最初に、本発明の測距カメラにおいて用いられている、被写体までの距離を算出するための原理について説明する。
光学系により形成される被写体像の倍率mODは、光学系の前側主点(前側主面)から被写体までの距離(被写体距離)a、光学系の後側主点(後側主面)から被写体像の結像位置までの距離bOD、および光学系の焦点距離fによって、レンズの公式から下記式(1)のように表すことができる。
また、被写体像のサイズYODは、被写体像の倍率mODと、被写体の実際のサイズszから、下記式(2)のように表すことができる。
センサー等の撮像素子の撮像面が被写体像の結像位置にある場合、すなわち、ベストピントである場合、被写体像のサイズYODは、上記式(2)で表すことができる。光学系がオートフォーカス機能を有しており、常にベストピントで撮像を行う場合には、上記式(2)を用いて被写体像のサイズYODを求めることができる。
しかしながら、光学系がオートフォーカス機能を有さない固定焦点系であり、センサー等の撮像素子の撮像面が被写体像の結像位置にない場合、すなわち、デフォーカスが存在する場合、撮像素子の撮像面上に形成される被写体像のサイズYFDを求めるためには、デフォーカス量、すなわち、被写体像の結像位置と撮像素子の撮像面の位置の奥行方向(光軸方向)の差(シフト量)を考慮する必要がある。
図1に示すように、光学系の射出瞳から、被写体が無限遠に存在する場合の被写体像の結像位置までの距離をEPとし、光学系の射出瞳から、被写体が任意の距離aに存在する場合の被写体像の結像位置までの距離をEPODとし、光学系の射出瞳から撮像素子の撮像面までの距離(フォーカス調整距離:Focus Distance)をEPFDとする。また、光学系の後側主点から、被写体が任意の距離aに存在する場合の被写体像の結像位置までの距離をbODとし、光学系の後側主点から撮像素子の撮像面までの距離をbFDとする。
光学系の後側主点から、任意の距離aに被写体が存在する場合の被写体像の結像位置までの距離bODは、レンズの公式から下記式(3)によって求めることができる。
したがって、焦点距離fと距離bODとの差ΔbODは、下記式(4)によって求めることができる。
また、光学系の後側主点から撮像素子の撮像面までの距離bFDは、撮像素子の撮像面で被写体像がベストピントとなる場合の光学系の前側主点から被写体までの距離aFDを用いて、レンズの公式から下記式(5)によって求めることができる。
よって、焦点距離fと距離bFDとの差ΔbFDは、下記式(6)によって求めることができる。
また、図1から明らかなように、光軸と光学系の射出瞳との交点を頂点の一つとし、任意の距離aに被写体が存在する場合の被写体像の結像位置における被写体像のサイズYODを1つの辺とする直角三角形と、光軸と光学系の射出瞳との交点を頂点の一つとし、撮像素子の撮像面における被写体像のサイズYFDを1つの辺とする直角三角形とは相似関係にある。そのため、相似関係から、EPOD:EPFD=YOD:YFDが成立し、下記式(7)から撮像素子の撮像面における被写体像のサイズYFDを求めることができる。
上記式(7)から明らかなように、撮像素子の撮像面における被写体像のサイズYFDは、被写体の実際のサイズsz、光学系の焦点距離f、光学系の射出瞳から、被写体が無限遠に存在する場合の被写体像の結像位置までの距離EP、光学系から被写体までの距離(被写体距離)a、および撮像素子の撮像面で被写体像がベストピントとなる場合の光学系から被写体までの距離aFDの関数として表すことができる。
次に、図2に示すように、同じ被写体100を、2つの撮像系IS1、IS2を用いて撮像した場合を想定する。第1の撮像系IS1は、被写体100からの光を集光し、第1の被写体像を形成する第1の光学系OS1と、第1の光学系OS1によって形成された第1の被写体像を撮像するための第1の撮像素子S1とを備えている。第2の撮像系IS2は、被写体100からの光を集光し、第2の被写体像を形成する第2の光学系OS2と、第2の光学系OS2によって形成された第2の被写体像を撮像するための第2の撮像素子S2とを備えている。また、図2から明らかなように、第1の撮像素子S1の第1の光学系OS1の光軸と、第2の撮像素子S2の第2の光学系OS2の光軸は一致していない。
第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、それぞれ焦点距離f1、f2を有する固定焦点の光学系である。第1の撮像系IS1が構成される際において、第1の光学系OS1の位置(レンズ位置)、すなわち、第1の光学系OS1と第1の撮像素子S1の離間距離は、任意の距離aFD1にある被写体100の第1の被写体像が第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される、すなわち、任意の距離aFD1にある被写体100がベストピントとなるように調整されている。同様に、第2の撮像系IS2が構成される際において、第2の光学系OS2の位置(レンズ位置)、すなわち、第2の光学系OS2と第2の撮像素子S2の離間距離は、任意の距離aFD2にある被写体100の第2の被写体像が第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される、すなわち、任意の距離aFD2にある被写体100がベストピントとなるように調整されている。
また、第1の光学系OS1の射出瞳から、被写体100が無限遠に存在する場合の第1の被写体像の結像位置までの距離はEP1であり、第2の光学系OS2の射出瞳から、被写体100が無限遠に存在する場合の第2の被写体像の結像位置までの距離はEP2である。
第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、第1の光学系OS1の前側主点(前側主面)と、第2の光学系OS2の前側主点(前側主面)との間に、奥行方向(光軸方向)の差Dが存在するよう構成および配置されている。すなわち、第1の光学系OS1の前側主点から被写体までの距離(被写体距離)をaとすると、第2の光学系OS2の前側主点から被写体までの距離は、a+Dとなる。
図1を参照して説明した相似関係を利用することにより、第1の光学系OS1によって第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される第1の被写体像の倍率m1は、下記式(8)で表すことができる。
ここで、EPOD1は、第1の光学系OS1の射出瞳から、距離aに被写体100が存在する場合の第1の被写体像の結像位置までの距離であり、EPFD1は、第1の光学系OS1の射出瞳から、第1の撮像素子S1の撮像面までの距離である。これら距離EPOD1および距離EPFD1の位置関係は、第1の撮像系IS1が構成される際において、任意の距離aFD1にある被写体100がベストピントとなるように第1の光学系OS1の位置(レンズ位置)を調整することにより決定される。また、ΔbOD1は、焦点距離f1と、第1の光学系OS1の後側主点から、距離aに被写体100が存在する場合の第1の被写体像の結像位置までの距離bOD1との差であり、ΔbFD1は、焦点距離f1と、第1の光学系OS1の後側主点から第1の撮像素子S1の撮像面までの距離bFD1との差であり、mOD1は、距離aに被写体100が存在する場合の第1の被写体像の結像位置における第1の被写体像の倍率である。
上記式(1)、(4)および(6)が第1の光学系OS1による結像にも適用できるので、上記式(8)は、下記式(9)で表すことができる。
ここで、aFD1は、第1の撮像素子S1の撮像面で第1の被写体像がベストピントとなる場合の第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離である。
