以下、実施形態の冷蔵庫を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本明細書では、冷蔵庫の正面に立つユーザから冷蔵庫を見た方向を基準に、左右を定義し、冷蔵庫から見て冷蔵庫の正面に立つユーザに近い側を「前」、遠い側を「後ろ」と定義する。
「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含み得る。「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含み得る。「XXまたはYY」とは、XXとYYのうちいずれか一方の場合に限定されず、XXとYYの両方の場合も含み得る。「XX」および「YY」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。
以下の説明で「平均温度」は、「中心温度」と読み替えられてもよい。「中心温度」は、対象となる温度帯の最大値(または上限値)と最小値(または下限値)とを足して2で割った値である。ただし、「中心温度」は、例えば、後述する低温冷却制御と高温冷却制御との切り替え時に生じ得る外れ値などは除外して算出されてもよい。
(実施形態)
[1.冷蔵庫の全体構成]
図1から図8を参照し、実施形態の冷蔵庫1について説明する。まず、冷蔵庫1の全体構成について説明する。図1は、冷蔵庫1を示す正面図である。図2は、図1中に示された冷蔵庫1のF2-F2線に沿う断面図である。図1および図2に示すように、冷蔵庫1は、例えば、筐体10、複数の扉20、操作パネル30、流路形成部品40、冷却部50、および制御基板100を備えている。
筐体10は、上壁11、下壁12、左右の側壁13,14、および後壁15を有する。上壁11および下壁12は、略水平に広がっている。左右の側壁13,14は、下壁12の左右の端部から上方に起立し、上壁11の左右の端部に繋がっている。後壁15は、下壁12の後端部から上方に起立し、上壁11の後端部に繋がっている。
図2に示すように、筐体10は、例えば、内箱10a、外箱10b、および断熱部10cを有する。内箱10aは、筐体10の内面を形成する部材である。外箱10bは、筐体10の外面を形成する部材である。外箱10bは、内箱10aよりも一回り大きく形成されており、内箱10aの外側に配置されている。内箱10aと外箱10bとの間には、発泡ウレタンのような発泡断熱材を含む断熱部10cが設けられている。
筐体10の内部には、複数の貯蔵室17が設けられている。複数の貯蔵室17は、例えば、冷蔵室17A、チルド室17B、野菜室17C、製氷室17D、小冷凍室17E、および主冷凍室17Fを含む。例えば、最上部に冷蔵室17Aが配置され、冷蔵室17Aの下方に野菜室17Cが配置され、野菜室17Cの下方に製氷室17Dおよび小冷凍室17Eが配置され、製氷室17Dおよび小冷凍室17Eの下方に主冷凍室17Fが配置されている。ただし、貯蔵室17の配置は、上記例に限定されない。筐体10は、各貯蔵室17の前面側に、各貯蔵室17に対して食品の出し入れを可能にする開口を有する。
チルド室17Bは、冷蔵室17Aの一部の下方に設けられている。チルド室17Bは、例えば、棚や壁などにより少なくとも部分的に冷蔵室17Aに対して区画されている。チルド室17Bは、冷蔵室17Aよりも下方に位置して冷たい冷気が流入しやすいことや、冷蔵室17Aと比べて冷蔵用冷却器61(後述)の近くに位置することで、冷蔵室17Aよりも低い温度に冷却される。チルド室17Bは、「貯蔵部」の一例である。
筐体10は、第1仕切壁18および第2仕切壁19を有する。第1仕切壁18および第2仕切壁19は、それぞれ略水平方向に沿う仕切壁である。第1仕切壁18は、冷蔵室17A(チルド室17B)と野菜室17Cとの間に位置し、冷蔵室17A(チルド室17B)と野菜室17Cとの間を仕切っている。一方で、第2仕切壁19は、野菜室17Cと、製氷室17Dおよび小冷凍室17Eとの間に位置し、野菜室17Cと、製氷室17Dおよび小冷凍室17Eとの間を仕切っている。第2仕切壁19は、例えば発泡断熱材を含み、断熱性を有する。第1仕切壁18は、例えば合成樹脂などで形成されており、第2仕切壁19よりも断熱性が小さい。
複数の貯蔵室17の開口は、複数の扉20によって開閉可能に閉じられる。複数の扉20は、例えば、冷蔵室17Aの開口を閉じる左右の冷蔵室扉20Aa,20Ab、チルド室17Bの開口を閉じるチルド室扉20B、野菜室17Cの開口を閉じる野菜室扉20C、製氷室17Dの開口を閉じる製氷室扉20D、小冷凍室17Eの開口を閉じる小冷凍室扉20E、および主冷凍室17Fの開口を閉じる主冷凍室扉20Fを含む。チルド室扉20Bは、冷蔵室扉20Aa,20Abよりも冷蔵室17Aの内部に設けられている(図2参照)。チルド室扉20Bは、例えば、チルド室容器36B(後述)と一体に設けられてチルド室容器36Bと一体に前方に引き出されるタイプでもよいし、チルド室17Bに隣接して設けられたヒンジを中心に回転することで開かれるタイプでもよい。
操作パネル30は、扉20(例えば左冷蔵室扉20Aa)に設けられている(図1参照)。操作パネル30は、冷蔵庫1の設定温度帯の変更や運転モードの変更に関するユーザの入力操作などを受け付ける。操作パネル30は、「操作部」の一例である。操作パネル30は、例えば、後述する「急速チルド」または「解凍」の制御モードの開始および停止を受け付けるボタン31と、「特別チルド」の制御モードの開始および停止を受け付けるボタン32などを含む。ただし、これら各種制御モードの開始や停止を選択する操作は、操作パネル30に代えて、ネットワークを介してユーザの携帯端末やスマートスピーカから入力されてもよい。
図2に示すように、複数の棚35は、冷蔵室17Aに設けられている。複数の容器36は、チルド室17Bに設けられたチルド室容器36B、野菜室17Cに設けられた第1および第2の野菜室容器36Ca,36Cb、製氷室17Cに設けられた製氷室容器(不図示)、小冷凍室17Eに設けられた小冷凍室容器36E、および主冷凍室17Fに設けられた第1および第2の主冷凍室容器36Fa,36Fbを含む。ここで「容器」とは、トレイのような底が浅い部材も含む。
流路形成部品40は、筐体10内に配置されている。流路形成部品40は、第1ダクト部品41と、第2ダクト部品42とを含む。
