以下、本開示に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本開示に係る一実施形態におけるシートベルト装置の構成を例示する図である。図1に示すシートベルト装置101は、車両に搭載されたシートベルト装置の一例である。シートベルト装置101は、例えば、シートベルト104と、リトラクタ103と、ショルダーアンカー106と、タング107と、バックル108とを備える。
シートベルト104は、車両のシート102に座る乗員111を拘束するシートベルトの一例であり、リトラクタ103に引き出し可能に巻き取られる帯状部材である。シートベルトは、ウェビングとも称される。シートベルト104の先端のベルトアンカー105は、シート102又はシート102の近傍の車体に固定される。
リトラクタ103は、シートベルト104の巻き取り又は引き出しを可能にするシートベルト巻き取り装置の一例である。リトラクタ103は、車両衝突時等の所定値以上の加減速度または車両角度が検知されると、シートベルト104がリトラクタ103から引き出されることを制限する。リトラクタ103は、シート102又はシート102の近傍の車体に固定される。リトラクタ103は、シートベルトリトラクタの一例である。
リトラクタ103は、モータ103aの動力によりシートベルト104をスプールに巻き取る機能を備える。リトラクタ103は、例えば、車両衝突前に、ミリ波レーダー等のセンサからの信号に基づいてモータ103aを作動してシートベルト104をスプールに巻き取り、シートベルト104にプリテンションを与えてシートベルト104による乗員拘束を迅速に行う。また、リトラクタ103は、例えば、タング107とバックル108との連結が解除された時にモータ103aを作動してシートベルト104をスプールで巻き取る。リトラクタ103は、例えば、モータ103aを作動してシートベルト104の張力をドライビングシチュエーション(車両の状態)に応じて調整することで、シートベルト104による乗員の拘束性やシートベルト104の装着時の快適性をそれぞれ向上させる。
車両の状態とは、例えば、シートベルト104の引き出しの有無、乗員111の有無、車両の走行速度、車両の加速度、ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作、バックル108の操作、ドア操作、乗員が操作可能な車載の選択スイッチの操作入力などを表す状態をいう。
ショルダーアンカー106は、シートベルト104が挿通するベルト挿通具の一例であり、リトラクタ103から引き出されたシートベルト104を乗員111の肩部の方へガイドする部材である。ショルダーアンカー106は、シート102又はシート102の近傍の車体に固定される。
タング107は、シートベルト104が挿通するベルト挿通具の一例であり、ショルダーアンカー106によりガイドされたシートベルト104にスライド可能に取り付けられた部品である。
バックル108は、シートベルト104に取り付けられるタング107の平面状の係止部が挿抜される部品であり、タング107が着脱可能に連結される。バックル108は、例えば、シート102又はシート102の近傍の車体に固定される。
タング107がバックル108に連結された状態で、ショルダーアンカー106とタング107との間のシートベルト104の部分が、乗員111の胸部及び肩部を拘束するショルダーベルト部109である。タング107がバックル108に連結された状態で、ベルトアンカー105とタング107との間のシートベルト104の部分が、乗員111の腰部を拘束するラップベルト部110である。
図2は、本開示に係る一実施形態におけるシートベルトリトラクタの構成を例示するブロック図である。図2に示すリトラクタ1及びモータ12は、それぞれ、図1に示すリトラクタ103及びモータ103aに対応する。リトラクタ1は、少なくとも、スプール4、ロック機構6、第1のEA機構53、動力伝達機構21及び第2のEA機構54を備えるシートベルトリトラクタである。
スプール4は、不図示のフレームに回転可能に支持され、シートベルト104を引き出し可能に巻き取る部材である。
ロック機構6は、非作動時にスプール4の回転を許容し、作動時にシートベルト104の引き出し方向へのスプール4の回転を阻止する。ロック機構6は、作動時に第1のEA機構53をロックすることによりシートベルト104の引き出し方向へのスプール4の回転を阻止する。
第1のEA機構53は、シートベルト104の引き出し方向へのスプール4の回転とロック機構6による回転阻止とにより変形する。第1のEA機構53は、シートベルトに作用する荷重を制限して乗員のエネルギーを吸収緩和する第1のエネルギー吸収機構の一例である。
例えば、車両の衝突等の緊急時、プリテンショナ8とモータ12との少なくとも一方の作動により、スプール4をベルト巻き取り方向に回転させることによって、シートベルト104はスプール4に強く巻き取られる。その後、乗員が慣性により前方に移動することによって、シートベルト104はスプール4から引き出されようとする。この際、ロック機構6の作動により第1のEA機構53がロックされるので、スプール4のベルト引き出し方向への回転が阻止される。しかしながら、スプール4はベルト引き出し方向に回転しようとするので、シートベルト104の引き出し方向へのスプール4の回転とロック機構6による回転阻止とにより、第1のEA機構53は変形する。第1のEA機構53の変形により、スプール4から引き出されるシートベルト104に作用する荷重が制限される。つまり、乗員のエネルギーは、第1のEA機構53の変形により吸収緩和される。
