JP7328679B2 - 樹脂組成物およびそれからなるフィラメント状成形体 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)とアイオノマー樹脂(B)とを含有し、(A)と(B)の質量比率[(A)/(B)]が95/5~60/40であって、(A)のメルトフローレート(MFR)値が(B)のMFR値よりも大きいことを特徴とする樹脂組成物。
(2)曲げ弾性率が1.4~3.0GPaであり、摩耗試験時の摩耗質量が、ポリ乳酸樹脂(A)の摩耗質量に対して1.5~2.5倍であることを特徴とする(1)に記載の樹脂組成物。
(3)さらに、充填剤(C)を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
(4)さらに、汚れ防止剤を含有することを特徴とする(3)に記載の樹脂組成物。
(5)熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用成形体であって、(1)~(4)のいずれかに記載の樹脂組成物で構成され、直径が0.2~5.0mmであることを特徴とするフィラメント状成形体。
造形材料用樹脂組成物のペレットを70℃×24時間で真空乾燥した樹脂を温度190℃、荷重2.16Kgfで測定した値をMFR1とする。一方、造形材料用樹脂組成物のペレットを浴比1:100で8%水酸化ナトリウム温水溶液中(80℃×12時間処理)でポリ乳酸成分を溶出、残不溶成分を水洗、乾燥した樹脂成分を、上記と同じ測定条件で測定した値をMFR2とする。これらの測定値がMFR1>MFR2を満たした場合、すなわちポリ乳酸樹脂(A)>アイオノマー樹脂(B)であると判断できる。
A.評価方法
(1)ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量
ポリ乳酸樹脂(A)約0.3gを1N-水酸化カリウム/メタノール溶液6mlに加え、65℃にて充分撹拌し、ポリ乳酸樹脂を分解させた後、硫酸450μlを加えて、65℃にて撹拌し、乳酸メチルエステルとした。得られた乳酸メチルエステル5ml、純水3ml、および、塩化メチレン13mlを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5ml採取し、HPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)でろ過し、ガスクロマトグラフィーで測定した。
ガスクロマトグラフィー(Hewlett Packard社製、HP-6890)は、ヘリウム(He)をキャリアガスとして、流速1.8ml/分で、オーブンプログラムは90℃で3分間保持し、50℃/分で220℃まで昇温し、1分間保持する条件でおこなった。カラムは、J&W社製DB-17(30m×0.25mm×0.25μm)を用い、検出器はFID(温度300℃)、内部標準法で測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD-乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをD体含有量(モル%)とした。
東洋精機製作所社製メルトインデクサーF-B01を用いて、JIS K 7210に準拠して測定した。試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件で測定した。
得られた樹脂組成物のペレット(65℃×48時間の条件で乾燥して、水分率を0.01%としたもの)を用いて、射出成形機(日精樹脂社製、NEX-110型)を用い、シリンダー温度190~220℃、金型温度30~40℃の条件で、直径10mm、厚さ2mmの円板を作製した。
テーバー摩耗試験機(東洋精機製、Rotary Abrasion Testen)を用いて、JIS K7204に準拠して、円板の摩耗試験を実施した。用いた摩耗輪はH-22であり、回転数は1000回転、回転速度は70rpm、荷重1.0kgf、測定環境温度20℃、湿度65%RHとした。
摩耗試験前後の円板の質量を測定してその前後の質量差を摩耗質量とした。各樹脂組成物からなる円板における摩耗質量を、ポリ乳酸樹脂のみから構成される比較例1の円板の摩耗質量で除して、研磨性を評価した。