第1ダクト部品41は、筐体10の後壁15に沿って設けられ、鉛直方向に延びている。第1ダクト部品41は、例えば、野菜室17Cの下端部の後方から冷蔵室17Aの上端部の後方まで延びている。第1ダクト部品41と筐体10の後壁15との間には、冷気(空気)が流れる通路である第1ダクト空間D1が形成されている。第1ダクト部品41は、複数の冷蔵室冷気吹出口41aと、チルド室冷気吹出口41bと、冷気戻り口41cとを有する。複数の冷蔵室冷気吹出口41aは、チルド室17Bよりも上方において複数の高さ位置に分かれて設けられている。複数の冷蔵室冷気吹出口41aは、冷蔵室17Aに開口している。第1ダクト空間D1を流れる冷気は、冷蔵室冷気吹出口41aから冷蔵室17Aに吹き出される。チルド室冷気吹出口41bは、チルド室17Bに開口している。第1ダクト空間D1を流れる冷気は、チルド室冷気吹出口41bからチルド室17Bに吹き出される。冷気戻り口41cは、野菜室17Cに開口している。野菜室17Cを通った冷気は、冷気戻り口41cから第1ダクト空間D1に戻る。
第2ダクト部品42は、筐体10の後壁15に沿って設けられ、鉛直方向に延びている。第2ダクト部品42は、例えば、主冷凍室17Fの後方から製氷室17Dおよび小冷凍室17Eの上端部の後方まで延びている。第2ダクト部品42と筐体10の後壁15との間には、冷気(空気)が流れる通路である第2ダクト空間D2が形成されている。第2ダクト部品42は、冷気吹出口42aと、冷気戻り口42bとを有する。冷気吹出口42aは、製氷室17Dおよび小冷凍室17Eに開口している。第2ダクト空間D2を流れる冷気は、冷気吹出口42aから製氷室17Dおよび小冷凍室17Eに吹き出される。冷気戻り口42bは、主冷凍室17Fに開口している。主冷凍室17Fを通った冷気は、冷気戻り口42bから第2ダクト空間D2に戻る。
冷却部(冷却ユニット)50は、複数の貯蔵室17(冷蔵室17A、チルド室17B、野菜室17C、製氷室17D、小冷凍室17E、および主冷凍室17F)を冷却する。冷却部50は、例えば、第1冷却モジュール60と、第2冷却モジュール70と、圧縮機80と、冷凍サイクル装置90(図3)とを含む。ここで「冷却する」とは、各貯蔵室17に対応する冷却器(後述する冷蔵用冷却器61または冷凍用冷却器71)に圧縮機80から冷媒が供給されている状態を意味する。ただし、「冷却する」とは、後述する冷蔵用ファン62や冷凍用ファン72が駆動される場合に限定されない。例えば、「冷却する」とは、冷蔵用ファン62の駆動が停止された状態で圧縮機80から冷蔵用冷却器61に冷媒が送られ、冷蔵用冷却器61とチルド室17Bとの間の伝熱によりチルド室17Bの温度が低下する場合なども含む。
第1冷却モジュール60は、例えば、冷蔵用冷却器61と、冷蔵用ファン62とを含む。冷蔵用冷却器61は、第1ダクト空間D1に配置されている。冷蔵用冷却器61は、圧縮機80により圧縮された冷媒が供給され、第1ダクト空間D1を流れる冷気を冷却する。冷蔵用冷却器61は、例えば、チルド室17Bに対応する高さに配置されている。
冷蔵用ファン62は、例えば、第1ダクト部品41の冷気戻り口41cに設けられている。冷蔵用ファン62が駆動されると、野菜室17Cの空気が冷気戻り口41cから第1ダクト空間D1内に流入する。第1ダクト空間D1内に流入した空気は、第1ダクト空間D1内を上方に向けて流れ、冷蔵用冷却器61によって冷却される。冷蔵用冷却器61によって冷却された冷気は、複数の冷蔵室冷気吹出口41aから冷蔵室17Aに吹き出され、チルド室冷気吹出口41bからチルド室17Bに吹き出される。冷蔵室17Aおよびチルド室17Bに吹き出された冷気は、冷蔵室17Aおよびチルド室17Bをそれぞれ流れた後、例えば野菜室17Cを経由して、再び冷気戻り口41cに戻る。これにより、冷蔵室17A、チルド室17B、および野菜室17Cを流れる冷気が冷蔵庫1内で循環され、冷蔵室17A、チルド室17B、および野菜室17Cの冷却が行われる。
一方で、第2冷却モジュール70は、例えば、冷凍用冷却器71と、冷凍用ファン72とを含む。冷凍用冷却器71は、第2ダクト空間D2に配置されている。冷凍用冷却器71は、圧縮機80により圧縮された冷媒が供給され、第2ダクト空間D2を流れる冷気を冷却する。
冷凍用ファン72は、例えば、第2ダクト部品42の冷気戻り口42bに設けられている。冷凍用ファン72が駆動されると、主冷凍室17Fの空気が冷気戻り口42bから第2ダクト空間D2内に流入する。第2ダクト空間D2内に流入した空気は、第2ダクト空間D2内を上方に向けて流れ、冷凍用冷却器71によって冷却される。冷凍用冷却器71によって冷却された冷気は、冷気吹出口42aから製氷室17D、小冷凍室17E、および主冷凍室17Fに流入する。製氷室17Dおよび小冷凍室17Eに流入した冷気は、製氷室17Dおよび小冷凍室17Eをそれぞれ流れた後、主冷凍室17Fを経由して、再び冷気戻り口42bに戻る。これにより、製氷室17D、小冷凍室17E、および主冷凍室17Fを流れる冷気が冷蔵庫1内で循環され、製氷室17D、小冷凍室17E、および主冷凍室17Fの冷却が行われる。
圧縮機80は、例えば、冷蔵庫1の底部の機械室に設けられている。圧縮機80は、貯蔵室17の冷却に用いられる冷媒ガスを圧縮する。圧縮機80により圧縮された冷媒ガスは、凝縮器91(後述)などを経由して、冷蔵用冷却器61および冷凍用冷却器71に送られる。
[2.冷凍サイクル装置]
図3は、冷凍サイクル装置90の構成を示す図である。冷凍サイクル装置90は、冷媒の流れ順に、凝縮器91と、ドライヤ92と、三方弁93と、キャピラリーチューブ94,95とを含む。詳しく述べると、圧縮機80の高圧吐出口には、凝縮器91とドライヤ92とが順に接続パイプ96を介して接続されている。ドライヤ92の吐出側には、三方弁93が接続されている。三方弁93は、ドライヤ92が接続される1つの入口と、2つの出口とを有している。