動力伝達機構21は、第1のEA機構53の変形により発生する第1の荷重(以下、ベース荷重BNとも称する)に、モータ12の動力により発生する第2の荷重(以下、アシスト荷重ANとも称する)を付加する。アシスト荷重ANには、モータ12の動力のみにより発生する荷重だけでなく、モータ12の出力軸12aの回転を減速して伝達する減速機構の摩擦により発生する荷重を含んでもよいし、第2のEA機構54の変形により発生する荷重を含んでもよい。減速機構の個数は、一つでも複数でもよい。図2には、第1の減速機構51及び第2の減速機構52が示されている。ベース荷重BNにアシスト荷重ANを付加することにより、制限荷重(以下、制限荷重LNとも称する)が生成される。リトラクタ1は、このように生成された制限荷重LNでシートベルト104に作用する荷重を制限する。
第2のEA機構54は、ベース荷重BNにアシスト荷重ANを付加することにより増大する制限荷重LNを、自身の変形により低下させる。したがって、モータ12の動力により発生するアシスト荷重ANが、モータ12の動作中に故障等の何らかの理由で過大になっても、制限荷重LNが第2のEA機構54の変形により低下する。よって、過大な荷重がシートベルト104に作用することを防止できる。なお、第2のEA機構54は、シートベルトに作用する荷重を制限して乗員のエネルギーを吸収緩和する第2のエネルギー吸収機構の一例である。
第2のEA機構54は、例えば、制限荷重LN又はアシスト荷重ANが設定値(設計上予め設定された荷重値)に達すると、モータ12とスプール4との間の連結を切断する構造を有する。モータ12とスプール4との間の連結が第2のEA機構54により切断されることにより、アシスト荷重ANをベース荷重BNに付与できなくなるので、制限荷重LNを低下させることができる。
モータ12とスプール4との間の連結は、例えば、第2のEA機構54自身の破断によって切断される。これにより、制限荷重LNを低下させる構造を簡素化できる。例えば、第2のEA機構54は、モータ12とスプール4との間の動力伝達経路に挿入されたシェアピンを有し、モータ12とスプール4との間の連結をそのシェアピンのせん断によって切断する。
図3は、スプール4のストロークに対する制限荷重LNの挙動を例示する図である。横軸は、ロック機構6によるロックが作動してからスプール4がベルト引き出し方向に相対回転する量(ストローク)を表し、縦軸は、リトラクタ1により発生する制限荷重LNを表す。
図3に示すように、動力伝達機構21は、第1のEA機構53の変形により発生するベース荷重BNに、モータ12の動力により発生するアシスト荷重ANを上乗せすることによって、制限荷重LNを生成する。制限荷重LNは、ベース荷重BNとアシスト荷重ANとの和に略等しい。
制限荷重LNが上限荷重Lbに達していない状態では、アシスト荷重ANがベース荷重BNにそのまま上乗せされる。上限荷重Lbは、第1のEA機構53による第1の制限荷重N1と第2のEA機構54による第2の制限荷重N2との足し合わせによって決まる。第1の制限荷重N1は、第1のEA機構53の変形により発生させることが可能な最大荷重であり、第2の制限荷重N2は、第2のEA機構54の変形又は破断が起こるまでにモータ12の動力アップにより発生させることが可能な最大荷重である。一方、制限荷重LNは、何らかの理由で過大になっても、波形cに示されるように、上限荷重Lbに達すると、第2のEA機構54の変形又は破断により低下し始めるので、過大な荷重がシートベルト104に作用することを防止できる。制限荷重LNの低下は、アシスト荷重ANが第2のEA機構54の変形又は破断により低下することによって生ずる。
また、制限荷重LNが第2のEA機構54の変形又は破断により低下しても、ベース荷重BNは第1のEA機構53の変形により発生し続けているので、制限荷重LNはベース荷重BNを下限に低下する。よって、少なくともベース荷重BNを確保できる。つまり、シートベルト104に作用する荷重を第1のEA機構53による第1の制限荷重N1で制限できるので、第2のEA機構54が破断しても、過大な荷重がシートベルト104に作用することを防止できる。
また、車両の衝突等による何らかの異常(例えば、動力伝達機構21の故障)により、アシスト荷重ANをベース荷重BNに付加できなくなっても、制限荷重LNを、第1のEA機構53による第1の制限荷重N1を上限に制限できる。つまり、シートベルト104に作用する荷重を第1のEA機構53による第1の制限荷重N1で制限できるので、アシスト荷重ANを付加できない異常時でも、過大な荷重がシートベルト104に作用することを防止できる。
また、リトラクタ1は、モータ12を制御することによってアシスト荷重ANを調整する制御部10(図2参照)を備えることにより、制限荷重LNを上限荷重Lb以下の範囲でフレキシブルに調整できる。
例えば、制御部10は、アシスト荷重ANの立ち上がり速度をモータ12の制御により調整することによって、図3の波形f,g,hに示されるように、制限荷重LNの立ち上がり速度を調整できる。波形hは、アシスト荷重ANの立ち上がり速度が波形fよりも速くなるようにモータ12を制御する場合を示し、波形gは、アシスト荷重ANの立ち上がり速度が波形fよりも遅くなるようにモータ12を制御する場合を示す。