同様に、第2の光学系OS2によって第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される第2の被写体像の倍率m2は、下記式(10)で表すことができる。
ここで、EPOD2は、第2の光学系OS2の射出瞳から、距離a+Dに被写体100が存在する場合の第2の被写体像の結像位置までの距離であり、EPFD2は、第2の光学系OS2の射出瞳から第2の撮像素子S2の撮像面までの距離である。これら距離EPOD2および距離EPFD2の位置関係は、第2の撮像系IS2が構成される際において、任意の距離aFD2にある被写体100がベストピントとなるように第2の光学系OS2の位置(レンズ位置)を調整することにより決定される。また、ΔbOD2は、焦点距離f2と、第2の光学系OS2の後側主点から、距離a+Dに被写体100が存在する場合の第2の被写体像の結像位置までの距離bOD2との差であり、ΔbFD2は、焦点距離f2と、第2の光学系OS2の後側主点から第2の撮像素子S2の撮像面までの距離bFD2との差であり、mOD2は、距離a+Dに被写体100が存在する場合の第2の被写体像の結像位置における第2の被写体像の倍率であり、aFD2は、第2の撮像素子S2の撮像面で第2の被写体像がベストピントとなる場合の第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離である。
したがって、第1の光学系OS1によって第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される第1の被写体像の倍率m1と、第2の光学系OS2によって第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される第2の被写体像の倍率m2との像倍比MRは、下記式(11)で表すことができる。
ここで、Kは、係数であり、第1の撮像系IS1および第2の撮像系IS2の構成により決定される固定値f1、f2、EP1、EP2、aFD1、およびaFD2から構成される下記式(12)で表される。
上記式(11)から明らかなように、第1の光学系OS1によって第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される第1の被写体像の倍率m1と、第2の光学系OS2によって第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される第2の被写体像の倍率m2との像倍比MRは、被写体100から第1の光学系OS1の前側主点までの距離aに応じて変化することがわかる。
また、上記式(11)を距離aについて解くと、被写体100までの距離aについての一般式(13)を得ることができる。
上記式(13)中において、f1、f2、EP1、EP2、DおよびKは、第1の撮像系IS1および第2の撮像系IS2の構成により決定される固定値なので、像倍比MRを得ることができれば、被写体100から第1の光学系OS1の前側主点までの距離aを算出することができる。
図3には、上記式(13)に基づいて算出された、第1の光学系OS1によって第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される第1の被写体像の倍率m1と、第2の光学系OS2によって第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される第2の被写体像の倍率m2との像倍比MRと、被写体100までの距離aとの関係の1例が示されている。図3から明らかなように、像倍比MRの値と、被写体100までの距離aとの間には、一対一関係が成立している。
一方、像倍比MRは、下記式(14)によって算出することができる。
ここで、szは、被写体100の実際のサイズ(高さまたは幅)、YFD1は、第1の光学系OS1によって第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される第1の被写体像のサイズ(像高または像幅)、YFD2は、第2の光学系OS2によって第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される第2の被写体像のサイズ(像高または像幅)である。
第1の被写体像のサイズYFD1および第2の被写体像のサイズYFD2は、第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2が第1の被写体像および第2の被写体像を撮像することにより取得される、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号から算出することができる。そのため、実際に被写体100を第1の撮像系IS1および第2の撮像系IS2を用いて撮像することにより得られた第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号から、第1の被写体像のサイズYFD1および第2の被写体像のサイズYFD2を実測し、それに基づいて、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MRを得ることができる。
本発明の測距カメラは、上述の原理により、実測される第1の被写体像のサイズYFD1および第2の被写体像のサイズYFD2に基づいて、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MRを算出することにより、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離aを算出する。
なお、上記式(11)から明らかなように、第1の光学系OS1の焦点距離f1が第1の光学系OS1の焦点距離f2と等しく(f1=f2)、第1の光学系OS1の射出瞳から、被写体100が無限遠にある場合の第1の被写体像の結像位置までの距離EP1が、第2の光学系OS2の射出瞳から、被写体100が無限遠にある場合の第2の被写体像の結像位置までの距離EP2と等しく(EP1=EP2)、かつ、第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間の奥行方向(光軸方向)の差Dが存在しない(D=0)場合、像倍比MRが距離aの関数として成立せず、像倍比MRは定数となる。この場合、被写体100までの距離aに応じた第1の被写体像の倍率m1の変化が、被写体100までの距離aに応じた第2の被写体像の倍率m2の変化と同一になってしまい、像倍比MRに基づいて第1の光学系OS1から被写体までの距離aを算出することが不可能となる。
また、特別な条件として、f1≠f2、EP1≠EP2、かつD=0の場合であっても、f1=EP1かつf2=EP2の場合、像倍比MRが距離aの関数として成立せず、像倍比MRは定数となる。このような特別な場合にも、像倍比MRに基づいて第1の光学系OS1から被写体までの距離aを算出することが不可能となる。
したがって、本発明の測距カメラでは、以下の3つの条件の少なくとも1つが満たされるよう、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成および配置され、これにより、被写体100までの距離aに応じた第1の被写体像の倍率m1の変化が、被写体100までの距離aに応じた第2の被写体像の倍率m2の変化と異なるようになっている。
(第1の条件)第1の光学系OS1の焦点距離f1と、第2の光学系OS2の焦点距離f2とが、互いに異なる(f1≠f2)
