JP7356672B2 - エクソソームの生産方法 - Google Patents
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Description
近年、エクソソームを医療分野に応用する研究(例えば、エクソソームをキャリアとする薬物送達技術に関する研究等)が進められている。その一例として、細胞(例えば、組織から単離された細胞)からエクソソームを生成する方法に関する技術が挙げられる。具体的には、例えば、特許文献1には、プロスタグランジンEレセプター4(EP4)アンタゴニストに単離された幹細胞を接触させて人工エクソソームを生成する方法が開示されている。
そこで本発明は、エクソソームを薬物送達キャリアとして利用する場合の上記課題を解決するべく創出されたものであり、所定の培養細胞からエクソソームを生産する方法であって、当該エクソソーム中に存在するネイティブな(即ち、本来存在し得る雑多な)タンパク質の含有量が予め低減された人工軽量化エクソソーム(induced Light-weight Exosome;iLE)の提供を可能とするエクソソーム生産方法を提供することを目的とする。また、かかる生産方法によって生産される人工軽量化エクソソーム(iLE)を提供することを他の目的とする。
所定の培養細胞を含む細胞培養物を用意する工程;
上記細胞培養物中に、人為的に製造した所定の合成ペプチドを少なくとも一回供給し、該細胞培養物を所定時間培養する工程;および
上記培養後、上記培養細胞が産生したエクソソームを上記培養物中から回収する工程;
を包含する。
ここで、上記合成ペプチドは、以下の(1)および(2)に示すアミノ酸配列:
(1)スフィンゴシン1リン酸レセプター1(sphingosine 1-phosphate receptor 1:S1PR1)のN末端から2番目のトランスメンブレン(TM)領域を構成するアミノ酸配列、または、該アミノ酸配列について1個、2個または3個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加された改変アミノ酸配列のいずれかからなるエクソソーム誘導性ペプチド配列;および
(2)細胞膜透過性ペプチド(cell penetrating peptide:CPP)として機能するアミノ酸配列(CPP配列);
をともに備え、かつ、総アミノ酸残基数が100以下である。
かかる生産方法によると、対象とする培養細胞におけるエクソソームの産生量を増加させることができる。さらに、一粒子当たりの平均タンパク質量が所定量未満である人工軽量化エクソソーム(iLE)を好適に生産することができる。
また、ここで開示される生産方法の好適な他の一態様では、上記CPP配列が、ポリアルギニン(特に限定しないが、典型的には、5個以上20個以下のアルギニン残基から構成される)、または、配列番号2~19のいずれかに示すアミノ酸配列、または、該アミノ酸配列について1個、2個または3個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されたCPPとして機能する改変アミノ酸配列であることを特徴とする。
また、ここで開示される生産方法の好適な他の一態様では、上記回収工程において、上記培養細胞が産生したエクソソームを、上記培養物中から超遠心分離法によってエクソソーム画分として単離して回収することを特徴とする。かかる態様によると、好適にエクソソームを回収することができる。
好ましい他の一態様では、上記回収工程の後、上記エクソソーム画分の全タンパク質量を解析する工程をさらに包含する。ここで、該解析工程において、上記全タンパク質量から算出されるエクソソームの一粒子当たりの平均タンパク質量が所定量未満であるエクソソーム画分に含まれるエクソソームを、人工軽量化エクソソーム(iLE)であると判別する。
そして、より好ましくは、上記エクソソームの一粒子当たりの平均タンパク質量が、8×10-8μg未満である。
かかる生産方法によると、生産されたエクソソームが人工軽量化エクソソーム(iLE)であることを容易に判別することができる。
本明細書中で引用されている全ての文献の全ての内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
また、「人工軽量化エクソソーム(induced Light-weight Exosome: iLE)」とは、ここで開示される合成ペプチドを対象培養細胞に供給することによって、人工的に産生が誘導されたエクソソームであって、当該合成ペプチドを供給しない状態で当該対象培養細胞が通常産生するエクソソームと比較してネイティブな(即ち、当該対象培養細胞が通常産生するエクソソーム内に本来的に存在し得る雑多な)タンパク質の含有量が減少しており、相対的に軽量化されたエクソソーム(iLE)をいう。
また、本明細書において「培養細胞」とは、インビトロ(生体外)で培養される細胞一般をいい、特定の商業的に確立されたセルライン(細胞株)に限定されない。ヒト若しくはヒト以外の生物種(特には哺乳動物)の生体から取り出された細胞、組織、器官等をインビトロで培養した場合の当該培養物(例えばプライマリーカルチャー)中に含まれる細胞は、「培養細胞」に包含される。商業的に確立された種々の培養腫瘍細胞等のセルラインを構成する細胞は、ここでいう「培養細胞」の典型例である。
