JP7336386B2 - 多能性幹細胞凝集抑制剤 - Google Patents
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Description
非特許文献2の方法では大規模化が困難であることや、培地の交換が困難である等の問題がある。
非特許文献3の方法では培養時の培地の移動が少ないため酸素や栄養成分が細胞凝集塊に供給され難いという問題がある。
特許文献1では細胞塊の大きさを適度な大きさに制御するための手段は開示されていない。
特許文献2では細胞塊同士の接着を防ぐための手段として培地に水溶性高分子を添加して粘性を高めることが記載されている。このため非特許文献3と同様に、酸素や栄養成分が細胞凝集塊に供給され難いという問題がある。
特許文献4では、細胞凝集塊の大きさをコントロールする技術が提供されていない。
特許文献5では、高分子化合物の構造体を培地に添加する必要があるため、培養後に細胞と構造体を分離する必要がある。
したがって、本発明は、以下に列挙する特徴を包含する。
(2)上記細胞周期停止剤の濃度が55.0mg/mL以上1.1g/mL以下、又は60mM以上15M以下である、(1)に記載の多能性幹細胞凝集抑制剤。
(3)上記細胞周期停止剤が、培養時に希釈されて培地中における濃度を3ng/mL以上30mg/mL以下、又は3nM以上300mM以下とすることができる濃縮形態である、(1)又は(2)に記載の多能性幹細胞凝集抑制剤。
(4)上記細胞周期停止剤が、G1期停止剤、G1/S期停止剤、G2期停止剤、G2/M期停止剤、及びM期停止剤から選択される少なくとも1つの物質である、上記(1)から(3)のいずれかに記載の多能性幹細胞凝集抑制剤。
(5)上記細胞周期停止剤が、コルヒチン(Colchicine)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、ドセタキセル(Docetaxel)、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ノコダゾール(Nocodazole)、ジャスプラキノライド(Jasplakinolide)、ビンブラスチン(Vinblastine)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ビノレルビン(Vinorelbine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、2,3,5-トリヨード安息香酸(2,3,5-Triiodobenzoic acid;TIBA)、アンサミトシンP-3(Ansamitocin P-3)、サイトカラシンA(Cytochalasin A)、サイトカラシンE(Cytochalasin E)、インダノシン(Indanocine)、ラトランクリンB(Latorunculin B)、ウイスコスタチン(Wiskostatin)、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの物質である、上記(1)から(4)のいずれかに記載の多能性幹細胞凝集抑制剤。
(6)上記G1期停止剤がコルヒチン(Colchicine)及びジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(4)に記載の多能性幹細胞凝集抑制剤。
(7)上記G1/S期停止剤がサイトカラシンD(Cytochalasin D)である、上記(4)に記載の多能性幹細胞抑制剤。
(8)上記G2期停止剤が、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、コルヒチン(Colchicine)、及びドセタキセル(Docetaxel)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(4)に記載の多能性幹細胞凝集抑制剤。
(9)上記G2/M期停止剤が、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、及びノコダゾール(Nocodazole)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(4)に記載の多能性幹細胞凝集抑制剤。
(10)上記M期停止剤がジャスプラキノライド(Jasplakinolide)である、上記(4)に記載の多能性幹細胞凝集抑制剤。
(12)上記培地中における上記細胞周期停止剤の濃度が3ng/mL以上30mg/mL以下、又は3nM以上300mM以下である、上記(11)に記載の製造方法。
(13)上記細胞周期停止剤が、G1期停止剤、G1/S期停止剤、G2期停止剤、G2/M期停止剤、及びM期停止剤から選択される少なくとも1つの物質である、上記(11)又は(12)に記載の製造方法。
