しかしながら、高さ変化量が同一であっても、ピッチ角度が異なる場合がある。例えば、高さ変化量が同一であっても、後輪の車軸よりも後ろ側の位置(例えば、車両の後部トランク)に荷物が積まれている場合、当該荷物が積まれていない場合と比較して車両は後傾する。換言すれば、高さ変化量が同一であっても、車両の乗員及び車両に積まれた荷物を含む車両の積載物(以下、「車両積載物」とも称呼される。)の重心位置が異なれば、車両のピッチ角度が変化する。即ち、車両積載物の重心位置によっては、従来装置によって推定されるピッチ角度と実際のピッチ角度との差分が比較的大きくなる場合が発生する虞がある。
ところで、車両の進行方向の領域を撮影して「進行方向画像」を取得するカメラ装置を搭載する車両が知られている。この種の車両は、例えば、進行方向画像に写る物標を抽出し、抽出された物標の種別及び位置に応じて車両の速度及び/又は転舵角度を自動的に制御する運転支援機能を提供する。
そこで、本発明の目的の1つは、車両に搭載されたカメラ装置を利用してピッチ角度を精度良く取得できる前照灯制御装置を提供することである。
上記目的を達成するための前照灯制御装置(以下、「本発明装置」とも称呼される。)は、アクチュエータ、コントローラ、車高センサ、及び、カメラ装置を備える。
前記アクチュエータ(46)は、
車両(10)の前照灯(ロービームユニット31)の照射角度(θb)を変更する。
前記コントローラ(前照灯制御ECU20及び画像処理部52)は、
前記車両のピッチ角度(θp)に基づいて目標照射角度(θbtgt)を取得し且つ前記照射角度が当該目標照射角度と一致するように前記アクチュエータを制御する(図7のステップ755)。
前記車高センサ(61)は、
前記車両の前輪及び後輪の何れか一方の回転軸に対する当該車両のバネ上部材の相対変位量を「収縮長(Ca)」として検出する。
前記カメラ装置(50)は、
前記車両の進行方向にある領域を撮影することにより「進行方向画像」を取得する。
更に、前記コントローラは、
前記進行方向画像に含まれる「無限遠点(例えば、図4の点Pf)」の当該進行方向画像の上下方向における位置である「無限遠点位置(Yi)」に相関を有する「無限遠点相関値(無限遠点位置Yi及び現在ピッチ角度θn)」を取得する「無限遠点取得処理」を実行する。
加えて、前記コントローラは、
所定の「基準値取得条件」が成立しているか否かを判定する。
前記コントローラは、
前記基準値取得条件が成立していると判定されたとき、予め定められた収縮長とピッチ角度との間の関係(図5の直線Leによって表される関係)に当該検出された収縮長を適用することによって基準ピッチ角度(θstd)を取得し、且つ、その時点における前記無限遠点相関値を基準無限遠点相関値(基準無限遠点位置Ystd及び参照ピッチ角度θref)として取得する「基準値取得処理」を実行する(図7及び図10のステップ725及びステップ730、並びに、図9及び図11のステップ925及びステップ730)。
一方、前記コントローラは、
前記基準値取得条件が成立していないと判定されたとき、前記基準ピッチ角度、前記基準無限遠点相関値、及び、現時点における前記無限遠点相関値に基づいて前記ピッチ角度を取得する「ピッチ角度推定処理」を実行する(図7及び図10のステップ740、並びに、図9及び図11のステップ942)。
例えば、ピッチ角度が0°であるとき(即ち、車両が前傾も後傾もしていないとき)の無限遠点位置(画像基点)が予め取得されていれば、現時点における無限遠点位置と画像基点との差分に基づいてピッチ角度を取得できる。画像基点は、例えば、車両が製造された工場においてカメラ装置の前にターゲット物標を設置して撮影された画像、及び、カメラ装置とターゲット物標との位置関係に基づいて取得できる。
しかし、カメラ装置(即ち、車両)の前方にある決められた位置にターゲット物標を精度良く設置することが困難である場合が多いので、取得された画像起点の誤差が比較的大きくなる可能性が高い。一方、車両が走行しているときに取得された進行方向画像における無限遠点の位置を周知の方法により比較的正確に取得することが可能である。即ち、進行方向画像に基づいて無限遠点相関値を取得することが可能である。従って、本発明装置によれば、車両の前輪及び後輪の双方に車高センサを配設することなく、進行方向画像に基づいてピッチ角度を精度良く取得できる。
