JP7339538B2 - 金属セラミックス積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、セラミックス膜上に金属膜が形成された金属セラミックス積層体に関する。
優れた機械的特性、耐反応性、耐熱性、絶縁性、放熱性などを有するセラミックス膜を、金属、セラミックス、樹脂などの基材上に形成したセラミックス積層体は、耐磨耗性部材、耐食性部材、絶縁放熱部材などに幅広く用いられている。このようなセラミックス積層体のセラミックス膜に使用されるセラミックス材料としては、酸化アルミニウム(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化けい素(Si34)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、炭化けい素(SiC)、酸化イットリウム(Y23)、酸化けい素(SiO2)、窒化ほう素(BN)などが挙げられる。一方で、用途によっては、セラミックス膜上にさらに金属膜を全面あるいは一部に形成して所要の金属特性を付与した金属セラミックス積層体が必要となる場合がある。例えば、絶縁放熱部材の導体回路パターンなどがこれにあたる。
しかしながら、これらの用途において、金属セラミックス積層体の使用環境はますます過酷になっており、使用中の様々な種類・大きさの応力の下で、「基材とセラミックス膜」および「セラミックス膜と金属膜」がそれぞれの界面で剥離することなく、それぞれ強固に接合していること(高い接合力)が求められる。しかし、製造方法によっては、各材料を接合あるいは形成する過程で500℃を超えるような高温加熱が必要であり、材料間の熱膨張差により残留熱応力が生じてしまい、それにより接合強度が低下する場合がある。したがって、製造過程で高温加熱を行うことなしにセラミックス膜および金属膜を形成することで、残留熱応力が生じていない金属セラミックス接合体とすることが好ましい。
基材上へのセラミックス膜の常温(あるいは低温)形成については、セラミックス成膜法の1つであるエアロゾルデポジション法(AD法ともいう)によって、セラミックス膜と基材を比較的強固に接合させつつ、セラミックス膜を常温で形成させることができる。エアロゾルデポジション法とは、セラミックス微粒子をガスと混合してエアロゾル化し、減圧された成膜室内で基材上に高速噴射することで、基材上に緻密なセラミックス膜を常温で形成する技術である。噴射されたセラミックス微粒子は、基材に衝突する際に変形することにより、微粒子/基材間あるいは微粒子/微粒子間の新生面同士で化学結合を形成することができ、さらには膜の緻密化を実現することができる。特に、微粒子/基材間では、微粒子が基材表面を削り、めり込むことによって微細な凹凸が形成され、アンカー効果も得ることができる。
一方で、セラミックス上への金属膜の低温形成については、めっき法やペースト塗布法などによって、比較的低温で金属膜を形成することができる。また、上記のエアロゾルデポジション法は金属材料も成膜可能であることから、エアロゾルデポジション法により常温で金属膜を形成することも考えられる。これらの方法によってセラミックス上に金属膜を形成した金属セラミックス積層体がいくつか提案されている(特許文献1~3を参照)。
特許文献1には、セラミックス等からなる無機質表面をアルカリ粗化した後に、無電解めっきを行い、無機質表面に金属皮膜を形成する方法が記載されている。また、特許文献1では、上記の方法により、セラミックス等の無機質表面上の無電解めっきによる金属皮膜が安定的に行える旨が記載されている。
特許文献2には、セラミックスからなる絶縁基板と導体層が銅めっき層を介し一体化された回路基板が記載されている。また、特許文献2では、絶縁基板と導体層との間に銅めっき層を介在させることで、導体層にガラス成分を含まずとも、絶縁基板と導体パターンとが強固に一体化された回路基板を実現することができると記載されている。さらに、特許文献2では、この回路基板は絶縁基板上にめっき法により銅層を形成した後、その上に導体ペーストを塗布して、乾燥、焼成することによって製造されると記載されている。
特許文献3には、エアロゾルデポジション法を用いて、アルミナ等の基板上に金属薄膜からなる電極または配線パターンを形成する方法が記載されている。また、特許文献3では、溶液や樹脂成分を用いるペースト印刷法と比べて、大幅にプロセス削減することができると記載されている。
特開昭61-063581号公報 特許第6307009号公報 特許第5659495号公報
めっき法を利用する際は、めっき膜(層)とセラミックス基材との間にアンカー結合を発現させるために事前にセラミックス基材の表面をエッチングして凹凸を形成しなければ、強固な接合が得られにくい。それに加え、エッチングを行った場合でも、セラミックス表面がダメージを受けて強度が低下してしまうことがあるし、基本的にはセラミックスの結晶粒界がエッチングされるため、複雑な界面形状とすることは難しいという問題がある。一方で、エアロゾルデポジション法で金属材料を成膜する際は、下層の材料が金属粒子に比べて相対的に変形しにくいことが多いため、下層材料表面の新生面が出づらく、また、凹凸によるアンカー効果も得られにくくなる。そのため、エアロゾルデポジション法で金属膜を形成する場合には、同法でセラミックス膜を形成する場合よりも高い接合力が得られにくいという問題がある。しかしながら、特許文献1~3のいずれにおいても、これらの観点からは必ずしも十分な検討はなされていない。
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、セラミックス膜上に金属膜が形成されており、金属膜とセラミックス膜の間で改善された接合力を有する金属セラミックス積層体を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は下記のとおりである。
(1)基材、前記基材上に形成されたセラミックス膜、および前記セラミックス膜上に形成された金属膜を含み、前記セラミックス膜と前記金属膜の界面にかえし部が形成されており、前記かえし部の長さ密度が0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下であることを特徴とする、金属セラミックス積層体。