また、例えば、制御部10は、モータ12を制御することによって、ベース荷重BNに付加するプラスのアシスト荷重ANを増減させてもよい。これにより、図3の波形f,g,hに示されるように、第1の制限荷重N1から上限荷重Lbまでの範囲内で制限荷重LNを増減させることができる。また、制御部10は、モータ12を止めてアシスト荷重ANを零にすることによって、制限荷重LNを第1の制限荷重N1に調整できる。また、制御部10は、ベース荷重BNにマイナスのアシスト荷重ANが付加されるようにモータ12を制御することによって、制限荷重LNを第1の制限荷重N1よりも低く調整できる。例えば、制御部10は、ベース荷重BNに付加するマイナスのアシスト荷重ANをモータ12の制御により増減させることによって、制限荷重LNを第1の制限荷重N1よりも低い範囲で増減できる。
このように、制御部10は、上限荷重Lb以下の範囲内でフレキシブルな制限荷重LNをモータ12の制御により生成できる。したがって、例えば、制御部10は、衝突条件や乗員の体格に応じて、適切な制限荷重LNを発生させることが可能となる。
次に、図2に示す構成について、より詳細に説明する。
モータ12とスプール4は、第2のEA機構54を介して相互に接続されることが好ましい。これにより、モータ12の動力は第2のEA機構54を介してスプール4に伝達されるので、アシスト荷重ANの大きさを第2のEA機構54による第2の制限荷重N2以下に精度良く制限できる。
図2に示す構成では、モータ12の回転軸の回転を減速して伝達する減速機構は、第2のEA機構54を介して相互に接続される第1の減速機構51と第2の減速機構52とを有する。つまり、第2のEA機構54は、第1の減速機構51と第2の減速機構52との間の動力伝達経路に挿入配置されている。第2のEA機構54とスプール4とを第2の減速機構52を介して接続することにより、第2の減速機構52を介さずに接続する形態に比べて、第2のEA機構54による第2の制限荷重N2を小さく設定できるので、第2のEA機構54の小型化が可能となる。
例えば、上限荷重Lbを4kN(キロニュートン)に設定する場合を考える。第1のEA機構53による第1の制限荷重N1を1kNとすると、第2の減速機構52を介さずに接続する形態では、第2のEA機構54による第2の制限荷重N2を、3kN(=Lb-N1)に設定することが必要となる。これに対し、第2の減速機構52を介して接続する形態では、第2の減速機構52の減速比Rを2とした場合、第2のEA機構54による第2の制限荷重N2を、1.5kN(=(Lb-N1)/R)に設定すればよい。したがって、第2の減速機構52を介さずに接続する形態に比べて、第2の減速機構52を介して接続する形態の方が、第2のEA機構54を小型化できる。例えば、第2のEA機構54がシェアピンの変形又は破断により第2の制限荷重N2又は上限荷重Lbを設定する場合、当該シェアピンを細くすることができるので、第2のEA機構54をリトラクタ1内にレイアウトすることが容易になる。
第1の減速機構51は、モータ12の出力軸12aの回転を減速して第2のEA機構54の側に伝達する。第2の減速機構52は、第2のEA機構54により生ずる回転を減速してスプール4の側に伝達する。
また、動力伝達機構21は、スプール4からモータ12への力の伝達を遮断し、モータ12からスプール4への力の伝達を許容するクラッチ25を有することが好ましい。スプール4からモータ12への力の伝達を遮断するクラッチ25を設けることで、例えば、衝突時のプリテンショナ8によるシートベルト104の強大な巻き取りトルクがモータ12に伝達することを防止できる。また、スプール4の回転軸とモータ12の出力軸とが連結していると、乗員がシートベルト104をリトラクタ1から引き出す又はリトラクタ1に巻き取らせる操作をする時に、モータ12の負荷が、シートベルト104を操作する乗員に伝わってしまう。その結果、乗員はスムーズにシートベルト104を引き出す又は巻き取らせることができず、乗員に不快感を与えるおそれがある。これに対し、クラッチ25は、スプール4からモータ12への回転力の伝達を遮断し、モータ12からスプール4へ回転力を伝達するワンウェイクラッチである。よって、スプール4からモータ12への回転力の伝達がクラッチ25により遮断されるので、乗員がスムーズにシートベルト104をリトラクタ1から引き出す又はリトラクタ1に巻き取らせることが可能になる。
クラッチ25は、モータ12の出力軸12aの回転が停止している状態でスプール4から出力軸12aへの力の伝達を遮断し、出力軸12aが回転している状態で出力軸12aからスプール4への力の伝達を許容する。これにより、制御部10がモータ12を作動させて出力軸12aを回転させることにより、クラッチ25をオンにできる(出力軸12aからスプール4への力の伝達を許容できる)。一方、制御部10がモータ12を停止させて出力軸12aの回転を停止させることにより、クラッチ25をオフにできる(スプール4から出力軸12aへの力の伝達を遮断できる)。つまり、制御部10は、アシスト荷重ANを付加する動作に同期してクラッチ25をオンにできる。
図2に示す形態では、第1のEA機構53は、スプール4と係合する第1の部分55と、ロック機構6によりロックされる第2の部分56とを有する。動力伝達機構21は、アシスト荷重ANを第1の部分55の側に伝達する。スプール4と係合する第1の部分55の側にアシスト荷重ANを伝達することで、アシスト荷重ANをベース荷重BNに効率的に付加できる。
次に、リトラクタ1の具体的な構成について説明する。
図4は、第1の実施形態におけるシートベルトリトラクタの正面図である。図5は、第1の実施形態におけるシートベルトリトラクタの右側面図である。図6は、第1の実施形態におけるシートベルトリトラクタの左側面図である。図7は、第1の実施形態におけるシートベルトリトラクタの切断面を矢視A-A(図6参照)で示す図である。図8は、第1の実施形態におけるシートベルトリトラクタの分解斜視図である。
