JP7390921B2 - 高次脳機能の測定方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 (1)令和2年1月21日 Scientific Reports 10,804(2020) https://doi.org/10.1038/s41598-020-57878-y
本発明は、D-アミノ酸を用いた高次脳機能の測定方法に関する。
実行機能、認知柔軟性、注意機能といった認知機能は、高次脳機能とも呼ばれ、加齢や頭部外傷、脳卒中などによって当該機能が障害されると、日常生活及び社会生活への適応が困難となる場合がある。
高次脳機能の中でも最上位に位置する実行機能は、遂行機能とも言われ、将来の目標達成のために適切な構えを維持する能力と定義され、認知機能の中でも上位に位置し、全ての認知機能が正常に機能するために必須な機能と考えられている(非特許文献1)。また、高次脳機能である認知機能の中の認知柔軟性と注意制御は、新しい行動パターンの促進や、非慣習的な状況における行動の最適化に重要な役割を果たし、人間の目標志向的な行動を支えていると考えられている。
斯かる高次脳機能を司る神経基盤は一般に前頭前野 (prefrontal cortex) に存在すると考えられており、したがって、前頭前野の発達が不十分であったり、傷害を受けることによって高次脳機能が低下すると、無計画な行動をする、物事の優先順位をつけられない、いきあたりばったりな行動になってしまう、効率よく仕事ができない、指示されないと行動が開始できない等の症状が現れる。
現在、高次脳機能の検査法には、一つの指示から異なる指示へ、す早く正確に対応する能力を評価する「注意シフトテスト」、色名語とそれが書かれた色名が異なる色名語を答える「ストループテスト」、分割注意、複数課題の処理能力を評価する「TMT(Trail Making Test)」等が知られているが、被測定者の気分、体調、やる気などが大きく関与し、またパソコンで検査を行う場合にはパソコンの操作能力や色覚異常も関与するため、客観的指標が求められている。
一方、グリシン以外の全てのアミノ酸にはD体とL体という2種類の立体異性体が存在する。L-アミノ酸は生物のタンパク質の構成要素であり、タンパク質に含まれるアミノ酸は原則的にL-アミノ酸であることから、高等動物の生理活動には主としてL体のアミノ酸が関与すると考えられていたが、近年の分析技術の進歩による分離能・感度の向上に伴い、ヒトを含む哺乳類におけるD-アミノ酸の存在とその役割が明らかにされるようになった。
最近、健常者における生物学材料中のD-アミノ酸及びL-アミノ酸の量は一定のバランスを保っていること、ある種の疾患ではD-アミノ酸とL-アミノ酸のバランスの崩れがあることが報告され(特許文献1)、当該文献では、アルツハイマー病と血液中のD-アミノ酸との関係についても検討され、アルツハイマー病患者では、D-セリン、D-アラニン、D-メチオニン、D-ロイシン、D-アスパラギン酸、D-フェニルアラニン又はD-アロ-イソロイシンのバランスが変化することが示唆されている。しかしながら、D-セリンについて、脳脊髄液中のD-セリンが早期アルツハイマー診断のバイオマーカーになり得ることを示唆する報告(非特許文献2)と、脳脊髄液中のD-セリンとアルツハイマー病や軽度認知障害との相関は認められないという報告(非特許文献3)が混在する等、脳機能とD-アミノ酸の関連について統一的な見解は得られておらず、健常者の高次脳機能との関連についても報告はない。
特開2017-223711号公報
福井 俊哉、認知神経科学 (2010) 12: 156-164 C Madeira, MV Lourenco, C Vargas-Lopes, CK Suemoto, CO Brandao, T Reis, REP Leite, J Laks, W Jacob-Filho, CA Pasqualucci, LT Grinberg, ST Ferreira and R Panizzutti., Transl Psychiatry. 2015;5:1-9. doi:10.1038/tp.2015.52. Epub 2015 May 5. Shorena Samakashvili, Clara Ibanez, Carolina Simo, Francisco J. Gil-Bea, Bengt Winblad, Angel Cedazo-Minguez, Alejandro Cifuentes., Electrophoresis. 2011;32(19):2757-2764. Doi:10.1002/elps.201100139. Epub 2011 Aug 29.
