以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。なお、図面において、図示のしやすさ、理解のしやすさ等を考慮し、便宜上、縮尺、縦横の寸法比等が、実物のそれらから変更され、誇張される場合がある。また、本明細書において、「板」、「シート」及び「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「板」という用語は、シート又はフィルムと呼ばれ得る部材も含む概念である。また、本明細書において使用される形状、幾何学的条件及びそれらの程度を特定する用語(例えば「平行」、「直交」及び「同一」等の用語、長さ、角度等の値等)は、厳密な意味に縛られず、実質的に同等及び同様の機能を期待し得る程度の範囲を意味し得るものとして解釈される。
[調光装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る調光装置1の構成を模式的に示す図である。図1に示すように、調光装置1は、調光部材2と、調光部材2に電気的に接続された調光コントローラ4とを備える。本実施形態において、調光コントローラ4には、センサ装置5及びユーザ操作部6が接続されている。
[調光部材]
図2は、本発明の一実施形態に係る調光部材2の平面図であり、図3は、図2のA-A線断面図である。なお、図2及び図3において、調光部材2と調光コントローラ4とを電気的に接続する配線は省略されている。
図2及び図3に示すように、調光部材2は、互いに直交する長手方向X、短手方向Y及び厚み方向Zを有する。
図2及び図3に示すように、調光部材2は、第1光透過性部材21と、第2光透過性部材22と、第1光透過性部材21と第2光透過性部材22との間に設けられた調光ユニット3と、第1光透過性部材21と調光ユニット3との間に設けられた第1偏光板23と、第2光透過性部材22と調光ユニット3との間に設けられた第2偏光板24と、第1光透過性部材21と第1偏光板23とを接合する第1接合層25と、第2光透過性部材22と第2偏光板24とを接合する第2接合層26とを備える。
調光部材2は、実際には、3次元形状の曲面を有するが、図2及び図3では、理解を容易にするために、便宜上、調光部材2が平面視矩形状の平板として示されている。調光部材2は、調光部材2の形状は適宜変更可能である。例えば、調光部材2は、平面視矩形状の平板であってもよいし、湾曲部及び/又は屈曲部を有していてもよい。
本実施形態において、光透過性部材は、調光ユニット3の両側に設けられているが、調光ユニット3の片側のみに設けられていてもよい。すなわち、第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22の一方は省略可能である。したがって、本発明には、第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22の一方が省略された実施形態も包含される。
本実施形態において、偏光板は、調光ユニット3の両側に設けられているが、調光ユニット3の片側のみに設けられていてもよいし、調光ユニット3の両側に設けられていなくてもよい。すなわち、第1偏光板23及び第2偏光板24は任意の要素であり、省略可能である。したがって、本発明には、第1偏光板23及び第2偏光板24の一方又は両方が省略された実施形態も包含される。
[光透過性部材]
第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22は、光透過性(好ましくは可視光透過性)を有する限り特に限定されない。
第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22のそれぞれを構成する材料としては、例えば、ソーダガラス、ソーダライムガラス、カリガラス、石英ガラス等のガラス;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22は、同一の材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。第1光透過性部材21及び/又は第2光透過性部材22は、紫外線の透過を阻害する成分(例えば紫外線吸収剤)を含んでいてもよい。第1光透過性部材21及び/又は第2光透過性部材22の表面には、高剛性膜(例えば、シクロオレフィンポリマー層等)、熱反射膜等の機能層が設けられていてもよい。
第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22は、実際には、3次元形状の曲面を有するが、図2及び図3では、理解を容易にするために、便宜上、第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22がそれぞれ平面視矩形状の平板として示されている。第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22のそれぞれの形状は適宜変更可能である。例えば、第1光透過性部材21及び/又は第2光透過性部材22は、平面視矩形状の平板であってもよいし、湾曲部及び/又は屈曲部を有していてもよい。
好ましい実施形態において、第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22は、それぞれ、透明部材、例えば、ガラスプレートである。
第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22のそれぞれの厚みは適宜調整することができる。第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22のそれぞれの厚みは、好ましくは0.6mm以上3.4mm以下、さらに好ましくは1.9mm以上2.1mm以下である。第1光透過性部材21及び第2光透過性部材22は、同一の厚みを有していてもよいし、異なる厚みを有していてもよい。各光透過性部材の厚みが一定でない場合、最小厚み及び最大厚みのいずれも上記範囲内にあることが好ましい。各光透過性部材の厚みは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
[偏光板]
図3に示すように、第1偏光板23は、第1光透過性部材21と調光ユニット3との間に設けられており、第2偏光板24は、第2光透過性部材22と調光ユニット3との間に設けられている。但し、第1偏光板23及び第2偏光板24は任意の要素であり、省略可能である。したがって、本発明には、第1偏光板23及び第2偏光板24の一方又は両方が省略された実施形態も包含される。偏光板の採用の要否は、例えば、採用された液晶分子の駆動方式に基づいて適宜決定することができる。例えば、GH方式が採用される場合、第1偏光板23及び第2偏光板24の一方又は両方を省略することができる。
第1偏光板23及び第2偏光板24は、それぞれ、その吸収軸と平行な方向に振動する一方の直線偏光成分を選択的に吸収するとともに、吸収軸と直交する透過軸と平行な方向に振動する他方の直線偏光成分を選択的に透過する偏光機能を有する。第1偏光板23及び第2偏光板24は、それぞれ、例えば、偏光子を有する。偏光子は、所望の偏光機能を発揮し得るように構成され、典型的には、ヨウ素化合物がドープされたPVA(ポリビニルアルコール)を延伸することによって作製される。一般に、延伸によって偏光子が作られる場合、当該延伸の方向に応じて偏光子の吸収軸が定まり、同じ方向に延伸された偏光子は相互に同じ方向の吸収軸を有する。第1偏光板23及び第2偏光板24の配置態様として、第1偏光板23の吸収軸と第2偏光板24の吸収軸とが互いに平行である「パラレルニコル」と呼ばれる態様と、第1偏光板23の吸収軸と第2偏光板24の吸収軸とが互いに垂直である「クロスニコル」と呼ばれる態様とがある。VA方式では、第1偏光板23及び第2偏光板24を「クロスニコル」で配置することにより、非透過状態での透過率をより確実に低下させることができる。
[接合層]
図3に示すように、第1接合層25は、第1光透過性部材21と第1偏光板23との間に設けられており、第1光透過性部材21と第1偏光板23とを接合する。図3に示すように、第2接合層26と、第2光透過性部材22と第2偏光板24との間に設けられており、第2光透過性部材22と第2偏光板24とを接合する。
第1接合層25及び第2接合層26は、それぞれ、光透過性(好ましくは可視光透過性)を有する。第1接合層25及び第2接合層26は、それぞれ、接着剤又は粘着剤で形成することができる。接着剤又は粘着剤としては、例えば、ポリビニルブチラール系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ゴム系、ポリオレフィン系等が挙げられる。ポリオレフィン系の接着剤又は粘着剤としては、例えば、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、COP(シクロオレフィンポリマー)等が挙げられる。第1接合層25及び第2接合層26は、同一の接着剤又は粘着剤で形成されてもよいし、異なる接着剤又は粘着剤で形成されてもよい。好ましい実施形態において、第1接合層25及び第2接合層26は、それぞれ、ポリビニルブチラール系接着剤で形成される。
第1接合層25及び第2接合層26のそれぞれの厚みは適宜調整することができる。第1接合層25及び第2接合層26のそれぞれの厚みは、好ましくは0.01mm以上5.2mm以下、さらに好ましくは0.4mm以上3.5mm以下である。第1接合層25及び第2接合層26は、同一の厚みを有していてもよいし、異なる厚みを有していてもよい。各接合層の厚みが一定でない場合、最小厚み及び最大厚みのいずれも上記範囲内にあることが好ましい。各接合層の厚みは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
[調光ユニット]
図3に示すように、調光ユニット3は、第1光透過性部材21と第2光透過性部材22との間に設けられている。調光ユニット3は、外部電源から電圧が印加されることにより、光透過率(好ましくは可視光透過率)を変化させることができる。すなわち、調光ユニット3は、調光部材2に調光機能を付与している。
図4は、本発明の一実施形態に係る調光ユニット3の平面図であり、図5は、図4のB-B線断面図である。なお、図4及び図5において、調光ユニット3と調光コントローラ4とを電気的に接続する配線、及び、該配線と接続される調光ユニット3の接続部は省略されている。
図4及び図5に示すように、調光ユニット3は、互いに直交する長手方向X、短手方向Y及び厚み方向Zを有する。調光ユニット3の長手方向、短手方向及び厚み方向は、それぞれ、調光部材2の長手方向、短手方向及び厚み方向と一致している。