三方弁93の2つの出口のうち一方の出口には、冷蔵側のキャピラリーチューブ94と冷蔵用冷却器61とが順に接続されている。冷蔵用冷却器61は、接続配管である冷蔵側サクションパイプ97を介して圧縮機80に接続されている。三方弁93の2つの出口のうち他方の出口には、冷凍側のキャピラリーチューブ95と冷凍用冷却器71とが順に接続されている。冷凍用冷却器71は、接続配管である冷凍側サクションパイプ98を介して圧縮機80に接続されている。冷凍用冷却器71と圧縮機80の間には、冷蔵用冷却器61からの冷媒が冷凍用冷却器71側に逆流しないための逆止弁99が設けられている。
冷凍サイクル装置90を循環する冷媒は、圧縮機80により圧縮されて、高温、高圧のガス状冷媒となり、流路Aを流れる。このガス状冷媒は、凝縮器91により放熱されて、中温、高圧の液状冷媒となる。その後、ドライヤ92を通ることで汚れや水分などの不純物が取り除かれた液状冷媒は、三方弁93により絞り制御されながら、キャピラリーチューブ94(またはキャピラリーチューブ95)に入る。このとき、キャピラリーチューブ94(またはキャピラリーチューブ95)内の中温、高圧の液状冷媒は、冷蔵側サクションパイプ97(または冷凍側サクションパイプ98)内の冷媒と熱交換されながら減圧される。そして、減圧された冷媒は、冷蔵用冷却器61(または冷凍用冷却器71)を通過しながら蒸発することで、冷蔵用冷却器61(または冷凍用冷却器71)が冷却される。
その後、低温、低圧のガス状となった冷媒は、冷蔵側サクションパイプ97(または冷凍側サクションパイプ98)に流入する。冷蔵側サクションパイプ97(または冷凍側サクションパイプ98)に流入した直後の冷媒ガスの温度は、-10℃前後と低温である。この冷媒ガスは、冷蔵側サクションパイプ97(または冷凍側サクションパイプ98)を通る間に、キャピラリーチューブ94(またはキャピラリーチューブ95)内の冷媒と熱交換されて、最終的には室温程度にまで昇温される。そして、この冷媒ガスが、圧縮機80に再び吸入されて、冷媒の循環が完了する。
上記の冷凍サイクル装置90において、三方弁93は、制御部101(図4参照)によって制御され、流路Bおよび流路Cのうち例えば一方を選択する。流路Bは、冷媒を冷蔵用冷却器61に供給する流路である。流路Cは、冷媒を冷凍用冷却器71に供給する流路である。これら2つの流路B,Cは、合流点Dにおいて合流する。冷媒は、合流点Dから矢印Eの方向に流れて圧縮機80へと戻る。
上記説明したように、制御部101は、三方弁93を制御することにより、冷媒の流路を流路Bと流路Cとを交互に切り替える。流路Bに冷媒が流れている時には、冷蔵温度帯の貯蔵室17(冷蔵室17A、チルド室17B、野菜室17C)が冷却される。流路Cに冷媒が流れている時には、冷凍温度帯の貯蔵室17(製氷室17D、小冷凍室17E、主冷凍室17F)が冷却される。制御部101は、例えば、20分の間、流路Bに冷媒を流して、冷蔵温度帯の貯蔵室17の冷却(いわゆる冷蔵運転)を行い、40分の間、流路Cに冷媒を流して、冷凍温度帯の貯蔵室17の冷却(いわゆる冷凍運転)を行う。
[3.制御部]
[3.1 制御部に関する構成]
図4は、冷蔵庫1の制御に関する構成の一部を示すブロック図である。制御基板100は、マイコンや時間計測などを行うタイマ101aなどを含むコンピュータで構成される制御部101を備える。制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のような1つ以上のハードウェアプロセッサによってコンピュータプログラムが実行されることで実現されるソフトウェア機能部でもよく、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)などのハードウェア(例えば回路部;circuity)により実現されてもよい。制御部101の全部または一部は、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
制御部101は、冷蔵庫1の全体を制御する。制御部101には、冷蔵用ファン62、冷凍用ファン72、圧縮機80、三方弁93、操作パネル30、外気温センサ111、冷蔵室温度センサ112、チルド室温度センサ113、冷蔵室扉スイッチ114、チルド室扉スイッチ115、庫内カメラ116、および記憶部117が接続されている。
外気温センサ111は、例えば冷蔵庫1の表面に露出し、冷蔵庫1の外部の気温を検出する。冷蔵室温度センサ112は、例えば冷蔵室17Aに露出し、冷蔵室17Aの空気温度を検出する。
チルド室温度センサ113は、チルド室17Bに露出し、チルド室17Bに関する温度を検出する。「チルド室に関する温度」とは、例えば、チルド室17Bに収容された食品温度(例えば食品の表面温度)、チルド室17Bの空気温度、またはチルド室17Bに収容された部材(例えばチルド室容器36B)の温度などのうち1つ以上である。例えば、チルド室温度センサ113は、チルド室17Bに収容された食品温度を検出する接触型温度センサである。ただし、チルド室温度センサ113が設けられることに代えて、制御部101は、冷蔵室温度センサ112の検出結果と、事前に求められた冷蔵室17Aの空気温度とチルド室17Bの空気温度との対応関係とに基づき、チルド室17Bの空気温度を推定してもよい。この場合、冷蔵室温度センサ112は、「チルド室に関する温度を検出するセンサ」の一例に該当する。以下では便宜上、冷蔵室17Aの空気温度を「冷蔵室温度」、チルド室17Bの空気温度を「チルド室温度」、主冷凍室17Fの空気温度を「冷凍室温度」と称する。
冷蔵室扉スイッチ114は、例えば筐体10と冷蔵室扉20Aa,20Abとの間に設けられ、冷蔵室扉20Aa,20Abの開閉を検知する。チルド室扉スイッチ115は、例えばチルド室扉20Bに隣接して設けられ、チルド室扉20Bの開閉を検知する。チルド室扉スイッチ115は、「チルド室扉の開閉を検知する検知部」の一例である。
庫内カメラ116は、例えば冷蔵室17Aに設けられ、冷蔵室17Aまたはチルド室17Bに対する食品の入庫および出庫を検知する。チルド室扉20Bの開閉は、庫内カメラ116が撮影する画像または映像に基づいて検出されてもよい。この場合、庫内カメラ116は、「チルド室扉の開閉を検知する検知部」の別の一例である。以下では便宜上、チルド室扉20Bの開閉を検知可能な検知部を「検知部DT」と称する。ただし、検知部DTは、上述したチルド室扉スイッチ115や庫内カメラ116に限定されず、別の手段(例えばチルド室温度の変化などを監視すること)でチルド室扉の開閉を検知する検知部でもよい。