(第2の条件)第1の光学系OS1の射出瞳から、被写体100が無限遠にある場合の第1の被写体像の結像位置までの距離EP1と、第2の光学系OS2の射出瞳から、被写体100が無限遠にある場合の第2の被写体像の結像位置までの距離EP2とが、互いに異なる(EP1≠EP2)
(第3の条件)第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間に奥行方向(光軸方向)の差Dが存在する(D≠0)
加えて、上記第1~第3の条件の少なくとも1つを満たしていたとしても、上述したような特別な場合(f1≠f2、EP1≠EP2、D=0、f1=EP1かつf2=EP2)には、像倍比MRが距離aの関数として成立せず、像倍比MRに基づいて、第1の光学系OS1から被写体までの距離aを算出することが不可能となる。したがって、像倍比MRに基づいて第1の光学系OS1から被写体までの距離aを算出するために、本発明の測距カメラは、像倍比MRが距離aの関数として成立しているという第4の条件をさらに満たすよう構成されている。
そのため、本発明の測距カメラを用いて取得された第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号から実測される第1の被写体像のサイズYFD1および第2の被写体像のサイズYFD2から像倍比MRを算出することにより、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離aを算出することができる。
以下、上述の原理を利用して、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離aを算出する本発明の測距カメラを、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳述する。
<第1実施形態>
最初に、図4を参照して本発明の測距カメラの第1実施形態を説明する。図4は、本発明の第1実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
図4に示す測距カメラ1は、測距カメラ1の制御を行う制御部2と、被写体100からの光を集光し、第1の被写体像を形成するための第1の光学系OS1と、被写体100からの光を集光し、第2の被写体像を形成するための第2の光学系OS2と、第1の光学系OS1によって形成された第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成された第2の被写体像を撮像するための撮像部Sと、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MRと、被写体100までの距離aとを関連付ける関連付情報を記憶している関連付情報記憶部3と、撮像部Sによって撮像された第1の被写体像および第2の被写体像に基づいて、被写体100までの距離を算出するための距離算出部4と、撮像部Sが取得した第1の被写体像または第2の被写体像と、距離算出部4によって算出された被写体100までの距離aとに基づいて、被写体100の3次元画像を生成するための3次元画像生成部5と、液晶パネル等の任意の情報を表示するための表示部6と、使用者による操作を入力するための操作部7と、外部デバイスとの通信を実行するための通信部8と、測距カメラ1の各コンポーネント間のデータの授受を実行するためのデータバス9と、を備えている。
本実施形態の測距カメラ1は、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するために要求される上述の3つの条件の内、第1の光学系OS1の焦点距離f1と、第2の光学系OS2の焦点距離f2とが、互いに異なる(f1≠f2)という第1の条件が満たされるよう、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成されていることを特徴とする。一方、本実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、上述の3つの条件の内、その他の2つの条件(EP1≠EP2およびD≠0)を満たすように構成および配置されていない。さらに、本実施形態の測距カメラ1は、像倍比MRが距離aの関数として成立しているという第4の条件が満たされるよう構成されている。
そのため、像倍比MRを用いて被写体100までの距離aを算出するための上記一般式(13)は、EP1=EP2=EPおよびD=0の条件により単純化され、下記式(15)で表すことができる。
ここで、係数Kは、下記式(16)で表される。
本実施形態の測距カメラ1は、撮像部Sによって被写体100を撮像することにより第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MRを算出し、さらに、上記式(15)を用いて、被写体100までの距離aを算出する。
以下、測距カメラ1の各コンポーネントについて詳述する。制御部2は、データバス9を介して、各コンポーネントとの間の各種データや各種指示の授受を行い、測距カメラ1の制御を実行する。制御部2は、演算処理を実行するためのプロセッサーと、測距カメラ1の制御を行うために必要なデータ、プログラム、モジュール等を保存しているメモリーとを備えており、制御部2のプロセッサーは、メモリー内に保存されているデータ、プログラム、モジュール等を用いることにより、測距カメラ1の制御を実行する。また、制御部2のプロセッサーは、測距カメラ1の各コンポーネントを用いることにより、所望の機能を提供することができる。例えば、制御部2のプロセッサーは、距離算出部4を用いることにより、撮像部Sによって撮像された第1の被写体像および第2の被写体像に基づいて、被写体100までの距離aを算出するための処理を実行することができる。
制御部2のプロセッサーは、例えば、1つ以上のマイクロプロセッサー、マイクロコンピューター、マイクロコントローラー、デジタル信号プロセッサー(DSP)、中央演算処理装置(CPU)、メモリーコントールユニット(MCU)、画像処理用演算処理装置(GPU)、状態機械、論理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはこれらの組み合わせ等のコンピューター可読命令に基づいて信号操作等の演算処理を実行する演算ユニットである。特に、制御部2のプロセッサーは、制御部2のメモリー内に保存されているコンピューター可読命令(例えば、データ、プログラム、モジュール等)をフェッチし、信号操作および制御を実行するよう構成されている。
制御部2のメモリーは、揮発性記憶媒体(例えば、RAM、SRAM、DRAM)、不揮発性記憶媒体(例えば、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリー、ハードディスク、光ディスク、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク)、またはこれらの組み合わせを含む着脱式または非着脱式のコンピューター可読媒体である。
第1の光学系OS1は、被写体100からの光を集光し、撮像部Sの第1の撮像素子S1の撮像面上に第1の被写体像を形成する機能を有する。第2の光学系OS2は、被写体100からの光を集光し、撮像部Sの第2の撮像素子S2の撮像面上に第2の被写体像を形成するための機能を有する。第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、1つ以上のレンズと絞り等の光学素子から構成されている。また、図示のように、第1の光学系OS1の光軸と、第2の光学系OS2の光軸は一致してない。