本発明装置の一態様(第1態様)において、
前記コントローラは、
前記検出された収縮長が所定の「基準範囲」(第1収縮長C1から第2収縮長C2までの範囲)に含まれているとき、前記基準値取得条件が成立していると判定する。
本発明装置における基準範囲は、例えば、収縮長に基づいてピッチ角度を比較的精度良く取得できる収縮長の範囲である。加えて、基準ピッチ角度及び基準無限遠点相関値は、収縮長が基準範囲に含まれているときに取得される。そのため、収縮長が基準範囲に含まれていない場合であっても、基準ピッチ角度及び基準無限遠点相関値に基づいてピッチ角度を精度良く取得することができる。
従って、第1態様によれば、車両に搭載されたカメラ装置を利用してピッチ角度を精度良く取得できる。
第1態様において、
前記コントローラは、
前記基準範囲が、前記車両の積載物が運転者のみである場合に取得される前記収縮長の最小値から最大値までの範囲に含まれるように設定されても良い(図5を参照。)。
車両積載物が運転者のみであれば、運転者の重量(即ち、体重)が変化しても車両積載物の重心位置は略同一となる。そのため、車両積載物が運転者のみであれば、収縮長センサによって検出される収縮長は略同一となる。従って、本態様によれば、収縮長に基づいて推定されるピッチ角度と実際のピッチ角度と差分が比較的小さい時点において基準ピッチ角度及び基準無限遠点相関値が取得され、その結果、ピッチ角度推定処理によってピッチ角度を精度良く取得することが可能となる。
本発明装置の他の態様(第2態様)において、
前記コントローラは、
前記検出された収縮長が「基準収縮長(Cstd)から所定の差分閾値(α)を減じて得られる値」よりも小さいとき、前記基準値取得条件が成立していると判定し、
前記基準値取得条件が成立していると判定されたとき、前記基準収縮長が前記検出された収縮長と一致するように当該基準収縮長を更新する。
車両の最初の走行開始時点(初回走行開始時点、即ち、車両が製造された後、最初に走行する時点)から基準値取得条件が最初に成立する時点までの期間においては基準値取得処理が未だ実行されていないので、基準ピッチ角度及び基準無限遠点相関値に基づくピッチ角度推定処理を実行することができない。そのため、初回走行開始時点から基準値取得条件が最初に成立する時点までの期間が短いことが望ましい。
第2態様によれば、初回走行開始時点の後、収縮長が、基準収縮長の初期値(即ち、車両の製造時に定められた、基準値取得条件が最初に成立するよりも前の時点における基準収縮長)から所定の差分閾値を減じて得られる値よりも小さくなったときに基準値取得条件が成立する。従って、本態様によれば、初回走行開始時点から基準値取得条件が最初に成立する時点までの期間を短くすることができる。
第2態様において、
前記コントローラは、
前記基準値取得処理が未だ実行されていないとき、前記基準収縮長が、「前記収縮長が検出される値の範囲の上限値(最大収縮長Cmax)に前記差分閾値を加えた値」よりも大きな値(収縮長初期値Ci)に設定されていても良い。
この態様によれば、初回走行開始時点から基準値取得条件が最初に成立する時点までの期間をより確実に短くすることができる。
本発明装置の他の態様(第3態様)において、
前記コントローラは、
前記ピッチ角度推定処理において、
現時点における前記ピッチ角度の正接と前記基準ピッチ角度の正接との差分(tan(θp)-tan(θstd))が、前記基準無限遠点相関値と現時点における前記無限遠点相関値との差分(Ystd-Yi)に比例するとの関係に基づいて当該ピッチ角度を取得する(式(13)を参照。)。
無限遠点相関値は、例えば、「ピクセルの集合である進行方向画像」における「無限遠点に対応するピクセル」の上下方向の位置(ピクセル位置)である。このピクセル位置は、ピッチ角度の変化(具体的には、ピッチ角度の正接)に応じて変化する。従って、第3態様によれば、三角関数を用いた周知の演算方法によりピッチ角度を精度良く取得することが可能となる。
本発明装置の他の態様(第4態様)において、
前記コントローラは、
前記ピッチ角度推定処理において、
