JP7378697B2 - 真空ポンプ - Google Patents
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Description
このような真空ポンプには、通常、所定サイズのフランジが設けられており、排気を要する真空装置(以下、装置とする)の排気口側のフランジ(以下、装置側フランジとする)とボルトなどで固定されるようになっている。
真空ポンプのフランジ(以下、真空ポンプのフランジを吸気口フランジとする)と装置側フランジとの間は、Oリングを挟んで固定することにより、高度の気密性が保持されるようになっている。
通常、真空ポンプは、分子流領域(真空度が高く分子同士が衝突する頻度が少ない領域)にて気体を排気する。この分子流領域で排気能力を発揮するためには、ロータは毎分3万回転程度の高速回転が要求される。
このうち、ケーシング(外筒)2、吸気口フランジ200は、一体で1部品として形成されていた。また、両者を別部品として製造し、溶接で一体化したものを用いる真空ポンプも存在した。材料は、ステンレス鋼(以下、ステンレスとする)が用いられていた。
ところで、ケーシング(外筒)2と吸気口フランジ200をステンレスで1部品として形成された部品を用いると、材料費が高く、コスト高となっていた。また、削り出し等の加工にも手間が掛かっていた。
一方、両者を別部品として製造し、溶接で一体化した部品を用いる場合、溶接作業に手間が掛かり、削り出し等の加工が不要になるにもかかわらず、コストは下がらなかった。
また、ケーシング(外筒)2にステンレスを用いると、重量が増し、現場での設置作業に、負担が掛かっていた。
特許文献2には、真空ポンプにおいて、ロータが回転中に破損したことにより生じる破壊エネルギーを固定部品で吸収する技術が開示されている。すなわち、固定部品が、真空ポンプのケーシング内に収容された状態で、その外周面と内周面の間に、下記の条件を満たすことが記載されている。
2d/D≦εmax(D:固定部品の外径、d:隙間の幅、εmax:固定部品の破断伸び)
こうすることで、破壊エネルギーが発生した際、伸び変形した固定部品は、ケーシングの内周面に接触しないか、若しくは軽く接触する程度で済み、固定部品を介して破壊エネルギーがケーシングに伝わることを抑制することができる。
一方、真空ポンプ自体は、現場での設置作業などの負担を軽減するため、軽量化することが望まれている。
また、ロータが回転中に破損したことにより生じる破壊エネルギーを可能な限りケーシングで吸収し、真空ポンプの吸気口フランジに影響を及ぼさない技術が求められていた。
また、本発明の第2の目的は、吸気口フランジとケーシング(外筒)とを分割して2部品として構成することを前提に、破壊エネルギーを可能な限りケーシングで吸収し、真空ポンプの吸気口フランジに影響を及ぼさない真空ポンプを提供することである。
請求項2記載の発明では、前記ケーシングに、前記吸気口フランジと締結する際に位置決めを行うための突起部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプを提供する。
請求項3記載の発明では、前記突起部または前記吸気口フランジに破壊エネルギーを吸収するための逃げ部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の真空ポンプを提供する。
また、本発明によれば、ロータの破壊時に発生する破壊エネルギーを可能な限りケーシングで吸収し、吸気口フランジへの破壊エネルギーの影響を抑制できる。
本発明の実施形態に係る真空ポンプ1では、吸気口フランジ100と、ケーシング(外筒)2を分割して、別部材として構成する。
吸気口フランジ100はステンレス、ケーシング(外筒)2はアルミを材料とする。
両者は、真空ポンプ1を組み立てる際、ボルトで締結され、真空性を保つために、Oリングシールされる。
こうすることで、吸気口フランジ100の強度を保持しつつ(例えば、特許文献1記載の衝撃に対する緩衝構造を設けることもできる)、真空ポンプ1の重量を軽減することもできる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1及び図2を参照して詳細に説明する。
(真空ポンプ1の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る真空ポンプ1の概略構成例を示した図であり、真空ポンプ1の軸線方向の断面図を示している。
なお、本発明の実施形態では、便宜上、回転翼の直径方向を「径(直径・半径)方向」、回転翼の直径方向と垂直な方向を「軸線方向(または軸方向)」として説明する。
真空ポンプ1の外装体を形成するケーシング(外筒)2は、略円筒状の形状をしており、ケーシング2の下部(排気口6側)に設けられたベース3と共に真空ポンプ1の筐体を構成している。そして、この筐体の内部には、真空ポンプ1に排気機能を発揮させる構造物である気体移送機構が収納されている。
このケーシング(外筒)2は、図2に示すように、吸気口フランジ100とは、別部品として構成されている。材料は、アルミである。
本実施形態では、この気体移送機構は、回転自在に支持された回転体(回転翼9/ロータ円筒部10など)と、筐体に対して固定されたステータ部(固定翼30/ねじ溝排気要素20など)から構成されている。
また、図示しないが、真空ポンプ1の外装体の外部には、真空ポンプ1の動作を制御する制御装置が専用線を介して接続されている。
この吸気口フランジ100は、図2に示すように、ケーシング(外筒)2とは、別部品として構成されている。材料は、ステンレスである。
また、真空ポンプ1の下流側には、当該真空ポンプ1から気体を排気するための排気口6が形成されている。
各回転翼9は、シャフト7の軸線方向に対して垂直に放射状に伸びた部材により構成される。
また、ロータ円筒部10は、ロータ8の回転軸線と同心の円筒形状をした円筒部材により構成される。
なお、回転翼9と固定翼30は互い違いに配置され、軸線方向に複数段形成されるが、真空ポンプ1に要求される排出性能を満たすために、必要に応じて任意の数のロータ部品およびステータ部品を設けることができる。
ねじ溝排気要素20におけるロータ円筒部10との対向面側(すなわち、真空ポンプ1の軸線に平行な内周面)は、所定のクリアランスを隔ててロータ円筒部10の外周面と対面しており、ロータ円筒部10が高速回転すると、真空ポンプ1で圧縮されたガスがロータ円筒部10の回転に伴ってねじ溝にガイドされながら排気口6側へ送出されるようになっている。すなわち、ねじ溝は、ガスを輸送する流路となっている。
なお、ガスが吸気口4側へ逆流する力を低減させるために、このクリアランスは小さければ小さいほど好ましい。
また、ねじ溝排気要素20に形成されたらせん溝の方向は、らせん溝内をロータ8の回転方向にガスが輸送された場合、排気口6に向かう方向である。
そして、らせん溝の深さは、排気口6に近づくにつれて次第に浅くなるようになっており、らせん溝を輸送されるガスは排気口6に近づくにつれて徐々に圧縮されるようになっている。
上述した構成により、真空ポンプ1は、当該真空ポンプ1が固定(配設)される装置内の真空排気処理を行うことができる。
図2は、吸気口フランジ100とケーシング(外筒)2を分割して2部品として構成したことを説明するための図である。
吸気口フランジ100は、ステンレス製であり、内側にケーシング(外筒)2と締結する締結ボルト800(図1参照)を通すためのボルト孔600が複数個設けられている。一方、ボルト孔600の外側には、真空装置と締結するためのボルト孔500が複数個設けられている。このボルト孔500を介して、真空装置と真空ポンプ1とが、ボルトにより締結される。
このボルト孔500は、特殊な形状をしており、真空ポンプ1が衝撃を受けた際の応力集中を適切に抑制する緩衝構造として機能するようになっている。この緩衝構造は、より強固な材料にて形成されることが好ましいので、吸気口フランジ100は、ステンレスで形成されている。
また、ケーシング(外筒)2には、全周に渡って、吸気口フランジと締結する際の位置決めに用いる突起部900が設けられている。この突起部900については、後述する第2の実施形態の説明で詳述する。
また、腐食性ガスの環境下で使用される場合があるので、内部を無電解Nipメッキ処理を行うことが好ましい。
吸気口フランジ100とケーシング(外筒)2とは、各々のボルト孔600及び700を介して、締結ボルト800で締結される。両者間の真空性を保つため、Oリングシールにより気密性が保持されるようになっている。
また、ケーシング(外筒)2をアルミ製とすることで、真空ポンプ1の全体の重量も15%程度軽量化でき、現場における真空ポンプの設置(インストール)の作業が容易となる。
さらに、ケーシング(外筒)2をアルミ製とすることで、真空ポンプ1の製造コストも10%程度軽減できる。
加えて、ケーシング(外筒)2と吸気口フランジ100を別部品としたため、削り出しの作業が不要となり、この観点からもコストを削減することができる。
この第2の実施形態は、第1の実施形態のケーシング(外筒)2と吸気口フランジ100を別部品とすることを前提に、ケーシング(外筒)2に全周に渡って突起部900を設ける。そして、ケーシング(外筒)2と吸気口フランジ100とを締結する際に、この突起部900を吸気口フランジ100と係合させて半径方向の位置決めを行う。この両者の位置決めの関係は、図1(点線で囲った箇所)の部分拡大図である図3に示してある。
両者の半径方向の隙間は、可能な限り設けないようにすることが望ましい。
更に、このような構造にすることで、真空ポンプ1に破壊エネルギーが発生した場合でも、吸気口フランジ100および締結ボルト800に衝撃が作用し難い構造となっている。
具体的には、上記破壊エネルギーによって、ケーシング2に作用した衝撃が、突起部900を通じて吸気口フランジ100に作用する構造となっている為、吸気口フランジ100に衝撃が伝わる際に突起部900を変形させて、破壊エネルギーを消費する。
また、突起部900が無い場合に比べ、締結ボルト800に衝撃が直接伝わり難い構造となる為、締結ボルト800が破断することを防止できる。
また、上述のような突起部900がケーシング2から吸気口フランジ100側に突出する構造でなく、吸気口フランジ100より突出する構造にした場合は、破壊エネルギーが吸気口フランジ100と締結ボルト800に直接伝わってしまう虞があるが、この課題を解決している。
次に、図4及び図5を参照して、第2の実施形態の変形例を説明する。
図4は、突起部900の吸気口フランジ100と接する面に、複数個(18個)の弓形の逃げ部920を設けた例を示している(図3では、Δxで示してある。)。これらの逃げ部920は、突起部900の周方向に等間隔で配置されている。図5は、図4の部分拡大図である。
この逃げ部920により、突起部900が受けた破壊エネルギー(F、図3参照)を一定程度吸収するようになっている。すなわち、突起部900と吸気口フランジ100のクリアランスを部分的に大きくして、突起部900の変形量(ひずみ)を拡大し、突起部900での塑性変形及び弾性変形によるエネルギーの吸収効率を高めている。
このような周方向に部分的に隙間を設けた構造にすることで、半径方向の位置決めを可能にしつつ、前述の隙間が無い構造よりも、吸気口フランジ100への衝撃を低減し、かつ、締結ボルト800が破断することを防止できる。
なお、図4及び図5に示した逃げ部920は、弓形であるが、この形状でなくても突起部900での塑性変形及び弾性変形によるエネルギーの吸収ができる形状、例えばコの字形であってもよい。
この変形例では、逃げ部を吸気口フランジ100側に設けている(吸気口フランジ側逃げ部940)。
この変形例のように吸気口フランジ100側に吸気口フランジ側逃げ部940を設けても、図4及び図5に示した突起部900側の逃げ部920と同様の効果を得ることができる。
なお、突起部900側の逃げ部920と同様に、弓形に限ることなく、例えばコの字形であってもよい。
2 ケーシング(外筒)
3 ベース
4 吸気口
6 排気口
7 シャフト
8 ロータ
9 回転翼
10 ロータ円筒部
20 ねじ溝排気要素(ねじ溝ステータ)
30 固定翼
40 固定翼スペーサ
100 吸気口フランジ
200 吸気口フランジ
300 ステータコラム
500 ボルト孔
600 ボルト孔
700 ボルト孔
800 締結ボルト
900 突起部
920 逃げ部
940 吸気口フランジ側逃げ部
Claims (3)
- 装置と結合するための吸気口フランジと、
内部の部材を覆う外装体として機能するケーシングと、
排気口と、
ベース部と、
前記ケーシングおよび前記ベース部に内包され、回転自在に支持された回転部と、
を備える真空ポンプであって、
前記吸気口フランジと、前記ケーシングが別部品として形成され、前記ケーシングがアルミ製であり、前記吸気口フランジと、前記ケーシングが締結され、
前記吸気口フランジが、ステンレス製であることを特徴とする真空ポンプ。 - 前記ケーシングに、前記吸気口フランジと締結する際に位置決めを行うための突起部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
- 前記突起部または前記吸気口フランジに破壊エネルギーを吸収するための逃げ部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の真空ポンプ。
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