型締装置及び射出装置を備える射出成形機は、型締装置により金型を型締めした後、該金型内に形成されるキャビティ(成形品形状を模した空間)内に、射出装置から溶融樹脂を所定圧力で注入(射出充填)して成形品を成形(製造)する装置である。近年では、制御性に優れている点から、型締装置及び射出装置ともサーボモータ等の電動機を駆動源とする全電動射出成形機が主流である。
従来から、サイズや仕様が同じ射出装置を2つあるいはそれ以上配置させる射出成形機が公知である。しかしながら、近年、成形品への要求が多様化する中で、射出成形機に別の射出装置(以後、サブ射出装置と呼称する)を配置させて、射出成形機の射出装置から射出充填して成形する基材成形部に、サブ射出装置から異なる種類や色の樹脂を射出充填させて、該基材成形部に部分的に積層成形する積層成形品の需要が増加している。このような部分的積層により、成形品の意匠性向上や、強度・耐熱性・耐寒性・対候性向上等、あるいは、滑り止め、耐スクラッチ性等の機能付与を図るものである。
このような積層成形品の成形に採用されるサブ射出装置は、射出成形機の射出装置よりも射出充填量が少ない。また、射出充填量が少ない故に、金型内の積層部位までの樹脂流路は短い方が好ましく、金型表面の、積層部分にできるだけ近い箇所に樹脂充填孔(以後、スプルーブッシュと呼称する)を配置させることが好ましい。これらスプルーブッシュに対応して、サブ射出装置は射出成形機や金型等に様々な形態で固定される。その結果、サブ射出装置は、射出成形機の射出装置よりも小型で軽量な全電動射出装置となることが多い。
そして、サブ射出装置の様々な固定形態としては、サブ射出装置一式を金型に固定する形態や、固定盤上面やタイバーに配置させた支持部材に固定する形態がある。しかしながら、サブ射出装置の採用を検討する段階や成形品の試作段階においては、射出成形機自体の大きな機械的改造が不要な簡易的な配置を採用することが多い。
このような、サブ射出装置の従来の簡易的な配置について、図1を参照しながら一例を説明する。図1(a)は、サブ射出装置120が、射出成形機10に取り付けられる金型36の開閉方向と直交する方向に配置され、金型36に溶融樹脂を射出充填させる配置を示す概略平面図である。図1(b)は図1(a)のA-A矢視図であり、サブ射出装置120のサブ射出シリンダ121が後退限位置にある状態を示す。図1(c)は、図1(b)の状態からサブ射出シリンダ121を固定型36aの側面のスプルーブッシュ36dにノズルタッチさせた状態を示す。ノズルタッチについては後述する。
まず、一般的な射出成形機10を説明する。型締装置30は、基台32上に配置される固定盤33及び可動盤34を備える。そして、トグルリンク機構等の型締機構35により、基台32上に移動可能に配置された可動盤34を、基台32に固定された固定盤33に対して接近・離間させて、それぞれの盤に対向して取り付けられた金型36(固定型36a、可動型36b)の開閉(型開閉)を行わせるとともに、型閉じ状態の固定型36a及び可動型36bを所定の力(型締力)で型締めさせる。
また、固定盤33及び図示しない受圧盤(型締機構35がトグルリンク機構の場合はリンクハウジング等と呼称される)は、それぞれの四隅をタイバー37により連結されている。そして、固定盤33及び受圧盤の間に配置される可動盤34は、四隅をタイバー37が貫通し、基台32上の型開閉方向の移動をタイバー37により案内される。
射出装置20は射出シリンダ21及び基台22を備え、射出シリンダ21により、供給された樹脂材料を内部で溶融(可塑化)させると共に、型締めにより一体化された固定型36a及び可動型36b内のキャビティ36c内に、固定型36aのスプルーブッシュ(図示せず)から溶融樹脂を所定の圧力及び充填速度で射出充填する。そのため、射出シリンダ21は、固定盤33に対して固定型36aと逆側に配置される基台22上に、図示しない移動装置を介して設置され、且つ、固定盤33を貫通する開口33aを介して、該移動装置により射出シリンダ21を固定型36aに対して接近・離間できるように構成されている。
