JP7323919B2 - 虚血性心疾患治療用細胞シート - Google Patents

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Description

本発明は、医療用細胞シートに関する。より詳細には、本発明は、虚血性心疾患に用いるための、血管内皮前駆細胞と筋芽細胞を共培養することにより得られる、新規な医療用細胞シートに関する。
狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患では、心筋組織に十分な酸素が行き渡らなくなり、この状態が長時間続くと心筋組織に傷害が生じる。元来成体の心筋細胞は自己複製能に乏しいため、一旦傷害を受けると心筋の修復はできないか、修復できたとしてもごく限られた回復しか期待できず、最終的に心不全に陥ってしまう。
一方、本発明者らは、骨髄、臍帯血または末梢血由来の単核球画分から無血清培養下で血管内皮前駆細胞(Endothelial progenitor cells, EPCs)を増幅させる方法を、虚血性疾患、難治性潰瘍または糖尿病関連疾患の治療剤として使用する目的で発明し、報告してきた(特許文献1、非特許文献1および2)。より詳細には、本発明者らは、単核球画分から血管新生に寄与する細胞群へと分化、増殖し得る培養条件として、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン6(IL-6)、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt-3 ligand)、トロンボポエチン(TPO)および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の5種の因子を含有する無血清培地中で単核球を培養する方法を開発してきた。この培養系により機能性EPCが増幅し、EPC の質・量が保証され、血管再生能が増強することが判明し,本培養系はQuality and Quantity(QQ)培養と命名されている。そして最近では、QQ培養された末梢血単核球は、虚血性心疾患に対する細胞治療としても検討されている(非特許文献3)。
他方、心不全の治療法として、心筋組織への骨格筋芽細胞移植が知られている。骨格筋に含まれる筋芽細胞は、筋肉が損傷を受けたとき***し、修復を行う。心筋と骨格筋は構造、機能などに類似する部分が多く、そのため骨格筋由来の筋芽細胞は傷害心筋も修復し得ると考えられている。さらに筋芽細胞懸濁液の移植の際の、移植細胞の障害損失、レシピエント心の注入時の組織障害、レシピエント心への組織供給効率、不整脈の発生、梗塞部位全体への治療困難などの欠点を克服するために、筋芽細胞をシート化して用いることが検討されている(例えば、非特許文献4~8)。
国際公開第2014/051154号
Masuda H. et al. Development of serum-free quality and quantity control culture of colony-forming endothelial progenitor cell for vasculogenesis. Stem Cells Transl Med 1 2012: 160-171 Masuda H. et al. Vasculogenic conditioning of peripheral blood mononuclear cells promotes endothelial progenitor cell expansion and phenotype transition of anti-inflammatory macrophage and T lymphocyte to cells with regenerative potential. J Am Heart Assoc. 2014 Jun 25;3(3):e000743. doi: 10.1161/JAHA.113.000743. Amankeldi A. Salybekov1, et al. Regeneration-associated cells improve recovery from myocardial infarction through enhanced vasculogenesis, anti-inflammation, and cardiomyogenesis. PLoS One. 2018 Nov 28;13(11):e0203244. doi: 10.1371/journal.pone.0203244. eCollection 2018 Sawa Y. et ai. Tissue engineered myoblast sheets improved cardiac function sufficiently to discontinue LVAS in a patient with DCM: report of a case. Surg Today 2012; 42: 181-184 Alshammary S. et al. Impact of cardiac stem cell sheet transplantation on myocardial infarction. Surg Today 2013; 43:970-976 Sawa Y. et al. Cell Sheet Technology