JP7328531B2 - 血液透析装置の補液装置 - Google Patents
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すなわち上記血液透析装置の補液装置は、血液透析を行う透析器と、新鮮な透析液を上記透析器に供給する透析液供給通路および透析器を通過した使用済みの透析液を回収する透析液回収通路からなる透析液回路と、上記透析器へ血液を供給する動脈側通路および透析器から血液を排出する静脈側通路からなる血液回路と、上記透析液供給通路と血液回路とを連通する補液通路と、上記透析液供給通路と補液通路との接続部よりも下流側の透析液供給通路に設けられ、上記透析液供給通路の流量を調整する第1流量絞り手段と、上記第1流量絞り手段を制御する制御手段と、を備え、上記透析器に血液を流通させて血液を浄化処理するとともに、上記第1流量絞り手段により当該第1流量絞り手段よりも上流側の圧力を上昇させて上記補液通路を介して血液回路に透析液を補液するようになっている。
例えば、血圧の高い患者の場合には血圧の低い患者に比較して上記血液回路の圧力が高くなるが、血圧回路の圧力が高くなると該血圧回路の圧力と上記接続部の圧力との圧力差が小さくなる。そして両者の圧力差が小さくなると透析液供給通路から血液回路に流れる補液量が少なくなり、仮に両者の圧力が同じになれば全く補液が流れなくなる。また血液回路の圧力が高くなる他の例としては、透析効率を高めるために血液ポンプの給送量を大きく設定した場合などが挙げられる。
このように、患者毎に血圧や血液ポンプの給送量が異なるので患者毎に血液回路の圧力が異なるが、高血圧の患者を治療する際やその他の何らかの原因で血液回路の圧力が高くなった場合には、透析液供給通路から血液回路に流れる補液量が少なくなり過ぎる危険性があった。
本発明はそのような事情に鑑み、従来に比較してより確実に補液を行うことができる血液透析装置の補液装置を提供するものである。
上記透析器に血液を流通させて血液を浄化処理するとともに、上記第1流量絞り手段により当該第1流量絞り手段よりも上流側の圧力を上昇させて上記補液通路を介して血液回路に透析液を補液するようにした血液透析装置の補液装置において、
上記補液通路に当該補液通路の流量を調整する第2流量絞り手段を設けるとともに、上記制御手段に上記補液通路を流れる補液の流量の目標値を入力する補液流量設定手段を設け、
上記制御手段は、上記接続部の圧力が所定値以上となるように上記第1流量絞り手段を制御するとともに、上記補液の流量が目標値となるように上記第2流量絞り手段を制御することを特徴とするものである。
上記血液回路3は、患者の血管に接続されて上記透析器2に血液を供給する動脈側通路7と、透析器2から患者に血液を戻す静脈側通路8とから構成されている。
上記動脈側通路7には、その一端に患者の血管に穿刺される穿刺針7Aが設けられるとともに他端が透析器2の入口に接続され、上記穿刺針7Aから順に、動脈側通路7を開閉するクランプ9、圧力センサPA、および血液を送液する血液ポンプ10が設けられている。
上記静脈側通路8は、その一端が上記透析器2の出口に接続されるとともに他端に患者の血管に穿刺される穿刺針8Aが設けられており、上記透析器2の下流側にドリップチャンバD1が配置され、このドリップチャンバD1に圧力センサPVが設けられている。
上記第1透析液チャンバ11および第2透析液チャンバ12は同形であり、それぞれ可撓性のダイアフラムにより内部が2室に区画され、一方が新鮮透析液を収容するための供給室11A、12A、他方が使用済み透析液を回収するための回収室11B、12Bとなっている。
上記透析液供給通路14には、それぞれ透析液を清浄化するエンドトキシンカットフィルタからなる第1透析液フィルタF1と第2透析液フィルタF2とを設けてあり、第2透析液フィルタF2の下流側には透析液の濃度を検出する濃度センサなどを含む各種構成部品21を設けてある。
上記透析液回収通路15には、上流側から、開閉弁V19と、圧力センサPDと、濃度センサなどを含む各種構成部品24と、透析液中の気泡を除去する除気槽25と、使用済み透析液を第1透析液チャンバ11および第2透析液チャンバ12の各回収室11B、12Bに送る送液ポンプ26と、圧力センサPG3とを設けてある。
また上記送液ポンプ26の下流側には除水通路32が接続され、この除水通路32に設けた除水ポンプ33を介して所要量の使用済み透析液が排液通路16に排出されるようになっている。さらに上記除気槽25で除去された気体は、除気弁V9を備えた除気通路35により、排液通路16に排出されるようになっている。