この構成により、射出装置20は、射出シリンダ21先端のノズル21aを固定型36aのスプルーブッシュに対して、接近・押圧・離間させることができる。射出シリンダ21のノズル21a先端を固定型36aのスプルーブッシュに所定の力で押圧させることをノズルタッチと呼称する。また、ノズルタッチ状態での射出充填中、射出シリンダ21からキャビティ36c内に溶融樹脂を射出充填することに起因する射出反力は、射出シリンダ21のノズル21aをスプルーブッシュから離間させる方向に作用する。射出シリンダ21(射出装置20)が受けるこの射出反力に抗して、ノズルタッチ状態を維持するために必要な上記押圧力をノズルタッチ力と呼称する。
なお、ノズルタッチ用の上記移動装置(図示せず)とは別に、射出シリンダ21のノズル21aを固定型36aのスプルーブッシュに対して正確にノズルタッチできるように、上記移動装置を含めた射出シリンダ21の位置を、射出シリンダ21の長手方向に直交する水平方向及び鉛直方向に調整可能なノズル芯出し機構(図示せず)が配置されることが一般的である。
次に、サブ射出装置120を説明する。サブ射出装置120はサブ射出シリンダ121及びサブ基台122を備える。そして、射出成形機10に取り付けられる金型36の開閉方向と直交する方向に配置され、固定型36aの側面に形成されるスプルーブッシュ36dに溶融樹脂を射出する。なお、サブ射出装置120のサブ射出シリンダ121は、射出装置20の射出シリンダ21と基本的に同じ構造であるものとし、射出装置20及び射出シリンダ21との差異のみ説明する。
サブ基台122の上方にはサブ射出シリンダ121が配置される。そして、サブ射出シリンダ121とサブ基台122との間には、サブ射出シリンダ121を金型36の開閉方向と直交する方向に移動可能に支持する、すなわち、サブ射出シリンダ121のノズルタッチ用のサブ移動装置123が配置されている。また、固定型36a側面とサブ移動装置123とが1本の連結部材124により連結されている。
1本の連結部材124は、平面図(図1(a))において、サブ射出シリンダ121の射出中心軸と同軸且つ下方に配置されているため、図1(a)には図示されていない。また、連結部材124は、側面図(図1(b)、図1(c))において、サブ射出シリンダ121の射出中心軸と平行に配置されている。1本の連結部材124により、固定型36a側面とサブ移動装置123とが連結される場合はこのような連結部材124の配置が好ましい。
一方、図示はしていないが、固定型36aに対するキャビティ36cの位置、あるいは、固定型36a内の樹脂流路(スプルー)の配置等により、上記のような連結部材124の配置が困難な場合は、2本の連結部材124により固定型36a側面とサブ移動装置123とが連結されてもよい。この場合、それぞれの連結部材124が、サブ射出シリンダ121の射出中心軸と同一平面上に平行に、且つ、同射出中心軸から均等距離に配置されることが好ましい。また、このような連結部材124の配置が困難な場合であっても、少なくとも、それぞれの連結部材124が、サブ射出シリンダ121の射出中心軸と平行に、且つ、同射出中心軸から均等距離に配置されることが好ましい。
サブ移動装置123には、直動ガイドや公知の直線移動案内機構が採用される。また、射出装置20と同様に、サブ移動装置123を含めたサブ射出シリンダ121の位置を、サブ射出シリンダ121の長手方向に直交する水平方向(金型36の開閉方向)及び鉛直方向(上下方向)に調整可能なノズル芯出し機構129が配置されている。ノズル芯出し機構129の水平方向の位置調節には、直動ガイドや公知の直線移動案内機構が採用されればよく、鉛直方向の位置調節には、ジャッキボルトや公知の高さ調整機構が採用されればよい。そして、サブ基台122の下方には小さな車輪(キャスター)が配置される。複数個配置されるキャスターの一部あるいは全部は旋回可能で、且つ、車輪の回転止めを装備していることが好ましい。
サブ射出装置120を射出成形機10の機側に配置させるには、まず、サブ射出シリンダ121のノズル121aが固定型36a側面のスプルーブッシュ36dにノズルタッチできるように、サブ基台122を、射出成形機10の機側基礎上へ移動させて仮位置決めを行う。サブ基台123の固定型36aに対する仮位置決めは、固定型36a側面とサブ移動装置123とを連結する連結部材124により所定の精度、すなわち、ノズル芯出し機構129によるサブ射出シリンダ121のノズルタッチの位置調整が可能な精度を確保できる。連結部材124の両端にはフランジ部等の固定部位が形成されており、ボルト等で固定型36a側面及びサブ移動装置123にそれぞれの固定部位を連結する。連結部材124の連結が困難な場合はサブ基台122の配置を微調整する。連結部材124の連結が完了し、サブ基台122の仮位置決めが完了した後、回転止めにより車輪が回転しないようにする。