for Heart Failure, Current Pharmaceutical Biotechnology 2013; 14: 61-66 Sawa Y. et al. Present and Future Perspectives on Cell Sheet-Based Myocardial Regeneration Therapy. BioMed Research International 2013; http://dx.doi.org/10.1155/2013/583912 堂前圭太郎 他、重症心不全における骨格筋筋芽細胞シートを用いた心筋再生治療における安全性、有効性の検討、Organ Biology 2015; 22(2): 64-68 Terrovitis J. et al. Noninvasive Quantification and Optimization of Acute Cell Retention by In Vivo Positron Emission Tomography After Intramyocardial Cardiac-Derived Stem Cell Delivery. Journal of the American College of Cardiology 2009; 54(17): DOI: 10.1016/j.jacc.2009.04.097
虚血性心疾患に対する細胞治療の問題点として、投与された細胞の残存率、生着率が低いことが知られている(非特許文献9)。この残存率および生存率の低さは、細胞の物理的流出、投与される患部が虚血や炎症といった細胞が生着しにくい環境であることこと、また投与されるのが他人の細胞であったり、心筋細胞とは異なる種類の細胞であったりするために免疫的に拒絶されること、等に起因すると考えられる。また、虚血性心疾患に対する細胞治療の他の問題点として、細胞治療の効果は主にパラクライン効果により生じており、投与した細胞の心筋分化度が低いこと、投与細胞が腫瘍化する懸念があること、投与細胞が電気的・組織的に孤立化することで不整脈の懸念があることが挙げられる。
本発明は、従来の細胞治療に比較して、より効果的な虚血性心疾患の処置が行える方法を提供することを課題としてなされたものである。
本発明は以下を提供する。
[1] 血管内皮前駆細胞を準備する工程;
筋芽細胞を準備する工程;
血管内皮前駆細胞 とシート形成上有効量の筋芽細胞とを、血管内皮前駆細胞と筋芽細胞との細胞数比(血管内皮前駆細胞数:筋芽細胞数)が1:0.5~20 となるように播種して共培養し、細胞シートを形成する工程
を含む、細胞シートの製造方法。
[2] 共培養された血管内皮前駆細胞の少なくとも一部を取り除く工程をさらに含む、1に記載の製造方法。
[3] シート形成上有効量が、1.0×103~1.0×105個/cm2 である、2に記載の製造方法。
[4] 血管内皮前駆細胞が、末梢血単核球由来である、1~3のいずれか一に記載の製造方法。
[5] 末梢血単核球が、細胞シートが移植される対象から得たものである、4に記載の製造方法。
[6] 血管内皮前駆細胞を準備する工程が、末梢血単核球を無血清培地を用いて培養する工程である、4または5に記載の製造方法。
[7] 筋芽細胞が、細胞シートが移植される対象から得たものである、1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
[8] 血管内皮前駆細胞および筋芽細胞を含む、細胞シート。
[9] 虚血性心疾患の処置のための、8に記載の細胞シート。
[10] 血管内皮前駆細胞および筋芽細胞の少なくとも一方が、細胞シートが移植される対象から得たものである、8または9に記載の細胞シート。
[11] 再生医療等製品である、8~10のいずれか一に記載の細胞シート。
[12] 8~11のいずれか一に記載の細胞シートを調製するための、キット。
[13] 筋芽細胞シートと組み合わせて使用するための、血管内皮前駆細胞の使用。
本発明による共培養細胞シートを用いることにより、従来の筋芽単独の細胞シートを用いた場合に比較して、より効果的な虚血性心疾患の処置が行える。本発明の細胞シートを持ちることにより、左室駆出率(LVEF)の改善、リモデリングの軽減作用が期待できる。
血管内皮前駆細胞が共培養されていることにより、細胞シートを移植した組織において血管新生が促進されうる。また炎症が抑制されうる。
本発明の細胞シートには、ある程度分化した細胞が使用されるため、腫瘍化の懸念が少ないと考えられる。
細胞シートが用いられる対象から採取した細胞を利用する態様においては、移植した細胞が免疫的に拒絶されることを抑制できる。
In vitroでのQQ細胞と菌芽細胞の共培養のプロトコール 細胞写真 CD34を染色した細胞の写真 PECAM-1、CD34を染色した細胞の写真 Cx43、Tunel染色した細胞の写真 In vitro培養した細胞についてのRT-PCRの結果。各左側のバーは菌芽細胞単独培養の結果であり、各右側のバーは共培養の結果である。 In vitro培養した細胞についての炎症関連サイトカインの測定の結果。各左側のバーは菌芽細胞単独培養の結果であり、各右側のバーは共培養の結果である。 In vivo評価のプロトコール In vivo評価結果
本発明は、下記の工程を含む、細胞シートの製造方法、およびそれにより製造された細胞シートに関する:
血管内皮前駆細胞を準備する工程;