なお、「腫瘍細胞」とは、「がん細胞」と同義であり、種々の腫瘍を形成する細胞であって、典型的には周辺の正常組織とは無関係に異常に増殖を行うに至った細胞(所謂がん化した細胞)をいう。各種の細胞腫(神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫等)、リンパ腫、メラノーマ等を構成する細胞由来の「培養腫瘍細胞」は、ここでいう「培養細胞」の好適例である。
また、本明細書において「アミノ酸残基」とは、特に言及する場合を除いて、ペプチド鎖のN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸を包含する用語である。
なお、本明細書中に記載されるアミノ酸配列は、常に左側がN末端側であり右側がC末端側である。
本明細書において所定のアミノ酸配列に対して「改変アミノ酸配列」とは、当該所定のアミノ酸配列が有する機能(例えばエクソソーム誘導性や細胞膜透過性能)を損なうことなく、1個から数個(典型的には9個以下、好ましくは5個以下)のアミノ酸残基、例えば、1個、2個または3個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加(挿入)されて形成されたアミノ酸配列をいう。例えば、1個、2個又は3個のアミノ酸残基が保守的に置換したいわゆる同類置換(conservative amino acid replacement)によって生じた配列(例えば塩基性アミノ酸残基が別の塩基性アミノ酸残基に置換した配列:例えばリジン残基とアルギニン残基との相互置換)、あるいは、所定のアミノ酸配列について1個、2個または3個のアミノ酸残基が付加(挿入)したもしくは欠失した配列等は、本明細書でいうところの改変アミノ酸配列に包含される典型例である。したがって、ここで開示される人工軽量化エクソソーム生産方法で用いられる、エクソソーム誘導性を有するペプチドには、各配列番号のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列で構成される合成ペプチドに加え、各配列番号のアミノ酸配列において1個、2個または3個のアミノ酸残基が置換(例えば、上記の同類置換)、欠失または付加された改変アミノ酸配列であって、同様にエクソソーム誘導性を示すアミノ酸配列からなる合成ペプチドを包含する。
培養細胞としては、通常入手可能な(典型的には市販されている)セルライン、例えば、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物由来の培養腫瘍細胞株が挙げられる。例えば、子宮がん、卵巣がん、および乳がん等の培養腫瘍細胞を使用することができ、ヒト子宮頸がん細胞由来のHeLa細胞を好適に使用し得る。
培養細胞の培地を構成する材料は、使用する培養細胞の種類に応じて従来から推奨される培地構成に準じればよく、本発明の実施にあたって特に制限はない。例えば、α-MEM、DMEM、MEM等の市販される培地に、胎児ウシ血清(fetal bovine serum:FBS)等の血清ならびに必要に応じて抗生物質等の成分を添加して調製された培地を使用することができる。ここで、高純度の人工軽量化エクソソーム(iLE)を回収するという観点から、血清由来動物のネイティブなエクソソームが混入していない血清含有培地を使用することが好ましい。
培養細胞に対してiLE誘導合成ペプチドを供給する方法としては、有効な適当量のiLE誘導合成ペプチドを、培養工程のいずれかの段階(例えば、培養開始と同時、培養開始後初期の段階、または所定の期間培養(増殖)や継代を行った後)で培地に添加するとよい。
添加量および添加の回数は、培養細胞の種類、形態(例えば通常のセルラインを使用しているか或いは採取した組織その他のプライマリーカルチャーを使用しているか)、細胞密度(培養開始時の細胞密度)、継代数、培養条件、培地の種類、等の条件によって異なり得るため特に限定されない。有効量として、培地中のiLE誘導合成ペプチド濃度が、概ね0.5μM以上40μM以下の範囲内、好ましくは1μM以上20μM以下(例えば2.5μM以上10μM以下)の範囲内となるように、1回、2回またはそれ以上の複数回添加することが好ましい。
培養期間は、特に限定しないが、夾雑物の少ない十分量の人工軽量化エクソソーム(iLE)を効率的に回収するという観点から、CO2リッチ(例えば5%程度のCO2濃度)雰囲気中、37℃前後の温度条件で2~5日程度の培養期間であることが好ましい。
(1)S1PR1のN末端から2番目のTM領域を構成するアミノ酸配列(以下、「S1PR1-TM2配列」ともいう。)、または、該アミノ酸配列について1個、2個または3個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加された改変アミノ酸配列のいずれかからなるエクソソーム誘導性ペプチド配列、および、
(2)細胞膜透過性ペプチド(CPP)として機能するアミノ酸配列(CPP配列)、
をともに備えることで特徴付けられるペプチドである。
S1PR1は、典型的には382程度のアミノ酸残基で構成されるGタンパク質共役型受容体であり、S1Pと結合してがん細胞の増殖性や運動性の制御に関与するタンパク質である(上記非特許文献1))。
