JP7419794B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Description

本発明は、鉛蓄電池に関する。
鉛蓄電池は、車載用、産業用の他、様々な用途で使用されている。鉛蓄電池は、負極板と、正極板と、正極板および負極板の間に介在するセパレータと、電解液とを含む。
鉛蓄電池では、電槽の上部における電解液(以下、上部電解液ともいう。)の比重が低くなり、下部における電解液(以下、下部電解液ともいう。)の比重が高くなる成層化現象が生じる。成層化が生じると、負極板の下部でサルフェーションが進行する。一方、低比重の上部電解液では、硫酸鉛の溶解度が高くなり、電解液中の鉛イオン量が増え、負極板で還元析出する鉛がセパレータの細孔内に侵入して正極板に達する現象(すなわち浸透短絡)を生じやすくなる。
そこで、特許文献1は、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した極板群と、電解液と、前記極板群を収納した電槽を備えた鉛蓄電池であって、前記負極板の耳を接続する負極ストラップ直下の両端の耳の外端間の長さA、及び前記正極板の耳を接続する正極ストラップ直下の両端の耳の外端間の長さA´が、それぞれ、前記各ストラップに接続された極板のうち両端に位置する極板における上部枠骨部の積層方向外端間の長さB、B´より小さく、前記セパレータは、前記正極板の上部と向かい合う領域及び前記負極板の上部と向かい合う領域にリブを有することを特徴とする鉛蓄電池を提案している。特許文献1の実施例では、幅100mm、高さ110mmの正極板および負極板を具備する電池が作製されている。
特開2017-63001号公報
一般的には、鉛蓄電池の電解液の成層化を抑制する手法として、鉛蓄電池を過充電することによりガスを発生させ、ガスによって電解液を流動させることが行われている。しかし、例えば電気車用の鉛蓄電池のように、各極板の高さが160mm以上と大きい縦長の鉛蓄電池では、電解液の成層化が進行しやすい上に、過充電によって発生させたガスが極板間に滞留する「ガス噛み」が発生しやすい。ガスが滞留する極板間では、電極反応の進行が妨げられる。ガス噛みが発生した状態で更に充放電サイクルを繰り返すと、充電末期に発生するガスが極板間に蓄積されるため、次第に有効極板面積が減少し、容量維持率が低下する。
例えば、定格容量(Ah)として記載の数値の0.25倍の電流(A)で3時間放電後、定格容量(Ah)として記載の数値の0.195倍の電流(A)で5時間充電する(すなわち、放電電気量の約130%程度の電気量を充電する)充放電を低温(例えば10℃)で200サイクル程度繰り返すと、容量維持率が顕著に低下する。
本発明の一側面は、正極板と、負極板と、電解液と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、電解液とを備え、前記正極板および前記負極板の高さは、それぞれ160mm以上であり、前記セパレータは、前記正極板側の第1表面に第1リブを備え、かつ前記負極板側の第2表面に第2リブを備える、鉛蓄電池に関する。
本発明によれば、鉛蓄電池の充放電サイクルを繰り返す場合に容量維持率が顕著に改善される。
本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池のフタを外した状態を模式的に示す斜視図である。 図1の鉛蓄電池の正面図である。 図2Aの鉛蓄電池のIIB-IIB線による矢示断面図である 極板の高さHと、有効極板面積S´と、実際の極板面積S(極板の高さ×幅)との関係を示す図である。 セパレータが片面のみにリブを有する電池R4およびR7並びにセパレータが両面にリブを有する電池E1の100サイクル目および200サイクル目の容量維持率を対比して示す図である。 極板の高さと200サイクル目の容量維持率との関係を示す図である。 極板の高さと、セパレータが正極板側のみにリブを有する場合に対する両面にリブを有する場合の容量維持率の改善幅との関係を示す図である。 極板の高さと、600サイクル後の負極板の上部、中部および下部に蓄積する硫酸鉛量との関係を示す図である。 極板の高さが278mmである場合の極間距離とガス噛み量との関係を示す図である。 極板の高さが115mmである場合の極間距離とガス噛み量との関係を示す図である。 極板の高さが384mmである場合の極間距離とガス噛み量との関係を示す図である。 極間距離と低温ハイレート放電性能との関係を示す図である。 極板の高さが278mmの鉛蓄電池の充放電サイクル数と容量維持率との関係を示す図であり、ポリマー化合物とセパレータの両面リブが容量維持率へ及ぼす影響を示す図である。 極板の高さが115mmの鉛蓄電池の充放電サイクル数と容量維持率との関係を示す図であり、ポリマー化合物とセパレータの両面リブが容量維持率へ及ぼす影響を示す図である。 負極電極材料中のPPG含有量とサイクル数と容量維持率との関係を示す図である。 負極電極材料中のPPG含有量と初期容量との関係を示す図である。 負極電極材料中のPPG含有量と自己放電量との関係を示す図である。 縮合物Aを用いた場合の極板の高さHと、有効極板面積S´と、実際の極板面積S(極板の高さ×幅)との関係を示す図である。 縮合物Aを用いた場合の極板の高さと200サイクル目の容量維持率との関係を示す図である。 縮合物Aを用いた場合の極板の高さと、セパレータが正極板側のみにリブを有する場合に対する両面にリブを有する場合の容量維持率の改善幅との関係を示す図である。 縮合物Bを用いた場合の極板の高さHと、有効極板面積S´と、実際の極板面積S(極板の高さ×幅)との関係を示す図である。 縮合物Bを用いた場合の極板の高さと200サイクル目の容量維持率との関係を示す図である。 縮合物Bを用いた場合の極板の高さと、セパレータが正極板側のみにリブを有する場合に対する両面にリブを有する場合の容量維持率の改善幅との関係を示す図である。 縮合物Cを用いた場合の極板の高さHと、有効極板面積S´と、実際の極板面積S(極板の高さ×幅)との関係を示す図である。 縮合物Cを用いた場合の極板の高さと200サイクル目の容量維持率との関係を示す図である。 縮合物Cを用いた場合の極板の高さと、セパレータが正極板側のみにリブを有する場合に対する両面にリブを有する場合の容量維持率の改善幅との関係を示す図である。 縮合物Aを用いた極板(高さ278mm、第1リブのみ)の極間距離とガス噛み量との関係を示す図である。
[鉛蓄電池]
本発明の実施形態に係る鉛蓄電池は、正極板と、負極板と、電解液と、正極板および負極板の間に介在するセパレータと、電解液とを備える。正極板および負極板の高さは、それぞれ160mm以上である。セパレータは、正極板側の第1表面に第1リブを備え、かつ負極板側の第2表面に第2リブを備える。
ここで、正極板および負極板(以下、単に「極板」と総称することもある。)の高さとは、極板の耳を除く部分の高さであり、集電体の枠骨部の上額と下額とを含む高さに相当する。
例えば電気車などに用いられる産業用の鉛蓄電池の電解液の成層化は、通常、鉛蓄電池を過充電することによりガスを発生させ、ガスによって電解液を流動させることで抑制可能である。しかし、正極板および負極板の高さがそれぞれ160mm以上である場合、過充電により十分量のガスを発生させた場合であっても、従来の構成では、実際には想定されるほどに電解液が攪拌されていないことが判明した。具体的には、正極板側の第1表面に第1リブのみを備え、もしくは負極板側の第2表面に第2リブのみを備えるセパレータを用いる場合には、過充電で発生させたガスによって成層化を十分に解消することは困難であることが実験データから明らかになった。
正極板側の第1表面に第1リブのみを備え、もしくは負極板側の第2表面に第2リブのみを備えるセパレータを用いる場合に電解液が十分に攪拌されない理由は、過充電により発生させたガスが液面に到達する前に極板間にトラップされ、電解液の攪拌に十分に寄与していないためである。正極板および負極板の高さがそれぞれ160mm以上になると、過充電により発生させたガスが極板間に滞留する「ガス噛み」が急激に顕著になる。ガスが滞留する極板間では、電極反応の進行が妨げられるため、有効極板面積が減少する。有効極板面積の減少は、電解液を流動させるために多くの過充電を行うほどに顕著となり、充放電サイクルを繰り返すほどに容量維持率の低下が顕著になる。中でも正極板および負極板の高さがそれぞれ200mm以上になると有効極板面積の減少はより顕著になり、270mm以上では更に顕著になり、350mm以上もしくは380mm以上になると極めて顕著になる。
なお、高さ160mm以上の正極板と負極板とを有する鉛蓄電池としては、特に限定されるものではないが、例えばフォークリフト、自動搬送機(AGV)などの電気車で用いられる鉛蓄電池が挙げられる。日本産業規格(JIS)では、電気車用組電池を格納する枠サイズが規定されているため、高容量化のために鉛量を増やす場合、極板は縦方向に長くなる傾向がある。
これに対し、正極板側の第1表面に第1リブを備え、かつ負極板側の第2表面に第2リブを備えるセパレータ(すなわち、両面にリブを有するセパレータ)を用いると、片面にリブを有するセパレータを用いる場合に比べて、充放電サイクルを繰り返す場合の容量維持率が顕著に改善する。中でも正極板および負極板の高さがそれぞれ200mm以上になると容量維持率の改善はより顕著になり、270mm以上では更に顕著になり、350mm以上もしくは380mm以上になると極めて顕著になる。例えば、定格容量(Ah)として記載の数値の0.25倍の電流(A)で3時間放電後、定格容量(Ah)として記載の数値の0.195倍の電流(A)で5時間充電する(すなわち、放電電気量の約130%程度の電気量を充電する)充放電を低温(例えば10℃)で200サイクル程度繰り返す場合、容量維持率の改善は顕著である。
両面にリブを有するセパレータを用いる場合、過充電により発生させたガスが液面に到達する前に極板間にトラップされる「ガス噛み」が顕著に低減される。正極板によるセパレータの酸化劣化を抑制する観点から、セパレータの正極板側の第1表面のみにリブを設けることは良く行われる。しかし、セパレータの正極板側の第1表面のみにリブを設けても、ガス噛みを解消することは困難である。また、大半のガスは負極板の表面で発生するにもかかわらず、セパレータの負極板側の第2表面のみにリブを設けても、充放電サイクルの初期にはガス噛みが改善されるものの、200サイクル程度になると次第にリブに潰れが生じ、ガスが極板間にトラップされるようになり、やはりガス噛みを解消することは困難である。一方、両面にリブを有するセパレータを用いる場合、セパレータの機械的強度が向上し、リブに潰れが生じにくくなるため、「ガス噛み」が極めて顕著に低減されるものと考えられる。
正極板と負極板との距離は、例えば3mm以下であってもよく、2mm以下であってもよい。正極板と負極板との距離は、一見すると広い程、ガス噛みの解消に有利であり、容量維持率の改善にも有利であると考えられる。しかし、正極板と負極板との距離が過度に大きくなると、例えば充放電を300サイクル程度繰り返すと、低温ハイレート放電性能に不利となる。これは、正極板と負極板との距離が大きくなると、負極電極材料の脱落が促進されるためである。また、負極電極材料が脱落すると、脱落した材料が電槽下部に堆積し、もしくは極板群上部に堆積し、短絡の原因となる。容量維持率と低温ハイレート放電性能とのバランスを考慮すると、正極板と負極板との距離は、1.3mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。なお、正極板と負極板との距離が1.3mm以下である場合、セパレータの片面のみにリブを設けるだけではガス噛みが顕著に増加するが、セパレータの両面にリブを設ける場合には、ガス噛みを顕著に抑制することが可能となる。