図4及び図5に示すように、調光ユニット3は、シート状であり、好ましくは可撓性を有する。
図4及び図5に示すように、調光ユニット3は、第1積層体31と、第2積層体32と、第1積層体31と第2積層体32との間に位置する液晶層33と、第1積層体31と第2積層体32との間に位置し、液晶層33を周状に取り囲むシール材34と、第1積層体31と第2積層体32との間に位置する複数のスペーサ35とを備える。
本明細書において、対向して設けられた一対の積層体のうち、一方を「第1積層体」、他方を「第2積層体」と称呼する。「第1積層体」として選択される積層体は、一対の積層体のうちのいずれであってもよい。例えば、本実施形態では、図5において上側に位置する積層体が「第1積層体」として選択されているが、図5において下側に位置する積層体が「第1積層体」として選択されてもよい。
[積層体]
図5に示すように、第1積層体31は、第1樹脂基材311、第1ハードコート層312、第1密着層313、第1電極層314及び第1配向膜315を順に備える。
図5に示すように、第1積層体31は、第1樹脂基材311の一方の面に設けられた第1ハードコート層312に加え、第1樹脂基材311の他方の面に設けられた追加のハードコート層316を備える。但し、追加のハードコート層316は任意の要素であり、省略可能である。したがって、本発明には、追加のハードコート層316が省略された実施形態も包含される。
図5に示すように、第2積層体32は、第2樹脂基材321及び第2配向膜325を備える。図5に示すように、第2積層体32は、第2配向膜325が第1配向膜315と対向するように設けられている。
図5に示すように、第2積層体32は、第2樹脂基材321と第2配向膜325との間に、第2ハードコート層322、第2密着層323及び第2電極層324を第2樹脂基材321側から順に備える。すなわち、第2積層体32は、第2樹脂基材321、第2ハードコート層322、第2密着層323、第2電極層324及び第2配向膜325を順に備える。但し、第2積層体32において、第2ハードコート層322、第2密着層323及び第2電極層324は任意の要素であり、省略可能である。したがって、本発明には、第2積層体32において、第2ハードコート層322、第2密着層323及び第2電極層324のうち1又は2以上が省略された実施形態も包含される。
図5に示すように、第2積層体32は、第2樹脂基材321の一方の面に設けられた第2ハードコート層322に加え、第2樹脂基材321の他方の面に設けられた追加のハードコート層326を備える。但し、追加のハードコート層326は任意の要素であり、省略可能である。したがって、本発明には、追加のハードコート層326が省略された実施形態も包含される。
[樹脂基材]
第1樹脂基材311及び第2樹脂基材321は、それぞれ、その表面上に設けられる層を支持するための部材である。ガラス基材に代えて樹脂基材を使用することにより、薄型軽量化を実現することができる。また、樹脂基材を使用することにより、調光ユニット3に柔軟性を付与することができ、調光ユニット3を二次元曲面状だけでなく三次元曲面状とすることもできる。ここで、二次元曲面とは、単一の軸線を中心として二次元的に曲がった曲面、あるいは、互いに平行な複数の軸線を中心として同一又は異なる曲率で二次元的に曲がっている面を意味する。一方、三次元曲面とは、互いに非平行な複数の軸線の各々を中心として、部分的に又は全体的に曲がっている面を意味する。
第1樹脂基材311及び第2樹脂基材321は、それぞれ、シート状であり、光透過性(好ましくは可視光透過性)を有する。第1樹脂基材311及び第2樹脂基材321は、それぞれ、可撓性を有することが好ましい。好ましい実施形態において、第1樹脂基材311及び第2樹脂基材321は、それぞれ、透明フィルムである。第1樹脂基材311及び第2樹脂基材321は、同一の合成樹脂で構成されていてもよいし、異なる合成樹脂で構成されていてもよい。第1樹脂基材311及び第2樹脂基材321を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、エチレンナフタレート-イソフタレート共重合樹脂等のポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル樹脂等のアクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;トリアセチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂;ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
第1樹脂基材311及び第2樹脂基材321のそれぞれの厚みは適宜調整することができる。第1樹脂基材311及び第2樹脂基材321のそれぞれの厚みは、好ましくは23μm以上250μm以下、さらに好ましくは50μm以上188μm以下である。各樹脂基材の厚みが一定でない場合、最小厚み及び最大厚みのいずれも上記範囲内にあることが好ましい。各樹脂基材の厚みは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
第1樹脂基材311及び/又は第2樹脂基材321の表面には、接着性向上等の目的で、酸化法、凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施してもよい。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
第1樹脂基材311及び/又は第2樹脂基材321の表面には、易接着層が形成されていてもよい。易接着層(プライマー層、アンカー層と呼ばれることもある)に含まれる易接着性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
[ハードコート層]
第1ハードコート層312、第2ハードコート層322並びに追加のハードコート層316及び326は、それぞれ、JIS K5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で2B以上の硬度を有する層である。各ハードコート層の硬度は、調光ユニット3に求められる耐擦傷性等の点から適宜調整することができる。各ハードコート層の硬度の上限は特に限定されないが、通常H程度である。
第1ハードコート層312、第2ハードコート層322並びに追加のハードコート層316及び326のそれぞれの厚みは適宜調整することができる。各ハードコート層の厚みは、好ましくは0.5μm以上10μm以下、さらに好ましくは1μm以上5μm以下である。これらのハードコート層は、同一の厚みを有していてもよいし、異なる厚みを有していてもよい。各ハードコート層の厚みが一定でない場合、最小厚み及び最大厚みのいずれも上記範囲内にあることが好ましい。各ハードコート層の厚みは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
第1ハードコート層312及び第2ハードコート層322はともに、高屈折率粒子を含まないことが好ましい。第1ハードコート層312が高屈折率粒子を含むと、第1ハードコート層312と第1密着層313との密着力が低下するおそれがある。同様に、第2ハードコート層322が高屈折率粒子を含むと、第2ハードコート層322と第2密着層323との密着力が低下するおそれがある。高屈折率粒子としては、例えば、酸化チタン(TiO2、屈折率:2.3~2.7)、酸化ニオブ(Nb2O5、屈折率:2.33)、酸化ジルコニウム(ZrO2、屈折率:2.10)、酸化アンチモン(Sb2O5、屈折率:2.04)、酸化スズ(SnO2、屈折率:2.00)、酸化インジウムスズ(ITO、屈折率:1.95~2.00)、酸化セリウム(CeO2、屈折率:1.95)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO、屈折率:1.90~2.00)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO、屈折率:1.90~2.00)、アンチモン酸亜鉛(ZnSb2O6、屈折率:1.90~2.00)、酸化亜鉛(ZnO、屈折率:1.90)、酸化イットリウム(Y2O3、屈折率:1.87)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO、屈折率:1.75~1.85)、リンドープ酸化スズ(PTO、屈折率:1.75~1.85)、等の金属酸化物粒子が挙げられる。好ましい実施形態において、第1ハードコート層312及び第2ハードコート層322はともに、酸化ジルコニウムを含まない。
第1ハードコート層312、第2ハードコート層322並びに追加のハードコート層316及び326は、それぞれ、樹脂で構成することができる。各ハードコート層は、電離放射線硬化性樹脂を含む組成物(電離放射線硬化性樹脂組成物)の硬化により形成され、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含むことが好ましい。
[電離放射線硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂組成物]
電離放射線硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂組成物に関する以下の説明は、別段規定される場合を除き、ハードコート層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂組成物だけでなくて、その他の層の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂組成物にも適用される。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、1種又は2種以上の電離放射線硬化性樹脂を含む。電離放射線硬化性樹脂組成物は、例えば、電離放射線硬化性樹脂等の固形分と、溶剤又は分散媒との混合物である。溶剤又は分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が使用されるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、安定な硬化特性が得られる点で好ましい。