記憶部117は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(read-only memory)、またはRAM(random access memory)などにより実現される。記憶部117は、後述する「急速チルド」、「解凍」、「特別チルド」の各制御モードの実施に必要な情報(例えば実施時間や待機時間の設定情報など)を記憶している。
[3.2 基本運転]
次に、冷蔵庫1の基本運転について説明する。制御部101は、冷蔵庫1の基本運転として「冷蔵運転」および「冷凍運転」を実行する。「冷蔵運転」とは、三方弁93が切り替えられて圧縮機80から冷蔵用冷却器61に液体冷媒が供給される運転を意味する。一方で、「冷凍運転」は、三方弁93が切り替えられて圧縮機80から冷凍用冷却器71に液体冷媒が供給される運転を意味する。
制御部101は、例えば、冷蔵運転と冷凍運転とを交互に行うことにより、冷蔵温度帯の貯蔵室17(冷蔵室17A、チルド室17B、野菜室17C)と、冷凍温度帯の貯蔵室17(製氷室17D、小冷凍室17E、主冷凍室17F)とがそれぞれの設定温度帯に保たれるように、冷却部50を制御する。例えば、制御部101は、所定時間(例えば20分)に亘り冷蔵温度帯の貯蔵室17を冷却し、別の所定時間(例えば40分)に亘り冷凍温度帯の貯蔵室17を冷却することを交互に繰り返す。
制御部101は、冷蔵運転中に、冷蔵室温度が冷蔵室17Aの設定温度帯の下限値に達した場合(または、チルド室温度がチルド室17Bの設定温度帯の下限値に達した場合)や、冷凍室温度が主冷凍室17Fの設定温度帯の上限値に達した場合などに、上記所定時間の途中であっても冷蔵運転を終了して冷凍運転を開始してもよい。制御部101は、冷凍運転中に、冷凍室温度が主冷凍室17Fの設定温度帯の下限値に達した場合や、冷蔵室温度が冷蔵室17Aの設定温度帯の上限値に達した場合(または、チルド室温度がチルド室17Bの設定温度帯の上限値に達した場合)などに、上記所定時間の途中であっても冷凍凍転を終了して冷蔵運転を開始してもよい。
ここで、冷蔵運転が行われる間は、冷蔵温度帯の貯蔵室17の空気温度は低下するが、冷凍温度帯の貯蔵室17の空気温度は上昇する。一方で、冷凍運転が行われる間は、冷凍温度帯の貯蔵室17の空気温度は低下するが、冷蔵温度帯の貯蔵室17の空気温度は上昇する。このため、冷蔵温度帯の貯蔵室17の空気温度と、冷凍温度帯の貯蔵室17の空気温度は、それぞれ鋸歯状に上下することを繰り返す(図5、図6、図7参照)。冷凍サイクル装置90における冷蔵運転および冷凍運転は、後述する低温冷却制御の実施時間Saと高温冷却制御の実施時間Sbの各々において、交互に繰り返される。
[3.3 設定温度帯]
次に、「設定温度帯」について説明する。「設定温度帯」は、冷蔵運転および冷凍運転のそれぞれにおいて、温度管理の主対象となる貯蔵室17(例えば、冷蔵室17A(またはチルド室17B)と主冷凍室17F)の空気温度が維持される温度範囲を意味する。「設定温度帯」とは、上限値と下限値とにより規定される温度範囲を意味する。
制御部101は、例えば、冷蔵室温度(またはチルド室温度)や冷凍室温度に基づくPID制御(Proportional Integral Differential Control)のようなフィードバック制御を行うことで、温度管理の主対象となる貯蔵室17の空気温度を設定温度帯の上限値と下限値との間に収める。例えば、制御部101は、冷蔵室温度(またはチルド室温度)と設定温度帯の下限値との差が大きい場合、圧縮機80の運転周波数(圧縮能力)を高く設定するとともに、冷蔵用ファン62の回転数を高く設定する。一方で、制御部101は、冷蔵室温度(またはチルド室温度)と設定温度帯の下限値との差が小さい場合、圧縮機80の運転周波数を低く設定するとともに、冷蔵用ファン62の回転数を低く設定する。
ここで「設定温度帯」としては、冷蔵運転と冷凍運転のそれぞれについて、複数の段階(複数のレベル)が設けられている。冷蔵運転の設定温度帯として例えば3段階の設定温度帯が設けられる場合、冷蔵運転の設定温度帯は、冷蔵運転強設定(以下「R強設定」と称する)、冷蔵運転中設定(以下「R中設定」と称する)、および冷蔵運転弱設定(以下「R弱設定」と称する)を含む。「R強設定」の設定温度帯の上限値および下限値は、「R中設定」の設定温度帯の上限値および下限値よりも低い。「R中設定」の設定温度帯の上限値および下限値は、「R弱設定」の設定温度帯の上限値および下限値よりも低い。このため、「R強設定」が選択されると、同じ冷蔵室温度(または同じチルド室温度)で「R中設定」が選択される場合と比べて、圧縮機80の運転周波数が高く設定されるとともに、冷蔵用ファン62の回転数が高く設定される。一方で、「R弱設定」が選択されると、同じ冷蔵室温度(または同じチルド室温度)で「R中設定」が選択される場合と比べて、圧縮機80の運転周波数が低く設定されるとともに、冷蔵用ファン62の回転数が低く設定される。なお、冷蔵運転の設定温度帯は、5段階以上でもよい。
[4.制御モード]
次に、制御部101が実行可能ないくつかの制御モードについて説明する。
<通常チルド>
「通常チルド」の制御モードは、例えば、基本運転における冷蔵室17Aの冷却に付随してチルド室17Bの冷却が行われる制御モードである。「通常チルド」の制御モードでは、検出された冷蔵室温度と、冷蔵室17Aの設定温度帯とに基づいて冷却部50が制御され、冷蔵室17Aおよびチルド室17Bの冷却が行われる。「通常チルド」の制御モードでは、チルド室温度は、例えば平均温度が0.5~1.0℃の一定の温度帯に保たれる。「通常チルド」の制御モードは、「通常制御モード」の一例である。「通常チルド」の制御モードは、後述する「急速チルド」や「特別チルド」の制御モードと比べて消費電力が小さい。このため、冷蔵庫1の初期設定では「通常チルド」の制御モードが設定されている。
<急速チルド>
