以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電池パックの構成を示す概略図である。電池パック1は、蓄電池2を備える。蓄電池2は、第1の組電池10及び第2の組電池20を備える。第1の組電池10は、複数の第1のセル11を備え、複数の第1のセル11は、電気的に直列に接続される。本実施形態では、第1の組電池10にM個の第1のセル11が設けられ、第1の組電池10における第1のセルの直列数はMとなる。第1のセル11のそれぞれは、チタン複合酸化物が負極活物質として用いられる非水電解質セルである。
第2の組電池20は、複数の第2のセル21を備え、複数の第2のセル21は、電気的に直列に接続される。本実施形態では、第2の組電池20にN個の第2のセル21が設けられ、第2の組電池20における第2のセルの直列数はNとなる。第2のセル21のそれぞれは、炭素質物が負極活物質として用いられる非水電解質セルである。また、電池パック1には、第1の組電池10及び第2の組電池20を冷却する冷却部5が、設けられる。
第1の組電池10の複数の第1のセル11のそれぞれにおいて負極活物質として用いられるチタン複合酸化物としては、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物、直方晶型チタン含有複合酸化物、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム、スピネル構造を有するチタン酸リチウム、単斜晶型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン及びホランダイト型チタン複合酸化物等が挙げられる。
また、複数の第1のセル11のそれぞれでは、正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。複数の第1のセル11のそれぞれにおいて正極活物質として用いられるリチウム遷移金属複合酸化物としては、層状構造を有するLiuMeO2(0<u≦1、かつ、Meは、Ni、Co及びMnからなる群より選択される1種以上)が挙げられ、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を用いることができる。また、複数の第1のセル11のそれぞれにおいて正極活物質として用いられるリチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウム鉄リン酸化物も挙げられる。複数の第1のセル11に用いられる負極活物質及び正極活物質としては、特許文献3(国際公開第2019/187132号公報)と同様の活物質を用いることができる。
第1の組電池10は、複数の第1のセル11が直列に接続されたセル群から構成される。第1の組電池10では、複数の第1のセル11は、容量、サイズ及び重量等が互いに対して同一及び略同一である。また、第1の組電池10では、複数の第1のセル11の間は、バスバー13を介して電気的に接続される。第1のセル11単体の電圧V1を規定すると、第1の組電池10の電圧は、V1×Mとなる。
第2の組電池20の複数の第2のセル21のそれぞれにおいて負極活物質として用いられる炭素質物としては、黒鉛及び非晶質炭素等が挙げられる。また、複数の第2のセル21のそれぞれでは、正極活物質として、第1のセル11の正極活物質と同様の活物質を用いることができる。
第2の組電池20は、複数の第2のセル21が直列に接続されたセル群から構成される。第2の組電池20では、複数の第2のセル21は、容量、サイズ及び重量等が互いに対して同一及び略同一である。また、第2の組電池20では、複数の第2のセル21の間は、バスバー23を介して電気的に接続される。第2のセル21単体の電圧V2を規定すると、第2の組電池20の電圧は、V2×Nとなる。
蓄電池2では、第2の組電池20は、第1の組電池10に対して電気的に並列に接続される。蓄電池2は、電池パック1の外部の外部電源又は外部負荷に電気的に接続される。蓄電池2が外部電源又は外部負荷に電気的に接続された状態では、第1の組電池10の正極側端子15及び第2の組電池20の正極側端子25のそれぞれが、外部電源又は外部負荷のプラス側端子7に接続される。そして、蓄電池2が外部電源又は外部負荷に電気的に接続された状態では、第1の組電池10の負極側端子16及び第2の組電池20の負極側端子26のそれぞれが、外部電源又は外部負荷のマイナス側端子8に接続される。
冷却部5としては、空冷ファン及び冷却ポンプ等を用いることができる。冷却部5は、流路6に冷却媒体を供給し、流路6に冷却媒体を流す。冷却媒体は、空気又は液体である。流路6を流れる冷却媒体によって、第1の組電池10及び第2の組電池20は、冷却される。流路6は、第2の組電池20に隣接し、第2の組電池20で発生した熱は、流路6を流れる冷却媒体へ排出される。また、第1の組電池10は、第2の組電池20に対して流路6とは反対側に配置される。第1の組電池10で発生した熱は、第2の組電池20を通して、流路6を流れる冷却媒体へ排出される。
次に、本実施形態の電池パック1(蓄電池2)の運転方法について説明する。なお、以下の運転方法の説明は、後述する実施例1に関連する図3及び図4を参照して、説明する。ここで、チタン複合酸化物が負極活物質として用いられる非水電解質セルである第1のセル11単体において、SOC(State of charge)がX%の状態(SOC=X%)での開回路電圧Va1(X)を規定する。また、炭素質物が負極活物質として用いられる非水電解質セルである第2のセル21単体において、SOCがX%の状態(SOC=X%)での開回路電圧Va2(X)を規定する。セル11,21のそれぞれでは、SOCが100%の状態(X=100の状態)が満充電状態であり、SOCが0%の状態(X=0の状態)が完全放電状態となる。また、セル11,21のそれぞれでは、SOCは、最大容量(完全放電状態から満充電状態までの満充電容量)に対する完全放電状態からの充電量(完全放電状態までの残容量)の比率となる。
第1のセル11と第2のセル21とでSOCが同一値になる場合は、第1のセル11の負極電位は、第2のセル21の負極電位に比べて高い。このため、セル11,21でSOCが同一値になる場合は、第1のセル11単体の開回路電圧は、第2のセル21単体の開回路電圧に比べて低い。すなわち、Va1(X)<Va2(X)の関係が成立する。実際に、第1のセル11としては、SOC=0%における開回路電圧Va1(0)が1.2V~3.2Vの範囲のセルが用いられる。また、第2のセル21としては、SOC=0%における開回路電圧Va2(0)が2.5V~4.3Vの範囲となるセルが用いられる。
SOC=X%では、第1の組電池10における第1のセル11の直列数Mを用いて、第1の組電池10の開回路電圧は、M×Va1(X)となる。そして、SOC=X%では、第2の組電池20における第2のセル21の直列数Nを用いて、第2の組電池20の開回路電圧は、N×Va2(X)となる。
本実施形態の電池パック1では、組電池10,20が並列に接続されるため、電池パック1の運転時には、組電池10,20の電圧は互いに対して同一又は略同一になる。また、電池パック1(蓄電池2)では、下限電圧値Vpminが設定される。そして、電池パック1(蓄電池2)の下限電圧値Vpminは、安全性及び耐久性を確保する観点から、第1の組電池10の下限電圧値及び第2の組電池20の下限電圧値の中の高い一方に設定される。また、電池パック1では、例えば、充電開始時及び充電開始直後等において、炭素質物を負極活物質として備える第2のセル21のそれぞれに大電流が流れることを抑制し、第2のセル21のそれぞれにおけるリチウムの析出等を防止する必要がある。このため、本実施形態では、下限電圧値Vpmin又は下限電圧値Vpminよりわずかに高い値を初期電圧値として蓄電池2を充電する場合、充電開始時及び充電開始直後等において第2のセル21の抵抗を第1のセル11の抵抗に比べて高くする条件で、電池パック1が運転される。これにより、充電開始時及び充電開始直後等において、第2のセル21のそれぞれに大電流が急速に入力されることが抑制される。
前述した条件で電池パック1を運転するため、本実施形態では、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれのSOCが0%以上30%以下の範囲において式(A1)を満たす状態に、第1の組電池10における第1のセル11の直列数M、及び、第2の組電池20における第2のセル21の直列数Nが設定される。このため、第1の組電池10と第2の組電池20とでSOCが0%以上30%以下の範囲のいずれかの値で同一値になる場合は、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より高くなる。また、組電池10,20で電圧が前述の電池パック1の下限電圧値Vpmin及び下限電圧値Vpminよりわずかに高い値のいずれかで同一値になる場合は、第2の組電池20のSOCは、第1の組電池10のSOCより低くなる。
