以下に、本発明に係る電気接続箱の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施形態1]
本発明に係る電気接続箱の実施形態の1つを図1から図10に基づいて説明する。
図1から図8の符号1は、本実施形態の電気接続箱を示す。その電気接続箱1は、雌螺子部材10と、この雌螺子部材10が収容され且つ固定される絶縁性の収容部材20と、を備える(図1及び図3から図8)。この電気接続箱1は、その収容部材20に雌螺子部材10を固定させる雌螺子固定構造30を備える(図1及び図3から図8)。この電気接続箱1においては、その雌螺子部材10に雄螺子部材40を螺合させることによって、収容部材20に収容された導電性の締結対象物50を締結させる(図1から図6)。雌螺子固定構造30は、雌螺子部材10を固定する固定体31と、その固定体31を変位させる弾性変形体32と、を備える(図3、図5及び図7)。この例示では、この雌螺子固定構造30(固定体31、弾性変形体32)を収容部材20に設ける。また、この電気接続箱1は、収容部材20の中で締結対象物50を雌螺子部材10と雄螺子部材40とで締結させる締結構造60を備える(図1から図8)。その締結構造60は、締結対象物50と雌螺子部材10と雄螺子部材40と雌螺子固定構造30とで構成される。
雌螺子部材10は、雄螺子部材40の雄螺子部41が螺合される雌螺子部11を有する(図1及び図5)。雌螺子部11は、円筒状に形成され、その内周面に雌螺子が螺刻されている。また、雄螺子部41は、円柱状に警醒され、その外周面に雄螺子が螺刻されている。
更に、この雌螺子部材10は、雌螺子部11における螺子軸方向の一方の端部側に設け、雄螺子部材40が螺合完了状態のときに雄螺子部材40との間で締結対象物50を挟持させる挟持部12を有する(図1、図3、図5及び図7)。ここでは、雌螺子部11における螺子軸方向の一方の端面を挟持部12として利用する。雄螺子部材40は、その挟持部12に螺子軸方向で対向配置させ、螺合完了状態のときに挟持部12との間で締結対象物50を挟持させる挟持部42を有する(図3及び図5)。その挟持部42については、例えば、雄螺子部材40の頭部43における雄螺子部41側の環状の壁面、頭部43と雄螺子部41との間に介在させた座金の環状の壁面等を利用する。
ここで、この例示では、締結対象物50として、導電部材70の板状の連結部51と、収容部材20の部品収容室21(図1)に収容される電子部品80の板状の端子部52と、が設けられている(図1及び図3から図6)。ここで示す導電部材70は、金属等の導電性材料で板状に成形された所謂バスバである。連結部51は、平板状に形成されている。この連結部51には、雄螺子部41を挿通させる円形の貫通孔51aが形成されている(図1)。一方、電子部品80は、板状の端子部52を備えるものであり、かつ、その端子部52を本体81から突出させた状態で配置させるものであれば如何様なものであってもよい(図1)。端子部52は、雄タブ端子等のような片体状に形成されている。この端子部52には、雄螺子部41を挿通させる円形の貫通孔52aが形成されている(図1)。電子部品80においては、本体81を部品収容室21に収容させ、端子部52を部品収容室21から外方に突出させる。
この例示の端子部52は、雌螺子部材10の挟持部12と導電部材70の連結部51との間に挿入させる(図3及び図5)。この端子部52は、その間への挿入完了状態のときに、一方の平面を挟持部12に面接触させ、他方の平面を連結部51の一方の平面に面接触させる。例えば、ここでは、ヒューズを電子部品80の一例として示している。収容部材20においては、予め雌螺子部材10と導電部材70とが収容されており(図5)、電子部品80を部品収容室21に収容していくことによって、端子部52が雌螺子部材10の挟持部12と導電部材70の連結部51との間に挿入されていく(図3、図5及び図6)。この収容部材20においては、その雌螺子部材10と導電部材70の連結部51と電子部品80の端子部52とが収容完了状態のときに、雌螺子部材10の螺子軸と略同軸上に連結部51の貫通孔51aと端子部52の貫通孔52aが配置されている。
