JP7354996B2 - 鉄基合金焼結体及びその製造方法 - Google Patents

鉄基合金焼結体及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7354996B2
JP7354996B2 JP2020199130A JP2020199130A JP7354996B2 JP 7354996 B2 JP7354996 B2 JP 7354996B2 JP 2020199130 A JP2020199130 A JP 2020199130A JP 2020199130 A JP2020199130 A JP 2020199130A JP 7354996 B2 JP7354996 B2 JP 7354996B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
mass
powder
iron
sintered body
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020199130A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2022086865A (ja
Inventor
菜穂 那須
康佑 芦塚
拓也 高下
繁 宇波
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2020199130A priority Critical patent/JP7354996B2/ja
Publication of JP2022086865A publication Critical patent/JP2022086865A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7354996B2 publication Critical patent/JP7354996B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/25Process efficiency

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)

Description

本発明は、鉄基合金焼結体及びその製造方法に関する。
粉末冶金技術によれば、複雑な形状の部品を、製品形状に極めて近い形状(いわゆるニアネット形状)で、しかも高い寸法精度で製造することができ、部品の作製において大幅な切削コストの低減を図ることができる。そのため、粉末冶金製品は、各種の機械用部品として、多方面に利用されている。さらに、部品の小型化、軽量化及び複雑化に対応するため、粉末冶金技術に対する要求は一段と高まってきている。
上記を背景として、高強度焼結部品を製造する技術が開発されてきた。
例えば、特許文献1では、高強度化のために、焼結後の焼入れにおいて、冷却速度:2℃/sec以上の条件で急冷する方法が提案されている。また、この文献には、急冷により得られる組織は焼入れ組織であり、急冷後に焼き戻しを行うことで、高強度となることが示されている。
特許文献2、3では、焼結体の機械的特性を向上させるために、焼結後に浸炭、焼入れ、焼戻しなどの熱処理を行う方法が提案されている。これらの文献には、焼結後に浸炭、焼入れ、焼戻しなどの追加熱処理を施すことで、焼結ままよりも、高強度となることが示されている。
特許文献4では、焼入れ性元素を合金化した合金鋼粉を使用することで、焼結体の高強度化が可能となる方法が提案されている。
特開2013-204112号公報 特開2016-145418号公報 特開2002-155303号公報 特表2010-529302号公報
しかしながら、上記特許文献1~4に記載されている従来の技術には、以下に述べる問題があった。
特許文献1は、急冷するための付帯設備が必要でコストがかかる上、急冷によって得られる焼入れ組織が硬くて脆いため、高強度化のため、焼き戻しを必要とするという問題があった。
特許文献2、3は、高強度化のため、浸炭・焼入れ・焼戻しといった追加熱処理が必要であり、そのための熱処理装置が別途用意しなければならず、また、製造プロセスも増えるなどの問題があった。
特許文献4は、Niを必須とするため、コスト高であり、加えて供給不安や価格変動が大きいというデメリットがあった。
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであって、従来から適用されている浸炭・焼入れ・焼戻しを実施しなくても、焼結ままで高強度かつ高靭性を有する鉄基合金焼結体を、その製造方法とともに提供することを目的とする。ここで、焼結ままとは、焼結後、浸炭・焼入れ・焼戻しなどのさらなる熱処理を施さない状態をいう。