「急速チルド」の制御モードでは、「通常チルド」の制御モードと比べてチルド室17Bの空気温度を速く低下させる制御モードである。ここで言う「通常チルドの制御モードと比べて」とは、「通常チルド」の制御モードが複数レベル(例えば「R強設定」、「R中設定」、および「R弱設定」)ある場合、「複数レベルのうち中央のレベルと比べて」との意味である。この定義は「解凍」の説明でも同様である。「急速チルド」の制御モードによれば、チルド室17Bに新しく入れられた食品の温度をいち早くチルド室17Bの温度帯まで下げることができ、食品の鮮度低下を抑制することができるとともに、うまみ保持率やビタミン類の保持率を向上させることができる。
「急速チルド」の制御モードでは、例えば、所定時間A1(例えば120分)に亘り「R強設定」が選択される。すなわち、冷蔵室17Aの設定温度帯が引き下げられることで、「通常チルド」と比べて、圧縮機80の運転周波数および冷蔵用ファン62の回転数が高められる。これにより、チルド室17Bに対して0℃以下(例えば-4℃)の冷気を大風量で送り込み、チルド室17Bの空気温度を一気に低下させる。ここで言う「所定時間(例えば120分)に亘り」とは、その所定時間の間、継続して冷蔵運転が行われるという意味ではなく、「所定時間(例えば120分)」の間に冷蔵運転と冷凍運転とが交互に行われ、その間に行われる冷蔵運転の設定が「R強設定」になることを意味する。この定義は以下の「解凍」や「特別チルド」の説明でも同様である。「急速チルド」の制御モードでは、チルド室温度は、例えば-0.5℃を平均温度とする一定の温度帯に収まる。
「急速チルド」の制御モードは、操作パネル30などを介して「急速チルド」の開始を示すユーザの操作が受け付けられることで開始される。「急速チルド」の制御モードは、「固定時間」の制御モードの一例である。制御部101は、「急速チルド」の制御モードの実施が所定時間A1に達した場合に「急速チルド」の制御モードを自動的に終了し、「通常チルド」の制御モードに復帰させる。「急速チルド」の制御モードは、所定条件が成立した場合に自動で終了する制御モードの一例であり、「第1特別制御モード」の一例であり、「第1モード」の一例である。
<解凍>
「解凍」の制御モードは、「通常チルド」の制御モードと比べてチルド室17B内の温度を高くする制御モードである。「解凍」の制御モードは、チルド室17Bの空気温度を上昇させてチルド室17Bの食品の解凍を促進させる制御モードである。「解凍」の制御モードによれば、それまで冷凍保存されていて食品がチルド室17Bに移されることで、うまみや栄養分を含むドリップの流出を抑制しつつ食品を解凍することができる。
「解凍」の制御モードでは、所定時間A2(例えば60分)に亘り「R弱設定」が選択される。すなわち、冷蔵室17Aの設定温度帯が引き上げられることで、「通常チルド」の制御モードと比べて、圧縮機80の運転周波数が低くなる。一方で、冷蔵用ファン62の回転数は、「通常チルド」の制御モードと比べて高く設定される。これにより、チルド室17Bに対して比較的温かい空気の循環を促進し、チルド室17Bの空気温度を上昇させる。「解凍」の制御モードでは、チルド室温度は、例えば1.5℃を平均温度とする一定の温度帯に収まる。
「解凍」の制御モードは、操作パネル30などを介して「解凍」の開始を示すユーザの操作が受け付けられることで開始される。「解凍」の制御モードは、「固定時間」の制御モードの一例である。制御部101は、「解凍」の制御モードの実施が所定時間A2に達した場合に「解凍」の制御モードを自動的に終了し、「通常チルド」の制御モードに復帰させる。「解凍」の制御モードは、所定条件が成立した場合に自動で終了する制御モードの別の一例であり、「第1特別制御モード」の別の一例であり、「第2モード」の一例である。
<特別チルド>
「特別チルド」の制御モードでは、チルド室17Bが低温温度帯で冷却される時間と、チルド室17Bが高温温度帯で冷却される時間とが順に繰り返される。以下このような「特別チルド」について詳しく説明する。「特別チルド」の制御モードは、例えば、冷蔵室温度に代えて、チルド室温度に基づいて冷却部50が制御される。「特別チルド」の制御モードは、「第2特別制御モード」の一例である。
図5は、「特別チルド」の制御モードが実行される場合のチルド室温度の変化を示す図である。制御部101は、「特別チルド」の制御モードでは、チルド室17Bを第1温度帯Taで冷却する低温冷却制御(第1冷却制御)と、チルド室17Bを第1温度帯Taよりも高い第2温度帯Tbで冷却する高温冷却制御(第2冷却制御)とを交互に繰り返す。ここで、上述した冷蔵運転および冷凍運転における「冷却(冷凍サイクルにおける冷却)」は、冷却器(冷蔵用冷却器61または冷凍用冷却器71に冷媒が供給されることを意味する。これに対し、低温冷却制御および高温冷却制御における「冷却」は、第1温度帯Taまたは第2温度帯Tbに温度を維持するように冷蔵庫1を運転することを意味する。「低温冷却制御(第1冷却制御)と、高温冷却制御(第2冷却制御)とを交互に繰り返す」とは、低温冷却制御(第1冷却制御)の実施中に複数回の冷蔵運転が行われ、その後に高温冷却制御(第2冷却制御)の実施中に複数回の冷蔵運転が行われ、その後に低温冷却制御(第1冷却制御)の実施中に複数回の冷蔵運転が行われる場合なども含む。
第1温度帯Taの平均温度は、例えば-5℃である。第1温度帯Taの平均温度は、氷点以下の温度であり、0℃未満の温度である。本実施形態では、第1温度帯Taの最大値は、0℃未満の温度である。第1温度帯Taは、チルド室17Bの食品の表面を微凍結させる温度である。第1温度帯Taは、「通常チルド」の温度帯および「急速チルド」の温度帯よりも低い温度帯である。第1温度帯Taは、チルド室17Bの食品の真ん中のほうまで氷結させるのではなく、表面のみに氷結した層を作ることができる温度帯である。低温冷却制御は、所定の実施時間Sa(例えば2時間)に亘り実施される。
第2温度帯Tbは、高温冷却制御時のチルド室17Bの設定温度帯である。第2温度帯Tbの平均温度は、例えば+1℃である。第2温度帯Tbの平均温度は、氷点よりも高い温度であり、0℃以上の温度である。本実施形態では、第2温度帯Tbの最大値は、0℃以上の温度である。第2温度帯Tbは、例えば「通常チルド」の温度帯よりも高い温度帯である。第2温度帯Tbは、チルド室17Bの食品の表面を作られた微凍結の層を融解させることができる温度である。高温冷却制御は、低温冷却制御の実施時間Saよりも長い所定の実施時間Sb(例えば5時間)に亘り実施される。