M×Va1(X)<N×Va2(X) (0≦X≦30) (A1)
第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれでは、SOCがXmin%の状態での電圧が下限電圧値として規定される。ここで、Xminは、セル11,21のそれぞれの下限SOCを示し、0以上30以下のいずれかの値である。また、第1のセル11の下限電圧値Va1(Xmin)から第1の組電池10の下限電圧値M×Va1(Xmin)が規定され、第2のセル21の下限電圧値Va2(Xmin)から第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(Xmin)が規定される。
前述のように、電池パック1(蓄電池2)の下限電圧値Vpminは、第1の組電池10の下限電圧値M×Va1(Xmin)及び第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(Xmin)の中の高い一方に設定される。式(A1)より、第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(Xmin)は、第1の組電池10の下限電圧値M×Va1(Xmin)より高い。すなわち、第1の組電池10と第2の組電池20とでSOCが下限SOCであるXmin%で同一値になる場合は、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より高くなる。したがって、本実施形態では、第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(Xmin)が電池パック1の下限電圧値Vpminとして設定され、電池パック1(蓄電池2)は、電圧が第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(Xmin)以上になる状態で、運転される。
図2は、実施形態の第1のセル及び第2のセルのそれぞれについて、SOCに対する充電時のDC抵抗(DCR:direct current resistance)の関係を示す概略図である。図2では、横軸がセル単体のSOCを示し、縦軸がセル単体のDC抵抗を示す。そして、チタン酸リチウムが負極活物質として用いられた場合の第1のセル11のDC抵抗の変化を変化パターンα1で示し、ニオブチタン複合酸化物が負極活物質として用いられた場合の第1のセル11のDC抵抗の変化を変化パターンα2で示す。また、黒鉛が負極活物質として用いられ、かつ、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が正極活物質として用いられた場合の第2のセル21のDC抵抗の変化を変化パターンβ1で示し、黒鉛が負極活物質として用いられ、かつ、リチウム鉄リン酸化物が正極活物質として用いられた場合の第2のセル21のDC抵抗の変化を変化パターンβ2で示す。また、図2では、変化パターンα1,α2,β1,β2のそれぞれにおいて、DC抵抗は、複数の計測点の中で最もDC抵抗が高い計測点での値を1とする相対値で示される。なお、充電時のDC抵抗は、HPPC(hybrid pulse power characterization)試験により求めることができ、図2は25℃における測定結果である。
図2に示すように、セル単体におけるSOCに対するDC抵抗の関係は、負極活物質及び正極活物質の種類、及び、負極活物質及び正極活物質の容量等に対応して、ばらつく。ただし、多くの種類のセルでは、SOCが0%以上30%以下の範囲(図2の範囲γ1)において、すなわち、SOCが低い領域において、抵抗が高くなる傾向にある。すなわち、多くの種類のセルでは、SOCが0%以上30%以下の範囲で、SOCが30%~70%の範囲に比べて、抵抗が高くなる傾向にある。SOCが低い領域においてセルの抵抗が高くなる原因としては、SOCが低い領域では、正極でのリチウムの充填状態(充填率)が高くなるため、拡散抵抗が高くなること等が考えられる。
本実施形態において、例えば下限電圧値Vpminを初期電圧値として、電池パック1を充電する。この場合、充電開始時及び充電開始直後において、組電池10,20の電圧は、下限電圧値Vpmin及び下限電圧値Vpminよりわずかに高い値のいずれかで、互いに対して同一値又は略同一値になる。このため、充電開始時及び充電開始直後では、第2の組電池20のSOCは、第1の組電池10のSOCより低くなり、炭素質物を負極活物質として備える第2のセル21のSOCは、チタン複合酸化物を負極活物質として備える第1のセル11のSOCに比べて低くなる。そして、Xminが0以上30以下であるため、充電開始時及び充電開始直後では、第2の組電池20(第2のセル21)のSOCは、0%以上30%以下の範囲等、低い領域となる。
ここで、図2に示すセル単体におけるSOCに対する抵抗の関係等から、前述のように電池パック1が運転される場合、電池パック1の充電開始時及び充電開始直後では、第1のセル11の抵抗、すなわち、第1の組電池10の抵抗が低くなる。そして、電池パック1の充電開始時及び充電開始直後では、第2のセル21の抵抗が第1のセル11の抵抗より高くなり、第2の組電池20の抵抗が第1の組電池10の抵抗より高くなる。これにより、下限電圧値Vpmin等を初期電圧値として電池パック1を大電流で急速充電する場合等でも、充電開始時及び充電開始直後等において、第1の組電池10にのみ大電流が入力される。また、第2の組電池20への大電流の入力が抑制されるため、第2のセル21のそれぞれの負極におけるリチウムの析出等が、有効に防止される。したがって、大電流での充電における蓄電池2(電池パック1)の安全性が確保され、電池パック1の耐久性が確保される。
以下、本実施形態の一例である実施例1について説明する。図3は、実施例1における第1の組電池及び第2の組電池のそれぞれの構成及び電圧範囲を示す概略図である。図4は、実施例1の第1の組電池及び第2の組電池のそれぞれについて、SOCに対する電圧の関係を示す概略図である。図4では、横軸が組電池の各SOCを示し、縦軸が組電池の電圧を示す。また、図4では、第1の組電池10の電圧M×V1の変化を実線で、第2の組電池20の電圧N×V2の変化を破線で示す。
図3等に示すように、実施例1では、42個の第1のセル11を電気的に直列に接続することにより直列数42(M=42)の第1の組電池10を形成し、26個の第2のセル21を電気的に直列に接続することにより直列数26(N=26)の第2の組電池20を形成した。そして、第1の組電池10と第2の組電池20とを電気的に並列に接続することにより、蓄電池2(電池パック1)を形成した。また、第1のセル11としては、スピネル構造を有するチタン酸リチウムを負極活物質として含む容量(満充電容量)が20Ahの非水電解質セルを用いた。第2のセル21としては、黒鉛を負極活物質として含む容量(満充電容量)が20Ahの非水電解質セルを用いた。
また、実施例1では、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれにおいて、下限SOCを10%(Xmin=10)とした。そして、SOC=10%での第1のセル11の開回路電圧Va1(10)である2.10Vに、第1のセル11の下限電圧値を設定した。また、SOC=10%での第2のセル21の開回路電圧Va2(10)である3.47Vに、第2のセル21の下限電圧値を設定した。このため、42個の第1のセル11を直列に接続した第1の組電池10の下限電圧値は88.3Vに設定され、26個の第2のセル21を直列に接続した第2の組電池20の下限電圧値は90.3Vに設定された。したがって、実施例1では、組電池10,20でSOCが下限SOCであるXmin%で同一値になる場合において、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より高くなった。また、実施例1では、SOCが0%以上30%以下の範囲において、すなわち、SOCが低い領域において、前述の式(A1)の条件を満たした(図4の範囲γ2参照)。