本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]成分組成が、
Mo:0.5質量%以上2.0質量%以下、
Cu:1.8質量%以上10.2質量%以下、及び
C: 0.2質量%以上1.2質量%以下を含み、
残部がFeと不可避不純物からなり、
ミクロ組織が、下部ベイナイト、下部ベイナイトとマルテンサイト、下部ベイナイトと上部ベイナイト又は下部ベイナイトと上部ベイナイトとマルテンサイトからなり、
前記ミクロ組織が、0から100Hv刻みで1000Hvまで階級を設けたビッカース硬さの相対度数分布において、400Hv以上500Hv未満、500Hv以上600Hv未満、600Hv以上700Hv未満、700Hv以上800Hv未満又は800Hv以上900Hv未満のいずれかの階級に最も大きい相対度数を有し、該最も大きい相対度数が0.50超である、鉄基合金焼結体。
[2]粉末冶金用鉄基混合粉を成形し、焼結した後、冷却する工程を含む、鉄基合金焼結体の製造方法であって、
前記粉末冶金用鉄基混合粉が、MoとCuを合金化した合金鋼粉、Cu粉及び黒鉛粉を含み、
前記粉末冶金用鉄基混合粉の成分組成が、
Mo:0.5質量%以上2.0質量%以下、
Cu:1.8質量%以上10.2質量%以下、及び
C:0.2質量%以上1.2質量%以下を含み
残部がFe及び不可避的不純物からなり、
前記粉末冶金用鉄基混合粉中のCu粉の量が0.3質量%以上であり、
前記冷却する工程が、焼結温度から200℃以上350℃以下の温度まで10℃/分以上40℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、該温度で30分以上120分以下保持することを含む、
鉄基合金焼結体の製造方法。
[3]前記粉末冶金用鉄基混合粉が、さらに潤滑剤を含む、[2]の鉄基合金焼結体の製造方法。
本発明によれば、従来から適用されている浸炭・焼入れ・焼戻しを実施しなくても、焼結ままで高強度かつ高靭性を有する鉄基合金焼結体が、その製造方法が提供される。
本発明の製造方法は、急冷するための付帯設備を用いることなく、また、焼結後の追加熱処理を施すことなく、高強度かつ高靭性の鉄基合金焼結体が得られるため、有利である。また、本発明の鉄基合金焼結体は、Niを含まずに、高強度かつ高靭性を有するため、経済的な貢献も大きい。
<鉄基焼結体の製造方法>
本発明の一態様である鉄基合金焼結体の製造方法は、粉末冶金用鉄基混合粉を成形し、焼結した後、冷却する工程を含む。
[粉末冶金用鉄基混合粉]
本発明の製造方法に用いられる粉末冶金用鉄基混合粉(以下、「混合粉」ともいう。)は、MoとCuを合金化した合金鋼粉、Cu粉及び黒鉛粉を含み、
前記粉末冶金用鉄基混合粉の成分組成が、
Mo:0.5質量%以上2.0質量%以下、
Cu:1.8質量%以上10.2質量%以下、及び
C:0.2質量%以上1.2質量%以下を含み
残部がFe及び不可避的不純物からなり、
前記粉末冶金用鉄基混合粉中のCu粉の量が0.3質量%以上である。
ここで、「鉄基」とは、Feを50質量%以上含有することをいう。
(MoとCuを合金化した合金鋼粉)
MoとCuを合金化した合金鋼粉(以下、「合金鋼粉」ともいう。)は、MoとCuを必須成分として含有する鉄基合金からなる。以下、合金鋼粉の成分組成は、合金鋼粉100質量%に対するものである。
合金鋼粉の合金化元素にMoとCuを選んだ理由について説明する。
焼結ままで十分な引張強度を有するためには、焼入れ性向上元素の合金化が必要である。
焼入れ性向上元素が有する焼入れ性向上効果は、高い方から順に、Mn>Mo>P>Cr>Si>Ni>Cu>Sである。
さらに、一般的な合金鋼粉の製造では、アトマイズ法が採用されることが多く、アトマイズ法で製造した粉末には、熱処理(仕上還元)が施される。上記の焼入れ性向上元素のうち、仕上還元の一般的な条件である950℃、H雰囲気における還元されやすさは、高い方から順に、Mo>Cu>S>Niである。
MnとCrは、仕上還元の一般的な条件である950℃、H雰囲気で還元することができない。
これらの点から、Mo及びCuを合金化元素として選んだ。
MoとCuを合金化した合金鋼粉としては、Mo:0.5質量%以上2.0質量%以下、Cu:1.5質量%以上10.0質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物である合金鋼粉が好ましい。
Mo:0.5質量%以上2.0質量%以下