(2)前記セラミックス膜が金属分散相を含み、前記金属分散相の最大存在深さが前記セラミックス膜の厚さの1/3以下であることを特徴とする、上記(1)に記載の金属セラミックス積層体。
(3)前記界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率が3%以下であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の金属セラミックス積層体。
(4)前記セラミックス膜が窒化けい素を含むことを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の金属セラミックス積層体。
(5)前記金属膜が銅を含むことを特徴とする、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の金属セラミックス積層体。
(6)前記基材が金属材料であることを特徴とする、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のセラミックス積層体。
(7)上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の金属セラミックス積層体から構成されることを特徴とする、絶縁放熱部材。
本発明によれば、セラミックス膜上に金属膜が形成された金属セラミックス積層体において、前記セラミックス膜と前記金属膜の界面に0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下の長さ密度を有するかえし部を形成することで、金属膜とセラミックス膜を互いに複雑に噛み込み合わせることができるため、金属膜とセラミックス膜の間に優れた接合力を有する金属セラミックス積層体を実現することができる。
本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体の膜厚方向の断面の一例を示す概略図である。 セラミックス膜と金属膜の界面部分の膜厚方向の断面の一例を示す概略図である。 セラミックス膜と金属膜の界面部分の膜厚方向の断面の一例を示す概略図である。 セラミックス膜と金属膜の界面部分の膜厚方向の断面の一例を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体の製造方法で用いられるエアロゾルデポジション装置の一例を示す概略図である。
<金属セラミックス積層体>
本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体は、基材、前記基材上に形成されたセラミックス膜、および前記セラミックス膜上に形成された金属膜を含み、前記セラミックス膜と前記金属膜の界面にかえし部が形成されており、前記かえし部の長さ密度が0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下であることを特徴としている。
先に述べたとおり、セラミックス膜上に金属膜を低温形成する技術としては、例えば、めっき法、ペースト塗布法およびエアロゾルデポジション法などがある。しかしながら、いずれの技術を適用した場合でも、従来の方法では、界面における凹凸形成によって十分なアンカー効果を得ることが難しかったり、このようなアンカー効果を得るためにエッチング等の追加の工程が必要であったりといった問題があり、さらにはエッチング等の追加の工程はセラミックス表面にダメージを与えて強度を低下させてしまう虞もある。したがって、強度低下などの不利な影響なしにセラミックス膜と金属膜とを確実に高い接合力で積層した金属セラミックス積層体を得ることは一般に困難である。
そこで、本発明者らは、セラミックス膜上に金属膜が形成された金属セラミックス積層体において、セラミックス膜と金属膜の界面にかえし部を所定の長さ密度、具体的には0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下の長さ密度で設けて当該セラミックス膜の表面に金属膜の一部が埋まったような形態を作り出すことで、金属膜とセラミックス膜を互いに複雑に噛み込み合わせることができるため、金属膜とセラミックス膜の間に優れた接合力を有する金属セラミックス積層体を実現することができることを見出した。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体についてより詳しく説明するが、これらの説明は、本発明の好ましい実施形態の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
図1は本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体の膜厚方向の断面の一例を示す概略図である。図1を参照すると、金属セラミックス積層体1は、基材2と、基材2上に積層されたセラミックス膜3と、セラミックス膜3上に積層された金属膜4とでなる。基材2は、任意の適切な形状を有することができ、特に限定されないが、実際上、基材2は、例えば、板状、円柱状、円筒状などの部材でなる。基材2の表面全体あるいは一部にセラミックス膜3が形成されている。また、セラミックス膜3の表面全体あるいは一部に金属膜4が形成されている。このような金属セラミックス積層体1の膜厚方向の断面には、基材2とセラミックス膜3の界面5と、セラミックス膜3と金属膜4の界面6が現れる。
図2はセラミックス膜と金属膜の界面部分の膜厚方向の断面の一例を示す概略図である。図2に示すように、セラミックス膜3と金属膜4の界面6は、後で詳しく説明する所定の長さ密度を有するかえし部6aを形成しており、当該かえし部6aに金属膜4の一部が埋まることで金属膜4とセラミックス膜3が互いに複雑に噛み込み合っているため、金属膜4とセラミックス膜3の間に優れた接合力を作り出すことが可能となる。ここで、本発明において、かえし部とは、図2において太線6aで示される部分をいうものであり、より具体的には金属膜4とセラミックス膜3がなす連続曲線である界面6のうち、最も金属膜側の界面を除いて膜厚方向に1本以上の界面が存在する界面6の部分をいうものである。以下、本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体の各構成についてより詳しく説明する。