ところで、この例示の電子部品80には、2つの端子部52が設けられている(図1、図4及び図6)。そして、この例示の電気接続箱1においては、それぞれの端子部52毎に対応させた雌螺子部材10と導電部材70とが設けられている。よって、この例示の電気接続箱1には、雌螺子部材10と雄螺子部材40とで締結される連結部51と端子部52の組み合わせが2組設けられている(図3、図4及び図6)。換言するならば、この例示の収容部材20には、締結状態を成す雌螺子部材10と雄螺子部材40と連結部51と端子部52の組み合わせが2組収容されている(図3、図4及び図6)。尚、それぞれの連結部51については、その内の一方を一方の導電部材70(導電部材70A)が有し、その内の他方を他方の導電部材70(導電部材70B)が有している(図3、図4及び図6)。
話を雌螺子部材10に戻すと、この雌螺子部材10は、更に、雌螺子部11における螺子軸方向の他方の端部側の外方で螺子軸方向に対して直交配置された鍔部13を有する(図1、図3、図5及び図7から図10)。その鍔部13は、螺子軸方向における一方の第1壁部(つまり、螺子軸方向で挟持部12側に配置されている第1壁部)13a(図5、図7及び図9)と、螺子軸方向における他方の第2壁部(つまり、螺子軸方向で挟持部12側とは逆側に配置されている第2壁部)13b(図5、図7及び図10)と、を有している。更に、この鍔部13は、螺子軸方向に直交する第1直交方向Go1(図1及び図2)の両端の第1被係止部13c及び第2被係止部13d(図7から図10)と、螺子軸方向及び第1直交方向Go1に直交する第2直交方向Go2(図1及び図2)の両端の第3被係止部13e及び第4被係止部13f(図5及び図8から図10)と、を有している。
ここでの第1直交方向Go1とは、雌螺子部材10を収容部材20に収容する際の挿入方向に対する直交方向と、その挿入方向とは逆向きの方向(例えば、雌螺子部材10を収容部材20から取り外す際の抜去方向)に対する直交方向と、を示している(図1及び図2)。よって、第2直交方向Go2とは、雌螺子部材10を収容部材20に収容する際の挿入方向及び当該挿入方向とは逆向きの方向のことをいう。
この例示の鍔部13は、略矩形の外周を有する平板状に形成されている(図1、図9及び図10)。よって、この例示の鍔部13においては、一方の平面が第1壁部13aとなり、他方の平面が第2壁部13bとなる。また、この例示の鍔部13においては、第1直交方向Go1における一方の辺部が第1被係止部13cとなり、第1直交方向Go1における他方の辺部が第2被係止部13dとなる。また、この例示の鍔部13においては、第2直交方向Go2における一方の辺部が第3被係止部13eとなり、第2直交方向Go2における他方の辺部が第4被係止部13fとなる。この例示の鍔部13においては、四隅が各々面取り加工されている。
尚、この例示の雌螺子部材10は、鍔部13の外周が正方形で、かつ、鍔部13のそれぞれの隅部がそれぞれの辺部に対して45度傾斜させた面取り部を有しているので、螺子軸の軸周りに90度ずつ回転させたその全ての位置において同一の外形を成す。このため、この例示の雌螺子部材10においては、鍔部13の4つの辺部の内の何れも収容部材20への挿入起点となり得る。そこで、この例示の雌螺子部材10においては、収容部材20への挿入起点となる鍔部13の辺部を第3被係止部13eとし、この第3被係止部13eを基準にして、鍔部13の残りの3つの辺部における第1被係止部13cと第2被係止部13dと第4被係止部13fとを定義する。
収容部材20は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。この収容部材20とは、筐体等のような箱状に成形されたものであってもよく、その筐体の中に収容され且つ保持される所謂ブロックとして成形されたものであってもよい。ここでは、ブロックとして成形された収容部材20を例示している。
この収容部材20においては、先に示した部品収容室21が形成されている。この部品収容室21には、開口(電子部品挿入口)21aを介して電子部品80が2つの端子部52側から挿入されていく(図1及び図2)。電子部品80においては、その挿入方向に向けて本体81から2つの端子部52が突出させられている。よって、収容部材20においては、本体81が部品収容室21に対して収容完了位置のときに、2つの端子部52が部品収容室21の外方に突出させられている。収容部材20は、その部品収容室21から外方に突出させられた端子部52が収容される端子収容室22を備える(図1から図8)。