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合(例えばエチレン性二重結合等)、カチオン重合性官能基(例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等)等を分子中に有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー等の1種以上を使用することができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーの重量平均分子量は、例えば、1000未満である。なお、本明細書において、「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に用いて測定される値である。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられ、特に、多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーである。多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーの重量平均分子量は、例えば、1000以上10000未満である。電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、特に、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記プレポリマーの重量平均分子量は、例えば、10000以上である。プレポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10000以上80000以下、さらに好ましくは10000以上40000以下である。電離放射線硬化性樹脂として使用される上記プレポリマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートプレポリマー等が挙げられ、特に、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートプレポリマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートプレポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端又は側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート等であってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも使用することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートとは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布する際、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成しやすい。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を、塗布に適した粘度に調整しやすい。
電離放射線硬化性樹脂は、重量平均分子量が500以上である多官能モノマー及びオリゴマーから選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような多官能モノマー又はオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、電離放射線硬化性樹脂の硬化反応に関与する成分、例えば、光重合開始剤(増感剤)を含んでもよい。例えば、紫外線の照射により電離放射線硬化性樹脂を硬化させる場合、電離放射線硬化性樹脂組成物は光重合開始剤(増感剤)を含むことが好ましい。なお、電離放射線硬化性樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するので、電子線の照射により電離放射線硬化性樹脂を硬化させる場合、電離放射線硬化性樹脂組成物は光重合開始剤(増感剤)を含まなくてもよい。
電離放射線硬化性樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル-N,N-ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種を使用することができる。また、電離放射線硬化性樹脂がカチオン重合性官能基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種を使用することができる。
電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤の量は特に限定されないが、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、通常0.1質量部以上10質量部以下である。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)、熱硬化性樹脂等を含んでもよい。電離放射線硬化性樹脂組成物に溶剤乾燥型樹脂を添加することにより、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用することができ、熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、表面層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を調整する等を目的として、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を含んでもよい。
電離放射線硬化性樹脂組成物を使用した層の形成は、次のように実施することができる。層を形成すべき面に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗膜を乾燥させた後、紫外線、電子線等の電離放射線を照射して電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させる。これにより、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む層が形成される。塗布方法としては、例えば、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。電離放射線として紫外線を使用する場合には、紫外線源として、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を使用することができる。紫外線の波長は、通常190nm以上380nm以下である。電離放射線として電子線を使用する場合には、電子線源として、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器を使用することができる。電子線のエネルギーは、通常100keV以上1000keV以下、好ましくは100keV以上300keV以下である。電子線の照射量は、通常2Mrad以上15Mrad以下である。
[密着層]
図5に示すように、第1密着層313は、第1ハードコート層312と第1電極層314との間に設けられており、第1ハードコート層312及び第1電極層314と接している。第1密着層313は、第1ハードコート層312及び第1電極層314と密着する層であり、第1ハードコート層312と第1電極層314との剥離を防止する。したがって、シール材34の収縮応力等によって第1ハードコート層312と第1電極層314との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、調光ユニット3の耐候性を向上させることができる。
図5に示すように、第2密着層323は、第2ハードコート層322と第2電極層324との間に設けられており、第2ハードコート層322及び第2電極層324と接している。第2密着層323は、第2ハードコート層322及び第2電極層324と密着する層であり、第2ハードコート層322と第2電極層324との剥離を防止する。したがって、シール材34の収縮応力等によって第2ハードコート層322と第2電極層324との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、調光ユニット3の耐候性を向上させることができる。
第1密着層313及び第2密着層323は、それぞれ、ケイ素酸化物を含む。ケイ素酸化物は、一般式:SiOx(X=0~2)で表される。Xの値は、2以下である限り特に限定されないが、好ましくは0.8以上2以下、さらに好ましくは1以上2以下、さらに一層好ましくは1.2以上2以下である。Xの値(ケイ素酸化物の薄膜中の酸化度合い)は、光電子分光装置(ESCA)等により測定することができる。好ましい実施形態において、ケイ素酸化物は、二酸化ケイ素(シリカ)である。第1密着層313及び第2密着層323は、それぞれ、例えば、ケイ素酸化物(好ましくは二酸化ケイ素)で構成される単層膜である。第1密着層313及び第2密着層323の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等のドライプロセスが挙げられる。
第1密着層313及び第2密着層323のそれぞれに含まれるケイ素酸化物の量は、第1ハードコート層312及び第1電極層314との密着力(第1密着層313の密着力)、第2ハードコート層322及び第2電極層324との密着力(第2密着層323の密着力)等を考慮して適宜調整することができる。
第1密着層313及び第2密着層323は、それぞれ、ケイ素酸化物の機能に基づいて、密着層以外の機能層(例えば、インデックスマッチング層)として機能することができる。第1密着層313及び第2密着層323がインデックスマッチング層として機能することにより、第1電極層314及び第2電極層324の視認性(いわゆる骨見え現象)を低減することができる。
第1密着層313は、第1樹脂基材311及び第1電極層314よりも低い屈折率を有することが好ましく、第2密着層323は、第2樹脂基材321及び第2電極層324よりも低い屈折率を有することが好ましい。すなわち、第1密着層313及び第2密着層323は、それぞれ、低屈折率層として機能することが好ましい。第1密着層313及び第2密着層323は、同一の屈折率を有していてもよいし、異なる屈折率を有していてもよい。密着層の屈折率は、密着層が単独で存在する状態において、JIS K7142(2008)に準拠して測定される。密着層の屈折率は、ハードコート層の屈折率と同様の方法によって測定することができる。
第1密着層313及び第2密着層323のそれぞれの厚みは、第1ハードコート層312及び第1電極層314との密着力(第1密着層313の密着力)、第2ハードコート層322及び第2電極層324との密着力(第2密着層323の密着力)等を考慮して適宜調整することができる。第1密着層313及び第2密着層323は、同一の厚みを有していてもよいし、異なる厚みを有していてもよい。各密着層の厚みは、好ましくは1nm以上200nm以下、さらに好ましくは10nmμm以上30nm以下である。各密着層の厚みが一定でない場合、最小厚み及び最大厚みのいずれも上記範囲内にあることが好ましい。各密着層の厚みは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
