JP7374010B2 - 風速分布推定装置及び風速分布推定方法 - Google Patents
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Description
風洞実験においては、評価の対象となる建物を再現した模型に風を当て、模型の周りの風速等を模型に設けられたセンサで測定することにより、建物周辺の風環境、風速分布が評価される。特許文献1には、風洞実験時に使用される風速測定装置が開示されている。
数値流体解析においては、コンピュータ上に評価の対象となる建物をモデリングし、これに対して、離散化・モデル化された流体運動に関する方程式を適用することによって、風速の近似解が計算される。特許文献2には、流体解析の結果を基にした風環境予測方法が開示されている。
しかし、風洞実験においては、評価対象領域が広大になると、相応の大きさの風洞装置や、多くの建物の模型が必要となる。
また、数値流体解析においては、一般に市街地を対象とした解析では大規模な3次元計算となるため、計算時間が相応にかかる。したがって、評価対象領域が広大になると、非常に多くの計算時間を要する。
このように、風洞実験や数値流体解析においては、広い領域の風速分布を、コストや計算時間等の観点で容易に、かつ正確に、評価することが難しい。
例えば特許文献3には、ニューラルネットワークによる風速分布の評価に関する、建物周辺の風速分布推定装置が開示されている。
特許文献3の風速分布推定装置は、推定する高さ情報を表わす高さ画像と、建物の断面形状情報を表わす形状画像と、風向き情報を表わす風向き画像とを入力する入力手段と、建物周辺の風速分布を表す画像である風速分布画像を作成する風速分布画像作成手段とを備えている。風速分布画像作成手段は、高さ画像と形状画像と風向き画像とを入力画像とし、風速分布画像を出力画像とする畳み込みニューラルネットワークから構成されている。
ニューラルネットワークを用いた場合には、汎用的なコンピュータで評価装置を実現可能であり、風洞実験のような大掛かりな装置は不要である。また、一般に数値流体解析より計算時間が高速である。このため、風洞実験や数値流体解析と比べると、コストや計算時間の観点においては、広い領域の風速分布を、より容易に評価することができる可能性がある。
したがって、ニューラルネットワークを用いた場合には、広い領域の風速分布を評価するに際し、学習データを十分に用意できないために機械学習器を十分に学習させることができず、評価精度が低減する可能性がある。
この場合においては、各個別領域における風速分布は、それぞれ独立して評価される。単純に境界線によって評価対象領域を分割すると、境界線を挟んだ2つの地点の各々は異なる評価対象領域に属するため、境界線を挟んだ地点間で風速分布の評価値の差が大きくなる可能性がある。したがって、評価結果を結合する際に、境界線において個別領域間で風速分布が連続しない。
特に、各個別領域の風速分布を評価するに際し、境界線すなわち個別領域の外縁よりも外側の建物に関する情報は、評価時には与えられないために、考慮されない。したがってこれらの建物の影響は、評価に反映されない。このため、個別領域の外縁近傍においては、風速分布の推定精度が低減しがちである。
このような理由に因り、単純に境界線によって評価対象領域を分割した場合には、境界線近傍における評価精度が低減する。
また、本発明は、建物周辺の風速分布を推定する、風速分布推定方法であって、前記風速分布の推定対象となる全体領域を、互いに重複する重複部を有するように、複数の個別領域へと分割し、複数の前記個別領域内の前記風速分布を推定し、前記個別領域の各々に対し、前記重複部に含まれる地点である重複地点ごとに、個別に設定された重みと、前記風速分布の推定結果を基に、当該重複地点の風速が調整された推定結果を算出し、前記調整された推定結果を基に、複数の前記個別領域内の前記風速分布の前記推定結果を結合して、前記全体領域の前記風速分布の推定結果を生成する、風速分布推定方法を提供する。
上記のような構成によれば、風速分布の推定対象となる全体領域が複数の個別領域へと分割され、これら複数の個別領域の各々に対して風速分布が推定され、複数の推定結果が結合されて、全体領域の風速分布の推定結果が生成される。
すなわち、広い領域を小さい個別領域へと分割し、この各々に対して風速分布を推定するため、比較的容易に、広い領域の風速分布を推定可能である。