筋芽細胞を準備する工程;
血管内皮前駆細胞 とシート形成上有効量の筋芽細胞とを、血管内皮前駆細胞と筋芽細胞との細胞数比(血管内皮前駆細胞数:筋芽細胞数)が1:0.5~20 となるように播種して共培養し、細胞シートを形成する工程。
[血管内皮前駆細胞の準備]
(血管内皮前駆細胞)
本発明には、血管内皮前駆細胞(Endothelial progenitor cells;EPCs)が用いられる。本発明で用いられる血管内皮前駆細胞は、血管内皮細胞に成り得る未分化な細胞であれば特に限定されない。血管内皮前駆細胞は分化程度によって、直径20~50μmの細胞を主に含む分化型EPCコロニー(CFU-Large cell like EC、大型EPCコロニーともいう)と、直径20μm以下の細胞を主に含む未分化型EPCコロニー(CFU-small cell like EC、小型EPCコロニーともいう)の、大きさの異なる2種類のコロニーにより区別できる。早い段階で出現する未分化型(小型)EPCコロニーは、増殖能にすぐれた早期分化段階のEPCコロニーであり、また遅い段階で出現する分化型(大型)EPCコロニーは、血管発生にすぐれた晩期分化段階のEPCコロニーであるといえる(例えば、Masuda H. et al., Circulation Research, 109: 20-37 (2011)を参照)。本発明には、いずれも好適に用いることができる。
血管内皮前駆細胞は、末梢血、骨髄、臍帯血等から採取される単核球に含まれる。本発明の好ましい態様においては、血管内皮前駆細胞として、単核球を、CD34/CD133による選別を行うことなく、後述する無血清培地で培養することにより得られる細胞群である、QQ細胞(QQCs)(特許文献1、非特許文献1および2)が用いられる。このような細胞群に含まれる血管内皮前駆細胞は、CD34/CD133による選別を行う場合と比較して未分化型EPCコロニー形成細胞数がほぼ同等なのに対して分化型EPCコロニー形成細胞数が著しく増加している。好ましくはCD34/CD133による選別を行う場合と比較して未分化型EPC形成細胞数が変わらないのに対してその2倍以上の分化型EPCコロニー形成細胞が含まれる。さらに好ましくはCD34/CD133による選別を行う場合と比較して未分化型EPCコロニー形成細胞数が変わらないのに対してその4倍の、より好ましくは5倍の分化型EPCコロニー形成細胞が含まれる。なお、以下では、本発明を、血管内皮前駆細胞がQQ細胞である場合を例に説明することがあるが、当業者であれば、その説明を他の血管内皮前駆細胞を用いた場合にも適宜当てはめて理解することができる。
(単核球)
QQ細胞は、単核球から得られる。単核球とは、末梢血、骨髄または臍帯血等に含まれる円形核を持つ細胞の総称で、リンパ球、単球、マクロファージ、血管内皮前駆細胞、造血幹細胞等が含まれる。単核球は通常、CD34および/またはCD133陽性細胞を含んでいる。動物から骨髄、臍帯血または末梢血を採取し、それを例えば密度勾配遠心法に付して該分画を抽出することにより単核球が得られる。密度勾配遠心法としては、単核球分画が得られる限り特に限定されないが、好ましくはHistopaque-1077(Sigma-Aldrich)が用いられる。
本発明の特に好ましい態様においては、血管内皮前駆細胞のソースとして、末梢血由来の単核球が用いられる。
血管内皮前駆細胞が由来する動物種は特に限定されないが、得られる細胞シートを虚血性心疾患の治療等を目的として生体に移植する場合は、細胞シートが移植される対象と同種の動物から得たものであることが好ましく、また細胞シートが移植される対象自身から得たものであることがより好ましい。
(無血清培地)
本発明において、血管内皮前駆細胞として、単核球をCD34/CD133による選別を行うことなく無血清培地で培養して得られた細胞群が用いられる場合、培養に用いられる無血清培地の好ましい例は、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン6(IL-6)、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt-3 ligand、またはFL略されることがある。)、トロンボポエチン(TPO)および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の5種の因子を含有する無血清培地である。
幹細胞因子(SCF)は、248個のアミノ酸からなる分子量約30,000の糖タンパク質である。選択的スプライシングにより可溶型と膜結合型が存在するが、本発明で用いられるSCFはEPC等の培養に有用である限りいずれのタイプのSCFでもよい。好ましくは可溶型である。SCFの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。SCFのヒト組み換え体は、商業的に入手可能なものが知られている。
無血清培地中のSCFの濃度は、用いるSCFの種類によっても異なり、EPC等の培養に有用である限り特に限定されないが、ヒト組換えSCFの場合であれば、例えば10~1000ng/mL、好ましくは50~500ng/mL、より好ましくは約100ng/mLである。