本発明においては、摩耗質量が、ポリ乳酸のみから構成される比較例1の円板の摩耗質量で除した値が1.5以上を合格とした。
得られた樹脂組成物のペレット(65℃×48時間の条件で乾燥して、水分率を0.01%としたもの)を用いて、射出成形機(日精樹脂社製、NEX-110型)を用い、シリンダー温度190~220℃、金型温度30~40℃の条件で、ISO準拠の一般物性測定用試験片(ダンベル片)を作製し、曲げスパン64mm、試験速度2mm/秒で曲げ弾性率を測定した。
本発明においては、3.0GPa以下を合格とした。
紡糸速度10m/分にて24時間、繊経1.75mmのモノフィラメントを採取した際の糸切れ回数により、以下の2段階で評価した。
〇:糸切れが発生しなかった。
×:糸切れが発生したか、またはフィラメントの引取りができなかった。
得られたモノフィラメントを、20cm毎に、モノフィラメントの長手方向に対して垂直に切断し、測定サンプルを30個得た。各サンプルにおいて、断面における最大長径と最小短径を、マイクロメーターを用いて測定し、その平均を各サンプルの直径とした。全30サンプルの直径を平均して、モノフィラメントの直径を算出した。
上記(6)において算出した、全サンプルの直径の最大値(M1)と最小値(M2)を用いて、モノフィラメントの直径の均一性を算出した。
直径の均一性=(M1-M2)/2
JIS P 8115に記載のMIT耐折度試験に準じて、マイズ試験機社製、MIT耐折度試験機を用い、荷重5N、クランプ先端R0.38mm、つかみ間隔2.0mm、試験速度175rpm、折り曲げ角度135度で実施し、モノフィラメントの耐折回数を計測した。測定には、標準状態(室温22±2℃、湿度50±2%)で48時間以上放置した試料を用いた。MIT耐折度試験は、それぞれのモノフィラメントについて3回測定し、平均値を求めた。耐折回数により、以下の4段階で評価した。
◎:100回以上
○:30回以上100回未満
△:5回以上30回未満
×:5回未満
本発明においては、耐折回数が5回以上を合格とした。耐折回数は、30回以上であることがより好ましく、100回以上であることがさらに好ましい。
得られたモノフィラメントと3Dプリンター(FLASHFORGE社製、CREATOR PRO)を用いて、ノズル温度190~240℃、テーブル温度50℃の条件でISOダンベル片の造形を10回繰り返しおこない、その間のノズルの汚れを観察した。ノズルに付着していた汚れが、造形したISOダンベル片にも付着していた場合は「×」とし、造形したISOダンベル片には付着していなかった場合、以下の2段階で評価した。
○:ノズルに汚れが付着していなかった。
△:ノズルに汚れが付着していた。
本発明においては、「△」以上を合格とした。
得られたモノフィラメントを用いて、3Dプリンター(FLASHFORGE社製、CREATOR PRO)を用いて、ノズル温度190~240℃、テーブル温度50℃の条件で、図1の「ルーク」を造形した。樹脂が均一に吐出されなかったたり、反りが大きすぎて造形台から剥がれて、造形することができなかった場合、「×」と評価した。造形することができた場合、図1の1(オーバーハング部分)の外観を、以下の2段階で評価した。
◎:オーバーハング部分の造形がダレることがなかった。
○:オーバーハング部分の造形がダレた。
本発明においては、「○」以上を合格とした。
得られたモノフィラメントを用いて、3Dプリンター(FLASHFORGE社製、CREATOR PRO)を用いて、ノズル温度190~240℃、テーブル温度50℃の条件で、図2の「アンカー」を造形した。反りが大きすぎて造形物が造形台から剥がれ造形することができなかった場合、「×」と評価した。造形することができた場合、造形したアンカーを平滑な水準台(大理石等)上に置き、図2の5の位置におもりを置き固定したのち、図2の2~4の3箇所の先端部分について台からの高さを隙間ゲージまたはノギスで測定し、平均値を求め、以下の3段階で評価した。
○:平均値が0mmを超え1mm未満であった。
△:平均値が1mm以上であった。
本発明においては、「△」以上を合格とした。
実施例、比較例に用いた原料は、以下の通りである。
〔ポリ乳酸樹脂(A)〕
・3001D(NatureWorks社製、D-乳酸含有量:1.4モル%、MFR:11g/10分)
