JP7406776B1 - アクアポニックスシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】生物ろ過装置を小さくし、農作物の窒素源を増やすとともに、逆洗洗浄等極力減らして新たな水の供給を最低限に抑えることができるアクアポニックスシステム及び水産物養殖・農産物栽培方法提供する。【解決手段】水棲生物を養殖する養殖槽2と水耕栽培で農作物を栽培する水耕栽培部3を備え、システム内で循環水を循環させて水産物と農産物の両方を生産するアクアポニックスシステム1において、水耕栽培部3を養殖槽2の循環水の流れる方向の下流に設けて直接接続し、養殖槽2から所定の期間糞尿や残餌を含んだ状態の水を供給し続け、水耕栽培部3に自然界に存在する有機物分解微生物群を増殖させて植物根圏を形成し、水耕栽培部3の循環水が流れる方向の上流にpH調整を行う調整槽6を備え、調整槽6では、水耕栽培部3で栽培する農産物に応じてpH調整を行う。【選択図】図3

Description

本発明は、アクアポニックスシステムに関する。
従来、水棲生物の糞尿や残餌に由来するアンモニアや亜硝酸を、微生物によって魚毒性の低い硝酸まで硝化するとともに、硝酸を肥料(主に、窒素N・リンP・カリウムK)として利用できる農産物を並行して栽培し、水産物と農産物の両方を生産するアクアポニックスシステムが知られている。
例えば、特許文献1には、水産養殖部で水棲生物を養殖し、水耕栽培部で農産物を栽培するアクアポニックスシステムの水耕栽培部用のメディアベッドにおいて、水産養殖部から供給された水を浄化する浄化槽と、メディアベッド内の水の鉛直方向の水位が第1の水位に達した場合に、第2の水位になるまで水を排出する溶液間歇装置と、鉛直方向下側から吸水シート、防根透水シート及び培地を含んで構成される栽培部と、を有し、第1の水位は、吸水シートの位置に設定されているメディアベッドが開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0018]~[0095]、図面の図1~図10等参照)。
また、特許文献2には、植物Ptを栽培する栽培槽100と魚類Fsを養殖する養殖槽200とを備え、栽培槽と養殖槽との間で水を循環させるものであって、養殖槽200は、第1の高さに位置するバルブ付き第1排水口210と、第1の高さより高い第2の高さに位置する第2排水口220とを備え、栽培槽は、植物を栽培するための栽培棚110を備え、栽培養殖システムは、バルブ付き第1排水口210からの排水を栽培槽100内において栽培棚110より低い位置に流すための第1配管1と、第2排水口220からの排水を栽培槽内において栽培棚より高い位置に流すための第2配管2と、養殖槽から栽培槽に流れる水を栽培槽から養殖槽に戻す第3配管3とを備えた栽培養殖システム1000が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0012]~[0023]、図面の図1,図2等参照)。
しかし、特許文献1のアクアポニックスシステムには、物理ろ過及び生物ろ過によって水耕栽培部用のメディアベッドを浄化することが記載されている(特許文献1の段落[0030]等参照)。また、特許文献2のアクアポニックスシステム(栽培養殖システム1000)には、養殖槽から栽培槽内に流れる水を浄化する栽培槽側フィルターを設け、バクテリアによる水質浄化を行うことが記載されている(特許文献2の段落[0017]等参照)。
つまり、従来のアクアポニックスシステムは、図9(a)に示すように、養殖水槽から発生する糞尿や残餌に含まれる(主にアンモニア態窒素、NH4 +)を直接生物ろ過装置の硝酸菌により、硝酸態窒素(NO3 -)へほぼ100%酸化処理し、次に水耕栽培部で植物が硝酸態窒素を窒素源として吸収する仕組みである。そのため、養殖水槽容量に対して、生物ろ過装置(生物浄化ユニット)の大きさは約2~3倍に大きくなるのが現状で、使用期間中に浮遊物が詰まることを防ぐため、頻繁に逆洗洗浄等の物理的な浄化処理が必要になるという問題があった。
また、生物浄化ユニットの負担を低減し生物ろ過装置を小さくするため、図9(b)に示すように、物理ろ過装置を設置することも行われている。しかし、生物ろ過装置が小規模にできても、別途物理ろ過装置が必要であり、全体として装置の小型化につながらない上、物理ろ過装置も浄化処理が必要であるという問題がある。
また、特許文献3には、閉鎖循環式の飼育水を一切捨てることなく、食品として安全な有機栽培の水耕栽培様に再利用する水耕栽培と陸上養殖装置及び水質管理方法が開示されている(特許文献3の明細書の段落[0005]~[0023]、図面の図1等参照)。
しかし、特許文献3に記載の水耕栽培と陸上養殖装置及び水質管理方法は、具体的な記載が乏しくなぜ閉鎖循環式の飼育水を一切捨てることなく水耕栽培様に再利用することが実現できているのかが不明である。
また、図9に示すように、従来のアクアポニックスシステムは、水耕栽培で栽培する農作物の窒素源はNO3 -のみである。これらのNO3 -が取り込まれた農作物が人体に摂取されると、発がん性物質であるニトロンアミンと呼ばれる有害物質に変化することが知られている。そのため、農作物、特に葉菜類では、可食の葉にNO3 -濃度が高くならないように注意しなければならないという問題もある。