(14)上記細胞周期停止剤が、コルヒチン(Colchicine)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、ドセタキセル(Docetaxel)、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ノコダゾール(Nocodazole)、ジャスプラキノライド(Jasplakinolide)、ビンブラスチン(Vinblastine)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ビノレルビン(Vinorelbine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、2,3,5-トリヨード安息香酸(2,3,5-Triiodobenzoic acid;TIBA)、アンサミトシンP-3(Ansamitocin P-3)、サイトカラシンA(Cytochalasin A)、サイトカラシンE(Cytochalasin E)、インダノシン(Indanocine)、ラトランクリンB(Latorunculin B)、ウイスコスタチン(Wiskostatin)、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの物質である、上記(11)から(13)のいずれかに記載の製造方法。
(15)上記G1期停止剤がコルヒチン(Colchicine)及びジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(13)に記載の製造方法。
(16)上記G1/S期停止剤がサイトカラシンD(Cytochalasin D)である、上記(13)に記載の製造方法。
(17)上記G2期停止剤が、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、コルヒチン(Colchicine)、及びドセタキセル(Docetaxel)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(13)に記載の製造方法。
(18)上記G2/M期停止剤が、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、及びノコダゾール(Nocodazole)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(13)に記載の製造方法。
(19)上記M期停止剤がジャスプラキノライド(Jasplakinolide)である、上記(13)に記載の製造方法。
(20)上記(11)から(19)のいずれかに記載の製造方法により得られた多能性幹細胞凝集塊。
(22)上記細胞周期停止剤が、G1期停止剤、G1/S期停止剤、G2期停止剤、G2/M期停止剤、及びM期停止剤から選択される少なくとも1つの物質である、上記(21)に記載の多能性幹細胞培養組成物。
(23)上記細胞周期停止剤が、コルヒチン(Colchicine)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、ドセタキセル(Docetaxel)、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ノコダゾール(Nocodazole)、ジャスプラキノライド(Jasplakinolide)、ビンブラスチン(Vinblastine)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ビノレルビン(Vinorelbine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、2,3,5-トリヨード安息香酸(2,3,5-Triiodobenzoic acid;TIBA)、アンサミトシンP-3(Ansamitocin P-3)、サイトカラシンA(Cytochalasin A)、サイトカラシンE(Cytochalasin E)、インダノシン(Indanocine)、ラトランクリンB(Latorunculin B)、ウイスコスタチン(Wiskostatin)、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの物質である、上記(21)又は(22)に記載の多能性幹細胞培養組成物。
(24)さらに増殖因子を含む、上記(21)から(23)のいずれかに記載の多能性幹細胞培養組成物。
(26)上記培地中における上記細胞周期停止剤の濃度が3ng/mL以上30mg/mL以下、又は3nM以上300mM以下である、上記(25)に記載の方法。
(27)上記細胞周期停止剤が、G1期停止剤、G1/S期停止剤、G2期停止剤、G2/M期停止剤、及びM期停止剤から選択される少なくとも1つの物質である、上記(25)又は(26)に記載の方法。
(28)上記細胞周期停止剤が、コルヒチン(Colchicine)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、ドセタキセル(Docetaxel)、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ノコダゾール(Nocodazole)、ジャスプラキノライド(Jasplakinolide)、ビンブラスチン(Vinblastine)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ビノレルビン(Vinorelbine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、2,3,5-トリヨード安息香酸(2,3,5-Triiodobenzoic acid;TIBA)、アンサミトシンP-3(Ansamitocin P-3)、サイトカラシンA(Cytochalasin A)、サイトカラシンE(Cytochalasin E)、インダノシン(Indanocine)、ラトランクリンB(Latorunculin B)、ウイスコスタチン(Wiskostatin)、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの物質である、上記(25)から(27)のいずれかに記載の方法。