現時点における前記ピッチ角度と前記基準ピッチ角度との差分(ピッチ角度差分、θp-θstd)が、前記基準無限遠点相関値と現時点における前記無限遠点相関値との差分(相関値差分、Ystd-Yi)に比例するとの関係に基づいて当該ピッチ角度を取得する(式(4)を参照。)。
車両積載物の重量及び重心位置の変化に応じてピッチ角度が変化する。しかし、一般に、車両のピッチ角度の大きさは過大とはならない。そのため、ピッチ角度差分が相関値差分と比例するようにピッチ角度を取得することに起因するピッチ角度の取得誤差は比較的小さい。この場合における比例定数は、例えば、カメラ装置の上下方向における撮影範囲(画角)を表す画角角度(θa)を「進行方向画像を構成するピクセルの上下方向の数(縦解像度Yd)」により除して得られる値である。従って、第4態様によれば、ピッチ角度を簡易な処理により比較的精度良く取得することが可能となる。
本発明装置の他の態様(第5態様)において、
前記コントローラは、
前記無限遠点取得処理において、
前記ピッチ角度が所定の「特定角度(0°)」であるときに取得された前記無限遠点位置である「特定無限遠点位置(画像基点Yo)」と、現時点における前記無限遠点位置と、の差分(Yo-Yi)に比例する値を前記無限遠点相関値(現在ピッチ角度θn)として取得し、
前記基準値取得処理において、
前記無限遠点相関値と前記基準無限遠点相関値(参照ピッチ角度θref)との差分(変位ピッチ角度θfoe)に前記基準ピッチ角度を加えた値を前記ピッチ角度として取得する(式(9)を参照。)。
特定角度は、例えば、0°(即ち、車両が前傾も後傾もしていない状態)である。特定無限遠点位置は、例えば、車両が停止しているときに取得された進行方向画像に基づいて取得される。上述したように、車両が停止しているときに取得された進行方向画像における無限遠点の位置を正確に取得することは困難である場合が多い。
一方、第5態様において、基準無限遠点相関値と現時点における無限遠点相関値との差分における特定無限遠点位置の寄与は相殺されている。従って、第5態様によれば、特定無限遠点位置を正確に取得することが困難であっても、ピッチ角度を精度良く取得することが可能である。
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述される実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る前照灯制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼される。)について説明する。第1制御装置は、図1に示される車両10に適用される。第1制御装置のブロック図である図2から理解されるように、第1制御装置は、電子制御ユニット(Electronic Control Unit)である前照灯制御ECU20を含んでいる。以下、前照灯制御ECU20は、単に、ECU20とも称呼される。
ECU20は、CPU25、ROM26、RAM27及び不揮発性メモリ28を備えたマイクロコンピュータを主要素として含んでいる。CPU25は、所定のプログラム(ルーチン)を逐次実行することによってデータの読み込み、数値演算、及び、演算結果の出力等を行う。ROM26は、CPU25が実行するプログラム及びプログラムの実行時に参照されるルックアップテーブル(マップ)等を記憶する。RAM27は、CPU25によって参照されるデータを一時的に記憶する。不揮発性メモリ28は、データの書き換え可能なフラッシュメモリにより構成され、車両10に固有のデータ(例えば、後述される基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstd)を記憶する。
ECU20は、前照灯30、カメラ装置50、車高センサ61及びディマースイッチ62と接続されている。
前照灯30は、ロービームユニット31及びハイビームユニット32を含んでいる。ロービームユニット31は、左ロービームユニット31a及び右ロービームユニット31bを含んでいる。
ロービームユニット31(即ち、左ロービームユニット31a及び右ロービームユニット31b)の縦方向(上下方向)における照射範囲は、図1の直線Lb1と直線Lb2との間の範囲である。図1における破線Lbaは、直線Lb1及び直線Lb2のなす角度の二等分線である。