しかしながら、S1PR1-TM2配列がエクソソーム誘導性を有することは見出されていなかった。かかるS1PR1-TM2配列を合成し、該配列にCPPを付加することによって人為的に製造された合成ペプチドが得られ、該合成ペプチドを使用することにより、培養細胞においてエクソソームの産生が増加すること(即ち、エクソソーム誘導性)、また、該産生されたエクソソームが、含有するネイティブなタンパク質の含有量が低減している人工軽量化エクソソーム(iLE)主体であることは、本願出願当時、全く想定されていないことであった。
配列番号1に、S1PR1-TM2配列を示す。かかる配列は、具体的にはヒト、マウス、ラット、ウシ、ネコ、アカゲザル由来の配列である。これら動物種のS1PR1-TM2配列はすべて共通している。
配列番号2のアミノ酸配列は、FGF2(塩基性線維芽細胞増殖因子)由来の合計14アミノ酸残基から成るNoLS(核小体局在シグナル:Nucleolar localization signal)に対応する。
配列番号3のアミノ酸配列は、核小体タンパク質の1種(ApLLP)由来の合計18アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号4のアミノ酸配列は、HSV-1(単純ヘルペスウイルス タイプ1)のタンパク質(γ(1)34.5)由来の合計16アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号5のアミノ酸配列は、HIC(human I-mfa domain-containing protein)のp40タンパク質由来の合計19アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号6のアミノ酸配列は、MDV(Marek病ウイルス)のMEQタンパク質由来の合計16アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号7のアミノ酸配列は、アポトーシスを抑制するタンパク質であるSurvivin- deltaEx3由来の合計17アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号8のアミノ酸配列は、血管増殖因子であるAngiogenin由来の合計7アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号9のアミノ酸配列は、核リンタンパク質であってp53腫瘍抑制タンパク質と複合体を形成するMDM2由来の合計8アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号10のアミノ酸配列は、ベータノダウイルスのタンパク質であるGGNNVα由来の合計9アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号11のアミノ酸配列は、NF-κB誘導性キナーゼ(NIK)由来の合計7アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号12のアミノ酸配列は、Nuclear VCP-like protein由来の合計15アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号13のアミノ酸配列は、核小体タンパク質であるp120由来の合計18アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号14のアミノ酸配列は、HVS(ヘルペスウイルスsaimiri)のORF57タンパク質由来の合計14アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号15のアミノ酸配列は、細胞内情報伝達に関与するプロテインキナーゼの1種であるヒト内皮細胞に存在するLIMキナーゼ2(LIM Kinase 2)の第491番目のアミノ酸残基から第503番目のアミノ酸残基までの合計13アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号16のアミノ酸配列は、IBV(トリ伝染性気管支炎ウイルス:avian infectious bronchitis virus)のNタンパク質(nucleocapsid protein)に含まれる合計8アミノ酸残基から成るNoLSに対応する。
配列番号17のアミノ酸配列は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス:Human Immunodeficiency Virus)のTATに含まれるタンパク質導入ドメイン由来の合計9アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
配列番号18のアミノ酸配列は、上記TATを改変したタンパク質導入ドメイン(PTD4)の合計11アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
配列番号19のアミノ酸配列は、ショウジョウバエ(Drosophila)の変異体であるAntennapediaのANT由来の合計18アミノ酸配列から成る膜透過性モチーフに対応する。
