JP7439791B2 - 分散液、形成物の製造方法、分散液の使用方法及び分散液の製造方法 - Google Patents

分散液、形成物の製造方法、分散液の使用方法及び分散液の製造方法 Download PDF

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Description

本明細書では、分散液、形成物の製造方法、分散液の使用方法及び分散液の製造方法を開示する。
従来、無機構造体としては、金属を含む繊維体が3次元的に連結している自立構造を備えた無機構造体であって、半チューブ型のナノワイヤーが3次元的に連結した柔軟性を有する不織布構造を有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この無機構造体では、不織布に金属元素を物理蒸着させ、不織布を除去することによって、無機構造体を得ることができる。
国際公開第2019/049996号
しかしながら、特許文献1の無機構造体では、無機構造体の製造自体は容易であるが、対象物の表面に無機構造体を形成しようとした場合、例えば、無機構造体を水溶液などに浮かべてすくい取ることによって無機構造体を転写することが挙げられるが、簡便な方法ではなかった。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、金属元素を含む自立構造を備えた無機構造体を対象物の表面により容易に形成することができる新規な分散液、形成物の製造方法、分散液の使用方法及び分散液の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、得られた不織布構造を有する無機構造体を解砕し、溶媒に分散させたのち、この分散液を対象物の表面に噴霧乾燥すると、より容易に対象物の表面にコートできることを見出し、本開示の分散液、形成物の製造方法、分散液の使用方法及び分散液の製造方法を完成するに至った。
即ち、本開示の分散液は、
金属元素を含む繊維体及び/又はシェルが連結した自立構造を有し、そのサイズが1000μm以下である無機構造体粒子と、
前記無機構造体粒子を分散する溶媒と、
を備えたものである。
本開示の形成物の製造方法は、
無機構造体粒子で表面が被覆された形成物の製造方法であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載の分散液を対象物の表面に形成乾燥し該対象物の表面を前記無機構造体粒子で被覆させる被覆工程、を含むものである。
本開示の分散液の使用方法は、
無機構造体粒子で対象物の表面を被覆させる分散液の使用方法であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載の分散液を対象物の表面に形成乾燥し該対象物の表面を前記無機構造体粒子で被覆させるものである。
本開示の分散液の製造方法は、
基材の表面に金属元素を含む層を蒸着して得られた該金属元素を含む繊維体及び/又はシェルが連結した自立構造体を1000μm以下の無機構造体粒子に解砕する解砕工程と、
前記無機構造体粒子を分散する溶媒に分散させる分散工程と、
を含むものである。
本開示では、金属元素を含む自立構造を備えた無機構造体粒子を対象物の表面により容易に形成することができる新規な分散液、形成物の製造方法、分散液の使用方法及び分散液の製造方法を提供することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、ナノ構造を有する無機構造体は、ナノ粒子が連結した自立膜であるが、粒子同士が連結しているため、従来のナノ粒子粉末とは異なり、飛散の心配がなく安全性が高い。また、自立構造体であるため、取り扱いが容易である。しかし、複雑な凹凸のあるような構造の立体物に自立構造体を転写する場合、自立構造体が破れないように転写するなど工夫が必要であった。本開示では、ナノ構造を有する自立構造体をミクロスケールまで解砕して溶媒に分散させて分散液とし、これを形成乾燥することで、複雑な立体物の表面にも無機構造体をより容易に被覆させることが可能となった。即ち、金属元素を含む自立構造体を解砕した無機構造体粒子を分散した分散液を対象物の表面に形成乾燥するという容易な方法で、対象物の表面を無機構造体で被覆させることができる。
無機構造体粒子20の構成の概略の一例を示す説明図。 分散液30と、無機構造体粒子20を対象物41へ形成する一例の説明図。 本開示の無機構造体(不織布構造)の製造方法の模式図。 IrO2ナノワイヤー不織布(実験例3)の作製手順を示す説明図。 実験例1~3の観察結果。 実験例3、4の観察結果。 基材の不織布及び不織布除去前の実験例5~11の無機構造体の写真。 水中での実験例5~11の不織布構造を有する無機構造体の写真。 実験例5~11の光学顕微鏡写真。 実験例12の不織布構造を有する無機構造体の写真。 無機構造体を用いたタンパク質の回収方法の説明図。 Niナノ粒子を用いたタンパク質の回収方法の説明図。 Hisタグの有無によるタンパク質回収前後の吸収スペクトル。 PVP8質量%ナノワイヤー不織布の繊維径分布図及びSEM写真。 PVP16質量%ナノワイヤー不織布の繊維径分布図及びSEM写真。 水電解試験に用いる電解セル50の説明図。 実験例13,14及び参考例1の酸素発生反応分極曲線。 実験例15~17、参考例2のUV-Visスペクトル。 実験例15~17、参考例2の疑似太陽光照射下における温度測定結果。 水蒸発速度測定装置60の説明図。 実験例17の時間に対する水蒸発量の関係図。 実験例3の無機構造体を解砕分散する一例の説明図。 実験例3の無機構造体粒子の観察結果。
[分散液]
以下、本開示の一実施形態について図面を用いて説明する。本明細書で説明する本開示の分散液は、無機構造体粒子と、溶媒とを備えている。
無機構造体粒子は、金属元素を含む繊維体及び/又はシェルが連結した自立構造を有する。また、無機構造体粒子は、そのサイズが1000μm以下であるものとする。この無機構造体粒子において、繊維体やシェル(殻)は、金属元素を含むナノ粒子の凝集体からなるものとしてもよい。この無機構造体粒子は、金属元素を含むナノ粒子の凝集体からなるシェルが3次元的に連結している自立構造を備えた無機ナノ構造ファブリックとしてもよい。ここで、「ナノ粒子」とは、粒径が1nm以上10nm以下である粒子をいう。ナノ粒子は、結晶質であっても良く、あるいは、非晶質であってもよい。このナノ粒子の材料は特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
この無機構造体粒子は、例えば、典型金属、貴金属、遷移金属のうち1以上を含むものとする。典型金属としては、例えば、Sn、Al、Mg、Ti、V、Znのうち、1以上が挙げられる。このうち、Snが導電性が高く好ましい。また、貴金属としては、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru及びOsのうち1以上が挙げられる。また、遷移金属としては、例えば、Cu、Fe、Co、Ni、Mn、Moのうち、1以上が挙げられる。このうち、Cuが導電性が高く好ましい。この無機構造体粒子は、Pt、Au、Ag、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Cr及びZnのうち1以上の金属元素を含むことが好ましい。
無機構造体粒子は、金属元素を含む純金属のほか、合金、酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、リン化物、ヨウ化物などのうち1以上を含むものとしてもよい。金属を含む合金としては、例えば、Pt-Fe合金、Pt-Ni合金、Pt-Co合金、Ir-Fe合金、Ir-Co合金、Ir-Ni合金などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化イリジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化コバルトなどが挙げられる。金属硫化物としては、例えば、硫化イリジウム、硫化銅、硫化鉄、硫化ニッケル、硫化コバルト、硫化モリブデンなどが挙げられる。金属窒化物としては、例えば、窒化銅、窒化鉄、窒化ニッケル、窒化マンガン、窒化コバルトなどが挙げられる。金属炭化物としては、例えば、炭化イリジウム、炭化ケイ素、炭化鉄、炭化銅、炭化コバルト、炭化マンガンなどが挙げられる。金属リン化物としては、例えば、リン化イリジウム、リン化鉄、リン化銅、リン化コバルト、リン化マンガンなどが挙げられる。金属ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化イリジウム、ヨウ化鉄、ヨウ化銅、ヨウ化コバルト、ヨウ化マンガンなどが挙げられる。無機構造体粒子は、これらのいずれか1種のナノ粒子を含むものでもよく、あるいは、2種以上を含むものでもよい。
