JP7352142B2 - 人工皮革およびその製造方法 - Google Patents
人工皮革およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7352142B2 JP7352142B2 JP2019125898A JP2019125898A JP7352142B2 JP 7352142 B2 JP7352142 B2 JP 7352142B2 JP 2019125898 A JP2019125898 A JP 2019125898A JP 2019125898 A JP2019125898 A JP 2019125898A JP 7352142 B2 JP7352142 B2 JP 7352142B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- artificial leather
- fiber
- fibers
- black pigment
- ultrafine
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Multicomponent Fibers (AREA)
- Synthetic Leather, Interior Materials Or Flexible Sheet Materials (AREA)
Description
要件1:前記極細繊維は黒色顔料を含む
要件2:前記極細繊維のうち、黒色顔料を含まない熱可塑性樹脂の領域(A)が黒色顔料を含む熱可塑性樹脂の領域(B)に包含される
要件3:前記極細繊維に含まれる黒色顔料の割合が、極細繊維の質量に対し0.01質量%以上0.2質量%以下の範囲である。
要件4:前記黒色顔料を含む熱可塑性樹脂の領域(B)の面積(S B )の極細繊維の面積(S F )に対する比率(S B /S F )が、5%以上40%以下である
工程(1):繊維断面において黒色顔料を含まない熱可塑性樹脂からなる芯成分と、黒色顔料を含む熱可塑性樹脂からなる鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、易溶解性ポリマーが海部を形成する海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を製造する工程
工程(2):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材を製造する工程
工程(3):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材から、平均単繊維直径が1.0μm以上10.0μm以下の極細繊維を発現させる工程
工程(4):極細繊維、または、極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に高分子弾性体を付与する工程
要件1:前記極細繊維は黒色顔料を含む
要件2:前記極細繊維のうち、黒色顔料を含まない熱可塑性樹脂の領域(A)が黒色顔料を含む熱可塑性樹脂の領域(B)に包含される
要件3:前記極細繊維に含まれる黒色顔料の割合が、極細繊維の質量に対し0.01質量%以上0.2質量%以下の範囲である
要件4:前記黒色顔料を含む熱可塑性樹脂の領域(B)の面積(S B )の極細繊維の面積(S F )に対する比率(S B /S F )が、5%以上40%以下である
以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
本発明で用いられる繊維絡合体を構成する熱可塑性樹脂としては、耐久性、特には機械的強度等の観点から、ポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂が好ましく用いられ、耐熱性に優れるポリエステル系樹脂を用いることがより好ましい。
(1)オルソクロロフェノール10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かす。
(2)25℃の温度においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下式により算出し、小数点以下第三位で四捨五入する。
・ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
・固有粘度(IV値)=0.0242ηr+0.2634
(ここで、ηはポリマー溶液の粘度、η0はオルソクロロフェノールの粘度、tは溶液の落下時間(秒)、dは溶液の密度(g/cm3)、t0はオルソクロロフェノールの落下時間(秒)、d0はオルソクロロフェノールの密度(g/cm3)を、それぞれ表す。)。
(1) 極細繊維の長手方向に垂直な面の断面方向に厚さ5~10μmの超薄切片を作製する。
(2) 透過型電子顕微鏡(TEM)にて超薄切片中の繊維断面を1000倍~5000倍で観察する。
(3) 画像解析ソフトを用いて、任意の極細繊維の面積(SF)を測定する。
(4) (3)で面積を測定した極細繊維において、繊維表面から最も遠い黒色顔料までの距離Xを測定し、繊維の外周から距離Xとなる繊維内部(黒色顔料を含まない領域)の面積(SA)を測定する。
(5) 黒色顔料を含む領域の面積(SB)を以下の式により算出する
・黒色顔料を含む領域の面積(SB)=極細繊維の面積(SF)-黒色顔料を含まない領域の面積(SA)