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、EPCに特異的に作用する増殖因子であり、主に血管周囲の細胞で産生されることが知られている。選択的スプライシングによってサイズの異なる数種のVEGFタンパク質が産生されるが、本発明に用いるVEGFはEPCのコロニー形成を可能にする限りいずれのタイプのVEGFでもよい。好ましくはVEGF165である。VEGFの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。
無血清培地中のVEGFの濃度は、用いるVEGFの種類によっても異なるが、ヒト組換えVEGF165の場合であれば、好ましくは5~500ng/mL、より好ましくは約20~100ng/mL、さらに好ましくは50ng/mLである。
FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FL)は、初期造血制御において重要な役目を担う受容体型チロシンキナーゼのリガンドとして知られている。いくつかの選択的スプライシングによる産物が知られているが、造血系幹細胞の増殖を刺激するという報告がある。本発明に用いられるFLは、EPC等の富化に有用である限り、いずれのタイプのFLであってもよい。
無血清培地中のFLの濃度は、用いるFLの種類によっても異なるが、ヒト組換えFlt-3リガンドの場合であれば、好ましくは10~1000ng/mL、より好ましくは50~500ng/mL、さらに好ましくは100ng/mLである。
トロンボポエチン(TPO)は、造血系サイトカインの一種であり、造血幹細胞から巨核球が作られる過程に特異的に作用し、巨核球の産生を促進することが知られている。本発明に用いるTPOの由来等は特に限定されないが、安定した供給が見込まれる組換え体が好ましく、特に好ましくはヒト組換え体である。
無血清培地中のTPOの濃度は、用いるTPOの種類によっても異なるが、ヒト組換えTPOの場合であれば、好ましくは1~500ng/mL、より好ましくは5~100ng/mL、さらに好ましくは20ng/mLである。
無血清培地に添加される各種因子はまた、単核球が由来する動物と同種の動物に由来する因子で統一することが好ましい。このように単核球および各種因子の由来を統一することで、同種異系移植等の同種移植に好適な細胞培養物が得られる。また、細胞移植が意図される個体由来の単核球を用いることで、同種同系移植に好適な細胞培養物を得ることも可能である。このように異種動物由来の成分を一切含有しない環境でEPC等を含む細胞群の培養が可能であるため、得られる細胞培養物は、移植等に際して感染リスク・拒絶反応を回避できるという利点を有する。
無血清培地の本体としては、当分野で動物細胞の培養のために通常用いられている基礎培地を利用することができ、例えば造血幹細胞の増殖用培地として知られている無血清培地を用いることができる。無血清培地として用いられる基礎培地としては、例えばDMEM、MEM、IMDM等が挙げられる。
(培養条件)
無血清培地中での単核球の培養条件は特に限定されず、動物細胞を培養するための通常の条件で実施することができる。例えば、5%CO2環境下、37℃で7日間以上(例えば10日間以上)培養される。無血清培地中での単核球の密度は、EPC等の富化を可能とする限り特に限定されないが、好ましくは0.5~10×105細胞/mLであり、より好ましくは1~5×105細胞/mLであり、さらに好ましくは3~4×105細胞/mLである。
(無血清培養により得られる細胞群)
本発明において、単核球を上述した因子を含有する無血清培地で培養した結果得られる細胞群には、分化型EPCコロニー形成細胞数が多く含まれうる。細胞群にはまた、抗炎症性マクロファージが含まれていてもよい。抗炎症性マクロファージとは、CD206陽性、抗炎症性で血管形成や修復に寄与するマクロファージである。好ましくはM2マクロファージであり、より好ましくはCD206陽性のM2マクロファージである。
血管内皮前駆細胞コロニー形成能の測定は、市販のキットを使用して行うことができる。このようなキットとして、例えばステムセルテクノロジー社製のキット(カタログNo.H4236)が市販されている。抗炎症性マクロファージあるいは炎症性マクロファージの分化あるいは増幅は、例えば、抗炎症性マクロファージについてはCD206、そして炎症性マクロファージについてはCCR2を、それらに親和性を有する抗体により標識し、フローサイトメータ解析により計測できる。
得られる細胞群は、さらに抗炎症性のTh2細胞や、制御性T細胞を含みうる。したがって得られる細胞群は、EPCや抗炎症性マクロファージに加えて、さらに抗炎症性のTh2細胞や制御性T細胞が富化した細胞群でもあり得る。
得られる細胞群は、分化型EPCコロニー形成細胞と抗炎症性マクロファージ(CD206陽性のM2マクロファージ)を含むことが好ましい。このような細胞群は、例えば潰瘍などの炎症部位において、血管を発生させるだけでなく、炎症をも抑えることができる点で極めて効果的であると考えられるからである。
[筋芽細胞の準備]
本発明には、筋芽細胞が用いられる。筋芽細胞は、ある程度分化した細胞であるので、腫瘍化のリスクがより少ないということができる。筋芽細胞の由来は特に限定されるものではないが、生体内に豊富に存在し、比較的容易な操作で採取できるとの観点からは、骨格筋組織の骨格筋芽細胞であることが好ましい。採取する部位は、特に限定されず、例えば大腿部の内側広筋とすることができる。