[基材]
本発明の実施形態に係る基材は、任意の適切な材料であってよく、特に限定されないが、例えば金属材料であることが望ましい。基材を金属材料とすることで、お互いに物性が大きく異なるセラミックス膜と金属基材それぞれの優れた特徴を併せ持つ金属セラミックス積層体とすることができる。このような金属材料としては、特に限定されないが、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)、銀(Ag)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、コバルト(Co)、白金(Pt)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、および金(Au)からなる群より選択される少なくとも1種であってもよく、またはこれらの元素のうち少なくとも1種を主体とする合金であってもよい。あるいはまた、金属材料は、これらの元素のうち少なくとも1種中にまたはこれらの元素のうち少なくとも1種を主体とする合金中に、セラミックスなどの金属以外の材料が含まれる複合材料であってもよい。本発明において、主体とは、全体の質量を基準として、対象となる材料を50質量%以上含有することをいうものである。
[セラミックス膜]
上記の基材上に形成されるセラミックス膜は、金属膜との界面に0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下のかえし部が形成されたものであれば改善された接合力を提供できるため、当該セラミックス膜を構成するセラミックス材料の種類は特に限定はされない。したがって、セラミックス膜は、任意のセラミックス材料であってよく、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化けい素、酸化ジルコニウム、炭化けい素、酸化イットリウム、酸化けい素、および窒化ほう素からなる群より選択される少なくとも1種を含むかもしくは上記の群より選択される少なくとも1種であってもよく、またはこれらのセラミックスのうち少なくとも1種を主体とする複合セラミックスであってもよい。これらの中でも、特に、窒化けい素は優れた機械的特性と比較的高い熱伝導性を有することから、このような観点からは、セラミックス膜は窒化けい素を含むかまたは窒化けい素であることが望ましい。
[金属膜]
同様に、金属膜は、任意の適切な金属材料を含むものであってよく、特に限定されないが、例えば熱伝導性および電気伝導性の高い銅(Cu)を含むかまたは銅であることが望ましい。また、銅は金属材料の中でも粉末状態での安定性が高いため、金属膜の形成時に金属粉末を使用する場合(例えば、エアロゾルデポジション法など)、ハンドリング性に優れる利点もある。
[かえし部の長さ密度(M):0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下]
本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体では、セラミックス膜と金属膜の界面にかえし部が形成されており、当該かえし部の長さ密度は0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下である。かえし部の長さ密度を0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下とすることで、金属膜とセラミックス膜を互いに複雑に噛み込み合わせることができるため、金属膜とセラミックス膜の間に優れた接合力を発現させることができる。かえし部の長さ密度は、好ましくは1.0μm/μm2以上、さらに好ましくは3.0μm/μm2以上である。かえし部の長さ密度を大きくすることで、金属膜とセラミックス膜を互いにさらに複雑に噛み込み合わせることができるため、金属膜とセラミックス膜の間にさらに優れた接合力を発現させることができる。
一方、かえし部の長さ密度が0.2μm/μm2未満の場合、かえし部の量が少なくなり、金属膜とセラミックス膜が互いに十分には噛み込み合えなくなるため、接合力が低下してしまう。例えば、セラミックス膜と金属膜の界面が単純に膜厚方向に凹凸しているだけの形状の場合、かえし部の長さ密度は0.0μm/μm2となるため、接合力は低い。かえし部の長さ密度は、上述のように基本的に大きいほど望ましいが、大きすぎるとセラミックス膜中のかえし部上部または内部(図2中の7または8)に入り込むセラミックス材料の量が極端に減ってしまうため、セラミックス膜が破壊されやすくなり、接合力の低下を招く。したがって、かえし部の長さ密度は5.0μm/μm2以下とし、4.5μm/μm2以下であってもよい。
[かえし部の長さ密度(M)の測定]
本発明において、かえし部の長さ密度とは、単位面積に含まれるかえし部の総長さをいうものであり、以下の(式1)で表される。
M=(I1+I2+・・・+In+・・・+IN)/A (式1)
図2を参照して説明すると、式中、Mはかえし部6aの長さ密度(μm/μm2)を表し、Nは界面領域6b中のかえし部6aの数を表し、Inは界面領域6b中のn個目(1≦n≦Nの整数)のかえし部6aの長さ(μm)を表し、Aは界面領域6bの面積(μm2)を表す。また、界面領域6bとは、界面6を囲う長方形、つまり界面6の最大高低差を縦とし、面内(水平)方向の10μm以上の任意の長さを横とした長方形の領域をいうものである。
具体的には、かえし部の長さ密度Mは、以下のようにして決定される。まず、セラミックス膜と金属膜の界面が鮮明に撮影された膜厚方向の断面のSEM画像を用意する。用いるSEM画像は、1画素あたりの長さが0.02μm以下、面内方向の視野長さが10μm以上、膜厚方向の視野長さがセラミックス膜と金属膜の界面を視野内に収める長さ以上である必要がある。前記面内方向の視野長さおよび前記膜厚方向の視野長さが、1枚のSEM画像で確保できない場合、複数枚のSEM画像を連結して各視野長さを確保する。次いで、このSEM画像において、画像解析ソフトなどにより、セラミックス膜と金属膜の界面を連続曲線としてトレースして当該界面を決定する。決定した界面に対して、上記で説明した長方形の界面領域を描き、その面積Aを測定する。次に、決定した界面のうち、上記で説明したかえし部に対応する部分を抽出し、N個のかえし部のそれぞれの長さI1、I2、・・・INを測定する。最後に、上記式(1)から、かえし部の長さ密度Mを算出する。
