JP7395174B2 - 免疫抑制作用又は免疫寛容誘導作用を評価する方法、及び免疫寛容誘導剤 - Google Patents

免疫抑制作用又は免疫寛容誘導作用を評価する方法、及び免疫寛容誘導剤 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、平成30年2月23日、第17回日本再生医療学会総会のプログラム抄録にてウェブサイト上で公表された
特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、平成30年3月21日、第17回日本再生医療学会総会にて発表された
本発明は、マイナー組織適合性抗原不一致により生じる拒絶反応のモデルマウスを利用した、免疫抑制作用又は免疫寛容誘導作用を評価する方法、及び免疫細胞を有効成分とする免疫寛容誘導剤に関する。
患者に他者の細胞又は組織を移植する同種移植医療において、レシピエントの免疫機構がドナー由来の細胞又は組織を異物と認識することによる拒絶反応を克服することは、治療の成否を左右する重要な課題である。
拒絶反応を克服する主なアプローチとして、シクロスポリン、タクロリムス等の薬剤投与によるレシピエントの免疫応答抑制と、細胞工学的手法を用いて調製した患者自身の細胞又は組織の自家移植による免疫型不適合の回避とを挙げることができる。各種の組織幹細胞又はiPS細胞を利用した細胞移植技術の進展に伴って自家移植による拒絶反応の克服が進むと期待されるが、多数の患者に迅速に細胞移植医療を適用するため、さらに組織又は臓器移植については同種移植は依然として必要な選択肢であるため、拒絶反応を抑制し得る新たな手段が求められている。
同種移植においては、レシピエントとドナーのHLA型を完全一致又は部分一致させることで拒絶反応の発生リスクを低減させているが、HLA型が完全一致している場合であっても拒絶反応が生じ得ることが知られている。この拒絶反応はマイナー組織適合性抗原の型の不一致により引き起こされるものと考えられているが、マイナー組織適合性抗原の型を全て一致させることは極めて困難である。同種移植医療の展開にあたって、マイナー組織適合性抗原不一致により生じる拒絶反応の解明やその抑制は、重要な課題となっている。
近年、非自己抗原に対する免疫寛容(獲得寛容)を人工的に誘導する方法が注目されている(例えば特許文献1、2等)。また、ドナー由来のB細胞又は樹状細胞を移植前のレシピエントに投与することで、同種移植における組織定着率が改善されることが報告されている(例えば非特許文献1及び2)。免疫寛容の誘導は、アレルギー性疾患や自己免疫疾患等に対する治療又は症状の緩和策の1つである一方、同種移植においても非自己抗原に対する免疫応答の抑制又は免疫抑制剤の投与量の低減につながり得るものと期待されている。
WO2006/107101 WO2014/069655
Gao J. et al., 2013, PLOS ONE, 8 (10): e77761 Yamano T. et al., 2011, blood, 117 (9): 2640-2648
本発明は、マイナー組織適合性抗原不一致により生じる拒絶反応に対する免疫抑制作用又は免疫寛容誘導作用を評価する方法、及び免疫寛容を誘導する手段を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、特定のMHC型を有するレシピエントマウスにMHC型が一部一致するドナーマウス由来の組織を移植したときに程度の異なる拒絶反応をレシピエントマウスが示すこと、また外来細胞の受容を容易にするための処置とドナー由来の免疫細胞の投与とを組み合わせることでレシピエントの免疫寛容を誘導することができることを見いだし、以下の発明を完成させた。
(1)(i)H-2抗原の型がb/kであるレシピエントマウスに、H-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kであってマイナー組織適合性抗原の型が前記レシピエントマウスと一致しないドナーマウス由来の細胞又は組織を移植する工程;
(ii)前記ドナーマウス由来の細胞又は組織の移植の前、移植と同時、又は移植の後に、レシピエントマウスに被験処置を行う工程;
(iii)前記移植及び被験処置の後に、レシピエントマウスの拒絶反応を評価する工程;並びに
(iv)前記レシピエントマウスの拒絶反応を、ドナーマウス由来の細胞又は組織を移植したが被験処置を行っていない対照レシピエントマウスの拒絶反応と比較し、被験処置を行ったレシピエントマウスの拒絶反応が対照レシピエントマウスの拒絶反応よりも弱かった場合に、被験処置は免疫抑制作用又は免疫寛容作用を有すると判定する工程
を含む、被験処置の免疫抑制作用又は免疫寛容作用を評価する方法。
(2)(i)H-2抗原の型がb/kであるレシピエントマウス由来のT細胞を含む試料と、H-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kであってマイナー組織適合性抗原の型が前記レシピエントマウスと一致しないドナーマウス由来の抗原提示細胞を含む試料とを混合し、レシピエント由来T細胞とドナー由来抗原提示細胞とをインビトロで共存させる工程;
(ii)レシピエント由来T細胞とドナー由来抗原提示細胞とを共存させる前、共存させるのと同時、又は共存させた後に、レシピエント由来T細胞に被験処置を行う工程;
(iii)ドナー由来抗原提示細胞との共存及び被験処置の後に、レシピエント由来T細胞の幼若化反応を評価する工程;並びに