筋芽細胞を生体から採取する場合、細胞シートが移植される対象において免疫的拒絶が起きにくいとの観点から、当該対象から採取することが好ましい。
採取する量は、目的とする細胞シートとして必要な大きさ、枚数にも拠るが、例えば、ヒトへの移植用の細胞シートとして108オーダーの細胞を含む細胞シートが複数枚必要である場合があり、比較的多くの筋芽細胞が必要である場合がある。筋芽細胞は、体外で培養・増殖させることができ、また保存液に懸濁して凍結保存することができる。必要に応じ、複数回の採取や培養により、適切な量を確保することができる。
[共培養]
本発明の細胞シートは、血管内皮前駆細胞と筋芽細胞とを共培養することにより製造される。共培養は、培養開始時に、血管内皮前駆細胞と筋芽細胞とを同一の培養器材表面上に播種することにより開始される。
(播種)
共培養のための血管内皮前駆細胞と筋芽細胞との播種の方法は、少なくとも血管内皮前駆細胞と筋芽細胞とが同一器材表面上に共存しつつ、筋芽細胞シートが形成される限り、特に限定されないが、好ましい態様においては、まずシート形成上有効量の筋芽細胞が培養器材表面上に播種され、次いで筋芽細胞に対して所定の比の細胞数の血管内皮前駆細胞が播種される。
共培養に際して、筋芽細胞は、数日~数週間の培養により筋芽細胞がシート状の培養物を形成できる量、すなわちシート形成上有効量で播種される。シート形成上有効量は、例えば1週間以内程度の培養でシートを得るためには、1.0×103~1.0×105個/cm2 であり、好ましくは2.0×103~5.0×104個/cm2であり、より好ましくは2.0×103~2.0×104個/cm2である。あるいは、筋芽細胞を実質的に増殖させることなくシートを得るためには、シート形成上有効量は0.4×106~2.5×106個/cm2であり、好ましくは0.5×106~2.1×106個/cm2であり、より好ましくは0.6×106~1.7×106個/cm2である。筋芽細胞の播種量はまた、形成される細胞シートに要求される大きさや枚数を考慮して決定することができる。
共培養における血管内皮前駆細胞の播種量は、播種される筋芽細胞の量と次に述べる血管内皮前駆細胞と筋芽細胞との比に基づき、適宜計算できる。
(血管内皮前駆細胞と筋芽細胞との比)
共培養開始時の血管内皮前駆細胞と筋芽細胞との比は、シート化できる限り特に限定されないが、例えば、播種される血管内皮前駆細胞と筋芽細胞との細胞数比(血管内皮前駆細胞数:筋芽細胞数)は、1:0.5~20とすることができる。好ましくは、血管内皮前駆細胞数:筋芽細胞数は、1:0.2~5であり、より好ましくは1:0.3~3であり、さらに好ましくは1:0.5~2である。このような範囲での共培養は、血管新生関連因子の発現が高くなることが期待でき、かつ抗炎症効果および細胞生存に有利であると考えられる。また、血管内皮前駆細胞の割合が低すぎると共培養されている筋芽細胞の機能を増強させるだけの十分な効果が期待できず、逆に血管内皮前駆細胞の割割合が高すぎる場合、筋芽細胞により細胞シートが形成されず、好ましくない。なお、本発明に関し、細胞の比率をいうときは、特に記載した場合を除き、細胞数に基づく値である。
(培養器材)
共培養が行われる培養器材は、特に限定されないが、形成される細胞シートの器材からの剥離が容易に行えるとの観点からは、0~80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養器材が用いられることが好ましい。すなわち、細胞は0~80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養器材上で、ポリマーの水和力の弱い温度域で培養される。その温度は、通常動物細胞の培養に適した温度である37℃付近であることが好ましい。温度応答性高分子はホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。このような高分子としては、例えば、特開平2-211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N-(若しくはN,N-ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体等のモノマーの重合体が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上が重合された物でありえる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いたものであってもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋されていてもよい。その際、その上で培養されるものが動物細胞であることから、剥離が5℃~50℃の範囲で行えることが好ましく、そのため温度応答性ポリマーの好ましい例としては、ポリ-N-n-プロピルアクリルアミド(単独重合体の下限臨界溶解温度21℃)、ポリ-N-n-プロピルメタクリルアミド(同27℃)、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(同32℃)、ポリ-N-イソプロピルメタクリルアミド(同43℃)、ポリ-N-シクロプロピルアクリルアミド(同45℃)、ポリ-N-エトキシエチルアクリルアミド(同約35℃)、ポリ-N-エトキシエチルメタクリルアミド(同約45℃)、ポリ-N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(同約28℃)、ポリ-N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(同約35℃)、ポリ-N,N-エチルメチルアクリルアミド(同56℃)、ポリ-N,N-ジエチルアクリルアミド(同32℃)が挙げられる。温度応答性の細胞培養器材は市販されており、例えばUpCell(登録商標)(CellSeed, cat# CS3003, CS3004, CS3005, CS3006, CS3007)等が共培養のために使用できる。
