押出機のバレルと、その内部に収容されるスクリュウ14を示している。バレルは、バレル数15(15等分割されたバレルを原料供給側から吐出側に向かいC1~C15とする)であり、C4、C7、C10、C12付近の位置に、上流側から順に、第1ニーディングゾーンKZ1と、第2ニーディングゾーンKZ2と、第3ニーディングゾーンKZ3と、第4ニーディングゾーンKZ4と、を備える。
ニーディングゾーンは、溶融混練により前記分散相を相中に分散させる(分散相の分散径を小さくする)ニーディング機能を有するスクリュウ部分である。
ニーディングゾーンの合計の長さとしては、スクリュウの全長(100%)に対して4~36%の長さであってよく、6~30%の長さであってもよく、8~20%の長さであってもよい。
二軸押出機のスクリュウは、軸の周囲に、所望の作用に応じた種々のエレメントを取り付けることで様々なスクリュウ形態の組み合わせを構成することができる。図6に示す模式図では、4つのニーディングゾーンKZ1~KZ4が、それぞれ4つのニーディングエレメント5又はニーディングエレメント5’を有する。ニーディングエレメントを構成するスクリュウ形態は、特に制限されるものではないが、混練用のニーディングディスクを備えた同方向回転の二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機のスクリュウ形態は互いに同一又は対称とすることができる。
図7~8は、実施形態に係る二軸押出機のニーディングゾーンに配置されてよいニーディングエレメントの一例を示す模式図である。ニーディングエレメントとしては、図7~8に示すニーディングエレメント5のような、攪拌羽として複数個のニーディングディスク51を有するものが挙げられる。ここで例示するニーディングディスク51(攪拌羽)の枚数は7枚である。ニーディングディスク51は、前記押出機のスクリュウの長さ方向と垂直な平面を有する形状が一般的である。
ニーディングディスク51の長径をaで、ニーティングディスク51の短径をbで表す。ここでのスクリュウ径aは、ニーディングディスクの長径と一致する。
実施形態の製造方法において、前記ニーディングゾーンは、複数個のニーディングディスクを有し、前記スクリュウのスクリュウ径aに対する前記ニーディングディスク1枚あたりの厚さT(T/a)が0.09~0.19である場合を例示する。
図8に示すように、ニーディングエレメント5は、複数個のニーディングディスク51を有し、各ニーディングディスク51は、スクリュウの軸の中央部分が中心軸となるよう取り付け角度を順次ずらして取り付けられている。隣りあう合攪拌羽の角度θを、ニーディングの噛み合いに不具合のない限りにおいて、0°から180°まで任意に調整して使用することができる。
また、ニーティングディスク51の幅(ニーティングディスクの短径b)もニーディングの噛み合いに不具合のない限りにおいて、任意に調整して使用することができる。
1つのニーティングエレメントが互いに厚さの異なる複数の攪拌羽を有する場合には、前記攪拌羽1枚あたりの厚さTは、前記攪拌羽1枚あたりの厚さTの平均値として求めてもよい。
前記スクリュウ径aに対する前記攪拌羽1枚あたりの厚さT(T/a)は、0.09~0.19であり、0.1~0.17であることが好ましく、0.12~0.15であることがより好ましい。
前記スクリュウ径aに対する前記攪拌羽の厚さTが上記範囲内であるスクリュウを採用することで、実施される混練や攪拌の状況が、実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が有する前記連続相と、前記一次分散相と、前記反応層及び/又は二次分散相の形成に好適となり、該モルフォロジーを有する実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を容易に製造できる。
上記のT/aの値が低い(スクリュウ径に対する攪拌羽の厚さが薄い)ほど、一次分散相の平均分散径を小さく、粒度分布幅も小さくでき、一次分散相の分散状態が更に良好となる傾向にある。
従って、上記のT/aの値を上記上限値以下とすることで、一次分散相の分散状態を更に良好なものとできる。また、上記のT/aの値を上記下限値以上とすることで、混練による過度なせん断発熱の発生が抑制され、樹脂組成物の熱劣化が抑制される。
実施形態の樹脂組成物が反応層を有する場合には、上記のT/aの値を上記範囲内とすることで、好ましい値の前記反応層の部分の平均厚さ/一次分散相及び反応層の部分の平均分散径の比を有する樹脂組成物を容易に製造できる。
また、実施形態の樹脂組成物が二次分散相を有する場合には、上記のT/aの値を上記範囲内とすることで、USAXS分析により測定される上記の二次分散相の含有割合が8体積%以上である前記樹脂組成物を容易に製造できる。
これらのことから、前記押出機のスクリュウが、上記のT/aの値が上記0.09~0.19の範囲内であるニーディングゾーンを備えることで、製造される樹脂組成物の耐衝撃性を極めて良好なものとできる。
1つのニーディングエレメントを構成するニーディングディスク(攪拌羽)の枚数は、前記T/aを満たす枚数であって、例えば、6~11枚であってよく、7~10枚であってよく、7~9枚であってよい。
別の側面として、1つのニーディングエレメントを構成するニーディングディスク(攪拌羽)の枚数は、前記T/aを満たす枚数であって、例えば、6~11枚であってよく、8~10枚であってよく、9~10枚であってよい。
シリンダー内径Dを1とするとき、スクリュウ径aは、シリンダー内径Dに対して、0.94~0.995Dであってよく、0.95~0.99Dであってよく、0.96~0.98Dであってよい。
スクリュウ径aは、例えば、5~300mmであってよく、8~100mmであってよく、10~35mmであってよい。
なお、ニーディングエレメントを構成するニーディングディスクの取り付け角度や順序を変更することで、ニーディングエレメントによる混練物の移送を制御することができる。ニーディングエレメントは、例えば移送能の種類により、上流側から下流側への移送能を有する正方向ニーディングエレメント、下流側から上流側への移送能を有する逆方向ニーディングエレメント、及び移送能を持たないニュートラルニーディングエレメントの3タイプに分類できる。ニーディングゾーンにおけるニーディングエレメントのタイプの種類や組み合わせは、適宜選択すればよい。正方向ニーディングエレメントを備え、その下流側の少なくとも一部に逆方向ニーディングエレメントも組み合わせて備える構成とすることで、混練物の一部をニーディングゾーンに留め、混練の強度を好適に高めることができる。
なお、スクリュウは複数のニーディングゾーンを有することができるが、複数箇所のニーディングゾーンのうちの全ての箇所が、上記に挙げた複数個の攪拌羽を有する前記T/aが0.09~0.19のニーディングゾーンである必要はない。
図6に示すスクリュウでは、4箇所のニーディングゾーンKZ1~KZ4を有し、4箇所のニーディングゾーンのうち、複数個の攪拌羽を有し前記T/aが0.09~0.19であるニーディングエレメント5を有するニーディングゾーンは、第1ニーディングゾーンKZ1及び第2ニーディングゾーンKZ2の2箇所としている。
なお、第3ニーディングゾーンKZ3、及び第4ニーディングゾーンKZ4を構成するニーディングエレメント5’は、上記前記T/aの規定を満たさなくともよく、ニーディング機能を有する任意のスクリュウ構成であってよい。