これらのうち、特にNoLSやTATに関連するアミノ酸配列(又はその改変アミノ酸配列)が好ましい。例えば、配列番号15や配列番号16に示すようなNoLS関連のCPP配列、或いは配列番号17~19のTATやANT関連のCPP配列を好適に用いることができる。
(1)エクソソーム誘導性ペプチド配列、および、
(2)CPP配列、を備えておればよく、エクソソーム誘導性ペプチド配列とCPP配列のいずれが相対的にN末端側(C末端側)に配置されていてもよい。
エクソソーム誘導性ペプチド配列と、CPP配列とが、実質的に隣接して配置されていることが好ましく、具体的には、例えば、CPP配列は、エクソソーム誘導性ペプチド配列のN末端側あるいはC末端側に、直接的に配列していることが好ましい。あるいは、2つの配列をつなぐリンカーとして機能するアミノ酸残基は、10個以下(より好ましくは5個以下、例えば1個か2個のアミノ酸残基)が好ましい。
合成ペプチドは、ペプチド鎖を構成する全アミノ酸残基数が100以下が適当であり、80以下が好ましく、70以下(例えば30前後から50前後程度のペプチド鎖)が好ましい。このような鎖長の短いペプチドは、化学合成が容易であり、容易に合成することができる。特に限定されるものではないが、免疫原(抗原)になり難いという観点から直鎖状又はヘリックス状のものが好ましい。このような形状のペプチドはエピトープを構成し難い。
合成ペプチドは、市販のペプチド合成機を用いた固相合成法により、所望するアミノ酸配列、修飾(C末端アミド化等)部分を有するペプチド鎖を合成することができる。
あるいは、遺伝子工学的手法等を採用することによって、合成ペプチドを合成してもよい。かかる方法自体は特に本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
培養液中からエクソソームを回収する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、従来からよく行われている超遠心分離法(例えば、Thery C., Curr. Protoc. Cell Biol. (2006) Chapter 3:Unit 3.22.参照)により、エクソソームを単離、回収することができる。
あるいはまた、免疫沈降法、FACS法、限外濾過法、ゲル濾過法、フィルター法、HPLC法、ポリマーやビーズ等に吸着させる方法等によって、培養液中からエクソソームを単離、回収することができる。市販のエクソソーム単離用試薬(キット)を採用して、エクソソームを単離、回収してもよい。例えば、コスモ・バイオ社等から販売されているエクソソーム単離キットを購入し、使用することで所望するエクソソームを単離、回収することができる。
好ましくは、エクソソーム画分のエクソソーム量を、該エクソソーム画分中のエクソソームの粒子数N(個/mL)を、市販のナノ粒子解析装置を用いて計測することができる。具体的には、例えば、NanoSight LM10(Malvern Panalytical社)等を好適に用いることができる。
解析工程は、具体的には、例えば、エクソソーム画分中に含まれる全タンパク質量P(μg/mL)を測定することを含む。タンパク質量の測定方法としては、従来公知の方法(例えば、BCAアッセイ等)を特に制限なく使用することができる。これにより、以下の式(1)に基づいてエクソソーム一粒子当たりの平均タンパク質量EP(μg)を算出することができる。
EP=P/N (1)
ここで、エクソソーム一粒子当たりの平均タンパク質量が、8x10-8μg未満であるエクソソーム画分に含まれるエクソソームを、人工軽量化エクソソーム(iLE)であると判別することができる。
表1に示すサンプルペプチドを市販のペプチド合成機を用いて製造した。具体的には、ヒトS1PR1のN末端から2番目のTM領域のアミノ酸配列(配列番号1)のC末端側に、CPP配列として配列番号15のアミノ酸配列(LIMキナーゼ2のNoLS)を含む合成ペプチドをサンプルペプチド(配列番号20)として製造した。
合成したサンプルペプチドは、DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶かし、サンプルペプチドのストック液(濃度2.5mM)を調製した。
以下に説明するプロセスにより、実施例、比較例1、比較例2に係るエクソソームを生産し、回収した。
<実施例>
具体的には、供試培養細胞として現在市場において入手可能な、ヒト子宮頸がん細胞株(HeLa細胞)を使用した。
HeLa細胞の培養には、10%のFBSを含むα-MEM培地(Gibco社製品)を使用した。なお、FBSとしては、血清由来動物のネイティブなエクソソームを含有しないFBSを使用した。
試験例2の詳細は以下のとおりである。
次いで、5μMのサンプルペプチドを懸濁させた10%FBS含有α-MEM培地にて、5%CO2条件下、37℃で48時間培養した。
その後、培養液を回収して超遠心分離に供し、エクソソームを単離し、回収した。具体的には、4℃条件下、以下のとおり連続的に遠心分離を行った。即ち、回収した培養液を300xgで10分間の遠心分離を行い、遠心上清を回収し、2,000xgで10分間の遠心分離を行った。遠心上清を回収し、10,000xgで30分間の遠心分離を行った(前処理)。遠心上清を回収し、110,000xgで70分間の超遠心分離を2回行った。