上述のように、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、第1の光学系OS1の焦点距離f1と第2の光学系OS2の焦点距離f2とが、互いに異なるよう(f1≠f2)、構成されている。これにより、第1の光学系OS1によって形成される第1の被写体像の倍率m1の被写体100までの距離aに応じた変化が、第2の光学系OS2によって形成される第2の被写体像の倍率m2の被写体100までの距離に応じた変化と異なるようになっている。
なお、本実施形態における第1の光学系OS1の構成および第2の光学系OS2の構成および配置は、上述の第1の条件(f1≠f2)が満たされており、それにより、被写体100までの距離aに対する第1の被写体像の倍率m1の変化と、被写体100までの距離aに対する第2の被写体像の倍率m2の変化とが、互いに異なるようになっていれば、如何なる態様であってもよい。
撮像部Sは、第1の光学系OS1によって形成された第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成された第2の被写体像を撮像し、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号を取得する機能を有している。本実施形態では、撮像部Sは、第1の被写体像を撮像し、第1の被写体像の画像信号を取得するための第1の撮像素子S1と、第2の被写体像を撮像し、第2の被写体像の画像信号を取得するための第2の撮像素子S2と、を備えている。
なお、図示の形態では、第1の撮像素子S1および第1の光学系OS1が、同一の筐体内に設けられており、第2の撮像素子S2および第2の光学系OS2が、別の同一の筐体内に設けられているが、本発明はこれに限られない。第1の光学系OS1、第2の光学系OS2、第1の撮像素子S1、および第2の撮像素子S2がすべて同一の筐体内に設けられているような様態も、本発明の範囲内である。
第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2は、ベイヤー配列等の任意のパターンで配列されたRGB原色系カラーフィルターやCMY補色系カラーフィルターのようなカラーフィルターを有するCMOS画像センサーやCCD画像センサー等のカラー撮像素子であってもよいし、そのようなカラーフィルターを有さない白黒撮像素子であってもよい。
第1の光学系OS1によって、第1の撮像素子S1の撮像面上に第1の被写体像が形成され、第1の撮像素子S1によって第1の被写体像のカラーまたは白黒の画像信号が取得される。取得された第1の被写体像の画像信号は、データバス9を介して、制御部2や距離算出部4に送られる。同様に、第2の光学系OS2によって、第2の撮像素子S2の撮像面上に第2の被写体像が形成され、第2の撮像素子S2によって第2の被写体像のカラーまたは白黒の画像信号が取得される。取得された第2の被写体像の画像信号は、データバス9を介して、制御部2や距離算出部4に送られる。距離算出部4に送られた第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号は、被写体100までの距離aを算出するために用いられる。一方、制御部2に送られた第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号は、表示部6による画像表示や通信部8による画像信号の通信のために用いられる。
関連付情報記憶部3は、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MR(m2/m1)と、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離(被写体距離)aとを関連付ける関連付情報を記憶するための任意の不揮発性記録媒体(例えば、ハードディスク、フラッシュメモリー)である。関連付情報記憶部3に保存されている関連付情報は、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MR(m2/m1)から、被写体100までの距離aを算出するための情報である。
典型的には、関連付情報記憶部3に保存されている関連付情報は、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するための上記式(15)(または、一般式(13))、並びに、該式中の第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の構成および配置によって決定される上述の固定値(上記式(15)用であれば、固定値であるf1、f2、EP、およびK)である。代替的に、関連付情報記憶部3に保存されている関連付情報は、像倍比MRと被写体100までの距離aとを一意に対応づけたルックアップテーブルであってもよい。関連付情報記憶部3に保存されているこのような関連付情報を参照することにより、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出することが可能となる。
距離算出部4は、撮像部Sによって撮像された第1の被写体像および第2の被写体像に基づいて、被写体100までの距離aを算出する機能を有している。より具体的には、距離算出部4は、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MRに基づいて、被写体100までの距離aを算出する機能を有している。距離算出部4は、撮像部Sの第1の撮像素子S1から第1の被写体像の画像信号を受信し、さらに、撮像部Sの第2の撮像素子S2から第2の被写体像の画像信号を受信する。
その後、距離算出部4は、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号に対して、Cannyのようなフィルター処理を施し、第1の被写体像の画像信号内における第1の被写体像のエッジ部および第2の被写体像の画像信号内における第2の被写体像のエッジ部を抽出する。距離算出部4は、抽出した第1の被写体像のエッジ部に基づいて、第1の被写体像のサイズ(像幅または像高)YFD1を算出し、さらに、抽出した第2の被写体像のエッジ部に基づいて、第2の被写体像のサイズ(像幅または像高)YFD2を算出する。
距離算出部4が、抽出した第1の被写体像のエッジ部および第2の被写体像のエッジ部に基づいて、第1の被写体像のサイズYFD1および第2の被写体像のサイズYFD2を算出する方法は特に限定されないが、例えば、各画像信号中において、被写体像のエッジ部の最も上側にある部分と最も下側にある部分との離間距離を被写体像の像高としてもよいし、被写体像のエッジ部の最も左側にある部分と最も右側にある部分との離間距離を被写体像の像幅としてもよい。
その後、距離算出部4は、算出した第1の被写体像のサイズYFD1および第2の被写体像のサイズYFD2に基づき、上記式(14)MR=YFD2/YFD1によって、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MRを算出する。像倍比MRが算出されると、距離算出部4は、関連付情報記憶部3に保存されている関連付情報を参照し、像倍比MRに基づいて、被写体100までの距離aを算出(特定)する。
3次元画像生成部5は、距離算出部4によって算出された被写体100までの距離aおよび撮像部Sが取得した被写体100の2次元画像(第1の被写体像の画像信号または第2の被写体像の画像信号)に基づいて、被写体100の3次元画像を生成する機能を有している。ここで言う「被写体100の3次元画像」とは、通常の被写体100のカラーまたは白黒の2次元画像の各ピクセルに対して、算出された被写体100までの距離aが関連付けられているデータを意味する。