上記前記T/aの規定を満たすニーディングエレメント5を有するニーディングゾーンの少なくとも1つは、複数箇所のニーディングゾーンのうちの、上流側に配置されることが好ましい。
前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンの長さとしては、前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンの長さが、スクリュウの全長において、前記スクリュウ径aを1とするとき、前記スクリュウ径aに対して0.5a~20aの長さであってよく、0.75a~15aの長さであってよく、1a~12aの長さであってよい。
別の側面として、前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンの長さとしては、当該ニーディングゾーンが、スクリュウの全長(100%)に対して3~20%の長さであってもよく、5~15%の長さであってもよく、8~12%の長さであってもよい。
前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンの長さが上記下限値以上であることにより、実施形態の樹脂組成物の前記モルフォロジーを容易に形成できる。前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンの長さが上記上限値以下であることにより、混練による過度なせん断発熱の発生が抑制され、樹脂組成物の熱劣化が抑制されることで、樹脂組成物の耐衝撃性がより一層向上される。
混練強度の制御が容易となる観点から、スクリュウは、前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンを複数箇所備えることが好ましい。当該ニーディングゾーンの数は、例えば2~5箇所であってよく、2~3箇所であってよい。
ニーディングの噛み合いに不具合の無い限りで、1箇所のニーディングゾーンで複数のT/aを持つ攪拌羽を組み合わせてもよい。また、隣りあう合攪拌羽の角度θにおいても、ニーディングの噛み合いに不具合のない限りにおいて、1箇所のニーディングゾーンで複数の角度を組み合せて用いてもよい。
このように、前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンは不連続であってもよい。当該ニーディングゾーンが不連続である場合には、T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンに該当する領域の合計の長さを、該当するニーディングゾーンの長さとして採用することができる。
実施形態の製造方法において、前記原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)としては、上記の≪樹脂組成物≫において、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)として例示したものと同一の構成が挙げられる。
実施形態の製造方法において、前記原料熱可塑性エラストマー(B)としては、上記の≪樹脂組成物≫において、熱可塑性エラストマー(B)として例示したものと同一の構成が挙げられる。
反応層形成の観点から、前記原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、カルボキシル基を分子構造中に有するものが好ましい。
前記原料熱可塑性エラストマー(B)が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
前記原料熱可塑性エラストマー(B)は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、酸無水物構造、エステル構造及びイソシアネート基からなる群の中から選ばれる一つ以上の官能基または構造を分子構造中に有するものであることが、前記原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)との反応性に優れ、上記の反応層を形成する観点から好ましい。これらのなかでもカルボキシル基、エポキシ基、酸無水物構造またはエステル構造を分子構造中に有する前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、前記原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)との反応性により優れ、相溶性がより向上し、均一混合された前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得られる点でより好ましく、エポキシ基を分子構造中に有するグリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーであることがより好ましい。
上記のなかでも、反応効率が高く、反応層の形成が良好となる観点から、前記原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、カルボキシル基を分子構造中に有するものであって、前記原料熱可塑性エラストマー(B)が、エポキシ基を分子構造中に有するグリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである組み合わせが好ましい。
実施形態の樹脂組成物の製造方法における、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、原料熱可塑性エラストマー(B)との好ましい配合比は、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が50~95質量部で、原料熱可塑性エラストマー(B)が5~40質量部であってもよく、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が70~90質量部で、原料熱可塑性エラストマー(B)が10~30質量部であってもよく、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が75~85質量部で、原料熱可塑性エラストマー(B)が15~25質量部であってもよい。
実施形態の樹脂組成物の製造方法における、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の好ましい配合割合は、原料の総質量(100質量%)に対して、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が50~95質量%であってもよく、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が70~90質量%であってもよく、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が75~85質量%であってもよい。
実施形態の樹脂組成物の製造方法における、原料熱可塑性エラストマー(B)の好ましい配合割合は、原料の総質量(100質量%)に対して、原料熱可塑性エラストマー(B)が5~40質量%であってもよく、原料熱可塑性エラストマー(B)が10~30質量%であってもよく、原料熱可塑性エラストマー(B)が15~25質量%であってもよい。