[金属分散相の最大存在深さ(H):セラミックス膜の厚さ(t)の1/3以下]
図3はセラミックス膜と金属膜の界面部分の膜厚方向の断面の一例を示す概略図である。金属セラミックス積層体1の製造においては、セラミックス膜3と金属膜4の界面6に接合力を向上させるかえし部6aを形成させるために、製造条件によっては、セラミックス膜3側に金属分散相3aがやむを得ず混入してしまう場合がある。金属分散相3aの混入量が多くなると、すなわちこの金属分散相3aがセラミックス膜3内の深い位置まで混入してしまうと、当該金属分散相3aはセラミックス膜3内で破壊の起点となってセラミックス膜3が本来持っている機械的特性や絶縁性を劣化させてしまうことがある。
本発明において、金属分散相とは、セラミックス膜と金属膜の界面からセラミックス膜側に混入して孤立分散している相面積0.01μm2以上の金属相をいうものである。なお、相面積0.01μm2未満の金属分散相は、相面積が小さいため、セラミックス膜が本来持っている機械的特性や絶縁性の劣化を引き起こしにくく、その影響を無視することができる。本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体では、セラミックス膜の本来の機械的特性や絶縁性を確実に発揮させるために、金属分散相の最大存在深さはセラミックス膜の厚さの1/3以下であることが望ましい。金属分散相の最大存在深さは、好ましくはセラミックス膜の厚さの1/5以下、さらに好ましくはセラミックス膜の厚さの1/10以下である。一方、金属分散相の最大存在深さがセラミックス膜の厚さの1/3超の場合、上述のようにセラミックス膜が本来持っている機械的特性や絶縁性を劣化させてしまい、接合力が低下してしまったり、絶縁破壊しやすくなってしまったりする恐れがある。
[金属分散相の最大存在深さ(H)およびセラミックス膜の厚さ(t)の測定]
本発明において、金属分散相の最大存在深さとは、図3を参照して説明すると、図3においてHとして示されるように、セラミックス膜3と金属膜4の界面6の最大高さと、複数の金属分散相3aのうちセラミックス膜3の最深部に存在する金属分散相3aとの高さの差をいうものである。また、セラミックス膜の厚さとは、図3においてtとして示されるように、セラミックス膜3と金属膜4の界面6の最大高さと、セラミックス膜3と基材2の界面5の最小高さとの差をいうものである。
具体的には、金属分散相の最大存在深さおよびセラミックス膜の厚さは、以下のようにして決定される。まず、セラミックス膜と金属膜の界面からセラミックス膜と基材の界面までが鮮明に撮影された膜厚方向の断面のSEM画像を用意する。用いるSEM画像は、1画素あたりの長さが0.02μm以下、面内方向の視野長さが10μm以上、膜厚方向の視野長さがセラミックス膜と金属膜の界面からセラミックス膜と基材の界面までを視野内に収める長さ以上である必要がある。前記面内方向の視野長さおよび前記膜厚方向の視野長さが、1枚のSEM画像で確保できない場合、複数枚のSEM画像を連結して各視野長さを確保する。次いで、このSEM画像において、画像解析ソフトなどにより、上記で説明した相面積が0.01μm2以上の金属分散相を検出して当該金属分散相の最大存在深さを測定するとともに、セラミックス膜の厚さを測定する。
[セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率(ρ):3%以下]
本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体では、セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率が3%以下であることが望ましい。図4はセラミックス膜と金属膜の界面部分の膜厚方向の断面の一例を示す概略図である。金属セラミックス積層体1の製造においては、製造条件によっては、図4に示すように、セラミックス膜3と金属膜4の界面6のセラミックス膜側近傍領域3bに気孔3cを生じさせてしまう場合がある。当該近傍領域3bにおける気孔3cの量が多くなると、それがセラミックス膜3中で破壊の起点となり、当該セラミックス膜3の強度を低下させてしまうことがある。ここで、本発明において、セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域とは、図4において面積Bとして示される部分をいうものであり、より具体的には界面6と、界面6からセラミックス膜3の厚さtの1/3の深さにおいて面内方向に引いた線分で囲まれたセラミックス膜3内の領域をいうものである。面内方向に引いた線分は10μm以上の任意の長さである。この近傍領域における気孔率を3%以下とすることで、当該近傍領域におけるセラミックス膜3中で破壊の起点となる気孔を減らし、その強度を向上させることができるため、金属膜4とセラミックス膜3の接合力をより高めることができる。
また、本発明において、気孔とは、気孔面積が0.0004μm2以上の気孔をいうものである。なお、気孔面積0.0004μm2未満の気孔は、気孔面積が小さいため、セラミックス膜中で破壊の起点にはなりにくく、その影響を無視することができる。上記の気孔率は、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。当該気孔率を3%よりも小さくすることで、セラミックス膜中で破壊の起点となる気孔をさらに減らし、その強度をより向上させることができるため、金属膜とセラミックス膜の接合力をより高めることができる。一方、気孔率が3%超の場合、セラミックス膜中で破壊の起点となる気孔が増加するため、セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域におけるセラミックス膜が破壊されやすくなり、その結果、金属膜とセラミックス膜の接合力が低下してしまう恐れがある。
[セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率(ρ)の測定]
セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率は以下の(式2)で表される。