(6) (5)で得られた面積(SB)を(3)で得られた面積(SF)で除した結果(SB/SF)について、n=5で測定し、得られた値の算術平均値(%)の小数点以下第一位を四捨五入した値を、黒色顔料が存在する領域(B)の面積(SB)の極細繊維の面積(SF)に対する比率(SB/SF)とする。
(1) 極細繊維の長手方向に垂直な面の断面方向に厚さ5~10μmの超薄切片を作製する。
(2) 透過型電子顕微鏡(TEM)にて超薄切片中の繊維断面を10000倍で観察する。
(3) 画像解析ソフトを使用して、観察像の2.3μm×2.3μmの視野の中に含まれる顔料の粒子径の円相当径を20点測定する。
(4) 測定した20点の粒子径について、平均値(算術平均)を算出する。
本発明の人工皮革を構成する高分子弾性体は、人工皮革を構成する極細繊維を把持するバインダーであるため、本発明の人工皮革の柔軟な風合いを考慮すると、用いられる高分子弾性体としては、ポリウレタン、ポリウレタン、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)およびアクリル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリウレタンを主成分として用いることが好ましい態様である。ポリウレタンを用いることにより、充実感のある触感、皮革様の外観および実使用に耐える物性を備えた人工皮革を得ることができる。なお、本発明でいう「主成分である」とは、高分子弾性体全体の質量に対してポリウレタンの質量が50質量%より多いことをいう。
本発明の人工皮革においては、表面に立毛を有することが好ましい態様である。立毛は人工皮革の表面のみに有していてもよく、両面に有することも許容される。表面に立毛を有する場合の立毛形態は、意匠効果の観点から指でなぞったときに立毛の方向が変わることで跡が残る、いわゆるフィンガーマークが発する程度の立毛長と方向柔軟性を備えていることが好ましい。
本発明の人工皮革は次の工程(1)~(4)を含んで製造される。
工程(1):繊維断面において黒色顔料を含まない熱可塑性樹脂からなる芯成分と、黒色顔料を含む熱可塑性樹脂からなる鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、易溶解性ポリマーが海部を形成する海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を製造する工程
工程(2):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材を製造する工程
工程(3):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材から、平均単繊維直径が1.0μm以上10.0μm以下の極細繊維を発現させる工程
工程(4):極細繊維、または、極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に高分子弾性体を付与する工程
以下に、各工程の詳細について説明する。
本工程においては、繊維断面において黒色顔料を含まない熱可塑性樹脂からなる芯成分と、黒色顔料を含む熱可塑性樹脂からなる鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、易溶解性ポリマーが海部を形成する海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を製造する。
(1) 長さ20cmの海島型複合繊維を10本束ねる。
(2) (1)の試料から海部を溶解除去したのちに、風乾する。
(3) JIS L1013:2010「化学繊維フィラメント糸試験方法」の「8.5 引張強さ及び伸び率」の「8.5.1 標準時試験」にて、つかみ長さ5cm、引張速度5cm/分、荷重2Nの条件にて10回試験する(N=10)。
(4) (3)で得られた試験結果の算術平均値(cN/dtex)を小数点以下第二位で四捨五入して得られる値を、海島型複合繊維の島部の強度とする。
本工程では、紡出された極細繊維発現型繊維を開繊したのちにクロスラッパー等により繊維ウェブとし、絡合させることにより不織布を得る。繊維ウェブを絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチ処理やウォータージェットパンチ処理等を用いることができる。
本工程では、得られた繊維質基材を溶剤で処理して、単繊維の平均単繊維径が1.0μm以上10.0μm以下の極細繊維を発現させる。
本工程では、極細繊維または極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に高分子弾性体の溶液を含浸し固化して、高分子弾性体を付与する。高分子弾性体を不織布に固定する方法としては、高分子弾性体の溶液を不織布(繊維絡合体)に含浸させた後、湿式凝固または乾式凝固する方法があり、使用する高分子弾性体の種類により適宜これらの方法を選択することができる。
前記工程を終えて、高分子弾性体が付与されてなる繊維質基材は、製造効率の観点から、厚み方向に半裁して2枚の繊維質基材とすることも好ましい態様である。
上記の人工皮革は、黒色顔料の色彩と同色の染料にて染色処理を施すことが好ましい。この染色処理としては、例えば、ジッガー染色機や液流染色機を用いた液流染色処理、連続染色機を用いたサーモゾル染色処理等の浸染処理、あるいはローラー捺染、スクリーン捺染、インクジェット方式捺染、昇華捺染および真空昇華捺染等による立毛面への捺染処理等を用いることができる。中でも、柔軟な風合いが得られること等から、品質や品位面から液流染色機を用いることが好ましい。また、必要に応じて、染色後に各種の樹脂仕上げ加工を施すことができる。