しかしながら、上記補液通路5は、図1の点線で示すように、血液ポンプ10と透析器2の入口との間の動脈側通路7に接続してもよい。
また、上記流量絞り手段MV1、MV2としてはダイアフラム弁を用いたものが好ましい。ダイアフラム弁を用いた流量絞り手段においては、弁座に対してダイアフラム弁のリフト量を増減することで流路面積を増減するようにしているので接液する摺動部がなく、透析液に異物が混入する恐れがないからである。
この補液流量設定手段としては、いくつかの構成のものを採用することができる。
第1に、制御手段に設けたタッチスクリーン又は物理ボタンにより補液流量設定手段が構成されており、操作者が手動操作により上記タッチスクリーン又は物理ボタンを介して目標値を入力するものであってもよい。
第2に、上記補液流量設定手段はカード読込手段を備えており、該カード読込手段によりICカード(RFID)、SDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)等の各種外部記憶手段に予め記録されている目標値を読み込むものであってもよい。
第3に、上記補液流量設定手段は通信手段を備えており、該通信手段によりローカルネットワーク(LAN)等の通信手段を介して接続される中央監視装置(好ましくはPC)から送信される目標値を読み込むものであってもよく、さらに上記第1ないし第3の構成を合わせ持っているものであってもよい。
要するに、上記補液流量設定手段は、上記制御手段に補液通路5を流れる補液の流量の目標値を入力することができれば、如何なる構成のものであってもよい。
一例として4時間の補液時間と2.4(~72)Lの総補液量とが与えられた場合、補液流量設定手段は、それら数値に基づいて100(~300)ml/minの流量となるように補液流量を設定する。
またこの際、補液流量設定手段に対する指令に応じて、補液流量設定手段は補液時間を所定時間毎に、一例として20分毎に区切り、各区間における補液量をそれぞれに設定した補液プロファイルを作成することができる。例えば前半と後半は補液量を少なく、中盤は多めにするなどの補液プロファイルを作成することができる。
この場合には、補液流量設定手段は各区間の補液量の合計値が総補液量となるようにし、かつ各区間の補液量と上記区間毎の時間から各区間毎の補液流量を算出するようになる。そして制御手段は、各区間で設定される目標値に基づいて制御を行うようになる。
引き続き、上記給液弁V1、V2と排液弁V7、V8および供給弁V3、V4と回収弁V5、V6の開閉状態を切り換えることで、第2透析液チャンバ12の供給室12Aに新鮮透析液が供給されるとともに、使用済み透析液が回収室12Bから排液され、第1透析液チャンバ11の供給室11Aから透析器2に新鮮透析液が供給されるとともに、使用済み透析液が回収室11Bに回収される。これを交互に繰り返すことで、連続的に透析器2に新鮮透析液を供給するとともに、透析器2から使用済み透析液を回収するようになっている。
そして上記透析器2から回収室11B、12Bに使用済み透析液を回収する際に、除水ポンプ33により使用済み透析液の一部を透析液回収通路15から排液通路16に排出することにより、透析器2に流通させる新鮮透析液の供給量より使用済み透析液の回収量を多くして、血液中から余分な水分を除去することができる。
この際には、血液透析装置1を制御する図示しない制御手段により、第1流量絞り手段MV1と第2流量絞り手段MV2の開度が適正となるように調整され、所要量の補液が確実に血液回路3に供給されるようになっている。
以下、制御手段による第1流量絞り手段MV1と第2流量絞り手段MV2の制御に関する透析開始前の準備調整について説明する。
このとき、上記第1透析液チャンバ11と第2透析液チャンバ12の容積は同一で既知あり、一例としてそれぞれを100mlとする。
また、一方の透析液チャンバ11又は12からの透析液の送液時間は、圧力センサPG3を用いて検出することができる。すなわち、一方のチャンバからの送液が完了した時点は、チャンバ内のダイアフラムが図1示右側に行き着いた時点で発生する圧力波(ウォーターハンマー)を圧力センサPG3で検出することによって検出することができる。したがって、他方のチャンバの送液が完了した時点で各回収弁および排液弁V5~V8を切り替えて一方のチャンバの送液開始時点とし、この一方のチャンバの送液完了を圧力センサPG3で検出した時点までの時間を送液時間として検出することができる。