本発明は、被験者の高次脳機能を評価するための、客観的で、低侵襲的な方法を提供することに関する。
本発明者らは、斯かる課題に鑑み検討したところ、注意シフトテスト及びストループテストのスコアが血中のD-プロリン比率と有意に負の相関があること、また、D-プロリン比率が高いほどTMTの遂行に時間を要することを発見し、被験者の生体試料中のD-プロリンレベルを指標として高次脳機能を測定することができ、また高次脳機能への介入効果を評価できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)及び2)に係るものである。
1)被験者から採取された生体試料中のD-プロリンレベルを測定する工程を含む、実行機能、注意機能及び認知柔軟性から選択される1種以上の高次脳機能の測定方法。
2)被験者から採取された生体試料中のD-プロリンレベルを測定する工程を含む、実行機能、注意機能及び認知柔軟性から選択される1種以上の高次脳機能の介入効果の評価方法。
本発明の方法によれば、被験者の高次脳機能を、低侵襲的、客観的に且つ簡便に検査することができ、高次脳機能低下の早期変化や介入効果を客観的に評価できる。
クロロゲン酸類の摂取による血中D-プロリン比率の変動。
本発明において、「高次脳機能」は、実行機能、注意機能及び認知柔軟性から選ばれる1種以上の認知機能を意味するが、少なくとも実行機能を含むのが好ましい。
本発明において、「注意機能」とは、注意制御機能とも云われ、多くの情報の中から、ある重要な情報に意識的に注意を向ける機能をいう(株式会社サイエンス社、大山正・中島義明 編、実験心理学への招待[改訂版]、p99)。注意機能は主に「選択性注意」、「注意の転換」、「注意の分割」の3つの機能から構成される(早稲田大学臨床心理学研究、第13巻、第1号、p33)。ここで、選択性注意とは、多くの刺激や対象から、特定の刺激や対象に注意を向ける機能であり、注意の転換とは、特定の刺激や対象に向けていた注意を必要に応じて中断し、他の刺激や対象に適切に切り替える機能であり、注意の分割とは、複数の対象に同時に注意を配分させる機能である。
「認知柔軟性」とは、不適応な考えを入れ替えたり、バランスのある思考や適応した思考を取り入れる能力のことをいう(徳吉陽河・岩崎祥一(2012)認知の柔軟性尺度(CFI)日本語版の作成と妥当性 日本心理学会第76回大会論文集、672)。
「実行機能」とは、遂行機能とも言われ、将来の目標達成のために適切な構えを維持する能力と定義され、具体的には、1)課題の表象、2)企画(プランニング)、3)課題の遂行、4)望ましくない反応の抑制、5)評価と必要に応じた修正、の各能力をその構成要素とすると考えられている(前記非特許文献1)。
本発明における高次脳機能(注意機能、認知柔軟性及び実行機能)は、TMT(Trail Making Test)により評価することができる。
TMTは注意機能の検査として良く用いられる方法であり、視覚注意、視覚探索、視覚運動協調性、注意の持続と選択、視覚-運動の協調性、情報処理の迅速さ、干渉を伴う短期記憶等、高次の注意機能を反映するとされている。特にTMT-Aは注意機能(注意の選択性)、TMT-Bは実行機能、デルタ(Δ)TMTは認知柔軟性の指標として用いられる。
上記の脳機能は、例えばCNS Vital Signsを用いた認知機能検査によっても評価することができる。CNS Vital Signsは、米国のCNS Vital Signs社が開発したパソコン上で行う認知機能検査バッテリーである(Archives of Clinical Neuropsychology,2006,21(7):623-643参照)。好ましくは、CNS Vital Signsのストループテスト、注意シフトテスト(Shifting Attention Test)、が評価に使用される。
ストループテストは、画面に表示された文字の色と意味との一致及び不一致を答えるもので、文字の色と意味という異なる情報のうち一方を抑制し、他方に注意を配分する能力が要求される課題である。ストループテストは、CNS Vital Signsを用いた認知機能検査において反応時間の評価に使用される。ここで言うストループテストにより評価される反応時間とは、抑制機能が必要な課題に対する選択反応時間である(平成25年度 広域科学教科教育学研究経費研究報告書、知的障害児のプランニングと抑制機能の支援に関する基礎的・実践的研究、2014年3月15日、[www.u-gakugei.ac.jp/~graduate/rengou/kyouin/news/data_kouiki_h25/05.pdf])。