[電極層]
図5に示すように、第1電極層314の周縁部は、第1配向膜315から露出しており(すなわち、第1配向膜315で被覆されておらず)、シール材34の第1電極層314側の端部は、第1電極層314の周縁部と固着している。同様に、第2電極層324の周縁部は、第2配向膜325から露出しており(すなわち、第2配向膜325で被覆されておらず)、シール材34の第2電極層324側の端部は、第2電極層324の周縁部と固着している。シール材34が第1電極層314及び第2電極層324と固着している実施形態では、第1密着層313の効果(すなわち、シール材34の収縮応力等によって第1ハードコート層312と第1電極層314との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、調光ユニット3の耐候性を向上させることができる)及び第2密着層323の効果(すなわち、シール材34の収縮応力等によって第2ハードコート層322と第2電極層324との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、調光ユニット3の耐候性を向上させることができる)が顕著であり、第1密着層313及び第2密着層323の存在意義が大きい。
但し、第1電極層314の周縁部が、第1配向膜315で被覆されており、シール材34の第1電極層314側の端部が、第1配向膜315と固着していてもよい。同様に、第2電極層324の周縁部が、第2配向膜325で被覆されており、シール材34の第2電極層324側の端部が、第2配向膜325と固着していてもよい。したがって、本発明には、シール材34が第1配向膜315及び第2配向膜325の一方又は両方と固着している実施形態も包含される。
第1電極層314及び第2電極層324は、それぞれ、例えば、透明導電層である。第1電極層314及び第2電極層324は、それぞれ、例えば、無機系の透明導電層用材料、有機系の透明導電層用材料、又は無機系の透明導電層用材料と有機系の透明導電層用材料との混合材料により形成することができる。無機系の透明導電層用材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛、酸化インジウム(In2O3)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化スズ、酸化亜鉛-酸化スズ系、酸化インジウム-酸化スズ系、酸化亜鉛-酸化インジウム-酸化マグネシウム系等の金属酸化物、カーボンナノチューブ等が挙げられる。好ましい実施形態において、第1電極層314及び第2電極層324は、それぞれ、酸化インジウムスズ(ITO)を含む。
第1電極層314及び第2電極層324は、それぞれ、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)等を介して、調光コントローラ4と接続される。第1電極層314及び第2電極層324の配置態様は特に限定されない。第1電極層314及び第2電極層324は、それぞれ、パターニング形成によって所定箇所にのみ配置されてもよいし、全面に配置されてもよい。第1電極層314及び第2電極層324に印加される電圧に応じて、第1電極層314及び第2電極層324の間に配置される液晶層33に作用する電界が形成され、液晶層33を構成する液晶材料中の液晶分子の配向が調整される。
第1電極層314及び第2電極層324のそれぞれの屈折率は、好ましくは1.5以上2.5以下、さらに好ましくは1.5以上2.0以下である。第1電極層314及び第2電極層324は、同一の屈折率を有していてもよいし、異なる屈折率を有していてもよい。電極層の屈折率は、電極層が単独で存在する状態において、JIS K7142(2008)に準拠して測定される。電極層の屈折率は、ハードコート層の屈折率と同様の方法によって測定することができる。
第1電極層314及び第2電極層324のそれぞれの厚みは適宜調整することができる。第1電極層314及び第2電極層324は、同一の厚みを有していてもよいし、異なる厚みを有していてもよい。各電極層の厚みは、好ましくは10nm以上100nm以下、さらに好ましくは20nm以上50nm以下である。各電極層の厚みが一定でない場合、最小厚み及び最大厚みのいずれも上記範囲内にあることが好ましい。各電極層の厚みは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
[配向膜]
図5に示すように、第1配向膜315及び第2配向膜325は、それぞれ、液晶層33に隣接しており、液晶層33中の液晶分子の配向を制御する。配向膜の作製方法は、特に限定されない。任意の手法によって液晶配向能を有する第1配向膜315及び第2配向膜325を作製することができる。例えば、ポリイミド等の樹脂層に対してラビング処理を施すことで配向膜が作製されてもよいし、高分子膜に直線偏光紫外線を照射して偏光方向の高分子鎖を選択的に反応させる光配向法に基づいて配向膜が作製されてもよい。このようなラビング処理による配向膜、光配向膜に代えて、ラビング処理により製造した微細なライン状凹凸形状を賦型処理により製造して配向膜を作製してもよい。
第1配向膜315及び第2配向膜325のそれぞれの厚みは適宜調整することができる。第1配向膜315及び第2配向膜325は、同一の厚みを有していてもよいし、異なる厚みを有していてもよい。各配向膜の厚みは、好ましくは10nm以上300nm以下、さらに好ましくは50nm以上200nm以下である。各配向膜の厚みが一定でない場合、最小厚み及び最大厚みのいずれも上記範囲内にあることが好ましい。各配向膜の厚みは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
[液晶層]
図5に示すように、液晶層33は、第1積層体31の第1配向膜315と第2積層体32の第2配向膜325との間に設けられている。液晶層33は、液晶材料を含む。液晶層33を構成する液晶材料中に含まれる液晶分子の配向は、外部電源(例えば、調光コントローラ4)からの電圧印加により変化する。液晶分子の駆動方式は、特に限定されるものではなく、例えば、VA(Vertical Alignment)方式、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In Plane Switching)方式、GH(Guest Host)方式、あるいはこれらの方式の応用方式を採用することができる。なお、第1積層体31及び第2積層体32並びに液晶層33は、採用された液晶分子の駆動方式に基づいて、適宜選択することができる。例えば、IPS方式が採用される場合、第1積層体31及び第2積層体32の一方だけが、電極層を有するようにすればよい。また、GH方式が採用される場合、液晶層33を構成する液晶材料は、液晶分子とともに二色性色素を含む。また、GH方式が採用される場合、第1偏光板23及び第2偏光板24の一方又は両方を省略することができる。
本実施形態では、GH方式が採用されており、本実施形態に係る調光ユニット3は、GH方式が採用された調光ユニットの一例である。液晶層33は、ゲスト・ホスト(GH)型の液晶層であり、液晶層33を構成する液晶材料は、二色性色素(ゲスト)及び液晶分子(ホスト)を含む。本実施形態では、液晶層33がGH型であるため、第1偏光板23及び第2偏光板24の一方又は両方を省略することができる。
二色性色素は、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素である。二色性色素は、所望の可視光を吸収する特性を有することが好ましく、380~680nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものがさらに好ましい。二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、アントラキノン色素等が挙げられる。好ましい二色性色素は、アゾ色素である。アゾ色素としては、例えば、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、スチルベンアゾ色素等が挙げられる。二色性色素は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、可視光全域を遮断するためには、2種以上の二色性色素を組み合わせて使用することが好ましく、3種類以上の二色性色素を組み合わせて使用することがさらに好ましい。
液晶層33の厚みは適宜調整することができる。液晶層33の厚みは、好ましくは2μm以上15μm以下、さらに好ましくは5μm以上10μm以下である。液晶層33の厚みが一定でない場合、最小厚み及び最大厚みのいずれも上記範囲内にあることが好ましい。液晶層33の厚みは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
液晶層33を構成する液晶材料中に含まれる液晶分子及び二色性色素の配向は、外部電源(例えば、調光コントローラ4)から第1電極層314及び第2電極層324に印加される電圧の程度により変化し、これにより、液晶層33の光透過率が変化する。すなわち、液晶層33の状態は、光透過率が最大である第1状態と、光透過率が最小である第2状態との間で変化する。
液晶層33の光透過率を変化させる方式は、ノーマリホワイト方式(Normaly white type)であってもよいし、ノーマリブラック方式(Normaly black type)であってもよい。ノーマリホワイト方式は、電圧を印加しない時に光透過率が最大であり、電圧を印加すると光透過率が低下する方式である。ノーマリブラック方式は、電圧を印加しない時に光透過率が最小であり、電圧を印加すると光透過率が増加する方式である。
ノーマリホワイト方式が採用される場合、後述するように、一対の透明電極(第1電極層314及び第2電極層324)間の電圧がONの状態の時に、二色性色素331及び液晶222を調光ユニット3の厚み方向Zと垂直な方向(水平方向)へ配向させる必要があるため、第1配向膜315及び第2配向膜325として垂直配向膜が使用され、液晶分子としてネガ型液晶分子が使用される。
ノーマリブラック方式が採用される場合、後述するように、一対の透明電極(第1電極層314及び第2電極層324)間の電圧がONの状態の時に、二色性色素331及び液晶分子332を調光ユニット3の厚み方向Zと平行な方向(垂直方向)へ配向させる必要があるため、第1配向膜315及び第2配向膜325として水平配向膜が使用され、液晶分子としてポジ型液晶分子が使用される。