実施例1では、第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(10)を電池パック1の下限電圧値Vpminとして、電池パック1を運転した。また、実施例1では、電池パック1に100Aの電流を入力し、下限電圧値Vpminから電池パック1を定電流充電した。すなわち、下限電圧値Vpminを初期電圧値として、充電を開始した。図5は、実施例1の電池パックの下限電圧値からの充電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれに流れる電流の経時的な変化を示す概略図である。図6は、実施例1の電池パックの下限電圧値からの充電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれのSOCの経時的な変化を示す概略図である。図5及び図6では、横軸が充電開始時を0とする時間を示す。そして、図5では、縦軸が電流を示し、図6では、縦軸がSOCを示す。なお、図5では、電池パック1を充電する電流は負の値で示される。また、図5及び図6では、第1のセル11に関するパラメータの変化を実線で、第2のセル21に関するパラメータの変化を破線で示す。
図5及び図6等に示すように、実施例1の電池パック1の充電では、充電開始時及び充電開始直後において、すなわち、充電開始から200秒程度経過する間は、第1のセル11に大電流が流れ、第2のセル21への大電流の入力が抑制された。また、実施例1の電池パック1の充電では、充電開始時及び充電開始直後を含め、第2のセル21のSOCが第1のセル11のSOCより低くなった。また、充電開始時からある程度の時間が経過すると、第1のセル11のSOCがある程度上昇したことに対応して、第2のセル21に流れる電流が増加した。
実施例1を含む本実施形態の電池パック1では、第1の組電池10と第2の組電池20とでSOCが下限SOCであるXmin%(Xminは0以上30以下のいずれかの値)で同一値になる場合において、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より高くなる。すなわち、SOCが0%以上30%以下の範囲において、前述の式(A1)の条件を満たす。このため、本実施形態では、下限電圧値Vpmin(本実施形態ではN×Va2(Xmin))又は下限電圧値Vpminよりわずかに高い値を初期電圧値として充電する場合、充電開始時及び充電開始直後において、第2の組電池20(第2のセル21)のSOCは0%以上30%以下の範囲等の低い領域となる。そして、充電開始時及び充電開始直後では、第1の組電池10(第1のセル11)のSOCが第2の組電池20のSOCより高い状態で充電が行われる。このため、充電開始時及び充電開始直後では、第2の組電池20の抵抗が、第1の組電池10の抵抗に比べて高くなる。
第2の組電池20の抵抗が第1の組電池10の抵抗より高いため、充電開始時及び充電開始直後において、第2のセル21のそれぞれに大電流が流れることを抑制される。これにより、第2の組電池20が低温環境に配置される場合等でも、第2のセル21のそれぞれにおけるリチウムの析出等が有効に防止される。したがって、大電流での充電における蓄電池2(電池パック1)の安全性が確保され、電池パック1の耐久性が確保される。また、充電開始時及び充電開始直後では、第1の組電池10の抵抗が低くなるため、第1のセル11のそれぞれには、大電流が流れる。したがって、安全性等を確保しつつ、大電流で電池パック1を充電可能になり、蓄電池2の入力特性が確保される。
また、本実施形態では組電池10,20及び流路6を図1のように配置することにより、第1の組電池10で発生した熱は、第2の組電池20に伝達される。これにより、電池パック1の充電が開始されると、第2の組電池20が迅速に昇温する。したがって、電池パック1の安全性を確保しつつ、充電開始後の早い段階で、第2のセル21に流す電流を増加させることが可能になる。
また、本実施形態では、炭素質物を負極活物質として備える第2のセル21から第2の組電池20が形成されるため、第2の組電池20のエネルギ密度が高い。そして、第2の組電池20が第1の組電池10と並列に接続されることで、蓄電池2が形成される。したがって、本実施形態の蓄電池2(電池パック1)では、大電流での充電における安全性、及び、高いエネルギ密度の両方が確保される。
ここで、本実施形態の比較例として比較例1について説明する。図7は、比較例1における第1の組電池及び第2の組電池のそれぞれの構成及び電圧範囲を示す概略図である。図8は、比較例1の第1の組電池及び第2の組電池のそれぞれについて、SOCに対する電圧の関係を示す概略図である。図8では、横軸が組電池のSOCを示し、縦軸が組電池の電圧を示す。また、図8では、第1の組電池10の電圧M×V1の変化を実線で、第2の組電池20の電圧N×V2の変化を破線で示す。
図7等に示すように、比較例1では、第1のセル11の直列数45(M=45)の第1の組電池10を形成した。なお、第2の組電池20では、実施例1と同様に、第2のセル21の直列数26(N=26)とした。そして、実施例1と同様に、第2のセル21の10,20を並列に接続することにより、蓄電池2(電池パック1)を形成した。第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれは、実施例1と同様の非水電解質セルを用いた。
また、比較例1でも、実施例1と同様に、セル11,21のそれぞれにおいて、下限SOCを10%(Xmin=10)とした。そして、SOC=10%での第1のセル11の開回路電圧Va1(10)である2.10Vに、第1のセル11の下限電圧値を設定し、SOC=10%での第2のセル21の開回路電圧Va2(10)である3.47Vに、第2のセル21の下限電圧値を設定した。ただし、比較例1では、第1の組電池10での第1のセル11の直列数45であるため、第1の組電池10の下限電圧値は92.5Vに設定された。第2の組電池20の下限電圧値は、実施例1と同様に、90.3Vに設定された。したがって、比較例1では、組電池10,20でSOCが下限SOCであるXmin%で同一値になる場合において、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より低くなった。また、比較例1では、SOCが0%以上30%以下の範囲において、すなわち、SOCが低い領域において、前述の式(A1)の条件を満たさなかった(図7の範囲γ3参照)。
比較例1では、第1の組電池10の下限電圧値N×Va1(10)を電池パック1の下限電圧値Vpminとして、電池パック1を運転した。そして、電池パック1に100Aの電流を入力し、電池パック1を定電流充電した。この際、電池パック1の開回路電圧が93.1Vの状態から、すなわち、初期電圧値である93.1Vから充電を行った。図9は、比較例1の電池パックの初期電圧値からの充電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれに流れる電流の経時的な変化を示す概略図である。図10は、比較例1の電池パックの初期電圧値からの充電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれのSOCの経時的な変化を示す概略図である。図9及び図10では、横軸が充電開始時を0とする時間を示す。そして、図9では、縦軸が電流を示し、図10では、縦軸がSOCを示す。なお、図9では、電池パック1を充電する電流は負の値で示される。また、図9及び図10では、第1のセル11に関するパラメータの変化を実線で、第2のセル21に関するパラメータの変化を破線で示す。
図9及び図10等に示すように、比較例1の電池パック1の充電では、充電開始時及び充電開始直後において、第2のセル21に大電流が流れた。また、比較例1の電池パック1の充電では、充電開始時及び充電開始直後を含め、第2のセル21のSOCが第1のセル11のSOCより高くなった。
第1の実施形態では、SOCが0%以上30%以下の範囲において前述の式(A1)の条件を満たす状態に、第1のセルの直列数及び第2のセルの直列数が設定される。直列数が前述のように設定されることにより、第1の組電池と第2の組電池とでSOCが下限SOCであるXmin%(Xminは0以上30以下のいずれかの値)で同一値になる場合において、第2の組電池の電圧は、第1の組電池の電圧より高くなる。これにより、充電開始時及び充電開始直後において第2のセルに大電流が流れることが抑制される。したがって、大電流での充電における安全性、及び、高いエネルギ密度の両方が確保される蓄電池を提供することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態等と同様の部分については、説明を省略する。