その上、アクアポニックスシステムに利用する水は、初期のみ供給して、年間総水量に対して約10%程度の蒸発する分の水だけ補給するのが理想である。しかしながら、従来のアクアポニックスシステムでは、蒸発する水に加え、総固形物(TS:Total solids)の蓄積があるため貯まった固形物や有機物を取り除く必要がある。その上、生物ろ過槽による水浄化能力だけでは足りず、物理ろ過を併用するため逆洗洗浄等を行う必要があり、年間100%以上の水を交換しているのが現状である。
特開2018-42540号公報 特許第6979250号 特開2022-6997号公報
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、生物ろ過装置を小さくし、農作物の窒素源を増やすとともに、逆洗洗浄等の作業を極力減らして新たな水の供給を最低限に抑えることができるアクアポニックスシステムを提供することにある。
請求項1に係るアクアポニックスシステムは、水棲生物を養殖する養殖槽と水耕栽培で農作物を栽培する水耕栽培部を備え、システム内で循環水を循環させて水産物と農産物の両方を生産するアクアポニックスシステムであって、前記水耕栽培部を前記養殖槽の循環水の流れる方向の下流に設けて直接接続し、前記養殖槽から所定の期間糞尿や残餌を含んだ状態の水を供給し続け、前記水耕栽培部に、自然界に存在する有機物分解微生物群が増殖されて植物根圏が形成されており、前記水耕栽培部の循環水が流れる方向の上流に前記水耕栽培部で栽培する農産物に応じてpH調整を行う調整槽を備えるとともにろ材やフィルターで固形物を漉し取って物理的にろ過する物理ろ過装置と、前記物理ろ過装置でこし取った固形物を逆洗洗浄で洗い流した排水の有機物を嫌気性微生物で分解する嫌気槽をさらに備えていることを特徴とする。
請求項に係るアクアポニックスシステムは、請求項に係るアクアポニックスシステムにおいて、好気性グラニュール汚泥を備えた浄化槽を備え、前記浄化槽では、逆洗洗浄で発生する固形物を含む廃水を浄化処理して循環水として再利用することを特徴とする。
請求項に係るアクアポニックスシステムは、請求項に係るアクアポニックスシステムにおいて、前記浄化槽は、好気性グラニュール汚泥に加え、電極板を備え、微生物燃料電池による生物処理及び電気化学処理を行うことを特徴とする。
請求項1~に係る発明によれば、植物根圏が形成されるので、物理ろ過装置や生物ろ過装置の機能を代替することができる。このため、生物ろ過装置や物理ろ過装置を小さくしてシステム全体の大きさを小さくすることで、システムの敷地面積あたりの水棲生物の養殖効率や農産物の栽培効率を向上させることができる。
また、請求項1~に係る発明によれば、従来のアクアポニックスシステムと相違して、水耕栽培で栽培する農作物の窒素源は、主にアンモニア態窒素NH4 +であるため、可食の葉に硝酸態窒素NO3 -濃度が高くなるおそれが少なく、人体内で発がん性物質であるニトロンアミンに変化するおそれも少ない。
その上、請求項1~に係る発明によれば、物理ろ過装置を設けなくてもよいので、逆洗洗浄等で固まった固形物を除去する必要がなく、循環水に蒸発する分の水量を補給すれば足りる。
さらに、請求項1~に係る発明によれば、調整槽により水耕栽培部で栽培する農産物に応じてpH調整を行うことができ、多種多様な農産物を生産することができる。
また、請求項1~3に係る発明によれば、物理ろ過装置と嫌気槽を備えているので、循環水の固形物をろ過できるとともに、嫌気槽の嫌気性微生物で有機物を分解してメタンガスや二酸化炭素などの生成物を生成することができる。また、嫌気槽の沈殿物は、水耕栽培部で栽培されている農作物の肥料として再利用することができる
特に、請求項に係る発明によれば、好気性グラニュール汚泥を備えた浄化槽を備えるので、逆洗洗浄で発生する固形物(汚泥)を含む廃水を、浄化槽で用水レベルまで浄化処理して循環水として再利用することができる。
特に、請求項に係る発明によれば、浄化槽は、好気性グラニュール汚泥に加え、電極板を備え、微生物燃料電池による生物処理及び電気化学処理を行うので、廃水に含まれる窒素及びリンをさらに効率よく除去することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係るアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。 図2は、同上のアクアポニックスシステムの水耕栽培部で栽培した葉物野菜を収穫する状況を示す模式図である。 図3は、変形例1に係るアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。 図4は、本発明の第2実施形態に係るアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。 