端子収容室22には、雌螺子部材10と連結部51も収容される。よって、この端子収容室22は、雌螺子収容室と言い換えることもできる。この端子収容室22は、雌螺子部材10と雄螺子部材40と連結部51と端子部52の組み合わせ毎に設けられている(図3、図4、図6及び図7)。それぞれの端子収容室22は、螺子軸方向に沿って並べて配置される。端子収容室22は、部品収容室21に対する電子部品80の挿抜方向で開口21aとは逆側に開口22aを有している(図1、図2、図4から図6及び図8)。雌螺子部材10と連結部51は、その開口22aを介して電子部品80の挿入方向とは逆向きで端子収容室22に挿入されていく。
連結部51と端子部52は、端子収容室22の中で雌螺子部材10と雄螺子部材40とによって締結される。端子収容室22には、収容完了状態の雌螺子部材10の螺子軸の延長線上に、雌螺子部材10と雄螺子部材40の螺合作業を行うための開口(作業口)22bが形成されている(図1及び図2)。
尚、この例示の導電部材70Aは、矩形の平板状の主体71を有している(図1)。その主体71は、4つの辺部を有している。この例示の導電部材70Aにおいては、その主体71の交差する2つの辺部の内の一方に同一平面上で雄タブ端子72を設け、その内の他方に同一平面上で連結部51を設けている(図1)。雄タブ端子72は、端子収容室22に対する連結部51の挿入方向に沿って主体71から突出させる。この例示の導電部材70Aにおいては、その主体71と雄タブ端子72についても収容部材20に収容される。導電部材70Bについては、図示を省略するが、その導電部材70Aと同じように、主体と雄タブ端子を有している。また、この例示の収容部材20には、電子部品80とは別に、電子部品(例えば、ヒューズ)85(図2)が収容される部品収容室23(図1)と、電子部品(例えば、ヒューズ)86(図2)が収容される部品収容室24(図1)と、が形成されている。一方の導電部材70Aの雄タブ端子72は、部品収容室23に収容された電子部品85に電気接続させる。また、他方の導電部材70Bの雄タブ端子は、2つの部品収容室24に各々収容された電子部品86に電気接続させる。
先に示したように、この収容部材20には、雌螺子固定構造30が設けられている。つまり、この収容部材20は、その雌螺子固定構造30が備える固定体31と弾性変形体32とを有している。
固定体31とは、雌螺子部材10を端子収容室22における収容完了位置で固定させるためのものである。この例示の固定体31は、内方に雌螺子部材10を圧入させることによって、その内方で雌螺子部材10を固定する。
この固定体31は、螺子軸方向で雌螺子部材10の第1壁部13aを係止する第1係止部91と、螺子軸方向で雌螺子部材10の第2壁部13bを係止する第2係止部92と、を有する(図3、図5及び図7)。その第1係止部91と第2係止部92は、雌螺子部材10を第1壁部13a側と第2壁部13b側から挟持させるものとして形成される。よって、この固定体31においては、この第1係止部91と第2係止部92とによって雌螺子部材10が圧入固定される。
この例示の第1係止部91と第2係止部92は、各々、螺子軸方向に対しての直交平面を有する矩形の平板状に形成され、それぞれの平面同士を対向配置させる。そして、この例示の第1係止部91と第2係止部92は、各々、雌螺子部材10の収容完了位置から端子収容室22の開口22aまで延在させる。よって、この例示の第1係止部91と第2係止部92は、その開口22aから挿入された雌螺子部材10を収容完了位置まで案内するガイド機構を成している。
但し、この例示の第1係止部91については、第1から第3の被係止部13c,13d,13eにおけるそれぞれの第1壁部13aを螺子軸方向で係止させ、かつ、雌螺子部材10の雌螺子部11における挟持部12側を固定体31の外方に突出させるものとして形成されている。よって、この例示の第1係止部91は、第1被係止部13cにおける第1壁部13aを係止する第1係止壁部91aと、第2被係止部13dにおける第1壁部13aを係止する第2係止壁部91bと、第3被係止部13eにおける第1壁部13aを係止する第3係止壁部91cと、を有している(図3、図5及び図7)。
