JP7407415B2 - Cd4陽性制御性t細胞の製造方法 - Google Patents

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本発明は、多能性幹細胞を介してCD4陽性制御性T細胞(Treg)を製造する方法に関する。
制御性T細胞(Treg)は、免疫応答抑制機能を持つため、自己免疫疾患の治療、炎症性疾患、アレルギー疾患、移植片対宿主病(GVHD)の治療や予防などに用いることが期待できる。体外で増幅させてTregを輸注し治療に用いる方法が考えられるが、Tregはin vitroでの増殖効率が悪く、凍結保存も困難である。必要時に十分なTregを安定して得ることは難しい。
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、Tリンパ球(CD4CD25T細胞)に感染し、悪性腫瘍である成人T細胞白血病(ATL)や難治性神経疾患であるHTLV-1関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy:HAM)の原因となるレトロウイルスであり、日本に現在約80万人の感染者が存在すると推定されている。HTLV-1のウイルス遺伝子の中にはTax及びHTLV-1 bZIP factor(HBZ)という2つのがん遺伝子が含まれており、これらの作用により感染細胞ががん化すると考えられている。
また、ATL細胞は、CD4CD25CCR4Foxp3であり、腫瘍細胞のオリジンは制御性T細胞に由来すると考えられている。
一方、近年、人工多能性幹(iPS)細胞などの多能性幹細胞から各種T細胞を誘導する技術が報告されており、当該技術を利用することにより、抗腫瘍免疫応答を惹起したり、自己に対する異常あるいは過剰な免疫応答を制御する等の様々な細胞免疫療法が可能になる。
これまでに抗原特異的なT細胞からiPS細胞を作り、再び由来となった細胞と同じ抗原特異性を示すT細胞に分化誘導する方法が報告されている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、この方法ではCD8陽性T細胞の誘導はできるもののCD4陽性T細胞を誘導することは困難であり、人工的にCD4遺伝子を遺伝子導入しないと誘導できないのが実状であった。
国際公開第2011/096482号 特許6164746号公報
本発明は、多能性幹細胞を介してCD4陽性制御性T細胞を確率よく製造する方法を提供することに関する。
本発明者らは、上記課題を達成すべく検討したところ、成人T細胞白血病(ATL)患者由来のHTLV-1感染CD4陽性T細胞からiPS細胞を作り、再びT細胞に分化誘導させた場合に、Tregと同じ発現型を持つCD4陽性T細胞が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の1)~2)に係るものである。
1)HTLV-1感染CD4陽性T細胞からiPS細胞を誘導する工程、及び該iPS細胞をCD4陽性制御性T細胞に分化させる工程を含む、CD4陽性制御性T細胞の製造方法。
2)1)の方法により製造されたCD4陽性制御性T細胞を含有する医薬組成物。
本発明によれば、iPS細胞を介して、CD4遺伝子を導入すること無く、CD4陽性制御性T細胞を生産することが可能である。これにより、例えば自己に対する異常あるいは過剰な免疫応答を制御するような細胞免疫療法が可能になる。
CD4T-iPS細胞におけるTax及びHBZ遺伝子発現の確認。 HTLV-1感染CD4T-iPSとCD4T細胞クローン由来iPSから分化誘導されたT細胞の表現型。 HTLV-1感染CD4T-iPSより誘導したCD4陽性T細胞の表現型。 TCRCβ1のサザンブロッティングによる遺伝子再構成の確認。 分化誘導されたCD4T細胞におけるTax及びHBZ遺伝子発現の確認。
本発明のCD4陽性制御性T細胞の製造方法は、HTLV-1感染CD4陽性T細胞からiPS細胞を誘導する工程、及び該iPS細胞をCD4陽性T細胞に分化誘導する工程を含む。
(1)HTLV-1感染CD4陽性T細胞の単離