(29)上記G1期停止剤がコルヒチン(Colchicine)及びジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(27)に記載の方法。
(30)上記G1/S期停止剤がサイトカラシンD(Cytochalasin D)である、上記(27)に記載の方法。
(31)上記G2期停止剤が、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、コルヒチン(Colchicine)、及びドセタキセル(Docetaxel)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(27)に記載の方法。
(32)上記G2/M期停止剤が、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、及びノコダゾール(Nocodazole)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(27)に記載の方法。
(33)上記M期停止剤がジャスプラキノライド(Jasplakinolide)である、上記(27)に記載の方法。
(35)上記細胞周期停止剤が、G1期停止剤、G1/S期停止剤、G2期停止剤、G2/M期停止剤、及びM期停止剤から選択される少なくとも1つの物質である、上記(34)に記載の多能性幹細胞培養培地。
(36)上記細胞周期停止剤が、コルヒチン(Colchicine)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、ドセタキセル(Docetaxel)、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ノコダゾール(Nocodazole)、ジャスプラキノライド(Jasplakinolide)、ビンブラスチン(Vinblastine)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ビノレルビン(Vinorelbine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、2,3,5-トリヨード安息香酸(2,3,5-Triiodobenzoic acid;TIBA)、アンサミトシンP-3(Ansamitocin P-3)、サイトカラシンA(Cytochalasin A)、サイトカラシンE(Cytochalasin E)、インダノシン(Indanocine)、ラトランクリンB(Latorunculin B)、ウイスコスタチン(Wiskostatin)、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの物質である、上記(34)又は(35)に記載の多能性幹細胞培養培地。
(37)上記G1期停止剤がコルヒチン(Colchicine)及びジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(35)に記載の多能性幹細胞培養培地。
(38)上記G1/S期停止剤がサイトカラシンD(Cytochalasin D)である、上記(35)に記載の多能性幹細胞培養培地。
(39)上記G2期停止剤が、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、コルヒチン(Colchicine)、及びドセタキセル(Docetaxel)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(35)に記載の多能性幹細胞培養培地。
(40)上記G2/M期停止剤が、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、及びノコダゾール(Nocodazole)から選択される少なくとも1つの物質である、上記(35)に記載の多能性幹細胞培養培地。
(41)上記M期停止剤がジャスプラキノライド(Jasplakinolide)である、上記(35)に記載の多能性幹細胞培養培地。
(42)さらに増殖因子を含む、上記(34)から(41)のいずれかに記載の多能性幹細胞培養培地。
(43)細胞凝集塊を作製するための、上記(34)から(42)のいずれかに記載の多能性幹細胞培養培地。
(44)上記細胞凝集塊の70%以上(重量基準)において、最も細胞凝集塊の幅の広い部分の寸法が500μm以下、好ましくは300μm以下である、上記(11)から(19)のいずれかに記載の製造方法、上記(20)に記載の多能性幹細胞凝集塊、上記(21)から(24)のいずれかに記載の多能性幹細胞培養組成物、又は上記(43)に記載の多能性幹細胞培養培地。
(45)上記細胞凝集塊の70%以上(重量基準)において、最も細胞凝集塊の幅の広い部分の寸法が40μm以上、好ましくは100μm以上である、上記(11)から(19)及び(44)のいずれかに記載の製造方法、上記(20)又は(44)に記載の多能性幹細胞凝集塊、上記(21)から(24)及び(44)のいずれかに記載の多能性幹細胞培養組成物、又は上記(43)又は(44)に記載の多能性幹細胞培養培地。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017-254829号の開示内容を包含する。