図4~8に示すリトラクタ1Aは、シートベルトリトラクタの一例であり、図2に示すリトラクタ1の一具体例である。リトラクタ1Aは、第1のEA機構53の一例である第1のEA機構53A及び第2のEA機構54の一例である第2のEA機構54Aを備える。第1のEA機構53Aは、スプール4とロック機構6との間に設けられるトーションバー7の変形により、ベース荷重BNを発生させる。第2のEA機構54Aは、モータ12とスプール4との間に設けられるシェアピン30の変形又は破断により、制限荷重LNを低下させる。トーションバー7は、第1のEA部材の一例であり、シェアピン30は、第2のEA部材の一例である。以下、図4~8を参照して、リトラクタ1Aの構成について説明する。
リトラクタ1Aは、フレーム2、スプール4、ビークルセンサ5、ロック機構6、トーションバー7、プリテンショナ8及び動力伝達機構21Aを備える。
フレーム2は、スプール4を回転可能に収容し、リトラクタ1Aの骨格を形成する筐体である。フレーム2は、例えば、対峙する一対の側面部2b,2cと、側面部2b,2cを連結する背面部2aとを有する。側面部2bの外側(つまり、側面部2bに対してスプール4の側とは反対側)には、ロック機構6が配置されている。一対の側面部2b,2cは、それぞれ、円形状(略円形状を含む)の開口を有する。
スプール4は、フレーム2の一対の側面部2b,2cの各開口と同心(略同心を含む)に且つ回転可能に支持され、シートベルト104を巻き取る巻き取り部材である。
ビークルセンサ5は、車両の挙動変化(具体的には、車両の挙動変化に伴って生ずる車両の加減速や傾きの急激な変化)を検出する検出機構の一例である。ビークルセンサ5は、例えば、緊急時に発生する車両減速度で移動する球体と、球体の移動によって作動する係止爪とを有する。
ロック機構6は、シートベルト104の引き出し方向へのスプール4の回転をロックするロック動作を行う。ロック機構6は、ロックギア14と、ロッキングベース17とを備える。ロックギア14は、フレーム2の側面部2bから外側へ突出するトーションバー7の先端部7aに、トーションバー7に対して相対回動可能に嵌まっている。先端部7aは、トーションバー7に軸方向に接続されるシャフト等の別部材でもよいし、トーションバー7自体の一部でもよい。ロッキングベース17は、後述の第2のトルク伝達部16に一体回転可能に支持されかつパウルを揺動可能に保持する。ロッキングベース17は、ロッキング部材の一例であり、通常時にスプール4と共に回転し且つ作動時にスプール4のシートベルト104の引き出し方向への回転を阻止する。ロックギア14の外周には、ラチェット歯14aが形成されている。
ロックギア14は、通常時は、トーションバー7と一体回転する。一方、前述の緊急時は、ビークルセンサ5の球体が作動して、係止爪がラチェット歯14aに係合する。これにより、シートベルト104の引き出し方向へのロックギア14の回転が阻止(ロック)される。ロックギア14の回転がロックされると、ロッキングベース17とロックギア14との間に相対回転が生じて、ロッキングベース17に設けられたパウルが回転し、回転したパウルは、側面部2bに設けられた内歯2baに係合する。これにより、ロッキングベース17の回転が停止し、シートベルト104の引き出し方向へのスプール4の回転も阻止される。
トーションバー7には、スプール4と相対回転不能に係合する第1のトルク伝達部15と、ロッキングベース17と相対回転不能に係合する第2のトルク伝達部16とが形成されている。これらの伝達部は、軸方向に互いに離れた箇所に設けられている。第1のトルク伝達部15は、スプール4と係合する第1の部分55(図2参照)の一例である。第2のトルク伝達部16は、ロック機構6によりロックされる第2の部分56(図2参照)の一例である。
プリテンショナ8は、作動時にシートベルト104の巻き取り方向へスプール4を回転させる回転体27を有する。回転体27を回転させる動力発生部は、公知の構成を適用できるので、その図示を省略する。プリテンショナ8は、緊急時の初期に作動して反応ガスを動力発生部で発生させ、この反応ガスにより発生したベルト巻き取りトルクを、回転体27を介してスプール4に伝達する。これにより、緊急時の初期において、シートベルト104は、スプール4に所定量巻き取られる。回転体27は、スプール4と一体回転可能にスプール4の端部に接続される。
回転体27は、プリテンショナ8の作動時にシートベルト104の巻き取り方向へスプール4を回転させる。回転体27は、パドルホイールとも称される。回転体27は、スプール4と同軸に接続されている。動力発生部のガス発生装置で発生したガスにより押された射出体は、回転体27の外周部27aに接触することで、回転体27をシートベルト104の巻き取り方向に回転させる。これにより、スプール4もシートベルト104の巻き取り方向に回転する。つまり、シートベルト104はスプール4に巻き取られる。
動力伝達機構21Aは、図2に示す動力伝達機構21の一例である。動力伝達機構21Aは、モータ12、リテーナ29、第1の減速機構51A、第2のEA機構54A、第2の減速機構52A及びクラッチ25を備える。回転体27は、動力伝達機構21Aの一要素でもよい。
モータ12は、スプール4を回転させる動力を発生する。モータ12は、リテーナ29に固定される。