・ハイミラン1706(三井デュポンポリケミカル社製アイオノマー、亜鉛イオン中和型エチレンメタクリル酸共重合樹脂、MFR:0.9g/10分)
・ハイミラン1855(三井デュポンポリケミカル社製、アイオノマー樹脂、亜鉛イオン中和エチレンメタクリル酸共重合樹脂、MFR:1.0g/10分)
・ハイミラン1702(三井デュポンポリケミカル社製、アイオノマー樹脂、亜鉛イオン中和エチレンメタクリル酸共重合樹脂、MFR:16g/10分)
・ニュクレルAN4213C(三井デュポンポリケミカル社製、エチレンメタクリル酸共重合樹脂、MFR:10g/10分)
〔低密度ポリエチレン〕
・ノバテックLD LJ401(日本ポリエチレン社製低密度ポリエチレン、MFR:1.5g/10分)
・タルク(竹原化学工業社製 ハイミクロンタルクHE5、平均粒子径:1.6μm)
二軸押出機(池貝社製、PCM-30)を用い、ポリ乳酸樹脂(3001D)99質量部と、汚れ防止剤(フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ダイキン工業社製『PPA DA-310ST』)1質量部とをブレンドして押出機に供給した。温度200℃、スクリュー回転数120rpm、吐出量7kg/hの条件で混練、押出した。引き続き、押出機先端から吐出されたストランドを、冷却バスで冷却後、ペレタイザーにて引き取り、カッティングして汚れ防止剤のマスターバッチペレット(M)を得た。
二軸押出機(池貝社製、PCM-30、スクリュー径29mm、L/D30、ダイス径3mm、孔数3)を用い、ポリ乳酸樹脂(A)として3001Dを95質量部と、アイオノマー樹脂(B)としてハイミラン1706を5質量部とをブレンドして、押出機に供給した。温度200℃、スクリュー回転数120rpm、吐出量7kg/hの条件で混練、押出した。引き続き、押出機先端から吐出されたストランドを、冷却バスで冷却後、ペレタイザーにて引き取り、カッティングして樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物のペレットを65℃×48時間の条件で乾燥して、水分率を0.01%とした。
この乾燥させた樹脂組成物ペレットを、モノフィラメント製造装置(単軸押出機(日本製鋼所社製、スクリュー径60mm、溶融押出しゾーン1200mm))を用い、紡糸温度220℃の条件で、得られるモノフィラメントの直径が1.75mmになるように吐出量を調整して、孔径5mmで1孔有する丸断面の紡糸口金から押出した。引き続き、押し出されたモノフィラメントを紡糸口金より20cm下の冷却温水50℃に浸漬し、引き取り速度30m/分で調整しながら引き取り、モノフィラメントを得た。冷却時間は約1分であった(未延伸)。
表1に記載された樹脂組成に変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、樹脂組成物のペレットを得た後、未延伸のモノフィラメントを得た。
実施例3で得られた樹脂組成物のペレット(65℃×48時間の条件で乾燥して、水分率を0.01%としたもの)を、モノフィラメント製造装置(単軸押出機(日本製鋼所社製、スクリュー径60mm、溶融押出しゾーン1200mm))を用い、紡糸温度200℃の条件で、得られる延伸後のモノフィラメントの直径が1.75mmになるように吐出量を調整して、孔径5mmで1孔有する丸断面の紡糸口金から押出した。引き続き、押し出されたモノフィラメントを紡糸口金より20cm下の冷却温水50℃に浸漬し、引き取り速度30m/分で調整しながら引き取り、延伸したモノフィラメントを得た(延伸倍率=3.0)。冷却時間は約1分であった。
表1に記載された樹脂組成に変更してブレンドした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物のペレットを得た。そして、得られた樹脂組成物のペレットを用いて、実施例4と同様の操作をおこなって、樹脂組成物のペレットを得た後、延伸したモノフィラメントを得た。
3001Dとハイミラン1706とをブレンドして供給することに代えて、3001Dを単独を供給することに変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、樹脂組成物のペレットを得た後、未延伸のモノフィラメントを得た。