本開示の「繊維体」とは、例えば、繊維を基材としその表面に形成され、繊維に基づく形状を有しているものをいう。繊維体としては、例えば、チューブ型や半チューブ型のナノワイヤーなどが挙げられる。この繊維体は、例えば、その太さ(直径)が200nm以下であるものとしてもよい。また、この繊維体は、粒子の突起構造を実現する観点からは、その太さが1μm以下であるものとしてもよい。また、本開示の「シェル」とは、厚さ方向(z軸方向)の寸法に比べて、水平方向(x軸方向及び/又はy軸方向)の寸法が大きいシート状(殻状)の構造物をいう。「ナノ粒子の凝集体からなるシェル」とは、シェルの厚さ方向(z軸方向)の寸法が有限の値を持つことをいい、必ずしも厚さ方向に複数個のナノ粒子が積層していることを意味しない。すなわち、シェルは、ナノ粒子がx-y平面上に並んだ1層のナノ粒子層からなる場合と、2層以上のナノ粒子層の積層体からなる場合とを含む。
無機構造体粒子は、樹脂を含む基材表面に金属材料を形成することにより作製されるものとしてもよい。この無機構造体では、基材の表面形状に倣うように、繊維体やシェルが形成される。基材表面が微視的に見て平坦である場合、シェルも微視的には平坦となる。しかし、基材の表面には、通常、微視的又は巨視的な凹凸があり、且つ物理蒸着時に元素の回り込みが起こるため、繊維体やシェルは微視的又は巨視的に湾曲している部分を有する。無機構造体粒子は、樹脂からなる基材表面に金属材料を物理蒸着させることにより形成されるものとしてもよい。この無機構造体粒子では、基材表面が微視的及び巨視的に見て単一面からなる場合、単一のシェルからなる場合がある。一方、ナノワイヤー不織布のように、基材表面が複数の曲面の集合体からなる場合、無機構造体は、通常、曲面状の表面を持つ複数個の繊維体の集合体からなる。
無機構造体粒子は、繊維体やシェルが3次元的に連結している自立構造を備えている。「自立構造」とは、ハンドリングが可能な程度の強度を持つ構造をいう。「繊維体やシェルが3次元的に連結している」とは、無機構造体の厚さ方向(z軸方向)の寸法が有限の値を持つことをいい、必ずしも無機構造体が複数個の繊維体やシェルの結合体であることを意味しない。すなわち、無機構造体は、単一の繊維体やシェルからなる場合と、複数個の繊維体やシェルが3次元的に結合している結合体である場合を含む。この無機構造体は、巨視的に見て平坦な面(曲率半径が無限大である面)を持つ構造だけでなく、湾曲している面を持つ構造も含まれる。
無機構造体粒子において、自立構造は、表面に直径が3nm以上10nm以下の金属材料の突起構造を備えているものとしてもよい。例えば、樹脂の基材表面に金属材料を物理蒸着すると、基材表面に多数のナノ粒子の核が生成し、粒成長する。物理蒸着をさらに続行すると、繊維体やシェルの表面において、さらにナノ粒子の核生成及び粒成長が繰り返される。その結果、繊維体やシェルの表面にナノ粒子からなる突起構造が形成される。「突起構造」とは、角錐、円錐等の錘状の外形を持つ突起物をいう。「突起構造の直径」とは、突起の最大直径(例えば、円錐の場合は、底面の直径)をいう。突起構造の直径及び数は、蒸着条件により制御することができる。一般に、直径の小さな突起構造の数が多くなるほど、無機構造体の比表面積が大きくなる。蒸着条件を最適化すると、繊維体やシェルの表面に、ナノ粒子からなり、かつ、直径が3nm以上10nm以下である突起構造を形成することができる。
この無機構造体粒子は、樹脂からなり自立構造(繊維体やシェル)の少なくとも一部を支持する支持部をさらに備えていてもよい。無機構造体粒子において、樹脂からなる基材表面に金属材料を形成させたあと、基材を除去するものとしてもよいし、この基材を部分的に残存させてもよい。但し、必要以上に樹脂が残存していると、樹脂/ナノ粒子界面が相対的に多量に残存し、ナノ粒子の利用率が低下する場合がある。高い利用率を得るためには、樹脂の残存率は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下である。ここで、「樹脂の残存率」とは、次の式(1)で表される値をいう。但し、W0は、物理蒸着直後の無機構造体の単位面積当たりの質量、Wは、樹脂を溶解可能な溶媒を用いて鋳型に用いた樹脂を除去した後の無機構造体の単位面積当たりの質量、Wmは、無機構造体を構成する蒸着材料の単位面積当たりの質量である。なお、Wmは、物理蒸着量から見積もることができる。
樹脂残存率=(W-Wm)×100/(W0-Wm) ・・・(1)
無機構造体粒子は、使用する基材の構造に応じて、種々の形態をとる。例えば、基材としてナノワイヤー不織布を用い、かつ、不織布の片面から金属材料を物理蒸着させた場合、自立構造として半チューブ型のナノワイヤーからなる繊維体が3次元的に連結している不織布構造(ナノ構造布)が得られる。一方、基材としてナノワイヤー不織布を用い、かつ、不織布の両面から金属又は無機材料を物理蒸着させた場合、自立構造としてチューブ型のナノワイヤーからなる繊維体が3次元的に連結している不織布構造が得られる。「不織布構造」とは、基材が不織布であり、この基材の不織布の構造に倣った形状を有する構造をいうものとする。
無機構造体粒子が繊維体からなる場合、この繊維体には、基材の繊維が除去されたあとの基材空間が形成されている。繊維体の平均直径は、例えば、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、100nm以上であるものとしてもよい。この繊維体の平均直径は、例えば、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であるものとしてもよい。このとき、基材空間の直径、即ち、基材繊維の平均直径は、例えば、5nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましく、80nm以上であるものとしてもよい。この基材空間の平均直径は、例えば、180nm以下であることが好ましく、120nm以下であることがより好ましく、80nm以下であるものとしてもよい。あるいは、繊維体の平均直径は、例えば、200nm以上であることが好ましく、300nm以上であることがより好ましく、500nm以上であるものとしてもよい。この繊維体の平均直径は、例えば、800nm以下であることが好ましく、600nm以下であることがより好ましく、500nm以下であるものとしてもよい。このとき、基材空間の平均直径は、例えば、180nm以上であることが好ましく、280nm以上であることがより好ましく、480nm以上であるものとしてもよい。この基材空間の平均直径は、例えば、780nm以下であることが好ましく、580nm以下であることがより好ましく、480nm以下であるものとしてもよい。基材繊維の平均直径は、繊維体の平均直径を決定する主因子であり、より細ければ無機構造体粒子の表面積を増加することができる。基材繊維の平均直径や繊維体の平均直径は、使用する用途に応じて適宜選択することができる。例えば、触媒として利用する場合はより質量を減らすべく、より薄くより細いものが好ましく、電池材料として利用する場合は、より厚くより太いものが好ましい。繊維体を構成するナノ粒子の大きさが3nm~4nmとすると、繊維体は、基材繊維(基材空間)に対して6nm以上を加えた平均直径とすることができる。なお、繊維体の断面が三日月形状など、一部欠けた形状である場合、繊維体の直径は、欠けた部分を含めて円形状にした疑似円の直径をいうものとする(図1の直径D参照)。この平均直径は、SEMで所定視野(例えば5視野)観察し、各繊維の直径を求め、その平均値から求めるものとする。
あるいは、基材として、細孔を有する樹脂多孔膜を用いて、基材の表面に金属材料を物理蒸着させた場合、細孔を有するシェルが3次元的に連結している多孔膜構造が得られる。「多孔膜構造」とは、基材が多孔膜であり、この基材の多孔膜の構造に倣った形状を有する構造をいうものとする。この自立構造は、細孔の曲率半径が20nm以上200nm以下の範囲であるものとしてもよい。
この無機構造体粒子において、自立構造は、柔軟性を有するものとしてもよい。例えば、無機構造体が金属や合金で形成されるものとすれば、金属や合金のように、柔軟性を有するものとすることができ、取り扱いをより容易にできる。