一方、この例示の第2係止部92には、螺合完了状態での雄螺子部材40の雄螺子部41の先端の接触を防ぐべく、その雄螺子部41の先端を避けるための溝92gが形成されている(図5、図7及び図8)。この例示では、その溝92gを端子収容室22の開口22aまで延在させている。この例示の第2係止部92は、第1被係止部13cにおける第2壁部13bを係止する第1係止壁部92aと、第2被係止部13dにおける第2壁部13bを係止する第2係止壁部92bと、を有している(図3、図5及び図7)。
更に、この固定体31は、第1直交方向Go1で雌螺子部材10の第1被係止部13cを係止する第3係止部93と、第1直交方向Go1で雌螺子部材10の第2被係止部13dを係止する第4係止部94と、を有する(図3、図7及び図8)。その第3係止部93と第4係止部94は、雌螺子部材10を第1直交方向Go1で第1被係止部13c側と第2被係止部13d側から挟持させるものとして形成される。よって、この固定体31においては、この第3係止部93と第4係止部94とによって雌螺子部材10が圧入固定される。
この例示の第3係止部93と第4係止部94は、各々、第1直交方向Go1に対しての直交平面を有する矩形の平板状に形成され、それぞれの平面同士を対向配置させる。そして、この例示の第3係止部93と第4係止部94は、各々、雌螺子部材10の収容完了位置から端子収容室22の開口22aまで延在させる。よって、この例示の第3係止部93と第4係止部94は、その開口22aから挿入された雌螺子部材10を収容完了位置まで案内するガイド機構を成している。
更に、この固定体31は、第2直交方向Go2で雌螺子部材10の第3被係止部13eを係止する第5係止部95と、第2直交方向Go2で雌螺子部材10の第4被係止部13fを係止する第6係止部96と、を有する(図3、図5及び図8)。その第5係止部95と第6係止部96は、雌螺子部材10を第2直交方向Go2で第3被係止部13e側と第4被係止部13f側から挟持させるものとして形成される。よって、この固定体31においては、この第3係止部93と第4係止部94とによって雌螺子部材10を収容完了位置に保持させる。
この例示の第5係止部95は、第2直交方向Go2に対しての直交平面を有する矩形の平板状に形成される。一方、この例示の第6係止部96は、第4被係止部13fにおける第1被係止部13c側の隅部と第2被係止部13d側の隅部とを係止させるものとして、そのそれぞれの隅部毎に設けられている。この例示では、第4被係止部13fにおける第1被係止部13c側の隅部を第2直交方向Go2で係止させるべく、第3係止部93における開口22a側への延在部分を第2直交方向Go2に膨出させ、かつ、第4被係止部13fにおける第2被係止部13d側の隅部を第2直交方向Go2で係止させるべく、第4係止部94における開口22a側への延在部分を第2直交方向Go2に膨出させている。ここでは、そのそれぞれの膨出部分を第6係止部96として利用する。
このように、この例示の固定体31は、方体状に形成され、その内方に雌螺子部材10を圧入固定させる。そして、この例示の固定体31は、挟持部12が外方に突出させられた状態で雌螺子部材10を固定している。
弾性変形体32は、弾性変形に伴って固定体31を螺子軸方向に変位させ得るものとして形成される。この弾性変形体32は、固定体31の端部に設ける。この例示では、第3係止壁部91cと第5係止部95との境界部分に弾性変形体32を設けている。この例示の弾性変形体32は、その境界部分と収容部材20の主体20a(図1及び図2)とを繋ぐ。主体20aとは、収容部材20の要部であり、部品収容室21等が形成されている。この例示の弾性変形体32は、固定体31を螺子軸方向に変位させる弾性変形が可能な板状に形成されている。
このように、この例示の固定体31と弾性変形体32は、弾性変形体32を固定端にして固定体31を螺子軸方向に変位させることが可能な片持ちのアーム体を成している。