後述されるオートレベリング処理によって、破線Lbaによって表されるロービームユニット31の照射方向は車両10のピッチ角度θpに応じて変更される。より具体的に述べると、ピッチ角度θpは、車両10が備える4つの車輪の接地点を含む平面に対して平行であり且つ車両10の前後方向に延びる「対地水平線」と、車両10の車体(バネ上部材)に対して平行であり且つ車両10の前後方向に延びる「車体水平線」のなす角度である。
図1において、水平線Lh1は対地水平線であり、水平線Lh2は車体水平線である。車体水平線と破線Lbaとのなす角度は、照射角度θbとも称呼される。オートレベリング処理は、破線Lba(即ち、ロービームユニット31の照射方向)と、対地水平線と、のなす角度が所定の防眩角度θhと一致するように照射角度θbを制御する処理である。
ピッチ角度θpは、車両10(具体的には、バネ上部材)が前傾又は後傾している程度を表す角度である。車両10が前傾も後傾もしていないとき、ピッチ角度θpは「0」となる。従って、ピッチ角度θpが「0」であるとき、車体水平線は対地水平線に対して平行となる。
車両10が後傾しているときにピッチ角度θpは正の値となり(即ち、θp>0)、車両10が前傾しているときにピッチ角度θpは負の値となる(即ち、θp<0)。図1において水平線Lh1と水平線Lh2とは互いに平行であり、よって、ピッチ角度θpは「0」である。
左ロービームユニット31aの構造が図3に示される。なお、右ロービームユニット31bの構造は、左ロービームユニット31aの構造と同一であるので、図示が省略される。左ロービームユニット31aは、バルブ41、反射鏡42、上方ロッド43、下方ロッド44、ユニットケース45、及び、アクチュエータ46を含んでいる。バルブ41は、反射鏡42に固定されている。反射鏡42は、上方ロッド43及び下方ロッド44を介してユニットケース45に支持されている。反射鏡42の上部は上方ロッド43の前端部に回転可能に支持され、反射鏡42の下部は下方ロッド44の前端部に回転可能に支持されている。ユニットケース45は車体に固定されている。
下方ロッド44は、アクチュエータ46の作動によって長さが変化し(車体の前後方向において軸方向に進退し)、以て、反射鏡42が車両10の上下方向に揺動する。具体的には、下方ロッド44が伸長すると(即ち、その前端が前方に移動すると)、照射角度θbが減少し、左ロービームユニット31aによって照射される領域が上方に移動する。下方ロッド44が収縮すると(即ち、その前端が後方に移動すると)、照射角度θbが増加し、左ロービームユニット31aによって照射される領域が下方に移動する。後述されるように、ECU20は、アクチュエータ46を制御し、以て、照射角度θbを制御する。
カメラ装置50は、図1に示されるように、車両10のフロントガラスの車室内上部に配置されたルームミラー(不図示)近傍に配設されている。図2に示されるように、カメラ装置50は、撮像部51及び画像処理部52を含んでいる。撮像部51は、所定の時間間隔Δtが経過する毎に車両10の前方にある領域を撮影した「前方画像」を取得し、前方画像を表す情報(即ち、静止画像データ)を画像処理部52へ出力する。
撮像部51の縦方向(上下方向)における撮影範囲(画角)は、図1の直線Lc1と直線Lc2との間の範囲である。直線Lc1及び直線Lc2のなす角度は画角角度θaである。前方画像の縦方向(上下方向)の解像度(即ち、前方画像を構成するピクセルの縦方向の数)は縦解像度Ydである。前方画像は、便宜上、「進行方向画像」とも称呼される。
画像処理部52は、撮像部51によって最後に取得された前方画像(最新画像)と、最新画像の直前に取得された前方画像(前回画像、即ち、最新画像よりも時間間隔Δtだけ以前に取得された画像)と、に基づいて多数のオプティカルフローベクトル(以下、単に「フローベクトル」とも称呼される。)を取得する。
より具体的に述べると、画像処理部52は、前回画像を所定の大きさの矩形に分割し(即ち、前回画像を矩形の集合として扱い)、矩形のそれぞれが最新画像においてどの位置に現れるかを探索する。探索に成功すると、前回画像における当該矩形の位置(移動元)を始点とし、最新画像における当該矩形の位置(移動先)を終点とするフローベクトルが取得される。即ち、画像処理部52は、所謂ブロックマッチング手法によりフローベクトルを取得する。