表示部6は、液晶表示部等のパネル型表示部であり、制御部2のプロセッサーからの信号に応じて、撮像部Sによって取得された被写体100の2次元画像(第1の被写体像の画像信号または第2の被写体像の画像信号)、距離算出部4によって算出された被写体100までの距離a、3次元画像生成部5によって生成された被写体100の3次元画像のような画像、測距カメラ1を操作するための情報等が文字または画像の形態で表示部6に表示される。
操作部7は、測距カメラ1の使用者が操作を実行するために用いられる。操作部7は、測距カメラ1の使用者が操作を実行することができれば特に限定されず、例えば、マウス、キーボード、テンキー、ボタン、ダイヤル、レバー、タッチパネル等を操作部7として用いることができる。操作部7は、測距カメラ1の使用者による操作に応じた信号を制御部2のプロセッサーに送信する。
通信部8は、測距カメラ1に対するデータの入力または測距カメラ1から外部デバイスへのデータの出力を行う機能を有している。通信部8は、インターネットのようなネットワークに接続可能に構成されていてもよい。この場合、測距カメラ1は、通信部8を用いることにより、外部に設けられたウェブサーバーやデータサーバーのような外部デバイスと通信を行うことができる。
このように、本実施形態の測距カメラ1では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が、第1の光学系OS1の焦点距離f1と第2の光学系OS2の焦点距離f2とが、互いに異なるよう(f1≠f2)、構成されており、これにより、被写体100までの距離aに対する第1の被写体像の倍率m1の変化と、被写体100までの距離aに対する第2の被写体像の倍率m2の変化とが、互いに異なるようになっている。そのため、本発明の測距カメラ1は、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MR(m2/m1)に基づいて、被写体100までの距離aを一意に算出することができる。
<第2実施形態>
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る測距カメラ1について詳述する。図5は、本発明の第2実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
以下、第2実施形態の測距カメラ1について、第1実施形態の測距カメラ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。第2実施形態の測距カメラ1は、撮像部Sが第1の撮像素子S1のみから構成されている点、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が同一の筐体内に設けられている点、該筐体内に第1のシャッター10a、第2のシャッター10b、ミラー11とプリズム12が設けられている点を除き、第1実施形態の測距カメラ1と同様である。
図5に示すように、本実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が同一筐体内に配置されている。また、第1の光学系OS1の前面側(被写体側)に、第1の光学系OS1への被写体100からの光の入射を遮断する第1のシャッター10aが配置され、第2の光学系OS2の前面側に、第2の光学系OS2への被写体100からの光の入射を遮断する第2のシャッター10bが配置されている。
第1のシャッター10aおよび第2のシャッター10bは、制御部2のプロセッサーによって制御され、制御部2のプロセッサーからの信号に応じて開閉する。第1のシャッター10aおよび第2のシャッター10bは、双方のいずれか一方のみが開かれるように制御され、同時に開かれることはない。
また、第2の光学系OS2によって集光される光の光路上には、ミラー11およびプリズム12が配置されている。第2のシャッター10bを通過し、第2の光学系OS2によって集光された光は、ミラー11およびプリズム12を通過し、第1の撮像素子S1の撮像面上に到達する。これにより、第2の被写体像が、第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される。図示のように、本実施形態では、第1の光学系OS1の光軸と、第2の光学系OS2の光軸は、プリズム12から第1の撮像素子S1までの区間において一致するが、それ以外の区間、例えば、被写体100から第1の光学系OS1または第2の光学系OS2までの区間では、一致しない。
第1のシャッター10aが開かれると、被写体100からの光が第1の光学系OS1へ入射し、第1の撮像素子S1の撮像面上に第1の被写体像が形成される。この際、第1の撮像素子S1は、第1の被写体像の画像信号を取得し、制御部2や距離算出部4に第1の被写体像の画像信号を送る。
一方、第2のシャッター10bが開かれると、被写体100からの光が第2の光学系OS2へ入射し、ミラー11やプリズム12を介して、第1の撮像素子S1の撮像面上に第2の被写体像が形成される。この際、第1の撮像素子S1は、第2の被写体像の画像信号を取得し、制御部2や距離算出部4に第2の被写体像の画像信号を送る。
このように、本実施形態においては、制御部2のプロセッサーによる制御によって、第1のシャッター10aおよび第2のシャッター10bのいずれか一方が開かれる。このような制御によって、測距カメラ1は、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号を分離して取得することができる。
本実施形態によっても、上述の第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。また、本実施形態では、撮像部Sを、第1の光学系OS1によって形成される第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成される第2の被写体像の双方を撮像する単一の撮像素子(第1の撮像素子S1)で構成することができる。そのため、測距カメラ1の小型化および低コスト化を実現することができる。
<第3実施形態>
次に、図6を参照して、本発明の第3実施形態に係る測距カメラ1について詳述する。図6は、本発明の第3実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
以下、第3実施形態の測距カメラ1について、第1実施形態の測距カメラ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態の測距カメラ1は、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の構成が変更されている点を除き、第1実施形態の測距カメラ1と同様である。
本実施形態の測距カメラ1は、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するために要求される上述の3つの条件の内、第1の光学系OS1の射出瞳から、被写体100が無限遠にある場合の第1の被写体像の結像位置までの距離EP1と、第2の光学系OS2の射出瞳から、被写体100が無限遠にある場合の第2の被写体像の結像位置までの距離EP2とが、互いに異なる(EP1≠EP2)という第2の条件が満たされるよう、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成されていることを特徴とする。一方、本実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、上述の3つの条件の内、その他の2つの条件(f1≠f2およびD≠0)を満たすように構成および配置されていない。さらに、本実施形態の測距カメラ1は、像倍比MRが距離aの関数として成立しているという第4の条件が満たされるよう構成されている。