また、上記の人工皮革には、必要に応じてその表面に意匠性を施すことができる。例えば、パーフォレーション等の穴開け加工、エンボス加工、レーザー加工、ピンソニック加工、およびプリント加工等の後加工処理を施すことができる。
A.黒色顔料を含む熱可塑性樹脂の領域(B)の面積(SB)および極細繊維の面積(SF):
極細繊維の長手方向に垂直な面の断面方向の超薄切片は、Sorvall社製ウルトラミクロトーム「MT6000型」を用いて作製した。得られた切片は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H7700型」)を用いて観察した。次いで極細繊維の面積(SF)および表面から最も遠い黒色顔料までの距離X、黒色顔料を含む熱可塑性樹脂の領域(B)の面積(SB)については、画像解析ソフト(三谷商事製「WinROOF」)を用いて測定した。
極細繊維の長手方向に垂直な面の断面方向の超薄切片は、Sorvall社製ウルトラミクロトーム「MT6000型」を用いて作製した。得られた切片は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H7700型」)を用いて観察した。次いで顔料の粒子径については、画像解析ソフト(三谷商事製「WinROOF」)を用いて測定した。
分光測色系を用いて前記したJIS Z8781-4:2013「測色-第4部:CIE1976L*a*b*色空間」の3.3で規定されるL*値を計測した。計測はコニカミノルタ製「CR-310」によって、10回測定し、その平均を人工皮革のL*値とした。
照射後サンプルの変退色度合いをJIS L0804:2004「変退色用グレースケール」に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定し、4号以上(L*a*b*表色系による色差ΔE* abが1.7±0.3以下)を合格とした。
摩耗試験器としてJames H. Heal & Co.製「Model 406」を、標準摩擦布として同社の「Abrastive CLOTH SM25」を用いて耐摩耗試験を行い、人工皮革の摩耗減量が10mg以下であった人工皮革を合格とした。
F.人工皮革の引張強さ:
人工皮革の任意の方向について2cm×20cmの試験片を2枚採取し、JIS L1913(2010)6.3.1で規定される引張強さを測定した。測定は2枚の平均を人工皮革の引張強さとした。
G.人工皮革の表面の均一性:
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、目視評価によって、下記の○×のように評価し、最も多かった評価を表面の均一性とした。本発明において良好なレベルは、「○」である。
○:表面に色相ムラが確認できない。
×:部分的に色相ムラが存在する。
芯成分と鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、さらに海部からなる海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を、以下の条件で溶融紡糸した。
・鞘成分: 以下の成分(a)と(b)が95:5の質量比で混合したもの
(a) 固有粘度(IV値)が0.73のポリエチレンテレフタレートA
(b) 上記ポリエチレンテレフタレートA中に、カーボンブラック(粒子径の平均:0.20μmがマスターバッチの質量対比で20質量%含有されている、マスターバッチ
・芯成分: 上記のポリエチレンテレフタレートA
・海部: MFRが65g/10分のポリスチレン
・口金: 島数が16島/ホールの3成分海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・芯成分/鞘成分 質量比率: 80/20
・島部/海部 質量比率: 80/20
・吐出量: 1.2g/(分・ホール)
・紡糸速度: 1100m/分。
成分(a)と(b)の質量比を75:25とした以外は原綿Aの製造と同様にして、単繊維繊度が3.8dtexの海島型複合繊維の原綿Bを得た。得られた原綿Bについて表1に示す。
芯成分と鞘成分の質量比率を60/40に変更した以外は原綿Aの製造と同様にして、単繊維繊度が3.8dtexの海島型複合繊維の原綿Cを得た。得られた原綿Cについて表1に示す。
成分(a)と(b)の質量比を30:70とした以外は原綿Aの製造と同様にして、単繊維繊度が3.8dtexの海島型複合繊維の原綿Dを得た。得られた原綿Dについて表1に示す。
成分(a)と(b)の質量比を100:0とした以外は原綿Aの製造と同様にしたところ、溶融紡糸時に糸切れが多発し十分な原綿が得られなかった。
島部、海部からなる海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を、以下の条件で溶融紡糸した。
・ 島部: 以下の成分(a)と(b)が95:5の質量比で混合したもの
(a) 固有粘度(IV値)が0.73のポリエチレンテレフタレートA
(b) 上記ポリエチレンテレフタレートA中に、カーボンブラック(粒子径の平均:0.05μm)がマスターバッチの質量対比で20質量%含有されている、マスターバッチ
・海部: MFRが65g/10分のポリスチレン
・口金: 島数が16島/ホールの海島型複合用口金
・紡糸温度: 285℃
・島部/海部 質量比率: 80/20
