JP7393975B2 - 複合窒化アルミニウム粉末及びその製造方法 - Google Patents

複合窒化アルミニウム粉末及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、複合窒化アルミニウム粉末及びその製造方法に関する。詳しくは、樹脂に充填した際に高い熱伝導率を示す複合窒化アルミニウム粉末及びその製造方法に関する。
従来から、熱伝導性を向上させた樹脂材として熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物やその成形体が知られている。該樹脂組成物又はその成形体は、電子機器や機械装置内において発熱体の支持や封止のほか、ヒートシンク、あるいは発熱体と金属製のヒートシンクとの間に配置される熱伝導性絶縁材料として用いられている。例えば特許文献1には、放熱部材の材料として電気絶縁性を有する樹脂に熱伝導性フィラーを添加した熱伝導性樹脂が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載された熱伝導性樹脂においては、充填するフィラーとして高熱伝導率のフィラーを用いても、充填率を高くしないと十分な熱伝導率を得ることができないことが記載されている。特に窒化アルミニウムやダイアモンドなどの硬質フィラーの場合には、それらより熱伝導率が低いアルミナなどと比べて顕著な熱伝導率の上昇が見られないことが知られている。
その原因は、硬質フィラー間の接触は点接触になりやすく、熱伝導経路を形成させようとしても接触熱抵抗を生じやすいためである。そのため硬質フィラーで高い熱伝導率を得るには高充填させる必要がある。
硬質フィラー充填の際の接触熱抵抗を減少させる方法として、硬質フィラーと軟質フィラーを組合せる試みがなされている。しかしそのほとんどは、特許文献2のように、両者を混合するだけのものであり、仮に均一に混合して、硬質フィラーの周囲に軟質フィラーを配置できたとしても、樹脂との混練によってその配置が崩れ、十分な熱伝導率向上効果が発揮されない。
一方、特許文献3では、熱伝導率が高くかつ硬質な炭化ケイ素粒子の表面に複数の酸化マグネシウム粒子を固着させることで高い熱伝導性を示す複合フィラーが報告されている。しかし同じく硬質フィラーである窒化アルミニウムにおいては、軟質フィラーとの結合や吸着力が得られにくく、窒化アルミニウムの周りに軟質フィラーを保持することは困難であった。
特開2005-281467号公報 特開2017-88696号公報 特開2017-154937号公報
本発明は、硬質なフィラーである窒化アルミニウムについて、樹脂に充填した場合に、従来よりも接触熱抵抗を低減させることができ、これにより熱伝導性に優れる窒化アルミニウムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、表面に軟質な金属酸化物が固定化された窒化アルミニウム粒子を含む複合窒化アルミニウム粉末により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は、以下の[1]~[8]である。
[1]窒化アルミニウム粒子、及びモース硬度7以下の金属酸化物粒子を含み、前記窒化アルミニウム粒子の少なくとも一部は、表面に前記金属酸化物粒子がSi-O結合を介して固定されており、前記窒化アルミニウム粒子及び金属酸化物粒子の合計に対して、金属酸化物粒子の含有量が5~40質量%である、複合窒化アルミニウム粉末。
[2]前記金属酸化物粒子の固定化率が75%以上である、上記[1]に記載の複合窒化アルミニウム粉末。
[3]前記窒化アルミニウム粒子の平均粒径D50AlNが0.7~120μmであり、前記金属酸化物粒子の平均粒径がD50AlN/1.5以下である、上記[1]又は[2]に記載の複合窒化アルミニウム粉末。
[4]モース硬度が7以下の金属酸化物粉末と、窒化アルミニウム粉末とを乾式混合した混合粉末を空気中で150~600℃で加熱する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の複合窒化アルミニウム粉末の製造方法。
[5]前記混合粉末がシラン化合物を含む、上記[4]に記載の複合窒化アルミニウム粉末の製造方法。
[6]前記金属酸化物粉末及び窒化アルミニウム粉末の少なくともいずれかがシラン化合物により表面処理されている、上記[4]に記載の複合窒化アルミニウム粉
[7]上記[1]~[3]のいずれかに記載の複合窒化アルミニウム粉末を含む樹脂組成物。
[8]上記[7]に記載の樹脂組成物からなる成形体。