その後、サブ射出シリンダ121を手動で固定型36a側に移動させて、サブ射出シリンダ121のノズル121aが、固定型36a側面のスプルーブッシュ36dにノズルタッチできるように、ノズル芯出し機構129により、サブ移動装置123を含めたサブ射出シリンダ121の位置を調整する。また、これと並行して、サブ射出装置120の制御装置(図示せず)と、射出成形機10の制御装置(図示せず)とを電気的に接続する作業を行う。サブ射出シリンダ121のノズル121aが、固定型36a側面のスプルーブッシュ36dにノズルタッチできることを確認した後、通電してサブ射出装置120単体の動作確認を行い、次いで、射出成形機10との連動を確認する。
ここで、サブ射出装置の採用を検討する段階では、成形毎に成形品を確認しながら、都度、射出装置20やサブ射出装置120の成形条件等、射出成形機10の各種設定を変更して成形品の試作(成形トライ)を行うことが一般的である。そのため、図1(c)に示すように、手動でサブ射出シリンダ121のノズルタッチを行い、ノズルタッチ状態の確認後、クランプ等、公知のメカストッパ125でサブ射出シリンダ121のサブ移動装置123に対する位置を固定する。このような、全ての動作確認及び準備が完了した後、成形トライを実施する。
これまで説明した、サブ射出装置120の簡易的な配置においては、射出成形機10の機械的改造がほぼ不要である。すなわち、サブ射出装置120用のスプルーブッシュ36dを備える積層成形用の金型36の準備のみでよい。また、サブ射出装置120のサブ基台122がキャスターを備え、移動可能であるため、サブ射出装置120の射出成形機10に対する仮位置決めが容易である。
そして、サブ射出シリンダ121(サブ射出装置120)に作用する射出反力を、連結部材124を介して型締め状態の固定型36a(金型36)で受ける。そのため、射出成形機10側にこの射出反力を受ける部位を設ける必要がないだけでなく、サブ射出装置120のサブ基台122側で射出反力を支持する必要もない。そのため、サブ基台122は、サブ射出シリンダ121他の自重や、射出充填時における射出シリンダ内のスクリュ等可動部分の動荷重やモーメント等を支持可能な剛性を有していればよく、また、キャスター等で移動可能な軽量な構成にすることができる。サブ基台122を、基礎にアンカー等で固定する場合であっても、事前施工が必要なケミカルアンカーや、大型のアンカー等での強固な固定は必要ない。サブ射出装置120の設置時に施工可能な、ホールインアンカー等、小型のアンカーによる固定で十分であり、サブ射出装置120の設置も撤去も容易である。
図1に示す形態以外にも、サブ射出装置を金型の開閉方向と直交する方向に配置させる形態として、上下のタイバーに渡した部材(第1ブリッジ材66、第2ブリッジ材73他)に取り付けられた第3レール65と第3スライダ64を介して、サブ射出装置(第2射出装置40)の第2移動機構60が射出成形装置10に連結される形態(特許文献1/図1~4)が開示されている。
さらに、射出成形機10のマシンベース(機台16)上面に設けられた連結ユニット22にサブ射出装置18のサブ基台20が連結される形態(特許文献2/図1~4)が開示されている。
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図2乃至図7を参照しながら本発明の第1実施形態に係るサブ射出装置220を説明する。図2(a)は、従来のサブ射出装置120の図1(b)に相当し、サブ射出装置220のサブ射出シリンダ221が後退限位置にある状態を示す。図2(b)は、従来のサブ射出装置120の図1(c)に相当し、図2(a)の状態からサブ射出シリンダ221を固定型36aの側面のスプルーブッシュ36dにノズルタッチさせた状態を示す。なお、第1実施形態に係るサブ射出装置220は、従来のサブ射出装置120において、固定型36a側面とサブ移動装置123とを連結する連結部材124と、その連結形態のみが異なる。そのため、以降の説明において、従来のサブ射出装置120と同じ構成には同じ符号を付すと共にその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