ρ=((P1+P2+・・・+Pk+・・・+PK)/B)×100 (式2)
図4を参照して説明すると、式中、ρはセラミックス膜3と金属膜4の界面6のセラミックス膜側近傍領域3bにおける気孔率(%)を表し、Kは当該近傍領域3b中の気孔3cの数を表し、Pkは当該近傍領域3b中のk個目(1≦k≦Kの整数)の気孔3cの面積(μm2)を表し、Bは当該近傍領域3bの面積(μm2)を表す。
具体的には、セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率ρは以下のようにして決定される。まず、セラミックス膜と金属膜の界面からセラミックス膜と基材の界面までが鮮明に撮影された膜厚方向の断面のSEM画像を用意する。用いるSEM画像は、1画素あたりの長さが0.02μm以下、面内方向の視野長さが10μm以上、膜厚方向の視野長さがセラミックス膜と金属膜の界面からセラミックス膜と基材の界面5までを視野内に収める長さ以上である必要がある。前記面内方向の視野長さおよび前記膜厚方向の視野長さが、1枚のSEM画像で確保できない場合、複数枚のSEM画像を連結して各視野長さを確保する。次いで、このSEM画像において、画像解析ソフトなどにより、セラミックス膜と金属膜の界面を連続曲線としてトレースして当該界面を決定する。決定した界面を用いて、上記で説明したセラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域3bを抽出し、その面積Bを測定する。次に、当該近傍領域3b内の気孔面積が0.0004μm2以上の気孔を抽出し、それぞれの面積P1、P2、・・・PKを測定する。最後に、上記式(2)から、セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率ρを算出する。
[金属セラミックス積層体の製造方法]
次に、本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体の好ましい製造方法について説明する。以下の説明は、本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体を製造するための特徴的な方法の例示を意図するものであって、当該金属セラミックス積層体を以下に説明するような製造方法によって製造されるものに限定することを意図するものではない。
基材上へのセラミックス膜の形成方法については、PVD法、CVD法、溶射法、コールドスプレー法、ゾルゲル法など特に限定しないが、例えば、ガスと混合してエアロゾル化したセラミックス微粒子を、減圧された成膜室内で基材上に高速噴射してセラミックス膜を形成するエアロゾルデポジション法が、緻密なセラミックス膜を常温で形成できる点で適している。また、セラミックス膜を形成する際に最終層を、金属膜と同種の金属粉末を配合したセラミックス粉末を用いて形成することで、セラミックス膜の表面に金属相が埋まったような形態とすることができ、その上に金属膜を形成した際に、当該金属膜がセラミックス膜に埋まった同種の金属相と接合し、図2で示したようなセラミックス膜と金属膜の界面が複雑形状を呈した本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体を製造できる。
セラミックス膜上への金属膜の形成方法については、めっき法、ペースト塗布法、溶射法、コールドスプレー法、ガスデポジション法など特に限定しないが、例えば、上記セラミックス膜の形成でも説明したエアロゾルデポジション法が、緻密な金属膜を常温で形成できる点で望ましい。以下、エアロゾルデポジション法を例にして金属セラミックス積層体の製造方法を説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体の製造方法で用いられるエアロゾルデポジション装置の一例を示す概略図である。金属セラミックス積層体1を図5に例示するエアロゾルデポジション装置11を用いて製造する。図5のエアロゾルデポジション装置11は、エアロゾル化容器12と、成膜室13と、エアロゾル搬送管14と、真空ポンプ15と、ガス供給系16とを備える。エアロゾル化容器12と成膜室13は、エアロゾル搬送管14によって接続されている。真空ポンプ15は、成膜室13に接続されており、成膜室13内を減圧する。ガス供給系16とエアロゾル化容器12は、調整ガス配管18と巻上ガス配管19によって接続されている。
エアロゾル化容器12には、容器内部にセラミックスや金属の原料粉末17が収容されており、巻上ガス配管19から原料粉末17に窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、酸素(O2)ガス、空気などの成膜ガスが巻上ガスとして供給され、エアロゾル化容器12内部空間にも調整ガス配管18から前記成膜ガスが調整ガスとして供給される。なお、エアロゾル化容器12には、原料粉末17を撹拌するための振動機構(図示せず)と、原料粉末17を乾燥するための加熱機構(図示せず)とが設けられている。また、目的によっては、巻上ガス配管19の途中に、原料粉末17を回転する円形ブラシで少しずつ掻き取りながら連続的にエアロゾル化容器12に供給する機構(図示せず)が設けられることもある。この場合、エアロゾル化容器12には成膜前に原料粉末17が収容されておらず、成膜開始後に原料粉末が連続的に供給される。
成膜室13の内部には、エアロゾル搬送管14のノズル口に対して、基材固定面が対向するようにステージ20が設けられている。基材2は、ステージ20の当該基材固定面に固定される。ステージ20には、ステージ20を動かすことでエアロゾルが基材2あるいはセラミックス膜3に当たる位置を変え、エアロゾルを基材2あるいはセラミックス膜3の表面に繰り返し吹き付けるための水平駆動機構21が設けられている。
以上のような構成を有したエアロゾルデポジション装置11では、ガス供給系16からエアロゾル化容器12内に巻上ガス配管19を通じて成膜ガスを供給し、原料粉末微粒子を含むエアロゾルをエアロゾル化容器12内に生成する。このとき、エアロゾルデポジション装置11は、調整ガス配管18を通じてエアロゾル化容器12内に成膜ガスを供給し、調整ガス配管18と巻上ガス配管19から供給された成膜ガスにより、エアロゾル化容器12内のエアロゾルを、エアロゾル搬送管14を通じて成膜室13に供給する。