(血管内皮前駆細胞の除去)
好ましい態様において、血管内皮前駆細胞と筋芽細胞が一定期間共培養された後、共培養された血管内皮前駆細胞の少なくとも一部が除去される。少なくとも一部の血管内皮前駆細胞の除去は、培地の交換とともに行うことができる。すなわち、培養器から培養上清を除去する際に、浮遊している血管内皮前駆細胞は容易に上清とともに除去できる。血管内皮前駆細胞の少なくとも一部の除去は、培養期間中のどの時点で行ってもよい。例えば、共培養後、2~5日目に培地交換とともに行い、新鮮培地を追加した後、さらに残りの期間、血管内前駆細胞の少なくとも一部が除去された状態で、培養を続けることができる。
血管内皮前駆細胞は、一部を除去してもよく、全部を除去してもよい。一部の血管内皮前駆細胞が除去され、多少の血管内皮前駆細胞が筋芽細胞シート上に残されると、シートが移植された場合に患部での血管新生や血流の改善への寄与が期待できる。この観点からは、血管内皮前駆細胞は、全部が除去されるのではなく、その一部が筋芽細胞シート上に残されることが好ましい。共培養に用いられた血管内皮前駆細胞のうち、例えば20%程度の血管内皮前駆細胞が細胞シート上に残されてよく、10%程度の血管内皮前駆細胞が残されていてもよく、5%程度の血管内皮前駆細胞が残されていてもよい。
(培地)
共培養に用いられる培地は、筋芽細胞の培養のために用いられる従来のものが使用できる。例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80-7等の基礎培地に、必要に応じ、成分を添加する等して改変を加えたものが使用できる。
共培養に用いられる培地は、無血清培地であってもよく、血清を添加した培地であってもよい。血清が用いられる場合、血清の例として、異種血清、同種血清(同種他家血清、自己血清)が挙げられる。ここでいう異種血清は、細胞シートが移植される場合は、移植される対象とは異なる種の生物に由来する血清を意味する。例えば、対象がヒトである場合、ウシやウマに由来する血清、例えば、ウシ胎仔血清(FBS、FCS)、仔ウシ血清(CS)、ウマ血清(HS)などが異種血清に該当する。また、同種血清は、対象と同一の種の生物に由来する血清を意味する。例えば、対象がヒトである場合、ヒト血清が同種血清に該当する。同種血清は、対象以外の同種の個体から採取した同種他家血清と、自己血清、すなわち対象自身から採取した血清を含む。細胞シートが移植される場合であって、共培養のために血清を用いる場合は、移植時の副作用を回避するとの観点からは、同種血清が好ましく、自己血清がより好ましい。
血清を用いる場合、その濃度培地中の濃度は、0.5~20%、例えば5%、10%、15%とすることができる。なお、本発明に関し、培地中の血清の濃度は、特に記載した場合を除き、血清の容積と培地全体の容積に基づく濃度(v/v)である。
別の好ましい態様においては、共培養のための培地は血清を実質的に含まない。
(培養温度、期間等)
共培養は、筋芽細胞をシート形成を目的に培養する場合と同様の条件で行うことができる。典型的な培養条件としては、37℃、5%CO2での培養が挙げられる。培養期間は、シート状の構造物が形成されるまで行うことができる。この期間は、血管内皮前駆細胞の少なくとも一部を除した後の培養期間を含み、例えば1.0×103~1.0×105個/cm2で筋芽細胞を播種した場合の培養期間は、2日~2週間であり、より特定すると3日~10日であり、例えば1週間前後である。培養期間は、筋芽細胞の播種量がより多い場合はより短い期間でありうる。
(細胞シートの回収)
血管内皮前駆細胞と筋芽細胞との共培養を経て形成された細胞シートは、培養器材表面から剥離させ、回収することができる。細胞シートを回収する方法は特に限定されないが、温度応答性の培養器材を用いた場合は、適切な温度に変化させることにより回収することができ、他の例として、希薄なタンパク質分解酵素を用いる方法、特殊なタンパク質分解酵素を用いる方法、キレート剤(例えばEDTA)を用いる方法、スクレーパー等を使いて物理的に剥離する方法等が挙げられる。得られた細胞シートは、必要に応じて積層化し、三次元構造体とすることができる。
[細胞シート]
本発明は、上述の製造方法で得られる、血管内皮前駆細胞および筋芽細胞を含む、細胞シートを提供する。
本発明の細胞シートは、血管内皮前駆細胞と筋芽細胞とを共培養して製造しているため、典型的には、筋芽細胞で形成されるシートに小型の血管内皮細胞が付随した形態をしている。筋芽細胞のみで形成されるシートとは、小型の血管内皮細胞が付随している以外には形態上の違いは少なく、そのため従来の筋芽細胞シートと同様に用いることができると考えられる。