サブ射出装置220においては、連結部材の一部又はすべてが流体シリンダで構成される。第1実施形態においては、図2(a)に示すように、連結部材224が流体シリンダ225及び連結補助部材226で構成される。また、連結部材224により、固定型36a側面が、サブ移動装置123ではなくサブ射出シリンダ221と連結される。流体シリンダ225はエアシリンダであって、そのシリンダロッド225a側が固定型36a側面に連結され、シリンダ本体部225b側が連結補助部材226を介してサブ射出シリンダ221に連結される。
そして、流体シリンダ225については、図6に示すような流体回路(空圧回路)が構成され、流体シリンダ225を伸縮させて、サブ射出シリンダ221のノズルタッチ動作を可能とするノズルタッチ機構の駆動源となる。流体回路については後述する。第1実施形態に係るサブ射出装置220は、従来のサブ射出装置120の連結部材124を、このような連結部材224で構成することにより、駆動源を備えるノズルタッチ機能を装備しても構成が複雑にならず、射出反力を金型で受けることができる。また、射出成形機の機械的改造が不要であることは、いうまでもない。
ここで、サブ射出装置220においては、連結部材224に、流体シリンダ225の伸縮方向と直交する全周方向への所定量の移動を許容する摺動許容部227を少なくとも1つ備える。第1実施形態においては、流体シリンダ225のシリンダロッド225aが、摺動許容部227(図2(a)の要部X)を介して、固定型36aの側面に連結される。図3を参照しながら摺動許容部227を説明する。図3(a)は図2の要部Xの詳細図で、図3(b)は図3(a)のB-B矢視図である。
シリンダロッド225aの先端には、先端部材227aがロッド先端ナット225cと共にダブルナットでねじ込み固定されている。先端部材227aは、小径部の両端面に大径部を同軸配置させた滑車状の部材である。一方、シリンダロッド225aに対応する固定型36aの側面には、固定部材227bがボルト等で固定されている。固定部材227bの中央には、先端部材227aの小径部外径より大きく、大径部外径よりも小さい開口孔部が形成されている。そして、先端部材227aの大径部の一方が小径部に対して分離・固定可能に構成されており、図3(a)に示すように、先端部材227aの小径部が、固定部材227bの開口孔部を貫通するように固定部材227bに組み込まれる。
先端部材227aの大径部と、同大径部が対向する固定部材227bとの間には、流体シリンダ225の伸縮方向と直交する全周方向への、先端部材227aの所定量の移動を許容するためのクリアランスCL2が確保されている。図を分かり易くするため、クリアランスCL2を誇張して図示しているが、先端部材227aが固定部材227bに対して、上記全周方向への移動が許容される最小のクリアランスが確保されればよい。
一方、固定部材227bの開口孔部の内周面と、先端部材227aの小径部の外周面との間には、半径方向にクリアランスCL1が確保されている。このような固定部材227の構成により、固定型36aに対する流体シリンダ225のシリンダロッド225aの先端位置は、流体シリンダ225の伸縮方向については位置保持(連結)される。また、流体シリンダ225の伸縮方向と直交する全周方向については、クリアランスCL1の移動が許容される。
ここで、サブ射出装置のサブ射出シリンダのノズルタッチのための位置調整は、射出成形機での実成形を想定して、金型温調装置等により金型の温度を所定の設定温度に調整した熱間状態で行われることが一般的である。一方、正規の型締力を付与した型締め状態で位置決めが行われることは少ない。そのため、ノズルタッチの位置調整後、射出成形機での実成形を開始すると、金型内に充填される溶融樹脂の影響による金型温度の変動や、型締力による金型の圧縮変形により、当初位置決めしたサブ射出シリンダのノズル位置と、金型のスプルーブッシュの位置にずれが生じる場合がある。