Moは、焼入れ性向上元素であり、焼入れ性向上効果を発揮させるために、Mo含有量は0.5質量%以上とすることができ、好ましくは0.7質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上である。一方、Mo含有量が大きくなりすぎると、高合金化によりプレス時における合金鋼粉の圧縮性が低下し、成形体密度が低下して、焼入れ性向上による強度上昇が、密度低下による強度低下に打ち消され、結果的に焼結体の強度が低下する。このような事態を回避するため、Mo含有量は2.0質量%以下とすることができ、好ましくは1.5質量%以下である。
Cu:1.5質量%以上10.0質量%以下
Cuは、焼入れ性向上元素であり、焼入れ性向上効果を十分に発揮させるため、Cu含有量は1.5質量%以上とすることができ、好ましくは2.0質量%以上であり、より好ましくは3.0質量%以上である。一方、Cu含有量が大きくなりすぎると、高合金化によりプレス時における合金鋼粉の圧縮性が低下し、成形体密度が低下して、焼入れ性向上による強度上昇が、密度低下による強度低下に打ち消され、結果的に焼結体の強度が低下する。このような事態を回避するため、Cu含有量は10.0質量%以下とすることができ、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下である。
合金鋼粉は、上記のMo及びCu以外は、Fe及び不可避的不純物からなる。不可避的不純物とは、製造工程等で不可避的に混入する不純物であり、例えば、C、S、O、N、Mn、Crからなる群より選択される1又は2以上を含有することができる。不可避的不純物としての前記元素の含有量は特に限定されないが、それぞれ以下の範囲であることが好ましい。
C:0.02質量%以下
O:0.3質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下
N:0.004質量%以下
S:0.03質量%以下
Mn:0.2質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下
Cr:0.2質量%以下、より好ましくは0.10質量%以下
合金鋼粉の平均粒子径が小さくなるほど成形時にスプリングバックが増加し、成形体に割れが生じるため、平均粒子径は、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。また、平均粒子径が大きくなるほど焼結体の気孔が大きくなり、強度が低下するため、平均粒子径は120μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。本明細書において、平均粒子径は、重量累積分布のメジアン径D50をいい、JIS Z 8801-1に規定される篩を用いて粒度分布を測定し、得られた粒度分布から積算粒度分布を作成したときに、篩上及び篩下の重量が50%となる粒子径を求めたときの値である。合金鋼粉の最大粒子径は120μmが好ましい。
合金鋼粉の製造方法は、特に限定されず、任意の方法で製造することができる。例えば、合金鋼粉は、アトマイズ法によって製造されるアトマイズ粉であることができ、中でも製造コストが低く、大量生産が容易な水アトマイズ法によって製造される水アトマイズ粉であることが好ましい。アトマイズ法で合金鋼粉を製造する場合、例えば、所定の成分組成を有するように調整された溶鋼をアトマイズして粉末とし、必要に応じて還元及び/又は分級して合金鋼粉を得ることができる。
(Cu粉)
Cu粉は、焼入れ性向上により、焼結体の強度を高める効果を有し、焼結時に溶融して液相となり、合金鋼粉の粒子を互いに固着させる作用も有している。この点から、粉末冶金用鉄基混合粉中のCu粉の量は0.3質量%以上であり、好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上とする。一方、Cu粉の量が4.0質量%を超えると、Cuの膨張による焼結密度低下により焼結体の引張強度が低下する。したがって、Cu粉の量は4.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下とする。
Cu粉の平均粒子径は、粒度の大きいCu粉が焼結時に溶融して、焼結体の体積を膨張させ、焼結体の密度の低下から回避する点から、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。Cu粉の平均粒子径の下限に特に制限はないが、製造コスト低減のために0.5μm以上とすることが好ましい。
(黒鉛粉)
黒鉛粉を構成するCは、焼結時にFeに固溶し、固溶強化、焼入れ性向上により、焼結体の強度をさらに向上させる。この点から、粉末冶金用鉄基混合粉中の黒鉛粉の量は0.2質量%以上であり、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上とする。一方、黒鉛粉の量が1.2質量%を超えると過共析になるため、セメンタイトが多く析出し、かえって焼結体の強度が低下する。そのため、黒鉛粉の量は1.2質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8%質量以下とする。