本発明によれば、樹脂に充填した際に、熱伝導性に優れる複合窒化アルミニウム粉末及びその製造方法を提供することができる。
[複合窒化アルミニウム粉末]
本発明の複合窒化アルミニウム粉末は、窒化アルミニウム粒子、及びモース硬度7以下の金属酸化物粒子を含み、前記窒化アルミニウム粒子の少なくとも一部は、表面に前記金属酸化物粒子が固定されており、前記窒化アルミニウム粒子及び金属酸化物粒子の合計に対して、金属酸化物粒子の含有量が10~40質量%である。
本発明の複合窒化アルミニウム粉末は、モース硬度7以下の金属酸化物粒子が表面に固定された窒化アルミニウム粒子を含む。該金属酸化物粒子が表面に固定された窒化アルミニウム粒子は、その表面が、モース硬度7以下の軟質な金属酸化物粒子で固定されている。そのため、樹脂に充填した際に柔軟な軟質層によって窒化アルミニウム粒子同士が面接触することにより、接触熱抵抗を軽減し、その結果高い熱伝導率を示す樹脂組成物が得られると考えられる。
これに対して、窒化アルミニウム粒子と軟質の金属酸化物とを単に混合したのみで、金属酸化物が窒化アルミニウム粒子の表面に固定化されていない従来の複合粒子は、樹脂に配合して、混合や圧縮等した際に、窒化アルミニウム粒子の表面に付着していた金属酸化物が外れやすい。その結果、その結果窒化アルミニウム粒子同士の接触が、金属酸化物粒子が存在しない点接触となり、接触熱抵抗を軽減できず、樹脂組成物の熱伝導率が低くなる。
<窒化アルミニウム粒子>
本発明の複合窒化アルミニウム粉末は、窒化アルミニウム粒子を含む。窒化アルミニウム粒子は、後述する複合窒化アルミニウム粉末の製造方法において原料として用いる窒化アルミニウム粉末(以下原料窒化アルミニウム粉末ということもある)を構成する複数の窒化アルミニウム粒子由来の成分である。
複合窒化アルミニウム粉末に含まれる窒化アルミニウム粒子の平均粒径D50AlNは、好ましくは0.7~120μmであり、より好ましくは4~90μmである。本明細書における平均粒径は、レーザー回折散乱型粒度分布計で測定して得た粒度分布において、累計体積50%の粒径D50を意味する。
窒化アルミニウム粒子の平均粒径は、原料窒化アルミニウム粉末を試料として、レーザー回折散乱型粒度分布計により求められる。
<金属酸化物粒子>
本発明の複合窒化アルミニウム粉末に含まれる金属酸化物粒子は、モース硬度が7以下の金属酸化物粒子であれば特に制限されないが、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどが好ましい。これら酸化亜鉛、酸化マグネシウムは、軟質であり、かつ熱伝導性にも優れ好ましい。金属酸化物のモース硬度は、5以下が好ましい。なお、モース硬度は、モース硬度計により測定できる。
本発明の複合窒化アルミニウム粉末中の金属酸化物粒子の含有量は、窒化アルミニウム粒子及び金属酸化物粒子の合計(100質量%)に対して、5~40質量%であり、好ましくは10~20質量%である。
金属酸化物粒子の含有量が5質量%未満であると、窒化アルミニウム粒子の表面に固定化される金属酸化物粒子の量が少なくなり、複合窒化アルミニウム粉末を樹脂に充填した際に、窒化アルミニウム粒子同士が面接触し難くなり、熱伝導率が向上し難い。金属酸化物粒子の含有量が40質量%を超えると、窒化アルミニウム粒子の表面に固定化されない金属酸化物粒子が増加する。酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの金属酸化物は、窒化アルミニウムと比較し、熱伝導率が低いため、表面に固定化されない金属酸化物粒子が増加すると、複合窒化アルミニウム粉末の熱伝導率が低下しやすくなる。
上記した複合窒化アルミニウム粉末中の金属酸化物粒子の含有量は、複合窒化アルミニウム粒子を製造する際に原料として用いる窒化アルミニウム粉末と、金属酸化物粉末の配合量により計算できる。また、複合窒化アルミニウム粉末について蛍光X線測定を行い、測定されるアルミニウム原子の量を窒化アルミニウムに由来するもの、及び測定される金属(金属酸化物が酸化亜鉛であれば亜鉛)を金属酸化物由来のものと仮定し、算出することも可能である。
金属酸化物粒子の平均粒径は、好ましくは0.3~5μmであり、より好ましくは0.5~4μmである。なお、金属酸化物粒子の平均粒径(D50)は、後述する複合窒化アルミニウム粉末の製造方法において原料として用いる金属酸化物粉末をレーザー回折散乱型粒度分布計により測定して求めることができる。