したがって、上記100mlと送液時間とから流量を算出することができ、ここでは流量を700ml/minとする。
このようにして流量を700ml/minに設定した場合、制御手段は流量が700ml/minとなるように、より詳細には、流量が700ml/minとなる送液時間が得られるように、送液ポンプ26をフィードバック制御する。
上記上流側圧力Pinを50kPaとしたのは、一般に透析治療中における血液回路3の圧力上限値が300mmHgに設定されていて、血液回路3に設けた圧力センサPAまたはPVによって圧力上限値が検出された際には、異常発生として制御手段により警報が発せられるように設定されているからである。つまり接続部22の上流側圧力Pinを50kPaに維持すれば、補液通路5を開いた際に確実に血液回路3の圧力よりも接続部22の圧力を高く維持することができ、それによって補液を確実に実行することができる。
図2において、Pinは第1流量絞り手段MV1の入口圧力(接続部22の圧力)、Poutは第1流量絞り手段MV1の出口圧力である。第1流量絞り手段MV1の下流側の圧力は圧力センサPDによって検出することができ、第1流量絞り手段MV1の出口圧力は、圧力センサPDの検出値に、開閉弁V19による圧力損失と、透析器2による圧力損失と、開閉弁V9bによる圧力損失と、流量計23による圧力損失とを足したものとなる。なお、より厳密には第1流量絞り手段MV1の出口から圧力センサPDまでの管路長やベンドに基づく圧力損失などがあるが、その損失は小さいのでここでは省略する。さらに高精度に圧力を算出したい場合には、これらの損失を加味するようにしても良い。
そして第1流量絞り手段MV1の入口圧力Pinは、第1流量絞り手段MV1の出口圧力Poutに、該第1流量絞り手段MV1の圧力損失を加えたものとなる。
上記第1流量絞り手段MV1の出口圧力Poutが算出できれば、該出口圧力Poutと上記必要となる入口圧力Pin(50kPa)との差から、該第1流量絞り手段MV1に要求される圧力損失の大きさを算出することができる。
この計算は、次のようにして求められる。
Q=U×A・・・(1)
ΔP=Pin-Pout=ζ×ρ×U2/2・・・(2)
ここで、Qは流量、Uは平均流速、Aは断面積、ΔPは圧力差、ζは圧力損失係数、ρは流体密度である。
補液前に透析器2側に流れる流量Qdは全流量Qt(700ml/min)と同じであり、また第1流量絞り手段MV1の下流側の断面積をAd(既知の値)とすると、式(1)より透析器2側に流れる平均流速Udを算出することができる。流体密度ρは既知であるので、これらを式(2)に代入すれば、要求される第1流量絞り手段MV1の圧力損失ΔPから、必要な第1流量絞り手段MV1の圧力損失係数ζmv1の大きさが算出される。
上記制御手段は、上記第1流量絞り手段MV1の圧力損失係数ζmv1の大きさが得られたら、該圧力損失係数ζmv1をパラメータとして第1流量絞り手段MV1の開度を制御し、それによって第1流量絞り手段MV1の入口圧力Pinを上述した所定の値50kPaに制御する。
すなわち第1流量絞り手段MV1の入口圧力Pinは、圧力センサPG3の検出値から、第2透析チャンバ12側について言えば、回収弁V6による圧力損失、第2透析チャンバ12内のダイアフラムによる圧力損失、供給弁V4による圧力損失、第1透析液フィルタF1による圧力損失、第2透析液フィルタF2による圧力損失、および各種構成部品21による圧力損失を差し引いた値となる。
上記各圧力損失は、上述したようにそれぞれ従来公知の計算方法によって算出することができるので、圧力センサPG3の検出値が分かれば、第1流量絞り手段MV1の入口圧力Pinを計算によって算出することができる。換言すれば、圧力センサPG3の検出値が、第1流量絞り手段MV1の入口圧力Pinが50kPaとなるような値であれば、第1流量絞り手段MV1の圧力損失係数ζmv1は最適な大きさにセットされていることになる。
この場合においても、第1流量絞り手段MV1および第2流量絞り手段MV2の入口圧力Pinは50kPaに制御されることになる。すなわち上記補液通路5が開かれてここに100ml/minの流量が流れると、透析液供給通路14側の流量Qdは600ml/minとなる。これにより式(1)、(2)から理解されるように、第1流量絞り手段MV1を含めて流量計23や開閉弁V9bなどのそれぞれの圧力損失が小さくなるので、第1流量絞り手段MV1の入口圧力Pinが50kPaよりも小さくなる。