セパレータの両面にリブを設ける場合、第1リブおよび第2リブの高さは、例えば、それぞれ0.1mm以上であればよい。ガス噛みを抑制する効果を奏するには各リブの高さを0.1mm以上にすれば十分である。例えばセパレータの正極板側のみに第1リブを設ける場合に比べると、両面に0.1mm以上のリブを設ける場合には、ガス噛み量は、例えば20分の1以下にまで顕著に減量される。
第2リブの高さは、例えば、セパレータの総厚の10%~70%としてもよい。例えば、正極板と負極板との距離を1.3mm以下とし、これに合わせてセパレータの総厚を1.3mm以下とする場合には、第2リブの高さは、0.1mm~0.91mmの範囲から選択すればよい。また、セパレータの総厚を1.1mm以下とする場合には、第2リブの高さは、0.1mm~0.77mmの範囲から選択すればよい。また、セパレータの総厚を0.8mm以下とする場合には、第2リブの高さは、0.1mm~0.56mmの範囲から選択すればよい。また、セパレータの総厚を0.6mm以下とする場合には、第2リブの高さは、0.1mm~0.42mmの範囲から選択すればよい。
負極電極材料は、ポリマー化合物を含んでもよい。ここで、ポリマー化合物とは、H-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲にピークを有するポリマー化合物を意味する。ポリマー化合物は、例えば、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含む。このようなポリマー化合物は、負極電極材料の過電圧を増大させる作用を有する。ポリマー化合物を用いることで、過充電時に水素発生が抑制される。ポリマー化合物により負極電極材料中の鉛の表面が覆われた状態となることで、上記のような効果が得られるものと考えられる。
ポリマー化合物がオキシC2-4アルキレンユニットを有する場合、線状構造を取り易くなるため、負極電極材料中に留まり難く、電解液中に拡散し易いと予想される。しかし、実際には、負極電極材料中に僅かなポリマー化合物が含まれる場合でも、過電圧を上昇させる顕著な効果が得られる。オキシC2-4アルキレンユニットは、鉛に対する高い吸着作用を発揮するものと考えられる。また、ごく僅かなポリマー化合物でも、過電圧を上昇させる効果が得られることから、ポリマー化合物が鉛の表面に薄く広がった状態となり、鉛表面の広範囲な領域で水素イオンの還元反応が抑制されるものと考えられる。
負極電極材料にポリマー化合物を添加すると、極板の高さが160mm未満と低い場合には見られない顕著な効果が奏されるようになる。具体的には、第一に、極板の高さが160mm以上である場合には、容量維持率(所定数の充放電サイクル後に、例えば、定格容量(Ah)として記載の数値の0.2倍の電流(A)で放電する場合の放電容量)が顕著に向上する。特に充放電サイクルを500サイクル以上繰り返す場合には、容量維持率の改善が顕著である。セパレータの両面にリブを設ける場合、ポリマー化合物の作用によりガス発生量が減少しても、ガス噛みが改善されることで少量のガスが効率良く対流するため、成層化の進行を十分に抑制することが可能である。一方、ポリマー化合物によって水素ガスの発生量が減少することで、負極電極材料の脱落が抑制され、負極板の劣化が進行しにくくなる。負極電極材料の脱落の抑制と成層化の抑制とが相まって、容量維持率が顕著に改善するものと考えられる。
ポリマー化合物を用い、セパレータの両面にリブを設ける場合、ガス噛みが改善してサイクル初期の容量維持率が高くなることに加え、ガス発生量自体が低減するため、負極電極材料の脱落が顕著に抑制される。よって、充放電サイクルを500サイクル以上繰り返す場合でも、容量維持率が顕著に改善する。なお、ポリマー化合物によってガス発生量を低減する場合でも、セパレータの片面のみにリブを設ける場合には、ガス噛みが問題となることに加え、ガス発生量の減少により電解液の攪拌が不十分となるため、成層化が進行し、電池寿命が短くなる。
なお、極板の高さが160mm未満と低い場合には、そもそもガス噛みの問題が生じないため、セパレータの両面にリブを設けたり、ポリマー化合物を用いたりすることによって容量維持率を向上させることは困難である。
第二に、負極電極材料にポリマー化合物を添加すると、自己放電量が低減する。これは、ポリマー化合物が鉛の表面に薄く広がった状態となり、負極電極材料と電解液との反応が妨げられるためである。特に高温(例えば60℃以上)で鉛蓄電池を使用する場合には、自己放電が進行しやすいが、負極電極材料に含まれるポリマー化合物が電解液中に溶出し、より多くの鉛表面に薄く広がった状態となり、自己放電量が抑制されるものと考えられる。一方、セパレータの片面のみにリブを設ける場合には、ポリマー化合物を用いると、ガス噛みが問題となることに加え、ガス発生量の減少により電解液の攪拌が不十分となるため、成層化が進行し、比重の低い上部と、比重の高い下部とで濃淡電池が形成され、自己放電が促進される。すなわち、ポリマー化合物は、セパレータの両面にリブを設ける場合にのみ、自己放電の低減という特有の効果を奏するものといえる。
鉛蓄電池の上記構成は、成層化が生じやすい液式(ベント式)の鉛蓄電池において有効である。中でも、特に成層化が生じやすい電池高さの高い鉛蓄電池(特に電気車用鉛蓄電池)において、本実施形態に係る鉛蓄電池の構成が有利となる。電気車用鉛蓄電池の極板の高さは、例えば270mm以上、350mm以上、380mm以上もしくは400mm以上であり得る。
本明細書中、液式の鉛蓄電池の満充電状態とは、JIS D 5301:2006の定義によって定められる。より具体的には、鉛蓄電池を、定格容量(Ah)として記載の数値の0.2倍の電流(A)で、15分ごとに測定した充電中の端子電圧または20℃に温度換算した電解液密度が3回連続して有効数字3桁で一定値を示すまで充電した状態を満充電状態とする。
満充電状態の鉛蓄電池は、既化成の鉛蓄電池を満充電したものをいう。鉛蓄電池の満充電は、化成後であれば、化成直後でもよく、化成から時間が経過した後に行ってもよい(例えば、化成後で、使用中(好ましくは使用初期)の鉛蓄電池を満充電してもよい)。使用初期の電池とは、使用開始後、それほど時間が経過しておらず、ほとんど劣化していない電池をいう。
以下、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池について、主要な構成要件ごとに説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(負極板)
負極板は、負極集電体と、負極電極材料とを含む。負極電極材料は、負極板から負極集電体を除いたものである。
なお、負極板には、マット、ペースティングペーパなどの部材が貼り付けられていることがある。このような部材(貼付部材)は負極板と一体として使用されるため、負極板に含まれるものとする。また、負極板が貼付部材を含む場合、負極電極材料は、負極集電体および貼付部材を除いたものである。ただし、セパレータにマットなどの貼付部材が貼り付けられている場合には、貼付部材の厚みは、セパレータの厚みに含まれる。
負極板は、負極集電体に負極ペーストを塗布または充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、鉛粉と有機防縮剤および必要に応じて各種添加剤に、水と硫酸を加えて混練することで作製する。熟成する際には、室温より高温かつ高湿度で、未化成の負極板を熟成させることが好ましい。
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
(負極集電体)
負極集電体は、枠骨部と、枠骨部に連続する格子部とを有する。格子部は、複数の四角形の升目を有する。枠骨部は、少なくとも上額と下額とを有し、一対の側部要素を有する場合もある。一対の側部要素は、上額の両端と下額の両端とを連結する。上額には、通常、耳が設けられている。
負極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛シートまたは鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工や打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。負極集電体として負極格子を用いると、負極電極材料を担持させ易いため好ましい。
負極集電体に用いる鉛合金は、Pb-Sb系合金、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金のいずれであってもよい。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。負極集電体は、表面層を備えていてもよい。負極集電体の表面層と内側の層とは組成が異なるものであってもよい。表面層は、負極集電体の一部に形成されていてもよい。表面層は、負極集電体の耳部に形成されていてもよい。耳部の表面層は、SnまたはSn合金を含有するものであってもよい。
(負極電極材料)
負極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(鉛もしくは硫酸鉛)を含む。負極電極材料は、ポリマー化合物、防縮剤、炭素質材料および/または他の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、硫酸バリウム、繊維(樹脂繊維など)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。
(ポリマー化合物)
負極電極材料に含ませるポリマー化合物は、負極電極材料の過電圧を増大させる作用を有すればよい。負極電極材料は、ポリマー化合物を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
以下に、好ましいポリマー化合物であるH-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲にピークを有するポリマー化合物、もしくは、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含むポリマー化合物について詳述する。なお、H-NMRスペクトルの3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲に現れるピークは、オキシC2-4アルキレンユニットに由来する。ここで、H-NMRスペクトルは、重クロロホルムを溶媒として用いて測定される。
オキシC2-4アルキレンユニットを有するポリマー化合物は、薄く広がった状態で鉛表面を覆うため、少量でも過電圧を上昇させる効果が高い。ポリマー化合物が鉛表面を薄く覆う場合、放電時に生成する硫酸鉛の充電時における溶出は阻害され難く、充電受入性に大きな影響を与えない。中でもオキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含むポリマー化合物は、鉛に対してより吸着し易く、線状構造を取り易く、鉛表面を薄く覆い易い。繰り返し構造は、一種のオキシC2-4アルキレンユニットを含むものであってもよく、二種以上のオキシC2-4アルキレンユニットを含むものであってもよい。