(iv)レシピエント由来T細胞の幼若化反応を、ドナー由来抗原提示細胞と共存させたが被験処置を行っていない対照のレシピエント由来T細胞の幼若化反応と比較し、被験処置を行ったレシピエント由来T細胞の幼若化反応が対照レシピエント由来T細胞の幼若化反応よりも弱かった場合に、被験処置は免疫抑制作用又は免疫寛容作用を有すると判定する工程
を含む、被験処置の免疫抑制作用又は免疫寛容作用をインビトロで評価する方法。
(3)レシピエントマウスが129系統とC3H系統の交雑マウスであり、ドナーマウスがC57BL/6系統、CBA/N系統又はC57BL/6系統とCBA/N系統との交雑マウスである、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)レシピエントマウスがC3129F1マウスである、(1)~(3)のいずれか一項に記載の方法。
(5)ドナーマウスがC57BL/6系統又はCBA/N系統のマウスである、(1)、(3)又は(4)のいずれか一項に記載の方法。
(6)ドナーマウスがC57BL/6系統のマウスである、(2)~(4)のいずれか一項に記載の方法。
(7)ドナー対象由来の免疫細胞を含む、レシピエント対象において免疫寛容を誘導するための細胞製剤であって、レシピエント対象に対する放射線照射及びT細胞除去処置と組み合わせて用いるための前記細胞製剤。
(8)ドナー対象の主要組織適合型抗原の型がレシピエント対象のそれと完全一致又は部分一致であり、ドナー対象のマイナー組織適合性抗原の型がレシピエント対象のそれと完全一致ではない、(7)に記載の細胞製剤。
(9)T細胞除去処置が、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD3抗体、抗TCR抗体及び抗胸腺細胞グロブリンよりなる群から選択される1又は複数の抗T細胞抗体の投与である、(7)又は(8)に記載の細胞製剤。
(10)免疫細胞が脾臓細胞、B細胞又は樹状細胞である、(7)~(9)のいずれか一項に記載の細胞製剤。
(11)免疫細胞がB細胞、又はFms-like tyrosine kinase 3 ligand(Flt3L)で誘導した樹状細胞である、(7)~(10)のいずれか一項に記載の細胞製剤。
本発明によれば、マイナー組織適合性抗原の不一致により引き起こされる拒絶反応に対する免疫抑制作用又は免疫寛容誘導作用の評価が可能になり、これにより同種移植の際に生じる拒絶反応を抑制し得る処置を選択することができ、またその機序解明に資する情報を提供することができる。また、本発明の細胞製剤は、同種移植におけるレシピエントの拒絶反応を抑制することができ、移植医療の成功率を高めることができ、また免疫抑制剤の使用量を低減させることができる。
レシピエントマウス(C3129F1、H-2b/k)の皮膚欠損部に、BALB/cマウス(H-2d/d)、C57BL/6マウス(H-2b/b)、CBA/Nマウス(H-2k/k)及び皮膚欠損部を作製した個体と同個体(Auto)の皮膚片をそれぞれ移植した後の、移植片の生着率(移植片が拒絶された個体数/全個体数)の推移を示すグラフである。 レシピエントマウスの皮膚欠損部に、BALB/cマウス、C57BL/6マウス、CBA/Nマウス及び皮膚欠損部を作製した個体と同個体の皮膚片をそれぞれ移植して10日後の、レシピエントマウスから分離した移植片を含む皮下組織のHE染色写真である。 レシピエントマウスの皮膚欠損部にBALB/cマウス、C57BL/6マウス及びCBA/Nマウス由来の皮膚片をそれぞれ移植した後の移植片の生着率に対するタクロリムスの効果を示すグラフである。 レシピエントマウスの皮膚欠損部にBALB/cマウス、C57BL/6マウス及びCBA/Nマウス由来の皮膚片をそれぞれ移植した後の移植片の生着率に対するラパマイシンの効果を示すグラフである。 放射線照射及び抗T細胞抗体投与を受けたレシピエントマウスの皮膚欠損部にBALB/cマウス、C57BL/6マウス及び皮膚欠損部を作製した個体と同個体の皮膚片をそれぞれ移植した後の移植片の生着率に対するC57BL/6マウス由来のB細胞又は脾臓細胞の免疫寛容誘導効果を示すグラフである。 BALB/cマウス、C57BL/6マウス、CBA/Nマウス又はC3129F1マウス由来の樹状細胞と共培養した C3129F1マウス由来のT細胞の増殖率を示すグラフである。 放射線照射及び抗T細胞抗体投与を受けたレシピエントマウスの皮膚欠損部に、BALB/cマウス、C57BL/6マウス及び皮膚欠損部を作製した個体と同個体(Auto)からの皮膚片をそれぞれ移植した後の移植片の生着率に対する、C57BL/6マウス由来のB細胞又はFlt3L誘導樹状細胞(FL-DC)の免疫寛容誘導効果を示すグラフである。 放射線照射及び抗T細胞抗体投与並びにC57BL/6マウス由来のB細胞の投与を受けたレシピエントマウスの脾臓及び末梢血における、ドナー由来B細胞の存在を示すフローサイトメトリー解析の結果である。各ヒストグラムの右上の数字は、検出された全細胞数に対するドナー由来細胞(太線の枠内)数の割合を示す。 放射線照射及び抗T細胞抗体投与並びにC57BL/6マウス由来のB細胞の投与を受けたレシピエントマウス由来のT細胞を、C3129F1マウス(Auto)、BALB/cマウス又はC57BL/6マウス由来の樹状細胞と共培養したときの、T細胞の増殖率を示すグラフである。
免疫抑制作用又は免疫寛容作用の評価方法(in vivo)