注意シフトテストは、指図されたルールに従って、画面上部の図と適合する図を画面下部から選択する課題である。適合のルールは2パターン(色または形)からランダムに決定される。このテストは、実行機能の評価に使用される。
さらに、ストループテストと注意シフトテストの成績から認知柔軟性が評価される。
本発明において、「高次脳機能の測定」とは、高次脳機能の状態又は程度、実行機能障害の有無を含み、好ましくは、高次脳機能の状態の測定である。
ここで、「測定」は、「検査」、「判定」、「評価」又は「評価支援」という用語で言い換えることもできる。なお、本明細書において「判定」又は「評価」という用語は、医師による判定や評価を含むものではない。
また、「高次脳機能の介入効果」とは、介入行為が高次脳機能に及ぼす効果を意味する。ここで、介入行為としては、例えば対象者に対する医薬品や医薬部外品の投与、食品の摂取、運動、音楽、認知トレーニング、アロマテラピー等やその組み合わせが挙げられる。また、「高次脳機能の介入効果の評価」としては、例えば、高次脳機能改善剤(食品、医薬品、医薬部外品、香料)の評価又は選択(スクリーニング)が挙げられる。
本発明の高次脳機能の測定方法又は高次脳機能の介入効果の評価方法は、被験者から採取された生体試料中のD-プロリンレベルを測定する工程を含む。
本発明において、被験者は特に限定されないが、例えば、加齢にともない高次脳機能が低下する中高年齢以上のヒト、高次脳機能、例えば実行機能の障害に特徴的な自覚症状(例えば、物事の優先順位をつけられない、いきあたりばったりな行動になってしまう、効率よく作業ができない、指示されないと行動が開始できない、必要に応じて作業内容を修正できない等)を有するヒト、高次脳機能の低下が疑われるヒト等が挙げられる。
本発明において、生体試料とは、血液、リンパ液、脳脊髄液、唾液、尿等の体液が主として挙げられ、好ましくは、血液試料である。血液試料としては、例えば血液(全血)及び血液に由来する血清、血漿等が含まれるが、好ましくは血清である。
血液は、体循環の血管(動脈(末梢動脈)、静脈(末梢静脈)、毛細血管)又は肺循環の血管(肺動脈、肺静脈、肺毛細血管)から採血することができるが、採血の簡便性の観点から、体循環の血管、特に静脈(末梢静脈)から採血をすることが好ましい。
本発明において、D-プロリンレベルとしては、D-プロリンの含量や組成値でも良いが、次式:〔D-プロリン量/(D-プロリン量+L-プロリン量)〕×100で示されるプロリンのキラルバランス、すなわちプロリンのD化率が好ましい。
生体試料中のD-プロリンレベルの測定は、生体試料中のD-アミノ酸とL-アミノ酸を分離して測定できればよく、その手段は限定されないが、一般的には液体クロマトグラフィー(LC)と質量分析(MS)を組み合わせたLC-MS、LC-MS/MS等を用いた分離定量方法を採用できる。
ここで、キラルアミノ酸の分離手法としては、例えば、4-フルオロ-7-ニトロ-2,1,3-ベンゾキサジアゾール(NBD-F)試薬を用いてアミノ酸をNBD誘導体とした後、逆相カラム(1次元目:分子種分離)とキラル識別子を担持した固定相を有するキラルカラム(2次元目:キラル分離)を用いた2次元液体クロマトグラフィー(LC)法による分離定量(J Chromatogr A. 2010 Feb 12;1217(7):1056-62. doi: 10.1016/j.chroma.2009.09.002. Epub 2009 Sep 6)や、1本の逆相カラム(ODSカラム)を用いた1次元LC法(Anal Chim Acta. 2015 May 22;875:73-82. doi: 10.1016/j.aca.2015.02.054. Epub 2015 Feb 23)、アミノ酸を6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシイミジルカルバメート(AQC)誘導体化し、1本のキラルカラムを用いた1次元LC法(J Pharm Biomed Anal. 2015 Nov 10;115:123-9. doi: 10.1016/j.jpba.2015.05.024. Epub 2015 Jun 16)の他、アミノ基をAQC誘導体化した後、弱アニオン交換型の固定相を有する第一のキラルカラムと、両性イオン交換型の固定相を有する第二のキラルカラムとを接続した液体クロマトグラフィーを用いて分離する方法(特開2018-100906号公報)が知られているが、特開2018-100906号公報の方法を用いるのが好ましい。