以下、本実施形態の電池パック1(蓄電池2)の運転方法について説明する。なお、以下の運転方法の説明は、後述する実施例2に関連する図7及び図8を参照して、説明する。本実施形態でも、第1のセル11単体において、SOC=X%での開回路電圧Va1(X)が規定される。そして、第2のセル21単体において、SOC=X%での開回路電圧Va2(X)が規定される。本実施形態でも、セル11,21でSOCが同一値になる場合は、第1のセル11単体の開回路電圧は、第2のセル21単体の開回路電圧に比べて低く、Va1(X)<Va2(X)の関係が成立する。また、SOC=X%では、第1の組電池10における第1のセル11の直列数Mを用いて、第1の組電池10の開回路電圧は、M×Va1(X)となる。そして、SOC=X%では、第2の組電池20における第2のセル21の直列数Nを用いて、第2の組電池20の開回路電圧は、N×Va2(X)となる。
本実施形態の電池パック1でも、組電池10,20が並列に接続されるため、電池パック1の運転時には、組電池10,20の電圧は互いに対して同一又は略同一になる。また、電池パック1(蓄電池2)では、上限電圧値Vpmaxが設定される。電池パック1(蓄電池2)の上限電圧値Vpmaxは、安全性及び耐久性を確保する観点から、第1の組電池10の上限電圧値及び第2の組電池20の上限電圧値の中の低い一方に設定される。また、電池パック1では、例えば、放電開始時及び放電開始直後等において、炭素質物を負極活物質として備える第2のセル21のそれぞれに大電流が流れることを抑制し、第2のセル21のそれぞれの過度の発熱、及び、第2のセル21の内部におけるSOC分布での局所的な偏りの拡大等を防止する必要がある。第2のセル21のような容量を増やすことを目的としたセルでは、電極の密度を高めたり、電極の厚みを増したりすることで、容量を増やす設計が一般的になされている。このような容量を増やす設計のセルでは、大電流での放電を抑えることで電極内部でのリチウムイオンの偏在を抑制すること、すなわち、SOC分布での局所的な偏りの発生を抑制することで劣化を抑制することが、求められている。このため、本実施形態では、上限電圧値Vpmax又は上限電圧値Vpmaxよりわずかに低い値を初期電圧値として蓄電池2から放電する場合、放電開始時及び放電開始直後等において、第2のセル21の抵抗を第1のセル11の抵抗に比べて高くする条件で、電池パック1が運転される。これにより、放電開始時及び放電開始直後等において、第2のセル21のそれぞれから大電流が急速に出力されることが抑制される。
前述した条件で電池パック1を運転するため、本実施形態では、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれのSOCが70%以上100%以下の範囲において式(A2)を満たす状態に、第1の組電池10における第1のセル11の直列数M、及び、第2の組電池20における第2のセル21の直列数Nが設定される。このため、第1の組電池10と第2の組電池20とでSOCが70%以上100%以下の範囲のいずれかの値で同一値になる場合は、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より低くなる。また、組電池10,20で電圧が前述の電池パック1の上限電圧値Vpmax及び上限電圧値Vpmaxよりわずかに低い値のいずれかで同一値になる場合は、第2の組電池20のSOCは、第1の組電池10のSOCより高くなる。
M×Va1(X)>N×Va2(X) (70≦X≦100) (A2)
第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれでは、SOCがXmax%の状態での電圧が上限電圧値として規定される。ここで、Xmaxは、セル11,21のそれぞれの上限SOCを示し、70以上100以下のいずれかの値である。また、第1のセル11の上限電圧値Va1(Xmax)から第1の組電池10の上限電圧値M×Va1(Xmax)が規定され、第2のセル21の上限電圧値Va2(Xmax)から第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(Xmax)が規定される。
前述のように、電池パック1(蓄電池2)の上限電圧値Vpmaxは、第1の組電池10の上限電圧値M×Va1(Xmax)及び第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(Xmax)の中の低い一方に設定される。式(A2)より、第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(Xmax)は、第1の組電池10の上限電圧値M×Va1(Xmax)より低い。すなわち、第1の組電池10と第2の組電池20とでSOCが上限SOCであるXmax%で同一値になる場合は、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より低くなる。したがって、本実施形態では、第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(Xmax)が電池パック1の上限電圧値Vpmaxとして設定され、電池パック1(蓄電池2)は、電圧が第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(Xmax)以下になる状態で、運転される。
図2に示すように、多くの種類のセルでは、SOCが70%以上100%以下の範囲(図2の範囲ε1)において、すなわち、SOCが高い領域において、抵抗が高くなる傾向にある。すなわち、多くの種類のセルでは、SOCが70%以上100%以下の範囲で、SOCが30%~70%の範囲に比べて、抵抗が高くなる傾向にある。特に、チタン複合酸化物を負極活物質として備える第1のセル11では(図2の変化パターンα1,α2参照)、SOCが高い領域において、抵抗が大きく上昇する。このため、大電流で急速に蓄電池2から放電する場合等は、SOCが70%未満の状態、すなわち、SOCが高い領域から外れる状態で、第1のセル11が使用されることが好ましい。
本実施形態において、例えば上限電圧値Vpmaxを初期電圧値として、電池パック1から放電する。この場合、放電開始時及び放電開始直後において、組電池10,20の電圧は、上限電圧値Vpmax及び上限電圧値Vpmaxよりわずかに低い値のいずれかで、互いに対して同一値又は略同一値になる。このため、放電開始時及び放電開始直後では、第2の組電池20のSOCは、第1の組電池10のSOCより高くなり、炭素質物を負極活物質として備える第2のセル21のSOCは、チタン複合酸化物を負極活物質として備える第1のセル11のSOCに比べて高くなる。そして、Xmaxが70以上100以下であるため、放電開始時及び放電開始直後では、第2の組電池20(第2のセル21)のSOCは、70%以上100%以下の範囲等、高い領域となる。また、放電開始時及び放電開始直後では、第1の組電池10(第1のセル11)のSOCは、70%未満になる等、高い領域から外れる。
ここで、図2に示すセル単体におけるSOCに対する抵抗の関係等から、前述のように電池パック1が運転される場合、電池パック1からの放電開始時及び放電開始直後では、第1のセル11の抵抗、すなわち、第1の組電池10の抵抗が低くなる。このため、放電開始時及び放電開始直後において、第1の組電池10に大電流が流れ、第1の組電池10から大電流が急速に出力される。また、電池パック1からの放電開始時及び放電開始直後では、第2のセル21の抵抗が第1のセル11の抵抗より高くなり、第2の組電池20の抵抗が第1の組電池10の抵抗より高くなる。これにより、上限電圧値Vpmax等を初期電圧値として大電流で電池パック1から急速放電する場合等でも、放電開始時及び放電開始直後等において、第2の組電池20へ大電流が流れることが抑制される。このため、第2のセル21のそれぞれの過度の発熱、及び、第2のセル21のそれぞれの内部におけるSOC分布での局所的な偏りの拡大等が、有効に防止される。したがって、大電流での放電における蓄電池2(電池パック1)の安全性が確保され、電池パック1の耐久性が確保される。
以下、本実施形態の一例である実施例2について説明する。実施例2では、前述の比較例1と同様にして第1の組電池10及び第2の組電池20を形成し、比較例1と同様にして電池パック1(蓄電池2)を形成した。このため、実施例2では、組電池10,20のそれぞれの電圧範囲、及び、組電池10,20のそれぞれについてのSOCに対する電圧の関係は、比較例1と同様になった(図7及び図8参照)。