無機構造体粒子は、そのサイズが1000μm以下であるが、例えば、平均サイズが750μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、350μm以下であるものとしてもよい。また、無機構造体粒子のサイズは、ナノ構造が保持されるような大きさであることが好ましく、例えば、平均サイズが10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であるものとしてもよい。この無機構造体粒子のサイズは、粒子を観察したときの最長長さをその粒子のサイズとするものとする。また、平均サイズは、複数の粒子を観察したサイズの平均値とする。
溶媒は、無機構造体粒子を分散する液体である。この溶媒は、分散液の使用時に速やかに揮発するものが好ましく、例えば、有機溶媒や水などが挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノールやエタノール、プロパノールなどを含むアルコール類や、ベンゼンやフェノール、イミダゾールなどを含む芳香族類、ヘキサンやシクロヘキサンなどを含む炭化水素類、アセトンあジエチルケトンなどを含むケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、クロロホルムなどのハロゲン化アルキル類などが挙げられる。このうち、水が環境保全的により好ましい。
分散液は、無機構造体粒子の含有量が1質量%以上、90質量%以下の範囲としてもよい。分散液はその固形物の含有量が製造時と同じであってもよいし、製造後に溶媒を加えて希釈されてもよいし、製造後に溶媒を除去して濃度を高めるものとしてもよい。この無機構造体粒子の含有量は、例えば、5質量%以上50質量%以下の範囲が扱いやすく好ましい。また、分散液は、その使用時の固形物の濃度が5質量%以上30質量%以下の範囲としてもよい。例えば、分散液を噴霧乾燥して使用する場合は、5質量%以上30質量%以下の範囲が好ましい。
分散液には、その他の添加成分を含まないものとしてもよいし、添加成分を含むものとしてもよい。ナノ構造を有する無機構造体粒子では、添加剤を含まなくても、対象物の表面に強固に付着することができ、また、分散剤を含まなくても、各粒子が凝集せずに分散することができる。添加成分としては、例えば、結着材、分散剤、安定剤などが挙げられる。結着材としては、例えば、セルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体などを用いることができる。分散剤としては、例えば、イオン性界面活性剤や、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。イオン性界面活性剤は、例えば、カルボン酸塩や硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン性界面活性剤や、アミン塩や四級アンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤などが挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール誘導体や多価アルコール誘導体、ポリエチレンイミン誘導体などが挙げられる。安定剤は、例えば、分散液の粘度を調整する増粘剤などが挙げられる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。分散液に含まれる添加成分の含有量は、例えば、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下としてもよい。
図1は、無機構造体粒子20の構成の概略の一例を示す説明図である。図2は、分散液30の説明図であり、スプレー本体40により無機構造体粒子20を対象物41へ形成する一例の説明図である。この無機構造体粒子20は、繊維体21が3次元的に連結している自立構造を備えている。この繊維体21には、基材の繊維が除去されたあとの基材空間22が形成されている。また、繊維体21を拡大すると、その表面に直径が3nm以上10nm以下の突起構造23が形成されている。この繊維体21や突起構造23は、貴金属、典型金属及び遷移金属のうち少なくとも1以上を含むナノ粒子24の凝集体により構成されている。このような構造を有する無機構造体粒子20では、柔軟性を有し、取り扱いしやすく、更に表面積が大きくナノ粒子の利用率をより高めることができる。この無機構造体粒子20のサイズDsは、上述したように、1000μm以下である。分散液30は、図2に示すように、無機構造体粒子20と溶媒31とを含む。この分散液30は、例えば、スプレー本体40に収容されて、対象物41に対して噴霧、乾燥して用いるものとしてもよい。なお、分散液30は、対象物41の表面を無機構造体粒子20で被覆するものとすれば特に噴霧乾燥に限定されず、対象物41に塗布して使用するものとしてもよい。
(分散液の製造方法)
次に、分散液の製造法について説明する。この製造方法は、上述した分散液を製造する方法である。この製造方法は、構造作製工程と、解砕工程と、分散工程とを含むものとしてもよい。なお、この製造方法において、無機構造体を別途作製して準備するものとして、無機構造体を作製する構造作製工程を省略するものとしてもよい。
(構造作製工程)
構造作製工程では、上述した自立構造体としての無機構造体を作製する処理を行う。この工程では、基材の表面に金属元素を含む層を形成してこの金属元素を含む繊維体及び/又はシェルが連結した自立構造体を得る形成処理と、形成した自立構造体から基材を除去する除去処理とを含むものとしてもよい。無機構造体は、そのサイズが1000μmを超える大きさを有するものとしてもよく、例えば、そのサイズが5cm以上であるシート状であることが好ましい。この工程では、解砕工程の前に、基材の表面に金属元素を含む層を蒸着してこの金属元素を含む繊維体及び/又はシェルが連結した自立構造体を得るものとしてもよい。また、この処理では、樹脂により形成された基材としての不織布の片側の表面に金属元素を含む層を蒸着したのち、樹脂を溶解することにより半チューブ型の繊維体が3次元的に連結した、金属元素を含む柔軟性を有する自立構造体としての不織布構造体を得るものとしてもよい。このとき、基材としての樹脂は、例えば、樹脂を溶解する溶媒を用いて液中で溶解するものとしてもよい。あるいは、この処理では、樹脂により形成された基材としての不織布の両側の表面に金属元素を含む層を蒸着したのち、樹脂を除去することによりチューブ型の繊維体が3次元的に連結した、金属元素を含む柔軟性を有する自立構造体としての不織布構造体を得るものとしてもよい。このとき、基材としての樹脂は、例えば、樹脂を酸素雰囲気中で加熱し、除去するものとしてもよい。このような処理を行うことによって、例えば、図1に示すような構造を有する自立構造体を得ることができる。この工程では、直径が1nm以上10nm以下の金属元素を含むナノ粒子によって形成されている自立構造体を作製するものとしてもよい。
基材には、樹脂が用いられる。基材として樹脂を用いると、繊維体及び/又はシェルの形成時に基材表面において、ナノ粒子の核生成及び粒成長が比較的容易に進行する。基材に用いられる樹脂の組成は、特に限定されない。但し、基材の除去を容易化するためには、基材は、溶媒可溶性の樹脂が好ましい。溶媒可溶性の樹脂としては、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリレート、ポリプロピレンオキシドなどが挙げられる。
基材の構造は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な構造を選択することができる。本開示の無機構造体は、基材の表面形状が転写された構造を持つ。そのため、ナノサイズの構造を有する樹脂を基材に用いると、ナノサイズの構造を有する自立膜を製造することができる。基材としては、例えば、エレクトロスピニングなどにより作製したナノワイヤー不織布、曲率半径が20nm以上200nm以下である細孔を備えた多孔膜(いわゆる、「メンブレーンフィルタ」)、ポリスチレン粒子等からなるオパール構造を持つ多孔膜、などが挙げられる。基材に用いる樹脂製の不織布(基材不織布)は、電界紡糸により作製することができる。この基材不織布の繊維径は、例えば、上述した基材空間の直径の範囲とすることができる。基材不織布の繊維径は、例えば、電界紡糸に用いる溶液の樹脂濃度、電場、溶液の供給速度などにより調節することができる。