HTLV-1感染CD4陽性T細胞は、例えばATL患者の組織から公知の手法により単離することができる。ALT患者の組織としては、CD4陽性T細胞を含む組織、例えば、末梢血、リンパ節、骨髄、胸腺、脾臓、臍帯血、病変部組織が挙げられる。これらの中では、ヒトに対する侵襲性が低く、調製が容易であるという観点から、末梢血が好ましい。
本発明において、HTLV-1感染CD4陽性T細胞としては、CD4CD25T細胞が挙げられ、好ましくはCD4CD25CCR4T細胞であり、より好ましくはCD4CD25CCR4Foxp3T細胞である。
HTLV-1感染CD4陽性T細胞を単離するための公知の手法としては、例えば、細胞分離用磁気ビーズなどを用いる磁気セレクション、抗CD4抗体とセルソーターとを用いたフローサイトメトリーなどが挙げられる。
(2)HTLV-1感染CD4陽性T細胞からiPS細胞(「CD4T-iPS細胞」と称す)の樹立
単離されたHTLV-1感染CD4陽性T細胞は、初期化してiPS細胞とされる。
ここで、「iPS細胞」とは、人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cell)又は誘導性多能性幹細胞とも称される細胞であり、HTLV-1感染CD4陽性T細胞に細胞初期化因子を導入することにより誘導することができる。
「細胞初期化因子」は、前記CD4陽性T細胞に導入されることにより、単独で、又は他の分化多能性因子と協働して該体細胞に分化多能性を付与できる因子であれば特に制限されることはないが、Oct3/4、c-Myc、Sox2、Klf4、Klf5、LIN28、Nanog、ECAT1、ESG1、Fbx15、ERas、ECAT7、ECAT8、Gdf3、Sox15、ECAT15-1、ECAT15-2、Fthl17、Sal14、Rex1、Utf1、Tcl1、Stella、β-catenin、Stat3、及びGrb2からなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質であるであることが好ましい。さらにこれらのタンパク質の中では、少ない因子で効率良くiPS細胞を樹立できるという観点から、Oct3/4、Sox2、Klf4及びc-Mycの4因子を前記CD4陽性T細胞に導入することがより好ましい。
本発明において、HTLV-1感染CD4陽性T細胞に前記細胞初期化因子を導入する方法としては特に制限はなく、公知の手法を適宜選択して、タンパク質の形態又は核酸の形態で導入することができる。例えば、前記前記細胞初期化因子をコードする核酸の形態で前記CD4陽性T細胞に導入する場合においては、当該核酸(例えば、cDNA、RNA)を、T細胞で機能するプロモーターを含む適当な発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを感染、リポフェクション法、リポソーム法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム共沈殿法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、CRISPR/Cas9などのゲノム編集にて細胞に導入することができる。
このような発現ベクターとしては、例えば、レンチウィルス、レトロウィルス、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、ヘルペスウィルス、センダイウィルス等のウィルスベクター、動物細胞発現プラスミドが挙げられるが、挿入変異が生じにくく、また遺伝子導入効率が高く、導入される遺伝子のコピー数も多いという観点から、センダイウィルスを用いて、前記細胞初期化因子をコードする核酸を前記CD4陽性T細胞に導入することが好ましい。
かかる発現ベクターにおいて使用されるプロモーターとしては、例えばSRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、RSVプロモーター、HSV-TKプロモーター等が挙げられる。また、かかるプロモーターは薬剤(例えば、テトラサイクリン)の有無等によって、該プロモーターの下流に挿入された遺伝子の発現を制御できるものであってもよい。発現ベクターは、さらに、プロモーターの他に、エンハンサー、ポリA付加シグナル、選択マーカー遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子)、SV40複製起点等を含有していてもよい。