図5は、本発明の第3実施形態に係るアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。 図6は、好気性グラニュール汚泥(AGS)法による生物処理と好気性グラニュール汚泥(AGS)法と電極版を組合わせた生物処理の水質処理を比較してそれぞれの項目ごとの除去率を示す棒グラフである。 図7は、本発明の第4実施形態に係るアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。 図8は、本発明の第4実施形態の変形例に係るアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。 図9(a)は、従来のアクアポニックスシステムの構成を示す模式図であり、図9(b)は、物理ろ過装置を設けた従来のアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。
以下、本発明に係るアクアポニックスシステムの一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
先ず、図1~図4を用いて、本発明の第1実施形態に係るアクアポニックスシステム1について説明する。本実施形態に係るアクアポニックスシステム1は、図1に示すように、水棲生物を養殖する養殖槽2と、水耕栽培で農作物を栽培する水耕栽培部3と、有機窒素を硝化菌及び/又は脱窒菌で分解して浄化する生物ろ過装置4と、水中の細菌やウィルスなどの病原菌を殺菌消毒する殺菌消毒装置5を備え、水を循環させて養殖槽2で発生した有機物を水耕栽培部3で肥料として用い、水産物と農作物を生産する。また、養殖槽2と水耕栽培部3との間には、pH調整を行う調整槽6を設けられていることが望ましい。図1は、本発明の第1実施形態に係るアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。
(養殖槽)
養殖槽2は、水棲生物やその卵などを養殖するための水槽であり、チョウザメ(キャビア)などの高級水産物となる水棲生物を養殖することを想定しているが、ティラピア、鯉、サケ、トラウトなどの魚類、エビ、カニ、ホタテなどの甲殻類、イカ、タコなどの頭足類などを養殖することもできる。養殖する水棲生物の種類にもよるが、養殖槽2のpH値は、6.8~7.5付近を維持することが望ましく、pH値をモニタリングするpHセンサ、水温を測定する温度センサ、水中の酸素濃度を計測する酸素センサなどのセンサ類を設け、これらのセンサから得た情報を基に自動制御で水の温度や酸素濃度を維持するように構成することが好ましい。なお、符号21は、養殖槽2内の水棲生物に自動で餌を供給する自動餌やり装置21である。
また、養殖槽2には、従来、多くの水棲生物を養殖可能にするために水中に十分な酸素を供給するエアーポンプが設けられることが一般的である。しかし、本実施形態に係る養殖槽2には、エアーポンプで曝気することに代えて、酸素のマイクロナノバブルを発生させるMNB発生装置20(MNB:マイクロナノバブル)を養殖槽2内に設けて酸素のマイクロナノバブルを供給している。酸素をマイクロナノバブルの状態で養殖槽2に供給することは、従来のエアーポンプによる酸素の供給と比べて、より多くの酸素が水に溶け込むため、水中の溶存酸素が増加し、より多くの水棲生物を生育することができる。また、曝気しなくてもMNB発生装置20の圧力で養殖槽2内の水をかき回すことができる。このように、養殖槽2内にMNB発生装置20を設けることにより、配管やポンプ、エアレーション及び電気代等の費用を削減することができる。
また、養殖槽2において酸素マイクロナノバブルを供給することは、餌を与えた際に、水棲生物が酸素マイクロナノバブルを餌と一緒に体内に取り込むことで、酸素を効率的に体内に吸収することができるとともに、餌をより効率的に消化吸収することができる。また、酸素が十分に供給されている環境では、水棲生物の免疫力が向上し、病気にかかるリスクが低下する。しかも、マイクロナノバブルは、細菌やウィルスを殺菌する効果もあるため、水棲生物の病気予防にも役立つ。
ここで、マイクロナノバブルとは、数十ナノメートルからマイクロオーダー(1~100μm)の微小な大きさの気泡を指している。また、酸素のマイクロナノバブルの生成方法としては、酸素の気体と水を混合し、高速で旋回させることで酸素の気泡を作る「旋回流方式」、酸素の気体に圧力をかけ、水中に溶け込ませて、一気に開放することで酸素の気泡を作る「加圧溶解方式」、オリフィス等の微細孔へ酸素気体に圧力をかけて通すことで酸素の気泡を作る「微細孔方式」、超音波でキャビテーションを起こし水中の酸素気体を膨張させて酸素の気泡を作る「超音波方式」など、が例示される。しかし、酸素ナノバブル水の生成方法は、特に限定されるものではなく、マイクロオーダー(1~100μm)の微細酸素ガスを含有するマイクロナノバブル水を生成できる方法であればよい。
(水耕栽培部)