実施形態の樹脂組成物の製造方法における、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、原料熱可塑性エラストマー(B)との好ましい配合割合は、原料の総質量(100質量%)に対して、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が50~95質量%で、原料熱可塑性エラストマー(B)が5~40質量%であってもよく、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が70~90質量%で、原料熱可塑性エラストマー(B)が10~30質量%であってもよく、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が75~85質量%で、原料熱可塑性エラストマー(B)が15~25質量%であってもよい。
実施形態の製造方法において、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と原料熱可塑性エラストマー(B)とはこれらを溶融混練する前に、両者を予め混合装置でドライブレンドして、原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び原料熱可塑性エラストマー(B)を含む混合物を得てもよい。混合物としては、後述のポリアリーレンスルフィド樹脂粒子(a)及び熱可塑性エラストマー粒子(b)を含む混合物が挙げられる。該混合物を溶融混練装置に投入して溶融混練することは、前記熱可塑性エラストマー(B)を良好に分散できることから好ましい。
ここで原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と原料熱可塑性エラストマー(B)とを予めドライブレンドする方法は、ナウタミキサー、タンブラー、又はヘンシェルミキサーなどの混合装置を用いて混合する方法が挙げられる。例えばナウタミキサーを用いて混合する際の運転条件は、前記ナウタミキサー内部に設置されたスクリュウの自転回転数が50rpm~80rpmの範囲にあり、公転回転数が1.5rpm~2.5rpmの範囲にある回転数の運転条件が挙げられる。
前記原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、体積平均粒子径が1.0mm~3.0mmの範囲の粒径を有するポリアリーレンスルフィド樹脂粒子(a)であることが好ましい。前記ポリアリーレンスルフィド樹脂粒子(a)の体積平均粒子径が1.0mm以上の場合、該ポリアリーレンスルフィド樹脂粒子(a)が再凝集しにくく取り扱いが容易で、熱可塑性エラストマー粒子(b)と均一に混合し易い。また、該ポリアリーレンスルフィド樹脂粒子(a)の体積平均粒子径が3.0mm以下の粒子である場合、該熱可塑性エラストマー粒子(b)と均一に混合し易いため前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に与える強度改善効果が向上する。これらの中でも、体積平均粒子径が1.5mm~2.5mmの範囲にあるポリアリーレンスルフィド樹脂粒子(a)であることがより好ましい。
前記した体積平均粒子径が1.0mm~3.0mmの範囲にあるポリアリーレンスルフィド樹脂粒子(a)は、例えば、以下の(イ)又は(ロ)の方法によって製造できる。(イ)前記した前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の重合終了後、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の反応溶液を冷却し、次いで水または温水で数回洗浄した後に乾燥して得られた、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の粒子を、ベルトプレス装置等のプレス機を用いて圧縮固着することにより板状の固形物を得、次いで粉砕して体積平均粒子径が1.0mm~3.0mmの範囲にあるポリアリーレンスルフィド樹脂粒子(a)を得る方法。
(ロ)前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の重合終了後、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の反応溶液を冷却する前の、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が反応溶媒に溶解した状態で水を添加し、体積平均粒子径が1.0mm~3.0mmの範囲にあるポリアリーレンスルフィド樹脂粒子(a)を得る方法。
実施形態の製造方法で用いることのできる、原料熱可塑性エラストマー(B)は、その体積平均粒子径が0.1mm~3.0mmの範囲にある熱可塑性エラストマー粒子(b)であることが好ましい。該熱可塑性エラストマー粒子(b)の体積平均粒子径が0.1mm以上の場合、該熱可塑性エラストマー粒子(b)の比表面積が小さくなり、該熱可塑性エラストマー粒子(b)の再凝集が発生し難く取り扱いが容易になり、所定配合量の前記熱可塑性エラストマー粒子(b)の配合が容易になる。一方、前記熱可塑性エラストマー粒子(b)の体積平均粒子径が3.0mm以下の粒子である場合、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)に対し均一混合することが容易になり、該ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に与える強度改善効果が良好に発現される。前記した体積平均粒子径のなかでも、前記熱可塑性エラストマー粒子(b)の作業上の取り扱いの容易性、均一混合の容易性、及び耐衝撃性や曲げ強度が改善される効果の各効果のバランスの点から、前記熱可塑性エラストマー粒子(b)の体積平均粒子径は、特に0.3mm~2.0mmの範囲にあることが好ましい。
前記した、体積平均粒子径が0.1mm~3.0mmの範囲にある粒子径を有する前記熱可塑性エラストマー粒子(b)を製造する方法は、3.0mmを超える体積平均粒子径を有する熱可塑性エラストマー粒子を、切断機を用いて細かく切断して製造する方法、あるいは前記の体積平均粒子径が3.0mmを超える粒子径を有する熱可塑性エラストマー粒子を凍結粉砕する方法を挙げることができる。凍結粉砕の方法は、ドライアイスあるいは液体窒素等で凍結させた後、通常のハンマータイプ粉砕機、カッタータイプ粉砕機あるいは石臼型の粉砕機等を用いて粉砕する方法が挙げられる。前記した方法のなかでも、前記熱可塑性エラストマー粒子(b)を容易に製造することができる点から、凍結粉砕して該前記熱可塑性エラストマー粒子(b)を製造する方法が好ましい。
更に、実施形態の製造方法では、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、加工熱安定剤、可塑剤、離型剤、着色剤、滑剤、耐候性安定剤、発泡剤、防錆剤、ワックス等の添加剤を適量添加してもよい。これらの添加剤の配合時期は特に限定されないが、前記ナウタミキサーにより前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)とがドライブレンドされるときに配合されることが好ましい。
更に実施形態の製造方法では、更に、要求される特性に合わせて、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)に該当しないその他の樹脂成分を適宜配合してもよい。その他の樹脂成分の配合時期は特に限定されないが、前記ナウタミキサーにより前記原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と前記原料熱可塑性エラストマー(B)とがドライブレンドされるときに配合されることが好ましい。