リテーナ29は、モータ12の出力軸12aが貫通する貫通孔29eと、一対のコネクトギア44,45を回転可能に保持するシャフト29bと、アイドルギア26を回転可能に保持するボス29aと、回転体27を回転可能に保持する保持孔29cとを有する。
第1の減速機構51Aは、第1の減速機構51(図2参照)の一例であり、モータギア20及びコネクトギア45を有する。コネクトギア45は、第1の減速機構51Aと第2のEA機構54Aとで共用される部品である。
モータギア20は、モータ12の出力軸12aに一体回転可能に取り付けられている。モータギア20は、外歯20aと、出力軸12aが挿入される軸穴20bとを有する。
コネクトギア45は、モータギア20の外歯20aに常時噛み合う外歯45aと、シャフト29bが挿入される軸穴45bと、シェアピン30が第1の減速機構51Aのスラスト方向(コネクトギア45の軸に平行な方向)に貫通するピン孔45cとを有する。ピン孔45cは、コネクトギア45の端面に形成されている。外歯45aは、外歯20aよりも多い歯数を有する。コネクトギア45は、シャフト29bを中心に回転する。
第2のEA機構54Aは、EA部材であるシェアピン30と、シェアピン30を介して相互に接続される一対のコネクトギア44,45とを有する。
シェアピン30は、第1の減速機構51A及び第2の減速機構52Aのスラスト方向に延びる。一対のコネクトギア44,45は、シェアピン30により連結され、その連結はシェアピン30の破断により切断される。シェアピン30は、一対のコネクトギア44,45のうち一方又は両方に固定される。例えば、雄ねじが形成されたシェアピン30は、一対のコネクトギア44,45のうち一方又は両方にねじ止めされる。
コネクトギア44は、アイドルギア26の外歯26aと常時噛み合う外歯44aと、シャフト29bが挿入される軸穴44bと、シェアピン30が第2の減速機構52Aのスラスト方向(コネクトギア44の軸に平行な方向)に貫通するピン孔44cとを有する。ピン孔44cは、コネクトギア44の端面に形成されている。外歯44aは、外歯26aよりも少ない歯数を有する。コネクトギア44は、シャフト29bを中心に回転する。コネクトギア44は、直径がコネクトギア45よりも小さく、コネクトギア45の端面と対向する。コネクトギア44の外形は、略円盤形状である。
第2の減速機構52Aは、第2の減速機構52(図2参照)の一例であり、コネクトギア44、アイドルギア26及びドライブギア23を有する。コネクトギア44は、第2のEA機構54Aと第2の減速機構52Aとで共用される部品であり、ドライブギア23は第2の減速機構52Aとクラッチ25とで共用される部品である。
アイドルギア26は、コネクトギア44の外歯44aとドライブギア23の外歯23aの両方と常時噛み合う外歯26aと、ボス29aが挿入される軸穴26bとを有する。外歯26aは、外歯44aよりも多い歯数を有する。アイドルギア26は、ボス29aを中心に回転する。
ドライブギア23は、歯数がアイドルギア26の外歯26aよりも多い外歯23aと、トーションバー7の先端部7bが相対回転可能に嵌る軸穴23bとを有する。
クラッチ25は、スプール4の回転軸(本実施形態では、トーションバー7)と同軸に配置され、つまり、スプール4の回転軸と同じ軸線上に位置する。
クラッチ25は、ドライブギア23とクラッチアウタ24とクラッチパウル41とを有する。
ドライブギア23は、スプール4の回転軸と同軸の先端部7bに回転可能に支持され、モータ12の出力軸12aの回転に従って回転する。先端部7bは、ドライブギア23の軸穴23b及びクラッチアウタ24の軸穴24bに挿入されている。ドライブギア23は、アイドルギア26よりも大きな外径を有し、外歯23aが形成されている。ドライブギア23の外歯23aは、第2の減速機構52A、第2のEA機構54A及び第1の減速機構51Aを介して、モータ12の出力軸12aに接続される。ドライブギア23は、第1の回転部材の一例である。
クラッチアウタ24は、ドライブギア23と同軸に回転可能に支持され、直接又は間接的にスプール4と連結する。本実施形態では、クラッチアウタ24は、回転体27を介してスプール4の内周部と一体に連結する。クラッチアウタ24は、回転体27と一体回転可能に回転体27の軸穴27bに接続されるボス24aと、先端部7bが貫通する軸穴24bとを有する。クラッチアウタ24は、第2の回転部材の一例である。
図9は、クラッチ25の側面図である。図10は、クラッチ25の分解斜視図である。図11は、クラッチ25のオフ状態(クラッチパウル閉状態)を矢視B-B(図9参照)で示す図である。図12は、クラッチのオン動作(クラッチパウル開状態)を矢視B-B(図9参照)で示す図である。次に、図9~12を参照して、クラッチ25の構成について、より詳細に説明する。
クラッチ25は、ドライブギア23と、ドライブギア23と同軸に回転可能に支持されるクラッチアウタ24と、ドライブギア23に設けられる一対のクラッチパウル41と、一対のクラッチパウル41を付勢する一対のクラッチスプリング42とを有する。
ドライブギア23の端面23iには、一対のボス23e,23hと、一対の取り付け部23c,23fと、一対のストッパ23d,23gとが突出するように形成されている。クラッチアウタ24の外周壁24cの内側には、ラチェット内歯24dが形成されている。
クラッチパウル41aは、端面23iに沿ってボス23eを中心に揺動できるように、ボス23eに支持されている。クラッチパウル41bは、端面23iに沿ってボス23hを中心に揺動できるように、ボス23hに支持されている。