また、斯かる核初期化因子の導入に際しては、核初期化因子と共にSV40 large T抗原を導入対象の細胞に発現させるのが同細胞の初期化までに要する増殖と生存率の上昇をする点で好ましい。
したがって、HTLV-1感染CD4陽性T細胞に細胞初期化因子を導入する場合の最適な態様として、Oct3/4、Sox2、Klf4及びc-Mycの4因子をコードする核酸を挿入したセンダイウィルスベクターとSV40 large T抗原をコードする核酸を挿入したセンダイウィルスベクターを前記CD4陽性T細胞に感染することが挙げられるが、他の因子を追加したセンダイウイルスベクターで樹立する、もしくはSV40 large T抗原をコードする核酸を挿入したセンダイウィルスベクターを用いずに樹立することもある。
また、T-iPS細胞を樹立する際には、HTLV-1感染CD4陽性T細胞は、前記遺伝子の導入前に、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-7(IL-7)又はインターロイキン-15(IL-15)の存在下にて抗CD3抗体、抗CD28抗体によって刺激して活性化してもよく、フィトヘマグルチニン(PHA)、インターロイキン-2(IL-2)、同種抗原発現細胞、抗CD3抗体、抗CD28抗体、CD3アゴニスト及びCD28アゴニストからなる群から選択される少なくとも1の物質によって刺激して活性化してもよい。かかる刺激は、例えば、培地中に、PHA、IL-2、抗CD3抗体及び/又は抗CD28抗体等を添加して前記HTLV-1感染CD4陽性T細胞を一定期間培養することによって行うことができる。また、抗CD3抗体及び/又は抗CD28抗体は磁性ビーズ等が結合されているものであってもよく、さらにこれらの抗体を培地中に添加する代わりに、抗CD3抗体及び/又は抗CD28抗体を表面に結合させた培養ディッシュ上で前記HTLV-1感染CD4陽性T細胞を一定期間培養することによって刺激を与えてもよい。
前記HTLV-1感染CD4陽性T細胞を培養する培地としては、例えば、T細胞の培養に適した公知の培地(より具体的には、他のサイトカイン類、ヒト血清を含む、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地、AIM VTM medium、NS-A2を用いることができる。培地には、培養に必要なアミノ酸(例えば、L-グルタミン)、抗生物質(例えば、ストレプトマイシン、ペニシリン)が添加してあっても良い。
また、前記HTLV-1感染CD4陽性T細胞に前記細胞初期化因子等を導入する際、又はその後の条件としては特に制限はないが、前記因子を導入した前記HTLV-1感染CD4陽性T細胞は、フィーダーフリー条件下で培養するのが好ましい。例えば、ラミニン511E8断片であるiMatrix-511溶液又はビトロネクチンもしくはマトリジェルでコーティングされたウェルが挙げられる。フィーダー細胞条件下での培養でも樹立可能であり、フィーダー細胞としては例えば、放射線の照射や抗生物質処理により細胞***を停止させたマウス胎児繊維芽細胞(MEF)、STO細胞、SNL細胞が挙げられる。
さらに、前記HTLV-1感染CD4陽性T細胞からT-iPS細胞に誘導する過程において、翌日からiPS細胞の培地を添加しておくことが好ましい。その後は1日おきに半量ずつ培地交換を行い、徐々にCTL培地からiPS培地に置換するのが好ましい。
また、前記HTLV-1感染CD4陽性T細胞からiPS細胞への移行に合わせて、T細胞の培養に適した公知の培地から、iPS細胞の培養に適した培地に徐々に置換していきながら培養することが好ましい。かかるiPS細胞の培養に適した培地としては、公知の培地を適宜選択して用いることができ、例えば、iMatrixコーティングした場合にはStemFit AK03Nもしくはビトロネクチンでコーティングした場合にはEssential 8 Medium、マトリジェルの場合はmTeSR、MEF細胞などのフィーダー細胞上ではノックアウト血清代替物、L-グルタミン、非必須アミノ酸、2-メルカプトエタノール、及びb-FGF等を含有する、ダルベッコ変法イーグル培地/F12培地(ヒトiPS細胞培地)が望ましい。