フローベクトルが取得されると、画像処理部52は、前方画像における無限遠点(FOE)の縦方向の位置を表す無限遠点位置Yiを取得する(図1を参照。)。無限遠点は、前方画像における平坦路を走行する車両10の直進方向を表す点である。無限遠点位置Yiは、無限遠点に対応するピクセルの位置によって表される。無限遠点が前方画像の下端にあるとき、無限遠点位置Yiは「1」となる。無限遠点が前方画像の上端にあるとき、無限遠点位置Yiは縦解像度Ydと等しくなる。
無限遠点位置Yiは、便宜上、「無限遠点相関値」とも称呼される。無限遠点位置Yiを取得する処理は、便宜上、「無限遠点取得処理」とも称呼される。
無限遠点の取得方法について説明する。図4に車両10が直進しているときに取得された前方画像の例である画像71が示される。図4における点Pfは無限遠点を示している。画像71における矢印のそれぞれは、フローベクトルを表している。画像71には他車両72が含まれている。他車両72は、車両10が走行している車線(自車線)に対向する車線(即ち、対向車線)を走行している。
画像71において、他車両72以外の「画像71に含まれる物標」は静止している。図4から理解されるように、「始点が他車両72に含まれていないフローベクトル(即ち、始点が静止している物標に含まれているフローベクトル)」の始点と終点とを通る直線は点Pfを通る。一般に、前方画像に含まれる物標の多くは静止しているので、取得されたフローベクトルのそれぞれの始点と終点とを通る直線(ベクトル延長線)の多くは点Pfを通る。
そこで、画像処理部52は、複数のベクトル延長線が通過する点(即ち、ベクトル延長線が互いに交差する点)であって最も多くのベクトル延長線が通過する点を無限遠点として取得する。画像処理部52は、取得された無限遠点位置Yiを時間間隔Δtが経過する毎にECU20へ出力する。
なお、車両10は、ECU20に加え、前方画像に含まれる種々の物標(例えば、車両10以外の他車両、歩行者、及び、自車線の位置)を抽出し、抽出された物標の位置に基づいて車両10の運転者を支援する「運転支援機能」を提供するECU(運転支援ECU)を搭載している。ただし、運転支援機能及び運転支援ECUの作動に関する説明は、本明細書において省略される。
車高センサ61は、車両10の助手席側にある後輪のサスペンション装置に配設されている(図1を参照。)。具体的には、車両10は右ハンドル車であるので、車高センサ61は左後輪のサスペンション装置に配設されている。車高センサ61は、左後輪の回転軸に対する車両10のバネ上部材の相対変位量(即ち、車両10の車体における「左後輪のサスペンション装置」の取付け部と、左後輪の回転軸と、の距離の基準長さに対する変位量)を収縮長Caとして検出し、収縮長Caを表す信号をECU20へ出力する。車両10の乗員及び車両10に積まれた荷物を含む車両10の積載物(即ち、車両積載物)の重心位置が変化しなければ、車両積載物の重量が増加するほど収縮長Caが大きくなる。
ディマースイッチ62は、運転者による前照灯30の点灯状態を選択するための操作に用いられる。運転者は、ディマースイッチ62の操作状態を「オフ位置」、「ロービーム位置」及び「ハイビーム位置」の間で切り替えることができる。
ディマースイッチ62の操作状態がロービーム位置であるとき、ECU20は、ロービームユニット31(即ち、左ロービームユニット31a及び右ロービームユニット31b)を点灯させる。ディマースイッチ62の操作状態がハイビーム位置であるとき、ECU20は、ロービームユニット31及びハイビームユニット32を点灯させる。
(オートレベリング処理)
ECU20は、ピッチ角度θpが変化した場合であっても、ロービームユニット31の照射方向(即ち、破線Lba)と、対地水平線と、の角度を防眩角度θhに保つ「オートレベリング処理」を実行する。即ち、ECU20は、ピッチ角度θpを取得し、取得されたピッチ角度θpに基づいて下式(1)の関係が成立するように照射角度θbを制御する。具体的には、ECU20は、取得されたピッチ角度θpを下式(1a)に代入することによって目標照射角度θbtgtを取得(算出)し、実際の照射角度θbが目標照射角度θbtgtと等しくなるようにアクチュエータ46を制御する。