ここで、全体領域は、互いに重複する重複部を有するように、複数の個別領域へと分割される。すなわち、全体領域を個別領域へと分割するに際し、単純に一つの境界線で区画せず、隣接する個別領域が互いに共通の重複部を有するように分割する。この状態において、個別領域の推定結果を全体領域の推定結果として結合する際に、個別領域の各々に対して重複地点ごとに適切に設定された重みを基に、各個別領域の推定結果が調整される。このため、個別領域間の不連続性が緩和される。
更に、重複部は、互いに隣接する複数の個別領域に、異なる方向から含まれている。このため、各個別領域において外縁近傍に位置する重複部の推定精度が、外縁より外側に位置する建物の情報の欠落により低減しているとしても、これらの建物は、当該重複部を挟んで隣接する他の個別領域内に位置しているため、上記の欠落した情報は、この隣接する個別領域における、風速分布の推定に反映されている。したがって、個別領域の推定結果を全体領域の推定結果として結合する際に、重複部の周囲に位置する全ての建物に関する情報が、重複部の推定結果に反映されて調整される。これにより、単純に評価対象領域を、重複部を設けずに境界線で分割した場合に比べると、個別領域の外縁近傍の推定精度の低下を抑制可能である。
上記のような理由に因り、広い領域のほぼ全域において、風速分布の推定精度を高めることができる。
上記のような構成によれば、上記のような風速分布推定装置を適切に実現可能である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態における風速分布推定装置のブロック図である。
本実施形態における風速分布推定装置1は、上記のように、任意の建物において、建物周辺の風速分布を推定する装置である。風速分布推定装置1は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。風速分布推定装置1は、学習部20、風速分布推定部21、及び学習モデルパラメータ記憶部22を備えている。風速分布推定装置1は、更に、全体領域分割部50、重み設定部51、推定結果調整部52、及び推定結果結合部53を備えている。
これら風速分布推定装置1の構成要素のうち、学習部20、風速分布推定部21、全体領域分割部50、推定結果調整部52、及び推定結果結合部53は、例えば上記情報処理装置内のCPUにより実行されるソフトウェア、プログラムであってよい。また、学習モデルパラメータ記憶部22と重み設定部51は、上記情報処理装置内外に設けられた半導体メモリや磁気ディスクなどの記憶装置により実現されていてよい。学習部20は、例えばGPU(Graphics Processing Unit)によって処理される。
すなわち、風速分布推定装置1は大別して、風速分布の学習と、風速分布の推定の、2通りの動作を行う。説明を簡単にするために、以下ではまず、風速分布の学習時における、風速分布推定装置1の各構成要素の説明をした後に、風速分布の推定時での各構成要素の挙動について説明する。
なお、風速分布推定装置1は、後に説明するように、例えば一辺が250m以上の、広い領域の風速分布を推定する。このような広い領域の風速分布を精度よく推定するために、風速分布推定装置1は、風速分布の推定時には、広い領域(全体領域)を複数のより小さい個別領域に分割し、各個別領域において風速分布を推定して、これらの推定結果を結合する。すなわち、風速分布の推定時には、風速分布推定装置1には広い全体領域が入力されるが、実際に風速分布を推定する学習モデル25には、分割された個別領域が入力される。したがって、機械学習器24には、後に個別領域として説明される、例えば一辺が250mより小さい領域に相当する情報が、学習データ2として入力される。
建物情報データ3は、建物の外形に関する情報を有するデータであり、建物形状画像6と建物高さ画像7を備えている。図3(a)と図3(b)は、それぞれ、建物形状画像6と建物高さ画像7の説明図である。
建物形状画像6は、任意の地域を俯瞰した状態における、建物の形状を表現する画像である。より詳細には、建物形状画像6においては、建物に相当する部分である建物部分6a内の画素と、建物に相当しない部分である非建物部分6b内の画素とが、異なる画素値を有するように設定されている。本実施形態においては、建物形状画像6は1チャンネルの画像であり、建物部分6aと非建物部分6bは、それぞれ黒と例えば白等の画素値の最大値に相当する色、例えば画素値(輝度値)が8ビットで表現される場合においては0と255で表現されている。
以降、この建物形状画像6をはじめとした本実施形態における各画像において、横に延在する軸線方向をX方向、水平面内でX方向に直交して縦に延在する軸線方向をY方向、及び水平面に直交する軸線方向をZ方向と呼称する。