以下、本明細書中、ポリマー化合物とは、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し単位を有するか、および/または数平均分子量(Mn)が500以上であるものをいうものとする。なお、オキシC2-4アルキレンユニットは、-O-R-(RはC2-4アルキレン基を示す。)で表されるユニットである。
オキシC2-4アルキレンユニットとしては、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、オキシトリメチレンユニット、オキシ2-メチル-1,3-プロピレンユニット、オキシ1,4-ブチレンユニット、オキシ1,3-ブチレンユニットなどが挙げられる。ポリマー化合物は、このようなオキシC2-4アルキレンユニットを一種有していてもよく、二種以上有していてもよい。
ポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物のエーテル化物およびオキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物のエステル化物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。ここで、ヒドロキシ化合物は、ポリC2-4アルキレングリコール、オキシC2-4アルキレンの繰り返し構造を含む共重合体、およびポリオールのC2-4アルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも一種である。このようなポリマー化合物は、過電圧を上昇させる効果が高いため、水素ガス発生をより効果的に抑制し得る。
ポリマー化合物としては、例えば、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物(ポリC2-4アルキレングリコール、オキシC2-4アルキレンの繰り返し構造を含む共重合体、ポリオールのC2-4アルキレンオキサイド付加物など)、これらのヒドロキシ化合物のエーテル化物またはエステル化物などが挙げられる。
共重合体としては、異なるオキシC2-4アルキレンユニットを含む共重合体、ポリC2-4アルキレングリコールアルキルエーテル、カルボン酸のポリC2-4アルキレングリコールエステルなどが挙げられる。共重合体は、ブロック共重合体であってもよい。
ポリオールは、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族ポリオール、および複素環式ポリオールなどのいずれであってもよい。ポリマー化合物が鉛表面に薄く広がり易い観点からは、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール(例えば、ポリヒドロキシシクロヘキサン、ポリヒドロキシノルボルナンなど)などが好ましく、中でも脂肪族ポリオールが好ましい。脂肪族ポリオールとしては、例えば、脂肪族ジオール、トリオール以上のポリオール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖アルコールなど)などが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、炭素数が5以上のアルキレングリコールなどが挙げられる。アルキレングリコールは、例えば、C5~14アルキレングリコールまたはC5-10アルキレングリコールであってもよい。糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。ポリオールのアルキレンオキサイド付加物においては、アルキレンオキサイドは、ポリマー化合物のオキシC2-4アルキレンユニットに相当し、少なくともC2-4アルキレンオキサイドを含む。ポリマー化合物が線状構造を取りやすい観点からは、ポリオールはジオールであることが好ましい。
エーテル化物は、上記のオキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物の少なくとも一部の末端の-OH基(末端基の水素原子とこの水素原子に結合した酸素原子とで構成される-OH基)がエーテル化された-OR基を有する(式中、Rは有機基である。)。ポリマー化合物の末端のうち、一部の末端がエーテル化されていてもよく、全ての末端がエーテル化されていてもよい。例えば、線状のポリマー化合物の主鎖の一方の末端が-OH基で、他方の末端が-OR基であってもよい。
エステル化物は、上記オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物の少なくとも一部の末端の-OH基(末端基の水素原子とこの水素原子に結合した酸素原子とで構成される-OH基)がエステル化された-O-C(=O)-R基を有する(式中、Rは有機基である。)。ポリマー化合物の末端のうち、一部の末端がエステル化されていてもよく、全ての末端がエステル化されていてもよい。例えば、線状のポリマー化合物の主鎖の一方の末端が-OH基で、他方の末端が-O-C(=O)-R基であってもよい。
有機基RおよびRのそれぞれとしては、炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、置換基(例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、および/またはカルボキシ基など)を有するものであってもよい。炭化水素基は、脂肪族、脂環族、および芳香族のいずれであってもよい。芳香族炭化水素基および脂環族炭化水素基は、置換基として、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基など)を有するものであってもよい。置換基としての脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、1~20であってもよく、1~10であってもよく、1~6または1~4であってもよい。
芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数が24以下(例えば、6~24)の芳香族炭化水素基が挙げられる。芳香族炭化水素基の炭素数は、20以下(例えば、6~20)であってもよく、14以下(例えば、6~14)または12以下(例えば、6~12)であってもよい。芳香族炭化水素基としては、アリール基、ビスアリール基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。ビスアリール基としては、例えば、ビスアレーンに対応する一価基が挙げられる。ビスアレーンとしては、ビフェニル、ビスアリールアルカン(例えば、ビスC6-10アリールC1-4アルカン(2,2-ビスフェニルプロパンなど)など)が挙げられる。
脂環族炭化水素基としては、例えば、炭素数が16以下の脂環族炭化水素基が挙げられる。脂環族炭化水素基は、架橋環式炭化水素基であってもよい。脂環族炭化水素基の炭素数は、10以下または8以下であってもよい。脂環族炭化水素基の炭素数は、例えば、5以上であり、6以上であってもよい。
脂環族炭化水素基の炭素数は、5(または6)以上16以下、5(または6)以上10以下、あるいは5(または6)以上8以下であってもよい。
脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基など)、シクロアルケニル基(シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基など)などが挙げられる。脂環族炭化水素基には、上記の芳香族炭化水素基の水素添加物も包含される。
鉛表面にポリマー化合物が薄く付着し易い観点からは、炭化水素基のうち、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ジエニル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基は、直鎖状および分岐鎖状のいずれであってもよい。
脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、30以下であり、26以下または22以下であってもよく、20以下または16以下であってもよく、14以下または10以下であってもよく、8以下または6以下であってもよい。炭素数の下限は、脂肪族炭化水素基の種類に応じて、アルキル基では1以上、アルケニル基およびアルキニル基では2以上、ジエニル基では3以上である。鉛表面にポリマー化合物が薄く付着し易い観点からは中でもアルキル基やアルケニル基が好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、3-ペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル、n-オクチル、n-デシル、i-デシル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、ベヘニルなどが挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル、1-プロペニル、アリル、パルミトレイル、オレイルなどが挙げられる。アルケニル基は、例えば、C2-30アルケニル基またはC2-26アルケニル基であってもよく、C2-22アルケニル基またはC2-20アルケニル基であってもよく、C10-20アルケニル基であってもよい。
オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造は、少なくともオキシプロピレンユニット(-O-CH(-CH)-CH-)の繰り返し構造を含んでもよい。このようなポリマー化合物は、鉛に対する高い吸着性を有しながらも、鉛表面に薄く広がり易く、これらのバランスに優れていると考えられる。
オキシプロピレンユニットを含むポリマー化合物は、H-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm~3.8ppmの範囲に、オキシプロピレンユニットの-CH<および-CH-に由来するピークを有する。これらの基における水素原子の原子核の周囲の電子密度が異なるため、ピークがスプリットした状態となる。このようなポリマー化合物は、H-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、例えば、3.2ppm以上3.42ppm以下の範囲と、3.42ppmを超え3.8ppm以下の範囲とのそれぞれにピークを有する。3.2ppm以上3.42ppm以下の範囲のピークは、-CH-に由来し、3.42ppmを超え3.8ppm以下の範囲のピークは、-CH<および-CH-に由来する。