黒鉛粉の平均粒子径は1μm以上50μm以下とすることが好ましい。
(混合粉)
混合粉は、成分組成が、
Mo:0.5質量%以上2.0質量%以下、
Cu:1.8質量%以上10.2質量%以下、及び
C:0.2質量%以上1.2質量%以下を含み
残部がFe及び不可避的不純物となるように、合金鋼粉、Cu粉及び黒鉛粉を配合したものであることができる。ただし、混合粉中のCu粉の量は0.3質量%以上とする。
成分組成におけるCuは、3.5質量%以上が好ましく、また、8.0質量%以下が好ましい。Cuは、Cu粉又はMoとCuを合金化した合金鋼粉に由来するものであることができる。
成分組成におけるMoは、0.7質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、また、1.5質量%以下がより好ましい。
成分組成におけるCは、0.4質量%以上がより好ましく、また、1.0質量%以下がより好ましい。Cは、黒鉛粉に由来するものであることができる。
混合粉における不可避的不純物は、例えば、C、S、O、N、Mn、Crからなる群より選択される1又は2以上を含有することができ、不可避的不純物としての前記元素の含有量は特に限定されないが、それぞれ以下の範囲であることが好ましい。
C:0.02質量%以下
O:0.3質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下
N:0.004質量%以下
S:0.03質量%以下
Mn:0.2質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下
Cr:0.2質量%以下、より好ましくは0.10質量%以下
(潤滑剤)
粉末冶金用鉄基混合粉は、さらに潤滑剤を含有することができる。潤滑剤を含有させることで、成形体の金型からの抜出を容易にすることができる。潤滑剤は、特に限定されない。例えば、有機潤滑剤を使用することができ、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアミド及び金属石鹸からなる群より選択される1又は2以上を用いることができる。金属石鹸(例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛)、アミド系潤滑剤(例えば、エチレンビスステアリン酸アミド)等が好ましい。
潤滑剤の配合量は、粉末冶金用鉄基混合粉100質量部に対して、0.1質量部以上1.2質量部以下が好ましい。0.1質量部以上であれば、成形体の金型からの抜出を十分容易にすることができ、一方、1.2質量部以下であれば、混合粉全体に占める非金属の割合が多くなって焼結体の引張強度が低下することを回避できる。混合粉は、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤等を含有することができる。
[成形工程]
本発明の鉄基合金焼結体の製造方法は、粉末冶金用鉄基混合粉を成形する工程を含む。潤滑剤を含有する混合粉を用いることが好ましい。
成形は、金型に混合粉を充填して加圧することにより行うことができる。成形の際の圧力は、400MPa以上1000MPa以下が好ましい。400MPa未満では、成形密度が低く、それに伴い焼結体の密度が低下し、引張強度が低下し得る。一方、1000MPa超では、金型への負担が増え、金型寿命が短くなり、経済的な負荷が増加する。
成形の際の温度は、常温(約20℃)以上160℃以下が好ましい。常温を下回る温度とするには、そのような温度に冷却する設備が必要になる一方、温度の上昇と共に成形密度は増加するため、常温を下回る温度で成形するメリットが薄い。160℃超では、付帯設備が必要となり、経済的な負荷が増える。
[焼結工程]
本発明の鉄基合金焼結体の製造方法は、上記の成形工程により得られた成形体を焼結する工程を含む。焼結の際の焼結温度は、1100℃以上1300℃以下が好ましい。1100℃未満であると、焼結が十分に進行せず、引張強度が低下し得る。1300℃超であると、焼結体の引張強度は増加するが、製造コストの増加を招く。
焼結時間は、15分以上50分以下が好ましい。15分未満であると、焼結が十分に行われず、焼結不足となり、引張強度が低下し得る。50分以上であると、焼結に必要な製造コストの増加が顕著となる。
[冷却工程]
本発明の鉄基合金焼結体の製造方法における、焼結後の冷却工程は、焼結ままで高強度かつ高靭性な焼結体を得る上で重要である。冷却工程は、焼結温度から200℃以上350℃以下の温度まで10℃/分以上40℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、該温度で30分以上120分以下保持することを含む。