クラッチパウル41aは、ボス23eに対して一方の側に形成される被押部41abと、ボス23eに対して他方の側に形成される爪部41aaとを有する。クラッチパウル41bは、ボス23hに対して一方の側に形成される被押部41bbと、ボス23hに対して他方の側に形成される爪部41baとを有する。
クラッチスプリング42aは、被押部41abをラチェット内歯24dに近づく方向に付勢し且つ爪部41aaをラチェット内歯24dから離れる方向に付勢するように、取り付け部23cと被押部41abとの間に配置される付勢部材である。クラッチスプリング42aは、取り付け部23cに取り付けられる一方のスプリング端と、被押部41abをラチェット内歯24dに近づく方向に押す他方のスプリング端とを有する。被押部41abがラチェット内歯24dに接触しないように、ラチェット内歯24dに近づく方向への被押部41abの移動は、ストッパ23dにより制限される。
同様に、クラッチスプリング42bは、被押部41bbをラチェット内歯24dに近づく方向に付勢し且つ爪部41baをラチェット内歯24dから離れる方向に付勢するように、取り付け部23fと被押部41bbとの間に配置される付勢部材である。クラッチスプリング42bは、取り付け部23fに取り付けられる一方のスプリング端と、被押部41bbをラチェット内歯24dに近づく方向に押す他方のスプリング端とを有する。被押部41bbがラチェット内歯24dに接触しないように、ラチェット内歯24dに近づく方向への被押部41bbの移動は、ストッパ23gにより制限される。
したがって、図11に示すように、ドライブギア23の回転が停止している状態では、クラッチパウル41aは、クラッチスプリング42aの付勢力に従ってクラッチアウタ24のラチェット内歯24dと係合しない位置に保持される。つまり、爪部41aaは、ラチェット内歯24dと係合しない。
同様に、図11に示すように、ドライブギア23の回転が停止している状態では、クラッチパウル41bは、クラッチスプリング42bの付勢力に従ってクラッチアウタ24のラチェット内歯24dと係合しない位置に保持される。つまり、爪部41baは、ラチェット内歯24dと係合しない。
一方、モータ12の出力軸12aが回転している状態では、前述のモータギア20及び一対のコネクトギア44,45の回転により、ドライブギア23も軸穴24bを中心に回転している。ドライブギア23が回転すると、クラッチパウル41a,41bに遠心力が働く。
ドライブギア23が出力軸12aの回転によりシートベルト104の巻き取り方向に対応する方向に回転すると、クラッチパウル41aは、クラッチスプリング42aの付勢力に抗いながら、その遠心力により移動する。遠心力により移動したクラッチパウル41aは、クラッチアウタ24のラチェット内歯24dと係合する(図12参照)。つまり、爪部41aaは、ラチェット内歯24dと係合する。逆に、ドライブギア23が出力軸12aの回転によりシートベルト104の引き出し方向に対応する方向に回転すると、クラッチパウル41aは、その遠心力が働いても、ストッパ23dによってラチェット内歯24dに近づく方向への移動が規制される。よって、クラッチパウル41aとラチェット内歯24dとの係合が阻止される(図11参照)。つまり、爪部41aaは、ラチェット内歯24dと係合しない。
同様に、クラッチパウル41bは、ドライブギア23が出力軸12aの回転によりシートベルト104の巻き取り方向に対応する方向に回転すると、ラチェット内歯24dと係合する(図12参照)。つまり、爪部41baは、ラチェット内歯24dと係合する。逆に、クラッチパウル41bは、ドライブギア23が出力軸12aの回転によりシートベルト104の引き出し方向に対応する方向に回転すると、ラチェット内歯24dと係合しない(図11参照)。つまり、爪部41baは、ラチェット内歯24dと係合しない。
したがって、ドライブギア23が出力軸12aの回転によりシートベルト104の巻き取り方向に対応する方向に回転している状態では、クラッチパウル41a,41bの爪部41aa,41baがラチェット内歯24dと係合した状態が維持される。この係合状態では、出力軸12aの回転動力は、モータギア20、コネクトギア45、第2のEA機構54A、コネクトギア44、アイドルギア26、ドライブギア23、一対のクラッチパウル41、クラッチアウタ24の順路で伝達される。クラッチアウタ24は、回転体27を介して、スプール4の内周側に連結されている。したがって、このような係合状態では、出力軸12aの回転力は、スプール4に伝達されるので、シートベルト104はスプール4に巻き取られる。
一方、ドライブギア23が出力軸12aの回転によりシートベルト104の引き出し方向に対応する方向に回転している状態では、クラッチパウル41a,41bの爪部41aa,41baがラチェット内歯24dと係合しない状態が維持される。また、出力軸12aの回転が停止している状態では、ドライブギア23の回転は停止しているので、クラッチパウル41a,41bの爪部41aa,41baがラチェット内歯24dと係合しない状態が維持される。これらの非係合状態では、スプール4の回転軸の回転力は、回転体27、クラッチアウタ24の順路で伝達するが、ドライブギア23には伝達されない。したがって、これらのような非係合状態では、スプール4の回転軸の回転力は、出力軸12aには伝達されない。つまり、スプール4の回転軸から出力軸12aへの回転力の伝達は遮断される。