ただし、実施例2では、電池パック1からの放電を行った。また、実施例2では、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれにおいて、上限SOCを90%(Xmax=90)とした。そして、SOC=90%での第1のセル11の開回路電圧Va1(90)である2.46Vに、第1のセル11の上限電圧値を設定した。また、SOC=90%での第2のセル21の開回路電圧Va2(90)である4.05Vに、第2のセル21の上限電圧値を設定した。このため、45個の第1のセル11を直列に接続した第1の組電池10の上限電圧値は108.3Vに設定され、26個の第2のセル21を直列に接続した第2の組電池20の上限電圧値は105.5Vに設定された。したがって、実施例2では、組電池10,20でSOCが上限SOCであるXmax%で同一値になる場合において、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より低くなった。このため、実施例2では、第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(90)を電池パック1の上限電圧値Vpmaxとした(図7参照)。また、実施例2では、SOCが70%以上100%以下の範囲において、すなわち、SOCが高い領域において、前述の式(A2)の条件を満たした(図8の範囲ε3参照)。
また、本実施形態の比較例である比較例2について説明する。比較例2では、前述の実施例1と同様にして第1の組電池10及び第2の組電池20を形成し、実施例1と同様にして電池パック1(蓄電池2)を形成した。このため、比較例2では、組電池10,20のそれぞれの電圧範囲、及び、組電池10,20のそれぞれについてのSOCに対する電圧の関係は、実施例1と同様になった(図3及び図4参照)。
ただし、比較例2では、実施例2と同様に、電池パック1からの放電を行った。また、比較例2では、組電池10,20でSOCが上限SOCであるXmax%で同一値になる場合において、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より高くなった。このため、比較例2では、第1の組電池10の上限電圧値N×Va1(Xmax)を電池パック1の上限電圧値Vpmaxとした(図3参照)。また、比較例2では、SOCが70%以上100%以下の範囲において、すなわち、SOCが高い領域において、前述の式(A2)の条件を満たさなかった(図4の範囲ε2参照)。また、比較例2では、組電池10,20で電圧が電池パック1の上限電圧値Vpmax及び上限電圧値Vpmaxよりわずかに低い値のいずれかで同一値になる場合は、第1の組電池10のSOCは、第2の組電池20のSOCより高くなった。
実施例2及び比較例2のそれぞれでは、電池パック1から100Aの電流を出力させ、電池パック1から定電流放電した。この際、実施例2及び比較例2のそれぞれにおいて、電池パック1の開回路電圧が103.4Vの状態から、すなわち、初期電圧値である103.4Vから放電を行った。したがって、実施例2では、電池パック1の上限電圧値Vpmaxよりわずかに低い初期電圧値から、放電が行われた。
図11は、実施例2の電池パックの初期電圧値からの放電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれに流れる電流の経時的な変化を示す概略図である。図12は、実施例2の電池パックの初期電圧値からの放電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれのSOCの経時的な変化を示す概略図である。図13は、比較例2の電池パックの初期電圧値からの放電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれに流れる電流の経時的な変化を示す概略図である。図14は、比較例2の電池パックの初期電圧値からの放電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれのSOCの経時的な変化を示す概略図である。図15は、実施例2及び比較例2のそれぞれの電池パックの初期電圧値からの放電における電池パックの出力電力の経時的な変化を示す概略図である。図11ないし図15では、横軸が放電開始時を0とする時間を示す。そして、図11及び図13では、縦軸が電流を示し、図12及び図14では、縦軸がSOCを示し、図15では、縦軸が電力を示す。なお、図11及び図13では、電池パック1が放電する電流は正の値で示される。また、図11ないし図14では、第1のセル11に関するパラメータの変化を実線で、第2のセル21に関するパラメータの変化を破線で示す。そして、図15では、実施例2における変化を実線で、比較例2における変化を破線で示す。
図11及び図12等に示すように、実施例2の電池パック1からの放電では、放電開始時及び放電開始直後において、すなわち、放電開始から600秒程度経過する間は、第1のセル11に大電流が流れ、第2のセル21へ大電流が流れることが抑制された。また、実施例2の電池パック1からの放電では、放電開始時及び放電開始直後を含め、第2のセル21のSOCが第1のセル11のSOCより高くなった。一方、図13及び図14等に示すように、比較例2の電池パック1からの放電では、放電開始時及び放電開始直後において、第2のセル21にもセル11と同程度又はわずかに大きな電流が流れた。また、比較例2の電池パック1からの放電では、放電開始時及び放電開始直後を含め、第2のセル21のSOCが第1のセル11のSOCより低くなった。
また、図15に示すように、実施例2の電池パック1からの放電では、電池パック1(蓄電池2)からの出力電力が、比較例2に比べて大きくなった。すなわち、実施例2の電池パック1からの放電では、放電開始時及び放電開始直後において第2のセル21へ大電流が流れることが抑制されるとともに、高い出力特性が実現された。高い出力特性が得られた原因として、実施例2では、第1の組電池10(第1のセル11)のSOCが70%未満になる等の第1の組電池10のSOCが高い、つまり抵抗の大きな領域から外れた状態で、放電が行われたことが考えられる。
実施例2を含む本実施形態の電池パック1では、第1の組電池10と第2の組電池20とでSOCが上限SOCであるXmax%(Xmaxは70以上100以下のいずれかの値)で同一値になる場合において、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より低くなる。すなわち、SOCが70%以上100%以下の範囲において、前述の式(A2)の条件を満たす。このため、本実施形態では、上限電圧値Vpmax(本実施形態ではN×Va2(Xmax))又は上限電圧値Vpmaxよりわずかに低い値を初期電圧値として放電する場合、放電開始時及び放電開始直後において、第2の組電池20(第2のセル21)のSOCは70%以上100%以下の範囲等の高い領域となる。そして、放電開始時及び放電開始直後では、第1の組電池10(第1のセル11)のSOCが第2の組電池20のSOCより低い状態で放電が行われる。このため、放電開始時及び放電開始直後では、第2の組電池20の抵抗が、第1の組電池10の抵抗に比べて高くなる。
第2の組電池20の抵抗が第1の組電池10の抵抗より高いため、放電開始時及び放電開始直後において、第2のセル21のそれぞれに大電流が流れることを抑制される。これにより、第2のセル21のそれぞれの過度の発熱、及び、第2のセル21のそれぞれの内部におけるSOC分布での局所的な偏りの拡大等が、有効に防止される。したがって、大電流での放電における蓄電池2(電池パック1)の安全性が確保され、電池パック1の耐久性が確保される。
また、本実施形態では、第1の組電池10(第1のセル11)のSOCが70%未満になる等の第1の組電池10のSOCが高い領域から外れた状態で、放電が行われる。このため、放電開始時及び放電開始直後において、第1の組電池10の抵抗が低くなる。これにより、第1のセル11のそれぞれに大電流が流れ、電池パック1からの出力が大きくなる。したがって、安全性等を確保しつつ、大電流で電池パック1から放電可能となり、蓄電池2の出力特性が確保される。
また、本実施形態では、炭素質物を負極活物質として備える第2のセル21から第2の組電池20が形成されるため、第2の組電池20のエネルギ密度が高い。そして、第2の組電池20が第1の組電池10と並列に接続されることで、蓄電池2が形成される。したがって、本実施形態の蓄電池2(電池パック1)では、大電流での放電における安全性、及び、高いエネルギ密度の両方が確保される。