これを考慮して、金型のスプルーブッシュは球面凹形状で形成され、射出シリンダのノズル先端は球面凸形状で形成される。そして、ノズル先端の球面凸形状の半径が、スプルーブッシュの球面凹形状の半径と同じか小さくなるように構成される。そのため、上記ずれが発生した場合であっても、所定のノズルタッチ力が維持されることによりノズルタッチ状態が維持される。
しかしながら、サブ射出装置が金型の開閉方向と直交する方向に配置される場合、上記ずれが生じた状態でノズルタッチ状態が維持されれば、サブ射出シリンダを介して、サブ移動装置に、サブ射出シリンダの移動方向と直交する方向の負荷(以後、想定外負荷と呼称する)が作用する。小型の射出成形機と小さい金型の組み合わせであれば、このような想定外負荷は小さく、サブ移動装置に採用されている直動ガイドや公知の直線移動案内機構の仕様上の許容値よりも小さいか、想定外負荷による影響は少ない。
一方、大型の射出成形機と大きな金型の組み合わせでは、先に説明したように、サブ射出装置のサイズが、必ずしも射出成形機の射出装置のサイズに比例して大きくなるわけではないため、このような想定外負荷の影響が無視できない場合がある。想定外負荷は、サブ移動装置に採用されている直動ガイドや公知の直線移動案内機構の案内精度の低下や、偏摩耗等による摺動部材の短寿命を招く等、サブ射出措置の摺動部位不良の要因となる。
このようなサブ移動装置に作用する想定外負荷の影響が無視できない場合、連結部材224に、上述した摺動許容部227を少なくとも1つ備える形態が好ましい。第1実施形態では、連結部材224を構成する流体シリンダ225のシリンダロッド225aの先端が、摺動許容部227を介して、固定型36aの側面に連結される。サブ射出装置220のサブ射出シリンダ221のノズルタッチ状態において、上記ずれが発生した場合であっても、摺動許容部227により、上記ずれの多くは、固定型36a側面の摺動許容部227における、シリンダロッド225aの先端部材227aの固定部材227bに対する移動により吸収され、サブ移動装置123に作用する想定外負荷が大幅に抑制される。
第1実施形態においては、流体シリンダ225及び連結補助部材226で構成される連結部材224の、流体シリンダ225のシリンダロッド225aを、摺動許容部227を介して固定型36aの側面に連結する形態、すなわち、連結部材224の固定型36a側に摺動許容部227を備える形態を説明した。しかしながら、連結部材224の中間に摺動許容部が配置される形態であってもよい。具体的には、流体シリンダ225のシリンダ本体部225bを、同様の機能を有する摺動許容部を介して連結補助部材226に連結する形態である。
一方、シリンダ本体部225bと連結補助部材226とを直接固定し、連結補助部材226を同様の機能を有する摺動許容部を介してサブ射出シリンダ221に連結する形態、すなわち、連結部材224のサブ射出シリンダ221側に摺動許容部227を備える形態であってもよい。また、連結部材224の両端が、同様の機能を有する摺動許容部を介してそれぞれの連結対象に連結されてもよい。
また、上述したように、流体シリンダ225のシリンダロッド225aが、摺動許容部227を介して固定型36aの側面に連結される形態の場合、流体シリンダ225のシリンダ本体部225bを連結補助部材226に直接固定してもよい。しかしながら、図4に示すように、流体シリンダ225を回動可能に支持してもよい。第1実施形態においては、流体シリンダ225のシリンダ本体部が、回動部228(図2(a)の要部Y)を介して、連結補助部材226に固定される。図4を参照しながら回動部228を説明する。
回動部228は、シリンダ本体部225bに形成される2山クレビス部225dと、連結補助部材226側に形成される1山クレビス部226aとが、クレビスピン225eで連結され、クレビスピン225eを回転中心とする流体シリンダ225の回動を支持すると共に、流体シリンダ225の伸縮方向に、連結補助部材226へと射出反力を伝達する。図4では、クレビスピン225eが水平に配置されるよう、それぞれのクレビス部を含む回動部228が構成される。