本発明の多能性幹細胞の凝集の抑制方法の一実施形態によれば、上記多能性幹細胞凝集抑制剤の存在下での浮遊培養において多能性幹細胞の凝集を抑制することができる。
本発明の細胞凝集塊の製造方法の一実施形態によれば、細胞凝集塊を高収量で製造することができる。
本発明の細胞凝集塊の一実施形態によれば、適度な寸法の細胞凝集塊を有し、生細胞率が高い。
本発明の細胞培養組成物の一実施形態は、細胞凝集塊を高収量で製造するために用いることができる。
<1.多能性幹細胞>
本発明において使用する多能性幹細胞は、培地中で胚様体(embryoid body)又は細胞集体(以下、総称的に「細胞凝集塊」と称する。)を形成する性質を有しており、当該細胞の具体例として、動物由来多能性幹細胞、好ましくは哺乳動物由来多能性幹細胞、より好ましくはヒト由来多能性幹細胞を挙げることができる。
iPS細胞は、体細胞に初期化因子を導入することにより体細胞を未分化状態へと初期化することによって多能性が付与された人工的に樹立された多能性幹細胞である。初期化因子として、例えばOCT3/4及びKLF4、SOX2及びc-Myc(もしくはL-Myc)の組み合わせ(Takahashi K,et al.Cell.131:861-872(2007))、OCT3/4、SOX2、LIN28及びNanogの組み合わせ(Yu J,et al.Science.318:1917-1920(2007))などを用いることができる。これらの因子の細胞への導入形態は特に限定されないが、例えば、ウイルスやプラスミドなどのベクターを用いた遺伝子導入、合成RNAの導入、タンパク質の直接導入などが挙げられる。また、microRNAやRNA、低分子化合物等を用いた方法で作製されたiPS細胞を用いてもよい。
本明細書における「細胞凝集塊」は、複数の細胞が三次元的に凝集して形成される塊状の細胞集団(「スフェロイド」とも呼ばれる。)である。細胞凝集塊は、典型的には、略球状の形状を有する。同一細胞による凝集は、1つの細胞の増殖によって集塊が形成される場合も含む。細胞凝集の機構としては、限定はしないが、膜タンパク質や細胞膜の細胞間での非特異的な吸着、細胞表面のカドヘリンを介した細胞間の接着等が挙げられる。
本明細書において「浮遊培養」とは、細胞培養方法の一つで、培地中で細胞を浮遊状態で増殖させることをいう。本発明の方法による浮遊培養では、細胞周期停止剤を含有する細胞凝集抑制剤を添加した培養液中で形成される多能性幹細胞の細胞凝集塊の寸法が所定寸法となるように抑制的に調節される。
本発明によれば、多能性幹細胞を浮遊培養するとき、当該幹細胞の細胞凝集を抑制するために少なくとも1つの任意の細胞周期停止剤、例えば細胞骨格を制御して細胞周期を止める物質もしくは薬剤、を培地に添加することが特徴である。細胞凝集によって凝集塊寸法が大きくなりすぎると、凝集塊内部に酸素や栄養成分等が十分に供給されない状態となり、その結果、細胞の増殖が著しく抑制される。このため、細胞増殖が実質的に阻害されない又は阻害されにくい凝集塊寸法になるように培養条件を制御することが重要である。本発明では、そのような細胞凝集を抑制するために細胞周期停止剤を培地に所定量添加することが有効である。
コルヒチン(Colchicine)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、ドセタキセル(Docetaxel)、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ノコダゾール(Nocodazole)、ジャスプラキノライド(Jasplakinolide)、ビンブラスチン(Vinblastine)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ビノレルビン(Vinorelbine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、2,3,5-トリヨード安息香酸(2,3,5-Triiodobenzoic acid;TIBA)、アンサミトシンP-3(Ansamitocin P-3)、サイトカラシンA(Cytochalasin A)、サイトカラシンE(Cytochalasin E)、インダノシン(Indanocine)、ラトランクリンB(Latorunculin B)、ウイスコスタチン(Wiskostatin)、カルペプチン(Calpain阻害剤;G1/S)、カルパイン阻害剤I(Calpain inhibitor I;G1/S)、アシクロビル(Acyclovir)、アフィジコリン(Aphidicolin)、カンプトテシン(Camptothecin)、5,6-ジクロロ-1-β-D-リボフラノシルベンズイミダゾール(5,6-Dichloro-1-β-D-ribofuranosylbenzimidazole)、エメチン(Emetine)、エトポシド(Etoposide)、5-フルオロウラシル(5-Fluorouracil)、インドール-3-カルビノール(Indole-3-carbinol)、KN-93、L-ミモシン(L-Mimosine)、オカダ酸(Okadaic Acid)、ビンクリスチン(Vincristine)、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤(Cdk