水耕栽培部3は、図2に示すように、土壌の代わりにココナッツファイバーやバーミキュライトなどからなる多孔質材(メディアベッド)に葉物野菜などの農作物が植えられたメディアカルチャー(Media culture)方式、詳しくは、DWC(Deep Water Culture)方式の水耕栽培で農作物を栽培する部位である。図2は、アクアポニックスシステム1の水耕栽培部3で栽培した葉物野菜を収穫する状況を示す模式図である。
勿論、水耕栽培の方式は、メディアカルチャー方式に限られず、空気中に霧状の水を噴霧して根に必要な水分や栄養素を与えるエアロポニックス(Aeroponics)方式、根を浸した水槽の底にエアレーション装置を設置して酸素を供給しながら根を浸すディープウォーターカルチャー(Deep water culture (DWC))方式、根元から水滴を滴下させて根に必要な水分と栄養素を供給するドリップシステム(Drip System)方式、斜面の板の上に植物を置き薄い水膜を流し込んで根に必要な水分や栄養素を供給するナイトリエントフィルムテクニック(Nutrient Film Technique (NTF))方式とすることもできる。
本発明の実施形態に係るアクアポニックスシステム1の最大の特徴は、従来のアクアポニックスシステムと相違して、養殖槽2から水を直接、水耕栽培部3に流入させてメディアベッドに有機物分解微生物群(菌類)と植物の根とが共生する植物根圏を形成することにある。ここで、直接とは、養殖槽2の水棲生物が排出した糞尿などの***物や残餌などの固形物を含んだ状態の水をそのまま水耕栽培部3に流入させて供給することを指しており、図1に示すように、途中に調整槽6を設ける場合も含んでいる。
植物根圏の形成は、1か月~3か月の所定の期間糞尿や残餌を含んだ状態の水を供給し続け、水温やpH値を適正とすることにより、自然界に存在する有機物分解微生物群をメディアベッドに増殖させることにより行う。
このように、アクアポニックスシステム1では、水耕栽培部3を養殖槽2の循環水の流れる方向の下流に設けて直接接続することで、養殖槽2からの魚の大腸菌や乳酸菌等の腸内菌を含む***物や食べ残し等が含有する固形物(有機物)が水耕栽培槽3へ流れ沈み込む。また、植物根圏(単に、根圏ともいう)には、植物からさまざまなタンパク質(酵素)が分泌されている。特に、根圏には植物から分泌されるフォスファターゼ活性が高く、この酵素は有機物にエルテル結合したリン酸を加水分解して植物の成長に利用可能なリン酸量を増やす。従って、根圏に生息する根圏細菌は、植物と共生しながら水耕栽培槽3の有機物中の栄養素の利用能を高めて、植物の成長を促進させる。
また、図2に示すように、水耕栽培で栽培した葉物野菜などの農作物をメディアベッドの1ロッドごとに端から取り出して収穫し、他の端からメディアベッドの1ロッドに植えられた苗を追加して入れ替える。このように定期的に農作物を収穫して入れ替えることで有害な微生物が増殖することを防止して有機物分解微生物群の生態系を常に安定して維持することができる。また、季節によらず年中一定の農作物を収穫して出荷することができる。
また、アクアポニックスシステム1では、前述のように、上流の養殖槽2において、MNB発生装置20で酸素マイクロナノバブルが循環水に供給されている。酸素マイクロナノバブルは、長時間水中でブラウン運動をしながら浮遊し続けることができ、循環している水からでも農作物の根から酸素が吸収され易くなる。このため、水耕栽培でも水中に雑菌が発生しにくく、この点でも有用な植物根圏が形成され、有機物分解微生物群で有機物を分解できるとともに農作物が成長し易くなるというメリットがある。
(生物ろ過装置)
生物ろ過装置4は、アクアポニックスシステム1内を循環する水の水質を浄化するための装置で、担体やろ材に付着させた微生物を利用して有機物や窒素化合物を分解する機能を有した装置である。この生物ろ過装置4は、魚介類等の水棲生物の飼育数及び成長バランスによって容易に取り外し及び変更可能な小規模なユニット型の集合体とすることが好ましい。
本実施形態に係る生物ろ過装置4は、増殖速度が遅い硝化菌及び脱窒菌の高密度な微生物群を早期に育成するために、微生物を担体に取り付けた後、多孔性材料で包み込んで固定化する包括固定化法を応用して包括固定化担体を生成する。具体的には、本実施形態に係る生物ろ過装置4では、粉末活性炭粒子に硝化菌及び脱窒菌を付着させた後、高分子ポリマーにより固定化させ、平均3mm×3mm×3mmの立方体状のペレットにした高密度な微生物群が固定化された包括固定化担体(微生物活性炭固定化担体)を用いて有機物や窒素化合物を分解する。ここで、高密度(高濃度)とは、約2,000~30,000mg/Lの微生物群を指している。この微生物濃度は、MLVSS(混合液揮発性浮遊物質)の濃度で測定したものである。このような微生物(主に、硝化菌及び脱窒菌)固定化担体方式の三相流動生物浄化ユニットを用いることで、アンモニア態窒素及び亜硝酸態窒素をほぼ100%除去することが可能となった。
結合固定化法等による従来の生物ろ過装置に用いる微生物の固定化担体は、高濃度(100~600mg/L程度)のアンモニア態窒素を含む水処理には適しているが、次表での表1に示すように、非常に低濃度(1mg/L程度)のアンモニア態窒素を含む水には、微生物の生育に必要な窒素源不足でアクアポニックスシステム1が不安定になるため使用できないという問題があった。