θb=θh+θp……(1)
θbtgt=θh+θp……(1a)
ピッチ角度θpの取得方法について説明する。後述される基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdが未だ取得されていないとき、ECU20は、図5における直線Leによって表される「収縮長Caと推定ピッチ角度θeとの関係」に収縮長Caを適用することによって推定ピッチ角度θeを取得する。直線Leによって表される収縮長Caと推定ピッチ角度θeとの関係は、マップ(ルックアップテーブル)の形式にてROM26に記憶されている。
この場合、ECU20は、取得された推定ピッチ角度θeをピッチ角度θpとして式(1a)に代入し、目標照射角度θbtgtを算出する。加えて、ECU20は、実際の照射角度θbが目標照射角度θbtgtと一致するようにアクチュエータ46を制御する。なお、ECU20は、アクチュエータ46の駆動量と照射角度θbとの関係を予めROM26に記憶しており、照射角度θbが目標照射角度θbtgtと一致するために必要なアクチュエータ46の駆動量をその関係に基づいて算出し、その算出した駆動量にてアクチュエータ46を駆動する。
図5の直線Leは、点Pa1を通り、且つ、点Pa2乃至点Pa5のそれぞれと直線Leとの距離の和が最小となるように(即ち、最小二乗法により)取得された直線である。点Pa1は、車両10の運転席にのみ乗員(具体的には、所定の標準重量の乗員)が着座している場合(即ち、車両10に運転者のみが乗車している場合)における収縮長Caとピッチ角度θpとの関係を表している。点Pa2は、運転席及び助手席に乗員が着座している場合における収縮長Caとピッチ角度θpとの関係を表している。
点Pa3は、車両10の全ての座席に乗員が着座している場合における収縮長Caとピッチ角度θpとの関係を表している。点Pa4は、全ての座席に乗員が着座しており且つ車両10の後部トランクに所定重量の荷物が積まれている場合における収縮長Caとピッチ角度θpとの関係を表している。点Pa5は、運転席にのみ乗員が着座しており且つ後部トランクに所定重量の荷物が積まれている場合における収縮長Caとピッチ角度θpとの関係を表している。
点Pa1乃至点Pa5から理解されるように、収縮長Caとピッチ角度θpとは単調増加の関係ではない。換言すれば、収縮長Caが同一であっても車両積載物の重心位置に応じてピッチ角度θpが異なる。従って、車両積載物の重心位置の如何によっては直線Leによって表される「収縮長Ca及び推定ピッチ角度θeの関係」に収縮長Caを適用することによって取得される推定ピッチ角度θeと、実際のピッチ角度θpと、の差分の大きさが比較的大きくなる可能性がある。
そこで、ECU20は、ピッチ角度θpと無限遠点位置Yiとが単調減少の関係にあることを利用して、無限遠点位置Yiに基づいてピッチ角度θpを取得する。ピッチ角度θpと無限遠点位置Yiと間の関係について具体的に述べると、ピッチ角度θpが増加すると(即ち、車両10が後傾すると)、無限遠点位置Yiが減少する(即ち、前方画像上の無限遠点が下に移動する)。ピッチ角度θpが減少すると(即ち、車両10が前傾すると)、無限遠点位置Yiは増加する(即ち、前方画像上の無限遠点が上に移動する)。
ピッチ角度θpが「0」であるとき、無限遠点位置Yiは、画像基点Yoとなる。画像基点Yoは、図1における前方画像の投射平面を表す線分Lp上の点として示される。換言すれば、ピッチ角度θpが「0」であるとき、カメラ装置50(具体的には、撮像部51)を通る車体水平線である水平線Lh2と、線分Lpと、の交点(基点交点)が画像基点Yoである。即ち、線分Lpの長さを縦解像度Ydと見做せば、線分Lpの下端から基点交点までの長さが画像基点Yoに相当する。
「0」であるピッチ角度θpは、便宜上、「特定角度」とも称呼される。画像基点Yoは、便宜上、「特定無限遠点位置」とも称呼される。
ピッチ角度θpの大きさ|θp|が比較的小さいとき、ピッチ角度θpと無限遠点位置Yiとの間には概ね下式(2)の関係が成立する。
θp=θa×(Yo-Yi)/Yd……(2)