オキシプロピレンユニットを含むポリマー化合物としては、ポリプロピレングリコール、オキシプロピレンの繰り返し構造を含む共重合体、上記ポリオールのプロピレンオキサイド付加物、またはこれらのエーテル化物もしくはエステル化物などが挙げられる。共重合体としては、オキシプロピレン-オキシアルキレン共重合体(ただし、オキシアルキレンは、オキシプロピレン以外のC2-4アルキレン)、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、カルボン酸のポリプロピレングリコールエステルなどが挙げられる。オキシプロピレン-オキシアルキレン共重合体としては、オキシプロピレン-オキシエチレン共重合体、オキシプロピレン-オキシトリメチレン共重合体などが例示される。オキシプロピレン-オキシアルキレン共重合体は、ブロック共重合体であってもよい。
オキシプロピレンの繰り返し構造を含むポリマー化合物において、オキシプロピレンユニットの割合は、例えば、5mol%以上であり、10mol%以上または20mol%以上であってもよい。
ポリマー化合物は、末端基に結合した酸素原子と、酸素原子に結合した-CH-基および/または-CH<基とを含んでもよい。H-NMRスペクトルにおいて、3.2ppm~3.8ppmのピークの積分値の、このピークの積分値と、酸素原子に結合した-CH-基の水素原子のピークの積分値と、酸素原子に結合した-CH<基の水素原子のピークの積分値との合計に占める割合は、例えば、50%以上であり、80%以上であってもよく、85%以上であってもよい。このようなポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットを分子中に多く含む。そのため、鉛に吸着し易くなるとともに、線状構造を取り易いことで鉛表面を薄く覆い易くなる。よって、より効果的に過電圧を上昇させることができる。なお、例えば、ポリマー化合物が末端に-OH基を有するとともに、この-OH基の酸素原子に結合した-CH-基や-CH<基を有する場合、H-NMRスペクトルにおいて、-CH-基や-CH<基の水素原子のピークは、ケミカルシフトが3.8ppmを超え4.0ppm以下の範囲にある。
ポリマー化合物は、数平均分子量Mnが500以上の化合物を含んでもよく、Mnが600以上の化合物を含んでもよく、Mnが1000以上の化合物を含んでもよい。ポリマー化合物のMnは、例えば、20000以下であり、15000以下または10000以下であってもよい。ポリマー化合物は、少なくとも数平均分子量Mnが1000以上の化合物を含むことが好ましい。この場合、ポリマー化合物が負極電極材料中に留まり易いことに加え、鉛に対する吸着性が高まるため、過電圧を上昇させる効果がより高まる。ポリマー化合物のMnは、5000以下が好ましく、4000以下または3000以下であってもよい。ポリマー化合物として、Mnが異なる2種以上の化合物を用いてもよい。つまり、ポリマー化合物は、分子量の分布において、Mnのピークを複数有してもよい。
負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、少量でよい。より高い効果を確保する観点から、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、質量基準で、15ppm以上、更には70ppm以上が好ましい。また、高い初期容量を確保する観点から、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、質量基準で、400ppm以下、更には320ppm以下が好ましい。
(防縮剤)
負極電極材料は、防縮剤を含むことができる。防縮剤としては、有機防縮剤が好ましい。有機防縮剤としては、公知の方法により合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。有機防縮剤は、通常、リグニン類とリグニン類以外の有機防縮剤(もしくは合成有機防縮剤)とに大別される。負極電極材料は、有機防縮剤を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
リグニン類としては、リグニン、リグニン誘導体などが挙げられる。リグニン誘導体としては、リグニンスルホン酸またはその塩(アルカリ金属塩(ナトリウム塩など)など)などが挙げられる。
合成有機防縮剤は、硫黄元素を含む有機高分子であり、一般に、分子内に複数の芳香環を含むとともに、硫黄含有基として硫黄元素を含んでいる。硫黄含有基の中では、安定形態であるスルホン酸基もしくはスルホニル基が好ましい。スルホン酸基は、酸型で存在してもよく、Na塩のように塩型で存在してもよい。
リグニン類以外の有機防縮剤としては、少なくとも芳香族化合物のユニットを含む縮合物を用いることが好ましい。このような縮合物としては、例えば、芳香族化合物の、アルデヒド化合物(アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)および/またはその縮合物など)による縮合物が挙げられる。有機防縮剤は、一種の芳香族化合物のユニットを含んでもよく、二種以上の芳香族化合物のユニットを含んでいてもよい。
なお、芳香族化合物のユニットとは、縮合物に組み込まれた芳香族化合物に由来するユニットを言う。
芳香族化合物のユニットを含む縮合物は、例えば、芳香族化合物と、アルデヒド化合物とを反応させることにより得られる。例えば、この反応を亜硫酸塩の存在下で行ったり、硫黄元素を含む芳香族化合物(例えば、ビスフェノールSなど)を用いたりすることで、硫黄元素を含む有機防縮剤を得ることができる。例えば、亜硫酸塩の量および/または硫黄元素を含む芳香族化合物の量を調節することで、有機防縮剤中の硫黄元素含有量を調節することができる。他の原料を用いる場合も、この方法に準じて得ることができる。
芳香族化合物が有する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。芳香族化合物が複数の芳香環を有する場合には、複数の芳香環は直接結合や連結基(例えば、アルキレン基(アルキリデン基を含む)、スルホン基など)などで連結していてもよい。このような構造としては、例えば、ビスアレーン構造(ビフェニル、ビスフェニルアルカン、ビスフェニルスルホンなど)が挙げられる。芳香族化合物としては、例えば、上記の芳香環と、ヒドロキシ基および/またはアミノ基とを有する化合物が挙げられる。ヒドロキシ基やアミノ基は、芳香環に直接結合していてもよく、ヒドロキシ基やアミノ基を有するアルキル鎖として結合していてもよい。なお、ヒドロキシ基には、ヒドロキシ基の塩(-OMe)も包含される。アミノ基には、アミノ基の塩(アニオンとの塩)も包含される。Meとしては、アルカリ金属(Li、K、Naなど)、周期表第2族金属(Ca、Mgなど)などが挙げられる。
芳香族化合物としては、ビスアレーン化合物(ビスフェノール化合物、ヒドロキシビフェニル化合物、アミノ基を有するビスアレーン化合物(アミノ基を有するビスアリールアルカン化合物、アミノ基を有するビスアリールスルホン化合物、アミノ基を有するビフェニル化合物など)、ヒドロキシアレーン化合物(ヒドロキシナフタレン化合物、フェノール化合物など)、アミノアレーン化合物(アミノナフタレン化合物、アニリン化合物(アミノベンゼンスルホン酸、アルキルアミノベンゼンスルホン酸など)など)などが好ましい。芳香族化合物は、さらに置換基を有していてもよい。有機防縮剤は、これらの化合物の残基を一種含んでもよく、複数種含んでもよい。ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが好ましい。
縮合物は、少なくとも硫黄含有基を有する芳香族化合物のユニットを含むことが好ましい。中でも、硫黄含有基を有するビスフェノール化合物のユニットを少なくとも含む縮合物を用いると、高温軽負荷試験後の低温HR放電性能の低下を抑制する効果を高めることができる。減液を抑制する効果が高まる観点からは、硫黄含有基を有するとともに、ヒドロキシ基および/またはアミノ基を有するナフタレン化合物のアルデヒド化合物による縮合物を用いることが好ましい。
硫黄含有基は、極性が強い親水性基である。親水性基は電解液中では、水分子や水素イオン、硫酸水素イオンと安定な結合を形成するため、縮合物の表面に親水性基が偏在する傾向がある。表面に偏在する親水性基は電荷を持つため、縮合物の会合体間で静電的な反発が起こりこるにより、縮合物のコロイド粒子の会合が制限され、コロイド粒子径が小さくなりやすい。その結果、負極電極材料の細孔径が小さくなると考えられる。つまり、鉛粒子同士の界面もしくは集電体と負極電極材料との界面において海綿状鉛の構造が微細になるため、界面における機械的強度が向上する。よって、負極電極材料の膨張を抑制する効果が大きい。
硫黄含有基は、化合物に含まれる芳香環に直接結合していてもよく、例えば、硫黄含有基を有するアルキル鎖として芳香環に結合していてもよい。硫黄含有基としては、特に制限されないが、例えば、スルホニル基、スルホン酸基またはその塩などが挙げられる。
また、有機防縮剤として、例えば、上記のビスアレーン化合物のユニットおよび単環式の芳香族化合物(ヒドロキシアレーン化合物、および/またはアミノアレーン化合物など)のユニットからなる群より選択される少なくとも一種を含む縮合物を少なくとも用いてもよい。有機防縮剤は、ビスアレーン化合物のユニットと単環式芳香族化合物(中でも、ヒドロキシアレーン化合物)のユニットとを含む縮合物を少なくとも含んでもよい。このような縮合物としては、ビスアレーン化合物と単環式の芳香族化合物との、アルデヒド化合物による縮合物が挙げられる。ヒドロキシアレーン化合物としては、フェノールスルホン酸化合物(フェノールスルホン酸またはその置換体など)が好ましい。アミノアレーン化合物としては、アミノベンゼンスルホン酸、アルキルアミノベンゼンスルホン酸などが好ましい。単環式の芳香族化合物としては、ヒドロキシアレーン化合物が好ましい。このような縮合物は、常温より高い環境を経験しても、低温HR放電性能が損なわれないため、高温軽負荷試験後の低温HR放電性能の低下を抑制する上でより有利である。
負極電極材料中に含まれる有機防縮剤の含有量は、例えば、0.01質量%以上であり、0.05質量%以上であってもよい。有機防縮剤の含有量は、例えば、1.0質量%以下であり、0.5質量%以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。負極電極材料中に含まれる有機防縮剤の含有量は、0.01~1.0質量%、0.05~1.0質量%、0.01~0.5質量%、または0.05~0.5質量%であってもよい。
(硫酸バリウム)
負極電極材料は、硫酸バリウムを含むことができる。負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、例えば0.05質量%以上であり、0.10質量%以上であってもよい。負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、3質量%以下であり、2質量%以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、0.05質量%以上3質量%以下、0.05質量%以上2質量%以下、0.10質量%以上3質量%以下、または0.10質量%以上2質量%以下であってもよい。
(炭素質材料)