Inhibitor)(例えば、ケンパウロン(Kenpaullone)、NSC625987、ファスカプリシン(Fascaplysin)、エチル-(6-ヒドロキシ-4-フェニルベンゾ[4,5]フロ[2,3-b])ピリジン-3-カルボキシレート(Ethyl-(6-hydroxy-4-phenylbenzo[4,5]furo[2,3-b])pyridine-3-carboxylate))、c-Myc阻害剤(c-Myc Inhibitor)(例えば、10058-F4;(Z,E)-5-(4-エチルベンジリジン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン((Z,E)-5-(4-Ethylbenzylidine)-2-thioxothiazolidin-4-one))、シクロホスファミド・一水和物(Cyclophosphamide Monohydrate)、MDM2アンタゴニスト(MDM2 Antagonist)(例えば、ナトリン-3(Nutlin-3)、NSC66811、2-ベンジル-3-(4-クロロフェニル)-3-(3-ヒドロキシプロポキシ)-2,3-ジヒドロイソインドール-1-オン(2-Benzyl-3-(4-chlorophenyl)-3-(3-hydroxypropoxy)-2,3-dihydroisoindol-1-one))、p21活性化キナーゼ阻害剤(p21-Activated Kinase Inhibitor)(例えば、PAK阻害剤(PAK Inhibitor)、PAK18(Zhao,L.et al.,Nat.Neurosci.2006;9:234-242;H2N-RKKRRQRRR-G-PPVIAPRPEHTKSVYTRS-CO2H(配列番号1))、Ras/Racトランスフォメーションブロッカー(Ras/Rac Transformation Blocker)(例えば、SCH51344;6-メトキシ-4-(2-((2-ヒドロキシエトキシル)-エチル)アミノ)-3-メチル-1H-ピラゾロ [3,4-b]キノリン(6-Methoxy-4-(2-((2-hydroxyethoxyl)-ethyl)amino)-3-methyl-1H-pyrazolo[3,4-b]quinoline))、4-フェニル酪酸ナトリウム(Sodium 4-Phenylbutyrate)、STAT3阻害剤(STAT3 Inhibitor)(例えば、Ac-PpYLKTK-OH(配列番号2)、PpYLKTK-mts(配列番号3、Turkson,J.et al.,J.Biol.Chem.2001;276:45443-45455)、P3-AHNP-STAT3BP(H-YGRKKRRQR-G-FCDGFYACYKDV-PpYL-OH,サイクリック(Cyclic)(配列番号4)、Tan,M.et al.Cancer Research 2006:66(7):3764-3771)、6-ニトロベンゾ[b]チオフェン-1,1-ジオキシド;STAT3阻害性化合物(6-Nitrobenzo[b]thiophene-1,1-dioxide;Stat three inhibitory compound))、サイクリンD1阻害剤、或いは、それらの塩またはそれらの誘導体。
本明細書における「塩」は、多能性幹細胞の凝集抑制効果を示す塩であって酸又は塩基(無機酸もしくは無機塩基、又は有機酸もしくは有機塩基を含む)から形成される塩であり、上記の物質もしくは化合物が塩基性である場合、無機酸もしくは有機酸から塩を形成することができるし、或いは、上記物質もしくは化合物が酸性である場合、無機塩基もしくは有機塩基から塩を形成することができる。無機酸及び有機酸の例には、非限定的に、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸、酢酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、酒石酸、マレイン酸等の有機酸などが含まれる。また、無機塩基及び有機塩基の例には、非限定的に、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、ジエタノールアミン、エチレンジアミン等のアミン、リジン、アルギニン等のアミノ酸などが含まれる。
G1期停止剤は、例えばコルヒチン(Colchicine)又はジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。
G1/S期停止剤は、例えばサイトカラシンD(Cytochalasin D)を含む。
G2期停止剤は、例えばサイトカラシンD(Cytochalasin D)、コルヒチン(Colchicine)、又はドセタキセル(Docetaxel)を含む。
G2/M期停止剤は、例えばポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ラトランクリンA(Latorunculin A、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、又はノコダゾール(Nocodazole)を含む。
M期停止剤は、例えばジャスプラキノライド(Jasplakinolide)を含む。
Rho-キナーゼ(ROCK,Rho-associated protein kinase)のキナーゼ活性を阻害する物質(「ROCK阻害剤」と称する。)は、多能性幹細胞の浮遊培養において当該細胞の細胞死を抑制する目的で培地中に添加されることが好ましい。
本発明の別の態様は、細胞周期停止剤を含む培地中で多能性幹細胞を浮遊培養する工程を含む、多能性幹細胞の凝集を抑制する方法である。