焼結後の冷却における平均冷却速度は、10℃/分未満では、十分に焼入れを行うことができず、引張強度が低下し得、また、冷却速度40℃/分超では、冷却速度を促進する付帯設備が必要となり、製造コストが増加する。そのため、焼結後の冷却における平均冷却速度は、10℃/分以上40℃/分以下とする。平均冷却速度は、20℃/分以上35℃/分以下が好ましい。
冷却工程では、焼結温度から200℃以上350℃以下の温度まで冷却し、その温度で30分以上120分以下の保持を行う。保持温度が200℃未満又は350℃超では、後述する所定のミクロ組織が得られず、高強度と高靭性の両立が困難となる。また、鉄基焼結合金体について、ビッカース硬さの測定を行った場合、後述する所定の相対度数分布を得ることが困難となる。そのため、保持温度は200℃以上350℃以下の温度とし、好ましくは200℃以上250℃以下の温度である。
保持時間が30分未満では、所定のミクロ組織への変態が不十分であり、高強度と高靭性の両立が困難となる。一方、120分超では、所定のミクロ組織への変態が完了しているため、これ以上の保持をする意義に乏しい。そのため、保持時間は30分以上120分以下とし、好ましくは60分以上120分以下である。
保持後の冷却は特に限定されず、例えば空冷で常温まで冷却することができる。
焼結及びその後の冷却工程において、雰囲気は特に限定されないが、RXガス(プロパン変性ガス)雰囲気、水素を含む窒素ガス雰囲気、アンモニア分解ガス雰囲気又は真空中が好ましい。
本発明の製造方法によれば、焼結ままで高強度かつ高靭性を有する鉄基合金焼結体を得ることができる。浸炭、焼入れ、焼戻し等の処理は実施してもよいが、製造コストの抑制等の点から実施しないことが好ましい。
[鉄基合金焼結体]
本発明の別態様である鉄基合金焼結体は、
成分組成が、
Mo:0.5質量%以上2.0質量%以下、
Cu:1.8質量%以上10.2質量%以下、及び
C: 0.2質量%以上1.2質量%以下を含み、
残部がFeと不可避不純物からなり、
ミクロ組織が、下部ベイナイト、下部ベイナイトと上部ベイナイト、下部ベイナイトとマルテンサイト又は下部ベイナイトと上部ベイナイトとマルテンサイトからなり、
ミクロ組織が、0から100刻みで1000まで階級を設けたビッカース硬さの相対度数分布において、400Hv以上500Hv未満、500Hv以上600Hv未満、600Hv以上700Hv未満、700Hv以上800Hv未満又は800Hv以上900Hv未満のいずれかの階級に最も大きい相対度数を有し、該最も大きい相対度数が0.50超である。このような鉄基合金焼結体は、高強度であり、かつ高靭性を有し、本発明の鉄基合金焼結体の製造方法により得ることができる。
(ミクロ組織)
本発明の鉄基合金焼結体のミクロ組織は、下部ベイナイト、下部ベイナイトと上部ベイナイト、下部ベイナイトとマルテンサイト又は下部ベイナイトと上部ベイナイトとマルテンサイトからなる。このようなミクロ組織を「所定のミクロ組織」という。下部ベイナイトを必須とし、任意で上部ベイナイト及びマルテンサイトの一方又は両方を含む組織とすることにより、強度と靭性の両方の向上を図ることができる。
鉄基焼結体のミクロ組織は、光学顕微鏡を用いた観察によって評価することができる。
(ビッカース硬さの相対度数分布)
本発明の鉄基合金焼結体のミクロ組織は、マイクロビッカース硬度測定の測定値について、0から100刻みで1000まで階級を設けた相対度数分布において、400Hv以上500Hv未満、500Hv以上600Hv未満、600Hv以上700Hv未満、700Hv以上800Hv未満又は800Hv以上900Hv未満のいずれかの階級に最も大きい相対度数を有し、該最も大きい相対度数が0.50超である。このような相対度数分布を「所定の相対度数分布」という。ここで、相対度数分布における0から100刻みで1000までの階級は、100Hv未満、100Hv以上200Hv未満、200Hv以上300Hv未満、300Hv以上400Hv未満、400Hv以上500Hv未満、500Hv以上600Hv未満、600Hv以上700Hv未満、700Hv以上800Hv未満又は800Hv以上900Hv未満、900Hv以上1000Hv未満であり、全階級の度数の合計は1である。
100Hv未満、100Hv以上200Hv未満、200Hv以上300Hv未満、300Hv以上400Hv未満のいずれの階級に最も大きい相対度数を有する場合、軟質なミクロ組織のため、十分な高強度を得ることができない。
一方、900Hv以上1000Hv未満の相対度数が最も大きい場合、硬質なミクロ組織のため、かえって強度が低下する。