表1に記載された樹脂組成に変更する以外は実施例1と同様の操作をおこなって、樹脂組成物のペレットを得た後、未延伸のモノフィラメントを得ようとしたが、ポリ乳酸樹脂に含有させるアイオノマー樹脂の含有量が過多であったため、製糸性に劣り、モノフィラメントを得ることができなかった。
表1に記載された樹脂組成に変更する以外は実施例1と同様の操作をおこなって、樹脂組成物のペレットを得た後、未延伸のモノフィラメントを得ようとしたが、ポリ乳酸樹脂に、ポリ乳酸樹脂のMFR値よりも高いMFR値を有するアイオノマー樹脂を含有させたため、製糸性に劣り、モノフィラメントを得ることができなかった。
表1に記載された樹脂組成に変更する以外は実施例1と同様の操作をおこなって、樹脂組成物のペレットを得た後、未延伸のモノフィラメントを得ようとしたが、ポリ乳酸樹脂に、アイオノマー樹脂ではなく、アイオノマー樹脂と同骨格の金属イオン置換されていないポリマーを含有させたため、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィン樹脂との相溶性が悪く、製糸性に劣り、モノフィラメントを得ることができなかった。
実施例6、9の造形物は、ポリ乳酸樹脂に、アイオノマー樹脂に加えてタルクを含有させた樹脂組成物を用いたため、実施例3の造形物と対比して、寸法安定性に優れていた。
実施例7、10の造形物は、ポリ乳酸樹脂に、アイオノマー樹脂に加えてタルクを含有させた樹脂組成物を用いたため、実施例4の造形物と対比して、寸法安定性に優れていた。
実施例13の造形物は、ポリ乳酸樹脂に、アイオノマー樹脂に加えてタルクを含有させた樹脂組成物を用いたため、実施例11の造形物と対比して、寸法安定性に優れていた。
実施例4、7、10のモノフィラメントは、3倍延伸したものであったため、実施例3、6、9のモノフィラメントと対比して、耐屈曲性が向上し、表面のざらつきが改善されていた。
実施例9、10のモノフィラメントは、汚れ防止剤を含有した樹脂組成物を用いたため、実施例6、7のモノフィラメントと対比して、3Dプリンターによる造形時において、ノズルの汚れの付着が少なかった。
比較例2の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂に含有させるアイオノマー樹脂の含有量が過少であったため、研磨性および柔軟性に劣っていた。
比較例6の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂に、アイオノマー樹脂を含有させずに低密度ポリエチレンを含有させたため、研磨性に劣っていた。
比較例7の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂に、アイオノマー樹脂を含有させずにタルクのみを含有させたため、柔軟性に劣っていた。
Claims (5)
- 熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用成形体であって、ポリ乳酸樹脂(A)とアイオノマー樹脂(B)とを含有し、(A)と(B)の質量比率[(A)/(B)]が95/5~60/40であって、(A)のメルトフローレート(MFR)値が(B)のMFR値よりも大きく、前記アイオノマー樹脂(B)が亜鉛イオン中和型エチレンメタクリル酸共重合樹脂である造形材料用樹脂組成物で構成され、直径が0.2~5.0mmである、フィラメント状成形体。
- 前記樹脂組成物は、曲げ弾性率が1.4~3.0GPaであり、摩耗試験時の摩耗質量が、ポリ乳酸樹脂(A)の摩耗質量に対して1.5~2.5倍であることを特徴とする請求項1に記載のフィラメント状成形体。
- 前記樹脂組成物は、さらに、充填剤(C)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフィラメント状成形体。
- 前記樹脂組成物は、さらに、汚れ防止剤を含有することを特徴とする請求項3に記載のフィラメント状成形体。
- 前記フィラメント状成形体は延伸したモノフィラメントである、請求項1~4のいずれかに記載のフィラメント状成形体。
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