本実施形態の固定体31と弾性変形体32においては、固定体31が雌螺子部材10から螺子軸方向の力を受けると、その力が固定体31から弾性変形体32に伝わり、その力の掛かる方向に応じて弾性変形体32を撓ませることができる。このため、この固定体31と弾性変形体32においては、そのような弾性変形体32の撓みによって、固定体31を雌螺子部材10と共に螺子軸方向に向けて変位させることができるので、主体20aに対して雌螺子部材10を螺子軸方向に沿って相対移動させることができる。例えば、固定体31と弾性変形体32においては、雌螺子部11における固定体31から突出させている部分(挟持部12等)が螺子軸方向に沿った力を受けた際に、その力が固定体31に伝わり、その力の掛かる方向に応じて弾性変形体32を撓ませることができる。このように、本実施形態の電気接続箱1においては、雌螺子部材10に螺子軸方向の力を作用させることによって、その力が固定体31を介して弾性変形体32に伝わり、その力の掛かる方向に応じて弾性変形体32を撓ませることができるので、収容部材20に対してその力の向きに雌螺子部材10を相対移動させることができる。よって、この電気接続箱1においては、雌螺子部材10と雄螺子部材40とで締結対象物50を締結させるべく、雌螺子部材10の挟持部12上に締結対象物50を設置する際に、その雌螺子部材10が締結対象物50から螺子軸方向の力を受けたとしても、収容部材20に対してその力の向きに雌螺子部材10を相対移動させることができる。従って、この電気接続箱1においては、雌螺子部材10の挟持部12上に締結対象物50を設置する際の力を軽減させることができるので、その設置作業性を向上させることができる。
具体的に、この例示の電気接続箱1においては、端子収容室22に収容されている雌螺子部材10の挟持部12と導電部材70の連結部51との間の隙間が電子部品80の端子部52の板厚より狭くなっていたとしても、その間に挿入され始めた端子部52が雌螺子部材10を螺子軸方向に押動しながら、その間の隙間を押し広げていくことができる。従って、この電気接続箱1においては、雌螺子部材10の挟持部12と導電部材70の連結部51との間に締結対象物50たる端子部52を挿入する際の挿入力を軽減させることができるので、その端子部52の挿入作業性を向上させることができ、これに伴い、電子部品80の部品収容室21への挿入作業性も向上させることができる。
ところで、本実施形態では、雌螺子部11を固定体31から突出させているので、端子部52が雌螺子部材10を介して固定体31を螺子軸方向に変位させることによって、収容部材20に対して雌螺子部材10を相対移動させる。しかしながら、雌螺子部11は、必ずしも固定体31から外方に突出させるものでなくてもよい。例えば、固定体31は、挟持部12が第1係止部91の外壁面と面一になるように雌螺子部材10を固定するものであってもよい。この場合には、端子部52が固定体31を螺子軸方向に押し動かしながら変位させることによって、収容部材20に対して雌螺子部材10を相対移動させてもよい。
[実施形態2]
本発明に係る電気接続箱の実施形態の1つを図11から図18に基づいて説明する。
図11から図18の符号101は、本実施形態の電気接続箱を示す。その電気接続箱101は、前述した実施形態1と同じ雌螺子部材10と、この雌螺子部材10が収容され且つ固定される絶縁性の収容部材120と、を備える(図11及び図14から図18)。この電気接続箱101は、その収容部材120に雌螺子部材10を固定させる雌螺子固定構造130を備える(図11から図18)。この電気接続箱101においては、その雌螺子部材10に雄螺子部材40を螺合させることによって、収容部材120に収容された導電性の締結対象物150を締結させる(図11から図16)。雌螺子固定構造130は、雌螺子部材10を固定する固定体131と、その固定体131を変位させる弾性変形体132と、を備える(図13から図17)。この例示では、この雌螺子固定構造130(固定体131、弾性変形体132)を収容部材120に設ける。また、この電気接続箱101は、収容部材120の中で締結対象物150を雌螺子部材10と雄螺子部材40とで締結させる締結構造160を備える(図11から図18)。その締結構造160は、締結対象物150と雌螺子部材10と雄螺子部材40と雌螺子固定構造130とで構成される。
この例示では、締結対象物150として、導電部材170の板状の連結部151が設けられている(図11から図16)。ここで示す導電部材170は、金属等の導電性材料で板状に成形された所謂バスバである。連結部151は、平板状に形成されている。この連結部151には、雄螺子部41を挿通させる円形の貫通孔151aが形成されている(図11)。例えば、この連結部151は、雌螺子部材10と雄螺子部材40とで締結させることによって、導電部材170を収容部材120に固定させる際に用いることができる。また、ここでの図示は省略するが、連結部151と雄螺子部材40との間には、別の締結対象物150としての端子(例えば、LA端子等)を介在させることができる。この場合の連結部151は、その別の端子(LA端子等)と共に雌螺子部材10と雄螺子部材40とで締結させることによって、この別の端子(LA端子等)を導電部材170に電気接続させるために用いることができる。