以下、図6及び図7に基づいて、液晶層33の光透過率が変化するメカニズムを説明する。図6は、調光ユニット3の透光状態を説明するための断面図であり、図7は、調光ユニット3の遮光状態を説明するための断面図である。なお、図6及び図7において、二色性色素及び液晶分子の配向方向を分かりやすくするために、二色性色素及び液晶分子は概念的に示されている。
図6及び図7に示すように、液晶層33は、二色性色素331及び液晶分子332を含む。二色性色素331は、液晶分子332中に分散状態で存在し、液晶分子332と同様の配向を有し、基本的には液晶分子332と同じ向きに並ぶ。
ノーマリホワイト方式が採用された実施形態では、一対の透明電極(第1電極層314及び第2電極層324)間の電圧がOFFの状態(すなわち、外部電源(例えば、調光コントローラ4)から第1電極層314及び第2電極層324に電圧が印加されていない状態)の時、液晶層33に所望の電界が印加されず、二色性色素331及び液晶分子332は、図6に示すように、調光ユニット3の厚み方向Zと平行な方向(垂直方向)に並ぶ。したがって、液晶層33に進入した光(第2配向膜325側から第1配向膜315側へ向かう方向又は第1配向膜315側から第2配向膜325側へ向かう方向に進行する光)に対する二色性色素331の遮光性能は、光の振動方向によらずあまり発揮されず、液晶層33に進入した光は、高い確率で液晶層33(二色性色素331及び液晶分子332)を通過する。
ノーマリホワイト方式が採用された実施形態では、一対の透明電極(第1電極層314及び第2電極層324)間の電圧がONの状態(すなわち、外部電源(例えば、調光コントローラ4)から第1電極層314及び第2電極層324に電圧が印加されている状態)の時、液晶層33に所望の電界が印加され、二色性色素331及び液晶分子332は、図7に示すように、調光ユニット3の厚み方向Zと垂直な方向(水平方向)に並ぶ。したがって、液晶層33に進入した光(第2配向膜325側から第1配向膜315側へ向かう方向又は第1配向膜315側から第2配向膜325側へ向かう方向に進行する光)は、二色性色素331によって遮光(吸収)される。電圧が印加されている状態における二色性色素331及び液晶分子332の配向は、水平方向に関して180度以上捩られ、あらゆる水平方向に二色性色素331が向けられることが好ましい。
ノーマリブラック方式が採用された実施形態では、一対の透明電極(第1電極層314及び第2電極層324)間の電圧がOFFの状態(すなわち、外部電源(例えば、調光コントローラ4)から第1電極層314及び第2電極層324に電圧が印加されていない状態)の時、液晶層33に所望の電界が印加されず、二色性色素331及び液晶分子332は、図7に示すように、調光ユニット3の厚み方向Zと垂直な方向(水平方向)に並ぶ。したがって、液晶層33に進入した光(第2配向膜325側から第1配向膜315側へ向かう方向又は第1配向膜315側から第2配向膜325側へ向かう方向に進行する光)は、二色性色素331によって遮光(吸収)される。電圧が印加されていない状態における二色性色素331及び液晶分子332の配向は、水平方向に関して180度以上捩られ、あらゆる水平方向に二色性色素331が向けられることが好ましい。
ノーマリブラック方式が採用された実施形態では、一対の透明電極(第1電極層314及び第2電極層324)間の電圧がONの状態(すなわち、外部電源(例えば、調光コントローラ4)から第1電極層314及び第2電極層324に電圧が印加されている状態)の時、液晶層33に所望の電界が印加され、二色性色素331及び液晶分子332は、図6に示すように、調光ユニット3の厚み方向Zと平行な方向(垂直方向)に並ぶ。したがって、液晶層33に進入した光(第2配向膜325側から第1配向膜315側へ向かう方向又は第1配向膜315側から第2配向膜325側へ向かう方向に進行する光)に対する二色性色素331の遮光性能は、光の振動方向によらずあまり発揮されず、液晶層33に進入した光は、高い確率で液晶層33(二色性色素331及び液晶分子332)を通過する。
第1偏光板23が設けられている実施形態では、液晶層33を通過した光(第2配向膜325側から第1配向膜315側へ向かう方向に進行する光)のうち、第1偏光板23の偏光軸(透過軸)と平行に振動する光(第1偏光板23の吸収軸方向と垂直な方向に振動する光)が、第1偏光板23を通過して調光ユニット3から出射する。
第2偏光板24が設けられている実施形態では、液晶層33を通過した光(第1配向膜315側から第2配向膜325側へ向かう方向に進行する光)のうち、第2偏光板24の偏光軸(透過軸)と平行に振動する光(第2偏光板24の吸収軸方向と垂直な方向に振動する光)が、第2偏光板24を通過して調光ユニット3から出射する。
第1偏光板23が設けられている実施形態において、二色性色素331及び液晶分子332が、調光ユニット3の厚み方向Zと平行な方向(垂直方向)であって、かつ、第1偏光板23の偏光軸と平行な方向(第1偏光板23の吸収軸方向と垂直な方向)に並ぶ場合、第1偏光板23の吸収軸方向と直交する方向に振動する光は、二色性色素331によって遮光することができ、他の方向に振動する光は、第1偏光板23によって遮光することができる。したがって、調光ユニット3に進入した光(第2配向膜325側から第1配向膜315側へ向かう方向に進行する光)は、二色性色素331及び第1偏光板23によって遮光することができる。
第2偏光板24が設けられている実施形態において、二色性色素331及び液晶分子332が、調光ユニット3の厚み方向Zと平行な方向(垂直方向)であって、かつ、第2偏光板24の偏光軸と平行な方向(第2偏光板24の吸収軸方向と垂直な方向)に並ぶ場合、第2偏光板24の吸収軸方向と直交する方向に振動する光は、二色性色素331によって遮光することができ、他の方向に振動する光は、第2偏光板24によって遮光することができる。したがって、調光ユニット3に進入した光(第1配向膜315側から第2配向膜325側へ向かう方向に進行する光)は、二色性色素331及び第2偏光板24によって遮光することができる。
上記の通り、第1電極層314及び第2電極層324に印加する電圧を制御することにより、液晶層33の光透過率(好ましくは可視光透過率)を変化させることができ、これにより、調光ユニット3の光透過性(好ましくは可視光透過率)を変化させることができる。
VA方式が採用されている実施形態において、液晶層33を構成する液晶材料は、負の誘電率異方性を有するネマチック液晶を含む。VA方式において、液晶分子の配向は、第1電極層314と第2電極層324との間に電圧が印加されていない状態において、第1配向膜315及び第2配向膜325の配向能によって規制され、垂直配向となる。このとき、液晶層33を透過する光の偏光状態が維持される。一方、第1電極層314と第2電極層324との間に電圧が印加されると、電界に制御されて液晶分子が倒れる。このとき、液晶層33を透過することで一方の直線偏光成分が他方の直線偏光成分となる。すなわち、第1偏光板23及び第2偏光板24をクロスニコルで配置すると、印加状態で透過(白表示)となり、非印加状態で遮光(黒表示、ノーマリーブラック)となる。
[シール材]
図4及び図5に示すように、シール材34は、第1積層体31と第2積層体32との間に設けられており、液晶層33を周状に取り囲んでいる。すなわち、シール材34が、液晶材料が充填されてなる液晶層33を区画している。シール材34は、液晶層33を構成する液晶材料が調光ユニット3から漏出することを防止する役割を果たすとともに、第1積層体31(第1配向膜315)及び第2積層体32(第2配向膜325)と接合して両者を相互に固定する役割を果たす。
図5に示すように、シール材34の第1電極層314側の端部は、第1配向膜315から露出している(すなわち、第1配向膜315で被覆されていない)第1電極層314の周縁部と固着している。同様に、シール材34の第2電極層324側の端部は、第2配向膜325から露出している(すなわち、第2配向膜325で被覆されていない)第2電極層324の周縁部と固着している。但し、シール材34の第1電極層314側の端部は、第1電極層314の周縁部を被覆する第1配向膜315と固着していてもよい。同様に、シール材34の第2電極層324側の端部は、第2電極層324の周縁部を被覆する第2配向膜325と固着していてもよい。したがって、本発明には、シール材34が第1配向膜315及び第2配向膜325の一方又は両方と固着している実施形態も包含される。
シール材34は、好ましくは、熱硬化性樹脂を含む組成物(熱硬化性樹脂組成物)の硬化により形成され、熱硬化性樹脂の硬化物を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱硬化性樹脂の中でも、成形性、電気絶縁性等に優れる点で、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂にリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂を使用してもよい。
熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂の量は、シール材34に求められる特性等に応じて適宜調整することができる。熱硬化性樹脂組成物には、熱硬化性樹脂以外に、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、エラストマー、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、密着性向上剤等を添加することができる。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合、硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多官能フェノール化合物;ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等のアミン化合物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物;ポリイミド等が挙げられる。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合、硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類及びその誘導体;有機リン系化合物;第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、スチレン化フェノール系が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン類等が挙げられる。蛍光増白剤としては、例えば、スチルベン誘導体等が挙げられる。密着性向上剤としては、例えば、尿素シラン等の尿素化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。