建物高さ画像7は、上記のように建物形状画像6内に表現されたものと同一の地域を表現する画像であるため、建物形状画像6と同じ解像度を備えている。
風速分布推定装置1において風速分布を推定する対象として、例えば画素値が8ビットで表現される場合において、255mを超える高層建築物が多いことが想定される場合には、例えば0から最も高い建物の高さの値の範囲を、画素値の範囲すなわち0から255の範囲へと変換し、これを建物高さ画像7の画素値として用いてもよい。
風向データ4は、上記のように風向を表現するものであり、なおかつ全ての地点において値が一意であるため、1つのベクトルと見做すことができる。風向データ4は、このベクトルを建物情報データ3におけるX方向及びY方向の各々に成分分解した際の、X方向における成分値を1チャンネルの画像として表現した風向X成分画像8と、Y方向における成分値を1チャンネルの画像として表現した風向Y成分画像9を備えている。例えば、風向X成分画像8は、ベクトルが成分分解されたX方向上での成分値に対応する画素値に、全画素の画素値が設定された画像とすることができる。また、風向Y成分画像9は、ベクトルが成分分解されたY方向上での成分値に対応する画素値に、全画素の画素値が設定された画像とすることができる。
例えば、建物情報データ3におけるX方向及びY方向により形成される座標系において、西からの風の場合には、原点を上流とするとX軸上の正の方向への風向となるため、X方向上での成分値が正の値となりY方向上での成分値が0となる。したがって、風向X成分画像8は、全ての画素の画素値が画素値の最大値、例えば255に設定された、例えば白一色の画像となり得る。また、風向Y成分画像9は、全ての画素の画素値が画素値の取り得る値の範囲の中心値、例えば128に設定された、特定の中間色一色の画像となり得る。逆に、東からの風の場合には、原点を上流とするとX軸上の負の方向への風向となるため、X方向上での成分値が負の値となりY方向上での成分値が0となる。したがって、風向X成分画像8は全ての画素の画素値が画素値の最小値、例えば0に設定された、黒一色の画像となり、風向Y成分画像9は全ての画素の画素値が例えば128に設定された、特定の中間色一色の画像となり得る。
特に本実施形態においては、風速分布データ5は各地点における風向に関する情報をも含む。このために、風速分布データ5が風向に関する情報を保持し得るように、風速分布データ5は、それぞれが1チャンネルの画像である、風速分布X成分画像10、風速分布Y成分画像11、及び風速分布Z成分画像12を備えている。風速分布X成分画像10は、各画素の画素値が、建物情報データ3内に表現された地域内の当該画素に対応する地点における風向及び風速を表現するベクトルを、建物情報データ3におけるX方向とY方向、及びZ方向の各々に成分分解した際の、X方向における成分値に相当する値に設定された画像である。風速分布Y成分画像11及び風速分布Z成分画像12は、同様に、各画素の画素値が、Y方向及びZ方向の各々における成分値に相当する値に設定された画像である。各画素に対応する地点が建物の場合には、当該画素の画素値は無風に相当する値に設定されている。
学習データ2の各画像は、本実施形態においては実際には、学習部20に入力される際に、各画素の値を画素値の最大値、例えば255により除算して、0から1までの値の範囲へと基準化されて用いられる。
既に説明したように、建物情報データ3、風向データ4、及び教師データとしての風速分布データ5の各々は、画像である。したがって、風速分布データ5と比較される学習時推定結果15も当然画像である。このため、本実施形態においては、機械学習器24は、画像を入出力とした場合の処理と相性の良い全層畳み込みネットワーク(Fully Convolutional Network、以下FCNと記載する)により実現されている。FCNは、以下に説明するように、全結合層を備えず、畳み込み層において処理、生成された特徴マップを直接、転置畳み込み層への入力とするものである。
学習部20は、建物情報データ3と風向データ4を初段の畳み込み層27aへ入力する。既に説明したように、本実施形態においては、建物情報データ3の建物形状画像6と建物高さ画像7、及び風向データ4の風向X成分画像8と風向Y成分画像9の各々は、1チャンネルの画像として実現されている。したがって、建物形状画像6、建物高さ画像7、風向X成分画像8、及び風向Y成分画像9は、これら4枚の1チャンネルの画像が1枚の4チャンネルの画像として結合された学習時入力データ14として、機械学習器24へ入力される。