この例示の導電部材170は、矩形の平板状の主体171を有している(図11)。その主体171は、4つの辺部を有している。この例示の導電部材170においては、その主体171の交差する2つの辺部の内の一方に同一平面上で雄タブ端子172を設け、その内の他方に同一平面上で連結部151を設けている(図11)。この導電部材170は、雄タブ端子172の主体171からの突出方向に沿って収容部材120に収容される。連結部151は、収容部材120に対する導電部材170の収容完了状態のときに、一方の平面を雌螺子部材10の挟持部12に面接触させる。収容部材120においては、雌螺子部材10が導電部材170よりも先に収容されており、導電部材170が収容完了状態となったときに、雌螺子部材10の螺子軸と略同軸上に連結部151の貫通孔151aが配置されている。但し、雌螺子部材10は、後述するように、収容部材120に対して相対移動できるので、その相対移動量の範囲内で、貫通孔151aの中心に対して螺子軸が偏心している場合もある。雄タブ端子172は、電子部品(例えば、ヒューズ)185(図11から図13)に電気接続される。
収容部材120は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。この収容部材120とは、筐体等のような箱状に成形されたものであってもよく、その筐体の中に収容され且つ保持される所謂ブロックとして成形されたものであってもよい。ここでは、ブロックとして成形された収容部材120を例示している。
この収容部材120は、電子部品185が収容される部品収容室121を備える(図11及び図12)。その部品収容室121には、開口(電子部品挿入口)121aを介して電子部品185が挿入されていく(図11及び図12)。電子部品185は、その部品収容室121の中で導電部材170の雄タブ端子172に電気接続される。
更に、この収容部材120は、雌螺子部材10が収容される雌螺子収容室122を備える(図11、図12、図15及び図16)。その雌螺子収容室122には、連結部151も収容される。この雌螺子収容室122は、部品収容室121に対する電子部品185の挿抜方向で開口121aとは逆側に開口122aを有している(図11、図12、図15及び図16)。雌螺子部材10と連結部151は、その開口122aを介して電子部品185の挿入方向とは逆向きで雌螺子収容室122に挿入されていく。
連結部151は、例えば、雌螺子収容室122の中で雌螺子部材10と雄螺子部材40とによって、先の端子(LA端子等)を介在させた上で締結される。雌螺子収容室122には、収容完了状態の雌螺子部材10の螺子軸の延長線上に、雌螺子部材10と雄螺子部材40の螺合作業を行うための開口(作業口)122bが形成されている(図11及び図12)。
先に示したように、収容部材120には、雌螺子固定構造130が設けられている。つまり、この収容部材120は、その雌螺子固定構造130が備える固定体131と弾性変形体132とを有している。
固定体131は、実施形態1の固定体31と同じように、雌螺子部材10を雌螺子収容室122における収容完了位置で固定させる。この例示の固定体131は、実施形態1の固定体31と同じように、内方に雌螺子部材10を圧入させることによって、その内方で雌螺子部材10を固定する。
この固定体131は、螺子軸方向で雌螺子部材10の第1壁部13aを係止する第1係止部191と、螺子軸方向で雌螺子部材10の第2壁部13bを係止する第2係止部192と、を有する(図14から図17)。その第1係止部191と第2係止部192は、実施形態1の第1係止部91及び第2係止部92と同様のものであり、雌螺子部材10を第1壁部13a側と第2壁部13b側から挟持させるものとして形成されることによって、雌螺子部材10を圧入固定させる。