本発明の第1の態様は、
(i)H-2抗原の型がb/kであるレシピエントマウスに、H-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kであってマイナー組織適合性抗原の型が前記レシピエントマウスと一致しないドナーマウス由来の細胞又は組織を移植する工程;
(ii)前記ドナーマウス由来の細胞又は組織の移植の前、移植と同時、又は移植の後に、レシピエントマウスに被験処置を行う工程;
(iii)前記移植及び被験処置の後に、レシピエントマウスの拒絶反応を評価する工程;並びに
(iv)前記レシピエントマウスの拒絶反応を、ドナーマウス由来の細胞又は組織を移植したが被験処置を行っていない対照レシピエントマウスの拒絶反応と比較し、被験処置を行ったレシピエントマウスの拒絶反応が対照レシピエントマウスの拒絶反応よりも弱かった場合に、被験処置は免疫抑制作用又は免疫寛容作用を有すると判定する工程
を含む、被験処置の免疫抑制作用又は免疫寛容作用を評価する方法に関する。
本態様におけるH-2抗原の型がb/kであるレシピエントマウスは、H-2抗原の型がb/bのホモマウスとH-2抗原の型がk/kのホモマウスとを用いて作製することができる、交雑マウスである。H-2抗原の型がb/bのホモマウスは、129系統マウス(例えば129P1/ReJ、129P3/J、129P3/JEmsJ、129P4RrRkJ、129S1/SvlmJ、129T2SvEms、129T2/SvEmsJ、129X1/SvJ)、BXSB/Mp、C57BL/6、C57BL/10、LP/J、BALN.B等を挙げることができる。またH-2抗原の型がk/kのホモマウスは、C3H系統マウス(例えばC3H/He、C3H/HeN、C3H/Bi、C3HeB/FeJ等)、AKR/J、CBA系統マウス(例えばCBA/Ca、CBA/J、CBA/N)、CE/J、HRS/J、MA/MyJ、MRL/Mp、RF/J、ST/bJ、C58/Jを挙げることができる。
特に好ましいレシピエントマウスは、C3H系統マウス、特にC3H/Heを母親とし、129系統マウス、特に129X1/SvJを父親としたF1マウスC3129F1(H-2b/k)である。
本態様におけるドナーマウスは、レシピエントマウスと同一のH-2抗原型を有するマウス(H-2b/k)又はレシピエントマウスのH-2抗原型の少なくとも1つのアレル(allele)と一致するアレルを有するアロジェニックマウス(H-2b/b、H-2k/k)であって、いずれもマイナー組織適合性抗原の型がレシピエントマウスと完全一致しないマウスである。具体的には、H-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kであって、マイナー組織適合性抗原の型が前記レシピエントマウスと一致しないマウスである。
マイナー組織適合性抗原(Minor histocompatibility antigen、mHA)は、MHCが一致するドナー・レシピエント間の同種移植において拒絶反応を惹起する組織適合性抗原であり、具体的には、細胞表面のMHC分子上に提示される生体内タンパク質のうち、ドナーとレシピエント間で多型等により異なるアミノ酸配列をもつペプチドで、そのMHC/ペプチド複合体がレシピエントT細胞に非自己として認識されるものをいう。
マウスのマイナー組織適合性抗原の例としては、H-2Kb拘束性にH60やH4、H-2Db拘束性にH7等が知られている。
本発明におけるドナーマウスは、H-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kであってmHAの型がレシピエントマウスと完全に一致しないかぎり、任意のマウスを選択して使用することができる。ドナーマウスは、例えば、レシピエントの親マウスと同系統でない、H-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kのマウスであり、これらの例は上で挙げたとおりである。ドナーマウスは、好ましくはC57BL/6系統又はCBA/N系統のマウスである。
レシピエントマウスに移植される細胞の種類には特に制限はなく、ドナーマウス由来の各種体細胞、体細胞から作製されるiPS細胞及び当該iPS細胞から分化誘導された細胞、ドナーマウス由来の組織幹細胞及び当該幹細胞から分化誘導された細胞を例として挙げることができる。また、ドナーマウスからの細胞の分離及び分化誘導等は、細胞毎に公知の方法によって行うことができる。
レシピエントマウスに移植される組織の種類には特に制限はなく、ドナーマウス由来の任意の組織を利用することができる。レシピエントマウスに移植される組織は、例えば、被験処置の適用が予想される移植治療において用いられる組織であってもよく、あるいは取扱の簡便な組織、例えば皮膚片等であってもよい。
レシピエントマウスへの移植の具体的な方法には特別な制限はなく、ドナーマウスから移植する細胞や組織に応じて適切な方法を採用して行うことができる。また、必要に応じて、移植前にレシピエントマウスに放射線照射等の前処置を行ってもよい。
被験処置は、マウスに何らかの外部刺激を与える処置であればよく、典型的には、免疫抑制作用又は免疫寛容作用の評価が望まれる物質を投与すること又は外部環境因子を変化させることである。被験処置を行うタイミングは、ドナーマウス由来の細胞又は組織の移植の前、移植と同時、又は移植の後のいずれでもよい。被験処置が被験物質の投与である場合、被験物質の投与形態(液体、固体等)、投与経路(経口摂取、静脈投与、腹腔内投与等)は、主に被験物質の物理化学的性質及び生物学的性質に応じて適宜選択される。