機械学習器24は、この処理を、全てのフィルタに対して実行し、フィルタの数に応じた特徴マップを生成する。
特徴マップに対しては、必要に応じて、バッチ正規化処理やプーリング処理、活性化関数が実行される。
畳み込み層27aにおいて生成された特徴マップは、次段の畳み込み層27bの入力画像となる。
畳み込み層27cにおいては、畳み込み層27bにおいて生成された特徴マップに対して、畳み込みフィルタ処理が実行される。畳み込み層27cは、所定の数のフィルタを備えており、これらを用いて畳み込みフィルタ処理を実行し、更に必要に応じてバッチ正規化処理やプーリング処理を実行することで、フィルタの数に応じた所定の数の特徴マップを生成する。
各畳み込み層27a、27b、27cにおけるフィルタの重みは、機械学習により調整される。
畳み込み層27cにおいて生成された特徴マップは、転置畳み込み処理部28の転置畳み込み層28cへの入力となる。
転置畳み込み処理部28すなわち機械学習器24の出力データは、本実施形態においては、入力された学習時入力データ14内の建物情報データ3と風向データ4に対応する、建物情報データ3内に表現された地域における風速、風向の学習時推定結果15である。学習時推定結果15は、風速分布データ5と同様に、建物情報データ3内に表現された地域内の各地点における、X方向、Y方向、及びZ方向の各々に対応して成分分解された風速、風向情報が格納された、3枚の1チャンネルの画像であり、これが1枚の3チャンネルの画像として出力される。
その上で、このコスト関数を小さくするように、誤差逆伝搬法等により、各フィルタの重みの値等を調整することで、機械学習器24が機械学習される。
結果として、機械学習器24は、学習時入力データ14が入力されたときに、これに含まれる建物情報データ3と風向データ4に対応する風速分布データ5に近い学習時推定結果15を出力するように学習される。
すなわち、学習部20は、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとして利用される、適切な学習パラメータが学習された学習済みの学習モデル25を生成するものである。
既に説明したように、風速分布推定装置1は、風速分布の推定時には、広い領域(全体領域)を複数の個別領域に分割し、各個別領域において風速分布を推定して、これらの推定結果を結合する。したがって、風速分布の推定時における風速分布推定装置1への入力データである推定時入力データ30は、例えば一辺が250m以上の、広い全体領域に相当する情報である。推定時入力データ30は、実際に風速分布の推定対象となる地域及び風向が情報として格納された、建物情報データ31と風向データ32である。建物情報データ31は、建物形状画像33と建物高さ画像34を備えており、これらの各々は、全体領域に対応するため画像がより大きい点を除けば、学習時に学習データ2として使用された建物形状画像6及び建物高さ画像7と同様に構成されている。風向データ32は、風向X成分画像35と風向Y成分画像36を備えており、これらの各々は、全体領域に対応するため画像がより大きい点を除けば、学習時に学習データ2として使用された風向X成分画像8及び風向Y成分画像9と同様に構成されている。建物形状画像33、建物高さ画像34、風向X成分画像35、及び風向Y成分画像36は、それぞれが1チャンネルの画像であり、推定時入力データ30は、これら4枚の1チャンネルの画像が1枚の4チャンネルの画像として結合された画像データである。
推定時入力データ30の各画像は、本実施形態においては実際には、学習時と同様に、風速分布推定部21に入力される際に、各画素の値を画素値の最大値、例えば255により除算して、0から1までの値の範囲へと基準化されて用いられる。
図4は、全体領域分割部50の説明図である。説明を簡単にするために、全体領域GRに相当する推定時入力データ30は、解像度が横方向Xと縦方向Yの双方において20画素であり、これから、解像度が横方向Xと縦方向Yの双方において8画素の、個別領域LRに相当する個別入力データを切り出して分割する場合を説明する。実際には、推定時入力データ30と個別入力データの双方は、上記よりも大きな解像度を備えている。
以下の説明においては、全体領域GRと記載したときにはこれに対応する推定時入力データ30をともに示し、個別領域LRと記載したときにはこれに対応する個別入力データをともに示すものとする。また、全体領域GRまたは個別領域LRを画像としてみたときの、これら画像内の画素の位置を、当該画像の左上の画素を原点(0、0)としたときの座標値、すなわち(横方向Xにおける画素の座標値、縦方向Yにおける画素の座標値)として示す。