負極電極材料は、炭素質材料を含むことができる。負極電極材料としては、カーボンブラック、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどを用いることができる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラックなどが例示される。ファーネスブラックには、ケッチェンブラック(商品名)も含まれる。黒鉛は、黒鉛型の結晶構造を含む炭素質材料であればよく、人造黒鉛および天然黒鉛のいずれであってもよい。炭素質材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。
負極電極材料中の炭素質材料の含有量は、例えば0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上であってもよい。炭素質材料の含有量は、例えば5質量%以下であり、3質量%以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。負極電極材料中の炭素質材料の含有量は、例えば、0.05質量%以上5質量%以下、0.05質量%以上3質量%以下、0.10質量%以上5質量%以下、または、0.10質量%以上3質量%以下であってもよい。
(ポリマー化合物の分析)
負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、満充電状態の鉛蓄電池について求めるものとする。
以下に、負極電極材料またはその構成成分の分析方法について説明する。分析に先立ち、化成後の鉛蓄電池を満充電してから解体して分析対象の負極板を入手する。入手した負極板を水洗し、負極板から硫酸分を除去する。水洗は、水洗した負極板表面にpH試験紙を押し当て、試験紙の色が変化しないことが確認されるまで行う。ただし、水洗を行う時間は、2時間以内とする。水洗した負極板は、減圧環境下、60±5℃で6時間程度乾燥する。次に、負極板から負極電極材料を分離して粉砕し、試料を入手する。
(1)定性分析
100.0±0.1gの試料に150.0±0.1mLのクロロホルムを加え、20±5℃で16時間撹拌し、ポリマー化合物を抽出する。その後、ろ過によって固形分を除く。抽出により得られるポリマー化合物が溶解したクロロホルム溶液またはクロロホルム溶液を乾固することにより得られるポリマー化合物について、赤外分光スペクトル、紫外可視吸収スペクトル、NMRスペクトル、LC-MSおよび/または熱分解GC-MSなどから情報を得ることで、ポリマー化合物を特定する。
抽出により得られるポリマー化合物が溶解したクロロホルム溶液から、クロロホルムを減圧下で留去することによりクロロホルム可溶分を回収する。クロロホルム可溶分を重クロロホルムに溶解させて、下記の条件でH-NMRスペクトルを測定する。このH-NMRスペクトルから、ケミカルシフトが3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲のピークを確認する。また、この範囲のピークから、オキシC2-4アルキレンユニットの種類を特定する。
装置:日本電子(株)製、AL400型核磁気共鳴装置
観測周波数:395.88MHz
パルス幅:6.30μs
パルス繰り返し時間:74.1411秒
積算回数:32
測定温度:室温(20~35℃)
基準:7.24ppm
試料管直径:5mm
H-NMRスペクトルから、ケミカルシフトが3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲に存在するピークの積分値(V)を求める。また、ポリマー化合物の末端基に結合した酸素原子に対して結合した-CH-基および-CH<基の水素原子のそれぞれについて、H-NMRスペクトルにおけるピークの積分値の合計(V)を求める。そして、VおよびVから、VがVおよびVの合計に占める割合(=V/(V+V)×100(%))を求める。
なお、定性分析で、H-NMRスペクトルにおけるピークの積分値を求める際には、H-NMRスペクトルにおいて、該当するピークを挟むように有意なシグナルがない2点を決定し、この2点間を結ぶ直線をベースラインとして各積分値を算出する。例えば、ケミカルシフトが3.2ppm~3.8ppmの範囲に存在するピークについては、スペクトルにおける3.2ppmと3.8ppmとの2点間を結ぶ直線をベースラインとする。例えば、ケミカルシフトが3.8ppmを超え4.0ppm以下の範囲に存在するピークについては、スペクトルにおける3.8ppmと4.0ppmとの2点間を結ぶ直線をベースラインとする。
(2)定量分析
上記のクロロホルム可溶分の適量を、±0.0001gの精度で測定したm(g)のテトラクロロエタン(TCE)と共に重クロロホルムに溶解させて、H-NMRスペクトルを測定する。ケミカルシフトが3.2~3.8ppmの範囲に存在するピークの積分値(S)とTCEに由来するピークの積分値(S)を求め、以下の式から負極電極材料中のポリマー化合物の質量基準の含有量C(ppm)を求める。
=S/S×N/N×M/M×m/m×1000000
(式中、Mはケミカルシフトが3.2~3.8ppmの範囲にピークを示す構造の分子量(より具体的には、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造の分子量)であり、Nは繰り返し構造の主鎖の炭素原子に結合した水素原子の数である。Nr、はそれぞれ基準物質の分子に含まれる水素数、基準物質の分子量であり、m(g)は抽出に使用した負極電極材料の質量である。)
なお、本分析での基準物質はTCEであるため、N=2、M=168である。また、m=100である。
例えば、ポリマー化合物がポリプロピレングリコールの場合、Mは58であり、Nは3である。ポリマー化合物がポリエチレングリコールの場合、Mは44であり、Nは4である。共重合体の場合には、Nは、各モノマー単位のN値を繰り返し構造に含まれる各モノマー単位のモル比率(モル%)を用いて平均化した値であり、Mは各モノマー単位の種類に応じて決定される。
なお、定量分析では、H-NMRスペクトルにおけるピークの積分値は、日本電子(株)製のデータ処理ソフト「ALICE」を用いて求める。
(3)ポリマー化合物のMn測定
ポリマー化合物のGPC測定を、下記の装置を用い、下記の条件で行う。別途、標準物質のMnと溶出時間のプロットから校正曲線(検量線)を作成する。この検量線およびポリマー化合物のGPC測定結果に基づき、ポリマー化合物のMnを算出する。
分析システム:20A system((株)島津製作所製)
カラム:GPC KF-805L(Shodex社製)2本を直列接続
カラム温度:30℃
移動相:テトラヒドロフラン
流速:1mL/min.
濃度:0.20質量%
注入量:10μL
標準物質:ポリエチレングリコール(Mn=200,0000、20,0000、20,000、2,000、200)
検出器:示差屈折率検出器(Shodex社製、Shodex RI-201H)
(正極板)
鉛蓄電池の正極板は、ペースト式、クラッド式などに分類できる。ペースト式正極板は、正極集電体と、正極電極材料とを具備する。正極電極材料は、正極集電体に保持されている。ペースト式正極板では、正極電極材料は、正極板から正極集電体を除いたものである。正極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛シートまたは鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工や打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。正極集電体として格子状の集電体を用いると、正極電極材料を担持させ易いため好ましい。クラッド式正極板は、複数の多孔質のチューブと、各チューブ内に挿入される芯金と、複数の芯金を連結する集電部と、芯金が挿入されたチューブ内に充填される正極電極材料と、複数のチューブを連結する連座とを具備する。クラッド式正極板では、正極電極材料は、チューブ、芯金、集電部、および連座を除いたものである。クラッド式正極板では、芯金と集電部とを合わせて正極集電体と称する場合がある。
ペースト式正極板には、マット、ペースティングペーパなどの部材が貼り付けられていることがある。このような部材(貼付部材)は正極板と一体として使用されるため、正極板に含まれるものとする。また、正極板がこのような部材を含む場合には、正極電極材料は、ペースト式正極板では、正極板から正極集電体および貼付部材を除いたものである。
正極集電体に用いる鉛合金としては、耐食性および機械的強度の点で、Pb-Sb系合金、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金が好ましい。正極集電体は、表面層を備えていてもよい。正極集電体の表面層と内側の層とは組成が異なるものであってもよい。表面層は、正極集電体の一部に形成されていてもよい。表面層は、正極集電体の格子部のみや、耳部分のみ、枠骨部のみに形成されていてもよい。
正極板に含まれる正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質(二酸化鉛もしくは硫酸鉛)を含む。正極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
未化成のペースト式正極板は、正極集電体に、正極ペーストを充填し、熟成、乾燥することにより得られる。正極ペーストは、鉛粉、添加剤、水、および硫酸を混練することで調製される。未化成のクラッド式正極板は、集電部で連結された芯金が挿入された多孔質なチューブに鉛粉またはスラリー状の鉛粉を充填し、複数のチューブを連座で結合することにより形成される。その後、これらの未化成の正極板を化成することにより正極板が得られる。化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の正極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の正極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。
(セパレータ)
負極板と正極板との間には、セパレータが配置される。セパレータとしては、不織布および/または微多孔膜などが用いられる。負極板と正極板との間に介在させるセパレータの厚さは極間距離に応じて選択すればよい。セパレータの枚数は極間数に応じて選択すればよい。
不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたマットであり、繊維を主体とする。不織布は、例えば、不織布の60質量%以上が繊維で形成されている。繊維としては、ガラス繊維、ポリマー繊維(ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維など)、パルプ繊維などを用いることができる。中でも、ガラス繊維が好ましい。不織布は、繊維以外の成分、例えば耐酸性の無機粉体、結着剤としてのポリマーなどを含んでもよい。
一方、微多孔膜は、繊維成分以外を主体とする多孔性のシートであり、例えば、造孔剤(ポリマー粉末および/またはオイルなど)を含む組成物をシート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去して細孔を形成することにより得られる。微多孔膜は、耐酸性を有する材料で構成することが好ましく、ポリマー成分を主体とするものが好ましい。ポリマー成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。