実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法において、前記フィラーを用いる場合には、前記フィラーは前記2軸押出機のサイドフィーダーから該押出機内に投入することが前記フィラーの分散性が良好となる点から特に好ましい。かかるサイドフィーダーの位置は、前記2軸押出機のスクリュウ全長に対する、押出機樹脂投入部から該サイドフィーダーまでの距離の比率が、0.1~0.6の範囲にあることが好ましく、これらの中でも0.2~0.4の範囲にあることが特に好ましい。
実施形態の製造方法における押出機による溶融混練は、シリンダー内壁に対するスクリュウ回転より生じるせん断速度が1000~6500s-1の条件で溶融混練することが好ましく、前記せん断速度が1500~4800s-1の条件で溶融混練することがより好ましく、前記せん断速度が1700~4000s-1の条件で溶融混練することがさらに好ましい。
ここで、せん断速度は以下の式で求めた値とする。
せん断速度(γ)=[π×a×(N/60)]/H
[aはスクリュウ径(mm)、Nはスクリュウ回転数(rpm)、Hはチップクリアランス(mm)、即ち、長径a(スクリュウ径a)の位置のクリアランスを表す。スクリュウ回転数Nは秒換算とするため60で除している。]
上記のせん断速度は、ニーディングゾーンにおける値であることが好ましく、前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンにおける値であることがより好ましい。
ニーディングゾーンにおけるせん断速度は、例えば、スクリュウ径aやチップクリアランスHの値を変えることで、任意に調整できる。
せん断速度が速いほど、一次分散相の平均分散径が小さく、反応層の平均厚さが薄くなる傾向にあり、上記下限値以上のせん断速度で混練を行うことで、分散性の良好な樹脂組成物が得られ、また二次分散相の効率的な形成にも寄与するものと考えられ、実施形態の樹脂組成物の発揮する耐衝撃性を向上させることができる。
また、上記上限値以下のせん断速度で混練を行うことで、熱可塑性エラストマー(B)の劣化や低分子化を防止できるとともに、反応層の平均厚さを良好なものとでき、実施形態の樹脂組成物の耐衝撃性をより一層向上させることができる。
実施形態の製造方法において、上記せん断速度を生じさせる押出機のスクリュウ回転数の一例としては、330~2000rpmであってよく、500~1500rpmであってよく、970~1250rpmであってよい。
また、実施形態の製造方法における押出機による溶融混練は、前記押出機のシリンダーの全長に対して3/15以上の長さの領域で、前記シリンダーの設定温度が300℃未満であることが好ましく、220℃以上300℃未満であることが好ましく、230℃以上295℃以下であることがより好ましく、250℃以上290℃以下であることがさらに好ましく、260℃以上285℃以下であることが特に好ましい。
前記シリンダーの設定温度とは、前記シリンダーを覆うバレルの設定温度を例示できる。
設定温度を上記数値範囲内とする“低温領域”を設けることで、樹脂組成物の熱劣化の防止と、熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相の分散性の向上とが両立され、実施形態の樹脂組成物の耐衝撃性を更に向上させることができる。
上記の観点から、低温領域はある程度の長さ(3/15以上)を確保することが好ましい。一方、低温領域の長さに上限値を設け、低温領域とする領域の他に、低温領域よりも高温の“高温領域”を設けることも、樹脂組成物のシャルピー衝撃値をより向上させることができることから、好ましい。
上記低温領域は、前記押出機のシリンダーの全長に対して3/15以上の長さの領域であってよく、3/15以上15/15以下の長さの領域であってよく、4/15以上13/15以下の長さの領域であってよく、5/15以上12/15以下の長さの領域であってよい。
上記低温領域は、連続であっても、不連続であってもよい。上記低温領域が不連続である場合には、低温領域に該当する領域の合計の長さを低温領域として採用することができる。
上記低温領域は、連続した領域であることが好ましい。上記低温領域は、前記押出機のシリンダーの全長に対して連続する3/15以上の長さの領域であってよく、連続する3/15以上15/15以下の長さの領域であってよく、連続する4/15以上13/15以下の長さの領域であってよく、連続する5/15以上12/15以下の長さの領域であってよい。
なお、シリンダーの全長部分には、押出機のダイス及びヘッド部分は含まれないものとする。
低温領域の長さに上限値を設ける場合、残りのシリンダーの領域では、低温領域におけるバレルの設定温度300℃未満の所定の設定数値を超える、任意の値の温度を設定することができる。
例えば、前記押出機のシリンダーの全長に対して3/15以上の長さの領域で、前記シリンダーの設定温度が300℃未満の低温領域としてもよく、その残りの高温領域でシリンダーの設定温度を300℃以上370℃以下としてもよく、
前記押出機のシリンダーの全長に対して3/15以上の長さの領域で、前記シリンダーの設定温度が230℃以上295℃以下の低温領域としてもよく、その残りの高温領域でシリンダーの設定温度を295℃超360℃以下としてもよく、
前記押出機のシリンダーの全長に対して3/15以上の長さの領域で、前記シリンダーの設定温度が250℃以上290℃以下の低温領域としてもよく、その残りの高温領域でシリンダーの設定温度を290℃超340℃以下としてもよく、
前記押出機のシリンダーの全長に対して3/15以上の長さの領域で、前記シリンダーの設定温度が260℃以上285℃以下の低温領域としてもよく、その残りの高温領域でシリンダーの設定温度を285℃超320℃以下としてもよい。
或いは、前記押出機のシリンダーの全長に対して3/15以上の長さの領域で、前記シリンダーの設定温度が300℃未満の低温領域であるとき、その残りの高温領域でのシリンダーの設定温度は、例えば、300℃以上370℃以下であってよく、300℃以上360℃以下であってよく、300℃以上340℃以下であってよく、300℃以上320℃以下であってよい。
シリンダーの設定温度に温度差を設ける場合、シリンダーの設定温度を220℃以上とした領域において、シリンダーの設定温度の最高値と最低値との温度差は、一例として10~150℃であってよく、30~120℃であってよく、50~100℃であってよい。
低温領域におけるシリンダーの設定温度の最高値と、高温領域におけるシリンダーの設定温度の最低値との温度差は、一例として5~150℃であってよく、7~100℃であってよく、10~30℃であってよい。
また、低温領域内においても温度差を設けてもよい。低温領域内においても温度差を設ける場合、シリンダーの設定温度を220℃以上とした領域において、低温領域におけるシリンダーの設定温度の最高値と最低値との温度差は、一例として5~80℃であってよく、10~70℃であってよく、20~60℃であってよい。
このように、溶融混練における温度にシリンダーの領域によって温度差を設ける形態について、興味深いことに、樹脂組成物の原料が投入される上流側(シリンダーの全長を2等分した場合の原料投入口側のシリンダーの領域)のほうに低温領域を設けたほうが、実施形態の樹脂組成物の耐衝撃性の向上について、より効果的なものとすることができる。