本発明者らの検討によると、得られた細胞シートは、筋芽細胞のみから形成された細胞シートに比較して、抗炎症・免疫制御性サイトカインであるIL-10 の発現上昇が認められる。またIL-10の発現上昇とともに、一部の炎症性サイトカインの発現上昇も認められることがある。
[細胞シートの用途、その他]
本発明の細胞シートは、虚血性心疾患の処置のために用いることができる。虚血性心疾患は、心筋において、血量の減少によって組織内の血流がさがり細胞の変性、萎縮、線維化などの組織障害が生じることによって起こる疾患である。虚血はその原因により、閉塞性虚血、圧迫性虚血、痙攣性虚血、代償性虚血に大別される。なお処置とは、病気の治療、病気の進行の抑制、病気の予防、および病気の発症リスクの低減を含む。
本発明の細胞シートはまた、虚血性心疾患以外の心筋症に対する効果も期待できる。心筋症とは心臓の筋肉の異常で心機能が低下する疾患である。心筋症は、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症が含まれる。
本発明の細胞シートが移植に用いられる場合、次のような効果の少なくとも一つが期待できる:
移植された細胞の流失が抑制される;
移植された細胞の免疫的拒絶が抑制される;
患部の血管新生が促進される;
幹部の血流が改善される;
患部の炎症が抑制される;
移植された細胞の残存率、生着率が上昇する;
移植された細胞の心筋への分化度が高くなる;
移植された細胞が腫瘍化する懸念が少なくなる;
移植された細胞の電気的・組織的な孤立化(不整脈)が起こりにくくなる。
上記の効果は、血管内皮前駆細胞を筋芽細胞と共培養することにより奏されると考えられる。したがって、本発明は、筋芽細胞シートと組み合わせて使用するための、血管内皮前駆細胞の使用方法を提供するものでもある。
本発明はまた、上述したような細胞シートを製造するための、キットを提供する。キットは、シートが移植される対象から末梢血を採取するために用いられる試薬、器具;末梢血から単核球画分を得るための試薬、器具;血管内皮前駆細胞を調製、培養するための試薬、器具;筋芽細胞を採取するための器具、筋芽細胞を凍結保存するための試薬、器具;血管内皮前駆細胞と筋芽細胞を共培養するための培養器材;共培養のためにシートが移植される対象から血清を採取するために用いられる器具;医療機関で採取された細胞等をシートの製造業者まで運搬するために用いる器具等のいずれかを含む。
本発明の細胞シートは、再生医療等製品とすることができる。再生医療等製品である場合、細胞シートは、医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理規則に適合した条件(good manufacturing practice、GMP)および再生医療等製品の製造管理および品質管理の基準(Good Gene, Cellular, and Tissue-based Products Manufacturing Practice、GCTP)で製造される。
[細胞の準備]
(QQ細胞)
末梢血から、常法により単核球を遠心分離により採取し、単核球を2×106 個/6-well Primaria plate (BD Falcon, Franklin Lakes, NJ) wellに播種した。培地は、5つのサイトカインであるrecombinant human vascular endothelial growth factor (rhVEGF) (50 ng/ml), rh interleukin-6 (rhIL-6) (20 ng/ml), rh Fms-related tyrosine kinase-3 ligand (rhFlt-3L) (100 ng/ml), rh thrombopoietin (rhTPO) (20 ng/ml), rh stem cell factor (rhSCF) (100 ng/ml) (all from PeproTech, Rocky Hill, NJ) と抗生剤 antibiotics cocktail (Invtrogen) をStemline II medium (Sigma, St. Lois, MO) に添加したものを用いた。7日間、37 °C、5% CO2で培養し、QQ細胞(QQCs)を得た。
(筋芽細胞)
筋芽細胞(MBCs)は市販のヒト由来のセルラインを用いた(Lonza cat# CC2580, Lot# 0000418971)。15%FBS加MCDB培地にて細胞を培養、2回ほど継代し十分な量に増やした。
[In vitroの検討]
(共培養)
プロトコールを図1に示した。
QQCsは健康ボランティアのものを用いた。50mL採血し、QQCsを培養した。培養したMBCsを0.25%のトリプシンEDTAを用いて剥離し、1x105/wellとなるように通常の6well dish(9.6 cm2/well)に播種した。翌日にQQCsを、MBCsとの細胞数がそれぞれQQCs:MBCs = 1:1、1:3、1:10となるようにwellに播種した。48時間の共培養ののち培地の上清を吸引し、QQCsを取り除いた(図1中の(1))。MBCsの培地を入れさらに3日間、通常酸素下培養および低酸素下で培養を行った。3日後に0.25%のトリプシンEDTAを用いて細胞を回収し(図1中の(2))、PCR用の試料を作成するためRNAlater (Invitrogen, cat# AM7021) に入れた。1週間後に上清を2mlに置換し、24時間後に回収し、培地中の炎症関係サイトカインの濃度をELISAで計測した。