第2の実施形態では、SOCが70%以上100%以下の範囲において前述の式(A2)の条件を満たす状態に、第1のセルの直列数及び第2のセルの直列数が設定される。直列数が前述のように設定されることにより、第1の組電池と第2の組電池とでSOCが上限SOCであるXmax%(Xmaxは70以上100以下のいずれかの値)で同一値になる場合において、第2の組電池の電圧は、第1の組電池の電圧より低くなる。これにより、放電開始時及び放電開始直後において第2のセルに大電流が流れることが抑制される。したがって、大電流での放電における安全性、及び、高いエネルギ密度の両方が確保される蓄電池を提供することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、前述の実施形態等と同様の部分については、説明を省略する。
以下、本実施形態の電池パック1(蓄電池2)の運転方法について説明する。なお、以下の運転方法の説明は、後述する実施例3に関連する図16及び図17を参照して、説明する。本実施形態でも、第1のセル11単体において、SOC=X%での開回路電圧Va1(X)が規定される。そして、第2のセル21単体において、SOC=X%での開回路電圧Va2(X)が規定される。本実施形態でも、セル11,21でSOCが同一値になる場合は、第1のセル11単体の開回路電圧は、第2のセル21単体の開回路電圧に比べて低く、Va1(X)<Va2(X)の関係が成立する。また、SOC=X%では、第1の組電池10における第1のセル11の直列数Mを用いて、第1の組電池10の開回路電圧は、M×Va1(X)となる。そして、SOC=X%では、第2の組電池20における第2のセル21の直列数Nを用いて、第2の組電池20の開回路電圧は、N×Va2(X)となる。
本実施形態の電池パック1でも、組電池10,20が並列に接続されるため、電池パック1の運転時には、組電池10,20の電圧は互いに対して同一又は略同一になる。また、電池パック1(蓄電池2)では、前述した下限電圧値Vpmin及び上限電圧値Vpmaxが設定される。電池パック1の下限電圧値Vpminは、前述のように、第1の組電池10の下限電圧値及び第2の組電池20の下限電圧値の中の高い一方に設定される。また、電池パック1の上限電圧値Vpmaxは、前述のように、第1の組電池10の上限電圧値及び第2の組電池20の上限電圧値の中の低い一方に設定される。
本実施形態では、下限電圧値Vpmin又は下限電圧値Vpminよりわずかに高い値を初期電圧値として蓄電池2を充電する場合、第1の実施形態と同様に、充電開始時及び充電開始直後等において第2のセル21の抵抗を第1のセル11の抵抗に比べて高くする条件で、電池パック1が運転される。これにより、充電開始時及び充電開始直後等において、第2のセル21のそれぞれに大電流が急速に入力されることが抑制される。また、本実施形態では、上限電圧値Vpmax又は上限電圧値Vpmaxよりわずかに低い値を初期電圧値として蓄電池2から放電する場合、第2の実施形態と同様に、放電開始時及び放電開始直後等において、第2のセル21の抵抗を第1のセル11の抵抗に比べて高くする条件で、電池パック1が運転される。これにより、放電開始時及び放電開始直後等において、第2のセル21のそれぞれから大電流が急速に出力されることが抑制される。
前述した条件で電池パック1を運転するため、本実施形態では、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれのSOCが0%以上30%以下の範囲において前述の式(A1)を満たし、かつ、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれのSOCが70%以上100%以下の範囲において前述の式(A2)を満たす状態に、第1の組電池10における第1のセル11の直列数M、及び、第2の組電池20における第2のセル21の直列数Nが設定される。このため、第1の組電池10と第2の組電池20とでSOCが0%以上30%以下の範囲のいずれかの値で同一値になる場合は、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より高くなる。そして、第1の組電池10と第2の組電池20とでSOCが70%以上100%以下の範囲のいずれかの値で同一値になる場合は、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より低くなる。また、組電池10,20で電圧が前述の電池パック1の下限電圧値Vpmin及び下限電圧値Vpminよりわずかに高い値のいずれかで同一値になる場合は、第2の組電池20のSOCは、第1の組電池10のSOCより低くなる。そして、組電池10,20で電圧が前述の電池パック1の上限電圧値Vpmax及び上限電圧値Vpmaxよりわずかに低い値のいずれかで同一値になる場合は、第2の組電池20のSOCは、第1の組電池10のSOCより高くなる。
本実施形態では、セル11,21のそれぞれについて、第1の実施形態と同様に下限SOC=Xmin%(Xminは0以上30以下のいずれかの値)が規定され、第2の実施形態と同様に上限SOC=Xmax%(Xmaxは70以上100以下のいずれかの値)が規定される。そして、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、第1のセル11の下限電圧値Va1(Xmin)及び第1の組電池10の下限電圧値M×Va1(Xmin)が規定され、第2のセル21の下限電圧値Va2(Xmin)及び第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(Xmin)が規定される。また、第2の実施形態と同様に、第1のセル11の上限電圧値Va1(Xmax)及び第1の組電池10の上限電圧値M×Va1(Xmax)が規定され、第2のセル21の上限電圧値Va2(Xmax)及び第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(Xmax)が規定される。
本実施形態では式(A1)を満たすため、第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(Xmin)は、第1の組電池10の下限電圧値M×Va1(Xmin)より高い。すなわち、第1の組電池10と第2の組電池20とでSOCが下限SOCであるXmin%で同一値になる場合は、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より高くなる。したがって、本実施形態では、第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(Xmin)が電池パック1の下限電圧値Vpminとして設定され、電池パック1(蓄電池2)は、電圧が第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(Xmin)以上になる状態で、運転される。
また、本実施形態では式(A2)を満たすため、第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(Xmax)は、第1の組電池10の上限電圧値M×Va1(Xmax)より低い。すなわち、第1の組電池10と第2の組電池20とでSOCが上限SOCであるXmax%で同一値になる場合は、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より低くなる。したがって、本実施形態では、第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(Xmax)が電池パック1の上限電圧値Vpmaxとして設定され、電池パック1(蓄電池2)は、電圧が第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(Xmax)以下になる状態で、運転される。
図2に示すように、多くの種類のセルでは、SOCが低い領域(図2の範囲γ1)及びSOCが高い領域(図2の範囲ε1)において、抵抗が高くなる傾向にある。すなわち、多くの種類のセルでは、SOCが0%以上30%以下の範囲及びSOCが70%以上100%以下の範囲で、SOCが30%~70%の範囲に比べて、高くなる傾向にある。このため、本実施形態では、第1のセル11のSOCの変化の範囲が第2のセル21のSOCの変化の範囲内に収まる条件で、電池パック1が運転される。すなわち、第1のセル11のSOCの変化の範囲の下限が、第2のセル21のSOCの変化の範囲の下限より高く、かつ、第1のセル11のSOCの変化の範囲の上限が、第2のセル21のSOCの変化の範囲の上限より低い条件で、電池パック1が運転される。