これに対して、生物ろ過装置4は、高密度な微生物群が固定化された包括固定化担体(微生物活性炭固定化担体)を用いて窒素化合物を分解するので、高濃度(100~600mg/L程度)のアンモニア態窒素の条件下で使用できるだけでなく、低濃度(1mg/L程度)のアンモニア態窒素の条件下でも安定してアクアポニックスシステム1の運用が可能となる。
生物ろ過装置4では、前述の水耕栽培部3の植物根圏で処理しきれなかった非常に低濃度の残存アンモニア態窒素(NH4 +-N:1mg/L程度以下)をNO3 -へ分解する一方、硝化菌等の微生物群自体が成長に必要な栄養素としてNH4 +及びNO3 -をはじめ、PO4 -・K+・Ca2+・SO4 -等のイオンも吸収する。そのため、アクアポニックスシステム1は、pHの値が中性程度の用水レベル(水道水や地下水程度)まで浄化された水が再び養殖槽2へ戻ることとなる。
なお、この生物ろ過装置4は、前述の養殖槽2内に設けることもできる。生物ろ過装置4を前述のように複数の小規模なユニット型の集合体とすることにより、水槽の面積や水棲生物の飼育数及び成長バランスによって適宜変更することができ、飼育数や成長に対応したアクアポニックスシステム1の安定的な運用が可能な点で有効である。さらに、生物ろ過装置4をユニット型とすることで、生物ろ過装置4内に後述の殺菌消毒装置5等も組み込むことが可能であり、1台の装置で多くの役割をこなすことができる。
(殺菌消毒装置)
殺菌消毒装置5は、紫外線を照射して水中の細菌やウィルスを殺菌するUV殺菌灯や電気放電を用いて酸素分子をオゾンに変換するオゾン発生器、ろ過媒体に銀を含ませて銀イオンにより殺菌する殺菌フィルターなど、を備え、水中の有害な微生物を殺菌する装置である。図1に示すように、アクアポニックスシステム1では、前述の生物ろ過装置4での窒素化合物等の分解に加え、殺菌消毒装置5により水棲生物の生存に悪影響を及ぼす細菌やウィルスが殺菌・除去された循環水が綺麗な浄化水となって養殖槽2に戻る仕組みとなっている。
(調整槽)
調整槽6は、サンプタンクとしての機能を有し、タンク内でpH値及び水温を自動調整するとともに、水中の浮遊物や微粒子を取り除く沈殿槽としても機能する。前述のように、多くの水棲生物にとっては養殖槽2のpH値は6.8~7.5付近を維持することが望ましいため、栽培する農作物に応じてpHや水温を調整することにより、多様な植物を栽培することが可能となる点で好ましい。
例えば、図3に示すように、養殖槽2からの循環水を分岐し、複数の水耕栽培部3,3’を設け、その中間点にそれぞれ調整槽6を設けることにより、栽培する植物に応じて最適な水のpH値に調整することができる。例えば、DWC(Deep Water Culture)方式の水耕栽培で水耕栽培部3に葉物野菜を栽培し、他の水耕栽培部3’には、一般のメディアカルチャー(Media culture)方式で水温などの栽培環境が特殊な本わさび等の栽培を行うことが可能となる。図3は、第1実施形態の変形例1に係るアクアポニックスシステム1’の構成を示す模式図である。
(物理ろ過装置)
また、図3に示すように、変形例1に係るアクアポニックスシステム1’には、生物ろ過装置4の循環水の流れる方向の下流にろ材やフィルターで固形物を漉し取って物理的にろ過する物理ろ過装置7が設けられている。この物理ろ過装置7は、貝殻、蟹殻、砂などのろ材や底床、ポリエステル繊維などの微細繊維のフィルターで水中の浮遊物や微粒子を取り除くことにより、水中の微生物の増殖を抑え、循環水の水質を良好に保つ機能を有している。特に、大型施設農業のアクアポニックスプラントの場合には、水耕栽培部3と生物ろ過装置4にて処理し切れない場合があり、物理ろ過装置7により、固形物等を物理的にろ材や底床で汚れや色素及び濁りを漉しとってろ過することが望ましい。
(嫌気槽)
そして、図3に示すように、アクアポニックスシステム1’では、物理ろ過装置7でこし取った固形物を逆洗洗浄で洗い流し、嫌気槽8のサンプタンクに貯蔵する。この嫌気槽8では、サンプタンク内の嫌気性微生物で有機物を分解してメタンガスや二酸化炭素などの生成物を生成する。また、分解された後の嫌気槽8には、沈殿物が発生し、この沈殿物は、水中の微生物が***物や死骸などを含んだ汚泥を含んでいる。この汚泥を含んだ沈殿物は、水耕栽培部3で栽培されている農作物の肥料として再利用される。
以上説明した本発明の第1実施形態に係るアクアポニックスシステム1及び変形例1に係るアクアポニックスシステム1’によれば、水耕栽培部3に植物根圏の生態系が作られ、その植物根圏で物理的及び生物的な浄化処理を約70%代替して従来の物理ろ過装置や生物ろ過軽減することができる。このため、従来のアクアポニックスシステムの生物ろ過装置や物理ろ過装置を小さくしてシステム全体の大きさを小さくすることで、システムの敷地面積あたりの水棲生物の養殖効率や農産物の栽培効率を向上させることができる。