(結果)
培養後の細胞の写真を、図2~5に示した。共培養群では通常の細胞の上などに小型の細胞が多く見られる。回収後にも残存しているQQCsと考えられる。その他の形態上の違いなどは見られない。
また、RT-PCRの結果を図6に、炎症関係サイトカインの濃度測定結果を図7に示した。抗炎症性サイトカインであるIL-10の発現上昇がみられた。
[In vivoの検討]
(細胞シートの作成)
In vivoの検討用に細胞シートを作成した。それぞれMBCs単独シートおよびQQCs共培養のシートを作成した。MBCs単独シートは、MBCsを1x104個/cm2の密度で12wellの温度応答性の培養ディッシュUpcell(登録商標)(CellSeed, cat# CS3003) に播種した。共培養シートは、これまでのin vitroの検討から最も有効であった1:1のプロトコール、すなわちMBCs播種24時間後にQQCsも同量加え、同様に、37 °C、5% CO2、48時間の共培養を行った。共培養の後、QQCsを取り除き、さらに3日間培養を行った。
(心筋梗塞マウスの作成)
8週齢の雄性のヌードマウスを用いた。マウスに挿管し人工呼吸器で呼吸管理後、右側臥位左開胸にて心臓を露出した。左冠動脈を7-0のモノフィラメント糸で結紮、心筋梗塞を作成した。作成後、左心室の虚血部位を覆うようにそれぞれの細胞シートを留置、心膜を閉じることによりシートを固定し、胸腔を閉じて手術を終了した。
(心機能の評価)
プロトコールを図8に示した。手術直後、1週間後、2週間後および4週間後に小動物用の超音波装置を用いて心機能を測定した。1および4週間後の超音波の後、マウス心臓を摘出、半数をPCR解析用に、残りの半数を組織化学用の凍結用切片とした。PCR解析用では心臓をヘパリン加PBSで還流した後にこれを摘出、RNAlaterに浸透させた。組織化学用として4%のPFAで固定の後に10,15,20%のスクロースで脱水、OCTコンパウンドに包埋し-80℃に保存し凍結切片とした。
(結果)
心機能の測定結果を、図9に示した。左室駆出率(LVEF)は心筋梗塞作成直後は、コントロール(CTL)群=28.0±1.7%、MBCs単独投与(MBCs only)群=28.7±1.3%、MBCs+QQCs混合投与(MBCs+QQCs)群=28.0±2.3%であり3群間に有意差はなかった。CTL群とMBCs群は術後1週間では直後と差はなかったが、CTL群はその後LVEFは低下傾向でありリモデリングの進行が示唆された。一方でMBCs単独群のLVEFはその後も低下はせず、4週間目で33.0±3.6%と軽度の改善傾向が見られた。MBCs+QQCs群は1週目で31.6±2.2と増加傾向が見られ、その後もMBCs単独群よりも常に高く4週間後では39.6±1.6%と直後に比べて約10%の改善効果が見られた。また4週間目における左室拡張末期径(LVDd)と左室収縮末期径(LVDs)は有意差はなかったもののMBCs+QQCs群で低値であり、リモデリングの軽減作用が示唆された。

Claims (12)

  1. 血管内皮前駆細胞を準備する工程;
    筋芽細胞を準備する工程;
    血管内皮前駆細胞とシート形成上有効量の筋芽細胞とを、血管内皮前駆細胞と筋芽細胞との細胞数比(血管内皮前駆細胞数:筋芽細胞数)が1:0.5~20となるように播種して共培養し、細胞シートを形成する工程
    を含む、細胞シートの製造方法。
  2. 共培養された血管内皮前駆細胞の少なくとも一部を取り除く工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. シート形成上有効量が、1.0×103~1.0×105個/cm2である、請求項2に記載の製造方法。
  4. 血管内皮前駆細胞が、末梢血単核球由来である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 末梢血単核球が、細胞シートが移植される対象から得たものである、請求項4に記載の製造方法。
  6. 血管内皮前駆細胞を準備する工程が、末梢血単核球を無血清培地を用いて培養する工程である、請求項4または5に記載の製造方法。
  7. 筋芽細胞が、細胞シートが移植される対象から得たものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 下記の工程を含む製造方法により得られる、血管内皮前駆細胞および筋芽細胞を含む、細胞シート:
    血管内皮前駆細胞を準備する工程;
    筋芽細胞を準備する工程;
    血管内皮前駆細胞とシート形成上有効量の筋芽細胞とを、血管内皮前駆細胞と筋芽細胞との細胞数比(血管内皮前駆細胞数:筋芽細胞数)が1:0.5~20となるように播種して共培養し、細胞シートを形成する工程。
  9. 虚血性心疾患の処置のための、請求項8に記載の細胞シート。
  10. 血管内皮前駆細胞および筋芽細胞の少なくとも一方が、細胞シートが移植される対象から得たものである、請求項8または9に記載の細胞シート。
  11. 再生医療等製品である、請求項8~10のいずれか1項に記載の細胞シート。
  12. 請求項8~11のいずれか1項に記載の細胞シートの製造における、血管内皮前駆細胞の使用。
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