本実施形態において、例えば下限電圧値Vpminを初期電圧値として、電池パック1を充電する。この場合、第1の実施形態と同様に、充電開始時及び充電開始直後において、第2の組電池20(第2のセル21)のSOCは、第1の組電池10(第1のセル11)のSOCより低くなる。そして、Xminが0以上30以下であるため、充電開始時及び充電開始直後では、第2の組電池20(第2のセル21)のSOCは、0%以上30%以下の範囲等、低い領域となる。このため、第1の実施形態と同様に、電池パック1の充電開始時及び充電開始直後では、第1のセル11(第1の組電池10)の抵抗が低くなり、第2のセル21(第2の組電池20)の抵抗が第1のセル11(第1の組電池10)の抵抗より高くなる。これにより、下限電圧値Vpmin等を初期電圧値として電池パック1を大電流で急速充電する場合等でも、充電開始時及び充電開始直後等において、第1の組電池10にのみ大電流が入力され、第2の組電池20への大電流の入力が抑制される。前述のように第2の組電池20への大電流の入力が抑制されることにより、本実施形態でも第1の実施形態と同様に、大電流での充電における蓄電池2(電池パック1)の安全性が確保され、電池パック1の耐久性が確保される。
また、本実施形態において、例えば上限電圧値Vpmaxを初期電圧値として、電池パック1から放電する。この場合、第2の実施液体と同様に、放電開始時及び放電開始直後において、第2の組電池20(第2のセル21)のSOCは、第1の組電池10(第1のセル11)のSOCより高くなる。そして、Xmaxが70以上100以下であるため、放電開始時及び放電開始直後では、第2の組電池20(第2のセル21)のSOCは、70%以上100%以下の範囲等、高い領域となる。また、放電開始時及び放電開始直後では、第1の組電池10(第1のセル11)のSOCは、70%未満になる等、高い領域から外れる。このため、第2の実施形態と同様に、電池パック1からの放電開始時及び放電開始直後では、第1のセル11(第1の組電池10)の抵抗が低くなり、第1の組電池10から大電流が急速に出力される。また、電池パック1からの放電開始時及び放電開始直後では、第2の実施形態と同様に、第2のセル21(第2の組電池20)の抵抗が第1のセル11(第1の組電池10)の抵抗より高くなる。これにより、上限電圧値Vpmax等を初期電圧値として大電流で電池パック1から急速放電する場合等でも、放電開始時及び放電開始直後等において、第2の組電池20へ大電流が流れることが抑制される。前述のように第2の組電池20へ大電流が流れることが抑制されることにより、本実施形態でも第2の実施形態と同様に、大電流での放電における蓄電池2(電池パック1)の安全性が確保され、電池パック1の耐久性が確保される。
以下、本実施形態の一例である実施例3について説明する。図16は、実施例3における第1の組電池及び第2の組電池のそれぞれの構成及び電圧範囲を示す概略図である。図17は、実施例3の第1の組電池及び第2の組電池のそれぞれについて、SOCに対する電圧の関係を示す概略図である。図17では、横軸が組電池のSOCを示し、縦軸が組電池の電圧を示す。また、図17では、第1の組電池10の電圧M×V1の変化を実線で、第2の組電池20の電圧N×V2の変化を破線で示す。
図16等に示すように、実施例3では、45個の第1のセル11を電気的に直列に接続することにより直列数45(M=45)の第1の組電池10を形成し、26個の第2のセル21を電気的に直列に接続することにより直列数26(N=26)の第2の組電池20を形成した。そして、第1の組電池10と第2の組電池20とを電気的に並列に接続することにより、蓄電池2(電池パック1)を形成した。第1のセル11としては、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を負極活物質として含む容量(満充電容量)が20Ahの非水電解質セルを用いた。第2のセル21としては、実施例1等と同様に、黒鉛を負極活物質として含む容量(満充電容量)が20Ahの非水電解質セルを用いた。
また、実施例3では、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれにおいて、下限SOCを10%(Xmin=10)とした。そして、第1のセル11の下限電圧値をSOC=10%での第1のセル11の開回路電圧Va1(10)である1.88Vに、第2のセル21の下限電圧値をSOC=10%での第2のセル21の開回路電圧Va2(10)である3.47Vに設定した。このため、45個の第1のセル11を直列に接続した第1の組電池10の下限電圧値は84.3Vに、26個の第2のセル21を直列に接続した第2の組電池20の下限電圧値は90.3Vに設定された。したがって、実施例3では、組電池10,20でSOCが下限SOCであるXmin%で同一値になる場合において、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より高くなった。また、実施例3では、SOCが0%以上30%以下の範囲において、すなわち、SOCが低い領域において、前述の式(A1)の条件を満たした(図17の範囲γ4参照)。実施例3では、第2の組電池20の下限電圧値N×Va2(10)を電池パック1の下限電圧値Vpminとして、電池パック1を運転した。
また、実施例3では、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれにおいて、上限SOCを90%(Xmax=90)とした。そして、第1のセル11の上限電圧値をSOC=90%での第1のセル11の開回路電圧Va1(90)である2.68Vに、第2のセル21の上限電圧値をSOC=90%での第2のセル21の開回路電圧Va2(90)である4.05Vに設定した。このため、第1の組電池10の上限電圧値は120.6Vに、第2の組電池20の上限電圧値は105.5Vに設定された。したがって、実施例3では、組電池10,20でSOCが上限SOCであるXmax%で同一値になる場合において、第2の組電池20の電圧は、第1の組電池10の電圧より低くなった。また、実施例3では、SOCが70%以上100%以下の範囲において、すなわち、SOCが高い領域において、前述の式(A2)の条件を満たした(図17の範囲ε4参照)。実施例3では、第2の組電池20の上限電圧値N×Va2(90)を電池パック1の上限電圧値Vpmaxとして、電池パック1を運転した。
実施例3では、電池パック1に100Aの電流を入力し、下限電圧値Vpminから電池パック1を定電流充電した。すなわち、下限電圧値Vpminを初期電圧値として、充電を開始した。図18は、実施例3の電池パックの下限電圧値からの充電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれに流れる電流の経時的な変化を示す概略図である。図19は、実施例3の電池パックの下限電圧値からの充電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれのSOCの経時的な変化を示す概略図である。図18及び図19では、横軸が充電開始時を0とする時間を示す。そして、図18では、縦軸が電流を示し、図19では、縦軸がSOCを示す。なお、図18では、電池パック1を充電する電流は負の値で示される。また、図18及び図19では、第1のセル11に関するパラメータの変化を実線で、第2のセル21に関するパラメータの変化を破線で示す。
図18及び図19等に示すように、実施例3の電池パック1の充電では、充電開始時及び充電開始直後において、すなわち、充電開始から200秒程度経過する間は、第1のセル11に大電流が流れ、第2のセル21への大電流の入力が抑制された。したがって、実施例3での充電によって、本実施形態でも第1の実施形態と同様の作用及び効果を奏することが、実証された。
すなわち、実施例3を含む本実施形態の電池パック1でも、下限電圧値Vpmin(本実施形態ではN×Va2(Xmin))又は下限電圧値Vpminよりわずかに高い値を初期電圧値として充電する場合、充電開始時及び充電開始直後において、第2の組電池20(第2のセル21)のSOCは0%以上30%以下の範囲等の低い領域となる。そして、充電開始時及び充電開始直後では、第1の組電池10(第1のセル11)のSOCが第2の組電池20のSOCより高い状態で充電が行われる。このため、第1の実施形態と同様に、充電開始時及び充電開始直後において、第2のセル21のそれぞれに大電流が流れることが抑制される。したがって、大電流での充電における蓄電池2(電池パック1)の安全性が確保され、電池パック1の耐久性が確保される。また、充電開始時及び充電開始直後において第1のセル11のそれぞれに大電流が流れるため、安全性等を確保しつつ、大電流で電池パック1を充電可能となる。