引張強度の点から、600Hv以上700Hv未満の階級が、最も大きい相対度数を有することが好ましい。
ビッカース硬さは、マイクロビッカース硬度測定により、以下のようにして求めることができる。
焼結体の断面の中央部に、圧子(対面角136度のダイヤモンド正四角錐)を、押し込み荷重98N、保持時間10秒で打痕する。打痕は気孔から5μm以上離れているものとし、打痕予定位置に気孔が存在する場合は打痕せず、次の打痕予定位置で打痕を行う。
ビッカース硬さの相対度数分布は、以下のようにして得ることができる。
上記のようにして、30点以上についてビッカース硬さの測定を行い、0から100刻みで1000までの階級に属すデータの数により、ビッカース硬さの相対度数分布を得る。
(成分組成)
鉄基焼結体は、成分組成が、
Mo:0.5質量%以上2.0質量%以下、
Cu:1.8質量%以上10.2質量%以下、及び
C:0.2質量%以上1.2質量%以下を含み、
残部がFe及び不可避的不純物である。
成分組成におけるCuは、3.5質量%以上が好ましく、また、8.0質量%以下が好ましい。Cuは、Cu粉又はMoとCuを合金化した合金鋼粉に由来するものであることができる。
成分組成におけるMoは、0.7質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、また、1.5質量%以下がより好ましい。
成分組成におけるCは、0.4質量%以上がより好ましく、また、1.0質量%以下がより好ましい。Cは、黒鉛粉に由来するものであることができる。
混合粉における不可避的不純物は、例えば、C、S、O、N、Mn、Crからなる群より選択される1又は2以上を含有することができ、不可避的不純物としての前記元素の含有量は特に限定されないが、それぞれ以下の範囲であることが好ましい。
C:0.02質量%以下
O:0.3質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下
N:0.004質量%以下
S:0.03質量%以下
Mn:0.2質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下
Cr:0.2質量%以下、より好ましくは0.10質量%以下
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は、本発明の好適な一例を示すものであり、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
Fe-3Cu-1.3Mo合金鋼粉(平均粒子径81μm)97.2質量部に、Cu粉(平均粒子径約25μm)2.0質量部、黒鉛粉(平均粒子径約5μm)0.8質量部を配合し、混合粉とした。
混合粉100質量部に対し、潤滑剤としてエチレンビスステアリン酸アミド(EBS)0.5質量部を添加し、成形体製造用混合粉を得た。
成形体製造用混合粉を、所定形状の金型に装入し、密度が7.0Mg/mと一定になる条件で加圧し、成形体を得た。
得られた成形体を、RXガス(プロパン変性ガス)雰囲気中で、1130℃、20分間の条件で焼結し、表1に示す冷却条件で冷却し、棒状焼結体(長さ:55mm、幅:10mm、厚さ:10mm)及びJIS Z 2550に規定される平板引張試験片を得た。
棒状焼結体及び平板引張試験片を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
平板引張試験片を用いて、焼結体の強度をJIS Z 2550に基づき、引張強度試験で評価した。
棒状焼結体を用いて、焼結体の靭性をJIS Z 2242に基づき、シャルピー衝撃試験で評価した。
棒状焼結体のビッカース硬さを、マイクロビッカース硬度測定により、以下のようにして評価した。
棒状焼結体の中央部を切断して研磨し、断面中央部の6mm×6mmの範囲に対して、上述のようにして、マイクロビッカース硬度測定を実施した。打痕は、0.1mmの一定間隔で行ったが、打痕予定位置が気孔の場合は打痕を行わず、次の打痕予定位置を打痕そた。合計30点のビッカース硬さを測定し、0から100刻みで1000までの階級の属すデータの数により、ビッカース硬さの相対度数分布を得た。
棒状焼結体の中央部を切断して研磨し、断面を光学顕微鏡(倍率40倍)によって観察し、ミクロ組織を構成する析出相を評価した。
Figure 0007354996000001
表1より、発明例は、所定のミクロ組織及び所定の相対度数分布を有しており、引張強度及び衝撃値が高く、高強度及び高靭性を有することがわかる。
一方、焼結体を製造する際の冷却条件が本発明の範囲外の比較例は、所定のミクロ組織及び所定の相対度数分布の少なくともいずれかを有さず、引張強度及び衝撃値は、発明例に及ばなかった。