すると制御手段は、流量絞り手段MV1の圧力損失係数ζmv1が最適な圧力損失係数となるように第1流量絞り手段MV1を制御して、第1流量絞り手段MV1の入口圧力Pinを50kPaに維持する。
この際、流量Qdが600ml/minの場合の圧力損失係数ζmv1の求め方は、上述の流量Qdが700ml/minの場合と同様である。
そして圧力損失係数ζmv2の大きさが算出されれば、制御手段は該圧力損失係数ζmv2をパラメータとして第2流量絞り手段MV2を制御し、それによって第2流量絞り手段MV2による流量が100ml/minとなるように制御する。この際、患者毎に圧力センサPVによって検出される圧力が異なっても、上記圧力損失係数ζmv2の大きさが最適となるように選定されるので、上記入口圧力Pinは50kPaとなるように制御される。
なお、補液通路5は、血液回路3の透析器2の上流側に接続される場合(前希釈)と、透析器2の下流側に接続される場合(後希釈)とがあり、医師によって適宜選択されるが、いずれの場合も共通の算出方法を用いることができる。
この際には、流量計23によって透析液供給通路14側の流量Qdが600ml/minであるか否かを確認する。全流量Qtが700ml/minであることは既知であるので、透析液供給通路14側の流量Qdが600ml/minであれば、補液通路5側の流量Qsが100ml/minであることが確認できる。
仮に補液通路5側の流量Qsが目標値ではないことが検出されたら、制御手段は検出値と目標値との差から第2流量絞り手段MV2を制御して、該第2流量絞り手段MV2による流量が目標値となるようにフィードバック制御する。この後、制御手段は適宜のタイミングで補液通路5側の流量Qsを監視し、該流量Qsが目標値となるように第2流量絞り手段MV2をフィードバック制御するようになる。
このように制御手段は第2流量絞り手段MV2を制御して、上記接続部22の圧力が50kPaとなるように制御するとともに、補液通路5側の流量Qsが100ml/minとなるように制御する。
また上記実施例において、圧力センサPG3は透析液チャンバ11、12内のダイアフラムの移動完了を検出するために設けており、本実施例ではこれを接続部22の圧力検出にも使用することで製造コストの低減を図っているが、接続部22の圧力検出用に専用の圧力センサを設けてもよい。
さらに補液通路5に流量計を追加してもよい。
3 血液回路 4 透析液回路
5 補液通路 7 動脈側通路
8 静脈側通路 14 透析液供給通路
15 透析液回収通路 22 接続部
23 流量計 MV1 第1流量絞り手段
MV2 第2流量絞り手段
Claims (3)
- 血液透析を行う透析器と、新鮮な透析液を上記透析器に供給する透析液供給通路および透析器を通過した使用済みの透析液を回収する透析液回収通路からなる透析液回路と、上記透析器へ血液を供給する動脈側通路および透析器から血液を排出する静脈側通路からなる血液回路と、上記透析液供給通路と血液回路とを連通する補液通路と、上記透析液供給通路と補液通路との接続部よりも下流側の透析液供給通路に設けられ、上記透析液供給通路の流量を調整する第1流量絞り手段と、上記第1流量絞り手段を制御する制御手段と、を備え、
上記透析器に血液を流通させて血液を浄化処理するとともに、上記第1流量絞り手段により当該第1流量絞り手段よりも上流側の圧力を上昇させて上記補液通路を介して血液回路に透析液を補液するようにした血液透析装置の補液装置において、
上記補液通路に当該補液通路の流量を調整する第2流量絞り手段を設けるとともに、上記制御手段に上記補液通路を流れる補液の流量の目標値を入力する補液流量設定手段を設け、
上記制御手段は、上記接続部の圧力が所定値以上となるように上記第1流量絞り手段を制御するとともに、上記補液の流量が目標値となるように上記第2流量絞り手段を制御することを特徴とする血液透析装置の補液装置。 - 上記接続部よりも下流側の透析液供給通路に、該透析液供給通路を流れる透析液量を計測する流量計を設けたことを特徴とする請求項1に記載の血液透析装置の補液装置。
- 上記制御手段は上記血液回路の圧力上限値が検出された際には異常発生として警報を発するように設定されており、上記所定値は圧力上限値よりも大きな値に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の血液透析装置の補液装置。
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