後記実施例に示すとおり、プロリンのキラルバランスは、高次脳機能の検査として汎用されている注意シフトテスト及びストループテストのスコア、及びTMTの遂行時間と良好な分類相関が認められた。すなわち、注意シフトテスト及びストループテストのスコアが血中のD-プロリン比率と負に相関し、TMT(TMT-A、TMT-B、ΔTMT)の遂行時間はD-プロリン比率と正に相関する。したがって、被験者の生体試料中のD-プロリンレベルを測定し、それを基準値と比較することにより、当該被験者の高次脳機能、具体的には実行機能、認知柔軟性及び注意機能から選ばれる1種以上を測定でき、当該高次脳機能の介入効果を評価できる。
ここで、基準値は、例えば、D-プロリンレベルと高次脳機能の状態との関連づけから以下のように設定することができる。
高次脳機能の状態を、注意シフトテスト、ストループテスト又はTMT等の手段により評価する。その評価結果に基づき、高次脳機能が正常と判断される被験体から構成される健常群と、高次脳機能が低いと判断される被験体から構成される高次脳機能障害群を作成する。これとは別途、前述の方法によりD-プロリンレベルを測定する。そして高次脳機能の評価結果とD-プロリンレベルとの相関性に基づき、高次脳機能の状態を評価するのに適した基準値が決定される。具体的には、各群に属するヒトのD-プロリンレベルの統計解析結果に基づき、各群を特徴づけるD-プロリンレベルの数値範囲を決定する。この数値範囲は、各群の平均値を中心とした上下の一定範囲に設定することにより決定する。ここで「一定範囲」とは、標準偏差(SD)等の統計数値や、1/2SD値、1/3SD値などを用いてもよいし、予め設定した任意の数値を用いてもよい。又は各群の中央値を中心とした上下の一定範囲に設定することもできる。ここで「一定範囲」とは、第1四分位点や第3四分位点などを用いてもよいし、予め設定した任意の数値を用いてもよい。
そして、例えば、被験者から得られたD-プロリンレベルが高次脳機能障害群のD-プロリンレベルの範囲内に属する場合には、当該被験者は「高次脳機能が低下している」、「高次脳機能障害がある」又は「高次脳機能障害がある可能性が高い」と評価できる。
斯くして、本発明の方法によれば、被験者の高次脳機能の状態や程度を、非侵襲で、簡便かつ的確に評価することができる。
また、本発明によれば、何らかの機能性食品や医薬品、医薬部外品、香料の摂取試験等において、介入行為によるD-プロリンレベルを測定し、基準値と比較することにより、その介入行為の高次脳機能に対する効果を評価することができる。この場合、基準値としては、例えば介入行為前のD-プロリンレベルの測定値を用いればよい。
例えば、機能性食品、医薬品又は医薬部外品の有効成分となり得る被験物質の高次脳機能の維持又は改善効果を評価すること、或いはそれに基づいて当該被験物質を高次脳機能の維持又は改善剤の有効成分として選択することができる。
ここで、「高次脳機能の維持」とは、高次脳機能の低下の防止若しくは遅延、又は低下の危険性を抑制し正常な高次脳機能を維持することを意味し、「高次脳機能の改善」とは、低下した高次脳機能を向上させることを意味する。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
試験例1 実行機能及び認知柔軟性と血中D-プロリン比率の相関解析
〔1.試験概要〕
(試験手順)
40歳以上65歳未満の男女50名(平均年齢52.5±6.7歳)を対象に、実行機能及び認知柔軟性と血中D-プロリン比率の相関解析を行った。実行機能及び認知柔軟性の測定には下記に示したテストを用い、2日間の事前練習を行った後、本測定を行った。また、実行機能及び認知柔軟性の本測定と同日に絶食下(飲水30分前まで可)で採血を行って血清を分離した。血清は-80℃で凍結保管した後、プロリン濃度測定を行った。
(実行機能及び認知柔軟性の測定)
実行機能及び認知柔軟性は、CNS Vital Signs(CNS Vital Signs社、日本語版)により測定した(Archives of Clinical Neuropsychology,2006,21(7):623-643参照)。本試験例では、以下の2つのテストを実施した。
(1)ストループテスト
ストループテストは3つのパートから成る。第1パートでは、黒文字で赤、黄、青及び緑の文字がランダムに画面に現れる。被験者は、文字が現れたらできるだけ早くスペースキーを押す(単純反応)。第2パートでは、赤、黄、青及び緑の文字が色文字で表示される。被験者は文字の色と文字の意味が一致したらスペースキーを押す(複合反応)。第3パートでは、赤、黄、青及び緑の文字が色文字で表示される。被験者は文字の色が文字の意味と一致しない時だけスペースキーを押す(ストループ反応)。
(2)注意シフトテスト