この工程において、繊維体及び/又はシェルの形成方法は、特に限定されないが、物理蒸着としてもよい。物理蒸着法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジション(PLD)法などがある。基材表面に金属及び/又は無機材料の物理蒸着を行う場合、物理蒸着は基材の片面から行ってもよく、あるいは、両面から行ってもよい。例えば、基材として樹脂製のナノワイヤー不織布を用いる場合において、ナノワイヤー不織布の片面のみから物理蒸着を行うと、半チューブ型のナノワイヤーからなる金属製又は無機材料製の不織布構造が得られる。半チューブ型のナノワイヤーは、チューブ型のナノワイヤー又はロッド型のナノワイヤーに比べて比表面積が大きい。そのため、例えば、これを触媒反応デバイスの触媒層に適用した場合には、金属及び/又は無機材料の利用率を高めることができる。物理蒸着の条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。一般に、蒸着時間が長くなるほど、繊維体及び/又はシェルの厚さを厚くすることができる。また、物理蒸着法は、蒸着量を原子レベルで制御可能である。そのため、蒸着条件を最適化すると、シェルの表面に直径が3nm以上10nm以下である突起構造を形成することもできる。
この工程では、金属元素を含む金属材料として、例えば、貴金属、典型金属、遷移金属及びそれらの合金のうち1以上を用いることができる。また、無機材料として、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属炭化物、金属リン化物、若しくは、金属ヨウ化物のうち1以上を用いることができる。貴金属としては、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru及びOsのうち1以上が挙げられる。また、典型金属としては、例えば、Sn、Al、Mg、Ti、V、Znのうち1以上が挙げられる。また、遷移金属としては、例えば、Cu、Fe、Co、Ni、Mn、Moのうち1以上が挙げられる。この工程では、Pt、Au、Ag、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Cr及びZnのうち1以上の金属元素を含む自立構造体を作製するものとしてもよい。
例えば、Hisタグタンパク質を選択的に回収する無機構造体を作製する際には、金属としてCu、Ni、Zn及びCoのうち1以上を用いることができる。回収材として用いる金属としては、CuやNiが好ましい。水を電気分解する触媒材としての無機構造体を作製する際には、Pt、Au、Ag、Ru及びIrのうち1以上を用いることができる。水電解に用いる金属としては、Irが好ましく、酸化イリジウムがより好ましい。また、水電解に用いる無機構造体では、繊維体の平均径を200nm以上とすることが好ましく、300nm以上とすることがより好ましく、400nm以上とすることが更に好ましい。また、水電解に用いる無機構造体では、繊維体の平均径を800nm以下とすることが好ましく、700nm以下とすることがより好ましく、600nm以下とすることが更に好ましい。平均径が200nm以上800nm以下の範囲では、水電解の電位をより低減することができ好ましい。光を吸収し熱へ変換する光熱変換材としての無機構造体を作製する際には、金属としてAg及びCuのうち1以上を用いることができる。光熱変換材の作製では、Agを用いるものとしてもよいし、Cuを用いるものとしてもよいが、AgとCuとを用いることがより好ましい。特に、光熱変換材の作製では、Ag層とCu層とが重なり合う複層構造を形成することがより好ましい。この光熱変換材の作製では、Ag層及びCu層の複層構造を2層以上形成することが好ましく、3層以上形成することがより好ましい。この複層構造は3層以上あれば十分な光熱変換特性を発揮することができる。
除去処理では、基材表面にシェルを形成した後、基材の全部又は一部を除去する処理を行う。基材は、その全部を除去してもよく、あるいは、一部を除去してもよい。基材/ナノ粒子界面の量を低減するためには、基材の全部を除去するのが好ましい。基材の除去方法は、特に限定されるものではなく、基材の種類に応じて最適な方法を選択することができる。例えば、基材として溶媒可溶性の樹脂を用いた場合、溶媒を用いて基材を除去するのが好ましい。各種樹脂を溶解可能な溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、NaBH4溶液(溶媒:水とエタノールの1対1混合液)、クロロホルム、アセトン、メタノール、エタノール等のアルコール類、水、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ニトロメタンなどが挙げられる。
図3は、無機構造体(不織布構造)の作製工程の模式図であり、図3Aが直径100~200nmであるPVPナノワイヤーからなる不織布の模式図である。このような不織布を基材として用い、例えば、触媒として機能する金属又は無機材料(以下、「触媒材料」ともいう)を基材表面に物理蒸着させると、図3Bに示すように、基材の表面に触媒材料からなるシェルが形成された複合体が得られる。さらに、得られた複合体からPVPナノワイヤーを除去すると、図3Cに示すように、実質的に触媒材料のみからなるナノワイヤーが3次元的に連結している不織布構造体が得られる。この時、物理蒸着の条件を最適化すると、数ナノサイズの突起がナノワイヤー表面に形成される。
樹脂からなる基材表面に金属材料を物理蒸着すると、基材表面に多数のナノ粒子の核が生成し、粒成長する。その結果、基材表面に、ナノ粒子の凝集体からなる繊維体やシェルが形成される。物理蒸着をさらに続行すると、繊維体やシェルの表面において、さらにナノ粒子の核生成及び粒成長が繰り返される。その結果、繊維体やシェルの表面に、直径が1~10nmであるナノ粒子からなる突起構造が形成される。得られた繊維体やシェルは、3次元的に連結しているため、基材を除去しても自立構造は維持される。このようにして得られた無機構造体は、実質的に基材/ナノ粒子界面が存在しない。そのため、これを例えば燃料電池の触媒層に適用すると、触媒金属の利用率が向上する。また、ナノ粒子の回収、洗浄、及び乾燥の工程が不要であり、またナノ粒子を液相合成する場合のようなナノ粒子を安全に取り扱う設備が不要であるので、従来の方法に比べて容易に作製することができる。
従来のナノ触媒材料はナノ粒子と支持体との界面が存在しており、界面近傍に存在するナノ粒子は触媒反応に寄与しない。これに対し、本開示の無機構造体は、支持体がなくともそれ自体で自立しているため、ナノ粒子と支持体との界面が存在しない。このため、これを触媒として用いると、反応面積のロスが少ない。また、細孔の曲率半径が20~200nmの樹脂メンブレーン、又は、直径が20~200nmのナノワイヤーを鋳型として使用することで、このような構造が転写された無機構造体を得ることができる。また、スパッタなどの物理成膜プロセスは、蒸着量を原子レベルで制御可能であることから、最表面に直径3~10nm程度の突起構造を形成することもできる。さらに、得られた無機構造体は均質性が高く、その製造プロセスもインクプロセスに比べて非常に簡便である。
自立している基材の表面にスパッタ法などの物理蒸着法を用いて、目的の金属材料を含む繊維体やシェルを作製することで、その下地の構造を模倣した自立膜が得られる。また、基材を取り除くことで、反応を阻害する部材がなくなり、金属材料の表面が顕わになる。そのため、高い比表面積が得られ、単位質量当たりの機能活性を高めることができる。さらに、結晶性を有する樹脂からなり、かつナノスケールの曲面を有している基材の表面に金属材料を物理蒸着した場合、金属材料からなる直径が数ナノメートルの突起が基材表面に対して垂直に成長する。このような構造を備えた無機構造体は、高い比表面積、すなわち高い反応面積を有する表面を提供できる。
(解砕工程)
解砕工程では、基材の表面に金属元素を含む層を蒸着して得られた金属元素を含む繊維体及び/又はシェルが連結した自立構造体である無機構造体を1000μm以下の無機構造体粒子に解砕する処理を行う。解砕する方法は、特に限定されないが、例えば、乾燥状態で行ってもよいし、溶媒中で行ってもよい。この解砕処理では、例えば、ブレンダーによる混合粉砕、乳鉢粉砕、ボールミル粉砕などが挙げられる。このうち、ブレンダーによる溶液中での粉砕が好ましい。この方法では、無機構造体を温和な条件で解砕することができ、比較的大きな鱗片状の粒子が得られる。解砕条件としては、例えば、上述した濃度で溶媒に無機構造体を浸漬させ、5分以上48時間以下の範囲で、解砕処理を行うものとしてもよい。解砕時の固形物濃度は、より大きい方が好ましく、30質量%以上80質量%以下の範囲が好ましい。