そのため、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するための上記一般式(13)は、f1=f2=fおよびD=0の条件により単純化され、下記式(17)で表すことができる。
ここで、係数Kは、下記式(18)で表される。
このように、本実施形態の測距カメラ1では、第1の光学系OS1の射出瞳から、被写体100が無限遠にある場合の第1の被写体像の結像位置までの距離EP1と、第2の光学系OS2の射出瞳から、被写体100が無限遠にある場合の第2の被写体像の結像位置までの距離EP2とが、互いに異なるよう(EP1≠EP2)、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成されており、これにより、被写体100までの距離aに対する第1の被写体像の倍率m1の変化と、被写体100までの距離aに対する第2の被写体像の倍率m2の変化とが、互いに異なるようになっている。そのため、本実施形態の測距カメラ1は、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MR(m2/m1)に基づいて、被写体100までの距離aを一意に算出することができる。
本実施形態によっても、上述の第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。なお、本実施形態における第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の構成および配置は、上述の第2の条件(EP1≠EP2)が満たされており、それにより、被写体100までの距離aに対する第1の被写体像の倍率m1の変化と、被写体100までの距離aに対する第2の被写体像の倍率m2の変化とが、互いに異なるようになっていれば、如何なる態様であってもよい。
<第4実施形態>
次に、図7を参照して、本発明の第4実施形態に係る測距カメラ1について詳述する。図7は、本発明の第4実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
以下、第4実施形態の測距カメラ1について、第3実施形態の測距カメラ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態の測距カメラ1と第3実施形態の測距カメラ1との相違点は、上述した第2実施形態の測距カメラ1と第1実施形態の測距カメラ1との相違点と同様である。すなわち、第4実施形態の測距カメラ1では、撮像部Sが第1の撮像素子S1のみから構成されている点、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が同一の筐体内に設けられている点、該筐体内に第1のシャッター10a、第2のシャッター10b、ミラー11とプリズム12が設けられている点を除き、第3実施形態の測距カメラ1と同様である。
第2実施形態の測距カメラ1と同様に、本実施形態の測距カメラ1では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が同一筐体内に配置されている。また、第1の光学系OS1の前面側(被写体側)に、第1の光学系OS1への被写体100からの光の入射を遮断する第1のシャッター10aが配置され、第2の光学系OS2の前面側に、第2の光学系OS2への被写体100からの光の入射を遮断する第2のシャッター10bが配置されている。
第1のシャッター10aおよび第2のシャッター10bは、上述した第2実施形態と同様の動作を行うので、測距カメラ1は、単一の撮像素子(第1の撮像素子S1)のみを用いて、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号を分離して取得することができる。
本実施形態によっても、上述の第3実施形態と同様の効果を発揮することができる。また、上述した第2実施形態と同様に、本実施形態では、撮像部Sを、第1の光学系OS1によって形成される第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成される第2の被写体像の双方を撮像する単一の撮像素子(第1の撮像素子S1)で構成することができる。そのため、測距カメラ1の小型化および低コスト化を実現することができる。
<第5実施形態>
次に、図8を参照して、本発明の第5実施形態に係る測距カメラ1について詳述する。図8は、本発明の第5実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
以下、第5実施形態の測距カメラ1について、第1実施形態の測距カメラ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態の測距カメラ1は、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の構成および配置が変更されている点を除き、第1実施形態の測距カメラ1と同様である。
本実施形態の測距カメラ1は、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するために要求される上述の3つの条件の内、第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間に奥行方向(光軸方向)の差Dが存在する(D≠0)という第3の条件が満たされるよう、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成および配置されていることを特徴とする。一方、本実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、上述の3つの条件の内、その他の2つの条件(f1≠f2およびEP1≠EP2)を満たすように構成されていない。さらに、本実施形態の測距カメラ1は、像倍比MRが距離aの関数として成立しているという第4の条件が満たされるよう構成されている。
そのため、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するための上記一般式(13)は、f1=f2=fおよびEP1=EP2=EPの条件により単純化され、下記式(19)で表すことができる。
ここで、係数Kは、下記式(20)で表される。
このように、本実施形態の測距カメラ1では、第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間に奥行方向(光軸方向)の差Dが存在するよう(D≠0)、構成および配置されており、これにより、被写体100までの距離aに対する第1の被写体像の倍率m1の変化と、被写体100までの距離aに対する第2の被写体像の倍率m2の変化とが、互いに異なるようになっている。そのため、本実施形態の測距カメラ1は、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MR(m2/m1)に基づいて、被写体100までの距離aを一意に算出することができる。
本実施形態によっても、上述の第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。なお、本実施形態における第1の光学系OS1の構成および第2の光学系OS2の構成および配置は、上述の第3の条件(D≠0)が満たされており、それにより、被写体100までの距離aに対する第1の被写体像の倍率m1の変化と、被写体100までの距離aに対する第2の被写体像の倍率m2の変化とが、互いに異なるようになっていれば、如何なる態様であってもよい。