ドナーマウス由来の細胞又は組織を移植されたレシピエントマウスにおいては、T細胞関連型拒絶反応、抗体関連型拒絶反応のいずれも惹起され得る。したがって、レシピエントマウスの拒絶反応は、T細胞関連型拒絶反応又は抗体関連型拒絶反応のいずれかにより引き起こされる現象を観察することによって、具体的には移植片の生着率及び生着期間、移植片への宿主リンパ球の浸潤の度合い、レシピエントマウスの炎症マーカーの測定、移植片に対する抗体産生の測定、混合リンパ球試験等によって評価することができる。
本態様は、上記のようにして評価されたレシピエントマウスの拒絶反応を、ドナーマウス由来の細胞又は組織を移植したが被験処置を行っていない対照レシピエントマウスの拒絶反応と比較し、被験処置を行ったレシピエントマウスの拒絶反応が対照レシピエントマウスの拒絶反応よりも弱かった場合に、被験処置は免疫抑制作用又は免疫寛容作用を有すると判定する工程を含む。
例えば移植片の生着期間を拒絶反応の指標とする場合、被験物質を投与したレシピエントマウスと被験物質を投与しない対照レシピエントの各移植片の生着期間の変化を観察し、被験物質を投与したときに生着期間の延長が観察されたときに、当該被験物質は免疫抑制能又は免疫寛容能を有すると判定することができる。
免疫抑制作用又は免疫寛容作用の評価方法(in vitro)
本発明の別の態様は、(i)H-2抗原の型がb/kであるレシピエントマウス由来のT細胞を含む試料と、H-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kであってマイナー組織適合性抗原の型が前記レシピエントマウスと一致しないドナーマウス由来の抗原提示細胞を含む試料とを混合し、レシピエント由来T細胞とドナー由来抗原提示細胞とをインビトロで共存させる工程;
(ii)レシピエント由来T細胞とドナー由来抗原提示細胞とを共存させる前、共存させるのと同時、又は共存させた後に、レシピエント由来T細胞に被験処置を行う工程;
(iii)ドナー由来抗原提示細胞との共存及び被験処置の後に、レシピエント由来T細胞の幼若化反応を評価する工程;並びに
(iv)レシピエント由来T細胞の幼若化反応を、ドナー由来抗原提示細胞と共存させたが被験処置を行っていない対照のレシピエント由来T細胞の幼若化反応と比較し、被験処置を行ったレシピエント由来T細胞の幼若化反応が対照レシピエント由来T細胞の幼若化反応よりも弱かった場合に、被験処置は免疫抑制作用又は免疫寛容作用を有すると判定する工程
を含む、被験処置の免疫抑制作用又は免疫寛容作用をインビトロで評価する方法に関する。
本態様における「H-2抗原の型がb/kであるレシピエントマウス」及び「H-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kであってマイナー組織適合性抗原の型が前記レシピエントマウスと一致しないドナーマウス」は、第1の態様において説明したとおりである。
T細胞の幼若化反応は混合リンパ球反応(MLR;Mixed Lymphocyte Reaction)時に起こる反応であり、これを利用した混合リンパ球培養(MLC;Mixed Lymphocyte Culture)は拒絶反応の予測のための臨床検査として知られている。本態様は、混合リンパ球培養におけるレシピエントとドナーの組み合わせを第一の態様のレシピエントマウスとドナーマウスの組み合わせとすることで、マイナー組織適合性抗原不一致により生じる拒絶反応(T細胞の幼弱化反応)を反映したインビトロでの評価ツールとして利用するものである。
本態様の方法は、レシピエントをH-2抗原の型がb/kであるマウス、ドナーをH-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kであるマウスとした混合リンパ球培養を行い、その結果として起こるレシピエント由来T細胞の幼若化反応を被験処置の有り無しで比較することにより実施することができる。レシピエント由来T細胞を含む試料及びドナー由来抗原提示細胞を含む試料は、それぞれCD4+T細胞又はCD8+T細胞等のT細胞、及び樹状細胞等の抗原提示細胞を含むものであればよく、末梢血臨床検査としての混合リンパ球培養において用いられるようにリンパ球画分を使用してもよい。T細胞、抗原提示細胞又は各細胞を含む細胞群の調製は、当業者において公知の各細胞の単離方法又は各細胞群の調製方法に従って行えばよい。
被験処置は、レシピエント由来T細胞に何らかの外部刺激を与える処置であればよく、典型的には、免疫抑制作用又は免疫寛容作用の評価が望まれる物質で処理すること又は外部環境因子を変化させることである。被験処置を行うタイミングは、レシピエント由来T細胞とドナー由来抗原提示細胞とを共存させる前、共存させるのと同時、又は共存させた後のいずれでもよい。
T細胞の幼若化反応は、当業者において公知の測定方法に従って、例えば蛍光色素CFSEや3Hサイミジン等によりT細胞を標識し、その増殖を観察することによって評価することができる。
上記のようにして評価されたレシピエント由来T細胞の幼若化反応を、ドナー由来抗原提示細胞と共存させたが被験処置を行っていない対照のレシピエント由来T細胞の幼若化反応と比較し、被験処置を行ったレシピエント由来T細胞の幼若化反応が対照レシピエント由来T細胞の幼若化反応よりも弱かった場合に、被験処置は免疫抑制作用又は免疫寛容作用を有すると判定することができる。