(分散工程)
分散工程では、無機構造体粒子を溶媒に分散させる処理を行う。この分散工程は、例えば、解砕工程と同時に行うものとしてもよい。この場合、自立構造体を溶媒に浸漬した状態で無機構造体粒子へ解砕すると共に、この溶媒に無機構造体粒子を分散させるものとすればよい。分散工程では、無機構造体粒子と溶媒とを混合するものとすればよい。また、分散工程では、添加成分を添加しないものとしてもよいし、添加成分を添加するものとしてもよい。添加成分は、例えば、結着材や分散剤などが挙げられ、上記説明した条件や材料を適宜用いることができる。
(形成物の製造方法)
上述した分散液は、形成物の製造方法に用いることができる。ここで、形成物は、例えば、対象物の表面を無機構造体粒子で被覆したものとしてもよい。この無機構造体粒子で表面が被覆された形成物の製造方法は、上述した分散液を対象物の表面に形成乾燥し、この対象物の表面を無機構造体粒子で被覆させる被覆工程を含む。この被覆工程において、形成、乾燥を2回以上繰り返し行うものとしてもよい。また、この被覆工程において、分散液を対象物の表面に形成するに際して、分散液を対象物の表面に噴霧するものとしてもよい。この噴霧は、例えば、スプレー容器に分散液を入れ、このスプレー容器で分散液を噴霧するものとしてもよい。あるいは、この被覆工程では、分散液を対象物の表面に塗布するものとしてもよい。塗布の方法としては、例えば、スプレーのほかアプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いてもよい。
この形成物の製造方法において、例えば、その用途に関して、光触媒機能を有した金属・金属酸化物のナノ構造を有する無機構造体粒子を含む分散液をスプレーして得た抗菌シートとしてもよい。光触媒性を有する無機構造体粒子としては、例えば、酸化チタンや酸化タングステン、酸化亜鉛などのナノ構造を有する粒子が挙げられる。また、抗菌性能のある金属・金属酸化物のナノ構造を有する無機構造体粒子を含む分散液をスプレーして得た抗菌シートとしてもよい。抗菌性能を有する無機構造体粒子としては、例えば、AgやZn、Cu、Ni、Coなどのナノ構造を有する粒子が挙げられる。また、その他の機能を有した金属・金属酸化物のナノ構造を有する無機構造体粒子を含む分散液で作製した機能性シートとしてもよい。更に、対象物を無機構造体粒子で被覆した、触媒層、フィルタ、導電部材、タンパク質回収材及び光熱変換材のうち1以上としてもよい。より具体的には、例えば、無機構造体粒子の被覆を触媒層に用いた固体高分子形燃料電池や、無機構造体粒子を触媒層に用いた水電解装置、無機構造体粒子をフィルタに用いたろ過装置、無機構造体粒子を電極部材、集電部材、導電部材に用いた蓄電装置又は駆動装置、無機構造体粒子をタンパク質を選択的に回収する回収材として用いた分離回収装置、無機構造体粒子を光を吸収し熱へ変換する光熱変換材として用いた光熱変換装置、などが挙げられる。
例えば、上記無機構造体を固体高分子形燃料電池や水電解装置のような触媒反応デバイスの触媒層に使用する場合、集電体やセル構成は一般的なものを用いることができる。この場合、電解質膜の表面を無機構造体粒子で被覆してもよく、あるいは、金属多孔体などからなるガス拡散層の表面を被覆してもよい。また、上記無機構造体粒子を蓄電装置(二次電池など)の電極部材や集電部材に用いる場合、使用部位、例えば、活物質層の表面などを無機構造体粒子で被覆してもよい。また、上記無機構造体を駆動装置(モータなど)に用いる場合、使用部位の表面を無機構造体粒子で被覆してもよい。
また、タンパク質を選択的に回収する回収材に無機構造体を利用する場合、例えば、無機構造体粒子は、Cu、Ni、Cr及びZnのうち1以上を含み、Hisタグタンパク質を選択的に回収するものとしてもよい。このうち、CuやNiが好ましい。タンパク質およびペプチドを分離回収する文献として、例えば、BioMagnetic Research and Technology 04,2:7,Angew.Chem.Int.Ed.2004,43,3048-3050,J.AM.Chem.Soc.2006,128,10658-10659、などが報告されている。これらの文献に報告されたデバイスに比して、この無機構造体は、比表面積が大きいため回収効率がより高く、不織布状であるため柔軟性が高く取り扱いが容易であり、好ましい。また、上記文献では、磁力を用いて金属粒子を回収するものがあるが、この無機構造体は、例えば不織布状など形状を有するため、磁力による回収を要せず、磁性体以外の金属も利用可能である。
また、水を電気分解する触媒材として無機構造体を利用する場合、無機構造体粒子は、貴金属であるPt、Au、Ag、Ru及びIrのうち1以上を含むものとしてもよい。このうち、Irが好ましく、酸化イリジウムがより好ましい。水電解に関する文献としては、J.Phys.Cem.Lett.2012,3,399-404,J.Am.Chem.Soc.2013,135,16977-16987などが挙げられる。この無機構造体では、金属粒子の平均径が200nm以上であることが好ましく、300nm以上であることがより好ましく、400nm以上であることが更に好ましい。また、この平均径は、800nm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましく、600nm以下であることが更に好ましい。平均径が200nm以上800nm以下の範囲では、水電解の電位をより低減することができ好ましい。この水電気分解用触媒材は、無機構造体粒子で被覆した作用極と、作用極に対向する対極と、水溶液を収容する収容部とを備えるものとしてもよい。無機構造体粒子では、作用極への取り付け、取り外しが容易であり、取り扱いやすく好ましい。
また、光を吸収し熱へ変換する光熱変換材として無機構造体粒子を利用する場合、無機構造体粒子は、Ag及びCuのうち1以上を含むものとしてもよい。この無機構造体粒子は、Agを含むものとしてもよいし、Cuを含むものとしてもよいが、AgとCuとを含むことがより好ましい。光熱変換特性をより向上することができるからである。この無機構造体粒子は、例えば、Ag層とCu層とが重なり合う複層構造を有することがより好ましい。この複層構造は、2層以上あることが好ましく、3層以上あることがより好ましい。この複層構造は、3層以上あれば十分な光熱変換特性を発揮することができる。
また、上記光熱変換材を有する液体蒸発装置として無機構造体粒子を利用してもよい。液体蒸発装置は、無機構造体粒子の被覆層と、支持体と、収容部とを備えるものとしてもよい。無機構造体粒子は、光を吸収し熱へ変換する光熱変換材である。支持体は、吸水性及び断熱性を有し、第1面で無機構造体と接触すると共に第2面で収容部に収容された液体と接触する部材である。支持体は、液体上に浮かぶ部材であることが好ましい。この支持体としては、例えば、木材や発泡スチロール材などが挙げられる。この液体蒸発装置は、無機構造体で変換された熱によって液体を蒸発させる。また、この液体蒸発装置は、蒸発した液体を凝縮する凝縮部を有するものとしてもよい。この装置では、液体を蒸留することができる。液体蒸発装置に関する文献としては、Sci.Adv.08 Apr 2016,Vol.2,No4,e1501227,Nature Communications volume 5, Article number: 4449 (2014),Adv.Energy Materials,Vol.8,Issue 4,Feb.5,2018,1701028,Nature Photonics volume 10, pages 393-398 (2016)などが挙げられる。本開示のデバイスでは、ナノ構造を有する無機構造体粒子を用いることから、光熱変換効率が高く、取り扱いが容易であり、好ましい。
(分散液の使用方法)
次に、上述した分散液の使用方法は、例えば、無機構造体粒子で対象物の表面を被覆させる方法としてもよい。この使用方法は、例えば、上記分散液を対象物の表面に形成乾燥し、この対象物の表面を無機構造体粒子で被覆させる処理を行うものとしてもよい。この使用方法は、上述した形成物の製造方法と同様の処理を行うものとしてもよい。この分散液の使用方法を実行することにより、上述した形成物を製造することができる。