<第6実施形態>
次に、図9を参照して、本発明の第6実施形態に係る測距カメラ1について詳述する。図9は、本発明の第6実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
以下、第6実施形態の測距カメラ1について、第5実施形態の測距カメラ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態の測距カメラ1と第5実施形態の測距カメラ1との相違点は、上述した第2実施形態の測距カメラ1と第1実施形態の測距カメラ1との相違点、および、上述した第4実施形態の測距カメラ1と第3実施形態の測距カメラ1との相違点と同様である。すなわち、第6実施形態の測距カメラ1では、撮像部Sが第1の撮像素子S1のみから構成されている点、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が同一の筐体内に設けられている点、該筐体内に第1のシャッター10a、第2のシャッター10b、ミラー11とプリズム12が設けられている点を除き、第5実施形態の測距カメラ1と同様である。
なお、本実施形態では、図示のように、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、同一の筐体内において、奥行方向(光軸方向)に直交する方向の同一直線上に配置されている。一方、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、第1の光学系OS1から第1の光学系OS1の前側主点までの距離と、第2の光学系OS2から第2の光学系OS2の前側主点までの距離とが異なるように構成されており、そのため、第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間に奥行方向(光軸方向)の差Dが存在している(D≠0)。
第2実施形態および第4実施形態の測距カメラ1と同様に、本実施形態の測距カメラ1では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が同一筐体内に配置されている。また、第1の光学系OS1の前面側(被写体側)に、第1の光学系OS1への被写体100からの光の入射を遮断する第1のシャッター10aが配置され、第2の光学系OS2の前面側に、第2の光学系OS2への被写体100からの光の入射を遮断する第2のシャッター10bが配置されている。
第1のシャッター10aおよび第2のシャッター10bは、上述した第2実施形態および第4実施形態と同様の動作を行うので、測距カメラ1は、単一の撮像素子(第1の撮像素子S1)のみを用いて、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号を分離して取得することができる。
本実施形態によっても、上述の第5実施形態と同様の効果を発揮することができる。また、上述した第2実施形態と同様に、本実施形態では、撮像部Sを、第1の光学系OS1によって形成される第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成される第2の被写体像の双方を撮像する単一の撮像素子(第1の撮像素子S1)で構成することができる。そのため、測距カメラ1の小型化および低コスト化を実現することができる。
<第7実施形態>
次に、図10を参照して、本発明の第7実施形態に係る測距カメラ1について詳述する。図10は、本発明の第7実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
以下、第7実施形態の測距カメラ1について、第6実施形態の測距カメラ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。第7実施形態の測距カメラ1では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の構成および配置が変更されている点を除き、第1実施形態の測距カメラ1と同様である。
図10に示すように、本実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、同一の筐体内において、奥行方向の位置の差が存在するよう配置されている。そのため、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が、第1の光学系OS1から第1の光学系OS1の前側主点までの距離と、第2の光学系OS2から第2の光学系OS2の前側主点までの距離とが等しくなるよう構成されている場合であっても、第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間の奥行方向(光軸方向)の差Dを確保することができる(D≠0)。本実施形態によっても、上述の第6実施形態と同様の効果を発揮することができる。
ここまで各実施形態を参照して詳述したように、本発明の測距カメラ1は、複数の画像間の視差を用いず、かつ、被写体への一定パターンの照射を行わずに、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MR(m2/m1)に基づいて、被写体100までの距離aを一意に算出することができる。
そのため、本発明の測距カメラ1では、従来の複数の画像間の視差を用いたステレオカメラ方式の測距カメラと異なり、大きな視差を確保する必要がないため、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2を近接して配置しても、被写体100までの距離aを正確に算出することができる。これにより、従来のステレオカメラ方式の測距カメラと比較して、測距カメラ1の小型化を実現することができる。また、本発明の測距カメラ1では、被写体100までの距離を算出するために視差を用いていないため、被写体100が測距カメラ1から近い位置にある場合であっても、被写体100までの距離aを正確に測定することができる。また、本発明によれば、視差を考慮して測距カメラ1を設計する必要がなくなるため、測距カメラ1の設計の自由度を増大させることができる。
また、本発明の測距カメラ1では、パターン照射方式の測距カメラと異なり、一定パターンの光を被写体に照射するプロジェクター等の特殊な光源を用いる必要がない。そのため、測距カメラ1のシステム構成をシンプルにすることができる。これにより、従来のパターン照射方式の測距カメラと比較して、測距カメラ1の小型化、軽量化、低消費電力化、および低コスト化を実現することができる。
また、上述のように、本発明の測距カメラ1において、像倍比MRに基づいて、被写体100までの距離aを算出するために用いられる上記一般式(13)は、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2がオートフォーカス機能を有さない固定焦点系であり、第1の撮像素子S1の撮像面が第1の被写体像の結像位置になく、第2の撮像素子S2の撮像面が第2の被写体像の結像位置にない場合、すなわち、デフォーカスが存在する場合であっても、被写体100までの距離aを算出するために用いることができる。
したがって、本発明の測距カメラ1では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2のオートフォーカス機能を提供するためのレンズ駆動系を用いる必要がない。そのため、測距カメラ1の部品点数を削減することができ、測距カメラ1の小型化、軽量化、および低コスト化を達成することができる。また、電力を消費して第1の光学系OS1および第2の光学系OS2を駆動させる必要もないので、測距カメラ1の消費電力を削減することができる。また、フォーカス動作に要する処理時間も不要となるため、被写体100までの距離aを算出するために要する測定時間を短縮することもできる。