次に、全体領域分割部50は、図4(b)に示されるように、個別領域LR1から一定の、横方向Xのストライド(移動量、本実施形態においては4画素)だけ、個別領域LRを横方向Xに移動させる。これにより、個別領域LRの原点を、全体領域GRの(4、0)に位置せしめて、この状態における個別領域LR2を、全体領域GRから切り出して分割する。
横方向Xのストライドの大きさは、個別領域LRの横方向Xの解像度よりも小さく設定されている。より詳細には、横方向Xのストライドの大きさは、個別領域LRの横方向Xの解像度の半分以下とするのが望ましい。これにより、個別領域LR1と個別領域LR2は、互いに重複する重複部OR(OR1)を有するように、全体領域GRから分割されている。
全体領域分割部50は更に、図4(c)に示されるように、個別領域LR2から横方向Xのストライドだけ、個別領域LRを横方向Xに移動させ、この状態における個別領域LR3を、全体領域GRから切り出して分割する。個別領域LR2と個別領域LR3は、互いに重複する重複部OR2を有するように、全体領域GRから分割されている。
同様に、全体領域分割部50は、図4(d)に示されるように、個別領域LR3から横方向Xのストライドだけ、個別領域LRを横方向Xに移動させ、この状態における個別領域LR4を、全体領域GRから切り出して分割する。
縦方向Yのストライドの大きさは、個別領域LRの縦方向Yの解像度よりも小さく設定されている。より詳細には、縦方向Yのストライドの大きさは、個別領域LRの縦方向Yの解像度の半分以下とするのが望ましい。これにより、個別領域LR1と個別領域LR5は、互いに重複する重複部OR3を有するように、全体領域GRから分割されている。
次に、全体領域分割部50は、図4(f)に示されるように、個別領域LR5から横方向Xのストライドだけ、個別領域LRを横方向Xに移動させる。これにより、個別領域LRの原点を、全体領域GRの(4、4)に位置せしめて、この状態における個別領域LR6を、全体領域GRから切り出して分割する。
個別領域LR5と個別領域LR6は、互いに重複する重複部OR4を有するように、全体領域GRから分割されている。また、上下に隣り合う個別領域LR2と個別領域LR6は、互いに重複する重複部OR5を有するように、全体領域GRから分割されている。
同様に、全体領域分割部50は、図4(g)に示されるように、個別領域LR6から横方向Xのストライドだけ、個別領域LRを横方向Xに移動させ、この状態における個別領域LR7を、全体領域GRから切り出して分割する。
風速分布推定部21は、学習モデル25に、上記のように生成した個別領域LR1~LR16の各々に対応する個別入力データを順次入力し、各個別領域LRに相当する風速分布を推定する。
個別画像は、学習時推定結果15と同様に、建物情報データ31内に表現された地域内の各地点における、X方向、Y方向、及びZ方向の各々に対応して成分分解された風速、風向情報が格納された、3枚の1チャンネルの画像であり、これが1枚の3チャンネルの画像として出力される。
風速分布推定部21は、各個別入力データに対応する個別画像の各々に対し、個別画像からX方向、Y方向、及びZ方向の各々に対応する1チャンネルの画像、すなわち各方向に対応して成分分解された風速、風向情報であるX成分個別画像、Y成分個別画像、及びZ成分個別画像を抽出する。
このようにして、風速分布推定部21は、個別領域LRすなわち個別入力データの各々に対し、当該個別領域LRに含まれる複数の地点(例えば図4各図における一つの画素)の各々における風速を推定して、個別領域LR内の風速分布を個別推定結果画像として推定する。
図4を用いた例においては、16個の個別領域LR1~LR16の各々に対応する、16個の個別推定結果画像が出力される。
図6は、個別領域LRに対して設けられる重みを、3次元曲面を有する重み関数Wで表示した一例である。重み関数Wは、横方向Xまたは縦方向Yから視たときに、正規分布の確率密度関数の形状となるように設定されている。確率密度関数は、その中央値が、個別領域LRの横方向X及び縦方向Yの各々における中心に位置するように設定されている。また、確率密度関数の定義域は、標準偏差の-2倍から2倍までの間として設けられており、この定義域が、個別領域LRの横方向X及び縦方向Yの領域と一致するように、確率密度関数は設けられている。これにより、正規分布として実現される確率密度関数の95%程度が、個別領域LRに対応付けて設けられる。