レシピエント対象において免疫寛容を誘導するための細胞製剤
本発明はさらに異なる別の態様として、ドナー対象由来の免疫細胞を含む、レシピエント対象において免疫寛容を誘導するための細胞製剤であって、レシピエント対象に対する放射線照射及びT細胞除去処置と組み合わせて用いるための前記細胞製剤を提供する。
免疫寛容は、自己細胞等の自己抗原に対する免疫系の不応答であり、胸腺における中枢性免疫寛容、末梢における末梢性免疫寛容の2つに大別される。本発明において誘導される免疫寛容は、レシピエント対象における拒絶反応を抑制することができるものであれば、上記のいずれであってもよい。
本態様におけるレシピエント対象及びドナー対象は、動物、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモットを含むげっ歯類、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジを含む家畜、イヌ、ネコを含む愛玩動物といった哺乳動物であり、特に好ましくはヒトである。また、好ましい実施形態において、レシピエント対象及びドナー対象の主要組織適合抗原の型は完全一致又は部分一致であり、マイナー組織適合性抗原の型は完全一致ではない。
放射線照射は、移植治療を行う際にレシピエント対象に施される前処置の一つとして通常行われる放射線照射であればよく、レシピエント対象への全身照射(Total Body Irradiation)又は胸腺への照射が好ましい。照射量は、例えばヒトへの全身照射の場合は1回の照射線量として1Gy以上、胸腺への照射の場合は3Gy以上で、かつ致死量に至らない量を目安として、適宜調節することができる。
T細胞除去処置は、移植治療を行う際にレシピエント対象に施される前処置の一つとして通常行われる処置であればよく、抗T細胞抗体やステロイドの投与が挙げられる。抗T細胞抗体の例は、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD3抗体、抗TCR抗体及び抗胸腺細胞グロブリン(ATG)を包含し、これらの1種又は複数を組み合わせてレシピエント対象に投与することが好ましい。好ましい実施形態において、抗T細胞抗体は、抗CD4抗体及び抗CD8抗体の組み合わせであり、これらを同時に又は連続してレシピエント対象に静脈内投与又は腹腔内投与することが好ましい。投与量は、レシピエント対象の体内においてT細胞を除去するのに十分な量であればよい。
放射線照射及びT細胞除去処置は、移植実施前に免疫寛容を誘導することが望まれる場合は移植の直前までに、移植実施後に免疫寛容を誘導すること、すなわち遅延型免疫寛容(Delayed Tolerance Induction)の誘導が望まれる場合は寛容を誘導したい所望のタイミングで、1回又は複数回繰り返して行うことができる。また、放射線照射及びT細胞除去処置の順序に特に制限はないが、T細胞除去処置を放射線照射に先行して行うことが好ましい。以下、放射線照射及びT細胞除去処置を前処置と呼ぶことがある。
本発明の細胞製剤は、ドナー由来の免疫細胞を有効成分として含む。免疫細胞の例は、脾臓細胞、B細胞及び樹状細胞を包含し、これらの1種又は複数を組み合わせてレシピエント対象に投与することが好ましい。好ましい実施形態において、免疫細胞は、B細胞及び樹状細胞といった抗原提示細胞であり、特に好ましい実施形態において、免疫細胞は、B細胞及びFms-like tyrosine kinase 3 ligand(Flt3L)で誘導した樹状細胞である。
免疫細胞は、ドナー対象から採取される組織、例えば血液や骨髄液から当業者に知られた方法により調製して使用することができ、必要に応じて細胞培養を行って細胞数を増やしてから使用することができる。また、ドナー対象由来の体細胞からiPS細胞を誘導し、これを免疫細胞に分化誘導したものを使用してもよい。
レシピエント対象に投与される免疫細胞の数は、1x107~1x109個/kg体重、好ましくは1x108~1x109、より好ましくは5x108~2x109個/kg体重の範囲で適宜調節することができる。免疫細胞は、前処置の後にレシピエント対象に投与すればよく、移植実施前に免疫寛容を誘導することが望まれる場合は移植の直前までに、移植実施後に免疫寛容を誘導すること、すなわち遅延型免疫寛容の誘導が望まれる場合は寛容を誘導したい所望のタイミングで、1回又は複数回繰り返して投与することができる。投与は、静脈内投与又は腹腔内投与であることが好ましい。
本態様の細胞製剤は、レシピエント対象に対する放射線照射及びT細胞除去処置と組み合わせて用いることで、ドナー対象由来の組織又は細胞に対する免疫寛容をレシピエント対象において誘導することができ、これにより、移植されるドナー対象由来の組織又は細胞の定着率を上昇させることができ、また移植を受けたレシピエント対象へのシクロスポリンその他の従来の免疫応答抑制剤の投与を回避する又は投与量を減らすことが可能となる。細胞製剤は、移植実施前の免疫寛容誘導のみならず、移植実施後の免疫寛容誘導、すなわち遅延型免疫寛容誘導にも用いることができる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の理解を助けるためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施例1.マイナー不一致皮膚移植マウスの作製
1)レシピエントマウスの作製
129X1/SvJマウス(雄、三協ラボサービス株式会社より購入)とC3H/Heマウス(雌、三協ラボサービス株式会社より購入)から、F1マウスを作製した。作製されたマウスのH-2抗原を、FITC-anti-H-2Kk(36-7-5、Biolegend)及びPE-anti-H-2Kb(AF6-88.5、Biolegend)を用いた末梢血のフローサイトメトリー(FC500、ベックマンコールター)によって解析し、H-2b/kであることを確認した。以後、このF1マウスをC3129F1と表す。
2)皮膚片移植
7~10週齢のC3129F1(雄、6~7匹/群)をレシピエントマウスとし、その背部に麻酔下で8 mmの皮膚欠損部を作製した。同週齢の雄のBALB/cマウス(H-2d/d)、C57BL/6マウス(H-2b/b)、CBA/Nマウス(H-2k/k)及び皮膚欠損部を作製した個体と同個体のC3129F1マウスから麻酔下でそれぞれ耳介を摘出したのち、鑷子で皮膚組織と軟骨組織を剥離した後、8 mmの皮膚片をレシピエントマウスの皮膚欠損部に移植した。移植後のマウスを通常の飼育条件下で最大100日間ないし150日間飼育し、移植片のサイズを経時的に測定して移植片サイズが0 mmとなった場合に拒絶と判定し、移植片の生着率(移植片が拒絶された個体数/全個体数)を算出した(図1)。
レシピエントマウスに対して自家移植となるC3129F1からの移植片については、移植後の飼育期間全体で拒絶は観察されず、移植部位に完全に生着した。一方、MHC型がレシピエントマウスと不一致であるBALB/cマウス(H-2d/d)からの移植片は、移植後18日目までに完全に消失した。MHC型はレシピエントマウスと部分一致するがマイナー組織適合性抗原の型が一致しないC57BL/6マウス(H-2b/b)からの移植片も移植後18日目までに完全に消失したが、同じくマイナー不一致のCBA/Nマウス(H-2k/k)からの移植片は、移植後29日目まで移植部に残存した。
3)移植片へのリンパ球浸潤の評価
移植後10日目に移植片をレシピエントマウスの皮下組織ごと切除して回収し、HE染色を行った。BALB/cマウス(H-2d/d)及びC57BL/6マウス(H-2b/b)からの皮膚片を移植したマウスにおいて、移植部位でリンパ球の浸潤が観察された(図2)。
実施例2.マイナー不一致皮膚移植マウスを用いた拒絶反応抑制物質の評価
1)タクロリムス
実施例1の2)と同様にしてC3129F1マウスにBALB/cマウス(H-2d/d)、C57BL/6マウス(H-2b/b)又はCBA/Nマウス(H-2k/k)から採取した皮膚片の移植を行った。移植した日から毎日、各マウスに0.5mg/kg又は2.0mg/kgとなるようにタクロリムスを腹腔内投与しながら通常の飼育条件下で40日間飼育し、移植片のサイズを経時的に測定して、移植片の生着率を算出した。タクロリムスに代えて生理食塩水を投与した移植マウスを未処置群とした。
いずれの皮膚片を移植したマウスにおいても、未処置群と0.5mg/kg投与群の間で移植片の生着率は殆ど差異はなかった。一方、タクロリムス2.0mg/kg投与群では、移植片の完全消失までの日数は、BALB/cマウス(H-2d/d)からの移植片で8日、C57BL/6マウス(H-2b/b)からの移植片で20日、それぞれ延長した。また、CBA/Nマウス(H-2k/k)からの移植片では、移植後40日まで拒絶は観察されず、生着率は100%であった(図3)
2)ラパマイシン
上記1)と同様にしてレシピエントマウスに皮膚移植を行った。移植した日から毎日、各マウスに1.0mg/kgのラパマイシンを腹腔内投与しながら通常の飼育条件下で100日間飼育し、移植片のサイズを経時的に測定して、移植片の生着率を算出した。
ラパマイシン投与によって、移植片の完全消失までの日数はBALB/cマウス(H-2d/d)からの移植片、C57BL/6マウス(H-2b/b)からの移植片とも4日延長した。一方、CBA/Nマウス(H-2k/k)からの移植片の生着率は移植後30日以内に50%まで低下するが、その後の低下は認められなかった(図4)。
3)脾臓細胞又はB細胞
7~10週齢のC57BL/6J(雌)を安楽死させた後、脾臓を摘出した。脾臓をすりガラスを用いて優しくすりつぶし、単一細胞化した。低浸透圧処理により赤血球を破壊し、遠心操作により除去し、残存した細胞を脾臓細胞とした。脾臓細胞から抗マウスCD19抗体で標識した磁気ビーズ(CD19 MicroBeads, mouse、ミルテニーバイオテク)を用いた分離法によりCD19陽性細胞を分離し、B細胞とした。
レシピエントマウスであるC3129F1マウスに対し、皮膚移植6日前及び1日前に抗マウスCD4抗体(GK1.5)、抗マウスCD8α抗体(53-6.72)をマウス個体内でT細胞を除去するのに十分な量を腹腔内投与した。更に移植当日に5 Gyの全身放射線照射を実施し、前処置とした。
前処置を行ったレシピエントマウスに対して、上で調製した3.0×107個の脾臓細胞、3.0×107個のB細胞又は同容量の生理食塩水を静脈内投与し、さらに同日にBALB/cマウス(H-2d/d)、C57BL/6マウス(H-2b/b)又はレシピエントマウス自身から採取した皮膚の移植を行った。通常の飼育条件下で最大150日間飼育し、移植片のサイズを経時的に測定して、移植片の生着率を算出した。
脾臓細胞、B細胞及び生理食塩水のいずれを投与した場合も、C3129F1からの移植片は移植後の飼育期間全体で拒絶は観察されず、移植部位に完全に生着した。一方、MHC型がレシピエントマウスと不一致であるBALB/cマウス(H-2d/d)からの移植片は、脾臓細胞の投与により生着期間の延長が認められた。さらに、MHC型はレシピエントマウスと部分一致するがマイナー組織適合性抗原の型が一致しないC57BL/6マウス(H-2b/b)からの移植片は、脾臓細胞又はB細胞の投与によって移植部位に完全に生着した(図5)。
実施例1及び2から、マイナー不一致皮膚移植マウスはMHC型不一致皮膚移植マウスと同等又はそれより弱い拒絶反応を示し、ヒトにおけるマイナー不一致拒絶反応を反映していること、並びにマイナー不一致皮膚移植マウスを用いることで、タクロリムスやラパマイシンといった免疫抑制剤の、マイナー不一致により生じる拒絶反応に対する免疫制御作用を評価することができることが示された。さらに脾臓細胞及びB細胞は、放射線照射及び抗T細胞抗体投与と組み合わせることで、同種移植、特にマイナー不一致の同種移植において強い免疫寛容作用を発揮することが確認された。
実施例3.混合リンパ球試験
C3129F1マウスの脾臓細胞から抗マウスCD90.2抗体標識磁気ビーズ(CD90.2 MicroBeads, mouse、ミルテニーバイオテク)を用いて磁気ビーズ分離法によりCD90.2陽性細胞を得てT細胞とした。T細胞は細胞***を観察するために5-(and -6)-Carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester (CFSE)で染色した。BALB/cマウス、C57BL/6マウス、CBA/Nマウス又はC3129F1マウスの骨髄細胞を組換えマウスGM-CSF存在下で1週間培養して生成した細胞を樹状細胞とした。2.0×105個のT細胞と1.0×104個の樹状細胞を共培養し、4日後にフローサイトメトリー(BD FACSCantoII、ベクトンディッキンソン)で解析した。共培養した細胞はPE-抗マウスCD4抗体RM4-5(Biolegend)、APC-抗マウスCD8α抗体53-6.72(Biolegend)で染色し、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞におけるCFSEの減衰を測定し、CFSEが減衰した細胞を幼若化した細胞とし、その割合を算出した。
C3129F1マウス由来のCD4+T細胞及びCD8+T細胞は、C3129F1マウス又はCBA/Nマウス由来の樹状細胞と共培養してもほとんど又は全く増殖しなかったのに対し、C57BL/6マウス由来の樹状細胞との共培養によってCD4+T細胞及びCD8+T細胞は各々10%程度、BALB/cマウス由来の樹状細胞との共培養によってCD4+T細胞は40%程度、CD8+T細胞は50%強増加した(図6)。
実施例3から、マイナー不一致となる樹状細胞とT細胞の組み合わせは、MHC型不一致となる樹状細胞とT細胞の組み合わせと同等又はそれより弱いT細胞の幼若化を呈することが示され、実施例1及び2のマイナー不一致皮膚移植マウスと同様にマイナー不一致拒絶反応の評価に利用可能であると考えられた。
実施例4.免疫細胞を用いた免疫寛容の誘導
1)7~10週齢のC57BL/6J(雄、ドナー、H-2b/b)を安楽死させた後、上腕骨、大腿骨および脛骨を摘出した。摘出した骨の両端を切断し、シリンジを用いてPBSで骨内部を洗浄して骨髄を回収した。回収した骨髄を70Nフィルターを用いてろ過し、単一細胞化した。低浸透圧処理により赤血球を破壊し、遠心操作により除去し、残存した細胞を骨髄細胞とした。10% FBS入りRPMI-1640 10 mlに組換えマウスFlt3L(Biolegend) 2000 ngを加え、骨髄細胞1.0×107を懸濁した。7-9日間、37℃、5% CO2条件下で培養後、浮遊性または弱接着性細胞を回収して、C57BL/6マウス由来のFL-DCを調製した。
2)C3129F1マウスに対し、細胞移入6日前及び1日前に抗マウスCD4抗体(GK1.5)、抗マウスCD8α抗体(53-6.72)をマウス個体内でT細胞を除去するのに十分な量を投与した。更に細胞移入当日に3 Gyの全身放射線照射を実施して、前処置したレシピエントマウスを作製した。
3)上記レシピエントマウスに対して、実施例2の3)で調製したC57BL/6マウス由来のB細胞(3.0×107個)、上記1)で調製したC57BL/6マウス由来のFL-DC(1.5×107個)又は同容量の生理食塩水を静脈内投与した。投与から7日後にBALB/cマウス(H-2d/d)、C57BL/6マウス(H-2b/b)又はレシピエントマウス自身(Auto)から採取した皮膚の移植を行った。通常の飼育条件下で最大100日間(B細胞移入の場合)又は最大60日間(FL-DC移入の場合)飼育し、移植片のサイズを経時的に測定して、移植直後の移植片のサイズと比較して30%以下のサイズになった場合に拒絶と判定した。移植片の生着率は(移植片が生着している個体/全個体数)を値として用いた。
B細胞、FL-DC及び生理食塩水のいずれを投与した場合も、レシピエントマウス自身の移植片は移植後の飼育期間全体で拒絶は観察されず、移植部位に完全に生着した。一方、MHC型がレシピエントマウスと不一致であるBALB/cマウス(H-2d/d)からの移植片はB細胞、FL-DC及び生理食塩水いずれを投与した場合も、移植後早期に拒絶された。MHC型はレシピエントマウスと部分一致するがマイナー組織適合性抗原の型が一致しないC57BL/6マウス(H-2b/b)からの移植片は、生理食塩水を投与した場合では拒絶されたが、B細胞の投与によって移植部位に100日以上、FL-DCの投与によって移植部位に60日以上長期に生着した(図7)。
4)上記3)において、C57BL/6マウス由来B細胞投与の1週間後にレシピエントマウスから脾臓及び末梢血を採取し、常法に従って細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析(BD FACSCantoII、ベクトンディッキンソン)に供し、ドナー由来B細胞(CD45.1+)及びレシピエント由来細胞(CD45.2+)を検出した。脾臓、末梢血のいずれにおいてもドナー由来細胞の存在が確認された(図8)。
5)上記3)においてB細胞を移入したレシピエントマウスから、皮膚移植後50日目に脾臓を摘出して細胞懸濁液を調製し、CD19 cell isolation kit(ミルテニーバイオテク)を用いてCD19陽性細胞を除去した後、CFSEで染色した。2.0×105個のレシピエントマウス由来脾臓細胞と、30Gy放射線照射を行った1.0×104個のBALB/cマウス又はC57BL/6マウス由来脾臓細胞とを共培養し、6日後にフローサイトメトリー(BD FACSCantoII、ベクトンディッキンソン)で解析した。共培養した細胞はPE-抗マウスCD4抗体RM4-5(Biolegend)、APC-抗マウスCD8α抗体53-6.72(Biolegend)で染色し、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞におけるCFSEの減衰を測定し、CFSEが減衰した細胞を幼若化した細胞とし、その割合を算出した。
上記の混合リンパ球試験の結果を図9に示す。BALB/cマウス由来の放射線照射脾臓細胞との共培養によってレシピエントマウス由来のCD4+T細胞は60%程度、CD8+T細胞は80%程度の増殖率を示した。一方、C57BL/6マウス由来の放射線照射脾臓細胞と共培養してもレシピエントマウス由来T細胞はほとんど増殖せず、免疫寛容が確認された。

Claims (6)

  1. (i)H-2抗原の型がb/kであるレシピエントマウスに、H-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kであってマイナー組織適合性抗原の型が前記レシピエントマウスと一致しないドナーマウス由来の細胞又は組織を移植する工程;
    (ii)前記ドナーマウス由来の細胞又は組織の移植の前、移植と同時、又は移植の後に、レシピエントマウスに被験処置を行う工程;
    (iii)前記移植及び被験処置の後に、レシピエントマウスの拒絶反応を評価する工程;並びに
    (iv)前記レシピエントマウスの拒絶反応を、ドナーマウス由来の細胞又は組織を移植したが被験処置を行っていない対照レシピエントマウスの拒絶反応と比較し、被験処置を行ったレシピエントマウスの拒絶反応が対照レシピエントマウスの拒絶反応よりも弱かった場合に、被験処置は免疫抑制作用又は免疫寛容作用を有すると判定する工程
    を含む、被験処置の免疫抑制作用又は免疫寛容作用を評価する方法。
  2. (i)H-2抗原の型がb/kであるレシピエントマウス由来のT細胞を含む試料と、H-2抗原の型がb/b、k/k又はb/kであってマイナー組織適合性抗原の型が前記レシピエントマウスと一致しないドナーマウス由来の抗原提示細胞を含む試料とを混合し、レシピエント由来T細胞とドナー由来抗原提示細胞とをインビトロで共存させる工程;
    (ii)レシピエント由来T細胞とドナー由来抗原提示細胞とを共存させる前、共存させるのと同時、又は共存させた後に、レシピエント由来T細胞に被験処置を行う工程;
    (iii)ドナー由来抗原提示細胞との共存及び被験処置の後に、レシピエント由来T細胞の幼若化反応を評価する工程;並びに
    (iv)レシピエント由来T細胞の幼若化反応を、ドナー由来抗原提示細胞と共存させたが被験処置を行っていない対照のレシピエント由来T細胞の幼若化反応と比較し、被験処置を行ったレシピエント由来T細胞の幼若化反応が対照レシピエント由来T細胞の幼若化反応よりも弱かった場合に、被験処置は免疫抑制作用又は免疫寛容作用を有すると判定する工程
    を含む、被験処置の免疫抑制作用又は免疫寛容作用をインビトロで評価する方法。
  3. レシピエントマウスが129系統とC3H系統の交雑マウスであり、ドナーマウスがC57BL/6系統、CBA/N系統又はC57BL/6系統とCBA/N系統との交雑マウスである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. レシピエントマウスがC3129F1マウスである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ドナーマウスがC57BL/6系統又はCBA/N系統のマウスである、請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の方法。
  6. ドナーマウスがC57BL/6系統のマウスである、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
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