このような「特別チルド」の制御モードによれば、所定の実施時間Sa(例えば2時間)の間、例えば-5℃を平均温度とする低温冷却制御と、所定の実施時間Sb(例えば5時間)の間、例えば+1℃を平均温度とする高温冷却制御とを交互に繰り返すことで、食品表面のみ微凍結することにより、食品の乾燥および酸化を抑制することができる。これにより、通常チルドと比べて食品の鮮度をさらに長く維持することができる。本実施形態では、「特別チルド」の開始を示すユーザの操作が受け付けられることで開始された「特別チルド」の制御モードは、その後、「特別チルド」の終了を示すユーザの操作が受け付けられるまで終了しない。すなわち、ユーザの操作に応じて開始された「特別チルド」の制御モードは、「特別チルド」の制御モードの実施中にチルド室扉20Bが開かれたことが検知部DTによって検知された場合であっても継続される。ここで「特別チルド」の終了を示すユーザの操作は、「特別チルド」の終了を直接的に示すユーザの操作に限定されず、「特別チルド」とは排他的に実施される別の制御モード(例えば「通常チルド」)の開始を示すユーザの操作でもよい。
なお本明細書において「ある温度帯が別の温度帯よりも高い」とは、「ある温度帯の平均温度が、別の温度帯の平均温度よりも高い」という意味であり、「ある温度帯」の一部に「別の温度帯」の一部が重なる場合も含む。同様に、「ある温度帯が別の温度帯よりも低い」とは、「ある温度帯の平均温度が、別の温度帯の平均温度よりも低い」という意味であり、「ある温度帯」の一部に「別の温度帯」の一部が含まれている場合も含む。
「特別チルド」の制御モードは、操作パネル30などを介して「特別チルド」の開始を示すユーザの操作が受け付けられることで開始される。ただし、本実施形態では、特別な条件が成立した場合には、制御部101は、「特別チルド」の制御モードを自動で開始する。以下、この内容について詳しく説明する。
[5.特別チルドの自動開始について]
本実施形態では、制御部101は、所定条件が成立したこと(例えば実施が所定時間A1,A2に達した)ことで「急速チルド」または「解凍」の制御モードが自動で終了した後、チルド室扉20Bが開かれたことが所定時間に亘り検知部DTによって検知されない場合、「特別チルド」の制御モードを自動で開始する。
(第1実施例)
図6は、第1実施例を説明するための図である。第1実施例は、「急速チルド」の制御モードの実施が所定時間A1(例えば120分)に達したことに応じて「急速チルド」の制御モードが自動で終了した後、チルド室扉20Bが開かれたことが第1所定時間B1(例えば48時間)に亘りに検知部DTによって検知されない場合、「特別チルド」の制御モードを自動で開始する例である。
詳しく述べると、第1実施例では、第1時点t11よりも以前は、「通常チルド」の制御モードによってチルド室17Bの冷却が行われている。そして、第1時点t11において、操作パネル30などを介して「急速チルド」の制御モードの開始を示すユーザの操作が受け付けられる。この場合、制御部101は、第1時点t11から「急速チルド」の制御モードを実行する。その結果、第1時点t11からチルド室温度が低下する。
次に、第2時点t12において、制御部101は、「急速チルド」の制御モードの実施が所定時間A1(例えば120分)に達したことに応じて「急速チルド」の制御モードを自動で終了し、「通常チルド」の制御モードに復帰する。その後、第1所定時間B1(例えば48時間)以内に検知部DTによってチルド室扉20Bが開かれたことが検知された場合、制御部101は、「通常チルド」の制御モードをそのまま継続する(不図示)。第1所定時間B1は、例えば、「急速チルド」の実施時間である所定時間A1よりも長い時間であり、「特別チルド」の1サイクル(時間Sa+時間Sb)よりも長い時間である。第1所定時間B1は、後述する第2所定時間B2(「解凍」の場合の所定時間B2、図7参照)よりも長い時間である。
一方で、第1所定時間B1(例えば48時間)以内に検知部DTによってチルド室扉20Bが開かれたことが検知されない場合、制御部101は、第1所定時間B1が経過したタイミング(第3時点t13)で「通常チルド」の制御モードを停止し、「特別チルド」の制御モードを自動で開始する。この場合、制御部101は、第3時点t13において高温冷却制御から「特別チルド」の制御モードを開始する。すなわち、制御部101は、第3時点t13から第4時点t14までの時間Sb(例えば5時間)に亘り高温冷却制御を実施し、第4時点t14から第5時点t15までの時間Sa(例えば2時間)に亘り低温冷却制御を実施し、その後も高温冷却制御と低温冷却制御とを交互に繰り返す。
そして、制御部101は、第3時点t13から「特別チルド」の制御モードを自動で開始した場合、第3時点t13以降にチルド室扉20Bが開かれたことが検知部DTによって検知されたことに応じて「特別チルド」の制御モードを終了し、「通常チルド」の制御モードに復帰する。つまり、自動で開始された「特別チルド」の制御モードは、チルド室扉20Bが開かれたことが検知部DTによって検知されたことに応じて自動で終了する。
(第2実施例)
図7は、第2実施例を説明するための図である。第2実施例は、「解凍」の制御モードの実施が所定時間A2(例えば60分)に達したことに応じて「解凍」の制御モードが自動で終了した後、チルド室扉20Bが開かれたことが第2所定時間B2(例えば24時間)に亘りに検知部DTによって検知されない場合、「特別チルド」の制御モードを自動で開始する例である。
詳しく述べると、第2実施例では、第1時点t21よりも以前は、「通常チルド」の制御モードによってチルド室17Bの冷却が行われている。そして、第1時点t21において、操作パネル30などを介して「解凍」の制御モードの開始を示すユーザの操作が受け付けられる。この場合、制御部101は、第1時点t21から「解凍」の制御モードを実行する。その結果、第1時点t21からチルド室温度が上昇する。
次に、第2時点t22において、制御部101は、「解凍」の制御モードの実施が所定時間A2(例えば60分)に達したことに応じて「解凍」の制御モードを自動で終了し、「通常チルド」の制御モードに復帰する。その後、第2所定時間B2(例えば24時間)以内に検知部DTによってチルド室扉20Bが開かれたことが検知された場合、制御部101は、「通常チルド」の制御モードをそのまま継続する(不図示)。第2所定時間B2は、例えば、「解凍」の実施時間である所定時間A2(例えば60分)よりも長い時間であり、「特別チルド」の1サイクル(時間Sa+時間Sb)よりも長い時間である。