好ましい実施形態において、シール材34は、エポキシ樹脂の硬化物を含む。特に、第1積層体31と第2積層体32との間への液晶材料の充填方式が真空注入方式の場合には、シール材34として、エポキシ樹脂製のシール材を使用することが好ましい。なお、液晶材料の充填方式としてODF(One Drop Fill)方式が使用される場合には、熱硬化性及びUV硬化性(紫外線硬化性)を併せ持つハイブリッドタイプの材料を使用してシール材34を形成することが好ましい。液晶材料が硬化前のシール材に触れることは外観上の不具合を誘発するためである。したがって、シール材34を構成する材料には、紫外線硬化型アクリル樹脂及びエポキシ樹脂が含まれることが好ましい。
図5に示すように、シール材34は、厚みTを有する。シール材34の厚みTは、30μm以下である。シール材34の厚みTは、好ましくは25μm以下である。シール材34の厚みTの下限値は、液晶層33の厚み等を考慮して適宜調整することができる。シール材34の厚みTは、好ましくは15μmを超える。シール材34の厚みTが15μm以下であると、第1密着層313が形成されなくても、第1ハードコート層312と第1電極層314との間で生じ得る剥離が防止されやすい。同様に、シール材34の厚みTが15μm以下であると、第2密着層323が形成されなくても、第2ハードコート層322と第2電極層324との間で生じ得る剥離が防止されやすい。したがって、シール材34の厚みTが15μmを超える場合、第1密着層313の効果(すなわち、シール材34の収縮応力等によって第1ハードコート層312と第1電極層314との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、調光ユニット3の耐候性を向上させることができる)及び第2密着層323の効果(すなわち、シール材34の収縮応力等によって第2ハードコート層322と第2電極層324との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、調光ユニット3の耐候性を向上させることができる)が顕著であり、第1密着層313及び第2密着層323の存在意義が大きい。
シール材34の厚みTは、シール材34の延在方向と直交する断面におけるシール材34の厚み(調光ユニット3の厚み方向Zにおけるシール材34の長さ)として測定される。シール材34の厚みTは、シール材34の延在方向と直交する断面を走査電子顕微鏡(SEM)によって撮像した画像から測定することができる。シール材34の延在方向は、調光ユニット3を平面視したときにシール材34が延在する方向であり、例えば、調光ユニット3の長手方向X又は短手方向Yである。シール材34の延在方向と直交する断面は、シール材34の延在方向と垂直な方向に延在する平面で、調光ユニット3を切断して形成される切断面である。
シール材34の延在方向と直交する断面において、シール材34の厚みTが一定でない場合、シール材34の最大厚みをシール材34の厚みTとして採用する。
シール材34の延在方向と直交する断面において、シール材34の厚Tみが一定でない実施形態としては、シール材34の中央部が最も厚い実施形態、シール材34の一端部(例えば、液晶層33と反対側の端部)が最も厚い実施形態等が挙げられる。シール材34の延在方向と直交する断面において、シール材34の厚みTが一定でない実施形態は、例えば、第1積層体31及び/又は第2積層体32が可撓性を有する場合に生じやすい。図8は、シール材34の延在方向と直交する断面において、シール材34の厚みTが一定でない一実施形態を示す図である。図8に示す実施形態では、シール材34の中央部が最も厚くなっている。図8に示す実施形態では、シール材34の中央部の厚みTmをシール材34の厚みTとして採用する。
シール材34の厚みTがシール材34の延在方向において一定でない場合(すなわち、シール材34の延在方向と直交する複数の断面におけるシール材34の厚みTが、各断面で異なる場合)、複数の断面のそれぞれにおいて、シール材34の厚みTを測定し、測定された複数の厚みTの平均値を算出し、算出された平均値を、シール材34の厚みTとして採用する。平均値を算出するための断面の数は、3である。
図5に示すように、シール材34は、幅Wを有する。シール材34の幅Wは、シール材34の液晶層33側の端部である一端部(図8に示す実施形態では、一端部341)と、液晶層33とは反対側の端部である他端部(図8に示す実施形態では、他端部342)との間隔である。シール材34の幅Wは、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは3mm以上、さらに一層好ましくは5mm以上である。シール材34の幅Wの上限値は適宜調整することができる。シール材34の幅Wは、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下、さらに一層好ましくは8mm以下である。シール材34の幅Wが1mm以上である場合、第1密着層313の効果(すなわち、シール材34の収縮応力等によって第1ハードコート層312と第1電極層314との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、調光ユニット3の耐候性を向上させることができる)及び第2密着層323の効果(すなわち、シール材34の収縮応力等によって第2ハードコート層322と第2電極層324との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、調光ユニット3の耐候性を向上させることができる)が顕著であり、第1密着層313及び第2密着層323の存在意義が大きい。
シール材34の幅Wは、シール材34の延在方向と直交する断面におけるシール材34の幅(調光ユニット3の長手方向X又は短手方向Yにおけるシール材34の長さ)として測定される。シール材34の幅Wは、シール材34の延在方向と直交する断面を走査電子顕微鏡(SEM)によって撮像した画像から測定することができる。シール材34の延在方向は、調光ユニット3を平面視したときにシール材34が延在する方向であり、例えば、調光ユニット3の長手方向X又は短手方向Yである。シール材34の延在方向と直交する断面は、シール材34の延在方向と垂直な方向に延在する平面で、調光ユニット3を切断して形成される切断面である。
シール材34の延在方向と直交する断面において、シール材34の幅Wが一定でない場合、シール材34の最大幅をシール材34の幅Wとして採用する。シール材34の延在方向と直交する断面において、シール材34の幅Wが一定でない実施形態は、例えば、第1積層体31及び/又は第2積層体32が可撓性を有する場合に生じやすい。
シール材34の幅Wがシール材34の延在方向において一定でない場合(すなわち、シール材34の延在方向と直交する複数の断面におけるシール材34の幅Wが、各断面で異なる場合)、複数の断面のそれぞれにおいて、シール材34の幅Wを測定し、測定された複数の厚みTの平均値を算出し、算出された平均値を、シール材34の幅Wとして採用する。平均値を算出するための断面の数は、3である。
シール材34の幅Wに対するシール材34の厚みTの比(厚みT/幅W)は、好ましくは0.015以下、さらに好ましくは0.005以下、さらに一層好ましくは0.003以下である。シール材34の幅Wに対するシール材34の厚みTの比(厚みT/幅W)の下限値は適宜調整することができる。シール材34の幅Wに対するシール材34の厚みTの比(厚みT/幅W)は、好ましくは0.00075以上、さらに好ましくは0.0015以上、さらに一層好ましくは0.0018以上である。シール材34の幅Wに対するシール材34の厚みTの比(厚みT/幅W)が0.015以下である場合、第1密着層313の効果(すなわち、シール材34の収縮応力等によって第1ハードコート層312と第1電極層314との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、調光ユニット3の耐候性を向上させることができる)及び第2密着層323の効果(すなわち、シール材34の収縮応力等によって第2ハードコート層322と第2電極層324との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、調光ユニット3の耐候性を向上させることができる)が顕著であり、第1密着層313及び第2密着層323の存在意義が大きい。
[スペーサ]
スペーサ35は、第1積層体31の第1配向膜315と第2積層体32の第2配向膜325との間に配置されており、第1配向膜315と第2配向膜325との間隔を規定する。スペーサ35は、第1積層体31と第2積層体32との間にスペースを確保する。このスペースに液晶材料が充填されることにより、液晶層33が形成される。液晶層33は、透過光の位相変調量を制御するものであるため、第1積層体31と第2積層体32との間において、ある程度一定の厚さを有している必要がある。また、複数のスペーサ35は、第1積層体31と第2積層体32との間に、離散的に配置されている。各スペーサ35は、各種の樹脂材料によって構成可能であり、本実施形態では、スペーサ35として、ビーズスペーサが使用されている。ビーズスペーサは、球状を有する。球状には、例えば、真球状、楕円球状等が含まれる。各スペーサ35は、錐台(例えば、円錐台、角錐台等)等の形状を有していてもよい。ビーズ状のスペーサは、散布方式に加え、液晶、配向膜インキに分散し塗布されても良い。各スペーサ35は、フォトリソグラフィ技術を利用して所望箇所に形成可能であり、
[調光コントローラ、センサ装置及びユーザ操作部]
図1に示されるように、調光コントローラ4には、センサ装置5及びユーザ操作部6が接続されている。調光コントローラ4は、調光ユニット3の調光状態を制御し、調光ユニット3による光の透過及び遮断を切り換えたり、調光ユニット3を透過する光の透過率(透過度)を変化させたりすることができる。具体的には、調光コントローラ4は、調光ユニット3の第1電極層314及び第2電極層324を通じて液晶層33に印加される電圧を調整して液晶層33中の液晶分子の配向を変化させることにより、調光ユニット3による光の遮断及び透過を切り換えたり、光の透過度を変化させたりすることができる。