Claims (3)

  1. 成分組成が、
    Mo:0.5質量%以上2.0質量%以下、
    Cu:1.8質量%以上10.2質量%以下、及び
    C: 0.2質量%以上1.2質量%以下を含み、
    残部がFeと不可避不純物からなり、
    ミクロ組織が、下部ベイナイト、下部ベイナイトと上部ベイナイト、下部ベイナイトとマルテンサイト又は下部ベイナイトと上部ベイナイトとマルテンサイトからなり、
    前記ミクロ組織が、0から100Hv刻みで1000Hvまで階級を設けたビッカース硬さの相対度数分布において、400Hv以上500Hv未満、500Hv以上600Hv未満、600Hv以上700Hv未満、700Hv以上800Hv未満又は800Hv以上900Hv未満のいずれかの階級に最も大きい相対度数を有し、該最も大きい相対度数が0.50超である、鉄基合金焼結体。
  2. 粉末冶金用鉄基混合粉を成形し、焼結した後、冷却する工程を含む、鉄基合金焼結体の製造方法であって、
    前記粉末冶金用鉄基混合粉が、MoとCuを合金化した合金鋼粉、Cu粉及び黒鉛粉を含み、
    前記粉末冶金用鉄基混合粉の成分組成が、
    Mo:0.5質量%以上2.0質量%以下、
    Cu:1.8質量%以上10.2質量%以下、及び
    C:0.2質量%以上1.2質量%以下を含み
    残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    前記粉末冶金用鉄基混合粉中のCu粉の量が0.3質量%以上であり、
    前記冷却する工程が、焼結温度から200℃以上350℃以下の温度まで10℃/分以
    上40℃/分以下の平均冷却速度で冷却し、該温度で30分以上120分以下保持することを含み、
    前記鉄基合金焼結体のミクロ組織が、下部ベイナイト、下部ベイナイトと上部ベイナイト、下部ベイナイトとマルテンサイト又は下部ベイナイトと上部ベイナイトとマルテンサイトからなり、
    前記ミクロ組織が、0から100Hv刻みで1000Hvまで階級を設けたビッカース硬さの相対度数分布において、400Hv以上500Hv未満、500Hv以上600Hv未満、600Hv以上700Hv未満、700Hv以上800Hv未満又は800Hv以上900Hv未満のいずれかの階級に最も大きい相対度数を有し、該最も大きい相対度数が0.50超である、
    鉄基合金焼結体の製造方法。
  3. 前記粉末冶金用鉄基混合粉が、さらに潤滑剤を含む、請求項2記載の鉄基合金焼結体の製造方法。
JP2020199130A 2020-11-30 2020-11-30 鉄基合金焼結体及びその製造方法 Active JP7354996B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020199130A JP7354996B2 (ja) 2020-11-30 2020-11-30 鉄基合金焼結体及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020199130A JP7354996B2 (ja) 2020-11-30 2020-11-30 鉄基合金焼結体及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022086865A JP2022086865A (ja) 2022-06-09
JP7354996B2 true JP7354996B2 (ja) 2023-10-03