また、上記各実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の2つの光学系が用いられているが、用いられる光学系の数はこれに限られない。例えば、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2に加え、追加的な光学系をさらに備えるような態様もまた本発明の範囲内である。この場合、追加的な光学系は、追加的な光学系によって形成される被写体像の倍率の被写体100までの距離aに対する変化は、第1の被写体像の倍率m1の被写体までの距離aに対する変化および第2の被写体像の倍率m2の被写体までの距離aに対する変化と異なるように構成および配置されている。
なお、上述した各実施形態は、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するために要求される上述の3つの条件の内のいずれか1つを満たすよう第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成および配置されているが、上述の3つの条件の内の少なくとも1つが満たされるよう、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成および配置されていれば、本発明はこれに限られない。例えば、上述の3つの条件の内の全てまたは任意の組み合わせが満たされるよう、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成および配置されている態様も、本発明の範囲内である。
<測距方法>
次に図11を参照して、本発明の測距カメラ1によって実行される測距方法について説明する。図11は、本発明の測距カメラによって実行される測距方法を説明するためのフローチャートである。なお、以下に詳述する測距方法は、上述した本発明の第1~第7実施形態に係る測距カメラ1および測距カメラ1と同等の機能を有する任意の装置を用いて実行することができるが、説明のため、第1実施形態に係る測距カメラ1を用いて実行されるものとして説明する。
図11に示す測距方法S100は、測距カメラ1の使用者が操作部7を用いて、被写体100までの距離aを測定するための操作を実行することにより開始される。工程S110において、撮像部Sの第1の撮像素子S1によって、第1の光学系OS1によって形成された第1の被写体像が撮像され、第1の被写体像の画像信号が取得される。第1の被写体像の画像信号は、データバス9を介して、制御部2や距離算出部4に送られる。工程S120において、距離算出部4は、受信した第1の被写体像の画像信号から、第1の被写体像のサイズ(像高または像幅)YFD1を算出する。
一方、工程S130において、撮像部Sの第2の撮像素子S2によって、第2の光学系OS2によって形成された第2の被写体像が撮像され、第2の被写体像の画像信号が取得される。第2の被写体像の画像信号は、データバス9を介して、制御部2や距離算出部4に送られる。工程S140において、距離算出部4は、受信した第2の被写体像の画像信号から、第2の被写体像のサイズ(像高または像幅)YFD2を算出する。
なお、工程S110および工程S120における第1の被写体像の画像信号の取得と第1の被写体像のサイズYFD1の算出は、工程S130および工程S140における第2の被写体像の画像信号の取得と第2の被写体像のサイズYFD2の算出と同時に実行されてもよいし、別々に実行されてもよい。
第1の被写体像のサイズYFD1および第2の被写体像のサイズYFD2の双方が算出されると、処理は、工程S150に移行する。工程S150において、距離算出部4は、第1の被写体像のサイズYFD1および第2の被写体像のサイズYFD2から、上記式(14)MR=YFD2/YFD1に基づいて、第1の被写体像の倍率m1と第2の被写体像の倍率m2との像倍比MRを算出する。
次に、工程S160において、距離算出部4は、関連付情報記憶部3に保存されている関連付情報を参照し、算出した像倍比MRに基づいて、被写体100までの距離aを算出(特定)する。工程S160において被写体100までの距離aが算出されると、処理は、工程S170に移行する。
工程S170において、3次元画像生成部5が、距離算出部4によって算出された被写体100までの距離aおよび撮像部Sが取得した被写体100の2次元画像(第1の被写体像の画像信号または第2の被写体像の画像信号)に基づいて、被写体100の3次元画像を生成する。その後、ここまでの工程において取得された被写体の2次元画像、被写体100までの距離a、および/または被写体100の3次元画像が、表示部6に表示され、または通信部8によって外部デバイスに送信され、測距方法S100は終了する。
以上、本発明の測距カメラを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の各構成に任意の構成のものを付加することができる。
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明の測距カメラの構成の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有する測距カメラもまた、本発明の範囲内である。例えば、第1実施形態から第7実施形態の測距カメラを任意に組み合わせた態様も、本発明の範囲内である。
また、図4~10に示された測距カメラのコンポーネントの数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意のコンポーネントが追加若しくは組み合わされ、または任意のコンポーネントが削除された態様も、本発明の範囲内である。また、測距カメラの各コンポーネントは、ハードウェア的に実現されていてもよいし、ソフトウェア的に実現されていてもよいし、これらの組み合わせによって実現されていてもよい。
また、図11に示された測距方法S100の工程の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の工程が、任意の目的で追加若しくは組み合され、または、任意の工程が削除される態様も、本発明の範囲内である。
<利用例>
本発明の測距カメラ1の利用例は特に限定されないが、例えば、被写体のポートレートを撮像するとともに、被写体の顔の3次元画像を取得するために、測距カメラ1を用いることができる。このような利用形態では、本発明の測距カメラ1をスマートフォンや携帯電話等のモバイルデバイス内に組み込むことが好ましい。
また、本発明の測距カメラ1は、精密機器の組み立てや検査のために用いられるハンドラーロボットにおいて利用することができる。測距カメラ1によれば、精密機器を組み立てる際に、ハンドラーロボット本体またはハンドラーロボットのアームから、精密機器または精密機器の部品までの距離を測定することができることから、ハンドラーロボットの把持部によって正確に部品を把持することができる。
また、本発明の測距カメラ1によれば、被写体までの距離を測定することができることから、被写体の3次元情報を取得することができる。このような被写体の3次元情報は、3Dプリンターによる3次元構造体の作製に用いることができる。
また、自動車内において、本発明の測距カメラ1を利用することにより、自動車から歩行者や障害物等の任意の物体までの距離を測定することができる。算出された任意の物体までの距離に関する情報は、自動車の自動ブレーキシステムや自動運転に用いることができる。