以上詳述した本開示では、金属元素を含む自立構造を備えた無機構造体粒子を対象物の表面により容易に形成することができる新規な分散液、形成物の製造方法、分散液の使用方法及び分散液の製造方法を提供することができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、ナノ構造を有する無機構造体は、ナノ粒子が連結がした自立膜であるが、粒子同士が連結しているため、従来のナノ粒子粉末とは異なり、飛散の心配がなく安全性が高い。また、自立構造体であるため、取り扱いが容易である。しかし、複雑な凹凸のあるような構造の立体物に自立構造体を転写する場合、自立構造体が破れないように転写するなど工夫が必要であった。本開示では、ナノ構造を有する自立構造体をミクロスケールまで解砕して溶媒に分散させて分散液とし、これを形成乾燥することで、複雑な立体物の表面にも無機構造体をより容易に被覆させることが可能となった。即ち、金属元素を含む自立構造体を解砕した無機構造体粒子を分散した分散液を対象物の表面に形成乾燥するという容易な方法で、対象物の表面を無機構造体で被覆させることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には自立構造を有する無機構造体粒子を溶媒に分散した分散液を具体的に作製した例を実験例として説明する。実験例1~17が本開示の実施例である。まず、無機構造体の作製について説明する。
[無機構造体の作製]
[実験例1,2]
PES製のメンブレーンフィルタ(商品名:ミリポアPES)を4cm角に切り出し、その表面に、スパッタ法を用いてPt膜を形成した(形成工程)。スパッタは、HITACHI社製MC1000イオンスパッタ装置を用い、メンブレーンフィルタの片側面に対してAr雰囲気中で行った。次いで、DMF及びNMPを用いてPESを除去し(除去工程)、Ptのみからなる自立構造を有する無機構造体を得た。これを実験例1とした。また、基材として、PVdF製のメンブレーンフィルタを用いた以外は、実験例1と同様にして、Ptのみからなる自立構造を有する無機構造体を得た。これを実験例2とした。
[実験例3]
図4は、IrO2ナノワイヤー不織布(実験例3)の作製手順を示す説明図である。まず、PVPの8質量%メタノール溶液を1kV/cmで電界紡糸することで、直径が100~200nmのPVP樹脂ナノワイヤーからなる不織布を作製した。図4Aは、作製したPVPナノワイヤー不織布の写真である。次に、このPVPナノワイヤー不織布の片側の表面に、スパッタ法を用いてIrO2膜を形成した。IrO2膜は、酸素5%-アルゴン95%雰囲気下において、Irをスパッタすることにより形成した。図4Bは、IrO2をスパッタしたPVPナノワイヤー不織布の写真である。また、図4C及び図4Dは、それぞれ、IrO2膜を形成したPVPナノワイヤーのSEM写真及び模式図である。
次に、得られた不織布を0.5MのNaBH4溶液(溶媒:水とエタノールの1対1混合液)に入れ、80℃で30分間攪拌することでPVPを除去し、IrO2ナノワイヤー不織布を得た。図4Eは、脱PVP処理のための攪拌過程を撮影した写真である。図4Fは、脱PVP処理後のIrO2ナノワイヤー不織布を水溶液に浮かべた様子を撮影した写真である。図4Gは、脱PVP処理後のIrO2ナノワイヤーの模式図である。脱PVP処理後、Ti板を用いてIrO2ナノワイヤー不織布を水面からすくい上げた。図4Hは、このようにして得られたIrO2/Ti板の写真である。
[実験例4]
PVPの4質量%メタノール溶液を1kV/cmで電界紡糸することで、直径が10~20nmのPVP樹脂ナノワイヤーからなる不織布を作製した。以下、このPVPナノワイヤー不織布を基材に用いた以外は実験例3と同様にして、IrO2ナノワイヤー不織布を得た。これを実験例4とした。
[評価]
作製した実験例1~4の無機構造体に対して、走査型電子顕微鏡(SEM,HITACHI社製FE5500)を用いて微細構造の観察を行った。図5は、実験例1~3の観察結果であり、図5Aが実験例1の低倍率SEM像、図5Bが実験例1の高倍率SEM像である。また、図5Cが実験例2の低倍率SEM像、図5Dが実験例2の高倍率SEM像である。また、図5Eが実験例3の低倍率SEM像、図5Fが実験例3の高倍率SEM像である。図5A~図5Dより、以下のことがわかった。上記作製方法によれば、樹脂からなるメンブレーンフィルタの細孔構造がそのまま転写され、柔軟性があるPtからなる自立構造を有する無機構造体が得られた。この無機構造体は、直径が3~10nmのPtナノ粒子の凝集体からなっていることがわかった。また、図5E及び図5Fに示すように、上記作製方法によれば、樹脂製の不織布のナノ構造がそのまま転写され、柔軟性があるIrO2ナノワイヤー不織布が得られることがわかった。また、このIrO2ナノワイヤー不織布構造は、直径が3~10nmのIrO2ナノ粒子の凝集体からなることがわかった。
図6は、実験例3、4の観察結果であり、図6AがIrO2ナノワイヤー不織布(実験例3)のスパッタ面及のSEM像であり、図6Bが実験例3のスパッタ面の裏面のSEM像である。また、図6Cが実験例3の低倍率STEM像であり、図6Dが実験例3の高倍率STEM像(拡大図)である。また、図6Eが実験例3の断面のSEM像を示す。また、図6Fが実験例2のSTEM像であり、図6Gが実験例4のSTEM像であり、図6Hが図6Fの一部を取り出して撮影したTEM像である。図6A~図6Eより、以下のことが分かった。実験例3では、樹脂不織布の一方の面からIrO2をスパッタしていることから、IrO2ナノワイヤーは、半チューブ状となっていた(図6A,6B,6E参照)。また、IrO2ナノワイヤーの表面には、直径が3~10nmのナノ粒子が連結した突起物が形成されていた(図6C,6D参照)。
また、図6Gに示すように、直径10~20nm程度の極細の樹脂ナノワイヤーを鋳型に用いた場合であっても、上記作製方法によれば、不織布構造を有する無機構造体を作製することができることがわかった。また、図6F,6Hより、以下のことが分かった。上記作製方法によれば、樹脂製のメンブレーンフィルタのナノ構造がそのまま転写された、直径が3~10nmであるPtナノ粒子からなる多孔膜構造の無機構造体が得られることがわかった。
[実験例5~11]
小型電界紡糸装置を用いて樹脂製不織布を作製し、小型卓上スパッタ装置(HITACHI社製MC1000イオンスパッタ装置)を用いてこの樹脂製不織布の表面に金属の自立構造を形成したのち、樹脂製不織布を除去し、無機構造体を得た。スパッタには、Pt、Au、Ag、Cu、Sn、Ru、Irの金属ターゲットを用い、得られた無機構造体をそれぞれを実験例5~11とした。テンプレートとして用いた直径100~200nmのPVPナノファイバー不織布は、PVPの10質量%メタノール溶液を1kV/cmで電界紡糸することで作製した。この表面に上記金属ターゲットでスパッタ蒸着したのち、鋳型として用いたPVPナノファイバー不織布を、0.5MのNaBH4溶液(溶媒:水とエタノールの1対1混合液)の中で30分撹拌することで除去した。なお、スパッタは、不活性雰囲気(Arガス)中で行った。
図7は、基材の不織布及び不織布除去前の実験例5~11の無機構造体の写真である。図8は、水中での実験例5~11の不織布構造を有する無機構造体の写真である。図9は、実験例5~11(図9A~9G)の光学顕微鏡写真である。図8は、水中にて不織布を除去したのちの無機構造体を撮影したものであり、水中にて一部がめくれた状態になっている。図7~9に示すように、貴金属としてのPt、Au、Ag、Ru、Irや、遷移金属としてのCu、典型金属としてのSnなど、各金属を用いても、柔軟性があり、不織布の自立構造を有する無機構造体を作製することができることがわかった。特に、貴金属や遷移金属においては、その触媒性能を利用したデバイスに利用可能であり、導電性の高い金属(例えばCuやSnなど)においては、蓄電装置や駆動装置の電極部材、集電部材、導電部材のデバイスに利用可能である。特に、上記無機構造体は、厚さが極めて薄く、柔軟性を有しているため、各種デバイスに利用しやすいメリットがある。
[実験例12]
実験例5と同様に、直径100~200nmのPVPナノファイバー不織布の表面に、Niターゲットを用いてNi膜を100nm厚でスパッタ蒸着した。この蒸着体を、水溶液に浸漬することで、ナノワイヤー不織布状のNi構造体(Niナノ構造布)を得た。図10は、実験例12の不織布構造を有する無機構造体の写真であり、図10Aが10mm角のNiナノ構造布を純水に浮かべた写真であり、図10BがNiナノ構造布のSEM写真である。図10に示すように、Niを用いても、柔軟性があり、不織布の自立構造を有する無機構造体を作製することができることがわかった。
(タンパク質の分離回収試験)