上記工程での培地中の細胞周期停止剤の濃度は、細胞の凝集を抑制することができるように、細胞の種類、細胞数、培地の種類等の諸条件に応じて適宜調整することができる。上記工程での培地中の細胞周期停止剤の濃度は当該阻害剤の種類によって異なり、浮遊培養において多能性幹細胞の凝集が抑制される濃度範囲を適宜選択することができる。この濃度は、限定されるものではないが、下限が、例えば3ng/mL以上、5ng/mL以上、7ng/mL以上、10ng/mL以上、20ng/mL以上、30ng/mL以上、40ng/mL以上、50ng/mL以上、100ng/mL以上、200ng/mL以上、300ng/mL以上、500ng/mL以上、1μg/mL以上、5μg/mL以上、10μg/mL以上、15μg/mL以上、20μg/mL以上、50μg/mL以上、70μg/mL以上、100μg/mL以上などであり、及び、上限が、例えば50mg/mL以下、40mg/mL以下、35mg/mL以下、30mg/mL以下、25mg/mL以下、20mg/mL以下、15mg/mL以下、10mg/mL以下などとすることができ、例えば3ng/mL以上30mg/mL以下の範囲とすることができる。或いは、下限が、例えば3nM以上、5nM以上、10nM以上、15nM以上、20nM以上、25nM以上、30nM以上、40nM以上、50nM以上、80nM以上、100nM以上、300nM以上、500nM以上、1μM以上、2μM以上、3μM以上、4μM以上、5μM以上、10μM以上、20μM以上、30μM以上、50μM以上、60μM以上、70μM以上、80μM以上、100μM以上などであり、及び、上限が、例えば800mM以下、600mM以下、400mM以下、200mM以下、150mM以下、100mM以下、70mM以下、50mM以下、40mM以下などとすることができ、例えば3nM以上300mM以下とすることができる。
「維持培養工程」は、浮遊培養工程前の細胞集団、又は浮遊培養工程後、若しくはその後の回収工程後に得られる細胞凝集塊を、未分化性を維持した状態で細胞を増殖させるために培養する工程である。維持培養は、細胞を容器、担体等培養基材に接着させながら培養する接着培養であってもよいし、細胞を培地中で浮遊させながら培養する浮遊培養であってもよい。
維持培養工程で使用する培養容器、細胞の播種密度、培養条件は、浮遊培養工程に関して既述の通りである。
維持培養工程における、培地の流動状態は問わない。静置培養でもよいし、流動培養でもよい。
「回収工程」は、維持培養工程又は浮遊培養工程後の培養液から培養した細胞を回収する工程であり、本発明の方法における目的の細胞凝集塊を回収する工程である。
本明細書において「細胞の回収」又は単に「回収」とは、培養液と細胞とを分離して細胞を取得することをいう。細胞の回収方法は、当該分野の細胞培養法で使用される常法に従えばよく、特に限定はしない。細胞培養方法は、一般に浮遊培養方法と接着培養方法に大別できる。以下、それぞれの培養方法後の細胞の回収方法について説明をする。
細胞を浮遊培養法で培養した場合、細胞は培養液中に浮遊した状態で存在する。したがって、細胞の回収は、静置状態又は遠心分離により上清の液体成分を除去することによって達成できる。また、細胞の回収方法としてはフィルターや中空糸分離膜等の使用を選択することもできる。
接着培養法で細胞を培養した場合、培養後、多くの細胞は培養容器や培養担体等の外部マトリクスに接着した状態で存在する。したがって、培養容器から培養液を除去するには、培養後の容器を静かに傾けて液体成分を流し出せばよい。外部マトリクスに接着した細胞が培養容器内に残るため、培養液と細胞を容易に分離することができる。
本明細書において「単一細胞化」とは、単層細胞片や細胞凝集塊等のように複数の細胞が互いに接着又は凝集した細胞集合体を分散させて、単一の遊離した細胞状態にすることをいう。
本発明の他の一態様は、細胞周期停止剤を含む、多能性幹細胞の浮遊培養に用いるための多能性幹細胞凝集抑制剤である。
本発明の他の一態様は、限定されないが、例えば以下に示す濃度の細胞周期停止剤を含む培地中で多能性幹細胞を浮遊培養する工程を含む、細胞凝集塊の製造方法である。
本発明の他の一態様は、多能性幹細胞の細胞凝集塊と、培地と、限定されないが、例えば以下に示す濃度の細胞周期停止剤とを含む、細胞培養組成物である。
細胞周期停止剤、培地及び多能性幹細胞の具体的な実施形態は既述の通りである。
本発明の他の一態様は、培地と、限定されないが、例えば以下に示す濃度の細胞周期停止剤とを含む、多能性幹細胞培養培地である。
細胞周期停止剤、培地及び多能性幹細胞の具体的な実施形態は既述の通りである。
ヒトiPS細胞は、TkDN4-M株(東京大学医科学研究所、東京、日本)を使用した。Vitronectin(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)をコートした細胞培養用ディッシュ上にヒトiPS細胞を播種し、培地はEssential 8TM(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を使用して維持培養した。継代時の細胞剥離剤としては、AccutaseTM(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を用いた。また、細胞播種時のみ、Y-27632(和光純薬工業株式会社、日本)を10μMの濃度になるように培地に添加した。培地交換は毎日実施した。実験には継代数50回までのヒトiPS細胞を使用した。
細胞周期停止剤添加による細胞の凝集抑制効果について検討した。
<方法>