・吐出量: 1.2g/(分・ホール)
・紡糸速度: 1100m/分。
成分(a)と(b)の質量比を75:25とした以外は原綿Fの製造と同様にしたところ、溶融紡糸時に糸切れが多発し十分な原綿が得られなかった。
固有粘度(IV値)が0.65のポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント(平均単繊維直径:11μm、総繊度:84dtex、72フィラメント)に2500T/mの撚りを施した撚糸を、緯糸と経糸の両方に用いた、織密度が経95本/2.54cm、緯76本/2.54cmの平織物(目付75g/m2)を作製した。
カーボンブラックを1質量%含有し、固有粘度(IV値)が0.55のポリエチレンテレフタレートを用いた以外は織物Aと同様にして、織密度が経95本/2.54cm、緯76本/2.54cmの平織物(目付75g/m2)を作製した。
<繊維質基材を製造する工程>
まず、原綿Aを用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成した。そして、2500本/cm2のパンチ本数でニードルパンチ処理して、目付が550g/m2で、厚みが2.5mmの不織布を得た。
上記のようにして得られた不織布を96℃の熱水で収縮処理させた。その後、濃度が12質量%となるように調製した、鹸化度88%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を熱水で収縮処理させた不織布に含浸させた。さらにこれをロールで絞り、温度120℃の熱風で10分間PVAをマイグレーションさせながら乾燥させ、シート基体の質量に対するPVA質量が25質量%となるようにしたPVA付シートを得た。このようにして得られたPVA付シートをトリクロロエチレンに浸漬させて、マングルによる搾液と圧縮を10回行った。これによって、海部の溶解除去とPVA付シートの圧縮処理を行い、PVAが付与された極細繊維束が絡合してなるPVA付シートを得た。
上記のようにして得られたPVA付シートに、ポリウレタンを主成分とする固形分の濃度が13%となるように調製した、ポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液を浸漬させた。その後、ポリウレタンのDMF溶液に浸漬させた脱海PVA付シートをロールで絞った。次いで、このシートを濃度30質量%のDMF水溶液中に浸漬させ、ポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥させた。これによって、厚みが1.8mmで、繊維質基材の質量に対するポリウレタン質量が30質量%となるようにしたポリウレタン付シートを得た。
上記のようにして得られたポリウレタン付シートを厚みがそれぞれ1/2ずつとなるように半裁した。続いて、サンドペーパー番手180番のエンドレスサンドペーパーで半裁面の反対側の面の表層部を0.3mm研削して表面の立毛長が300μmとなるように起毛処理を行い、厚み0.6mmの立毛シートを得た。
上記のようにして得られた立毛シートを、液流染色機を用いて染色した。このとき、120℃で黒色染料を用い、染色後の人工皮革のL*値が22となるように調整したレサイプを用いた。その後、100℃で7分間、乾燥処理を行って、極細繊維の平均単繊維直径が4.4μmで、目付が230g/m2、厚みが0.7mmの人工皮革を得た。得られた人工皮革は、優れた耐光堅牢度と耐摩耗性、高い強度を有していた。また人工皮革の表面は均一な色相を有していた。結果を表2に示す。
原綿B、Cを用いた以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革は、優れた耐光堅牢度と耐摩耗性、高い強度を有していた。また人工皮革の表面は均一な色相を有していた。結果を表2に示す。
<繊維質基材を製造する工程>
まず、原綿Aを用いて、カードおよびクロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成したのち、平織物Aを、前記の積層ウェブの上下に積層した。その後、2500本/cm2のパンチ本数でニードルパンチ処理して、目付が700g/m2で、厚みが3.0mmの絡合シートを得た。
上記のようにして得られた絡合シートを96℃の熱水で収縮処理させた。その後、濃度が5質量%となるように調製した、鹸化度88%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を熱水で収縮処理させた不織布に含浸させた。さらにこれをロールで絞り、温度120℃の熱風で10分間PVAをマイグレーションさせながら乾燥させ、シート基体の質量に対するPVA質量が8質量%となるようにしたPVA付シートを得た。このようにして得られたPVA付シートをトリクロロエチレンに浸漬させて、マングルによる搾液と圧縮を10回行った。これによって、海部の溶解除去とPVA付シートの圧縮処理を行い、PVAが付与された極細繊維束が絡合してなるPVA付シートを得た。
上記のようにして得られたPVA付シートに、ポリウレタンを主成分とする固形分の濃度が11%となるように調製した、ポリウレタンのDMF(ジメチルホルムアミド)溶液を浸漬させた。その後、ポリウレタンのDMF溶液に浸漬させた脱海PVA付シートをロールで絞った。次いで、このシートを濃度30質量%のDMF水溶液中に浸漬させ、ポリウレタンを凝固させた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の温度の熱風で10分間乾燥させた。これによって、厚みが2.2mmで、繊維質基材の質量に対するポリウレタン質量が28質量%となるようにしたポリウレタン付シートを得た。