調光コントローラ4は、任意の手法に基づいて液晶層33に印加される電圧を調整することができる。調光コントローラ4は、例えば、センサ装置5の測定結果、又は、ユーザ操作部6を介してユーザにより入力される指示(コマンド)に基づいて、液晶層33に印加される電圧を調整し、調光ユニット3による光の遮断及び透過を切り換えたり、光の透過度を変化させたりすることができる。したがって、調光コントローラ4は、液晶層33に印加される電圧を、センサ装置5の測定結果に応じて自動的に調整してもよいし、ユーザ操作部6を介したユーザの指示に応じて手動的に調整してもよい。なお、センサ装置5による測定対象は特に限定されず、例えば、使用環境の明るさが測定対象であってもよく、この場合、調光ユニット3による光の遮断及び透過の切り換え又は光の透過度の変更が使用環境の明るさに応じて行われる。また、調光コントローラ4には、必ずしもセンサ装置5及びユーザ操作部6の両方が接続されている必要はなく、センサ装置5及びユーザ操作部6のうちのいずれか一方のみが接続されていてもよい。
以上のように構成される調光装置1では、調光コントローラ4から、FPC(Flexible Printed Circuits)等の配線を通じて、調光部材2に電圧が印加される。調光ユニット3の第1電極層314及び第2電極層324に印加される電圧の程度に応じて、調光ユニット3の液晶層33に作用する電界が変化し、液晶層33を構成する液晶材料中の液晶分子の配向が調整される。こうして、調光装置1は、調光ユニット3を透過する光(特に可視光)の透過率を変化させることができる。例えば、調光ユニット3を透過する光の透過率を調節することにより、太陽光等の外光を適切な光量で透過させたり、太陽光等の外光を遮蔽したりすることができる。なお、可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を使用して測定波長380nm~780nmの範囲で測定したときの、各波長の透過率の平均値として算出することができる。
したがって、調光装置1は、光(特に可視光)の透過率の調整が求められる様々な技術分野に適用可能であり、適用範囲は特に限定されない。調光装置1は、例えば、移動体の窓、建物の窓、ショーケース、室内に配置されるパーテーション等の、透光及び遮光の切り換えが求められる様々なディバイスに適用することができる。
[移動体]
本発明の一実施形態において、調光装置1は、移動体に適用される。調光装置1を適用可能な移動体としては、例えば、自動車、飛行機、船、電車等が挙げられる。調光装置1を移動体に適用する場合、例えば、移動体の窓を調光部材2で構成することができる。
図9は、調光装置1を搭載した移動体の一例としての自動車100を概略的に示す図である。図9に示す実施形態では、自動車100のサンルーフが調光部材2で構成されている。自動車100において、サンルーフに代えて又はサンルーフに加えて、自動車100が有するその他の窓(例えば、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等)が調光部材2で構成されていてもよい。自動車100では、例えば、図示しないバッテリー等の電源から配線を介して、調光ユニット3の第1電極層314及び第2電極層324へ電圧を印加することができる。
[調光ユニットの製造方法]
以下、図10~図14に基づいて、調光ユニット3の製造方法の一実施形態を説明する。図10~図14は、本発明の一実施形態に係る調光ユニットの製造方法を説明するための図である。
まず、図10及び図11に示すように、第1基板30a及び第2基板30bを準備する。図10に示すように、第1基板30aは、第1積層体31の前駆体31’と、第1積層体31の前駆体31’上に設けられた複数のスペーサ35とを備える。第1積層体31の前駆体31’がトリミングされることにより第1積層体31が形成される。図11に示すように、第2基板30bは、第2積層体32の前駆体32’と、第2積層体32の前駆体32’上に設けられた複数のスペーサ35とを備える。第2積層体32の前駆体32’がトリミングされることにより第2積層体32が形成される。本実施形態では、第1基板30a及び第2基板30bがともに、スペーサ35を有するが、第1基板30a及び第2基板30bの一方のみが、スペーサ35を有していてもよい。
第1基板30aは、例えば、次のようにして作製することができる。まず、第1樹脂基材311の一方の面に第1ハードコート層312を形成し、第1樹脂基材311の他方の面に追加のハードコート層316を形成する。第1ハードコート層312及び追加のハードコート層316は、それぞれ、電離放射線硬化性樹脂組成物を第1樹脂基材311上に塗布し、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗膜を乾燥させた後、紫外線、電子線等の電離放射線を照射して電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより形成することができる。次いで、第1ハードコート層312上に第1密着層313を形成する。第1密着層313は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等により形成することができる。次いで、第1密着層313上に第1電極層314を形成する。第1電極層314は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等により形成することができる。次いで、スペーサ35が第1電極層314上に散布される。次いで、第1配向膜315を形成するための組成物を、スペーサ35が散布された第1電極層314上に塗布し、塗膜を乾燥させる。本実施形態では、第1電極層314の周縁部が露出するように(すなわち、第1配向膜315を形成するための組成物で被覆されてないように)、塗膜が形成されるが、第1電極層314の周縁部が第1配向膜315を形成するための組成物で被覆されるように、塗膜を形成してもよい。第1配向膜315を形成するための組成物に含まれるポリイミド等の量を調節することにより、当該組成物の粘度を調節することができる。これにより、スペーサ35と第1配向膜315との固着の程度を調節することができる。なお、第1配向膜315を形成するための組成物中にスペーサ35を分散させ、スペーサ35を含有する組成物を第1電極層314上に散布してもよい。次いで、ラビング、光配向等によって配向規制力を塗膜に付与し、第1配向膜315を形成する。このようにして、第1基板30aが作製される。
第2基板30bは、例えば、次のようにして作製することができる。まず、第2樹脂基材321の一方の面に第2ハードコート層322を形成し、第2樹脂基材321の他方の面に追加のハードコート層326を形成する。第2ハードコート層322及び追加のハードコート層326は、それぞれ、電離放射線硬化性樹脂組成物を第2樹脂基材321上に塗布し、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗膜を乾燥させた後、紫外線、電子線等の電離放射線を照射して電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより形成することができる。次いで、第2ハードコート層322上に第2密着層323を形成する。第2密着層323は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等により形成することができる。次いで、第2密着層323上に第2電極層324を形成する。第2電極層324は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等により形成することができる。次いで、スペーサ35が第2電極層324上に散布される。次いで、第2配向膜325を形成するための組成物を、スペーサ35が散布された第2電極層324上に塗布し、塗膜を乾燥させる。本実施形態では、第2電極層324の周縁部が露出するように(すなわち、第2配向膜325を形成するための組成物で被覆されてないように)、塗膜が形成されるが、第2電極層324の周縁部が第2配向膜325を形成するための組成物で被覆されるように、塗膜を形成してもよい。第2配向膜325を形成するための組成物に含まれるポリイミド等の量を調節することにより、当該組成物の粘度を調節することができる。これにより、スペーサ35と第2配向膜325との固着の程度を調節することができる。なお、第2配向膜325を形成するための組成物中にスペーサ35を分散させ、スペーサ35を含有する組成物を第2電極層324上に散布してもよい。次いで、ラビング、光配向等によって配向規制力を塗膜に付与し、第2配向膜325を形成する。このようにして、第2基板30bが作製される。
次いで、図12に示すように、第2基板30bのうち、第2配向膜325を形成するための組成物の塗膜から露出する第2電極層324の周縁部に、シール材料34’を周状に塗布する。シール材料34’は、接着性又は粘着性を有する粘稠性液体材料であり、シール材料34’の硬化によりシール材34が形成される。本実施形態では、第2基板30bにシール材料34’を塗布するが、第1基板30aのうち、第1配向膜315を形成するための組成物の塗膜から露出する第1電極層314の周縁部に、シール材料34’を周状に塗布してもよい。
次いで、図13に示すように、シール材料34’で取り囲まれた第2基板30bの領域に、液晶分子を含む液晶材料33’を供給する。なお、第1基板30aにシール材料34’を塗布する場合には、シール材料34’で取り囲まれた第1基板30aの領域に、液晶分子を含む液晶材料33’を供給する。
次いで、図14に示すように、例えば減圧下で、第1基板30aと第2基板30bとを積層する。第1基板30aと第2基板30bとを積層する際、ローラー等を使用してしごくようにしてもよい。第1基板30aと第2基板30bとの積層体3’において、第1基板30aと第2基板30bとの間には、スペーサ35によって確保されたスペースが存在しており、このスペースに充填された液晶材料33’が、液晶層33を形成する。
次いで、第1基板30aと第2基板30bとの積層体3’に対して、紫外線照射及び/又は加熱処理を行う。これにより、シール材料34’は変形及び硬化してシール材34となり、第1基板30a及び第2基板30bはシール材34により接合される。
以上の工程によって、第1基板30aと、第2基板30bと、第1基板30aと第2基板30bとの間に位置する液晶層33と、第1基板30aと第2基板30bとの間に位置し、液晶層33を取り囲むシール材34と、第1基板30aと第2基板30bとの間に設けられたスペーサ35とを含む、調光ユニット3の前駆体が準備される。