このようにして前記HTLV-1感染CD4陽性T細胞から誘導したT-iPS細胞の選択は、公知の手法を適宜選択することによって行うことができる。かかる公知の手法としては、例えば、iPS細胞様コロニーの形態を顕微鏡下にて観察して選択する方法が挙げられる。また、T-iPS細胞の各コロニーを選択せず、樹立できたコロニーを全てそのまま継代する方法でもよい。
選択された細胞がT-iPS細胞であるということの確認は、例えば、選択された細胞における未分化細胞特異的マーカー(SSEA-4、Tra-1-60、及びTra-1-81等)の発現をq-PCR等によって検出する方法やALP染色で確認する方法、選択された細胞をマウスに移植して、そのテラトーマ形成を観察する方法により行うことができる。また、このようにして選択された細胞が前記HTLV-1感染CD4陽性T細胞由来であることの確認は、Tax、HBZ遺伝子の定量をqPCRによって検出することにより行うことができる。
これらの細胞を選択して回収する時期は、コロニーの生育状態を観察しながら、適宜決定することができ、概ね、前記細胞初期化因子を前記HTLV-1感染CD4陽性T細胞に導入してから10~40日、好ましくは14日~28日である。培養環境としては、上記にて特に断りのない限り、好ましくは、5%CO2、35~38℃、より好ましくは37℃の条件である。低酸素培養環境下(酸素濃度:例えば、5%)においてもコロニーの効率良い生育が観察できる。
(3)T-iPS細胞からCD4陽性制御性T細胞への分化誘導
樹立されたCD4T-iPS細胞をCD4陽性制御性T細胞へ分化させるためには、中胚葉系への分化を誘導し易くするという観点から、先ずはT-iPS細胞をフィーダー細胞(好ましくはストローマ細胞、より好ましくはヒトストローマ細胞)上にて、VEGF、血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS))、インスリン、トランスフェリン、L-グルタミン、α-モノチオグリセロール、アスコルビン酸等を含有する培地中にて培養することが好ましい。用いるストローマ細胞としては、造血系への分化を誘導し易くするという観点から、OP9細胞、10T1/2細胞(C3H10T1/2細胞)であることが好ましい。
また、培地としては、例えば、X-VIVO培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM培地)、α-MEM、DMEMが挙げられるが、造血前駆細胞等の誘導細胞を含有する袋状の構造物(「T-iPSサック」とも称する)の形成効率が高いという観点から、IMDM培地が好ましい。このT-iPS細胞の培養期間としては、T-iPSサックを形成するまでの期間であることが好ましく、T-iPS細胞の培養を開始してから好ましくは8~14日間、より好ましくは10~14日間である。培養環境としては、特に制限はないが、好ましくは、5%CO、35~38℃、より好ましくは37℃の条件である。また、T-iPSサックの形成効率が高く、T-iPSサックに含まれる血球細胞の数が多いという観点から、7日間は低酸素濃度条件(酸素濃度:例えば、5%)下にて培養することがより好ましい。
次いで、得られたサックに含有されている誘導細胞(造血前駆細胞等)を、サイトカインやFCS等を含有するα-MEM培地中におけるストローマ細胞上で培養する。なお、かかるサック状構造物の内部に存在する細胞は、物理的な手段、例えば、滅菌済みの篩状器具(例えば、セルストレイナーなど)に通すことにより、分離することができる。この培養に用いるフィーダー細胞としては、Notch受容体リガンドを発現するOP9細胞、10T1/2細胞であることが好ましい。培地に添加するサイトカインとしては、IL-7、FLT3L、SCF、TPOが好ましい。
このT-iPSサックに含有されている誘導細胞の培養期間としては、T-iPSサックに含有されている細胞の培養を開始してから約28日間であることが好ましい。培養環境としては、特に制限はないが、好ましくは、5%CO、35~38℃、より好ましくは37℃の条件である。