例えば、図4に示される地点P1は、個別領域LR1のみに属する。したがって、地点P1は重複地点ではない。また、地点P1は、個別領域LR1の、横方向X及び縦方向Yの双方において外縁に位置しているため、個別領域LR1における地点P1の重みは、例えば0.1と、小さい値となる。
この地点P2は、個別領域LR1において、縦方向Yにおいては外縁に位置しているものの、横方向Xにおいては中心に位置しているため、0.1よりは大きいが1よりは小さい、例えば0.3等の重みの値を取り得る。
また、地点P2は、横方向X及び縦方向Yの双方において個別領域LR2の外縁に位置しているため、個別領域LR2における地点P2の重みは、例えば0.1と、小さい値となる。
この地点P3は、個別領域LR1の横方向X及び縦方向Yの双方において外縁に位置しているため、個別領域LR1における地点P3の重みは、例えば0.1と、小さい値となる。
また、地点P3は、個別領域LR2において、縦方向Yにおいては外縁に位置しているものの、横方向Xにおいては中心に位置しているため、0.1よりは大きいが1よりは小さい、例えば0.3等の重みの値を取り得る。個別領域LR5においても、同様な理由で、地点P3の重みは、例えば0.3等の値となる。
更に、地点P3は、個別領域LR6においては横方向X及び縦方向Yの双方においてその中心に位置しているため、個別領域LR6における地点P3の重みは、例えば1と、大きな値となる。
このように、各重複地点においては、これが属する個別領域LRによって、それぞれ異なる値が重みとして設定されている。
また、重み設定部51においては、複数の個別領域LRの各々において、正規分布の確率密度関数の中央値を当該個別領域LRの中心に位置付けたときに、当該個別領域LR内の地点に対応する位置における確率密度関数の値が、当該地点における重みとして設定されている。
より詳細には、推定結果調整部52は、重複地点を含む各地点の各々に対し、まず、個別領域LRの各々において当該地点に設定された重みの総和SLを計算する。次に、推定結果調整部52は、個別領域LRの各々において、当該地点に設定された重みを重みの総和SLで除算した除算値と、当該地点における風速の推定結果、すなわち個別推定結果画像における対応する画素の画素値とを乗算した乗算値である、個別領域調整値LVを計算する。最後に、推定結果調整部52は、個別領域LRの各々における個別領域調整値LVの総和を計算し、これを当該地点の、風速が調整された推定結果として算出する。
すなわち、重複地点ではない地点Pにおいては、当該地点Pを含む個別領域LRに対応する個別推定結果画像において、当該地点Pに対して算出された風速が、そのまま、風速が調整された推定結果として算出される。
また、地点Pごとに重複回数、すなわち地点Pが属する個別領域LRの数が異なっている。このため、平均化する際に用いる重みを、重みの総和SLにより各個別領域LRの重みを除算することにより基準化された値としている。
このようにして、推定結果調整部52は、重複地点P2、P3を含む地点P1、P2、P3の各々に対し、個別領域LRの各々における当該地点P1、P2、P3の重みと風速の推定結果LV1、LV21、LV22、LV31、LV32、LV35、LV36を基に、当該地点P1、P2、P3の風速の調整された推定結果V1、V2、V3を算出する。
より詳細には、推定結果結合部53は、全体領域GRに対応する、推定時入力データ30と同一の解像度(例えば図4の例示によると横方向Xと縦方向Yにともに20画素)の、推定結果結合画像(全体領域GRの風速分布の推定結果)54を生成する。推定結果結合画像54においては、各画素に、当該画素に対応する地点Pに関して推定結果調整部52によって計算された、風速の調整された推定結果V1、V2、V3が格納されている。
推定結果結合部53は、推定結果結合画像54を外部へ出力する。
まず、風速分布の学習時における、風速分布推定装置1の各構成要素の動作を説明する。
学習部20は、建物情報データ3と風向データ4を学習時入力データ14として機械学習器24の畳み込み処理部27へ入力して、学習時推定結果15を出力する。
学習部20は、入力された学習時入力データ14に対応する風速分布データ5を取得し、風速分布データ5すなわち教師データと学習時推定結果15を画素単位で比較して、例えば各画素間の画素値の差分の2乗誤差をコスト関数として計算する。
その上で、このコスト関数を小さくするように、誤差逆伝搬法等により、各フィルタの重みの値等を調整することで、機械学習器24が機械学習される(ステップS1)。
学習部20は、学習が終了すると、調整が終了した各フィルタの重みの値等のパラメータを、学習モデルパラメータとして、学習モデルパラメータ記憶部22に記憶する(ステップS3)。
前提として、風速分布推定装置1では、推定対象とする全体領域GRが風速分布推定部21で推定可能な領域より大きい場合は、複数の個別領域LRに分割し、各個別領域において風速分布を推定する。よって、推定したい領域(全体領域GR)が個別領域LRと同等または個別領域より小さい場合は、複数に分割する必要はない。
全体領域分割部50は、風速分布の推定対象となる全体領域を、互いに重複する重複部を有するように、複数の個別領域LRへと分割し、個別入力データを生成する(ステップS11)。
風速分布推定部21は、学習モデルパラメータ記憶部22から学習モデルパラメータを取得し、学習モデル25を構築する(ステップS13)。
風速分布推定部21は、学習モデル25に、個別領域LRの各々に対応する個別入力データを順次入力し、各個別領域LRに相当する風速分布を推定して、個別推定結果画像を生成する(ステップS15)。
推定結果調整部52は、重複地点を含む各地点の各々に対し、まず、個別領域LRの各々において当該地点に設定された重みの総和SLを計算する。次に、推定結果調整部52は、個別領域LRの各々において、当該地点に設定された重みを重みの総和SLで除算した除算値と、当該地点における風速の推定結果、すなわち個別推定結果画像における対応する画素の画素値とを乗算した乗算値である、個別領域調整値LVを計算する。最後に、推定結果調整部52は、個別領域LRの各々における個別領域調整値LVの総和を計算し、これを当該地点の、風速が調整された推定結果として算出する。
推定結果結合部53は、推定結果調整部52において調整された推定結果を基に、複数の個別領域LR内の風速分布の推定結果を結合して、全体領域GRの風速分布の推定結果である、推定結果結合画像54を生成する(ステップS17)。
また、本実施形態の風速分布推定方法は、建物周辺の風速分布を推定する、風速分布推定方法であって、風速分布の推定対象となる全体領域GRを、互いに重複する重複部ORを有するように、複数の個別領域LRへと分割し、複数の個別領域LR内の風速分布を推定し、個別領域LRの各々に対し、重複部ORに含まれる地点Pである重複地点ごとに、個別に設定された重みと、風速分布の推定結果を基に、当該重複地点の風速が調整された推定結果を算出し、調整された推定結果を基に、複数の個別領域LR内の風速分布の推定結果を結合して、全体領域GRの風速分布の推定結果54を生成する。
上記のような構成によれば、風速分布の推定対象となる全体領域GRが複数の個別領域LRへと分割され、これら複数の個別領域LRの各々に対して風速分布が推定され、複数の推定結果が結合されて、全体領域GRの風速分布の推定結果54が生成される。
すなわち、広い領域GRを小さい個別領域LRへと分割し、この各々に対して風速分布を推定するため、比較的容易に、広い領域の風速分布を推定可能である。
ここで、全体領域GRは、互いに重複する重複部ORを有するように、複数の個別領域LRへと分割される。すなわち、全体領域GRを個別領域LRへと分割するに際し、単純に一つの境界線で区画せず、隣接する個別領域LRが互いに共通の重複部ORを有するように分割する。この状態において、個別領域LRの推定結果を全体領域GRの推定結果として結合する際に、個別領域LRの各々に対して重複地点ごとに適切に設定された重みを基に、各個別領域LRの推定結果が調整される。このため、個別領域LR間の不連続性が緩和される。
更に、重複部ORは、互いに隣接する複数の個別領域LRに、異なる方向から含まれている。このため、各個別領域LRにおいて外縁近傍に位置する重複部ORの推定精度が、外縁より外側に位置する建物の情報の欠落により低減しているとしても、これらの建物は、当該重複部ORを挟んで隣接する他の個別領域LR内に位置しているため、上記の欠落した情報は、この隣接する個別領域LRにおける、風速分布の推定に反映されている。したがって、個別領域LRの推定結果を全体領域GRの推定結果として結合する際に、重複部ORの周囲に位置する全ての建物に関する情報が、重複部ORの推定結果に反映されて調整される。これにより、単純に評価対象領域を、重複部ORを設けずに境界線で分割した場合に比べると、個別領域LRの外縁近傍の推定精度の低下を抑制可能である。
上記のような理由に因り、広い領域のほぼ全域において、風速分布の推定精度を高めることができる。
上記のような構成によれば、上記のような風速分布推定装置1を適切に実現可能である。
既に説明したように、複数の個別領域LRに含まれる重複地点については、各個別領域LRに対応する個別推定結果画像における当該地点Pの風速の推定結果が、重みを付けられて平均化される。この際に用いられる重みは、各個別領域LRの中央付近が大きく、外縁付近が小さくなるような関数により実装されると、風速分布の推定精度が低減する個別領域LRの外縁付近の影響が小さくなる。
したがって、上記のような構成によれば、上記のような風速分布推定装置1を適切に実現可能である。
また、FCNの構造は、図2及び図5を用いて説明した上記の構造に限られず、他の構造を備えていてもよい。例えば、上記実施形態においては、畳み込み処理部27及び転置畳み込み処理部28はともに3層構造とした模式的な例を用いて説明したが、各々の層数は3以外であってもよいし、畳み込み処理部27の層数と転置畳み込み処理部28の層数が異なっていてもよい。
更には、上記実施形態においては、風速分布推定部21は、全層畳み込みネットワークに基づいた学習モデル25により個別領域LRの風速分布を推定した。しかし、風速分布推定部21は、風洞実験や数値流体解析によって、個別領域LRの風速分布を推定しても構わない。
また、上記実施形態においては、横方向X及び縦方向Yのストライドは、個別領域LRの横方向X及び縦方向Yの解像度の半分以下とするのが望ましいと説明した。実際には、ストライドを小さくすればするほど、各地点の重複回数、すなわち地点Pが属する個別領域LRの数が増加し、重みを付けられて平均化される対象が増加するため、個別領域LR間の不連続性が、より緩和される。ただし、ストライドを小さくすることにより風速分布推定装置1における処理内容も増加するため、実際にはストライドの大きさは、処理速度と精度の双方を考慮して決定するのが望ましい。
2 学習データ 52 推定結果調整部
5 風速分布データ 53 推定結果結合部
21 風速分布推定部 54 推定結果結合画像(全体領域の風速分布の推定結果)
24 機械学習器 GR 全体領域
25 学習モデル OR 重複部
30 推定時入力データ LR 個別領域
50 全体領域分割部 W 重み関数(重み)
Claims (2)
- 建物周辺の風速分布を推定する、風速分布推定装置であって、
前記風速分布の推定対象となる全体領域を、互いに重複する重複部を有するように、複数の個別領域へと分割する、全体領域分割部と、
複数の前記個別領域内の前記風速分布を推定する、風速分布推定部と、
前記個別領域の各々に対し、前記重複部に含まれる地点である重複地点ごとに、個別に重みが設定されている、重み設定部と、
前記重複地点の、前記重みと前記風速分布の推定結果を基に、当該重複地点の風速が調整された推定結果を算出する、推定結果調整部と、
前記調整された推定結果を基に、複数の前記個別領域内の前記風速分布の前記推定結果を結合して、前記全体領域の前記風速分布の推定結果を生成する、推定結果結合部と、
を備え、
前記推定結果調整部は、前記重複地点の各々に対し、当該重複地点に設定された前記重みの総和を計算し、当該重複地点に設定された前記重みの各々に対して当該重みを前記重みの総和により除算した後に当該重複地点における前記推定結果を乗算した乗算値を計算し、当該乗算値の総和を計算することで、前記重複地点の前記調整された推定結果を算出する、風速分布推定装置。 - 建物周辺の風速分布を推定する、風速分布推定方法であって、
前記風速分布の推定対象となる全体領域を、互いに重複する重複部を有するように、複数の個別領域へと分割し、
複数の前記個別領域内の前記風速分布を推定し、
前記個別領域の各々に対し、前記重複部に含まれる地点である重複地点ごとに、個別に設定された重みと、前記風速分布の推定結果を基に、前記重複地点の各々に対し、当該重複地点に設定された前記重みの総和を計算し、当該重複地点に設定された前記重みの各々に対して当該重みを前記重みの総和により除算した後に当該重複地点における前記推定結果を乗算した乗算値を計算し、当該乗算値の総和を計算することで、当該重複地点の風速が調整された推定結果を算出し、
前記調整された推定結果を基に、複数の前記個別領域内の前記風速分布の前記推定結果を結合して、前記全体領域の前記風速分布の推定結果を生成する、風速分布推定方法。
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