画面に3つの図形が、上部に1つ、下部に2つ表示される。被験者は「形」か「色」の適合のルールを指示され、上部の図と適合する図を下部の2つの図から選ぶ。指示される適合のルール(形が合っている・色が合っている)、及び3つの図形の色(赤・青)と形(丸、四角)はランダムに変わる。
両テストの結果から、CNS Vital Signsの計算方法に基づき実行機能と認知柔軟性のスコアを算出し評価した。
(血中プロリン濃度の測定とD-プロリン比率の算出)
(1)試料溶液及び標準品の調製
ヒト血清50μLを10mLスピッチグラス(商品名:強化硬質ねじ口試験管)に入れ、メタノール:水(9:1,v/v)溶液450μLを混合後、遠心機(HITACHI製/CF5RE)にて室温で5分間、3000rpmにて遠心分離を行うことで除タンパクし、上清のアミノ酸を採取した。次いで、別途10mLスピッチグラスに、0.2mol/L ホウ酸緩衝液(pH8.9)、採取溶液、AccQ・Tag Ultra誘導体化試薬、すなわちAQC溶液(Waters製:AQC粉末を3mg/mL,すなわち10mmol/Lの濃度でアセトニトリルに溶解)を各々70μL、10μL、20μL(7:1:2)の順番で混合し、直ちに撹拌後、55℃で10分間加熱することにより試料溶液を調製した。同様に、0.2mol/L ホウ酸緩衝液(pH8.9)、100μmol/L D,L-アミノ酸標準溶液(Pro/プロリン、0.2mol/L ホウ酸緩衝液溶解)、AQC溶液を各々70μL、10μL、20μL(7:1:2)の順番で混合し、直ちに撹拌後、55℃で10分間加熱することによりアミノ酸標準溶液を調製した。
(2)LC-MS/MS分析
(1)で調製した試料溶液を、下記の条件下でLC-MS/MS分析し、L-プロリンとD-プロリンの分離検出及び定量を行った。
・装置
Exion LCシリーズ(AB SCIEX社)、質量分析計/QTRAP6500+
リニアイオントラップ型(AB SCIEX社)
・クロマトグラフィー分離
分離キラルカラム:CHIRALPAK QN-AX<DAICEL社> 2.1mm内径×150mm、粒径5μm(第一のキラルカラム)及びCHIRALPAK ZWIX(+)<DAICEL社>
3.0mm内径×150mm、粒径3μm(第二のキラルカラム)をこの順序で直列接続(45℃)
溶離液: 0.1%(v/v)ギ酸及び55mMギ酸アンモニウム含有メタノール:水(90:10, v/v) 溶液
溶離法:アイソクラティック
移動相流量:0.25mL/min
注入量:5μL
・質量分析
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法(ESI)
極性:正イオン
Curtain Gas(CUR):30psi
Ionspray voltage(IS):4500V
Temperature(TEM):600℃
Ion Source Gas1(GS1):80psi
Ion Source Gas1(GS2):80psi
Collision Gas(CAD):10
・検出モード
プリカーサーイオンにプロトンイオン付加分子([M+H]+ )、プロダクトイオンにAQCフラグメントイオン(m/z=171)を設定した正イオンモードによるSRM(selected reaction monitoring)検出及びプロダクトイオ
ンにAQCフラグメントイオン(m/z=171)を設定した正イオンモードによるプリ
カーサーイオンスキャン検出。
・D-プロリン比率の算出
測定されたL-プロリン及びD-プロリン濃度から、D-プロリン比率(D/(D+L)×100(%))を算出した。
(相関解析)
測定された実行機能及び認知柔軟性のスコアとD-プロリン比率について、ピアソンの積率相関分析を行った(統計解析ソフトはSPSS 18、IBMを使用)。
〔2.結果〕
実行機能及び認知柔軟性のスコアは、D-プロリン比率と有意に負の相関があることが明らかになった。したがって、D-プロリン比率は実行機能及び認知柔軟性のマーカーとなることが示された。
Figure 0007390921000001
試験例2 TMTにより評価された高次脳機能と血中D-プロリン比率の相関解析
〔1.試験概要〕
(試験手順)
60歳以上85歳未満の男女34名(平均年齢73.7±6.0歳)を対象に、高次脳機能の評価としてTrail Making Test(TMT)の測定を行い、血中D-プロリン比率との相関解析を行った。TMTは、TMT-A、TMT-Bの遂行時間(秒)を上限300秒として測定し、またΔTMT=TMT-B(秒)-TMT-A(秒)も算出した。高次脳機能の測定日に、非絶食下で採血を行って血清を分離し、凍結保管した後に実施例1と同様の方法でD-プロリン比率の算出を行った。相関解析についても実施例1と同様の方法で行った。