尚、Treg様のphenotypeが発現しているか否かは、抗CD34抗体、抗CD45抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD25抗体、FOXP-3、抗CCR4抗体等を用いた細胞内染色後のフローサイトメトリーにより評価することができる。
次いで、誘導された細胞のT細胞受容体に刺激を与える。T細胞受容体に刺激を与える方法としては、抗CD3抗体、抗CD28抗体、X線照射した末梢血単核球にPHA等を添加して前記誘導細胞を一定期間培養することによって行うことができる。
斯くして分化誘導された細胞は、TCR遺伝子再構成の状態をゲノムPCRによって検出することや細胞内染色を用いたフローサイトメトリーにより、該T-iPS細胞の元となったCD4陽性T細胞(例えば、CD4CD25CCR4Foxp3T細胞)由来であることを確認することができる。
斯くして得られたCD4陽性制御性T細胞は、公知の手法を適宜選択して単離することができる。かかる公知の手法としては、例えば、CD4等の細胞表面マーカーに対する抗体と、セルソーターとを用いたフローサイトメトリーが挙げられる。
本発明の方法によって製造したCD4陽性制御性T細胞は、免疫応答抑制機能を有するため、例えば、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー疾患、移植片対宿主病(GVHD)の治療又は予防のために用いることができる。従って、本発明は、本発明の方法によって製造したCD4陽性制御性T細胞を含む医薬組成物を提供する。
本発明の医薬組成物は、本発明の方法によって製造したCD4陽性制御性T細胞を、公知の製剤学的方法により製剤化することにより調製することができる。例えば、注射剤(静脈注射剤、点滴注射剤等)、カプセル剤、液剤、フィルムコーティング剤などとして、主に非経口的に使用することができる。
これら製剤化においては、薬理学上許容される担体又は媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、無痛化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等と適宜組み合わせることができる。また、前記疾患の治療又は予防に用いられる公知の医薬組成物や免疫賦活剤等と併用してもよい。
本発明の医薬組成物を投与する場合、その投与量は、対象の年齢、体重、症状、健康状態、組成物の種類(医薬品、飲食品など)などに応じて、適宜選択される。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 HTLV-1感染CD4陽性T細胞からCD4陽性T細胞(Treg)の製造
(1)HTLV-1感染CD4陽性T細胞の単離
ATL患者の末梢血より末梢血単核球を分離後、CD4ビーズでポジティブセレクションを行いCD4陽性T細胞を単離した。得られたT細胞の表現型を、各種細胞表面マーカーを用いてフローサイトメトリーにて分析して、CD3CD4CD25強陽性であることを確認した。
(2)T-iPS細胞の樹立
(1)で取得したHTLV-1感染CD4陽性T細胞に、核初期化因子(Oct4,Sox2,Klf4,c-Myc)を含むセンダイウイルス(SeV)ベクター(SeVp[KOSM302L])と、SV40 large T抗原をコードする核酸を含むSeVベクターを感染させて遺伝子導入した。
iMatrixでコートした6wellプレートに遺伝子導入後のT細胞を移動し、IL-2を加えたT細胞培地(培地の組成:RPMI、10%ヒトAB血清)にて、COインキュベーターで培養した。
遺伝子導入の翌日に、iPSメディウム(StemFitAK03N)を等量加え、その後は1日おきに半量ずつStem FitAK03Nに置換した。
21日後にT-iPS細胞のコロニーが観察でき、その後コロニーピックアップを行った。
(3)CD4T-iPS細胞からCD4陽性細胞への分化誘導