例えば、前記押出機のシリンダーの全長を15等分割したとき、樹脂組成物の配合成分が投入される原料投入口側(上流側)から数えて、少なくとも3/15~5/15番目の領域を含むよう上記低温領域を設定してもよく、少なくとも2/15~6/15番目の領域を含むよう上記低温領域を設定してもよく、少なくとも1/15~7/15番目の領域を含むよう上記低温領域を設定してもよい。
押出機の上流側を上記低温領域としたほうがよい理由としては、以下が推察される。押出機前半部はポリマーの溶融時には吸熱ではあるのだが、原料の混ざり合う位置であるため、それ以上に摩擦による発熱が生じる領域でもあると考えられる。したがって、原料投入口側である上流側の領域における温度を下げる方向とすることで、樹脂組成物の熱劣化が抑制され、その結果シャルピー衝撃値の向上に寄与するものと考えられる。
上記のせん断速度において混練を行った場合、せん断発熱により、実際のシリンダー内温度は、その設定温度よりも上昇する傾向にある。
上記低温領域における、シリンダー内で混練される混練物温度の最高値は、250℃以上320℃未満であることが好ましく、270℃以上315℃以下であることがより好ましく、280℃以上310℃以下であることがさらに好ましい。
シリンダー内で混練される混練物温度の最高値は、上記高温領域におけるものであってよく、315℃超400℃以下であることが好ましい。熱可塑性エラストマーの劣化を効果的に抑制するとの観点からは、315℃以上350℃以下であることがより好ましく、315℃以上330℃以下であることがさらに好ましい。
前記押出機は、スクリュウ長(L)/スクリュウ径(a)の値が40~200であることが好ましく、50~150であることがより好ましく、70~120であることがさらに好ましい。上記L/aの値が上記下限値以上であると混練時の温度制御が容易であって優れた耐衝撃性を示すポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が容易に得られる。上記L/aの値が上記上限値以下であると、樹脂組成物の製造の効率に優れる。
前記二軸押出機での溶融混練の運転条件は、樹脂成分の吐出量(kg/h)とスクリュウ回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュウ回転数)が、好ましくは0.001~0.01(kg/h・rpm)、より好ましくは0.002~0.009(kg/h・rpm)、さらに好ましくは0.003~0.005(kg/h・rpm)となる条件下で溶融混練する方法が挙げられる。かかる条件下に製造することによって、前記連続相中の一次分散相の分散性がより良好なものとなる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<原料>
・ポリフェニレンスルフィド(DIC株式会社製、MA-520)
・ポリエチレン系エラストマーA(住友化学社製、ボンドファーストBF-7L)
・ポリエチレン系エラストマーB(住友化学社製、ボンドファーストBF-7M)
・ポリエチレン系エラストマーC(住友化学社製、ボンドファーストBF-E)
上記のポリエチレン系エラストマーの原料として使用される各モノマーの割合を以下に示す。値は、ポリエチレン系エラストマーの原料として使用されるモノマーの総質量に対する各モノマー量(質量%)である。
Figure 0007440051000006
本実施例における二軸押出機のバレルの設定温度は、C2以降のバレル温度を全て300℃に設定する条件(パターンa-1)と、赤外線温度センサIRを用いて押出機内流路4ヶ所の樹脂温度を実測し、センサIR1、IR2の実測温度が310~315℃の範囲となる条件(パターンf-1~f-4)との、大きく分けて2種類とした。
バレルの設定温度パターンを表2に示す。バレルの設定温度とは、バレルを包むヒーター(カートリッジ型)の設定温度であり、C1の「常温」は温度を設定していない。
Figure 0007440051000007
<樹脂組成物の製造(1) ~エラストマー20質量%~>
[実施例1]
ポリフェニレンスルフィド樹脂MA-520(80質量部)と、ポリエチレン系エラストマーA(20質量部)とを混合後、二軸押出機に投入した。
図6は、使用した二軸押出機の構成を説明する模式図である。二軸押出機は、シリンダー内径D=15.5mm、シリンダー長さとスクリュウ径の比(シリンダー長さ/スクリュウ径)90、吐出量3kg/h、バレル数15(15等分割されたバレルを原料供給側から吐出側に向かいC1~C15とする)の同方向回転二軸押出機を用い、C4、C7、C10、C12位置がニーディングゾーン(KZ1~KZ4)となるスクリュウ構成とした。
上記のニーディングゾーンのうちの、KZ1およびKZ2のニーディングゾーンでは、ブロック長をシリンダー内径と同一の1Dとしたとき、長径a(スクリュウ径a)が0.97D(15mm)、短径bが0.67D(10.4mm)である略楕円状のニーディングディスクが、ブロックの長さ方向に均等な厚さT(2.14mm)で7枚配置された7枚羽のニーディングディスクを有するニーディングブロックを、C4およびC7の位置に、それぞれ4個ずつ連続して配置した。
残りのKZ3およびKZ4のニーディングゾーンでは、シリンダー内径D=15.5mmであり、ブロック長が1Dとしたとき、長径a(スクリュウ径a)が0.97D(15mm)、短径bが0.67D(10.4mm)である略楕円状のニーディングディスクが、ブロックの長さ方向に均等な厚さT(3mm)で5枚配置された5枚羽のニーディングディスクを有するニーディングブロックを、C10およびC12の位置に、それぞれ4個ずつ連続して配置した。
実施例1における、KZ1およびKZ2のニーディングゾーンの、スクリュウ径a(mm)に対するニーティングディスク(攪拌羽)1枚あたりの厚さT(mm)(T/a)は、0.143である。
スクリュウの全長において、当該ニーディングゾーン(KZ1およびKZ2)の占める割合は、スクリュウ径aに対して8倍の長さである。
スクリュウの全長において、当該ニーディングゾーン(KZ1およびKZ2)の占める割合は、スクリュウの全長100%に対し8.9%の長さである。
表2に示すC2~C15のバレルの設定温度(℃)の設定温度パターンをf-1とし、表3に示す各条件で、上記のポリフェニレンスルフィド樹脂と、ポリエチレン系エラストマーAとを溶融混練し、ダイスから出たストランドを冷却してカッティングし、実施例1のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[実施例2]
スクリュウ回転数を表3に記載のとおりの回転数に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[実施例3]
エラストマー種およびバレルの設定温度パターンを表3に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例3のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[実施例4]
エラストマー種を表3に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例4のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[比較例1]