この例示の第1係止部191と第2係止部192は、各々、螺子軸方向に対しての直交平面を有する矩形の平板状に形成され、それぞれの平面同士を対向配置させる。そして、この例示の第1係止部191と第2係止部192は、各々、雌螺子部材10の収容完了位置から雌螺子収容室122の開口122aまで延在させる。よって、この例示の第1係止部191と第2係止部192は、実施形態1の第1係止部91及び第2係止部92と同じように、その開口122aから挿入された雌螺子部材10を収容完了位置まで案内するガイド機構を成している。
また、この例示の第1係止部191は、実施形態1の第1係止部91の第1係止壁部91a、第2係止壁部91b及び第3係止壁部91cと同等の第1係止壁部191a、第2係止壁部191b及び第3係止壁部191cを有している(図14から図18)。また、この例示の第2係止部192は、実施形態1の第2係止部92の溝92gと同様の溝192gが形成されており、これ故に、実施形態1の第2係止部92の第1係止壁部92a及び第2係止壁部92bと同様の第1係止壁部192a及び第2係止壁部192bを有している(図14から図18)。
更に、この固定体131は、第1直交方向Go1で雌螺子部材10の第1被係止部13cを係止する第3係止部193と、第1直交方向Go1で雌螺子部材10の第2被係止部13dを係止する第4係止部194と、を有する(図14、図17及び図18)。その第3係止部193と第4係止部194は、実施形態1の第3係止部93及び第4係止部94と同様のものであり、雌螺子部材10を第1直交方向Go1で第1被係止部13c側と第2被係止部13d側から挟持させるものとして形成されることによって、雌螺子部材10を圧入固定させる。
この例示の第3係止部193と第4係止部194は、各々、第1直交方向Go1に対しての直交平面を有する矩形の平板状に形成され、それぞれの平面同士を対向配置させる。そして、この例示の第3係止部193と第4係止部194は、各々、雌螺子部材10の収容完了位置から雌螺子収容室122の開口122aまで延在させる。よって、この例示の第3係止部193と第4係止部194は、実施形態1の第3係止部93及び第4係止部94と同じように、その開口122aから挿入された雌螺子部材10を収容完了位置まで案内するガイド機構を成している。
更に、この固定体131は、第2直交方向Go2で雌螺子部材10の第3被係止部13eを係止する第5係止部195と、第2直交方向Go2で雌螺子部材10の第4被係止部13fを係止する第6係止部196と、を有する(図14、図15、図16及び図18)。その第5係止部195と第6係止部196は、雌螺子部材10を第2直交方向Go2で第3被係止部13e側と第4被係止部13f側から挟持させるものとして形成されることによって、雌螺子部材10を収容完了位置に保持させる。
この例示の第5係止部195は、実施形態1の第5係止部95と同じように、第2直交方向Go2に対しての直交平面を有する矩形の平板状に形成される。また、この例示の第6係止部196は、実施形態1の第6係止部96と同じように、第4被係止部13fにおける第1被係止部13c側の隅部と第2被係止部13d側の隅部とを係止させるものとして、そのそれぞれの隅部毎に設けられている。この例示では、第4被係止部13fにおける第1被係止部13c側の隅部を第2直交方向Go2で係止させるべく、第3係止部193における開口122a側への延在部分を第2直交方向Go2に膨出させ、かつ、第4被係止部13fにおける第2被係止部13d側の隅部を第2直交方向Go2で係止させるべく、第4係止部194における開口122a側への延在部分を第2直交方向Go2に膨出させている。ここでは、そのそれぞれの膨出部分を第6係止部196として利用する。
このように、この例示の固定体131は、実施形態1の固定体31と同じように、方体状に形成され、その内方に雌螺子部材10を圧入固定させる。そして、この例示の固定体131は、挟持部12が外方に突出させられた状態で雌螺子部材10を固定している。
弾性変形体132は、実施形態1の弾性変形体32と同じように、弾性変形に伴って固定体131を螺子軸方向に変位させ得るものとして形成される。この弾性変形体132は、固定体131の端部に設ける。この例示では、第2係止部192における開口122a側の端部に弾性変形体132を設けている。この例示の弾性変形体132は、固定体131の外方で第2係止部192の平面に対して間隔を空けて対向配置された矩形の平板部132a(図15から図17)と、第2係止部192における開口122a側の端部を平板部132aにおける開口122a側の辺部に繋ぐU字部132b(図15及び図16)と、を有する。平板部132aにおいては、第2直交方向Go2で開口122a側とは逆側の辺部を収容部材120の主体120aに繋いでいる(図15及び図16)。主体120aとは、収容部材120の要部であり、部品収容室121等が形成されている。この例示の弾性変形体132においては、平板部132aに可撓性を持たせることによって、固定体131を螺子軸方向に変位させる。