上記のようにして得られたポリウレタン付シートを厚みがそれぞれ1/2ずつとなるように半裁した。続いて、サンドペーパー番手180番のエンドレスサンドペーパーで半裁面の表層部を0.3mm研削して表面の立毛長が300μmとなるように起毛処理を行い、厚み0.8mmの立毛シートを得た。
上記のようにして得られた立毛シートを、液流染色機を用いて染色した。このとき、120℃で黒色染料を用い、染色後の人工皮革のL*値が22となるように調整したレサイプを用いた。その後、100℃で7分間、乾燥処理を行って、極細繊維の平均単繊維直径が4.4μmで、目付が320g/m2、厚みが0.9mmの人工皮革を得た。得られた人工皮革は、優れた耐光堅牢度と耐摩耗性、高い強度を有しており、また人工皮革の表面は均一な色相を有していた。
<繊維質基材を製造する工程>
織物として織物Bを用いた以外は実施例4と同様にして、目付が700g/m2で、厚みが3.0mmの絡合シートを得た。
上記の絡合シートを用いた以外は請求項4と同様にして、極細繊維の平均単繊維直径が4.4μmで、目付が320g/m2、厚みが0.9mmの人工皮革を得た。得られた人工皮革は、優れた耐光堅牢度と耐摩耗性、高い強度を有しており、また人工皮革の表面は均一な色相を有していた。
原綿Dを用いた以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革は、実施例1対比で耐摩耗性および強度に劣るものであった。結果を表2に示す。
原綿Fを用いた以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得た。得られた人工皮革は、実施例1対比で耐摩耗性および強度に劣るものであった。結果を表2に示す。
2:黒色顔料
3:黒色顔料を含まない熱可塑性樹脂の領域(A)
4:黒色顔料を含む熱可塑性樹脂の領域(B)
X:繊維表面から最も遠い黒色顔料までの距離
Claims (10)
- 平均単繊維直径が1.0μm以上10.0μm以下であって、熱可塑性樹脂からなる極細繊維から構成された不織布を構成要素として含む繊維絡合体と、高分子弾性体とからなる人工皮革であって、以下の要件1~4を全て満たす、人工皮革。
要件1:前記極細繊維は黒色顔料を含む
要件2:前記極細繊維のうち、黒色顔料を含まない熱可塑性樹脂の領域(A)が黒色顔料を含む熱可塑性樹脂の領域(B)に包含される
要件3:極細繊維に含まれる黒色顔料の割合が、極細繊維の質量に対し0.01質量%以上0.2質量%以下の範囲である
要件4:前記黒色顔料を含む熱可塑性樹脂の領域(B)の面積(S B )の極細繊維の面積(S F )に対する比率(S B /S F )が、5%以上40%以下である - 前記黒色顔料がカーボンブラックである、請求項1に記載の人工皮革。
- 前記黒色顔料の平均粒子径が0.01μm以上0.30μm以下である、請求項1または2に記載の人工皮革。
- 前記熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂からなる、請求項1~3のいずれかに記載の人工皮革。
- 前記高分子弾性体がポリウレタンからなる、請求項1~4のいずれかに記載の人工皮革。
- 前記繊維絡合体が、平均単繊維直径が1.0μm以上10.0μm以下であって、熱可塑性樹脂からなる極細繊維から構成された不織布である、請求項1~5のいずれかに記載の人工皮革。
- 前記繊維絡合体が、平均単繊維直径が1.0μm以上10.0μm以下であって、熱可塑性樹脂からなる極細繊維から構成された不織布と、織物とが絡合一体化されてなるものである、請求項1~5のいずれかに記載の人工皮革。
- 前記織物を構成する繊維の平均単繊維直径が1.0μm以上50.0μm以下である、請求項7に記載の人工皮革。
- 前記織物を構成する繊維が、黒色顔料を含まない繊維である、請求項7または8に記載の人工皮革。
- 次の工程(1)~(4)を含み、請求項1~9のいずれかに記載の人工皮革を得る、人工皮革の製造方法。
工程(1):繊維断面において黒色顔料を含まない熱可塑性樹脂からなる芯成分と、黒色顔料を含む熱可塑性樹脂からなる鞘成分とが芯鞘型に複合されて島部を形成し、易溶解性ポリマーが海部を形成する海島型複合構造を有する極細繊維発現型繊維を製造する工程
工程(2):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材を製造する工程
工程(3):極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材から、平均単繊維直径が1.0μm以上10.0μm以下の極細繊維を発現させる工程
工程(4):極細繊維、または、極細繊維発現型繊維を主構成成分とする繊維質基材に高分子弾性体を付与する工程
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019052643 | 2019-03-20 | ||
JP2019052643 | 2019-03-20 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020158943A JP2020158943A (ja) | 2020-10-01 |
JP7352142B2 true JP7352142B2 (ja) | 2023-09-28 |