実施例1において、二軸押出機の上記のニーディングゾーンのうちの、KZ1およびKZ2のニーディングゾーンで、シリンダー内径D=15.5mmであり、ブロック長が1Dとしたとき、長径a(スクリュウ径a)が0.97D(15mm)、短径bが0.67D(10.4mm)である略楕円状のニーディングディスクが、ブロックの長さ方向に均等な厚さT(3mm)で5枚配置された5枚羽のニーディングディスクを有するニーディングブロックを、C4およびC7の位置に、それぞれ4個ずつ連続して配置した以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
比較例1における、KZ1およびKZ2のニーディングゾーンの、スクリュウ径a(mm)に対するニーティングディスク(攪拌羽)1枚あたりの厚さT(mm)(T/a)は、0.2である。
[比較例2]
バレルの設定温度パターンおよびスクリュウ回転数を表3に記載のとおりに変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、比較例2のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[比較例3]
エラストマー種、バレルの設定温度パターンおよびスクリュウ回転数を表3に記載のとおりに変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、比較例3のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
Figure 0007440051000008
<樹脂組成物の製造(2) ~エラストマー30質量%~>
[実施例5]
実施例1において、原料の配合割合を、ポリフェニレンスルフィド樹脂MA-520(70質量部)と、ポリエチレン系エラストマーA(30質量部)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例5のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[実施例6]
エラストマー種およびバレルの設定温度パターンを表4に記載のとおりに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行い、実施例6のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[実施例7]
エラストマー種を表4に記載のとおりに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行い、実施例7のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[実施例8]
実施例7において、二軸押出機の上記のニーディングゾーンのうちの、KZ1およびKZ2のニーディングゾーンで、シリンダー内径D=15.5mmであり、ブロック長が1Dとしたとき、長径a(スクリュウ径aが0.97D(15mm)、短径bが0.67D(10.4mm)である略楕円状のニーディングディスクが、ブロックの長さ方向に均等な厚さT(1.7mm)で9枚配置された9枚羽のニーディングディスクを有するニーディングブロックを、C4およびC7の位置に、それぞれ4個ずつ連続して配置した以外は、実施例7と同様の操作を行い、実施例8のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
実施例8における、KZ1およびKZ2のニーディングゾーンの、スクリュウ径a(mm)に対するニーティングディスク(攪拌羽)1枚あたりの厚さT(mm)(T/a)は、0.11である。
当該ニーディングゾーン(KZ1およびKZ2)の占める割合は、スクリュウ径aに対して8倍の長さである。
当該ニーディングゾーン(KZ1およびKZ2)の占める割合は、スクリュウの全長(100%)に対し8.9%の長さである。
[比較例4]
比較例1において、原料の配合割合を、ポリフェニレンスルフィド樹脂MA-520(70質量部)と、ポリエチレン系エラストマーA(30質量部)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、比較例4のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[比較例5]
スクリュウ回転数を表4に記載のとおりに変更した以外は、比較例4と同様の操作を行い、比較例5のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
Figure 0007440051000009
<樹脂組成物の製造(3) ~エラストマー10質量%~>
[実施例9]
実施例3において、原料の配合割合を、ポリフェニレンスルフィド樹脂MA-520(90質量部)と、ポリエチレン系エラストマーB(10質量部)に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、実施例9のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[実施例10]
バレルの設定温度パターンを表5に記載のとおりに変更した以外は、実施例9と同様の操作を行い、実施例10のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[実施例11]
実施例10において、二軸押出機のニーディングゾーンのうちの、KZ1およびKZ2のニーディングゾーンで、実施例8と同じく9枚羽のニーディングディスクを有するニーディングブロックを、C4およびC7の位置に、それぞれ4個ずつ連続して配置した以外は、実施例10と同様の操作を行い、実施例11のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[比較例6]
比較例1において、原料の配合割合を、ポリフェニレンスルフィド樹脂MA-520(90質量部)と、ポリエチレン系エラストマーA(10質量部)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、比較例6のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[比較例7]
実施例9において、スクリュウ回転数を表5に記載のとおりに変更し、更に、二軸押出機のニーディングゾーンのうちの、KZ1およびKZ2のニーディングゾーンで、ニーティングディスクを有さず、切欠のスクリュウ形状を有するニーディングブロックを、C4およびC7の位置に、それぞれ4個ずつ連続して配置した以外は、実施例9と同様の操作を行い、比較例7のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
[比較例8]
エラストマー種およびバレルの設定温度パターンを表5に記載のとおりに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行い、実施例6のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを得た。
Figure 0007440051000010
<評価・測定>
[せん断速度]
ニーディングゾーンがニーディングディスクを有する場合(比較例7以外)、ニーディングゾーンの、せん断速度を以下の式により求めた。