一方で、第2所定時間B2(例えば24時間)以内に検知部DTによってチルド室扉20Bが開かれたことが検知されない場合、制御部101は、第2所定時間B2が経過したタイミング(第3時点t23)で「通常チルド」の制御モードを停止し、「特別チルド」の制御モードを自動的に開始する。この場合、制御部101は、第3時点t23において、高温冷却制御から「特別チルド」の制御モードを開始する。すなわち、制御部101は、第3時点t23から第4時点t24までの時間Sb(例えば5時間)に亘り高温冷却制御を実施し、第4時点t24から第5時点t25までの時間Sa(例えば2時間)に亘り低温冷却制御を実施し、その後も高温冷却制御と低温冷却制御とを交互に繰り返す。
そして、制御部101は、第3時点t23から「特別チルド」の制御モードを自動で開始した場合、第3時点t23の後にチルド室扉20Bが開かれたことが検知部DTによって検知された場合、「特別チルド」の制御モードを終了し、「通常チルド」の制御モードに復帰する。
[6.制御フロー]
図8は、制御部101の制御の流れを示すフローチャートである。まず、制御部101は、「急速チルド」の制御モードの開始を示すユーザの操作(以下、単に「開始操作」と称する)が受け付けられたか否かを判定する(S101)。制御部101は、「急速チルド」の制御モードの開始操作が受け付けられていない場合(S101:NO)、「解凍」の制御モードの開始操作が受け付けられたか否かを判定する(S102)。制御部101は、「解凍」の制御モードの開始操作が受け付けられていない場合(S102:NO)、S101の手前に戻り、所定の周期でS101およびS102の判定を繰り返す。
制御部101は、「急速チルド」の制御モードの開始操作が受け付けられた場合(S101:YES)、所定時間A1(例えば120分)に亘り「急速チルド」の制御モードを実施する(S103)。そして、制御部101は、所定時間A1の経過後、「急速チルド」の制御モードを自動で終了し、「通常チルド」の制御モードに復帰する(S104)。
この場合、制御部101は、「通常チルド」の制御モードへの復帰後、第1所定時間B1(例えば48時間)の間にチルド室扉20Bが開かれるか否かを監視する(S105)。そして、制御部101は、第1所定時間B1の間にチルド室扉20Bが開かれたことが検知された場合、その時点でS111に進む。一方で、制御部101は、第1所定時間B1の間にチルド室扉20Bが開かれたことが検知されない場合、第1所定時間B1の経過後にS112に進む。
制御部101は、「解凍」の制御モードの開始操作が受け付けられた場合(S102:YES)、所定時間A2(例えば60分)に亘り「解凍」の制御モードを実施する(S106)。そして、制御部101は、所定時間A2の経過後、「解凍」の制御モードを自動で終了し、「通常チルド」の制御モードに復帰する(S107)。
この場合、制御部101は、「通常チルド」の制御モードへの復帰後、第2所定時間B2(例えば24時間)の間にチルド室扉20Bが開かれるか否かを監視する(S108)。そして、制御部101は、第2所定時間B2の間にチルド室扉20Bが開かれたことが検知された場合、その時点でS111に進む。一方で、制御部101は、第2所定時間B2の間にチルド室扉20Bが開かれたことが検知されない場合、第2所定時間B2の経過後にS112に進む。
制御部101は、「急速チルド」の制御モードの終了後において第1所定時間B1の間にチルド室扉20Bが開かれたことが検知された場合(S105:YES)、または、「解凍」の制御モードの終了後において第2所定時間B2の間にチルド室扉20Bが開かれたことが検知された場合(S108:YES)、別制御の開始操作がユーザによって行われるまで「通常チルド」の制御モードを継続する(S111)。
一方で、制御部101は、「急速チルド」の制御モードの終了後において第1所定時間B1の間にチルド室扉20Bが開かれたことが検知されない場合(S105:NO)、または、「解凍」の制御モードの終了後において第2所定時間B2の間にチルド室扉20Bが開かれたことが検知されない場合(S108:NO)、「通常チルド」の制御モードを停止し、「特別チルド」の制御モードを自動で開始する(S112)。
「特別チルド」の制御モードを自動で開始した場合、制御部101は、その後にチルド室扉20Bが開かれたか否かを判定する(S113)。制御部101は、「特別チルド」の制御モードの実施中にチルド室扉20Bが開かれない場合(S113:NO)、所定の周期でS113の処理を繰り返す。一方で、制御部101は、「特別チルド」の制御モードの実施中にチルド室扉20Bが開かれた場合(S113:YES)、「特別チルド」の制御モードを自動で終了し(S114)、「通常チルド」の制御モードに復帰する(S115)。
[7.利点]
本実施形態では、制御部101は、所定条件が成立した場合に第1特別制御モードが自動で終了した後、チルド室扉20Bが開かれたことが所定時間B1(または所定時間B2)に亘り検知部DTによって検知されない場合、第2特別制御モードを自動で開始する。このような構成によれば、第1特別制御モードによる食品の保存を意図してチルド室17Bに食品が入れられた場合であって、第1特別制御モードの終了後に食品を取り出すことをユーザが忘れてしまった場合であっても、食品の長期保存により適した第2特別制御モードで食品を保存することができる。これにより、食品の鮮度低下を抑制することができるなど、より適切な冷却制御を行うことができる。
本実施形態では、上記所定条件は、第1特別制御モードの実施が所定時間A1(または所定時間A2)に達することである。このような構成によれば、所定時間A1(または所定時間A2)の終了後に食品を取り出すことをユーザが忘れてしまった場合であっても、食品の鮮度低下を抑制することができるなど、より適切な冷却制御を行うことができる。