このように、クラッチ25は、スプール4からモータ12への回転力の伝達を遮断し、モータ12からスプール4へ回転力を伝達するワンウェイクラッチである。よって、スプール4からモータ12への回転力の伝達がクラッチ25により遮断されるので、乗員111がスムーズにシートベルト104をリトラクタ1から引き出す又はリトラクタ1に巻き取らせることが可能になる。また、クラッチ25とスプール4は、回転体27を介して相互に接続されるので、衝突時のプリテンショナ8の回転体27の回転トルクがモータ12に伝達することを防止できる。
また、車両の衝突が起こった場合、シートベルト104は、プリテンショナ8やモータ12などによってスプール4に強く巻き取られる。その後、乗員の前方への移動によりシートベルト104が引き出されることによって、ロック機構6が作動して、トーションバー7が捻じれEA荷重が発生する。リトラクタ1Aは、重ねて配置された一対のコネクトギア44,45の間に、設定荷重以上の負荷が入力されるとせん断破壊を起こすシェアピン30を搭載する。
通常作動時では、一対のコネクトギア44,45は、シェアピン30により連結している。そのため、一対のコネクトギア44,45は、一体となってシャフト29bを中心に回転し、モータ12により発生するトルクは、減速機構の各ギアを介してスプール4ヘ伝達される。モータ12から伝達されたアシスト荷重ANは、少なくとも1本搭載されているトーションバー7に付加され、EA荷重の一部として車両の乗員に作用する。
しかしながら、モータ12の制御中(出力軸12aの回転中)、予め設定された荷重以上の負荷が一対のコネクトギア44,45の間に生じると、シェアピン30はせん断破壊を起こすので、一対のコネクトギア44,45の間の連結は、切断される。これにより、モータ12により発生しているアシスト荷重ANは、スプール4ヘ伝達されなくなるので、過大な荷重がシートベルト104に作用することを防止できる。また、アシスト荷重ANがスプール4ヘ伝達されなくなっても、少なくともベース荷重BNは確保されるので、乗員のエネルギーをベース荷重BNにより吸収緩和できる。
図13は、第2の実施形態におけるシートベルトリトラクタの切断面を矢視A-A(図6参照)で示す図である。図6は、第1の実施形態におけるシートベルトリトラクタの切断面であるが、第2の実施形態におけるシートベルトリトラクタの説明に援用する。図14は、第2の実施形態におけるシートベルトリトラクタの分解斜視図である。第2の実施形態は、第2のEA機構が第1の実施形態と相違する。以下、図13,14を参照して、第2の実施形態におけるリトラクタ1Bの構成について説明する。なお、第1の実施形態におけるリトラクタ1Aと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。
図13,14に示すリトラクタ1Bは、シートベルトリトラクタの一例であり、図2に示すリトラクタ1の一具体例である。リトラクタ1Bは、第2のEA機構54の一例である第2のEA機構54Bを備える。第2のEA機構54Bは、モータ12とスプール4との間に設けられるシェアピン31の変形又は破断により、制限荷重LNを低下させる。シェアピン31は、第2のEA部材の一例である。
リトラクタ1Bは、フレーム2、スプール4、ビークルセンサ5、ロック機構6、トーションバー7、プリテンショナ8及び動力伝達機構21Bを備える。
動力伝達機構21Bは、図2に示す動力伝達機構21の一例である。動力伝達機構21Bは、モータ12、リテーナ29、第1の減速機構51A、第2のEA機構54B、第2の減速機構52A及びクラッチ25を備える。回転体27は、動力伝達機構21Bの一要素でもよい。
第1の減速機構51Aは、第1の減速機構51(図2参照)の一例であり、モータギア20及びコネクトギア45を有する。コネクトギア45は、第1の減速機構51Aと第2のEA機構54Bとで共用される部品である。
図15は、第2の実施形態におけるリトラクタ1Bに搭載されるコネクトギアの斜視図である。コネクトギア45は、モータギア20の外歯20aに常時噛み合う外歯45aと、シャフト29bが挿入される軸穴45bと、第1の減速機構51Aのラジアル方向(コネクトギア45の軸に直角な方向)に凹んだ溝45gとを有する。溝45gは、コネクトギア45の凹部45eの内周部45dに形成され、シェアピン31のラジアル方向の外側端部を保持する。
図14において、第2のEA機構54Bは、EA部材であるシェアピン31と、シェアピン31を介して相互に接続される一対のコネクトギア44,45とを有する。
シェアピン31は、第1の減速機構51A及び第2の減速機構52Aのラジアル方向に延びる。一対のコネクトギア44,45は、シェアピン31により連結され、その連結はシェアピン31の予定破断部31cでの破断により切断される。シェアピン31は、一対のコネクトギア44,45のうち一方又は両方に固定される。
コネクトギア44は、アイドルギア26の外歯26aと常時噛み合う外歯44aと、シャフト29bが挿入される軸穴44bと、第2の減速機構52Aのラジアル方向(コネクトギア44の軸に直角な方向)に凹んだ溝44dとを有する。溝44dは、コネクトギア44の端面に形成され、シェアピン31のラジアル方向の内側端部を保持する。コネクトギア44は、直径がコネクトギア45よりも小さく、コネクトギア45の端面と対向し、コネクトギア45の凹部45e(図15参照)に嵌まる。コネクトギア44の外形は、略円盤形状である。