セパレータは、例えば、不織布のみで構成してもよく、微多孔膜のみで構成してもよい。また、セパレータは、必要に応じて、不織布と微多孔膜との積層物、異種または同種の素材を貼り合わせた物、または異種または同種の素材において凹凸をかみ合わせた物などであってもよい。
セパレータは、シート状であってもよく、袋状に形成されていてもよい。正極板と負極板との間に1枚のシート状のセパレータを挟むように配置してもよい。また、折り曲げた状態の1枚のシート状のセパレータで極板を挟むように配置してもよい。この場合、折り曲げたシート状のセパレータで挟んだ正極板および負極板の一方と、正極板および負極板の他方とを重ねてもよく、正極板および負極板の一方を折り曲げたシート状のセパレータで挟み、他方の極板と重ねてもよい。また、シート状のセパレータを蛇腹状に折り曲げ、正極板および負極板を、これらの間にセパレータが介在するように、蛇腹状のセパレータに挟み込んでもよい。蛇腹状に折り曲げられたセパレータを用いる場合、鉛直方向に沿うように(例えば、折り曲げ部が鉛直方向と平行になるように)セパレータを配置してもよい。蛇腹状に折り曲げられたセパレータでは、セパレータの両方の主面側に交互に凹部が形成されることになる。正極板や負極板の上部には通常耳部が形成されているため、折り曲げ部が鉛蓄電池の水平方向に沿うようにセパレータを配置する場合、セパレータの一方の主面側の凹部のみに正極板および負極板が配置される(つまり、隣接する正極板と負極板との間には、二重のセパレータが介在した状態となる)。折り曲げ部が鉛蓄電池の鉛直方向に沿うようにセパレータを配置する場合、一方の主面側の凹部に正極板を収容し、他方の主面側の凹部に負極板を収容することができる(つまり、隣接する正極板と負極板との間には、セパレータが一重に介在した状態とすることができる。)。袋状のセパレータを用いる場合、袋状のセパレータが正極板を収容していてもよいし、負極板を収容してもよい。
セパレータは、正極板側の第1表面に第1リブを備え、かつ負極板側の第2表面に第2リブを備える。すなわち、セパレータは、ベース部と、ベース部の正極板側の第1表面から突出する第1リブと、ベース部の負極板側の第2表面から突出する第2リブとを有する。ベース部は、セパレータの要部を成す平板状の部分である。各リブの高さとは、ベース部の表面からの高さをいう。よって、ベース部の厚さと、第1リブの高さと、第2リブの高さとの合計がセパレータの総厚である。
各リブは、ガス噛みを抑制する効果を高める観点から、例えば、鉛蓄電池の上下方向に沿って一様にライン状に設けられることが望ましい。リブは、セパレータの上端から下端まで連続して、もしくは断続的に形成されていることが望ましいが、セパレータの上端から下端までの距離の例えば80%以上に形成されていれば十分である。なお、本明細書中、鉛蓄電池の上下方向とは鉛直方向を意味する。
リブの長さ方向に垂直な断面の形状は、長方形、正方形などの四角形でもよく、台形でもよく、円弧状でもよく、トップが丸められた四角形であってもよい。
ベース部の厚さは、セパレータの十分な強度を確保する観点から、例えば0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましい。また、鉛蓄電池の内部抵抗を低減する観点からは、0.8mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましい。ベース部の厚さは、ベース部の任意の10箇所において計測した数値を平均化することにより求められる。
リブの幅は、例えば0.02mm~2.5mmであればよく、0.04mm~2.0mmもしくは0.04mm~1.5mmであってもよい。また、リブのピッチ(すなわち、互いに最近接する一対のリブにおいて、それぞれのリブの幅方向における中心間の最小距離)は、例えば0.4mm~20mmであればよく、0.6mm~15mmであってもよい。このような形態で各リブを設ける場合、ガス噛みを抑制する効果が極板の全面において一様に得られやすく、かつセパレータの機械的強度が向上するため、リブに潰れが生じにくくなるとともに、セパレータの撓みも生じにくくなる。また、セパレータの抵抗も小さく維持できる。
各リブの高さおよび幅は、任意に選択されるリブの任意の10箇所において計測した数値を平均化することにより求められる。同様に、各リブのピッチP、任意に選択される互いに最近接する一対のリブの任意の10箇所の中心間距離を平均化することにより求められる。
(電解液)
電解液は、硫酸を含む水溶液であり、必要に応じてゲル化させてもよい。電解液は、必要に応じて、カチオン(例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、および/またはアルミニウムイオンなどの金属カチオン)、および/またはアニオン(例えば、リン酸イオンなどの硫酸アニオン以外のアニオン)を含んでいてもよい。
満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、例えば、1.20以上であり、1.25以上であってもよい。電解液の20℃における比重は、1.35以下であり、1.32以下であることが好ましい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。電解液の20℃における比重は、1.20以上1.35以下、1.20以上1.32以下、1.25以上1.35以下、または1.25以上1.32以下であってもよい。
鉛蓄電池は、電槽に、正極板、負極板、および電解液を収容することにより鉛蓄電池を組み立てる工程を含む製造方法により得ることができる。鉛蓄電池の組み立て工程において、セパレータは、通常、正極板と負極板との間に介在するように配置される。鉛蓄電池の組み立て工程は、正極板、負極板、および電解液を電槽に収容する工程の後、必要に応じて、正極板および/または負極板を化成する工程を含んでもよい。正極板、負極板、電解液、およびセパレータは、それぞれ、電槽に収容される前に準備される。
図1は、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池のフタを外した一例を模式的に示す斜視図である。図2Aは、図1の鉛蓄電池の正面図であり、図2Bは、図2AのIIB-IIB線による矢示断面図である。
鉛蓄電池1は、極板群11と電解液(図示せず)とを収容する電槽10を具備する。極板群11は、それぞれ複数枚の負極板2および正極板3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。
複数の負極板2のそれぞれの上部には、上方に突出する集電用の耳部(図示せず)が設けられている。複数の正極板3のそれぞれの上部にも、上方に突出する集電用の耳部(図示せず)が設けられている。そして、負極板2の耳部同士は負極用ストラップ5aにより連結され一体化されている。同様に、正極板3の耳部同士も正極用ストラップ5bにより連結されて一体化されている。負極用ストラップ5aには負極柱6aが固定され、正極用ストラップ5bには正極柱6bが固定されている。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
《鉛蓄電池R1~R6》
(a)負極板の作製
原料の鉛粉と、硫酸バリウムと、カーボンブラックと、と、有機防縮剤であるリグニンスルホン酸ナトリウム(硫黄元素含有量:600μmol/g、Mw=5500)とを、適量の硫酸水溶液と混合して、負極ペーストを得る。このとき、いずれも既述の手順で求められる、負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量が1.5質量%、カーボンブラックの含有量が0.3質量%、有機防縮剤の含有量が0.1質量%となるように各成分を混合する。負極ペーストを、負極集電体であるPb-Sb合金製の鋳造格子の網目部に充填し、熟成乾燥し、未化成の負極板を得る。負極板の高さを表1に示す。化成後の負極電極材料の密度は3.7g/cm3とする。
(b)正極板の作製
クラッド式正極板を下記の手順で作製する。
まず、耳部を備える集電部に長さ方向の一端部が一体化された複数の芯金をそれぞれ複数のチューブ内に収容する。耳部が露出した状態となるように、集電部とチューブの集電部側の長さ方向の一端部とを樹脂で覆うことにより樹脂製の上部連座を形成する。なお、芯金および集電部の材質は、Pb-Sb系合金である。チューブとしては、ガラス繊維製の多孔質チューブを用いる。
鉛粉(酸化鉛80質量%および金属鉛20質量%を含む)と鉛丹と水と希硫酸とを混練することにより調製した正極スラリーを、チューブの長さ方向の他端部の開口から充填する。鉛粉と鉛丹との質量比は、9:1とする。次いで、チューブの他端部の開口を、下部連座で封止し、乾燥させる。このようにして、未化成のクラッド式正極板を作製する。正極板の高さは負極板と同じである。
(c)セパレータ
ポリエチレンとシリカ粒子を含む微多孔膜をセパレータとして準備する。セパレータのベース部の厚さは0.4mmであり、正極板側の第1表面のみに、高さ0.1mmの第1リブを鉛蓄電池の上下方向に沿って設ける。セパレータの総厚は0.5mmである。第1リブの幅は0.8mm、第1リブのピッチは9mmである。
(d)試験電池の作製
定格電圧2V、定格5時間率容量165~258Ahの液式電池を作製する。試験電池の極板群は、それぞれ所定の枚数の正極板と負極板とを交互に積層して構成する。正極板と負極板とを、これらの間にセパレータを介在させて積層し、極板群を形成する。極板群をポリプロピレン製の電槽に電解液(硫酸水溶液)とともに収容して、蓋をして電槽内で化成を施し、液式の鉛蓄電池R1~R6を作製する。化成後の電解液の20℃での比重は1.28である。正極板と負極板との距離は0.6mmである。
[評価1]
上記鉛蓄電池の充放電サイクルを10℃±2℃の温度下で、下記条件で200サイクル繰り返す。なお、ガス噛み量は200サイクル程度で安定し、それ以上は大きく増加することはない。
放電:定格容量(Ah)として記載の数値の0.25倍の電流(A)で3時間(DOD75%まで)放電する
充電:定格容量(Ah)として記載の数値の0.195倍の電流(A)で放電電気量の130%の電気量を充電する
(200サイクル後のガス噛み量)
200サイクル目のガス噛み量は、200サイクルの充放電の前後に電解液量(液面の高さ)を一定に揃えた状態で電池質量を測定することで求められる。ガス噛みが生じていない場合、電池質量は変化せず、ガス噛みが生じた場合は、そのガスの体積分だけ電解液量が少なくなり、電池質量が軽くなる。200サイクルの充放電の前後の電池質量の差と電解液の比重から200サイクル目のガス噛み量を求める。
(有効極板面積)
200サイクルの充放電の経過後に、電池を放電状態で解体する。ガスが滞留していた部分は未反応のまま残るため、負極板の有効部分とは異なり金属光沢が見られる。この金属光沢のある部分の面積を求め、実際の負極板の面積(極板の高さ×幅)から引くことで、有効極板面積を算出する。
表1および図3に、極板の高さHと、200サイクル目の有効極板面積S´と、実際の極板面積S(極板の高さ×幅)との関係を示す。
Figure 0007419794000001
表1および図3より、極板の高さが高くなるほどガス噛み量が増加し、有効極板面積S´と、実際の極板面積Sとの間に大きな差が生じることが理解できる。また、極板の高さが115mm(つまり160mm以下)の電池R1では、極板の高さが低いため、ガス噛み量が少なく、放置によりガス抜けするため、有効極板面積S´と実際の極板面積との差は極僅かである。