真空ポンプ15により減圧された成膜室13内では、エアロゾル搬送管14のノズル口からステージ20に固定された基材2あるいはセラミックス膜3に向けてエアロゾルが噴射される。この際、エアロゾルデポジション装置11は、水平駆動機構21によってステージ20を水平方向(図5中の矢印の方向)に往復移動させ、エアロゾル搬送管14のノズル口から噴射されたエアロゾルを、基材2あるいはセラミックス膜3の表面上に繰り返し吹き付けさせる。
以下、エアロゾルデポジション法(AD法)を用いた金属セラミックス積層体の製造方法についてより詳しく説明する。例えば、上で説明した特徴を有する本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体は、
セラミックス粉末を用いてエアロゾルデポジション法により基材上にセラミックス膜を形成する工程(工程1)、
前記セラミックス粉末に金属粉末を配合した混合粉末を用いてエアロゾルデポジション法により前記セラミックス膜の表面に金属相が分散して埋没した形態を形成する工程(工程2)、および
得られたセラミック膜上に前記金属粉末を用いてエアロゾルデポジション法により金属膜を形成する工程(工程3)
を含むことを特徴とする方法によって製造することが可能である。上記の製造方法によれば、セラミックス膜と金属膜の界面において、図2に示したような複雑形状を容易に形成することができる。以下、この製造方法の各工程について詳しく説明する。
[工程1:セラミックス膜の形成工程]
エアロゾルデポジション法によるセラミックス膜の形成工程(工程1)においては、最適な成膜条件が存在する。そのなかでも特に、セラミックス原料粉末の粒子径の効果が大きく、最適な粒子径の原料粉末を用いて成膜しなければ成膜現象を起こすことができない。例えば、粒子径が大きすぎる場合、粒子が変形せずに、ブラストのように基材を削り取ってしまい、成膜されない。粒子径が小さすぎる場合、粒子が成膜ガスに追従してしまうことにより、基材に粒子が衝突しなくなり、同様に成膜されない。一般的に、エアロゾルデポジション法で成膜が可能なセラミックス粉末の粒子径の範囲は、0.1~10μm程度であるが、この範囲は材料系によって、例えば0.1~1.0μm程度といったようにさらに絞られる場合が多い。なお、前記粒子径は、エアロゾルとなって噴射される最終的なセラミックス原料粉末のメディアン径(積算体積が50%に達したときの粒子径)をいうものであり、以降も同様である。一方、金属粉末の成膜については、粒子径の範囲が0.1~10μm程度であれば、セラミックス粉末のように材料系に応じてさらに範囲を絞ることなく、広い粒子径範囲で成膜できることが多い。
例えば、エアロゾルデポジション法により、特に金属材料を含むかまたは金属材料から構成される基材上にセラミックス膜を形成する場合には、噴射されるセラミックス粒子が、相対的な硬度が大幅に小さい金属基材にめり込むことによってアンカー効果を発揮する凹凸が基材とセラミックス膜の界面に形成されるため、当該金属基材とセラミックス膜の間で高い接合力が得やすくなるという利点がある。
[工程2:界面調整工程]
工程1で形成したセラミックス膜の表面に金属分散相を埋め込む工程(工程2)については、以下で説明するように、さらに注意が必要となる。エアロゾルデポジション法においては、変形しやすい金属粒子は、変形しにくいセラミックス粒子と比べて膜化しやすいため、セラミックス膜中に粗大な金属相が混入してしまう恐れがある。そのため、金属粉末をセラミックス粉末に配合する際は、粒子径(メディアン径)がセラミックス粉末の粒子径の2倍以下、好ましくは1倍以下である金属粉末を用いる必要がある。すなわち、一般的には成膜可能な粒子径範囲が広いとされる金属粉末も、セラミックス粉末の粒子径に応じて、選定する必要があるということである。また、上記と同様の理由から、金属粉末をセラミックス粉末に配合する際は、材料系にもよるが、配合原料粉末中の金属粉末の割合は1~30vol%程度と小さく抑えておく必要がある。金属粉末の粒子径(メディアン径)および当該金属粉末の割合を適切に制御することにより、セラミックス膜と金属膜の界面にかえし部が形成され、前記かえし部の長さ密度Mが0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下である金属セラミックス積層体を確実に得ることができる。
例えば、金属分散相の最大存在深さHをセラミックス膜の厚さの1/3以下とするために、工程2において、工程1に対して積層回数や粉末噴射量を減らしてもよいし、工程2の後にセラミックス膜の表面を研磨してもよい。特に研磨の場合、膜表面に弱く付着した金属粒子やセラミックス粒子を除去できる点でより望ましい。
金属粒子は膜化しやすいことから、エアロゾル中で金属粒子が凝集した状態で成膜が行われると、金属粒子が緻密化せぬまま膜化してしまい、工程2において形成したセラミックス膜中に気孔を生じさせてしまうことがある。そのため、セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率ρを3%以下とするためには、セラミックス粒子と金属粒子がお互いに確実に混ざり合う方法で原料粉末(混合粉末)が配合され、混ざり合った状態を保ったままエアロゾルとして噴射されることが望ましい。原料粉末の配合法としては、一般的な粉末混合法であるボールミル、ビーズミルなどが挙げられるが、これらの方法は混合時に付与されるエネルギーが大き過ぎる場合があり、金属粒子が大きく塑性変形したり、金属粒子同士が固着したりする恐れがある。このため、付与エネルギーを小さくするか、薬さじ、乳鉢での混合程度に留めておくことが望ましい。また、エアロゾルデポジション装置による成膜の際に、成膜中に回転ブラシで粉末を掻き取りながら連続的にエアロゾル化容器に供給する機構を用いると、原料粉末中のセラミックス粒子と金属粒子がより混合した状態でエアロゾル化容器に連続的に供給される点で好ましい。
セラミックス膜を窒化けい素とする場合、窒化けい素はエアロゾルデポジション法による成膜が比較的難しい材料であることから、工程2において金属粉末をセラミックス(窒化けい素)粉末に配合する際は、配合原料粉末中の金属粉末の割合は1~20vol%程度とさらに小さくすることが望ましい。これにより、セラミックス(窒化けい素)膜と金属膜の界面にかえし部が形成され、前記かえし部の長さ密度Mが0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下である金属セラミックス積層体を確実に得ることができる。