Family

ID=81894135

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020199130A Active JP7354996B2 (ja) 2020-11-30 2020-11-30 鉄基合金焼結体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7354996B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN118007029A (zh) * 2024-04-09 2024-05-10 广东美的制冷设备有限公司 用于3d打印注塑模具的铁铜钼合金模具钢及其制备方法和应用

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001316780A (ja) 2000-05-02 2001-11-16 Hitachi Powdered Metals Co Ltd 内燃機関用バルブシートおよびその製造方法
JP2005530037A (ja) 2002-06-14 2005-10-06 ホガナス アクチボラゲット プレアロイ鉄ベース粉及び1種以上の焼結部品の製造方法
JP2014080642A (ja) 2012-10-15 2014-05-08 Sumitomo Denko Shoketsu Gokin Kk 焼結部品の製造方法
JP2016145418A (ja) 2015-01-21 2016-08-12 日立化成株式会社 鉄基焼結合金およびその製造方法
WO2019188833A1 (ja) 2018-03-26 2019-10-03 Jfeスチール株式会社 粉末冶金用合金鋼粉および粉末冶金用鉄基混合粉末

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE3942091C1 (ja) * 1989-12-20 1991-08-14 Etablissement Supervis, Vaduz, Li

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001316780A (ja) 2000-05-02 2001-11-16 Hitachi Powdered Metals Co Ltd 内燃機関用バルブシートおよびその製造方法
JP2005530037A (ja) 2002-06-14 2005-10-06 ホガナス アクチボラゲット プレアロイ鉄ベース粉及び1種以上の焼結部品の製造方法
JP2014080642A (ja) 2012-10-15 2014-05-08 Sumitomo Denko Shoketsu Gokin Kk 焼結部品の製造方法
JP2016145418A (ja) 2015-01-21 2016-08-12 日立化成株式会社 鉄基焼結合金およびその製造方法
WO2019188833A1 (ja) 2018-03-26 2019-10-03 Jfeスチール株式会社 粉末冶金用合金鋼粉および粉末冶金用鉄基混合粉末

Also Published As

Publication number Publication date
JP2022086865A (ja) 2022-06-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20220119927A1 (en) Wear resistant alloy
KR100373169B1 (ko) 고충격인성및내마모성을갖는분말야금냉간공구강및그제조방법
JP2019523821A (ja) プラスチック成形用金型に適した鋼材
JP5958144B2 (ja) 粉末冶金用鉄基混合粉および高強度鉄基焼結体ならびに高強度鉄基焼結体の製造方法
US20080202651A1 (en) Method For Manufacturing High-Density Iron-Based Compacted Body and High-Density Iron-Based Sintered Body
US5641922A (en) Hi-density sintered alloy and spheroidization method for pre-alloyed powders
JP7374269B2 (ja) 焼結部材
JP7354996B2 (ja) 鉄基合金焼結体及びその製造方法
JP5114233B2 (ja) 鉄基焼結合金およびその製造方法
JP6819624B2 (ja) 粉末冶金用鉄基混合粉末およびその製造方法ならびに引張強さと耐衝撃性に優れた焼結体
JP6271310B2 (ja) 鉄基焼結材およびその製造方法
JP7036216B2 (ja) 鉄基合金焼結体及び粉末冶金用鉄基混合粉
EP0835329B1 (en) Hi-density sintered alloy and spheroidization method for pre-alloyed powders
Zhong et al. Development of powder metallurgy high speed steel
JP6743720B2 (ja) 粉末冶金用鉄基混合粉末およびその製造方法ならびに引張強さと耐衝撃性に優れた焼結体
JP2016145418A (ja) 鉄基焼結合金およびその製造方法
JP4301657B2 (ja) 高強度焼結合金鋼の製造方法
JPWO2019188833A1 (ja) 粉末冶金用合金鋼粉および粉末冶金用鉄基混合粉末
KR20200128158A (ko) 분말 야금용 합금 강분 및 분말 야금용 철기 혼합 분말
US20240068074A1 (en) Titanium alloy and methods of manufacture
JP2022074553A (ja) 粉末高速度工具鋼
US20220331860A1 (en) Alloyed steel powder for powder metallurgy, iron-based mixed powder for powder metallurgy, and sintered body
Dobrzański et al. Influence of cooling rates on properties of pre-alloyed PM materials
JP2023121011A (ja) 粉末冶金用鉄基混合粉および鉄基焼結体
CN114318164A (zh) 耐磨耐蚀工具钢

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220628

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230511

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230704

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230804

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230822

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230904

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7354996

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150