実施例1の手順で培養したヒトiPS細胞をAccutaseTMで3~5分間処理して剥離し、単細胞まで分散した。この細胞を最終濃度5mg/mLのBSA(和光純薬工業株式会社)を含むEssential 8TM培地に懸濁し、その一部をトリパンブルー染色して細胞数を調べた。1mLあたり2×105個の細胞を含むように調製した。この細胞懸濁液に、最終濃度10μMとなるようにY27632(和光純薬工業株式会社)を添加するか、あるいは最終濃度10μMのY27632を加える。別途Colchicine(和光純薬工業株式会社、039-03851)を最終濃度10mg/mL(25mM)、またはDemecolcine(和光純薬工業株式会社、049-16961)を最終濃度10mg/mL(26.9mM)、またはCytochalasin D(和光純薬工業株式会社、037-17561)を最終濃度0.51mg/mL(1mM)、またはCytochalasin B(和光純薬工業株式会社、030-17551)を最終濃度2.40mg/mL(5mM)、またはVinblastine(和光純薬工業株式会社、037-17561)を最終濃度4.55mg/mL(5mM)、またはGriseofulvin(和光純薬工業株式会社、037-17561)を最終濃度17.6mg/mL(50mM)、またはDMSO(和光純薬工業株式会社、041-29351)は原液の濃度、またはLatrunculin A(和光純薬工業株式会社、125-04363)を最終濃度0.42mg/mL(1mM)、またはPodophyllotoxin(和光純薬工業株式会社、161-20901)を最終濃度20.7mg/mL(50mM)、またはVinorelbine(和光純薬工業株式会社、222-01641)を最終濃度5.4mg/mL(5mM)、またはNocodazole(和光純薬工業株式会社、140-08531)を最終濃度5mg/mL(16.7mM)、またはJasplakinolide(Cayman、11705)を最終濃度0.14mg/mL(0.2mM)、またはDocetaxel(和光純薬工業株式会社、047-31281)を最終濃度4.04mg/mL(5mM)になるように細胞凝集抑制剤の濃度を調整し、前記調整した細胞凝集抑制剤を前記細胞懸濁液にColchicineの最終濃度が10ng/mL、またはDemecolcineの最終濃度が10ng/mL、またはCytochalasin Dの最終濃度が20nM、またはCytochalasin Bの最終濃度が1μM、またはVinblastineの最終濃度が2μM、またはGriseofulvinの最終濃度が50μM、またはDMSOの最終濃度が0.3%(v/v)、またはLatrunculin Aの最終濃度が80nM、またはPodophyllotoxinの最終濃度が80nM、またはVinorelbineの最終濃度が80nM、またはNocodazoleの最終濃度が40ng/mL、またはJasplakinolideの最終濃度が16nM、またはDocetaxelの最終濃度が80nMとなるように添加した上で、浮遊培養用12ウェルプレート(住友ベークライト株式会社)に1.3ml/ウェルの割合で播種した。細胞を播種したプレートは、ロータリーシェーカー(株式会社オプティマ)上で90rpmのスピードで水平面に沿って旋回幅(直径)が25mmの円を描くように旋回培養し、5%CO2、37℃の環境下で浮遊培養を行った。培養を開始して翌日(培養1日目)に位相差顕微鏡にて画像を取得した。
上記浮遊培養後(培養1日目)の顕微鏡観察像を図1A、図1Bおよび図1Cに示す。観察の結果、Y27632のみを添加した条件(対照)では1mm以上の大きな細胞凝集塊が形成されたのに対して、細胞周期停止剤を添加した条件では直径500μm以下の細胞凝集塊が形成された。
ヒトiPS細胞の浮遊培養を行いグルコース消費量、細胞収量及び未分化マーカーの陽性率を測定し、細胞周期停止剤が与える細胞への影響を解析した。
実施例2と同様に細胞懸濁液を調製し、別途Demecolcine(同上)を最終濃度10mg/mL(26.9mM)、またはCytochalasin D(同上)を最終濃度0.51mg/mL(1mM)、またはDMSO(同上)は原液の濃度、またはJasplakinolide(Cayman、11705)を最終濃度0.14mg/mL(0.2mM)になるように細胞凝集抑制剤の濃度を調整し、前記調整した細胞凝集抑制剤を前記細胞懸濁液にDemecolcineの最終濃度が10ng/mL、またはCytochalasin Dの最終濃度が20nM、またはDMSOの最終濃度が1%(v/v)、またはJasplakinolideの最終濃度が20nMとなるように添加した上で、浮遊培養用6ウェルプレート(住友ベークライト株式会社、日本)に4ml/ウェルの割合で播種した。細胞を播種したプレートは、ロータリーシェーカー(株式会社オプティマ、日本)上で90rpmのスピードで水平面に沿って旋回幅(直径)が25mmの円を描くように旋回培養し、5%CO2、37℃の環境下で浮遊培養を行った。培養翌日(培養1日目)以降、毎日新鮮な培地(最終濃度5mg/mLのBSA(和光純薬工業株式会社)を含むEssential 8TM培地)に培地交換し、培養5日後まで培養を続けた。培養中、毎日位相差顕微鏡により画像を取得とした。培養1日目に取得した画像中の182~252個の細胞凝集塊を観察し、顕微鏡写真のスケールと比較して各細胞凝集塊の最も広い部分の幅(「φ」とする)を求め、その分布を調べ、平均値±標準偏差を算出した。培地交換時に回収した培養上清に含まれるグルコースの濃度を、バイオセンサーBF-5iD(王子計測機器株式会社)で測定し、グルコース消費量を計算した。