実験例12のNiナノ構造布を用いて、タンパク質(ペプチド)の分離回収を行うことを検討した。比較対象として、Niナノ粒子を用いたものを参考例1とした。Hisタグタンパク質は、CuやNi、Zn及びCoなどに吸着される特性を有する。この特性を用い、タンパク質を含む溶液に金属(構造体又は粒子)を加え、金属を除外した状態で溶液を分離することにより、目的のタンパク質を吸着した金属と、目的外タンパク質を含む溶液とを分離することができる。タンパク質の分離回収は、Hisタグを有する目的タンパク質と、Hisタグを有さない目的外タンパク質とを分離する試験を行った。図11は、無機構造体(Niナノ構造布)を用いたタンパク質の回収方法の説明図であり、図11Aがタンパク質を含む溶液中にNiナノ構造布を入れた図、図11BがNiナノ構造布を磁石で吸い寄せた図、図11Cが目的外タンパク質を含む溶液を分離する図、図11DがNiナノ構造布に新たな溶媒を加え目的タンパク質を再溶出する図である。図12は、Niナノ粒子を用いたタンパク質の回収方法の説明図であり、図12Aがタンパク質を含む溶液中にNiナノ粒子を入れた図、図12BがNiナノ粒子を磁石で吸い寄せた図、図12Cが図12Bで分離した溶液の図である。図12に示すように、Niナノ粒子を用いた場合は、目的タンパク質を吸着したNiナノ粒子を磁石を用いて除外し(図12B)、目的タンパク質をNiナノ粒子と共に回収することができる。しかしながら、分離液には、磁石に吸い寄せられないNiナノ粒子や、それに吸着した目的タンパク質も含むため、十分な分離を行うことができなかった。一方、Niナノ構造布を用いた場合は、まず、磁石を用いずにNiナノ構造布を回収することができ、更に、分離液にNiナノ粒子が残存することもなく、より簡便に、より確実に目的タンパク質を回収することができることがわかった。
次に、タンパク質の分離回収について確認した。Hisタグ含有タンパク質とHisタグのないタンパク質とを含む試料溶液と、Hisタグのないタンパク質のみを含む試料溶液とを用い、Niナノ構造布を用いた分離回収試験を行った(図11参照)。図13は、タンパク質回収前後の吸収スペクトルであり、図13AがHisタグ含有タンパク質を用いた吸収スペクトルであり、図13BがHisタグのないタンパク質を用いた吸収スペクトルである。吸収スペクトルは、Eppendorf社製BioSpectrometerを用い、250nm~350nmの波長範囲で分離前後の溶液を測定した。図13Bに示すように、Hisタグのないタンパク質溶液ではNiナノ構造布にタンパク質が吸着しないため、溶液中のペプチドの吸収量に変化はみられなかった。一方、図13Aに示すように、Hisタグ含有タンパク質を含む溶液ではNiナノ構造布にタンパク質が吸着することにより、分離液からHisタグ含有タンパク質が除去されるため、溶液中のペプチドが減少し、吸収スペクトルが減少した。このように、Niナノ構造布を浸漬し取り除くという簡便な作業によって、目的タンパク質を回収することができることが明らかとなった。また、Niナノ構造布をタンパク質の回収材として利用できることが明らかとなった。なお、Hisタグに限定されず、特定の金属に結合する構造を有するタンパク質を特定の金属の無機構造体を用いることにより本実施例と同様にタンパク質の分離回収を行うことができることが予想された。
[実験例13、14]
実験例5と同様に、PVPを含むメタノール溶液を電界紡糸してPVP不織布を作製し、IrO2のターゲットを用いてスパッタ処理を行い、IrO2ナノ構造布を作製した。PVPを8質量%含むメタノール溶液と、PVPを16質量%含むメタノール溶液と、をそれぞれ1kV/cmの電場及び1mL/hの液供給速度で電界紡糸してPVP不織布を得た。得られたIrO2ナノ構造布をそれぞれ実験例13,14とした。図14は、水電解用のPVP8質量%ナノワイヤー不織布の繊維径分布図及びSEM写真である。図15は、水電解用のPVP16質量%ナノワイヤー不織布の繊維径分布図及びSEM写真である。PVPを8質量%含むメタノール溶液では、平均繊維径が約300nmであり、図14に示すファイバー径分布を有する不織布が得られた。また、PVPを16質量%含むメタノール溶液では、平均繊維径が約500nmであり、図15に示すファイバー径分布を有する不織布が得られた。
(水電解試験)
実験例13、14のIrO2ナノ構造布を用いて、水の電解処理を検討した。比較対象として、バルクのイリジウム金属を参考例1とした。
図16に示す電解セル50を用いて水電解試験を行った。電解セル50は、作用極51と、対極52と、参照極53と、電解液を収容する収容部54を備えている。作用極51は、酸化イリジウムナノ構造布を転写したTi板(実験例13、14)及びバルクのイリジウム金属(参考例1)のいずれかとした。対極52は、Ptコイル線とした。参照極53は、可逆水素電極(RHE)とした。収容部54には、0.5MのH2SO4水溶液を充填した。作用極51では、酸化イリジウムナノ構造布、緻密膜、イリジウム金属(バルク)に含まれるイリジウム量を100μg/cm2とした。この電解セル50を用い、可逆水素電極を基準にして5mV/secの電位掃引速度で掃引し、酸素発生触媒能を調べた。図17は、オーミック抵抗分を考慮してプロットした実験例13,14及び参考例1の酸素発生反応分極曲線である。なお、図17には、作用極に用いたTi板の測定結果も示した。図17に示すように、参考例1のIr金属では10mA/cm2での電位が1.6Vを超えた。一方、酸化イリジウムナノ構造布を用いた実験例13、14においては10mA/cm2での電位がそれぞれ1.50V、1.54Vを示し、高い触媒活性が得られることがわかった。このように、ナノ構造布は、水電解の電位をより低下させることができ、比較的良好な触媒活性を有する緻密膜に対してもより高い触媒活性を示すことがわかった。
[実験例15~17]
PVPを8質量%含むメタノール溶液を電界紡糸して作製したPVP不織布を基材として、実験例5と同様に、Cuナノ構造布、Agナノ構造布及びAg-Cuナノ構造布を作製し、それぞれを実験例15~17とした。実験例17では、Agターゲットを用いPVP不織布上にAgを形成したのち、Cuターゲットを用い、先に形成したAg上にCuを形成するという処理を3回行った(3層構造)。
(光吸収特性評価)
実験例15~17のナノ構造布の光吸収特性を評価した。比較対象として、バルクのAg金属を参考例2とした。島津製作所製、紫外・可視・近赤外分光光度計UV-3600・ISR-3100により、200nm~850nmの波長域にて試料を測定することにより、光吸収特性を評価した。図18は、実験例15~17、参考例2のUV-Visスペクトルである。図18には、各構造布の写真を挿入した。図18に示すように、参考例2のバルクのAg金属に比べ、実験例15~17のナノ構造布は高い吸光度を示し、光吸収特性がより向上することが明らかとなった。なかでも、AgとCuとを積層堆積させて作製した実験例17のAg-Cuナノ構造布では、特に高い吸光度を示した。
(光熱変換特性評価)
次に、実験例15~17、参考例2の吸収した光を熱に変換する光熱変換特性を評価した。実験例15~17のナノ構造布に疑似太陽光を照射したときの温度をK型熱電対を用いて測定することによって、光熱変換特性を評価した。朝日分光製ソーラーシミュレーター(HAL-302)を用い、光強度1kW・m-2にて疑似太陽光照射を行った。図19は、実験例15~17、参考例2の疑似太陽光照射下における温度測定結果である。参考例2の測定結果は30℃であり、実験例15~17の測定結果は、それぞれ55℃、65℃及び73℃であった。図19に示すように、Agナノ構造布、Cuナノ構造布及びAg-Cuナノ構造布では、バルクAgに比べ高い温度を示し、Ag-Cuナノ構造布においては太陽光照射によって73℃まで加熱された。このように、ナノ構造布では、光熱変換特定がより高いことが明らかとなった。
(水の蒸発速度測定)