画像基点Yoは、予め取得しておくことが可能である。例えば、車両10が製造されたとき、或いは、カメラ装置50が交換されたとき、車両10の前方にある所定の位置に「ターゲット物標」を設置し、ピッチ角度θpが「0」であるときに取得されたターゲット物標が写る前方画像に基づいて画像基点Yoを取得することができる。しかし、多くの場合、画像基点Yoを取得するために車両10を所定の位置に所定の方向にて停止させ且つターゲット物標を所定の位置に設置する作業を精度良く行うことは困難であるため、画像基点Yoを精度良く取得することは困難である。
一方、上述したように多くの場合において前方画像には多くの静止物標が含まれているので、車両10の走行中に取得された前方画像に基づいて無限遠点位置Yiを精度良く取得することができる。そこで、ECU20は、画像基点Yoに依らず、無限遠点位置Yiに基づいてピッチ角度θpを取得する。
より具体的に述べると、ECU20は、ピッチ角度θpである基準ピッチ角度θstdと、ピッチ角度θpが基準ピッチ角度θstdであるときの無限遠点位置Yiである基準無限遠点位置Ystdと、に基づいてピッチ角度θpを取得する。基準無限遠点位置Ystdは、便宜上、「基準無限遠点相関値」とも称呼される。式(2)に基準ピッチ角度θstd及び基準無限遠点位置Ystdを代入することにより下式(3)が得られる。
θstd=θa×(Yo-Ystd)/Yd……(3)
ピッチ角度θpが基準ピッチ角度θstdである状況における車両10が図6(A)に示される。図6(A)における対地水平線である水平線Lh3と、車体水平線である直線Lf1と、のなす角度が、基準ピッチ角度θstd(即ち、この場合におけるピッチ角度θp)である。本例において、車両10は前傾しており、そのため、ピッチ角度θpが負の値になっている。
更に、式(2)から式(3)を引くことにより(即ち、画像基点Yoを消去することにより)下式(4)が得られる。
θp-θstd=θa×(Ystd-Yi)/Yd……(4)
ピッチ角度θpが基準ピッチ角度θstdとは異なっている状況における車両10が図6(B)に示される。図6(B)における対地水平線である水平線Lh4と、車体水平線である直線Lf2と、のなす角度が本例におけるピッチ角度θpである。図6(B)における直線Lst1は、直線Lf2とのなす角度が基準ピッチ角度θstdである直線である。本例において、車両10は後傾しており、そのため、ピッチ角度θpが正の値になっている。
図6(B)から理解されるように、式(4)は、水平線Lh4と直線Lst1とのなす角度である(θp-θstd)と、基準無限遠点位置Ystdと無限遠点位置Yiとの差分である(Ystd-Yi)と、の関係を表している。
式(4)から下式(5)が得られる。
θp=θa×(Ystd-Yi)/Yd+θstd……(5)
従って、式(5)によれば、画像基点Yoを精度良く取得できない場合であっても、無限遠点位置Yiに基づいてピッチ角度θpを取得することができる。
次に、基準ピッチ角度θstd及び基準無限遠点位置Ystdの取得方法について説明する。車両積載物が運転者のみであるとき(即ち、車両10の運転席にのみ乗員が存在しており且つ車両10に荷物が積まれていないとき)、運転者の体重に拘わらず収縮長Caは略同一の値となる。換言すれば、運転者が交代した結果として運転者の体重が変化しても収縮長Caの変化量が小さく且つ車両積載物の重心位置は略同一である。
そこで、ECU20は、車両積載物が運転者のみであるときの推定ピッチ角度θe及び無限遠点位置Yiの組合せを、基準ピッチ角度θstd及び基準無限遠点位置Ystdの組合せとして取得する。
具体的には、ECU20は、車両積載物が運転者のみである場合における収縮長Caを直線Leによって表される「収縮長Ca及び推定ピッチ角度θeの関係」に適用して得られた推定ピッチ角度θeを基準ピッチ角度θstdとして不揮発性メモリ28に記憶する。加えて、ECU20は、この場合における無限遠点位置Yiを基準無限遠点位置Ystdとして不揮発性メモリ28に記憶する。
なお、車両10が製造された時点において、基準ピッチ角度θstd及び基準無限遠点位置Ystdは不揮発性メモリ28に記憶されていない。加えて、カメラ装置50が交換又は修理されたとき、基準ピッチ角度θstd及び基準無限遠点位置Ystdは、不揮発性メモリ28から消去される。