また、アクアポニックスシステム1及びアクアポニックスシステム1’によれば、図1に示したように、従来のアクアポニックスシステムと相違して、水耕栽培で栽培する農作物の窒素源は、主にアンモニア態窒素NH4 +であるため、可食の葉に硝酸態窒素NO3 -濃度が高くなるおそれが少なく、人体内で発がん性物質であるニトロンアミンに変化するおそれも少ない。また、農作物がアンモニア態窒素NH4 +及び硝酸態窒素NO3 -の窒素源から選択的にバランス(NO3 -:NH4 +=50mg/L:0.1~1.5mg/L)よく吸収するため、多種多様な農作物を栽培することができる。
その上、アクアポニックスシステム1によれば、物理ろ過装置7を設けなくてもよいので、逆洗洗浄等で固まった固形物を除去する必要がなく、循環水に蒸発する分の水量を補給すれば足りる。また、アクアポニックスシステム1’のように、物理ろ過装置7を設けた場合でも、植物根圏や生物ろ過装置4で効率的に浄化できるので、失われる水が極力少なくて済む。
さらに、アクアポニックスシステム1及びアクアポニックスシステム1’によれば、養殖槽2には、酸素のマイクロナノバブルを発生させるMNB発生装置20が設置されているので、従来のエアーポンプによる酸素の供給と比べて、より多くの酸素を循環水に溶け込ませることができる。よって、アクアポニックスシステム1及びアクアポニックスシステム1’によれば、循環水中の溶存酸素が増加し、より多くの水産物や農産物を生産することができる。また、アクアポニックスシステム1及びアクアポニックスシステム1’によれば、曝気しなくてもMNB発生装置20の圧力で養殖槽2内の水をかき回すことができるため、エアレーション施設が不要となり、従来必要であった配管やポンプ、エアレーション及び電気代等の費用を削減することができる。
また、アクアポニックスシステム1及びアクアポニックスシステム1’によれば、粉末活性炭粒子に硝化菌及び/又は脱窒菌を付着させた後、高分子ポリマーにより固定化した包括固定化担体により、有機窒素を分解して浄化するので、増殖速度が遅い硝化菌及び脱窒菌の高密度な微生物群を早期に育成することができ、低濃度(1mg/L程度)のアンモニア態窒素の条件下でも安定してアクアポニックスシステム1の運用が可能であり、植物根圏で処理しきれなかったアンモニア態窒素及び亜硝酸態窒素を略100%除去することができる。
それに加え、アクアポニックスシステム1及びアクアポニックスシステム1’によれば、調整槽6で水耕栽培部3において栽培する農産物に応じてpH調整を行うので、栽培する植物に応じて最適な水のpH値に調整することができ、多様な植物を栽培することが可能となる。
[第2実施形態]
次に、図4を用いて、本発明の第2実施形態に係るアクアポニックスシステム10について説明する。本実施形態に係るアクアポニックスシステム10が、前述の変形例1に係るアクアポニックスシステム1’と相違する点は、主に、好気性グラニュール汚泥(AGS)を備えたSBR(半回分式反応槽:sequencing batch reactor)法の浄化槽9を設けた点であるので、その点について説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。図4は、本発明の第2実施形態に係るアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。
前述の物理ろ過装置7の逆洗洗浄で発生する固形物(汚泥)を含む廃水は、物理ろ過装置のろ過タンクの大きさによって異なる。また、逆洗洗浄によって発生する廃水量は、ろ過タンクの総体積水量の約50%である。そこで、アクアポニックスシステム10では、好気性グラニュール汚泥(AGS)を備えたSBR法の浄化槽9を設けることにより、逆洗洗浄で発生する固形物(汚泥)を含む廃水を、図4に示すように、浄化槽9で用水レベルまで浄化処理して循環水として再利用する。
浄化槽9は、好気性グラニュール汚泥(AGS:Aerobic Granular Sludge)を備えている。ここで、グラニュール汚泥とは、担体ではなく細胞外に産出するポリマー(EPS)を足掛かりとして高密度に細菌同士が付着凝集して自己造粒した汚泥である。また、グラニュール汚泥は、嫌気性グラニュール汚泥が一般的であるが、好気性微生物もグラニュール汚泥を形成する。さらに、好気性グラニュール汚泥と電極版を組み合わせた構成、即ち、生物処理と電気化学処理を組み合わせた微生物燃料電池(MFC:Microbial Fuel Cell)としてもよい。電極版には、チタン及び/又はニッケル、即ち、チタン及びニッケルのいずれか一方又は両方用いられる(以下、及び/又は、いずれか一方又は両方を指す)。
図6に、この好気性グラニュール汚泥(AGS)の生物処理による水質浄化項目毎の除去率と、好気性グラニュール汚泥(AGS)と電極版を組み合わせた微生物燃料電池による水質浄化項目毎の除去率を比較した棒グラフを示す。図6に示すように、アンモニア態窒素(NH4-N)、亜硝酸態窒素(NO2-N)、及び総固形物(TS:Total Solids)は、好気性グラニュール汚泥(AGS)の生物処理及び好気性グラニュール汚泥(AGS)と電極版を組み合わせた微生物燃料電池による生物・電気化学処理いずれも100%除去できた。一方、全窒素(TN:Total Nitrogen)、全リン(TP:Total Phosphorus)は、微生物燃料電池による生物・電気化学処理の方が、好気性グラニュール汚泥(AGS)の生物処理のみより約4%高い除去率であった。