(2)で得られたT-iPS細胞を細かく砕きフィーダー細胞である10T1/2上でVEGF、FBS、インスリン、トランスフェリン、L-グルタミン、α-モノチオグリセロール、アスコルビン酸等を含有する培地中にて最初の1週間を低酸素培養、次の1週間を20%酸素濃度のインキュベーターで培養した。その後Notch Ligandが発現する10T1/2フィーダー細胞上で更に4週間サイトカイン(IL-7、FLT3L、SCF)と共に、1週間に1回新たなフィーダー細胞に載せかえながら培養し、4週間後に浮遊細胞を全て回収し、T細胞受容体(TCR)刺激した。TCR刺激はX線照射した同種末梢血単核球とPHA、もしくは抗CD3/CD28抗体で約2週間ごとに刺激した。
(4)結果と考察
CD4T-iPS細胞のTaxとHBZ遺伝子の発現をqPCRで確認した(図1)。 もとのHTLV-1感染CD4陽性T細胞(ATL PBMC)と比較し、CD4T-iPS細胞(CD4T-iPS)のTax遺伝子とHBZ遺伝子の発現は1/1000以下に低下していた。
図2にCD4T-iPSから分化誘導により得られたT細胞の表現型を、細胞内染色を行いフローサイトメトリーにて解析した結果を示す。コントロールとして健常人由来CD4T細胞クローンから樹立したCD4T cell clone-iPSから同時にCD4T細胞の分化誘導を試みている。HTLV-1感染CD4T細胞由来CD4T-iPS細胞から分化誘導を行うと、CD4T細胞が多数誘導されている(No.1:20%、No.2:20.9%)。さらにCD4陽性細胞にゲートしてFOXP3とCD25の発現を確認したところダブルポジティブの細胞が確認できた。一方でHTLV-1感染のないCD4T細胞から誘導したT-iPS細胞からはCD4陽性T細胞はわずか1.57%しか誘導されず、FOXP3,CD25陽性細胞は0%であった。図3に示すようにHTLV-1感染CD4T-iPSより誘導したCD4陽性T細胞はFOXP3陽性、CCR4陽性、CD25陽性でありTreg様のフェノタイプを示した。図4に示すようにサザンブロット法でTCRCβ1の再構成を確認すると、もとのATL細胞は腫瘍性のクローン性増殖を認めるが、樹立したiPS細胞と分化誘導したCD4T細胞には腫瘍性のクローン性増殖を認めなかった。また図5に示すように、分化誘導したCD4T細胞はTax,HBZの発現も消失していた。
これより、通常のiPS細胞からはCD4T細胞の誘導は極めて困難でありTregのフェノタイプも確認できなかったが、HTLV-1感染CD4T細胞から樹立したCD4T-iPS細胞からCD4陽性制御性T細胞が誘導できることを確認した。分化誘導したCD4T細胞は腫瘍性のクローン性増殖を認めず、またHTLV-1感染で陽性となるTax,HBZの発現も消失しているため、細胞治療に使用できることが期待できる。
制御性T細胞(Treg)は免疫応答抑制機能を持つため、自己免疫疾患の治療、炎症性疾患、アレルギー疾患、移植片対宿主病(GVHD)の治療や予防などに用いることが期待できる。体外で増幅させてTregを輸注し治療に用いる方法が考えられるが、Tregはin vitroでの増殖効率が悪く、凍結保存も困難である。必要時に十分なTregを安定して得ることは難しい。これまでに抗原特異的なT細胞からiPS細胞を作り、再び由来となった細胞と同じ抗原特異性を示すT細胞に分化誘導する方法が報告されている(前記特許文献1、特許文献2)。しかしながら、この方法ではCD8陽性T細胞の誘導はできるものCD4陽性T細胞を誘導することは困難であり、人工的にCD4遺伝子を遺伝子導入しないと誘導できないのが実状であった。本発明によれば、HTLV-1感染CD4T細胞から樹立したCD4T-iPS細胞からであればCD4遺伝子導入を行わずにCD4陽性制御性T細胞の誘導が可能である。分化誘導したCD4陽性制御性T細胞は腫瘍性のクローン性増殖を認めず、またHTLV-1感染で陽性となるTax,HBZの発現も消失しているため、免疫応答を抑制する細胞治療に使用できることが期待できる。

Claims (2)

  1. HTLV-1感染CD4陽性T細胞からiPS細胞を誘導する工程、及び該iPS細胞をCD4陽性制御性T細胞に分化させる工程を含む、CD4陽性制御性T細胞の製造方法。
  2. CD4陽性制御性T細胞が医薬組成物を調製するために用いられる、請求項1記載の方法
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