本実施形態では、第1特別制御モードは、通常制御モードと比べてチルド室17B内の温度を速く低下させる制御モードである。このような構成によれば、食品の購入後に当日や翌日に食べるつもりでチルド室17Bに入れられた食品の取り出し忘れが生じた場合などに、自動でその食品の長期保存に適した制御モードで食品を保存することができる。
本実施形態では、第1特別制御モードは、通常制御モードと比べてチルド室17B内の温度を高くする制御モードである。このような構成によれば、解凍後にすぐ食べるつもりで冷凍室からチルド室17Bに移された食品の取り出し忘れが生じた場合などに、自動でその食品の長期保存に適した制御モードで食品を保存することができる。
本実施形態では、第2特別制御モードを自動で開始した場合、チルド室扉20Bが開かれたことが検知部DTによって検知されたことに応じて第2特別制御モードを終了する。このような構成によれば、チルド室扉20Bが開かれることで食品の取り出しにユーザが気付く状態が実現された後には、より省エネルギである「通常チルド」の制御モードに戻ることができる。これにより、冷蔵庫1の消費電力を小さくすることができる。
本実施形態では、第2特別制御モードを自動で開始する場合、高温冷却制御から開始する。このような構成によれば、第2特別制御モードの開始後であってもしばらくは調理しやすい食品状態(例えば食品表面が凍結してない状態)を維持することができ、これによりユーザの使い勝手を向上させることができる。
本実施形態では、制御部101は、第1特別制御モードとして、第1モード(例えば「急速チルド」の制御モード)と、第2モード(例えば「解凍」の制御モード)とを選択的に実施可能である。制御部101は、第1特別制御モードとして上記第1モードを実施した場合と、第1特別制御モードとして上記第2モードを実施した場合のいずれの場合でも、第2特別制御モードを自動で開始する場合、高温冷却制御から開始する、このような構成によれば、例えば「急速チルド」や「解凍」のような機能が異なる複数の制御モードがある場合においても、それら複数の制御モードの後に食品状態を調理しやすい状態(例えば食品表面が凍結してない状態)に維持することができる。
本実施形態では、第1所定時間B1は、第2所定時間B2よりも長く設定されている。このような構成によれば、食品の状態に応じて第2特別制御モードを自動で開始するタイミングを異ならせることができるので、冷蔵庫1の消費電力を抑制することができる。
以下、いくつかの変形例について説明する。なお、各変形例において以下に説明する以外の構成は、上記実施形態と同様である。
(第1変形例)
上述した実施形態では、第1特別制御モードが終了する所定条件は、第1特別制御モードの実施が所定時間A1(または所定時間A2)に達したことである。これに代えて/これに加えて、制御部101は、チルド室17Bに関する温度(例えば、チルド室17Bに収容された食品温度、チルド室17Bの空気温度、またはチルド室17Bに収容された部材の温度など)が所定温度に達した場合に、第1特別制御モードが終了する所定条件が成立したと判定してもよい。
(第2変形例)
上述した実施形態では、第1特別制御モードは、「急速チルド」または「解凍」の制御モードである。これに代えて/これに加えて、第1特別制御モードは、チルド室17Bに収容された食品の脱臭を行う脱臭モード、チルド室17Bに収容された食品の脱酸素を行う低酸素モード、チルド室17Bに収容された食品を大気圧よりも高い(または低い)圧力下で貯蔵する特定圧力モード、チルド室17Bに収容された食品に超音波を与える超音波モード、チルド室17Bに収容された食品に特定周波数の光を当てる照射モードなどでもよい。第1特別制御モードが終了する所定条件は、実施時間や温度に限定されず、チルド室17Bに収容された食品の状態(例えば熟成度や解凍度)などでもよい。
(第3変形例)
上述した実施形態では、「特別チルド」の制御モードにおいて、第1冷却制御は低温冷却制御であり、第2冷却制御は高温冷却制御である。これに代えて/これに加えて、制御部101は、チルド室17Bを第1気圧帯のもとで冷却する第1冷却制御(低圧冷却制御)と、チルド室17Bを第1気圧帯よりも高い第2気圧帯のもとで冷却する第2冷却制御(高圧冷却制御)とを交互に繰り返してもよい。チルド室17Bの気圧は、例えば冷却部50の一部としてチルド室17Bに設けられた真空ポンプを駆動させることで調整することができる。低圧冷却制御は、実施形態の低温冷却制御と同様に、チルド室17Bの食材の表面を微凍結させることができる冷却制御である。一方で、高圧冷却制御は、実施形態の低温冷却制御と同様に、チルド室17Bの食材の表面を作られた微凍結の層を融解させることができる冷却制御である。
以上、実施形態およびいくつかの変形例を説明した。ただし、実施形態および変形例は上記に限定されない。例えば、上述した制御は、チルド室17B以外の貯蔵室17(例えば冷蔵室17A)に対して行われてもよい。また、制御部101は、筐体10の内部に設けられる複数の貯蔵室17のうち、予め設定される2つ以上の貯蔵室17(例えば、冷蔵室17Aおよび主冷凍室17F)に対して同様の冷却制御を行ってもよい。
所定時間B1または所定時間B2は、固定時間に限定されない。制御部101は、例えば外気温センサ111の検出結果に基づき、所定時間B1または所定時間B2の長さを調整(変更)してもよい。例えば、制御部101は、閾値と比較して外気温が高い場合(例えば夏の場合)、所定時間B1または所定時間B2を短くしてもよい。
同様に、所定時間A1または所定時間A2は、固定時間に限定されない。制御部101は、例えば外気温センサ111の検出結果に基づき、所定時間A1または所定時間A2の長さを調整(変更)してもよい。例えば、制御部101は、閾値と比較して外気温が高い場合(例えば夏の場合)、所定時間A1を長くしたり、所定時間A2を短くしてもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、制御部は、所定条件が成立した場合に第1特別制御モードが自動で終了した後、チルド室扉が開かれたことが所定時間に亘り検知部によって検知されない場合、第2特別制御モードを自動で開始する。このような構成によれば、より適切な冷却制御を行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。