このように、リトラクタ1Bは、重ねて配置された一対のコネクトギア44,45の間に、設定荷重以上の負荷が入力されるとせん断破壊を起こすシェアピン31を搭載する。通常作動時では、一対のコネクトギア44,45は、シェアピン31により連結している。そのため、一対のコネクトギア44,45は、一体となってシャフト29bを中心に回転する。モータ12の制御中(出力軸12aの回転中)、予め設定された荷重以上の負荷が一対のコネクトギア44,45の間に生じると、シェアピン31は予定破断部31cでせん断破壊を起こすので、一対のコネクトギア44,45の間の連結は、切断される。これにより、モータ12により発生しているアシスト荷重ANは、スプール4ヘ伝達されなくなるので、過大な荷重がシートベルト104に作用することを防止できる。また、アシスト荷重ANがスプール4ヘ伝達されなくなっても、少なくともベース荷重BNは確保されるので、乗員のエネルギーをベース荷重BNにより吸収緩和できる。
図16は、第3の実施形態におけるシートベルトリトラクタの切断面を矢視A-A(図6参照)で示す図である。図6は、第1の実施形態におけるシートベルトリトラクタの切断面であるが、第3の実施形態におけるシートベルトリトラクタの説明に援用する。図17は、第3の実施形態におけるシートベルトリトラクタの分解斜視図である。第3の実施形態は、第2のEA機構が第1の実施形態と相違する。以下、図16,17を参照して、第3の実施形態におけるリトラクタ1Cの構成について説明する。なお、第1の実施形態におけるリトラクタ1Aと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。
図16,17に示すリトラクタ1Cは、シートベルトリトラクタの一例であり、図2に示すリトラクタ1の一具体例である。リトラクタ1Cは、第2のEA機構54の一例である第2のEA機構54Cを備える。第2のEA機構54Cは、モータ12とスプール4との間に設けられるシェアピン45f(図18参照)の変形又は破断により、制限荷重LNを低下させる。シェアピン45fは、第2のEA部材の一例である。
図18は、第3の実施形態におけるリトラクタ1Cに搭載されるコネクトギアの斜視図である。コネクトギア45は、コネクトギア45のスラスト方向に突出するシェアピン45fを有する。シェアピン45fは、第1の減速機構51Aのコネクトギア45と一体化された部分であり、コネクトギア45の凹部45eに形成されている。
図17において、第2のEA機構54Cは、EA部材であるシェアピン45f(図18参照)と、シェアピン45fを介して相互に接続される一対のコネクトギア44,45とを有する。コネクトギア44は、シェアピン45fが第2の減速機構52Aのスラスト方向(コネクトギア44の軸に平行な方向)に貫通するピン孔44eとを有する。ピン孔44eは、コネクトギア44の端面に形成されている。
したがって、上述の実施形態と同様に、シェアピン45fの破断により、一対のコネクトギア44,45の間の連結は、切断されるので、過大な荷重がシートベルト104に作用することを防止できる。なお、コネクトギア44のスラスト方向に突出するシェアピンをコネクトギア45と一体に形成し、当該シェアピンがコネクトギア45のスラスト方向に貫通するピン孔をコネクトギア45に形成してもよい。
図19は、第4の実施形態におけるシートベルトリトラクタの分解斜視図である。第4の実施形態は、第2のEA機構が第2の実施形態と相違する。以下、図19を参照して、第4の実施形態におけるリトラクタ1Dの構成について説明する。なお、第4の実施形態におけるリトラクタ1Dと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。
図19に示すリトラクタ1Dは、シートベルトリトラクタの一例であり、図2に示すリトラクタ1の一具体例である。リトラクタ1Dは、第2のEA機構54の一例である第2のEA機構54Dを備える。第2のEA機構54Dは、モータ12とスプール4との間に設けられるシェアピン44fの変形又は破断により、制限荷重LNを低下させる。シェアピン44fは、第2のEA部材の一例である。
コネクトギア44は、コネクトギア44のラジアル方向に突出するシェアピン44fを有する。シェアピン44fは、第2の減速機構52Aのコネクトギア44と一体化された部分であり、コネクトギア44の外周面に形成されている。
第2のEA機構54Dは、EA部材であるシェアピン44fと、シェアピン45fを介して相互に接続される一対のコネクトギア44,45とを有する。コネクトギア45は、シェアピン44fが第1の減速機構51Aのラジアル方向(コネクトギア45の軸に直角な方向)に凹んだ溝45g(図15参照)を有する。溝45gは、シェアピン44fのラジアル方向の外側端部を保持する。
したがって、上述の実施形態と同様に、シェアピン44fの破断により、一対のコネクトギア44,45の間の連結は、切断されるので、過大な荷重がシートベルト104に作用することを防止できる。なお、コネクトギア45のラジアル方向に内周部45dから内側に突出するシェアピンをコネクトギア45と一体に形成し、コネクトギア44のラジアル方向に凹んだ溝をコネクトギア45の外周面に形成し、当該溝に当該シェアピンを保持させてもよい。
以上、シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
例えば、クラッチパウルの数は、2つに限られず、1つ又は3つ以上でもよい。また、第1の減速機構51及び第2の減速機構52のそれぞれに含まれるギアの数は、2つに限られず、1つ又は3つ以上でもよい。
また、第2のEA機構54は、シェアピン以外の部材(例えば、トーションバー、プレートなど)の変形又は破断(分断)により、第2の制限荷重N2又は上限荷重Lbを設定してもよい。