上記した窒化アルミニウム粒子と金属酸化物粒子の平均粒径は、一定の関係を満足するように調整することが好ましい。具体的には、窒化アルミニウム粒子の平均粒径D50AlNを上記範囲としつつ、金属酸化物粒子の平均粒径をD50AlN/1.5以下とすることが好ましく、D50AlN/2以下とすることがより好ましい。このように、窒化アルミニウム粒子の平均粒径に比べ、金属酸化物粒子の平均粒径を一定程度小さくすることにより、樹脂に充填した際に、窒化アルミニウム粒子同士が面接触しやすくなり、熱伝導率が向上する。
上記好ましい範囲にそれぞれの粒径が調整されて得られる複合窒化アルミニウム粉末の平均粒子径は、前記窒化アルミニウム粒子の平均粒径D50AlNは、よりやや大きい大きさとなり、一般に、1~125μmであり、特に、5~95μm程度が好ましい。
<固定化率>
上記窒化アルミニウム粒子の少なくとも一部は、表面に上記金属酸化物粒子が固定されている。ここで、表面に金属酸化物粒子が固定された窒化アルミニウム粒子は、表面の全体が金属酸化物粒子に固定されている必要はなく、表面の少なくとも一部が金属酸化物粒子に固定されていればよい。
金属酸化物粒子の固定化率は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上である。固定化率がこれら下限値以上であると、樹脂中で窒化アルミニウム粒子同士が面接触しやすくなり、熱伝導率が向上しやすくなる。
固定化率は、以下の式(1)で算出される。
固定化率(%)=(B/A)×100 (1)
Aは複合窒化アルミニウム粉末における金属酸化物粒子の量
Bは複合窒化アルミニウム粉末における固定された金属酸化物粒子の量
上記式(1)におけるAは、複合窒化アルミニウム粉末における金属酸化物粒子の量を意味し、窒化アルミニウム粒子に固定化された金属酸化物粒子と、窒化アルミニウム粒子に固定化されていない金属酸化物粒子の合計である。
上記式(1)におけるBは、複合窒化アルミニウム粉末における、窒化アルミニウム粒子に固定化された金属酸化物粒子の量を意味する。
上記Bは、次のようにして求められる。複合窒化アルミニウム粉末をアルコール溶媒(例えばイソプロピルアルコール)に加え、超音波照射することで分散させた後、遠心分離して懸濁した上澄み液を除去する。この操作を繰り返し実施すると、固定化されていない金属酸化物粒子は、上記上澄み液に含まれるため、上澄み液を除去した残渣中の金属酸化物の量を測定することで、窒化アルミニウム粒子に固定化された金属酸化物粒子の量を見積もることができる。金属酸化物の量は、蛍光X線測定により算出される。
固定化率は、詳細には実施例に記載の方法で測定される。
金属酸化物粒子の窒化アルミニウム粒子への固定は、単なる物理的な付着ではなく、金属酸化物粒子及び窒化アルミニウム粒子をSi-O結合を介してなされる。前記したSi-O結合による固定は、例えば、原料として特定の化合物を配合することでなされ、前記化合物としては、シラン化合物が挙げられる。熱伝導率の高い複合窒化アルミニウム粉末を得る観点から、前記窒化アルミニウム粒子表面への金属酸化物粒子の固定が、シラン化合物を介してなされていることが好ましい。
シラン化合物としては、アルコキシシラン類、クロロシラン類、シラザン類などが挙げられる。上記アルコキシシラン類は、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリル基、イソシアネート基、メルカプト基などの反応性官能基を有してもよい。
反応性官能基を有するアルコキシシラン類としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシランなどが挙げられる。
反応性官能基を有しないアルコキシシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンなどが挙げられる。
クロロシラン類としては、ビニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリクロロメチルシラン、エチルジメチルクロロシラン、プロピルジメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリクロロシラン、イソプロピルジエチルクロロシランなどが挙げられる。
シラザン類としては、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、ビス(トリフルオロプロピル)テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、トリメチルトリビニルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザンなどが挙げられる。