回動部228は、連結部材224の摺動許容部227と異なる位置に配置させ、摺動許容部227における連結部材224の、流体シリンダ225の伸縮方向と直交する全周方向への移動をより容易にするための構成である。そこで、予め、あるいは、サブ射出装置220の設置後に、固定型36a側面のスプルーブッシュ36dから、サブ射出シリンダ221のノズル121aがずれる方向を把握し、このずれ方向に流体シリンダ225が回動支持されるように、クレビスピンを含めた回動部228を構成することが好ましい。
次に、流体シリンダ225に構成される流体回路(空圧回路)について、図6及び図7を参照しながら説明する。
図6に示すように、流体シリンダ225のロッド側室は、減圧弁251が配置される管路を介してソレノイドバルブ252の2次側No.4ポート(Aポート)に接続され、ヘッド側室は、ソレノイドバルブの2次側No.2ポート(Bポート)に接続されている。ソレノイドバルブ252は3位置クローズドセンタタイプである。ソレノイドバルブ252の両ソレノイドABが励磁されず、スプリング力により中間位置に維持される3位置クローズドセンタタイプを採用することにより、停電時の意図しない流体シリンダ225の摺動が防止され安全である。また、流体シリンダ225のロッド側室及びヘッド側室の接続ポートに、ソレノイドバルブ252の中間位置において、流体シリンダ225のヘッド側室及びロッド側室のエアー圧力を確実に保持させるとともに、必要に応じて流体シリンダ225の伸縮を可能にするパイロットチェック弁が配置されることが好ましい。
そして、ソレノイドバルブ252のソレノイドA(図6左側)を励磁すると、図7(a)に示すように、ソレノイドバルブ252の1次側No.1ポート(Pポート)へ供給されている所定圧力のエアーが同バルブの2次側No.4ポート(Aポート)から、減圧弁251を経由して流体シリンダ225のロッド側室に供給される。シリンダロッド225aが、摺動許容部227(図示せず)を介して固定型36aの側面に連結されているため、シリンダ本体部225bが固定型36a側に移動する。この移動に伴い、サブ移動装置123に案内されて、サブ射出シリンダ221(図示せず)の固定型36a側面へのノズルタッチ動作が開始される。一方、シリンダ本体部225bの固定型36a側への移動に伴い、ヘッド側室内のエアーが、ソレノイドバルブ252の1次側No.3ポート(EBポート)から排出される。
サブ射出シリンダ221のノズルタッチ動作が開始され、ノズル121aが固定型36a側面のスプルーブッシュ36dに接触すると、シリンダ本体部225bの固定型36a側への移動が物理的に困難になるため、流体シリンダ225のロッド側室及び接続されている管路の圧力が上昇する。この圧力が、予め、減圧弁251に設定した設定圧力に到達すると、同圧力が減圧弁251の2次側からパイロット圧力として作用して減圧弁251を機能させ、流体シリンダ225のロッド側室の圧力が減圧弁251の設定圧力に維持される。すなわち、減圧弁251により、流体シリンダ225のロッド側室内で維持されるエアーの圧力がノズルタッチ力となり、射出反力に抗して流体シリンダ225の伸長を抑制し、ノズルタッチ状態を所定のノズルタッチ力下で維持する。
ここで、金型の構造にもよるが、成形を行っている間、サブ射出装置のサブ射出シリンダは、固定型側面へのノズルタッチ状態が維持されることが一般的である。しかしながら、成形が完了して射出成形機の運転を停止させる場合、金型のメンテナンスや交換時、あるいは、サブ射出装置を射出成形機側方から移動させる場合は、サブ射出シリンダを後退限位置まで移動させる。
その場合、具体的には、ソレノイドバルブ252のソレノイドAの励磁を停止させ、ソレノイドB(図6右側)を励磁させる。すると、ソレノイドバルブ252は、図6に示す中間位置を経由して、図7(b)に示す状態へと移行する。そして、所定圧力のエアーが同バルブの2次側No.2ポート(Bポート)から流体シリンダ225のヘッド側室に供給され、シリンダ本体部225bが固定型36aから離間する。この離間に伴い、サブ移動装置123に案内されて、サブ射出シリンダ221のノズル121aが、固定型36a側面のスプルーブッシュ36dから離間しノズルタッチ状態が解除されると共に、サブ射出シリンダ221が図2(a)に示す後退限位置まで移動する。一方、シリンダ本体部225bの固定型36aからの離間に伴い、ロッド側室内のエアーが、ソレノイドバルブ252の1次側No.5ポート(EAポート)から排出される。