〔2.結果〕
TMT-A、TMT-B、ΔTMTいずれもD-プロリン比率と有意に正の相関があること、つまりD-プロリン比率が高いほどTMTの遂行に時間を要することが明らかになった。TMT-Aは注意機能(注意の選択性)、TMT-Bは実行機能、ΔTMTは認知柔軟性の指標として用いられるテストであることから、D-プロリン比率は高次脳機能評価のマーカーとなることが示された。
Figure 0007390921000002
試験例3 高次脳機能改善素材の摂取による血中D-プロリン比率の変動解析
(製造例)クロロゲン酸類含有飲料の製造
生コーヒー豆の粉砕物を熱水で抽出後、スプレードライ乾燥し、得られたパウダーをエタノール水溶液に溶解させてろ過し、ろ過液を活性炭及びイオン交換樹脂を用いたカラムで処理することで生コーヒー豆抽出物を得た。
生コーヒー豆抽出物を酸味料、甘味料及びその他材料と配合して、クロロゲン酸類を含む飲料(クロロゲン酸類330mg/100mL含有)を調製した。また、生コーヒー豆抽出物を含まないこと以外は実施例と同じ組成を有する対照飲料(クロロゲン酸類不含有)を調製した。
調製した飲料中のクロロゲン酸類定量にはHPLC(日立製作所(株)製)を使用した。HPLCでは、試料1gを精秤後、溶離液にて10mLにメスアップし、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm、ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。5-カフェオイルキナ酸を標準物質として、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸、5-カフェオイルキナ酸、3-フェルロイルキナ酸、4-フェルロイルキナ酸、5-フェルロイルキナ酸、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸及び4,5-ジカフェオイルキナ酸の合計量を求めることで、クロロゲン酸類を定量した。クロロゲン酸類を含む飲料(100mL)におけるクロロゲン酸類の合計量は330mg、うち3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸、5-カフェオイルキナ酸、3-フェルロイルキナ酸、4-フェルロイルキナ酸、5-フェルロイルキナ酸の合計量は270mgであった。対照飲料におけるクロロゲン酸類の合計量は0mgであった。
(試験手順)
50~69歳の男女38名(MMSEが24点以上の認知症を発症していないと考えられる者)を被験者として試験を実施した。試験では、被験者にクロロゲン酸類を含む被験飲料(20名)又は対照飲料(18名)を1日1本(100mL)、16週間、就寝前に摂取させた。飲料摂取前、及び摂取16週間後に絶食下にて採血を行って血清を分離し、凍結保管した後に実施例1と同様の方法でD-プロリン比率の算出を行った。摂取16週後のD-プロリン比率について、対応のないt検定を行った(統計解析ソフトはSPSS 18、IBMを使用)。
結果を図1に示す。
高次脳機能を改善作用を有するクロロゲン酸類(特開2018-039797号公報)を摂取することで、D-プロリン比率が有意に低減することが示された。以上より、D-プロリン比率は、高次脳機能改善作用が期待される介入の効果の評価指標として有用であることが示された。

Claims (5)

  1. 被験者から採取された生体試料中のD-プロリンレベルを測定する工程を含む、実行機能、注意機能及び認知柔軟性から選択される1種以上の高次脳機能の測定方法。
  2. 被験者から採取された生体試料中のD-プロリンレベルを測定する工程を含む、実行機能、注意機能及び認知柔軟性から選択される1種以上の高次脳機能に対する介入効果の評価方法。
  3. D-プロリンレベルが、次式:
    〔D-プロリン量/(D-プロリン量+L-プロリン量)〕×100
    で示されるプロリンのキラルバランスである請求項1又は2記載の方法。
  4. 被験者から採取された生体試料が、血液試料である請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
  5. 高次脳機能が少なくとも実行機能を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
JP2020024593A 2020-02-17 2020-02-17 高次脳機能の測定方法 Active JP7390921B2 (ja)

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