《鉛蓄電池R7、E1》
ベース部の厚さが0.4mmであり、負極板側の第2表面のみに、高さ0.1mmの第1リブを設けること以外、電池R4と同様に電池R7を作製する。
また、ベース部の厚さが0.4mmであり、第1表面および第2表面の両方にそれぞれ高さ0.1mmの第1リブおよび第2リブを設けること以外、電池R4と同様に電池E1を作製する。いずれも正極板と負極板との距離は0.6mmである。
[評価2]
上記鉛蓄電池の充放電サイクルを評価1の条件で200サイクル繰り返したときの100サイクル目および200サイクル目の容量維持率を求める。
表2および図4に、電池R4、R7およびE1の100サイクル目および200サイクル目の容量維持率を対比して示す。
Figure 0007419794000002
表2および図4より、セパレータが正極板側のみに第1リブを有する電池R4の場合、サイクルの経過に伴いガス噛みが顕著になり、有効極板面積S´が減少し、容量維持率が顕著に低下することが理解できる。また、セパレータが負極板側のみに第2リブを有する電池R7の場合、100サイクル目まではガス噛みが改善されて容量維持率が改善されるが、200サイクル目には容量維持率が顕著に低下することが理解できる。これは、負極の膨張によりリブが潰れることでガス噛みが生じてしまうためである。一方、セパレータが両面にリブを有する電池E1の場合、200サイクル経過後もガス噛みが改善され、優れた容量維持率が達成されている。これは、両面にリブが存在することで、セパレータの強度が高くなり、リブが潰れにくくなるためと考えられる。
《鉛蓄電池E2~E5》
ベース部の厚さが0.4mmであり、第1表面および第2表面の両方にそれぞれ高さ0.1mmの第1リブおよび第2リブを設けること以外、電池R2、R3、R5、R6と同様に電池E2~E5を作製し、評価2と同様に200サイクル目の容量維持率を測定する。正極板と負極板との距離は0.6mmである。
表3に、電池R2、R3、R5、R6、E2~E5の200サイクル目の容量維持率を対比して示す。図5に、極板の高さと200サイクル目の容量維持率との関係を示す。
Figure 0007419794000003
《鉛蓄電池R8~R10》
ベース部の厚さが0.4mmであり、第1表面および第2表面の両方にそれぞれ高さ0.1mmの第1リブおよび第2リブを設けること以外、電池R1と同様に電池R8を作製する。また、極板の高さを140mmにすること以外、電池R1、R8と同様に電池R9、R10を作製する。電池R8~R10の200サイクル目の容量維持率をE2~E5と同様に測定し、セパレータが正極板側のみに第1リブを有する場合に対する両面に第1リブおよび第2リブを有する場合の容量維持率の改善幅を求める。
表4および図6に、極板の高さと両面リブによる容量維持率の改善幅との関係を対比して示す。
Figure 0007419794000004
表3、4および図5、6より、セパレータの両面に第1リブおよび第2リブを設けた電池は、正極板側のみに第1リブを設けた電池に比べて200サイクル目の容量維持率が顕著に改善され、その改善幅は極板の高さが高いほど顕著になることが理解できる。
表5および図7に、負極板の上部、中部および下部に蓄積する硫酸鉛量と極板の高さとの関係を対比して示す。
硫酸鉛量は、評価1の条件で充放電サイクルを600サイクル繰り返した後、セルを分解し、負極板を取り出して上下方向に3等分し、各部の中央部から20g程度を採取して混合し、負極電極材料の試料とする。水洗乾燥した試料を粉砕し、高温で燃焼させる。負極電極材料に含まれる硫黄はガス化されて二酸化硫黄を生成する。赤外線検出器を用いて二酸化硫黄のガス濃度を測定し、試料に含まれる硫黄量を求める。試料に含まれる鉛原子の全量に対する硫酸鉛を形成している鉛原子量の割合を求める。
Figure 0007419794000005
表5および図7より、セパレータの両面に第1リブおよび第2リブを設けた電池は、正極板側のみに第1リブを設けた電池に比べて、負極板における硫酸鉛の蓄積が全体的に抑制されていることが理解できる。これは、ガス噛みの改善によりガス発生時に電解液が循環しやすくなり、充放電反応が均一化され、成層化が起こりにくくなるためと理解できる。
《鉛蓄電池R11~R18》
正極板と負極板との距離(極間距離)を表6に示すように変化させたこと以外、極板の高さが278mmである電池R4と同様に、電池R11~R18を作製し、評価1の手順で、ガス噛み量を測定する。
極間距離が0.6mmの場合(電池R4)を100%としてガス噛み量を相対値で表6に示す。また、図8に、極間距離とガス噛み量との関係を示す。
Figure 0007419794000006
《鉛蓄電池R19~R26》
極間距離を表7に示すように変化させたこと以外、極板の高さが115mmである電池R1と同様に、電池R19~R26を作製し、評価1の手順で、ガス噛み量を測定する。
極板高さが278mmかつ極間距離が0.6mmの電池R4を100%としてガス噛み量を相対値で表7に示す。また、図9に、極間距離とガス噛み量との関係を示す。
Figure 0007419794000007
《鉛蓄電池R27~R34》
極間距離を表8に示すように変化させたこと以外、極板の高さが384mmである電池R6と同様に、電池R27~R34を作製し、評価1の手順で、ガス噛み量を測定する。
極板高さが278mmかつ極間距離が0.6mmの電池R4を100%としてガス噛み量を相対値で表8に示す。また、図10に、極間距離とガス噛み量との関係を示す。
Figure 0007419794000008
表6~8および図8~10より、極間距離が1.3mmより小さくなると、極板の高さが160mm以上である場合には、ガスが急激に噛みやすくなることが理解できる。この傾向は極板の高さが高いほど顕著であり、極板の高さが高いほど、充放電サイクルを繰り返す場合の容量維持率の低下の課題が顕在化することが理解できる。
電池R4およびE1について、ガス噛み量を対比した結果を表9に示す。電池R4の場合を100%としてガス噛み量を相対値で表9に示す。
Figure 0007419794000009
表9より、セパレータの両面にリブを設ける場合、ガス噛みを抑制する観点からは、リブの高さは0.1mm以上であれば十分であることが理解できる。
《鉛蓄電池E6~E8》
正極板と負極板との距離(極間距離)を表10に示すように変化させたこと以外、極板の高さが278mmである電池E1と同様に、電池E6~E8を作製する。
[評価3]
下記条件で低温ハイレート放電性能を評価する。
(i)満充電状態の鉛蓄電池に対し、15℃±2℃で、定格容量(Ah)として記載の数値の0.25倍の電流(A)で3時間放電後、定格容量(Ah)として記載の数値の0.18倍の電流(A)で5時間充電する深放電サイクルを300サイクル繰り返す。
(ii)300サイクル後の満充電状態の鉛蓄電池を-15℃±2℃で定格容量(Ah)として記載の数値の1倍の電流(A)で放電電圧が1.0V/セルに達するまで放電するときの放電持続時間を測定する。
極間距離と、低温ハイレート性能放電との関係を表10に示す。また、図11に、極間距離と低温ハイレート放電性能との関係を示す。
Figure 0007419794000010
表10および図11より、極間距離が1.3mmを超えると、低温ハイレート放電性能が低下することが理解できる。これは、極間距離を1.3mm以上に広げることでガス噛みは改善されるものの、300サイクルを経過すると、極間距離が大きいことにより、負極電極材料の脱落が促進されるためであると考えられる。
《鉛蓄電池E9、R35》
負極電極材料に、ポリマー化合物(ポリプロピレングリコール(PPG)、Mw=2000)を、400ppm含ませたこと以外、電池E1と同様に電池E9を作製し、電池R4と同様に電池R35を作製する。極板の高さが278mmの電池E9、R35について、評価2の手順で、容量維持率を測定する。
表11に、各サイクル目の容量維持率を対比して示す。図12に、サイクル数と容量維持率との関係を示す。
Figure 0007419794000011
《鉛蓄電池R36、R37》
負極電極材料に、ポリマー化合物(ポリプロピレングリコール(PPG)、Mw=2000)を、400ppm含ませたこと以外、電池R1と同様に電池R36を作製し、電池R8と同様に電池R37を作製する。極板の高さが115mmの電池R36、R37について、評価2の手順で、容量維持率を測定する。
表12に、各サイクル目の容量維持率を対比して示す。図13に、サイクル数と容量維持率との関係を示す。
Figure 0007419794000012
表11、12および図12、13より、以下のことが理解できる。まず、極板の高さが278mmの場合には、セパレータの両面にリブを設け、かつ負極電極材料にPPGを含ませることにより、電池E9の結果が示すように、ガス噛みが改善し、充放電サイクルを長期的に繰り返す場合でも容量維持率が高くなることが理解できる。これは、セパレータの両面にリブを設けることにより、ガス噛みが改善されるため、PPGによってガス発生量が減少しても、少量のガスが効率よく対流し、成層化が進行しないためと考えられる。一方、PPGを用いない電池E1の場合、500サイクル程度までは、ガス噛みの解消により、容量維持率が改善するものの、充放電サイクルの末期にはガス発生による負極電極材料の脱落が生じ、容量維持率が低下するものと考えられる。また、負極電極材料にPPGを含ませ、かつセパレータの正極板側のみにリブを設けた電池R35の場合、ガス発生量は低減されるものの、ガス噛みは解消できず、かつガス発生量が減ることで電解液の攪拌が不十分となり、成層化により寿命性能が低下するものと考えられる。
極板の高さが115mmの場合には、極板の高さが低いため、そもそもガス噛みの問題が生じない。そのため、PPGの有無や、セパレータの両面におけるリブの有無による容量維持率への影響は見られない。
《鉛蓄電池E10~E12》
負極電極材料に含ませるPPG量を表13に示すように変化させたこと以外、電池E9と同様に電池E10~E12を作製し、評価2の手順で、容量維持率を測定する。
表13に、各サイクル目の容量維持率を対比して示す。図14に、負極電極材料中のPPG含有量とサイクル数と容量維持率との関係を示す。
Figure 0007419794000013
表13および図14より、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、質量基準で70ppm以上が好ましく、400ppm以下であれば十分であることが理解できる。なお、PPGを負極電極材料に400ppm以上添加しても、ガス発生量を低減する効果は、それ以上は大きく向上しない。
《鉛蓄電池E13、E14》
負極電極材料に含ませるPPG量を表14に示すように変化させたこと以外、電池E9と同様に電池E13、E14を作製し、初期容量を測定する。初期容量は、鉛蓄電池を30℃±2℃の水槽中で定格容量(Ah)として記載の数値の0.2倍の電流(A)で5時間放電するときの容量である。初期容量の測定は、化成後の、充放電サイクル試験に供する前の電池に対して、満充電状態で実施する。結果をPPG含有量が0ppmの場合を100%として、相対値で表14および図15に示す。
Figure 0007419794000014