流体シリンダ225が伸長した状態で、サブ射出シリンダ221が図2(a)に示す後退限位置になるように構成されていれば、サブ射出シリンダ221に配置させるシリンダスイッチで、サブ射出シリンダ221の後退限到達を検出できる。そうでない場合も、サブ移動装置123に、サブ射出シリンダ221の後退限到達を検出可能な近接スイッチや位置検出スイッチ、あるいはリミットスイッチを配置させることにより、サブ射出シリンダ221の後退限到達を検出できる。いずれの場合も、サブ射出シリンダ221の後退限到達を検出した後、ソレノイドバルブ252のソレノイドBの励磁を停止させて、ソレノイドバルブ252を図6に示す中間位置に戻す。
なお、図6及び図7に示す概略流体回路図は、第1実施形態の説明に必要な構成のみを、一例として挙げている。実際には、前述したパイロットチェック弁や、流体シリンダ225の動作速度を調整するスピードコントローラ(流量制御弁)、あるいは、供給されるエアーの圧力、コンタミ及び水分除去、あるいは、潤滑(ルブリケータ)等を管理する公知の諸空圧機器が配置される。これら諸空圧機器の図示は省略している。
ここで、第1実施形態と異なり、流体シリンダ225のシリンダ本体部225bを固定型36a側に、シリンダロッド225aをサブ射出シリンダ221側(連結補助部材226)に連結する形態であっても、流体シリンダ225に採用される流体回路は第1実施形態と同じ良い。すなわち、サブ射出シリンダ221のノズルタッチ動作及びノズルタッチ力維持は、流体シリンダ225のロッド側室への所定圧力の流体の供給により行われ、ノズルタッチ状態解除は、ヘッド側室への所定圧力の流体の供給により行われればよい。
このように、連結部材の一部又はすべてが流体シリンダで構成され、また、流体シリンダの流体回路をこのように構成することにより、駆動源を備えるノズルタッチ機能を装備してもサブ射出装置の構成が複雑にならず、従来のサブ射出装置120では手動で行っていたノズルタッチ動作を、一部又はすべてが流体シリンダで構成される連結部材により行わせるとともに、流体シリンダを含む流体回路によりノズルタッチ力の設定や維持が可能となる。そして、サブ射出装置の他の操作と同様に、サブ射出装置のノズルタッチ動作及びノズルタッチ状態の維持が、サブ射出装置専用の制御装置や操作盤(操作ペンダント)で操作可能となる。
また、第1実施形態に係るサブ射出装置220及びサブ射出装置220の簡易的な配置は、サブ射出装置の採用を検討する段階や成形品の試作段階において好適であることを説明した。しかしながら、前述したようなサブ射出装置220の簡易的な配置で行った成形トライにより、サブ射出装置220を特殊な形態で配置させる必要がなく、前述したような簡易的な配置で、問題なく連続して積層成形が可能であることが確認できれば、この配置を恒久的な配置としてもよい。
以上、発明を実施するための形態について、第1実施形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された内容を逸脱しない範囲で、色々な形で実施できることは言うまでもない。
例えば、図3を参照しながら、摺動許容部227を説明したが、図5に示すような摺動許容部227’であってもよい。図5(a)は、摺動許容部227の図3(a)に相当する側面図で、図5(b)は、摺動許容部227の図3(b)と同様に、図5(a)のC-C矢視図である。
図3に示す第1実施形態の摺動許容部227と、図5に示す摺動許容部227’の差異の1つは、先端部材227aの大径部の一方を小径部に対して分離・固定可能に構成せず一体式とする一方、固定部材227b’の開口孔部に、切り欠き部227cを形成させる点である。もう1つは、固定部材227b’が、断熱部材227dを介して固定型36aに連結される点である。
先端部材227aの小径部が通過可能になるように、切り欠き部227cの切り欠き幅を同小径部の外径よりも大きくする。摺動許容部227’をこのように構成することにより、先端部材227aの構造が簡素化されるとともに、先端部材227aの固定部材227’への組み込みが容易になる。また、固定部材227’を固定型36aから取り外すことなく、流体シリンダ225と固定型36aの固定状態の解除が可能になる。一方、図示はしていないが、先端部材227aの小径部に2面幅部を形成させて、同2面幅部が通過可能に、切り欠き部227cの切り欠き幅を同2面幅部の幅よりも大きくする形態であってもよい。