図20に示す水蒸発量測定装置60を用いて水の蒸発速度を測定した。水蒸発量測定装置60は、ナノ構造布61と、支持体62と、収容部63と、天秤64とを備えている。ナノ構造布61は、Ag及びCuのうち1以上を含み、光を吸収し熱へ変換する光熱変換材である。支持体62は、吸水性を有すると共に断熱性を有し、第1面でナノ構造布61と接触すると共に第2面で収容部63に収容された液体と接触する部材である。ここでは、支持体62は、発泡スチロール材とした。収容部63は、上面が開放された容器であり、液体(水)を収容する。天秤64は、収容部63を載置し、収容部63の質量を測定するものである。天秤64は、メトラー・トレド製XSE205DUVとした。この水蒸発量測定装置60のナノ構造布61に光を照射すると、ナノ構造布61が光を熱に変換し、支持体62から供給される水を蒸発させる。水蒸発量測定装置60では、天秤64により経時的に質量を測定することにより、水の蒸発量を測定することができる。図21は、Ag-Cuナノ構造布である実験例17の時間に対する水蒸発量の関係図である。実験例17では、1.4kg・m-2-1の蒸発速度が得られた。この蒸発速度は、過去に報告された文献(Sci.Adv.08 Apr 2016,Vol.2,No4,e1501227,Nature Communications volume 5, Article number: 4449 (2014),Adv.Energy Materials,Vol.8,Issue 4,Feb.5,2018,1701028,Nature Photonics volume 10, pages 393-398 (2016))による強度1kW・m-2(1sun)の太陽光照射により得られた1kg・m-2-1の蒸発速度よりも高い値であった。また、照射された太陽光が全て水の蒸発に利用されたと仮定した理論蒸発速度は、1.39~1.47kg・m-2-1に計算される。Ag-Cuナノ構造布は高い光熱変換特性を有することが明らかとなった。
[分散液の作製]
上述したように、ナノ構造を有する無機構造体は、様々な機能を発現することが明らかとなった。また、対象物へ無機構造体を転写する際に非常に熟練性を要したため、より容易に対象物の表面を無機構造体で被覆することができる方法について検討した。ここでは、その一例として、実験例3と同様の工程により作製した無機構造体を用いて、分散液を作製した。Au、Cu、Ir、Pt及びPt/TiO2を原料としてそれぞれ用い、0.1mg/cm2、面積25cm2の無機構造体を作製した。この無機構造体を500mLの水と共に、ブレンダー(カプセルカッター Belle Life 0.6L)に入れ、5分間撹拌し、シート状の無機構造体を粒子状に解砕し、溶媒である水に分散させた。得られた分散液をスプレーボトルに入れ、対象物に塗布、乾燥した。使用時の分散液の固形分は、5g/Lの濃度であった。
(結果と考察)
図22は、実験例3の無機構造体を解砕分散する一例の説明図であり、図22Aがブレンダーでの処理写真、図22Bが得られた分散液の写真、図22Cが分散液を噴霧する写真、図22Dが噴霧された対象物の写真である。ここでは、対象物の一例としてペーパーを示した。図22に示すように、ブレンダーで撹拌することによって、無機構造体粒子を分散させた分散液を簡便に得られることがわかった。図23は、上記作製した分散液から実験例3の無機構造体粒子を採取して観察した観察結果であり、図23Aが粒子の光学顕微鏡による低倍率写真、図23Bが高倍率写真、図23CがSEM写真、図23Dが解砕前の無機構造体シートの光学顕微鏡による低倍率写真、図23Eが高倍率写真である。図23に示すように、無機構造体粒子は、そのサイズが数100μm程度であり、図23D,Eに示す無機構造体シートの構造を保持していることが確認された。無機構造体粒子のサイズは、粒子の最長長さとした。この無機構造体粒子は、繊維体がシート状に形成された無機構造体シートを解砕したものであり、厚さに対して幅方向の長さが極端に大きい鱗片状の粒子からなるものであった。この分散液では、5視野で得られた無機構造体粒子の平均サイズは、200μmであった。なお、無機構造体粒子は、スプレーノズルのサイズよりも小さくなるよう解砕することが好ましいものと推察された。この分散液は、特別な結着材や分散剤、表面活性剤などの他の添加成分を含んでいないが、スプレー可能であった。また、対象物に噴霧乾燥したあとは、対象物の表面から容易には剥がれることはなかった。これは、ナノ構造を有する無機構造体粒子が対象物の表面に相互作用し、強固に結着するためであると推察された。このように、対象物へ結着させる成分などを含むことなく、対象物の表面を無機構造体粒子で被覆させることができることがわかった。なお、分散液は、結着材や分散剤、表面活性剤などの添加成分を含むものとしても、対象物の表面を被覆することが可能であることも、容易に予想された。このように、ナノ構造を有する無機構造体粒子をブレンダーで粉砕して溶媒に分散させて分散液を作製し、これを希釈してスプレーボトルに導入して吹き付けるという簡便な処理によって、複雑な凹凸表面を有するような対象物であっても、極めて容易にその表面を無機構造体で被覆することができることが明らかとなった。
以上、本開示の実験例について詳細に説明したが、本発明は上記実験例に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本開示の分散液、形成物の製造方法、分散液の使用方法及び分散液の製造方法は、各種物体表面に機能性の物質を被覆する技術分野に適用することができる。
20 無機構造体粒子、21 繊維体、22 基材空間、23 突起構造、24 ナノ粒子、30 分散液、31 溶媒、40 スプレー本体、41 対象物、50 電解セル、51 作用極、52 対極、53 参照極、54 収容部、60 水蒸発量測定装置、61 ナノ構造布、62 支持体、63 収容部、64 天秤、d 内径、D 直径、Ds サイズ。

Claims (12)

  1. 金属元素を含む繊維体及び/又はシェルが連結した自立構造を有し、そのサイズが1000μm以下である無機構造体粒子と、
    前記無機構造体粒子を分散する溶媒と、を備え
    前記無機構造体粒子は、前記自立構造として半チューブ型の前記繊維体が3次元的に連結した柔軟性を有する不織布構造を有する、分散液。
  2. 前記無機構造体粒子は、樹脂により形成され前記自立構造を支持する支持部を有している、請求項1に記載の分散液。
  3. 前記無機構造体粒子は、直径が1nm以上10nm以下の前記金属元素を含むナノ粒子によって形成されている、請求項1又は2に記載の分散液。
  4. 前記無機構造体粒子は、Pt、Au、Ag、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Cr及びZnのうち1以上の前記金属元素を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の分散液。
  5. 結着材及び分散剤を含まない、請求項1~のいずれか1項に記載の分散液。
  6. 結着材及び/又は分散剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の分散液。
  7. 無機構造体粒子で表面が被覆された形成物の製造方法であって、
    請求項1~のいずれか1項に記載の分散液を対象物の表面に形成乾燥し該対象物の表面を前記無機構造体粒子で被覆させる被覆工程、を含む形成物の製造方法。
  8. 無機構造体粒子で対象物の表面を被覆させる分散液の使用方法であって、
    請求項1~のいずれか1項に記載の分散液を対象物の表面に形成乾燥し該対象物の表面を前記無機構造体粒子で被覆させる、分散液の使用方法。
  9. 基材の表面に金属元素を含む層を蒸着して得られた該金属元素を含む繊維体及び/又はシェルが連結した自立構造体を1000μm以下の無機構造体粒子に解砕する解砕工程と、
    前記無機構造体粒子を分散する溶媒に分散させる分散工程と、
    前記解砕工程の前に、基材の表面に金属元素を含む層を蒸着して該金属元素を含む繊維体及び/又はシェルが連結した自立構造体を得る構造作製工程と、を含み、
    前記構造作製工程では、樹脂により形成された基材としての不織布の片側の表面に前記金属元素を含む層を蒸着したのち前記樹脂を溶解することにより半チューブ型の前記繊維体が3次元的に連結した該金属元素を含む柔軟性を有する前記自立構造体としての不織布構造体を得る、分散液の製造方法。
  10. 前記解砕工程では、前記自立構造体を前記溶媒に浸漬した状態で無機構造体粒子へ解砕すると共に該溶媒に該無機構造体粒子を分散させる、請求項に記載の分散液の製造方法。
  11. 前記解砕工程では、直径が1nm以上10nm以下の前記金属元素を含むナノ粒子によって形成されている前記自立構造体を用いる、請求項9又は10に記載の分散液の製造方法。
  12. 前記解砕工程では、Pt、Au、Ag、Ru、Ir、Cu、Sn、Ni、Cr及びZnのうち1以上の前記金属元素を含む前記自立構造体を用いる、請求項11のいずれか1項に記載の分散液の製造方法。
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