図2Aから2Eは、培養1日目から5日目までに観察した顕微鏡写真である。図2A(対照)と比べて、図2Bから2Eでは、播種後から培養1日目にかけて細胞凝集塊が形成されており、培養を継続することで徐々に細胞が増殖し、細胞凝集塊が大きくなり、ほぼ均一で適度な寸法になった。
図6A~Dは、培養1日目の細胞凝集塊サイズ(細胞凝集塊の直径、もしくは最も細胞凝集塊の幅の広い部分のサイズ)の分布図である。また表1~表4には培養1日目のある一定サイズ別の細胞凝集塊の個数およびその割合を示す。各培養条件における培養1日目の凝集塊サイズの平均値±標準偏差を算出した結果、Cytochalasin D添加では132.5±34.8μm、Jasplakinolide添加では162.7±37.2μm、Demecolcine添加では184.9±44.9μm、DMSO添加では164.8±31.8μmであった。
配列番号2:合成ペプチド
配列番号3:合成ペプチド
配列番号4:合成ペプチド
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
Claims (12)
- 細胞周期停止剤を含む培地中で多能性幹細胞を浮遊培養することで、該多能性幹細胞凝集塊の寸法を調節する工程を含む、多能性幹細胞凝集塊の製造方法であって、
前記細胞周期停止剤が、G1/S期停止剤、G2期停止剤、G2/M期停止剤、及びM期停止剤から選択される少なくとも1つの物質である、
前記方法。 - 前記浮遊培養により、多能性幹細胞凝集塊のうち、重量基準で70%以上を40~500μmの寸法に調節する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記培地中における前記細胞周期停止剤の濃度が3ng/mL以上30mg/mL以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記細胞周期停止剤が、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、ドセタキセル(Docetaxel)、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ノコダゾール(Nocodazole)、ジャスプラキノライド(Jasplakinolide)、ビンブラスチン(Vinblastine)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ビノレルビン(Vinorelbine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの物質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記G1/S期停止剤がサイトカラシンD(Cytochalasin D)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記G2期停止剤がサイトカラシンD(Cytochalasin D)、コルヒチン(Colchicine)、及びドセタキセル(Docetaxel)から選択される少なくとも1つの物質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記G2/M期停止剤がポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、及びノコダゾール(Nocodazole)から選択される少なくとも1つの物質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記M期停止剤がジャスプラキノライド(Jasplakinolide)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 多能性幹細胞の細胞凝集塊と、培地と、3ng/mL以上30mg/mL以下の濃度の細胞周期停止剤とを含み、該多能性幹細胞凝集塊の寸法を調節するための多能性幹細胞培養組成物であって、
前記細胞周期停止剤が、G1/S期停止剤、G2期停止剤、G2/M期停止剤、及びM期停止剤から選択される少なくとも1つの物質である、
前記組成物。 - 多能性幹細胞凝集塊のうち、重量基準で70%以上を40~500μmの寸法に調節するための、請求項9に記載の多能性幹細胞培養組成物。
- 前記細胞周期停止剤が、サイトカラシンD(Cytochalasin D)、サイトカラシンB(Cytochalasin B)、ドセタキセル(Docetaxel)、ポドフィロトキシン(Podophyllotoxin)、デメコルチン(Demecolcine)、ノコダゾール(Nocodazole)、ジャスプラキノライド(Jasplakinolide)、ビンブラスチン(Vinblastine)、グリセオフルビン(Griseofulvin)、ビノレルビン(Vinorelbine)、ラトランクリンA(Latorunculin A)、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの物質である、請求項9又は10に記載の多能性幹細胞培養組成物。
- さらに増殖因子を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の多能性幹細胞培養組成物。
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