また、固定部材227’が、断熱部材227dを介して固定型36aに連結されることにより、固定型36aの温度が上昇しても、その熱が流体シリンダ225に伝達することを抑制できる。このような断熱部材は、金型及び金型取付盤間に配置させて、金型の温度制御において、金型の熱が金型取付盤へ抜熱されないようにする目的でも採用される。そのため、ボルトの締め付け力にも抗することが可能な種々の材質、例えば、ガラス繊維を基材とし、主材料として、ホウ酸塩素バインダーや耐熱エポキシ樹脂を採用したものを、任意のサイズで容易に入手することができる。
このような断熱部材227dの採用により、固定型36aの熱により、流体シリンダ225内のエアーが膨張して、サブ射出シリンダ221のノズルタッチ動作の動作不良が発生したり、ノズルタッチ力が変動したりすることを抑制できる。また、シリンダロッド225aとシリンダ本体部225bとの間の摺動部のパッキン類の劣化や摺動潤滑剤の劣化等、熱による悪影響を抑制することが期待できる。
また、連結部材224が流体シリンダ225及び連結補助部材226で構成される形態を説明した。この形態であれば、流体シリンダ225のストロークを、ノズルタッチ動作に必要なストローク+αとして、流体シリンダの全長を抑制することができる。さらに、固定型36a側面及びサブ射出シリンダ221間に、サブ射出シリンダ221の移動方向と平行に、連結部材224を配置させることが難しい場合でも、流体シリンダ225の伸縮方向と連結補助部材226の軸芯とを部分的に偏心させた構成が可能であり、連結部材224の配置の自由度が向上するというメリットがある。
一方、第1実施形態のように、流体シリンダ225が固定型36a側に、連結補助部材226がサブ射出シリンダ221側に連結される形態ではなく、この逆、すなわち、連結補助部材226が固定型36a側に、流体シリンダ225がサブ射出シリンダ221側に連結される形態であっても、上記と同様の効果を奏することができる。先に説明したように、摺動許容部227や回動部228が、流体シリンダ225及び連結補助部材226のいずれの位置に配置されるか、あるいは、1個でなく2個配置されるかも、固定型36a及びサブ射出装置220の配置関係に応じて、適宜、好適な組み合わせが採用されればよい。また、射出成形機10及びサブ射出装置220が共に小型で、連結部材224の配置が許せば、連結部材2224自体を流体シリンダで構成してもよい。
さらに、第1実施形態の流体シリンダ225がエアシリンダである形態を説明した。全電動射出成形機であっても、ユーティリティーとして圧縮エアーが成形機本体に供給されるため、流体シリンダ225をエアシリンダとすることに問題はない。その一方、全電動射出成形機であっても、金型の中子等の可動部を駆動させるために、油圧供給装置が配置される場合も少なくはない。そのような場合、流体シリンダ225を油圧シリンダとする形態であってもよい。一般的に、油圧供給装置であっても、供給可能な作動油の圧力は、ユーティリティーとして供給されるエアーの圧力よりも高い。そのため、同じノズルタッチ力を発生させるために必要な流体シリンダの径を小さくすることができ、先に説明したような、連結部材224の配置の自由度が向上するというメリットがある。
また、作動油はエアーに対して圧縮性が非常に低い。そのため、図7(a)に示すように、流体シリンダ225のロッド側室への作動油の供給状態を維持させて、ノズルタッチ状態を維持させてもよいが、図6に示すようなソレノイドバルブ252が中間位置にある状態(オールポートブロック)、すなわち、流体シリンダ225のロッド側室及びヘッド側室両方に接続される管路を閉塞することによっても、ノズルタッチ状態を維持させることが可能である。図6の減圧弁251と同じ位置にリリーフ弁を配置させれば、リリーフ弁へのタンクラインへの戻り管路は必要になるものの、リリーフ弁に設定したリリーフ圧力がノズルタッチ力となり、所定圧力の流体(作動油)の供給を継続せずとも、ノズルタッチ状態の維持が可能であるというメリットがある。