Family
ID=72642157
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019125898A Active JP7352142B2 (ja) | 2019-03-20 | 2019-07-05 | 人工皮革およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7352142B2 (ja) |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000045186A (ja) | 1998-05-19 | 2000-02-15 | Toray Ind Inc | 人工皮革 |
JP2018178297A (ja) | 2017-04-10 | 2018-11-15 | 旭化成株式会社 | 人工皮革 |
-
2019
- 2019-07-05 JP JP2019125898A patent/JP7352142B2/ja active Active
Patent Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000045186A (ja) | 1998-05-19 | 2000-02-15 | Toray Ind Inc | 人工皮革 |
JP2018178297A (ja) | 2017-04-10 | 2018-11-15 | 旭化成株式会社 | 人工皮革 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2020158943A (ja) | 2020-10-01 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
RU2527367C1 (ru) | Искусственная кожа со сверхтонкими волокнами и способ ее изготовления | |
TWI250239B (en) | A composite sheet used for artificial leather with low elongation and excellent softness | |
CN101331265A (zh) | 具有优异的强度和伸长率性质的绒面状人造革 | |
JP2007303020A (ja) | 着色された繊維構造物およびその製造方法 | |
JP2011153389A (ja) | 人工皮革およびその製造方法 | |
JP2019143280A (ja) | シート状物 | |
JP7352142B2 (ja) | 人工皮革およびその製造方法 | |
JP5216970B2 (ja) | ポリエステル編地およびその製造方法および繊維製品 | |
TWI782262B (zh) | 片狀物 | |
JP7347078B2 (ja) | 人工皮革およびその製造方法 | |
JP7096694B2 (ja) | メランジ効果を発現する人工皮革 | |
JP7367371B2 (ja) | 人工皮革およびその製造方法 | |
JP2012136801A (ja) | 新規模様を有する人工皮革およびその製造方法 | |
WO2023189269A1 (ja) | 人工皮革およびその製造方法、複合人工皮革 | |
JP7156559B1 (ja) | 人工皮革 | |
JP4419669B2 (ja) | 皮革様シート状物ならびにその製造方法 | |
JP2020084333A (ja) | シート状物 | |
JP7404970B2 (ja) | 人工皮革およびその製造方法 | |
JP2021134457A (ja) | シート状物 | |
JP2023133174A (ja) | 人工皮革およびその製造方法 | |
JP2022147992A (ja) | 人工皮革 | |
US20230323594A1 (en) | Artificial leather, production method therefor, and artificial leather backing material | |
JP2024065002A (ja) | 人工皮革 | |
JP2022044226A (ja) | 人工皮革およびその製造方法 | |
JP2024052600A (ja) | 人工皮革 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20220603 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20230309 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20230328 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20230519 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20230816 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20230829 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 7352142 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |