JP7374757B2 - 防振構造 - Google Patents
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Description
杭体を介して伝達される基礎部の振動は、下側地盤よりも上側地盤の方へ伝達しやすい。本発明では、杭体と上側地盤との間に摩擦低減材が設けられていることにより上側地盤を介して構造物の周囲に伝播する振動を効率的に低減させることができる。
摩擦低減材は、複数の杭体のうちの少なくとも一部の杭体に設けられている。このため、基礎部における少なくとも所定値以上の振動が想定される領域の直下の杭体に対して摩擦低減材を設けることにより、基礎部に生じた振動が杭体を介して上側地盤に伝達することを抑制できる。このため、すべての杭体に対して摩擦低減材を設ける場合と比べて、容易に施工することができる。
基礎部における所定値以上の振動が想定される領域と、その他の領域とを一体に構築することができるため、基礎部における所定値以上の振動が想定される領域と、その他の領域とを縁を切った状態に設ける場合と比べて、簡便な構造となり容易に施工することができる。
このような構成とすることにより、基礎部の振動部に生じた振動が杭体を介して上側地盤に伝達することを抑制できる。基礎部の振動部の直下の杭体に対して上側地盤との間に摩擦低減材を設ければよいため、すべての杭体に対して摩擦低減材を設ける場合と比べて、容易に施工することができる。
このような構成とすることにより、基礎部の振動部に生じた振動が杭体を介して上側地盤に伝達することを確実に抑制できる。振動部の直下の杭体に対して設ける第1摩擦低減材と、隣接部の直下の杭体に対して設ける第2摩擦低減材とを、異なる種類としたり、量を変えたりすることができる。このため、すべての杭体に対して同じように摩擦低減材を設ける場合と比べて、過剰に摩擦低減材を設けることがなく、容易に施工することができるとともに、コスト削減を図ることができる。
以下、本発明の第1実施形態による防振構造について、図1-図4に基づいて説明する。
図1に示す第1実施形態による防振構造1は、構造物2に生じた振動が周辺の建物への伝播することを抑制するための構造である。本実施形態では、構造物2は、競技やコンサートなどが行われるスタジアムなどの施設で、多人数客のジャンプなどによる振動(たてのり振動)が生じることを想定している。図2に示すように、本実施形態による構造物2は、1階部分23の平面視における中央部分21にアリーナおよびスタンドが設けられ、中央部分21の周囲の部分22(アリーナおよびスタンドの周囲の部分)にロッカー室や選手の控室が設けられている。
構造物2は、地盤3に埋設された杭体4と、杭体4に支持された基礎部5と、基礎部5の上に構築された基礎部上躯体6と、杭体4と上側地盤32との摩擦を低減させる摩擦低減材7と、を有している。以下の防振構造1の説明では、互いに直交する2つの水平方向の一方をX方向とし、他方をY方向とする。
基礎本体51は、杭体4の上端部42と接合されている。本実施形態では、1つの杭体4の上端部42に1つの基礎本体51が接合されている。本実施形態では、基礎本体51は、角柱状に形成されて、杭体4と上下方向に同軸に配置されている。
基礎本体51は、底面51aが地盤面33よりも上に位置し、地盤面33との間に隙間53(間隔)をあけた状態で杭体4の上端部42と接合されている。基礎本体51は、上側地盤32と接触しておらず、杭体4を介して下側地盤31に支持されている。
基礎部5と杭体4とは、基礎部5の底面51aと杭体4の上端面とが接合されていてもよいし、基礎部5が杭体4の上端部分と接合されていてもよい。
鉄骨梁54は、複数設けられている。本実施形態では、X方向に延びる鉄骨梁54と、Y方向に延びる鉄骨梁54とが床部52の全体にわたって枠体を形成するように接合されている。鉄骨梁54は、基礎本体51に架設されたり、隣り合う鉄骨梁54に架設されたりしている。鉄骨梁54の上端面には、上方に突出するようにスタッド56が設けられている。
RC床55は、床部52の全体にわたって設けられている。本実施形態では、RC床55にフラットデッキが設けられている。RC床55は、鉄骨梁54と接合されている。RC床55には、鉄骨梁54の上端面に設けられたスタッド56が埋設されている。スタッド56は、鉄骨梁54とRC床55との間でせん断力を伝達可能に構成されている。
床部52は、鉄骨梁54を有することにより、剛性を高めることができ、RC床55を有することにより、重量が大きくなり振動が生じにくい構造となる。
図1に示すように、本実施形態では、構造物2が設けられる領域の地盤面33が、その周囲の地盤面33よりも低くなっていて、周囲の地盤面33と床部52の上面とが略同じ高さとなるように設計されている。
なお、摩擦低減材7は、杭体4における上側地盤32に埋設されている部分全体に設けられていてもよいし、杭体4における上側地盤32に埋設されている部分の所定の高さ範囲に設けられていてもよい。例えば、杭体4における上側地盤32に埋設されている部分の高さ方向の中間部や、杭体4における上側地盤32に埋設されている部分の複数の高さ範囲に設けられていてもよい。
本実施形態では、摩擦低減材7は、複数の杭体4のうちの一部の杭体4に対して設けられている。
上記の第1実施形態による防振構造1では、杭体4に支持された基礎部5が地盤3の上方に隙間53をあけて配置されているとともに、杭体4と上側地盤32との間に摩擦低減材7が設けられている。これにより、基礎部5に生じた振動が杭体4を介して上側地盤32に伝達することを抑制でき、上側地盤32を介して構造物2の周囲に伝播する振動を低減させることができる。
杭体4を介して伝達される基礎部5の振動は、下側地盤31よりも上側地盤32の方へ伝達しやすい。本実施形態では、杭体4と上側地盤32との間に摩擦低減材7が設けられていることにより上側地盤32を介して構造物2の周囲に伝播する振動を効率的に低減させることができる。本実施形態では、上側地盤32が軟弱地盤であるため、軟弱地盤を介して構造物2の周囲に伝播する振動を低減させることができる。
このような構成とすることにより、振動部58に生じた振動が杭体43を介して上側地盤32に伝達することを抑制できる。振動部58の直下の杭体43に対して摩擦低減材7を設ければよいため、すべての杭体4に対して摩擦低減材7を設ける場合と比べて、容易に施工することができるとともに、コスト削減を図ることができる。
振動部58と隣接部59とは、一体に設けられていることにより、振動部58と隣接部59とを縁を切った状態に設ける場合と比べて、簡便な構造となり容易に施工することができる。
次に、第2実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
図5に示すように、第2実施形態による防振構造1Bでは、複数の杭体4のうちの床部52の振動部58の下側に位置する杭体43に対しては、上側地盤32に埋設されている部分全体に摩擦低減材7B(第1摩擦低減材71とする)を設けている。床部52の隣接部59の下側に位置する杭体44に対しては、上側地盤32に埋設されている部分の上部側のみに摩擦低減材7B(第2摩擦低減材72とする)を設けている。
なお、第1摩擦低減材71が第2摩擦低減材72よりも広い範囲に設けられていれば、第1摩擦低減材71は、振動部58の下側に位置する杭体43における上側地盤32に埋設されている部分全体に設けられていなくてもよく、上部側のみに設けられていてもよい。
数値解析では、基礎部が地盤の上方に隙間をあけて設けられるとともに摩擦低減材が設けられた構造物(Case1)と、基礎部が地盤と接触して設けられるとともに摩擦低減材が設けられていない構造物(Case2)とを比較している。
Case1およびCase2いずれの構造物も、下側地盤に支持された杭体と、杭体に支持された基礎部と、を有している。Case1では、すべての杭体に対して、上側地盤との間に摩擦低減材が設けられている。
図6に示す、構造物と構造物の周辺の「あ」から「お」、「き」から「し」のポイントにおいて構造物に振動が生じた際に伝播する振動を算出した。