[複合窒化アルミニウム粉末の製造方法]
本発明の複合窒化アルミニウム粉末の製造方法としては、上記した本発明の複合窒化アルミニウム粉末を得られる方法であれば特に制限されないが、以下に詳述するとおり、モース硬度が7以下の金属酸化物粉末と、窒化アルミニウム粉末とを乾式混合した混合粉末を空気中で150~600℃で加熱する方法が好ましい。
<金属酸化物粉末>
モース硬度が7以下の金属酸化物粉末は、金属酸化物粒子により構成されるものであり、該金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどが好ましい。
なお上記金属酸化物粉末には、後述する加熱により、金属酸化物粉末を形成しうる化合物も含むこととする。加熱により金属酸化物粉末を形成しうる化合物としては、加熱により酸化亜鉛又は酸化マグネシウムを形成しうる化合物であることが好ましい。
加熱により酸化亜鉛を形成しうる化合物としては、例えば、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛などの無機亜鉛化合物、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナト錯体などの有機亜鉛化合物が挙げられる。
加熱により酸化マグネシウムを形成しうる化合物としては、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の無機マグネシウム化合物、酢酸マグネシウム、マグネシウムアセチルアセトナト錯体等の有機マグネシウム化合物が挙げられる。
金属酸化物粉末を構成する金属酸化物粒子の平均粒径は、好ましくは0.3~5μmであり、より好ましくは0.5~4μmである。金属酸化物粉末を構成する金属酸化物粒子の平均粒径は、D50AlN/1.5以下とすることが好ましく、D50AlN/2以下とすることがより好ましい。このように、窒化アルミニウム粒子の平均粒径に比べ、金属酸化物粒子の平均粒径を一定程度小さくすることにより、樹脂に充填した際に、窒化アルミニウム粒子同士が面接触しやすくなり、熱伝導率が向上する。
<窒化アルミニウム粉末>
《製法》
窒化アルミニウム粉末(原料窒化アルミニウム粉末)は、窒化アルミニウム粒子から構成されるものであり、従来公知の方法によって製造された粉末状のものを特に制限なく使用することができる。上記従来公知の方法としては、直接窒化法、還元窒化法、気相合成法、焼結法などを挙げることができる。
《粒子径、粒度分布》
原料窒化アルミニウム粉末を構成する窒化アルミニウム粒子の平均粒径は、上記した通りであり、平均粒径D50AlNは、好ましくは0.7~120μmであり、より好ましくは4~90μmである。
また、原料窒化アルミニウム粉末の粒度分布は、体積頻度の極大値が1つまたは2つである方が、樹脂への充填性が良くなり望ましい。粒度分布の極大値が2つの場合は、いずれか一方の頻度がもう一方の頻度の3倍以上が好ましい。
このような粒度分布を持つ窒化アルミニウム粉末は、各種製法で得ることができるが、必要に応じてボールミル、ジェットミル等で解砕するか、または振動篩や気流分級装置などの分級操作を施すことで、樹脂への充填性を改善できる。
《粒子形状》
窒化アルミニウム粉末は、一次粒子である複数の窒化アルミニウム粒子を含む。一次粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば不定形状、球状、多面体状、柱状、ウィスカー状、平板状など任意の形状であることができる。中でも、樹脂への充填性が良好で、熱伝導率の再現性の高い球状が望ましい。また、粒子のアスペクト比が小さい方が、充填性および絶縁性の観点から望ましい。好適なアスペクト比は1~3である。
また、原料窒化アルミニウム粉末には一次粒子の凝集粒子を含んでもよい。凝集粒子は、樹脂への充填性を低減する原因となることがあり、樹脂との混練や溶媒への分散によって凝集が解かれる性状、または内部空隙の少ない凝集粒子が望ましい。凝集粒子は分級操作等で除去してもよい。
《不純物》
原料窒化アルミニウム粉末には、原料由来あるいは合成法上で意図的に添加されたアルカリ土類元素、希土類元素などの不純物を、5質量%程度を上限として含んでもよい。また、凝集防止剤やセッター由来の不純物として窒化ホウ素を、5質量%程度を上限として含んでもよい。ただし、熱伝導率の低下を抑制する観点から、窒化アルミニウム粉末における窒化アルミニウム含有率は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
《酸化被膜》