次いで、調光ユニット3の前駆体から、第1基板30a及び第2基板30bの一部を切断し、余分な領域である第1基板30a及び第2基板30bの外周を取り除く(すなわち、第1基板30a及び第2基板30bをトリミングする)。トリミングによりシール材34の一部も切断されて取り除かれてもよい。第1基板30a及び第2基板30bのトリミングは、打ち抜き刃、カッター等からなる工具を使用して実施することができる。トリミングにより、第1基板30aが第1積層体31となり、第2基板30bが第2積層体32となる。トリミングによりシール材34の一部も切断される場合、シール材34の端部は、平面視において、第1積層体31の周縁部及び第2積層体32の周縁部と一致する。こうして、調光ユニット3が製造される。製造された調光ユニット3では、外部電源(例えば、調光コントローラ4)から第1電極層314及び第2電極層324への電圧印加により、液晶層33内の液晶分子の配向を制御することができる。液晶分子の配向の変更により、液晶層33内を透過する際における光の位相変調量が変化する。これにより、第1積層体31、液晶層33及び第2積層体32を透過する光の透過率を変化させることができる。
調光部材2は、調光ユニット3の第1積層体31側に第1接合層25及び第1光透過性部材21を順に積層し、第1接合層25により調光ユニット3と第1光透過性部材21とを接合するとともに、調光ユニット3の第2積層体32側に第2接合層26及び第2光透過性部材22を順に積層し、第2接合層26により調光ユニット3と第2光透過性部材22とを接合することにより製造することができる。
以上、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到し得る種々の変形が加えられた各種態様も含み得るものであり、本発明によって奏される効果も上記効果に限定されない。したがって、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲及び明細書に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。また、本明細書に記載された実施形態から選択された2以上を適宜組み合わせることも可能である。
〔試験例1~6〕
(1)積層体の準備
積層体A(試験例1)、積層体B(試験例2)、積層体C(試験例3)、積層体D(試験例4)、積層体E(試験例5)及び積層体F(試験例6)を準備した。積層体A~Fはいずれも市販品である。
[積層体A]
積層体Aは、ハードコート層、樹脂基材、ハードコート層、低屈折率層及びITO層を順に備える。樹脂基材は、ポリカーボネート樹脂基材であり、厚みは100μmである。ハードコート層は、主成分として、電離放射線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)の硬化物を含む。低屈折率層は、二酸化ケイ素(SiO2)で構成された単層膜である。ITO層は、酸化インジウムスズで構成された層である。
[積層体B]
積層体Bは、ハードコート層、樹脂基材、ハードコート層、低屈折率層及びITO層を順に備える。樹脂基材は、ポリエチレンテレフタレート樹脂基材であり、厚みは100μmである。ハードコート層は、主成分として、電離放射線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)の硬化物を含む。低屈折率層は、二酸化ケイ素(SiO2)で構成された単層膜である。ITO層は、酸化インジウムスズで構成された層である。
[積層体C]
積層体Cは、ハードコート層、樹脂基材、ハードコート層、低屈折率層及びITO層を順に備える。樹脂基材は、ポリカーボネート樹脂基材であり、厚みは100μmである。ハードコート層は、主成分として、電離放射線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)の硬化物を含む。低屈折率層は、二酸化ケイ素(SiO2)で構成された単層膜である。ITO層は、酸化インジウムスズで構成された層である。
[積層体D]
積層体Dは、ハードコート層、樹脂基材、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層及びITO層を順に備える。樹脂基材は、ポリカーボネート樹脂基材であり、厚みは100μmである。ハードコート層は、主成分として、電離放射線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)の硬化物を含む。高屈折率層は、二酸化チタン(TiO2)で構成された単層膜である。低屈折率層は、二酸化ケイ素(SiO2)で構成された単層膜である。ITO層は、酸化インジウムスズで構成された層である。
[積層体E]
積層体Eは、ハードコート層、樹脂基材、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層及びITO層を順に備える。樹脂基材は、ポリカーボネート樹脂基材であり、厚みは100μmである。ハードコート層は、主成分として、電離放射線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)の硬化物を含む。高屈折率層は、二酸化チタン(TiO2)で構成された単層膜である。低屈折率層は、二酸化ケイ素(SiO2)で構成された単層膜である。ITO層は、酸化インジウムスズで構成された層である。
[積層体F]
積層体Fは、ハードコート層、樹脂基材、ハードコート層、低屈折率層及びITO層を順に備える。樹脂基材は、ポリエチレンテレフタレート樹脂基材であり、厚みは100μmである。ハードコート層は、主成分として、電離放射線硬化性樹脂(アクリル系樹脂)の硬化物を含み、高屈折率粒子としてZrO2粒子を含む。低屈折率層は、二酸化ケイ素(SiO2)で構成された単層膜である。ITO層は、酸化インジウムスズで構成された層である。
(2)シール材の形成
各積層体のITO層の表面全体にシール材(厚み:30μm)を形成した。
シール材形成用組成物は、市販品であり、エポキシ樹脂及び重合開始剤を含む。
シール材の形成方法は次の通りである。
シールティスペンサー(岩下エンジニアリング社製EzROBO Gx ST2520、吐出ユニットACCURA DG)を用いて、所定の幅及び膜厚になるように描画した。
(3)耐候性試験
各積層体に対してシール材を形成した後、耐候性試験を実施した。
耐候性試験は、JIS B 7754:2007に準拠するキセノンアークランプ式の耐候性試験機(アトラス社製キセノン耐候性試験機 Ci4000)を使用して、下記に記載する条件下、所定時間(積層体Aを使用する場合は750時間、それ以外の積層体を使用する場合は1000時間)実施した。耐候性試験の条件は、次の通りである。
ブラックパネル温度:63±3℃ 、50±5%(照射時)
試料面放射照度:60W/m2(300~400nmでの連続照射)
(4)剥離強度の測定
耐候性試験の前後において、シール材を形成した各積層体から、幅10mm、長さ15mmのサンプルを切り出した。各サンプルを使用してT型剥離試験(180度剥離試験)を実施し、各サンプルの剥離強度を測定した。T型剥離試験は、JIS K6854-3:1999(T型剥離試験法)に準拠して、テンシロン(オリエンテック社製引張試験機RTA-250)を使用して実施した。なお、各サンプルの長さ方向の一端からシール材と積層体とを剥離し(剥離された部分の長さは7mm)、剥離されたシール材の部分と、剥離された積層体の部分とを装置に固定される。剥離されたシール材の部分の引張り方向と、剥離された積層体の部分の引張り方向とのなす角度は180°である。T型剥離試験は、標準ロードセルで20%加重しながら、引張速度10mm/分で実施した。剥離強度は、平均値(N=3)として算出した。
上記T型剥離試験では、積層体の層間剥離強度が、シール材とITO層との剥離強度よりも大きい場合には、シール材とITO層との剥離強度が測定されるが、積層体の層間剥離強度が、シール材とITO層との剥離強度よりも小さい場合には、積層体の層間剥離強度が測定される。
T型剥離試験の結果を表1に示す。
表1に示すように、積層体A~Cを使用した場合(試験例1~3)、耐候性試験前後の剥離強度の低下率は0~20%程度であったが、積層体D~Fを使用した場合(試験例4~6)、耐候性試験前後の剥離強度の低下率は50~90%程度であった。
これらの結果から、ハードコート層と電極層との間に設けられる層が、調光ユニットの耐候性に影響することが明らかとなった。また、ハードコート層と電極層との間に、シリカ等のケイ素酸化物を含む層を設けると、当該層がハードコート層及び電極層と密着し、シール材の収縮応力等によってハードコート層と電極層との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、耐候性を向上させることができることが明らかとなった。
〔試験例7~12〕
シール材形成用組成物F1(試験例7)、シール材形成用組成物F2(試験例8)、シール材形成用組成物F3(試験例9)、シール材形成用組成物F4(試験例10)、シール材形成用組成物F5(試験例11)及びシール材形成用組成物F6(試験例12)を準備した。シール材形成用組成物F1~F6はいずれも市販品であり、エポキシ樹脂及び重合開始剤を含む。シール材形成用組成物F1及びF3~F5は、重合開始剤の含有量の点で異なり、シール材形成用組成物F3、F4及びF5における重合開始剤の含有量は、それぞれ、シール材形成用組成物F1における重合開始剤の0.25倍、0.50倍及び2.00倍である。シール材形成用組成物F1及びF6は、重合開始剤の種類の点で異なる。
上記と同様にして、積層体FのITO層上にシール材(厚み:15μm)を形成した。
積層体Fに対してシール材を形成した後、上記と同様にして、所定時間(250時間又は500時間)、耐候性試験を実施した。
耐候性試験の前後において、シール材を形成した積層体Fから、幅10mm、長さ15mmのサンプルを切り出し、各サンプルを使用して、上記と同様にしてT型剥離試験(180度剥離試験)を実施し、各サンプルの剥離強度を測定した。
T型剥離試験の結果を表2に示す。
表1に示すように、シール材の厚みが30μmである場合、積層体Fを使用すると(試験例6)、耐候性試験前後の剥離強度の低下率が50%程度であった。これに対して、表2に示すように、シール材の厚みが15μmである場合、積層体Fを使用しても、耐候性試験前後の剥離強度の低下率は0~20%程度であった。
これらの結果から、シール材の厚みが、調光ユニットの耐候性に影響することが明らかとなった。また、シール材の厚みが30μm以下である場合、ハードコート層と電極層との間に、シリカ等のケイ素酸化物を含む層を設けると、当該層がハードコート層及び電極層と密着し、シール材の収縮応力等によってハードコート層と電極層との間で生じ得る剥離を防止することができ、これにより、耐候性を向上させることができることが明らかとなった。さらに、シリカ等のケイ素酸化物を含む層の効果は、シール材の厚みが15μmを超える場合に顕著であり、シリカ等のケイ素酸化物を含む層の存在意義は、シール材の厚みが15μmを超える場合に大きいことが明らかとなった。