このように、アクアポニックスシステム10では、浄化槽9により、逆洗洗浄で発生する固形物(汚泥)を含む廃水からアンモニア、亜硝酸、固形物、窒素、リンをそれぞれ除去して用水レベルまで浄化処理した上、殺菌消毒装置5で殺菌して循環水として再利用する。また、浄化槽9で発生した残り滓は、廃棄物であるもみ殻灰と混ぜて水耕栽培部3のメディアとして再利用する。
また、アクアポニックスシステム10の嫌気槽8で発生した沈殿物は、アクアポニックスシステム1’と同様に、水耕栽培部3で栽培されている農作物の肥料として再利用される。
そして、アクアポニックスシステム10の嫌気槽8で発生した汚泥は、微細藻類の栄養分として利用される。微細藻類は、光合成によって二酸化炭素を吸収し、有機物等を生産するのに利用される。さらに、微細藻類は、養殖槽2に投入され、水棲生物の餌としても利用できる。
[第3実施形態]
次に、図5を用いて、本発明の第3実施形態に係るアクアポニックスシステム11について説明する。本実施形態に係るアクアポニックスシステム11が、前述の第2実施形態に係るアクアポニックスシステム10と相違する点は、物理ろ過装置7と嫌気槽8の配置と、生物ろ過装置4及び殺菌消毒装置5が養殖槽2内に設けられている点である。よって、同一構成は同一符号を付し、詳細な説明を省略する。図5は、本発明の第3実施形態に係るアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。
アクアポニックスシステム11では、物理ろ過装置7は、水耕栽培部3の下流に設けられ、物理ろ過装置7で浄化した水は、養殖槽2に戻る。物理ろ過装置7の逆洗洗浄で発生する固形物(汚泥)を含む廃水は、アクアポニックスシステム10と同様に、嫌気槽8の嫌気性微生物で有機物が分解された上、浄化槽9で用水レベルまで浄化処理して循環水として再利用する。
アクアポニックスシステム11では、生物ろ過装置4が養殖槽2内に設けられている。生物ろ過装置4を複数の小規模なユニット型の集合体とすることにより、水槽の面積や水棲生物の飼育数及び成長バランスによって適宜変更することができ、飼育数や成長に対応したアクアポニックスシステム11の安定的な運用が可能な点で有効である。
さらに、アクアポニックスシステム11では、生物ろ過装置4をユニット型とすることで、生物ろ過装置4内に後述の殺菌消毒装置5も組み込まれている。このため、生物ろ過装置4や殺菌消毒装置5の設置スペースを省略することができる。
[第4実施形態]
次に、図7を用いて、本発明の第4実施形態に係るアクアポニックスシステム12について説明する。本実施形態に係るアクアポニックスシステム12が、前述の第1実施形態に係るアクアポニックスシステム1と相違する点は、複数の養殖槽2,2が上下に複数段設けられ、異なる水棲生物を養殖している点である。よって、同一構成は同一符号を付し、詳細な説明を省略する。図7は、本発明の第4実施形態に係るアクアポニックスシステムの構成を示す模式図である。
図6に示すように、第4実施形態に係るアクアポニックスシステム12では、上段の養殖槽2でエビを養殖することを想定しており、下段の養殖槽2でカニを養殖している。このように、複数の養殖槽2,2を設けることで同じ養殖槽で育成することが困難な複数種類の水棲生物を養殖することが可能となる。また、養殖槽2を上下二段に設けることで養殖スペースを削減することができ、敷地面積あたりの水産物の生産効率が向上する。
また、第4実施形態に係るアクアポニックスシステム12は、アクアポニックスシステム1と同様に、ポンプ(PUMP)を介して、養殖槽2,2内の魚の大腸菌や乳酸菌等の腸内菌を含む***物や食べ残し等が含有する固形物(有機物)を含んだ水が水耕栽培槽3へ流れ沈み込む構成となっている。このため、水耕栽培部3には、前述の有機物分解微生物群(菌類)と植物の根とが共生する植物根圏が形成される。
また、アクアポニックスシステム12では、前述のアクアポニックスシステム11と同様に、養殖槽2内にエアレーション機構及び生物ろ過装置4が設けられている。このため、それぞれの養殖槽2の水槽の面積や水棲生物の飼育数及び成長バランスによって適宜変更することができ、飼育数や成長に対応したアクアポニックスシステム12の安定的な運用が可能となる。なお、符号5は、前述の殺菌消毒装置5である。
図8は、本発明の第4実施形態の変形例に係るアクアポニックスシステム13の構成を示す模式図である。アクアポニックスシステム13は、生物ろ過装置4及び殺菌消毒装置5が水耕栽培槽3の下流側に設けられ、生物ろ過装置4及び殺菌消毒装置5でろ過・殺菌されて浄化された水が養殖槽2,2へ流入する構成となっている点でアクアポニックスシステム12と異なる。
アクアポニックスシステム12、13によれば、複数の養殖槽2,2を設けることで同じ養殖槽2で育成することが困難な複数種類の水棲生物を養殖することが可能となる。また、養殖槽2を上下二段に設けることで養殖スペースを削減することができ、敷地面積あたりの水産物の生産効率が向上する。