せん断速度(γ)=[π×a×(N/60)]/H
[aはスクリュウ径(mm)、Nはスクリュウ回転数(rpm)、Hはチップクリアランス(mm)、即ち、長径a(スクリュウ径a)の位置のクリアランスを表す。スクリュウ回転数Nは秒換算とするため60で除している。]
なお、各実施例及び比較例では、ニーディングゾーンKZ1~KZ4で、同一の長径aを有するニーディングディスクを用いており、KZ1からKZ4までの全てのニーディングゾーンのせん断速度が同一の値である。
[一次分散相の平均分散径]
測定対象の樹脂組成物を成形材料として、射出成形機により、ISO 3167タイプAの多目的試験片(成形物)を成形した。次に該多目的試験片を長さ方向の中心位置で切断して切断面を研磨し、キシレン中に浸し、50℃の温度条件で超音波処理を実施し、断面にある熱可塑性エラストマー(B)を含む分散物をキシレン抽出にて取り除いた。その後130℃で2時間乾燥し、断面をSEMで観察し画像を取得した。熱可塑性エラストマー(B)を含む分散物が取り除かれた箇所は空隙相となり、明度が低い黒色の円状に表示される。画像解析ソフト(ImageJ)により、画像視野内に認められる当該黒色の円状物の円面積相当径(円状物の面積に相当する真円の直径を求めた値)を全て(n=300個以上)計測し、円状物の個数で割った平均値を一次分散相の平均分散径とした。
[一次分散相の分散径の粒度分布幅]
(D84-D16)/2で求められる値を一次分散相の分散径の分布幅とした。
D16の値は、前記一次分散相の平均分散径を求める際に得た全粒子数を基準とした粒度分布において、径の小さい側からの累積16%の値である径とした。
D50の値は、前記一次分散相の平均分散径を求める際に得た全粒子数を基準とした粒度分布において、径の小さい側からの累積50%の値である径とした。
D84の値は、前記一次分散相の平均分散径を求める際に得た全粒子数を基準とした粒度分布において、径の小さい側からの累積84%の値である径とした。
[分散径が200nm以上である前記一次分散相の割合]
前記一次分散相の平均分散径を求める際に得た全粒子数を基準とした粒度分布において、前記分散径が200nm以上である一次分散相の割合を算出した。
表中の一次分散相の粒度分布(%)の項目中の「下限値-上限値(μm)」の表記は、下限値以上、上限値未満の該当割合を意味する。
[反応層の平均厚さ]
測定対象の樹脂組成物を成形材料として、シリンダー設定温度300℃、金型設定温度130℃の条件にて射出成形機で成形し、前記樹脂組成物からなる長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を得た。この試験片をクライオミクロトームにより100nmの厚さに切削して得られた薄膜片を、50℃のキシレン中に30分浸漬させ、断面にある熱可塑性エラストマーを含む分散物をキシレン抽出にて取り除いた。得られた薄膜片を銅メッシュ上に載せ、STEM-EDS分析により、熱可塑性エラストマーを含む分散物が取り除かれた分散物の粒子跡が5個以上入るよう、40000倍の倍率で観察画像を得た。また、元素分析により硫黄、酸素、窒素、及び炭素の検出を行った。1試料につき4ヶ所測定し、無作為に選定した20個以上の分散物の粒子跡の観察画像を取得し、元素分析結果を得た。得られた観察画像から炭素、酸素、硫黄を対象としたマッピングを行った。ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂部分では、硫黄に対して酸素の検出量が少ないが、分散物の粒子跡のPPS樹脂との境界面には、硫黄に対して酸素の検出量が相対的に多い領域(酸素原子の質量%が、硫黄原子の質量%に対する比で2以上)が存在し、この領域を、反応層の存在位置とした。
また、取り除かれた分散物の粒子跡部分の、元素(例えば、硫黄や酸素)が検出されない領域を、一次分散相の存在位置とした。
図10に、キシレン抽出により熱可塑性エラストマーを含む分散物を取り除いた面の、STEM-EDS分析により得られた測定対象試料の観察画像の一例を示す(測定対象試料の配合は、ポリフェニレンスルフィド樹脂MA-520(90質量部)、ポリエチレン系エラストマーA(10質量部))。
マッピングで得られた観察画像から、画像解析ソフト(ImageJ)を用い、一次分散相及び反応層を含む粒子面積と、反応層を含まない一次分散相の面積を算出した。それぞれの面積を真円換算した円面積相当径(直径)を求め、その差(一次分散相及び反応層の円面積相当径-一次分散相の円面積相当径)を2で除した値の平均値を、反応層の平均厚さとした。
[二次分散相の含有割合]
樹脂組成物のペレット(円柱状、切断面の直径2.7±0.3mm、長さ3.0±0.2mm)を5g計り取り、プレス温度300℃、プレス圧力×時間:0.5MPa×2分の後5MPa×2分の条件で、厚さ0.5mmのフィルム状となるよう円柱の側面方向から加熱プレスを実施した。得られたフィルムを15mm角に切り取り、金属試料板に固定し透過用試料台に取り付けて測定した。
X線回折装置(SmartLab、リガク製)を用い、測定条件:USAXS法2θ=0~1.0°、step=0.001°測定モード:ステップ、計測時間:6秒の条件にて透過測定を行った。
得られた2θの散乱強度の結果から、粒子解析ソフト(Nano-Solver3)を用い、散乱体となるドメインモデルを球状ドメインとし、粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、粒径分布モデルによるフィッティングにより粒径分布の解析を行った。粒径(nm)を指標とする分布において2つの分布(分布1、分布2)のピークの有無を確認し、粒径の大きなほうの分布を分布1とし、粒径の小さなほうの分布を分布2とした。分布1および分布2に対して算出される粒子の体積の総和を100体積%として、分布1に対して算出される粒子の含有率(体積%)と、分布2に対して算出される粒子の含有率(体積%)とを求めた。
分布1に対して算出される粒子の含有率(体積%)を、前記一次分散相の体積および前記二次分散相の体積の総和100体積%とした。ここで算出される分布1の体積は、包含される二次分散相を含めた一次分散相と反応層との境界部分よりも内側の体積%に相当すると考えられる。
分布2に対して算出される粒子の含有率(体積%)を、前記一次分散相の体積および前記二次分散相の体積の総和100体積%に対する、二次分散相の含有割合とした。
[シャルピー衝撃試験]
測定対象の樹脂組成物を成形材料として、シリンダー設定温度300℃、金型設定温度130℃の条件にて射出成形機で成形し、前記樹脂組成物からなる長さ80mm×幅10.0mm×厚さ4.0mmの試験片を得た。次にISO 2818に従って試験片にノッチ(B:8mm)を切削し、ISO 179-1に従い試験を行い、23℃におけるノッチ付のシャルピー衝撃値(kJ/m)を得た。
上記の測定結果を表3~5に示す。
図9に、USAXS分析に用いた実施例1の測定対象試料の観察画像を示す。各実施例において、連続相、一次分散相、および一次分散相内の二次分散相の存在が確認できた。
また図10のSTEM-EDS分析結果の画像に示されるように、各実施例において、連続相と一次分散相が存在していた跡の境界の界面に、反応層の存在が確認できた。
なお、図10においては、分散物をキシレン抽出にて取り除いているため、本来は存在してもよい一次分散相および二次分散相の部分は取り除かれている。