[工程3:金属膜の形成工程]
最後に、工程3において、原料粉末を工程2で混合粉末に配合した金属粉末と同種の金属粉末を単独で用いて、エアロゾルデポジション法により金属膜を形成することで、セラミックス膜と金属膜の界面が図2に示したような複雑形状を呈した金属セラミックス積層体を製造することができる。工程3で使用する金属粉末は、上記のとおり、工程2で混合粉末に配合した金属粉末と同種の金属粉末である。したがって、当該金属粉末の粒子径(メディアン径)についても、工程1および2に関連して説明したのと同様に、一般的には0.1~10μm程度であり、好ましくは工程1で使用されるセラミックス粉末の粒子径の2倍以下または1倍以下である。
本発明の実施形態に係る金属セラミックス積層体は、任意の適切な用途において使用可能であり、特に限定されないが、セラミックス膜と金属膜が強固に接合しているため、特に半導体モジュール向けの絶縁放熱部材として有効に使用することができる。絶縁放熱部材は、半導体モジュール内において、電気を絶縁するとともに、熱を逃がす役割を担う部材である。本金属セラミックス積層体を当該絶縁放熱部材として使用する場合には、例えば、セラミックス膜は絶縁層、金属膜は回路層、基材はベース板またはヒートシンクとしての役割を果たすことができる。セラミックス膜の厚さは、モジュールの用途に応じて、必要な絶縁性(絶縁破壊電圧)が得られるように任意に調整することができるが、絶縁破壊電圧が好ましくは0.1kV以上、さらに好ましくは0.5kV以上、よりさらに好ましくは1kV以上となるように、セラミックス膜の厚さを調整することが望ましい。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例では、上記のセラミックス積層体の製造方法に従って種々の条件下で金属セラミックス積層体を製造し、金属膜とセラミックス膜の接合性について調べた。
[工程1]
まず、図5に示されるようなエアロゾルデポジション装置を用いて、基材上にセラミックス膜を形成した。基材には40×40×5mm3の無酸素銅基材、原料粉末には粒子径0.8μmの窒化けい素粉末を使用した。巻上ガスおよび調整ガスとしては窒素ガスを用い、巻上ガス流量と調整ガス流量の合計を24L/分とした。エアロゾル搬送管先端のノズル口サイズは15×0.3mm2、基材の法線とノズルの角度は30°、基材を固定したステージの水平方向の駆動プログラムは、40×40mm2の基材表面全体に、セラミックス膜が厚さ約10μmで形成されるように設定した。
[工程2]
次に、工程1と同様のエアロゾルデポジション装置を用いて、セラミックス膜上に成膜を行い、セラミックス膜の表面に金属相が分散して埋没した形態を形成した。原料粉末には、工程1に使用したセラミックス粉末に後述の工程3で用いる粒子径1.5μmあるいは0.4μmの銅粉末を所定の体積割合で薬さじまたは乳鉢により配合した粉末を用いた。薬さじおよび乳鉢による配合は、体積割合の小さい銅粉末に対して、セラミックス粉末を10回程度に分けて投入していき、10秒間で20回転する程度の速度で、合計約20分間混合することにより行った。エアロゾル化容器への粉末供給は、基本的には成膜前に全量投入する一般的な方法を用いたが、一部、回転ブラシで連続的に投入する方法を採用した。巻上ガスおよび調整ガスとしては窒素ガスを用い、巻上ガス流量と調整ガス流量の合計を24L/分とした。エアロゾル搬送管先端のノズル口サイズは15×0.3mm2、基材(またはセラミックス膜)の法線とノズルの角度は30°、基材を固定したステージの水平方向の駆動プログラムは、40×40mm2の既に形成されているセラミックス膜の表面全体に、追加のセラミックス膜が厚さ5~7μm程度で形成されるように設定した。成膜後、セラミックス膜の表面を研磨することにより、金属分散相の最大存在深さを調整した。
[工程3]
最後に、工程1および2と同様のエアロゾルデポジション装置を用いて、表面に金属相が分散して埋没したセラミックス膜上に金属膜を形成した。原料粉末には、工程2で用いた粒子径と同じ粒子径(すなわち工程2と工程3の両方で1.5μmあるいは0.4μm)の銅粉末を用いた。巻上ガスおよび調整ガスとしては窒素ガスを用い、巻上ガス流量と調整ガス流量の合計を24L/分とした。エアロゾル搬送管先端のノズル口サイズは15×0.3mm2、基材(またはセラミックス膜)の法線とノズルの角度は30°、基材を固定したステージの水平方向の駆動プログラムは、40×40mm2の既に形成されているセラミックス膜の表面全体に、金属膜が厚さ約100μmで形成されるように設定した。なお、成膜の前に、40×40mm2のセラミックス膜表面に5×5mm2の複数の開口部を有するマスクテープを貼り付けてから成膜することで、5×5mm2、厚さ約100μmの金属膜がセラミックス膜上に複数形成された接合強度評価(後述)が可能な形態とした。
[金属セラミックス積層体の各特性の測定]
製造した各金属セラミックス積層体の、かえし部の長さ密度M、金属分散相の最大存在深さHおよびセラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率ρを、それぞれ上記[かえし部の長さ密度(M)の測定]、[金属分散相の最大存在深さ(H)およびセラミックス膜の厚さ(t)の測定]ならびに[セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率(ρ)の測定]の項で説明される方法に則って測定した。結果は表1に示す通りであった。
上記の測定で使用したSEM観察試料は各金属セラミックス積層体を膜厚方向に切断し、現れた膜厚方向の断面を鏡面研磨し、FE‐SEM(ULTRA 55、Carl Zeiss)により、断面を10000倍の倍率で観察してSEM画像を取得した。相間のコントラストを明確にするため、前記SEM画像は反射電子像とした。取得した倍率が10000倍のSEM画像は、面内(水平)方向の視野長さが11.2μm、1画素あたりの長さが0.0109μmであった。膜厚方向に目的の観察対象が入り切らない場合は、膜厚方向に連続画像を取得し、それらを連結した。また、各SEM画像の解析には画像解析ソフト(Image‐Pro Premier、(株)日本ローパー)を用いた。画像解析ソフトによる各値の測定においては、目的の対象物をより明確にするために2値化処理を行った後、各値の測定を実施した。なお、金属分散相の最大存在深さHおよびセラミックス膜の厚さtについては、2値化画像で測定箇所を目視判断し、当該箇所をソフトの測長機能で測定した。