そして、上記超遠心分離を行った後、沈殿物をリン酸緩衝液(phosphate buffered saline;PBS)に懸濁した。以上の処理により、HeLa細胞由来のエクソソーム画分を回収した。
HeLa細胞の培養を、5μMの従来公知のスフィンゴシンキナーゼ阻害剤を懸濁させた10%FBS含有α-MEM培地で行ったこと以外は、実施例に係るプロセスと同じプロセスにより、比較例1のエクソソーム画分を回収した。
<比較例2>
HeLa細胞の培養を10%FBS含有α-MEM培地で行ったこと以外は、実施例に係るプロセスと同じプロセスにより、比較例2のエクソソーム画分を回収した。
上記実施例のエクソソームについて、透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)を用いて観察を行った。代表的な結果として、図1に実施例のエクソソームのTEM観察像を示した。
上記生産された3種類のエクソソーム画分について、エクソソーム量をそれぞれ算出した。具体的には、NanoSight LM10(Malvern Panalytical社)を用いて、上記エクソソーム画分中のエクソソームの粒子数を計測し、エクソソーム量を算出した。
結果を表2および図2に示す。
上記生産された3種類のエクソソームに含有されるタンパク質量をそれぞれ測定した。具体的には、Pierce(登録商標)BCA Protein Assay Kit(BCAタンパク質アッセイキット:Thermo Fisher Scientific社)を用いて、上記エクソソーム画分中の全タンパク質濃度を算出し、式(1)によりエクソソーム一粒子当たりのタンパク質量を算出した。
結果を表3および図3に示す。
Claims (7)
- 人工軽量化エクソソーム(induced Light-weight Exosome;iLE)を生産する方法であって、
所定の培養細胞を含む細胞培養物を用意する工程;
前記細胞培養物中に、人為的に製造した所定の合成ペプチドを少なくとも一回供給し、該細胞培養物を所定期間培養する工程;および
前記培養後、前記培養細胞が産生したエクソソームを前記培養物中から回収する工程;
を包含し、
ここで、前記合成ペプチドは、以下の(1)および(2)に示すアミノ酸配列:
(1)配列番号1に示すアミノ酸配列であるエクソソーム誘導性ペプチド配列;および
(2)細胞膜透過性ペプチド(cell penetrating peptide:CPP)として機能するアミノ酸配列(CPP配列);
をともに備え、かつ、総アミノ酸残基数が100以下である、生産方法。 - 前記CPP配列は、ポリアルギニン、または、配列番号2~19のいずれかに示すアミノ酸配列である、請求項1に記載の生産方法。
- 前記CPP配列は、前記エクソソーム誘導性ペプチド配列のN末端側あるいはC末端側に、直接的に隣接して、あるいはリンカーとして機能するアミノ酸残基10個以下を介して配置される、請求項1または2に記載の生産方法。
- 前記合成ペプチドは、配列番号20に示すアミノ酸配列を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の生産方法。
- 前記回収工程において、前記培養細胞が産生したエクソソームを、前記培養物中から超遠心分離法によってエクソソーム画分として単離して回収する、請求項1~4のいずれか一項に記載の生産方法。
- 前記回収工程の後、前記エクソソーム画分の全タンパク質量を解析する工程をさらに包含し、該解析工程において、前記全タンパク質量から算出されるエクソソーム一粒子当たりの平均タンパク質量が所定量未満であるエクソソーム画分に含まれるエクソソームを、人工軽量化エクソソーム(iLE)であると判別する、請求項5に記載の生産方法。
- 前記エクソソームの一粒子当たりの平均タンパク質量が、8×10-8μg未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の生産方法。
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CN112029705B (zh) * | 2020-08-31 | 2021-10-08 | 中国医学科学院微循环研究所 | 促内皮细胞产外泌体的方法、外泌体制剂和应用 |
Citations (2)
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2020
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JP2019156786A (ja) | 2018-03-15 | 2019-09-19 | 株式会社ダイセル | エクソソーム産生促進剤 |
Non-Patent Citations (1)
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中村 俊一,エクソソーム産生機構、脂質,膜,2017年09月01日,Vol. 42, No. 5,p. 170-174 |
Also Published As
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