ポイントの「あ」は、構造物の中央部、「い」、「き」は構造物の内部、「う」、「け」は構造物の外周部、「え」、「お」、「け」から「し」は、構造物の周辺に位置している。本解析は、構造物の中央部から200m離れたポイントの「し」における振動を低減させ、振動レベルを60dB以下とすることを目的としている。
図7に示すように、いずれの周波数の振動の場合においても、各ポイントにおけるCase1の鉛直方向の振動レベルが、Case2の鉛直方向の振動レベル以下となることがわかる。構造物に3Hzの振動が生じた際のポイント「し」におけるCase1の鉛直方向の振動レベルは60dBで、Case0の鉛直方向の振動レベルは67dBである。6dBの差は、略2倍の加速度である。以上より、Case1では、構造物の中央部から200m離れたポイントの「し」における振動を低減できることがわかる。
図8および図9に示すように、いずれの周波数の振動の場合においても、各ポイントにおけるCase1のX方向およびY方向の振動レベル、X方向およびY方向の最大加速度が、Case2のX方向およびY方向の振動レベル、X方向およびY方向の最大加速度以下となることがわかる。
例えば、上記の実施形態では、下側地盤31が高い剛性を有する支持地盤で、上側地盤32が比較的剛性の低い軟弱地盤となっているが、下側地盤31および上側地盤32は、支持地盤および軟弱地盤でなくてもよく、上側地盤32よりも下側地盤31の剛性が高くなくてもよい。
上記の実施形態では、構造物2は、競技やコンサートなどが行われるスタジアムやアリーナなどの施設であるが、このような施設以外であってもよい。
上記の実施形態では、基礎部5の基礎本体51は、複数設けられ、それぞれ杭体4の上端部42と接合されているが、1つの基礎本体51が複数の杭体4の上端部42それぞれと接合されていてもよい。
上記の実施形態では、摩擦低減材7は、杭体4の周囲に塗布されたアスファルトであるが、上側地盤32に杭体4を囲繞するように鋼管を設け、鋼管と杭体4とは相対移動可能とし、鋼管と杭体4との間で摩擦が生じないようにして杭体4と上側地盤32との摩擦を低減させるようにしてもよい。
摩擦低減材7が設けられない杭体4と、摩擦低減材7が設けられ摩擦低減量を大きく設定する杭体4と、摩擦低減材7が設けられ摩擦低減量を小さく設定する杭体4と、が混在して設けられていてもよい。
2 構造物
3 地盤
4,43,44 杭体
5 基礎部
7,7B 摩擦低減材
31 下側地盤
32 上側地盤
53 隙間(間隔)
58 振動部
59 隣接部
71 第1摩擦低減材
72 第2摩擦低減材
Claims (4)
- 地盤面から下側に続く上側地盤の下方に下側地盤がある地盤に埋設され、前記下側地盤に支持されて前記地盤の上方へ延びる複数の杭体と、
前記地盤の上方に間隔をあけて配置され、前記複数の杭体それぞれに支持された基礎部と、
前記杭体と前記上側地盤との摩擦を低減させる摩擦低減材と、を有し、
前記摩擦低減材は、前記複数の杭体のうちの少なくとも一部の杭体の周囲に設置されていることを特徴とする防振構造。 - 前記基礎部は、
所定値以上の振動が生じると想定される振動部と、
前記振動部と隣接する隣接部と、を有し、
前記振動部と前記隣接部とは一体に設けられ、
前記摩擦低減材は、前記複数の杭体のうちの前記振動部の直下の杭体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防振構造。 - 前記基礎部は、
所定値以上の振動が生じると想定される振動部と、
前記振動部と隣接する隣接部と、を有し、
前記振動部と前記隣接部とは一体に設けられ、
前記摩擦低減材は、前記複数の杭体のうちの前記振動部の直下の杭体に設けられた第1摩擦低減材と、
前記複数の杭体のうちの前記隣接部の直下の杭体に設けられた第2摩擦低減材と、を有し、
前記第1摩擦低減材は、前記第2摩擦低減材よりも前記杭体と前記上側地盤との摩擦低減量が大きいことを特徴とする請求項1に記載の防振構造。 - 前記摩擦低減材は、前記杭体の周囲に塗布されたアスファルトである請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の防振構造。
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