表3における比較例1~3と実施例1~4との対比、表4における比較例4~5と実施例5~8との対比、及び表5における比較例6~9と実施例9~11との対比によれば、スクリュウ構成が7枚羽又は9枚羽であって、T/aが0.09~0.19のニーディングゾーンを備える条件にて製造された各実施例においては、一次分散相及び反応層の部分の平均分散径に対する前記反応層の部分の平均厚さの比率が0.15~0.22の範囲内であり、高いシャルピー衝撃値を示し、耐衝撃吸収性に優れた樹脂組成物が得られた。
このように、前記反応層の部分の平均厚さの比率が上記範囲内であると、界面剥離を起因とするクラック発生が抑制されるうえ、二次分散相の効率的な形成の点からも有利となり、耐衝撃性の吸収に優れる樹脂組成物が得られたものと推測される。
また、スクリュウ構成が7枚羽又は9枚羽であって、T/aが0.09~0.19のニーディングゾーンを備える条件にて製造された各実施例においては、USAXS分析により測定された、一次分散相の体積および二次分散相の体積の総和100体積%に対する二次分散相の含有割合が、8体積%以上80体積%以下であり、高いシャルピー衝撃値を示し、耐衝撃吸収性に優れた樹脂組成物が得られた。
このように、一次分散相であるエラストマー内にPPS樹脂が二次分散相として多く含まれることで、エネルギーを試験片に加えた際、微細な空隙が発生し易くなり、エラストマーを含む一次分散相とPPS樹脂連続相との界面近傍や、エラストマー以外の二次分散相とエラストマーを含む一次分散相との界面近傍で、クレイズやせん断降伏を起こし、耐衝撃性の吸収に優れる樹脂組成物が得られたものと推測される。
また、実施例1~4の樹脂組成物では、比較例1~2の樹脂組成物に比べ、一次分散相の分散径の、(D84-D16)/2で表される粒度分布幅が小さいものであった。さらには、実施例1~4の樹脂組成物では、比較例1~2の樹脂組成物に比べ、一次分散相の分散径の粒度分布において、前記分散径が200nm以上である前記一次分散相の占める割合が18%以下と低く抑えられていた。
このような、分散粒子の均一化および粗大粒子の低減により、エラストマー間の距離が近くなることにより、衝撃が与えられた際にPPS樹脂とエラストマー界面よりクレイズが発生するものの、クラックに変わる前のクレイズ形成にまでに留まることでエネルギー吸収能を保持し、耐衝撃性をより一層向上させる効果が認められたと考えられる。
また、例えば、実施例3と4との対比、実施例6と7との対比、実施例9と10との対比によれば、設定温度パターンf-1(押出機のシリンダーの全長に対して3/15以上の長さの領域で、前記シリンダーの設定温度が300℃未満である設定温度パターン)の製造条件を採用した実施例のほうが、高いシャルピー衝撃値を示しており、耐衝撃吸収性に更に優れた樹脂組成物が得られていた。
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
101,102,103…ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物
1…連続相
10…一次分散相
20…二次分散相
30…反応層
d…一次分散相及び反応層の部分の平均分散径
30d,30d’…反応層の厚さ
100…二軸押出機
11…駆動装置
12…フィーダー
13…シリンダー
14…スクリュウ
19…ダイス
IR1…第1赤外線温度センサ
IR2…第2赤外線温度センサ
IR3…第3赤外線温度センサ
IR4…第4赤外線温度センサ
KZ1…第1ニーディングゾーン
KZ2…第2ニーディングゾーン
KZ3…第3ニーディングゾーン
KZ4…第4ニーディングゾーン
5,5’…ニーディングエレメント
51…ニーディングディスク
T…攪拌羽厚さ
a…スクリュウ径

Claims (8)

  1. ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を含む連続相と、
    前記熱可塑性エラストマー(B)を含む一次分散相と、
    前記連続相と前記一次分散相との界面に、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び前記熱可塑性エラストマー(B)の反応物を含有する反応層と、
    を有し、
    前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径に対する前記反応層の部分の平均厚さの比(前記反応層の部分の平均厚さ/前記一次分散相及び前記反応層の部分の平均分散径)が0.15~0.22である、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、
    原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、原料熱可塑性エラストマー(B)と、を押出機によって溶融混練する工程を含み、
    前記押出機のスクリュウはニーディングゾーンを備え、前記ニーディングゾーンは、複数個の攪拌羽を有し、前記ニーディングゾーンの前記スクリュウのスクリュウ径aに対する前記攪拌羽1枚あたりの厚さT(T/a)が0.09~0.19である、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  2. 前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンの長さが、前記スクリュウ径aに対して0.5a~20aの長さである、請求項に記載の製造方法。
  3. 前記押出機のシリンダーの全長に対して3/15以上の長さの領域で、前記シリンダーの設定温度が300℃未満である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記T/aが0.09~0.19であるニーディングゾーンのシリンダー内壁に対する前記スクリュウのスクリュウ回転より生じるせん断速度が1000~6500s-1である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  5. 前記原料ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、カルボキシル基を分子構造中に有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
  6. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、下記構造式(1)で表される構造部位を繰り返し単位として有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
    Figure 0007440051000011
    (式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、又はエトキシ基を表す。)
  7. 前記原料熱可塑性エラストマー(B)が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである、請求項1又は2に記載の製造方法。
  8. 前記原料熱可塑性エラストマー(B)が、エポキシ基を分子構造中に有するグリシジル変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーである、請求項1又は2に記載の製造方法。
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