また、実施例3では、電池パック1から100Aの電流を出力させ、電池パック1から定電流放電した。この際、実施例3において、電池パック1の開回路電圧が99.9Vの状態から、すなわち、初期電圧値である99.9Vから放電を行った。したがって、実施例3では、電池パック1の上限電圧値Vpmaxよりわずかに低い初期電圧値から、放電が行われた。図20は、実施例3の電池パックの初期電圧値からの放電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれに流れる電流の経時的な変化を示す概略図である。図21は、実施例3の電池パックの初期電圧値からの放電における第1のセル及び第2のセルのそれぞれのSOCの経時的な変化を示す概略図である。図20及び図21では、横軸が放電開始時を0とする時間を示す。そして、図20では、縦軸が電流を示し、図21では、縦軸がSOCを示す。なお、図20では、電池パック1から放電される電流は正の値で示される。また、図20及び図21では、第1のセル11に関するパラメータの変化を実線で、第2のセル21に関するパラメータの変化を破線で示す。
図20及び図21等に示すように、実施例3の電池パック1からの放電では、放電開始時及び放電開始直後において、第1のセル11に大電流が流れ、第2のセル21へ大電流が流れることが抑制された。したがって、実施例3での放電によって、本実施形態でも第2の実施形態と同様の作用及び効果を奏することが、実証された。
すなわち、実施例3を含む本実施形態の電池パック1でも、上限電圧値Vpmax(本実施形態ではN×Va2(Xmax))又は上限電圧値Vpmaxよりわずかに低い値を初期電圧値として放電する場合、放電開始時及び放電開始直後において、第2の組電池20(第2のセル21)のSOCは70%以上100%以下の範囲等の高い領域となる。そして、放電開始時及び放電開始直後では、第1の組電池10(第1のセル11)のSOCが第2の組電池20のSOCより低い状態で放電が行われる。このため、第2の実施形態と同様に、放電開始時及び放電開始直後において、第2のセル21のそれぞれに大電流が流れることを抑制される。したがって、大電流での放電における蓄電池2(電池パック1)の安全性が確保され、電池パック1の耐久性が確保される。また、放電開始時及び放電開始直後において第1のセル11のそれぞれに大電流が流れるため、安全性等を確保しつつ、大電流で電池パック1から放電可能となる。
また、本実施形態では、炭素質物を負極活物質として備える第2のセル21から第2の組電池20が形成されるため、第2の組電池20のエネルギ密度が高い。そして、第2の組電池20が第1の組電池10と並列に接続されることで、蓄電池2が形成される。したがって、本実施形態の蓄電池2(電池パック1)では、大電流での充電及び放電のそれぞれにおける安全性、及び、高いエネルギ密度の両方が確保される。
第3の実施形態では、SOCが0%以上30%以下の範囲において前述の式(A1)の条件を満たし、かつ、SOCが70%以上100%以下の範囲において前述の式(A2)の条件を満たす状態に、第1のセルの直列数及び第2のセルの直列数が設定される。直列数が前述のように設定されることにより、第1の組電池と第2の組電池とでSOCが下限SOCであるXmin%(Xminは0以上30以下のいずれかの値)で同一値になる場合において、第2の組電池の電圧は、第1の組電池の電圧より高くなる。これにより、充電開始時及び充電開始直後において第2のセルに大電流が流れることが抑制される。また、直列数が前述のように設定されることにより、第1の組電池と第2の組電池とでSOCが上限SOCであるXmax%(Xmaxは70以上100以下のいずれかの値)で同一値になる場合において、第2の組電池の電圧は、第1の組電池の電圧より低くなる。これにより、放電開始時及び放電開始直後において第2のセルに大電流が流れることが抑制される。したがって、大電流での充電及び放電のそれぞれにおける安全性、及び、高いエネルギ密度の両方が確保される蓄電池を提供することができる。
前述の少なくとも一つの実施形態又は実施例の蓄電池では、セルのSOCが0%以上30%以下の範囲でM×Va1(X)<N×Va2(X)となるか、及び、セルのSOCが70%以上100%以下の範囲でM×Va1(X)<N×Va2(X)となるかの少なくとも一方である。これにより、大電流での充電又は放電における安全性、及び、高いエネルギ密度の両方が確保される蓄電池を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された事項を付記する。
[1]直列に接続される複数の第1のセルを備え、前記複数の第1のセルのそれぞれはチタン複合酸化物を負極活物質として備える第1の組電池と、
直列に接続される複数の第2のセルを備え、前記複数の第2のセルのそれぞれは炭素質物を負極活物質として備える第2の組電池であって、前記第1の組電池に並列に接続される第2の組電池と、
を具備し、
前記第1の組電池及び前記第2の組電池は、下記式(1)を満たす、蓄電池。
M×Va1(X)<N×Va2(X)
(0≦X≦30) (1)
ここで、Va1(X)は、前記複数の第1のセルのそれぞれのSOC=X%における開回路電圧を表す。Va2(X)は、前記複数の第2のセルのそれぞれのSOC=X%における開回路電圧を表す。Mは、前記第1の組電池における前記複数の第1のセルの直列数を表す。Nは、前記第2の組電池における前記複数の第2のセルの直列数を表す。
[2]前記複数の第1のセルのそれぞれは、スピネル構造を有するチタン酸リチウムを前記負極活物質として備え、
前記複数の第2のセルのそれぞれは、黒鉛を前記負極活物質として備え、
前記第1の組電池及び前記第2の組電池は、下記式(2)を満たす、
[1]の蓄電池。
M×2.10<N×3.47 (2)
[3]直列に接続される複数の第1のセルを備え、前記複数の第1のセルのそれぞれはチタン複合酸化物を負極活物質として備える第1の組電池と、
直列に接続される複数の第2のセルを備え、前記複数の第2のセルのそれぞれは炭素質物を負極活物質として備える第2の組電池であって、前記第1の組電池に並列に接続される第2の組電池と、
を具備し、
前記第1の組電池及び前記第2の組電池は、下記式(3)を満たす、蓄電池。
M×Va1(X)>N×Va2(X)
(70≦X≦100) (3)
ここで、Va1(X)は、前記複数の第1のセルのそれぞれのSOC=X%における開回路電圧を表す。Va2(X)は、前記複数の第2のセルのそれぞれのSOC=X%における開回路電圧を表す。Mは、前記第1の組電池における前記複数の第1のセルの直列数を表す。Nは、前記第2の組電池における前記複数の第2のセルの直列数を表す。
[4]前記複数の第1のセルのそれぞれは、スピネル構造を有するチタン酸リチウムを前記負極活物質として備え、
前記複数の第2のセルのそれぞれは、黒鉛を前記負極活物質として備え、
前記第1の組電池及び前記第2の組電池は、下記式(4)を満たす、
[3]の蓄電池。
M×2.46>N×4.05 (4)
[5]直列に接続される複数の第1のセルを備え、前記複数の第1のセルのそれぞれはチタン複合酸化物を負極活物質として備える第1の組電池と、
直列に接続される複数の第2のセルを備え、前記複数の第2のセルのそれぞれは炭素質物を負極活物質として備える第2の組電池であって、前記第1の組電池に並列に接続される第2の組電池と、
を具備し、
前記第1の組電池及び前記第2の組電池は、下記式(5)及び(6)を満たす、蓄電池。
M×Va1(X)<N×Va2(X)
(0≦X≦30) (5)
M×Va1(X)>N×Va2(X)
(70≦X≦100) (6)
ここで、Va1(X)は、前記複数の第1のセルのそれぞれのSOC=X%における開回路電圧を表す。Va2(X)は、前記複数の第2のセルのそれぞれのSOC=X%における開回路電圧を表す。Mは、前記第1の組電池における前記複数の第1のセルの直列数を表す。Nは、前記第2の組電池における前記複数の第2のセルの直列数を表す。
[6]前記複数の第1のセルのそれぞれは、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を前記負極活物質として備え、
前記複数の第2のセルのそれぞれは、黒鉛を前記負極活物質として備え、
前記第1の組電池及び前記第2の組電池は、下記式(7)及び(8)を満たす、
[5]の蓄電池。
M×1.88<N×3.47 (7)
M×2.68>N×4.05 (8)