このように、この例示の固定体131と弾性変形体132は、実施形態1の固定体31及び弾性変形体32と同じように、弾性変形体132を固定端にして固定体131を螺子軸方向に変位させることが可能な片持ちのアーム体を成している。
本実施形態の固定体131と弾性変形体132においては、固定体131が雌螺子部材10から螺子軸方向の力を受けると、その力が固定体131から弾性変形体132に伝わり、その力の掛かる方向に応じて弾性変形体132を撓ませることができる。このため、この固定体131と弾性変形体132においては、そのような弾性変形体132の撓みによって、固定体131を雌螺子部材10と共に螺子軸方向に向けて変位させることができるので、主体20aに対して雌螺子部材10を螺子軸方向に沿って相対移動させることができる。例えば、固定体131と弾性変形体132においては、雌螺子部11における固定体131から突出させている部分(挟持部12等)が螺子軸方向に沿った力を受けた際に、その力が固定体131に伝わり、その力の掛かる方向に応じて弾性変形体132を撓ませることができる。このように、本実施形態の電気接続箱101においては、雌螺子部材10に螺子軸方向の力を作用させることによって、その力が固定体131を介して弾性変形体132に伝わり、その力の掛かる方向に応じて弾性変形体132を撓ませることができるので、収容部材120に対してその力の向きに雌螺子部材10を相対移動させることができる。よって、この電気接続箱101においては、雌螺子部材10と雄螺子部材40とで締結対象物150を締結させるべく、雌螺子部材10の挟持部12上に締結対象物150を設置する際に、その雌螺子部材10が締結対象物150から螺子軸方向の力を受けたとしても、収容部材120に対してその力の向きに雌螺子部材10を相対移動させることができる。従って、この電気接続箱101においては、雌螺子部材10の挟持部12上に締結対象物150を設置する際の力を軽減させることができるので、その設置作業性を向上させることができる。
具体的に、この例示の電気接続箱101においては、導電部材170を収容部材120に収容させる際に、雌螺子収容室122に収容されている雌螺子部材10の挟持部12に導電部材170の連結部151が接触したとしても、導電部材170の挿入を続けることで、螺子軸方向に向けて連結部151に雌螺子部材10を押動させることができる。また、この例示の電気接続箱101においては、導電部材170を収容部材120に収容する際に、雌螺子収容室122に収容されている雌螺子部材10の雌螺子部11の外周壁の先端部に導電部材170の連結部151が接触したとしても、導電部材170の挿入を続けることで、その連結部151を挟持部12まで案内させることができれば、螺子軸方向に向けて連結部151に雌螺子部材10を押動させることができる。例えば、この例示では、雌螺子部11の先端部における外周壁側の隅部が面取り加工されており、その面取り部で連結部151を挟持部12まで案内させる。従って、この電気接続箱101においては、締結対象物150としての連結部151が設けられている導電部材170を収容部材120に挿入する際の挿入力を軽減させることができるので、その導電部材170の挿入作業性を向上させることができる。
ところで、本実施形態では、雌螺子部11を固定体131から突出させているので、連結部151が雌螺子部材10を介して固定体131を螺子軸方向に変位させることによって、収容部材120に対して雌螺子部材10を相対移動させる。しかしながら、本実施形態でも、雌螺子部11は、必ずしも固定体131から外方に突出させるものでなくてもよい。例えば、固定体131は、挟持部12が第1係止部191の外壁面と面一になるように雌螺子部材10を固定するものであってもよい。この場合には、連結部151が固定体131を螺子軸方向に押し動かしながら変位させることによって、収容部材120に対して雌螺子部材10を相対移動させてもよい。