表14および図15より、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、初期容量の観点からは、質量基準で400ppm未満が好ましく、300ppm以下がより好ましいことが理解できる。
《鉛蓄電池R38~R40》
負極電極材料に含ませるPPG量を表15に示すように変化させたこと以外、電池R35と同様に電池R38~R40を作製する。また、電池E1、E10~E13、R4、R35、R38~R40の自己放電量を求める。
[評価4]
自己放電量は、電池を75℃の水槽に入れ10日間放置して測定する。具体的には、下記のように自己放電速度(%/day)を求める。
(i)放置前の満充電の電池を、定格容量(Ah)として記載の数値の0.2倍の電流(A)で1.7V/セルに到達するまで放電して、放置前の放電容量C1を測定し、その後、満充電する。
(ii)75℃±2℃の環境下で電池を10日間放置する。
(iii)75℃±2℃の環境下で放置後の電池の放電容量C2を測定し、その後、満充電する。
(iv)再度、満充電の電池を、定格容量(Ah)として記載の数値の0.2倍の電流(A)で1.7V/セルに到達するまで放電して、放電容量C3を測定する。
次式から、一日あたりの自己放電量RSD(%/day)を求める。
RSD=[(C1+C3-2C2)/10(C1+C3)]×100
表15および図16に、負極電極材料中のPPG含有量と自己放電量との関係を示す。
Figure 0007419794000015
セパレータの片面にリブを設ける場合には、負極電極材料にPPGを添加すると、ガス発生による電解液の攪拌が不十分となるため、成層化が進行し、その結果として自己放電が促進されるものと考えられる。一方、セパレータの両面にリブを設ける場合には、ガス噛みが改善されるため、PPGによってガス発生量が減少しても、少量のガスが効率よく対流し、成層化が進行しにくい。そのため、図16に示すように、PPG含有量の増加に伴って自己放電が減少するものと考えられる。この傾向は、PPG含有量の増加に伴って自己放電が微増するセパレータの片面にリブを設ける場合とは逆の傾向である。
《鉛蓄電池R41~R43》
負極板の作製において、有機防縮剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムの代わりに縮合物Aを用いるとともに、化成後の負極電極材料の密度(NAM密度)を2.9g/cm3に変更したこと以外、電池R2、R4およびR6と同様に電池R41、R42、R43を作製する。
縮合物A:スルホン酸基を導入したビスフェノールA化合物とビスフェノールS化合物とのホルムアルデヒドによる縮合物(硫黄元素含有量:3800μmol/g、Mw=8000)
表16および図17に、縮合物Aを用いた極板の高さHと、200サイクル目の有効極板面積S´と、実際の極板面積S(極板の高さ×幅)との関係を示す。
Figure 0007419794000016
表16および図17より、極板の高さが高くなるほどガス噛み量が増加し、有効極板面積S´と、実際の極板面積Sとの間に大きな差が生じることが理解できる。
《鉛蓄電池E15~E17》
負極板の作製において、有機防縮剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムの代わりに縮合物Aを用いるとともに、化成後の負極電極材料の密度を2.9g/cm3に変更したこと以外、電池E1、E2およびE5と同様に電池E15、E16、E17を作製する。
表17に、電池R41、42、43および電池E15、E16、E17の200サイクル目の容量維持率を対比して示す。
Figure 0007419794000017
図18に、縮合物Aを用いた極板の高さと200サイクル目の容量維持率との関係を示す。図19に、縮合物Aを用いた極板の高さと両面リブによる容量維持率の改善幅との関係を対比して示す。図18、19より、セパレータの両面に第1リブおよび第2リブを設けた電池は、正極板側のみに第1リブを設けた電池に比べて200サイクル目の容量維持率が顕著に改善され、その改善幅は極板の高さが高いほど顕著になることが理解できる。
《鉛蓄電池R44~R46》
負極板の作製において、有機防縮剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムの代わりに縮合物Bを用いるとともに、化成後の負極電極材料の密度を2.9g/cm3に変更したこと以外、電池R2、R4およびR6と同様に電池R44、R45、R46を作製する。
縮合物B:ビスフェノールS化合物とフェノールスルホン酸とのホルムアルデヒドによる縮合物(硫黄元素含有量:4000μmol/g、Mw=8000)
表18および図20に、縮合物Bを用いた極板の高さHと、200サイクル目の有効極板面積S´と、実際の極板面積S(極板の高さ×幅)との関係を示す。
Figure 0007419794000018
表18および図20より、極板の高さが高くなるほどガス噛み量が増加し、有効極板面積S´と、実際の極板面積Sとの間に大きな差が生じることが理解できる。
《鉛蓄電池E18~E20》
負極板の作製において、有機防縮剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムの代わりに縮合物Bを用いるとともに、化成後の負極電極材料の密度を2.9g/cm3に変更したこと以外、電池E1、E2およびE5と同様に電池E18、E19、E20を作製する。
表19に、電池R44、45、46および電池E18、E19、E20の200サイクル目の容量維持率を対比して示す。
Figure 0007419794000019
図21に、縮合物Bを用いた極板の高さと200サイクル目の容量維持率との関係を示す。図22に、縮合物Bを用いた極板の高さと両面リブによる容量維持率の改善幅との関係を対比して示す。図21、22より、セパレータの両面に第1リブおよび第2リブを設けた電池は、正極板側のみに第1リブを設けた電池に比べて200サイクル目の容量維持率が顕著に改善され、その改善幅は極板の高さが高いほど顕著になることが理解できる。
《鉛蓄電池R47~R49》
負極板の作製において、有機防縮剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムの代わりに縮合物Cを用いるとともに、化成後の負極電極材料の密度を2.9g/cm3に変更したこと以外、電池R2、R4およびR6と同様に電池R47、R48、R49を作製する。
縮合物C:スルホン酸基を導入したビスフェノールA化合物とフェノールスルホン酸とのホルムアルデヒドによる縮合物(硫黄元素含有量:3970μmol/g、Mw=8000)
表20および図23に、縮合物Cを用いた極板の高さHと、200サイクル目の有効極板面積S´と、実際の極板面積S(極板の高さ×幅)との関係を示す。
Figure 0007419794000020
表20および図23より、極板の高さが高くなるほどガス噛み量が増加し、有効極板面積S´と、実際の極板面積Sとの間に大きな差が生じることが理解できる。
《鉛蓄電池E21~E23》
負極板の作製において、有機防縮剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムの代わりに縮合物Cを用いるとともに、化成後の負極電極材料の密度を2.9g/cm3に変更したこと以外、電池E1、E2およびE5と同様に電池E21、E22、E23を作製する。
表21に、電池R47、48、49および電池E21、E22、E23の200サイクル目の容量維持率を対比して示す。
Figure 0007419794000021
図24に、縮合物Cを用いた極板の高さと200サイクル目の容量維持率との関係を示す。図25に、縮合物Cを用いた極板の高さと両面リブによる容量維持率の改善幅との関係を対比して示す。図24、25より、セパレータの両面に第1リブおよび第2リブを設けた電池は、正極板側のみに第1リブを設けた電池に比べて200サイクル目の容量維持率が顕著に改善され、その改善幅は極板の高さが高いほど顕著になることが理解できる。
《鉛蓄電池R50~R53》
極間距離を表22に示すように変化させ、負極板の作製において有機防縮剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムの代わりに縮合物Aを用いるとともに、化成後の負極電極材料の密度を2.9g/cm3に変更したこと以外、電池E1と同様に、電池R50~R53を作製し、評価1の手順で、ガス噛み量を測定する。
極間距離が0.6mmの電池R4を100%としてガス噛み量を相対値で表16に示す。また、図26に、縮合物Aを用いた極板の極間距離とガス噛み量との関係を■プロットで示す。図中、○プロットは、表6のR4、R11~R18のプロットである。
Figure 0007419794000022
表22および図26より、極間距離が1.3mmより小さくなると、縮合物を用いた場合でもガス噛みが顕著になることが理解できる。つまり、有機防縮剤として縮合物を用いるだけではガス噛みを解消できず、両面にリブを有するセパレータを用いる必要があることが理解できる。
本発明に係る鉛蓄電池は、主に液式の鉛蓄電池に適し、自動車、バイクなどの始動用電源や、フォークリフトなどの電気車もしくは電動車両などの産業用蓄電装置などの電源として好適である。
1:鉛蓄電池
2:負極板
3:正極板
4:セパレータ
5a:負極用ストラップ
5b:正極用ストラップ
6a:負極柱
6b:正極柱
10:電槽
11:極板群

Claims (7)

  1. 正極板と、負極板と、前記正極板および前記負極板の間に介在するセパレータと、電解液とを備え、
    前記正極板および前記負極板の高さは、それぞれ160mm以上であり、
    前記セパレータは、前記正極板側の第1表面に第1リブを備え、かつ前記負極板側の第2表面に第2リブを備える、鉛蓄電池。
  2. 前記正極板と前記負極板との距離が、1.3mm以下である、請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 前記第1リブおよび前記第2リブの高さが、それぞれ0.1mm以上である、請求項1または2に記載の鉛蓄電池。
  4. 前記第2リブの高さが、前記セパレータの総厚の10%~70%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  5. 前記負極板が、負極集電体と、負極電極材料と、を備え、
    前記負極電極材料が、ポリマー化合物を含み、
    前記ポリマー化合物は、H-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲にピークを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  6. 前記負極板が、負極集電体と、負極電極材料と、を備え、
    記負極電極材料が、ポリマー化合物を含み、
    前記ポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  7. 前記負極電極材料中の前記ポリマー化合物の含有量が、質量比で15ppm~370ppmである、請求項5または6に記載の鉛蓄電池。
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