以上説明した本発明の実施形態に係るアクアポニックスシステム10~13(アクアポニックスシステム1,1’,10,11,12,13)によれば、前述の作用効果に加え、好気性グラニュール汚泥(AGS)を備えたSBR法の浄化槽により、逆洗洗浄で発生する固形物(汚泥)を含む廃水を、浄化槽9で用水レベルまで浄化処理して循環水として再利用することができる。このため、自然環境と略同様な人工環境下での蒸発する水や植物等が吸収する水以外のすべての水を再利用することができる。
なお、本発明の実施形態に係るアクアポニックスシステム1~13によれば、植物毎に必要とする窒素源(NH4 +とNO3 -)を選択的に栄養分として吸収することから、従来のアクアポニックスシステムより数多い植物栽培に成功した。従来のシステムであれば、葉物野菜がメインで栽培可能だが、本発明の実施形態に係るアクアポニックスシステム1,1’,10,11により、NH4 +を優先的に吸収するイチゴ、メロン、キュウリ等余分の栄養素を足すことで栽培可能である。多くの植物は、アンモニウムイオン(NH4 +)と硝酸イオン(NO3 -)が混在した場合は、NH4 +を優先的に利用する。
また、植物の根はマイナスに帯電しているため、NH4 +が根に引きつけられやすい傾向であるが、いずれのイオンも原形質膜上の輸送担体を介して根の中に取り込まれる。植物に吸収されたNO3 -は、NH4 +に還元されてから同化されるのに対し、NH4 +は作物に吸収されればそのまま同化される。
いずれの窒素にも長所と短所があり、また、両窒素に対する反応が植物の種類、環境条件(pH、温度)、生育段階等により異なることから、栽培に適した窒素施与を行わなければならない。NO3 -はNH4 +が等しい濃度で存在する場合、どちらを優先して吸収するかという性質は、植物(野菜や果物)の種類によって異なる。培養液と無関係にNH4 +を優先的に吸収するものは、レタス・イチゴ・セルリー・メロン・セリ・キュウリ・ミツバ・シュンギクである。
また、pHが高い場合にはNH4 +を優先的に、低い場合にはNO3 -とNH4 +をほぼ同等に吸収するものは、エダマメ、ナス等がある。そして、培養液のpHと無関係にNO3 -を優先的に吸収するものは、ホウレンソウ・白菜がある。一方、pHが低い場合にはNO3 -を、高い場合にはNH4 +を優先的に吸収するピーマン等がある。
NH4 +を優先的に吸収する野菜はNH4 +の阻害を受けにくく、逆に、NH4 +の阻害を受けやすい野菜はNO3 -を優先的に吸収する傾向が強い。つまり、野菜の生育は、NH4 +とNO3 -の併用でNO3 -単用よりもよくなることが多いと知られている(溶液栽培のすべて、2014)。例えば、植物工場における水耕液肥栽培の場合、NH4 +濃度が高すぎなければ、NH4 +とNO3 -を併用することで、同じ濃度の窒素をNO3 -のみで与えるよりも生育がよくなることが明らかになっている。尚、従来のアクアポニックスシステムでは、窒素源としてNO3 -を吸収して野菜を栽培するのが現状である。
以上、本発明の実施形態に係るアクアポニックスシステム1,1’,10,11,12,13について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
1,1’,10,11,12,13:アクアポニックスシステム
2:養殖槽
20:MNB発生装置
21:自動餌やり装置
3,3’:水耕栽培部
4:生物ろ過装置
5:殺菌消毒装置
6:調整槽
7:物理ろ過装置
8:嫌気槽
9:浄化槽

Claims (3)

  1. 水棲生物を養殖する養殖槽と水耕栽培で農作物を栽培する水耕栽培部を備え、システム内で循環水を循環させて水産物と農産物の両方を生産するアクアポニックスシステムであって、
    前記水耕栽培部を前記養殖槽の循環水の流れる方向の下流に設けて直接接続し、前記養殖槽から所定の期間糞尿や残餌を含んだ状態の水を供給し続け、前記水耕栽培部に、自然界に存在する有機物分解微生物群が増殖されて植物根圏が形成されており、
    前記水耕栽培部の循環水が流れる方向の上流に前記水耕栽培部で栽培する農産物に応じてpH調整を行う調整槽を備えるとともに
    ろ材やフィルターで固形物を漉し取って物理的にろ過する物理ろ過装置と、前記物理ろ過装置でこし取った固形物を逆洗洗浄で洗い流した排水の有機物を嫌気性微生物で分解する嫌気槽をさらに備えていること
    を特徴とするアクアポニックスシステム。
  2. 好気性グラニュール汚泥を備えた浄化槽を備え、
    前記浄化槽では、逆洗洗浄で発生する固形物を含む廃水を浄化処理して循環水として再利用すること
    を特徴とする請求項に記載のアクアポニックスシステム。
  3. 前記浄化槽は、好気性グラニュール汚泥に加え、電極板を備え、微生物燃料電池による生物処理及び電気化学処理を行うこと
    を特徴とする請求項に記載のアクアポニックスシステム。
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