[接合性の評価]
製造した各金属セラミックス積層体の接合性を評価した。ここでは、万能型ボンドテスター(シリーズ4000、ノードソン・アドバンスト・テクノロジー)を用いて、セラミックス膜上に5×5mm2で形成された金属膜のせん断強度試験を行った。試験条件は、ツール幅9mm、ツール高さ10μm、およびツール速度100μm/sとした。金属膜が破断した際の荷重をN=6で測定し、これらの平均値を破断荷重とした。前記破断荷重が、3kgf未満のものを×、3kgf以上6kgf未満のものを○、6kgf以上9kgf未満のものを○○、9kgf以上のものを○○○と評価し、評価が○、○○、○○○の場合を合格とした。結果は表1に示す通りであった。
Figure 0007339538000001
Figure 0007339538000002
表1に示すように、セラミックス膜と金属膜の界面がかえし部を形成しており、当該かえし部の長さ密度Mが0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下である実施例3、4および6~21では、金属膜とセラミックス膜の接合性が良好であることが確認できた。これは、かえし部の長さ密度Mを0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下とすることで、金属膜とセラミックス膜を互いに複雑に噛み込み合わせることができたためと考えられる。
実施例3、4および6~21の中でも、実施例6~9、14~21では、さらに接合性に優れることが確認できた。これは、かえし部の長さ密度Mを0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下としたことに加え、金属分散相の最大存在深さHを、セラミックス膜の厚さtの1/3以下と小さくすることで、混入した金属分散相の影響を抑えてセラミックス膜の本来の機械的特性を発揮させることができたためと考えられる。
実施例3、4および6~21の中でも、実施例10~21では、さらに接合性に優れることが確認できた。これは、かえし部の長さ密度Mを0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下としたことに加え、セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率ρを3%以下と小さくすることで、当該近傍領域におけるセラミックス膜3中で破壊の起点となる気孔を減らし、その強度を向上させることができたためと考えられる。
比較のため、比較例1および2でかえし部の長さ密度Mが0.2μm/μm2未満である金属セラミックス積層体を作製したところ、接合性が実施例3、4および6~21に比べて劣っていた。これは、かえし部の量が少なくなり、金属膜とセラミックス膜が互いに十分には噛み込み合えなくなったためと考えられる。また、比較例5でかえし部の長さ密度Mが5.0μm/μm2超である金属セラミックス積層体を作製したところ、比較例1および2と同様に、接合性が実施例3、4および6~21に比べて劣っていた。これは、セラミックス膜中のかえし部上部または内部に入り込むセラミックス材料の量が極端に減ったことによってセラミックス膜が破壊されやすくなったためと考えられる。なお、焼結体の表面をエッチングした後に金属膜を形成したのみである比較例22については、比較例1および2と同様にかえし部の長さ密度Mが0.2μm/μm2未満となっており、接合性も劣っていた。
1 金属セラミックス積層体
2 基材
3 セラミックス膜
3a 金属分散相
3b セラミックス膜と金属膜の界面のセラミックス膜側近傍領域
3c 気孔
4 金属膜
5 基材とセラミックス膜の界面
6 セラミックス膜と金属膜の界面
6a かえし部
6b 界面領域
7 かえし部上部
8 かえし部内部
H 金属分散相の最大存在深さ
t セラミックス膜の厚さ
11 エアロゾルデポジション装置
12 エアロゾル化容器
13 成膜室
14 エアロゾル搬送管
15 真空ポンプ
16 ガス供給系
17 原料粉末
18 調整ガス配管
19 巻上ガス配管
20 ステージ
21 水平駆動機構

Claims (7)

  1. 基材、前記基材上に形成されたセラミックス膜、および前記セラミックス膜上に形成された金属膜を含み、前記セラミックス膜と前記金属膜の界面にかえし部が形成されており、前記かえし部の長さ密度が0.2μm/μm2以上5.0μm/μm2以下であることを特徴とする、金属セラミックス積層体。
  2. 前記セラミックス膜が金属分散相を含み、前記金属分散相の最大存在深さが前記セラミックス膜の厚さの1/3以下であることを特徴とする、請求項1に記載の金属セラミックス積層体。
  3. 前記界面のセラミックス膜側近傍領域における気孔率が3%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属セラミックス積層体。
  4. 前記セラミックス膜が窒化けい素を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属セラミックス積層体。
  5. 前記金属膜が銅を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属セラミックス積層体。
  6. 前記基材が金属材料であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のセラミックス積層体。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の金属セラミックス積層体から構成されることを特徴とする、絶縁放熱部材。
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