原料窒化アルミニウム粒子は、加水分解性を抑える目的、あるいは金属酸化物との結合性を高めるために、その表面に酸化アルミニウム層を有するものが好ましい。具体的には窒化アルミニウム粒子の表面にAl-O-Al結合や、Al-OH基があることが好ましい。
酸化アルミニウム層は、原料窒化アルミニウム粉末を保管する際の自然酸化によって形成された酸化膜層であってもよく、意識的に行う酸化処理工程によって形成された酸化膜層であってもよい。この酸化処理工程は、原料窒化アルミニウム粉末の製造過程において行ってもよく、あるいは原料窒化アルミニウム粉末を製造した後に、別個の工程として行ってもよい。例えば、還元窒化法によって得られる原料窒化アルミニウム粉末は、反応時に使用する炭素を除去する目的で、製造過程に酸化処理工程を経るため、窒化アルミニウム粒子表面には酸化アルミニウム層が存在する。そうして得られた還元窒化法の窒化アルミニウム粉末に対し、さらに追加で酸化処理工程を行ってもよい。直接窒化法や焼結法では、酸化処理工程が無いため、必要に応じて追加で酸化処理工程を行ってもよい。
酸化処理工程を別個の工程として行う場合、その条件は以下のとおりである。
酸化処理工程は、各種方法で得られた原料窒化アルミニウム粉末を酸素含有雰囲気下で加熱して行う。これにより、窒化アルミニウム粒子表面に酸化アルミニウム層を形成することができる。この際、加熱温度は、好ましくは400~1,000℃、より好ましくは600~900℃である。加熱時間は、好ましくは10~600分、より好ましくは30~300分である。上記酸素含有雰囲気としては、例えば酸素、空気、水蒸気、二酸化炭素などを使用することができるが、空気中、特に大気圧下における処理で行っても、酸化アルミニウム層を形成することができる。
酸化処理は900℃以下で行うことが好ましく、この場合、窒化アルミニウム粒子表面に、厚い酸化アルミニウム層が形成されるのを抑制し、これにより窒化アルミニウムと酸化アルミニウム層との熱膨張係数の違いに起因する酸化膜層の割れを防止でき、その結果コアの窒化アルミニウム粒子の表面が露出しなくなる。表面が露出していない窒化アルミニウム粒子は、金属酸化物粒子との結合性、及び耐加水分解性が良好となる。
また、窒化アルミニウム粒子の酸化アルミニウム層の厚みは、好ましくは粒子の直径の0.005%~0.2%である。酸化アルミニウム層の厚みがこのような範囲であると、窒化アルミニウム粉末の熱伝導率を高く維持しつつ、金属酸化物との結合性、及び耐加水分解性が良好となる。
《表面水酸基》
原料窒化アルミニウム粉末の表面水酸基量は0.4個/nm以上であることが好ましい。表面水酸基量が0.4個/nm以上であると、窒化アルミニウム粒子表面に後述するシラン化合物を介して金属酸化物を固定しやすくなる。表面水酸基は表面の酸化アルミニウム層に由来するものが好ましい。
<窒化アルミニウム粉末、金属酸化物粉末の表面処理>
上記した金属酸化物粉末及び窒化アルミニウム粉末の少なくともいずれかはシラン化合物、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などの表面処理剤により表面処理されていてもよい。表面処理により、窒化アルミニウム粒子表面に金属酸化物粒子が固定されやすくなる。表面処理剤としては、上記した中でもシラン化合物が好ましい。
表面処理を行う方法としては、乾式表面処理、湿式表面処理のいずれかの方法で処理が可能である。
乾式表面処理の方法として、表面処理剤をガス化して金属酸化物粉末又は窒化アルミニウム粉末と混ぜる方法、液状の表面処理剤を噴霧または滴下投入し金属酸化物粉末又は窒化アルミニウム粉末と混ぜる方法などが挙げられる。
湿式表面処理の方法として、有機溶媒に、金属酸化物粉末又は窒化アルミニウム粉末と表面処理剤とを導入し、必要に応じて加熱する方法が挙げられる。表面処理後は、溶媒除去、加熱乾燥を行う。
<混合粉末>
本発明の複合窒化アルミニウム粉末の製造方法では、最初に上記した原料窒化アルミニウム粉末と金属酸化物粉末または金属酸化物を形成しうる化合物とを乾式混合し、混合粉末を得る。ここで乾式混合とは、実質的に溶媒を用いないで行う混合であるが、混合操作を容易にする観点から、少量の溶媒を用いてもよい。例えば、原料窒化アルミニウム粉末と金属酸化物粉末または金属酸化物を形成しうる化合物との合計100質量部に対して5質量部以下の溶媒を用いてもよい。ここで、溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、アルコール溶媒が好ましい。
また、乾式混合の際の温度は、好ましくは0~60℃であり、より好ましくは10~45℃である。
乾式混合は、一般の混合攪拌装置を使用することができ、例えば、プラネタリー混合装置、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、V型混合機、ドラムミキサー、ダブルコーンミキサー、ロッキングミキサーなどが挙げられる。中でも攪拌能力の高さから、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ロッキングミキサーなどを用いて行えばよい。
また、乾式混合の際は粉末が凝集しやすいため、混合装置には解砕羽根やチョッパーなど、一度生成した凝集を解く機構がついていることが望ましい。さらに混合の際、粉末が装置内に付着するのみならず、攪拌機構によっては粉末が混合容器壁に押し当てられるような状況になることで厚い付着層を形成する場合があり、そうなると粉末の混合状態を維持できなくなる。そのため、混合容器壁面にはフッ素樹脂コートなどの付着防止措置や、ノッカーなどの付着粉払い落し機構、攪拌羽根を工夫した掻き落とし機構などが備わっているとなおよい。またこれら装置には、加熱機能が付与されていてもよい。
混合粉末における金属酸化物粉末または金属酸化物を形成し得る化合物の含有量は、窒化アルミニウム粉末及び金属酸化物粉末の合計に対して、5~40質量%であることが好ましく、10~20質量%であることがより好ましい。
混合粉末は、さらに上記したシラン化合物を含む。シラン化合物を含む混合粉末を後述するように加熱することで、窒化アルミニウム粒子表面に金属酸化物粒子が、Si-O結合を介して固定される。これにより、複合窒化アルミニウム粉末を含む樹脂組成物の熱伝導率が向上しやすくなる。
混合粉末にシラン化合物を含有させる場合は、原料窒化アルミニウム粉末及び金属酸化物粉末の合計100質量部に対して、シラン化合物の含有量を0.01~2質量部とすることが好ましく、0.05~0.5質量部とすることがより好ましい。
<加熱>
本発明の複合窒化アルミニウム粉末の製造方法において、上記のとおり調整した混合粉末を空気中で150~600℃で加熱する。加熱温度を150℃以上とすることで、窒化アルミニウム粒子の表面に、金属酸化物粒子が固定されやすくなる。一方、加熱温度を600℃以下とすることにより、窒化アルミニウム表面に、窒化アルミニウム由来のアルミニウムと、金属酸化物由来の金属との複合酸化物の生成を抑制し、熱伝導率の低下を防止することができる。前記複合酸化物は、例えば、金属酸化物として酸化亜鉛を用いた場合は、アルミン酸亜鉛(ZnAl)などを意味し、該複合酸化物が生成した場合には熱伝導率が低下しやすくなる。
窒化アルミニウム粒子表面へ金属酸化物粒子を固定化しやすくし、かつ複合酸化物の生成を抑制する観点から、加熱温度は好ましくは200~400℃である。
また、加熱時間は好ましくは0.2~16時間であり、より好ましくは0.5~8時間である。
以上のように、混合粉末を加熱することにより、本発明の複合窒化アルミニウム粉末を製造することができる。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、上記した複合窒化アルミニウム粉末を含む樹脂組成物である。該樹脂組成物は、樹脂中に複合窒化アルミニウム粉末が分散しており、高い熱伝導性を有する。樹脂の種類は、特に限定されず、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、フッ素樹脂(例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル(例えばポリメタクリル酸メチルなど)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル(例えばポリアクリル酸メチルなど)、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、アイオノマーなどが挙げられる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、熱硬化型変性PPE、熱硬化型PPEなどを挙げることができる。
樹脂と複合窒化アルミニウム粉末とを混合するための混合装置としては、例えば、ロール混練機、プラネタリミキサー、ニーダ、バンバリーミキサー、自転・公転ミキサー等の通常の混練機が好ましく使用される。
樹脂組成物における、複合窒化アルミニウム粉末の充填率は、樹脂組成物から形成される成形体の熱伝導性や成形加工性などを勘案して適宜調整すればよい。
本発明の樹脂組成物は、公知の方法により成形して成形体としてもよい。成形方法としては、例えば、射出成形、トランスファ成形、押出成形、バルクモールディングコンパウンド成形、圧縮成形、溶剤等を用いたキャスティングによる成形などを挙げることができる。
これら各成形方法に応じて、樹脂組成物にはせん断応力、圧縮応力、引張応力など外部から種々の応力が加わるが、本発明の複合窒化アルミニウム粉末は、窒化アルミニウム粒子の少なくとも一部が、金属酸化物に固定されており、成形時に応力が加わった場合でも、窒化アルミニウム粒子と金属酸化物の配置が崩れにくい。そのため、軟質な金属酸化物により硬質な窒化アルミニウム粒子の間の接触熱抵抗が下がり、本発明の樹脂組成物から形成された成形体は、良好な熱伝導率を示す。
また、表面に金属酸化物が固定していない通常の窒化アルミニウム粒子は硬度が高く、成形装置の接触部材などの成形時に使用する部材や、成形体の使用対象物などを摩耗させてしまう場合があるが、本発明の複合窒化アルミニウム粒子は、表面に軟質の金属酸化物が固定された窒化アルミニウム粒子を含むため、上記した摩耗が抑制される。
成形体の形状は、特に限定されず、シート状、フィルム状、円盤状、矩形状、ペレット状等が挙げられる。
上記成形体は、各種放熱部材として使用することが好ましい。例えば家電製品、自動車、ノート型パーソナルコンピュータなどに搭載される半導体部品からの発熱を効率よく放熱するための放熱部材として使用することが好ましい。放熱部材の具体例としては、例えば放熱グリース、放熱ゲル、放熱シート、フェイズチェンジシート、接着剤などを挙げることができる。これら以外にも、例えばメタルベース基板、プリント基板、フレキシブル基板などに用いられる絶縁層、半導体封止剤、アンダーフィル、筐体、放熱フィンなどとしても使用することができる。
以下、本発明をさらに具体的に説明するため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、各種物性の測定は以下の方法によって行ったものである。
[平均粒径]
各試料をエタノール中に1質量%濃度になるように加え、200W程度の超音波照射を3分行った後、レーザー回折散乱型粒度分布計を用いて粒度分布を測定した。粒子径の体積頻度分布において、体積頻度の累積値が50%となるところの粒径の値をD50とし、これを平均粒径とした。
[熱伝導率]
エポキシ樹脂と複合窒化アルミニウム粉末とで作製した各成形体の熱伝導率は、京都電子工業製レーザーフラッシュ法熱物性値測定装置LFA-502を用いて測定した。
[固定化率]
酸化亜鉛の固定化率は以下の式に基づいて求めた
固定化率(%)=(B/A)×100 (1)
Aは複合窒化アルミニウム粉末における酸化亜鉛の量
Bは複合窒化アルミニウム粉末における固定された酸化亜鉛の量
直径5cm、深さ7cmのガラス容器に複合窒化アルミニウム粉末2gとイソプロパノール35mLを導入した。次いで、超音波分散器(日本精機社製「US-300T」)を使用し、プローブを2cm浸漬させた状態で80Wの出力で30分間超音波照射を行った後、3分間遠心分離を行い懸濁した上澄み液を除去した。この操作を更に2回行い、合計で3回実施した後、上澄み液を除去した残渣を80℃で真空乾燥させた。乾燥させた残渣中の酸化亜鉛の量を測定し、固定された酸化亜鉛の量を求めた。
酸化亜鉛の量は、蛍光X線分析装置(リガク社製ZSX PrimusIV)により求めた。酸化亜鉛の量は、測定される亜鉛原子がすべて酸化亜鉛、アルミニウム原子が全て窒化アルミニウムであると仮定して算出した。
[表面水酸基量]
ヘキサメチルジシラザンで乾式処理した際に窒化アルミニウム表面に生成するトリメチルシリル基量を、炭素分析により見積り、その量を表面水酸基量とした。
[シラン化合物量]
上述のように、本発明では複合窒化アルミニウム粉末を作製する際にシラン化合物を添加してもよい。シラン化合物が含まれる複合窒化アルミニウム粉末は、蛍光X線分析装置で、Si元素を測定することで確認できる。本発明では、窒化アルミニウム由来のAl元素に対するSi元素の量を求めるために、リガク製の蛍光X線分析装置ZSX PrimusIIを用いた。
[使用材料]
実施例及び比較例で用いた各成分は以下のとおりである。
<原料窒化アルミニウム粉末>
還元窒化法により得た、以下の窒化アルミニウム粉末を用いた。
A1:トクヤマ社製HF-05グレード粉末、D50=4.9μm、表面水酸基量1.3個/nm、比表面積0.64m/g。
A2:トクヤマ社製HF-30グレード粉末、D50=32.4μm、表面水酸基量1.0個/nm、比表面積0.14m/g。
A3:トクヤマ社製HF-50グレード粉末、D50=48.8μm、表面水酸基量0.8個/nm、比表面積0.12m/g。
A4:トクヤマ社製HF-80グレード粉末、D50=74.1μm、表面水酸基量0.8個/nm、比表面積0.11m/g。
A5:トクヤマ社製HF-01Dグレード粉末、D50=0.9μm、表面水酸基量1.4個/nm2、比表面積2.7m2/g。
<酸化亜鉛粉末>
B1:酸化亜鉛(富士フィルム和光純薬。D50=2.4μm)
B2:酸化亜鉛(上記B1を30分間乳鉢にて解砕して得た粉末である。D50=1.6μm)
B3:酸化亜鉛(富士フィルム和光純薬。D50=0.6μm)
上記B1~B3の酸化亜鉛のモース硬度は4である。
<シラン化合物>
C1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業、純度>97%、沸点124℃/0.39kPa)
C2:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業、純度>98%、沸点129℃/0.67kPa)
C3:1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(信越化学工業、純度>97%、沸点161℃/0.26kPa)
<溶媒>
IPA:イソプロピルアルコール(和光純薬工業、特級)
<樹脂>
エポキシ樹脂D:三菱ケミカル製jER-807
エポキシ樹脂硬化剤E:三菱ケミカル製jERキュア113
(製造例1~21)
フッ素樹脂製の丸底フラスコに、表1に示す窒化アルミニウム粉末、表1に示す酸化亜鉛粉末を表1に示す質量部で、更に、表1に示すシラン化合物を表1に示す質量部で加え、フッ素樹脂製攪拌羽根を用いて30分間攪拌して混合粉末を得た。得られた混合粉末を磁性るつぼに入れ、焼成炉により表1に示す温度で2時間加熱処理し、複合窒化アルミニウム粉末を得た。複合窒化アルミニウム粉末の固定化率を表1に併せて示す。
(実施例1~23、比較例1~4)
製造例1~21で得られた複合窒化アルミニウム粉末または複合化していない窒化アルミニウム粉末と窒化アルミニウム粉末A5、更にエポキシ樹脂D、エポキシ樹脂硬化剤E を、表2に示す割合となるように乳鉢で混練し樹脂組成物とした。得られた樹脂組成物を、直径10mmの円筒状の治具に充填し、150mm×200mmの平板で挟み8MPaの圧力を上下から加えた後、80℃で3時間加熱し、ペレット状の成形体を得た。得られたペレット状の成形体は、バリを取り、両面を#600の研磨紙で研磨した後、レーザーフラッシュ法で熱伝導率測定を行い、結果を表2に示した。
表1より明らかなように、シラン化合物を使用して加熱を行うことにより、Si-O結合が形成されて酸化亜鉛の固定化率が高くなる。また、表2に示したように、固定化率が高い製造例の複合窒化アルミニウム粉末を使用している実施例の方が、熱伝導率が高くなる傾向である。
このように、シラン化合物に起因するSi-O結合を介して酸化亜鉛が窒化アルミニウム粒子表面に固定化されていることで、樹脂との混練の際にその配置が崩れにくいため、軟質な酸化亜鉛により硬質な窒化アルミニウム粒子の間の接触熱抵抗が下がり、熱伝導率が高くなる効果が得られる。

Claims (7)

  1. 窒化アルミニウム粒子、及びモース硬度7以下の金属酸化物粒子を含み、前記窒化アルミニウム粒子の少なくとも一部は、表面に前記金属酸化物粒子がSi-O結合を介して固定されており、前記窒化アルミニウム粒子及び金属酸化物粒子の合計に対して、金属酸化物粒子の含有量が5~40質量%である、複合窒化アルミニウム粉末。
  2. 前記金属酸化物粒子の固定化率が75%以上である、請求項1記載の複合窒化アルミニウム粉末。
  3. 前記窒化アルミニウム粒子の平均粒径D50AlNが0.7~120μmであり、前記金属酸化物粒子の平均粒径がD50AlN/1.5以下である、請求項1又は2に記載の複合窒化アルミニウム粉末。
  4. モース硬度が7以下の金属酸化物粉末と、シラン化合物と、窒化アルミニウム粉末とを乾式混合した混合粉末を空気中で150~600℃で加熱する、請求項1~3のいずれかに記載の複合窒化アルミニウム粉末の製造方法。
  5. 前記金属酸化物粉末及び窒化アルミニウム粉末の少なくともいずれかがシラン化合物により表面処理されている、請求項4に記載の複合窒化アルミニウム粉末の製造方法。
  6. 請求項1~3のいずれかに記載の複合窒化アルミニウム粉末を含む樹脂組成物。
  7. 請求項に記載の樹脂組成物からなる成形体。
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