ECU20は、収縮長Caが所定の第1収縮長C1よりも大きく且つ第2収縮長C2よりも小さいとき(C1<Ca<C2)、車両積載物が運転者のみであると判定する。収縮長Caの第1収縮長C1から第2収縮長C2までの範囲は、便宜上、「基準範囲」とも称呼される。収縮長Caが基準範囲に含まれているときに成立する条件は、便宜上、「基準値取得条件」とも称呼される。
(具体的作動)
次に、オートレベリング処理に係るECU20の具体的作動について説明する。ECU20のCPU25(以下、単に「CPU」とも称呼される。)は、図7にフローチャートにより表された「オートレベリング処理ルーチン」を時間間隔Δtよりも小さい所定の時間が経過する毎に実行する。
従って、適当なタイミングとなると、CPUは、図7のステップ700から処理を開始してステップ705に進み、無限遠点位置Yiを新たに受信しているか否かを判定する。即ち、CPUは、本ルーチンが前回実行されたときから現時点までの期間においてカメラ装置50から無限遠点位置Yiを受信しているか否かを判定する。
CPUは、無限遠点位置Yiを新たに受信していなければ、ステップ705にて「No」と判定してステップ795に直接進み、本ルーチンの処理を終了する。
一方、CPUは、無限遠点位置Yiを新たに受信していれば、ステップ705にて「Yes」と判定してステップ710に進み、車高センサ61によって検出された収縮長Caを取得する。次いで、CPUは、ステップ715に進み、収縮長Caを図5の直線Leによって表される「収縮長Caと推定ピッチ角度θeとの関係」に適用することによって推定ピッチ角度θeを取得する。
更に、CPUは、ステップ720に進み、収縮長Caが第1収縮長C1から第2収縮長C2までの範囲に含まれるか否か(即ち、収縮長Caが基準範囲に含まれるか否か)を判定する。
収縮長Caが第1収縮長C1から第2収縮長C2までの範囲に含まれていれば、CPUは、ステップ720にて「Yes」と判定してステップ725に進み、無限遠点位置Yiを基準無限遠点位置Ystdとして不揮発性メモリ28に記憶する。次いで、CPUは、ステップ730に進み、推定ピッチ角度θeを基準ピッチ角度θstdとして不揮発性メモリ28に記憶する。基準ピッチ角度θstd及び基準無限遠点位置Ystd(即ち、基準無限遠点相関値)を取得する処理は、便宜上、「基準値取得処理」とも称呼される。更に、CPUは、ステップ735に進む。
一方、収縮長Caが第1収縮長C1から第2収縮長C2までの範囲に含まれていなければ、CPUは、ステップ720にて「No」と判定してステップ735に直接進む。
ステップ735にてCPUは、基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdが取得されているか否かを判定する。即ち、CPUは、基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdが不揮発性メモリ28に記憶されているか否かを判定する。
基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdが取得されていれば、CPUは、ステップ735にて「Yes」と判定してステップ740に進み、基準無限遠点位置Ystd、基準ピッチ角度θstd及び無限遠点位置Yiに基づいてピッチ角度θpを取得する。具体的には、CPUは、基準無限遠点位置Ystd、基準ピッチ角度θstd及び無限遠点位置Yiを上述した式(5)に代入することによってピッチ角度θpを取得(算出)する。基準無限遠点位置Ystd、基準ピッチ角度θstd及び無限遠点位置Yiに基づいてピッチ角度θpを取得する処理は、便宜上、「ピッチ角度推定処理」とも称呼される。次いで、CPUは、ステップ750に進む。
一方、基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdが取得されていなければ、CPUは、ステップ735にて「No」と判定してステップ745に進み、ピッチ角度θpを推定ピッチ角度θeに等しい値として取得する。次いで、CPUは、ステップ750に進む。
ステップ750にてCPUは、ロービームユニット31が点灯しているか否かを判定する。即ち、CPUは、ディマースイッチ62の操作状態がロービーム位置及びハイビーム位置の何れかであるか否かを判定する。
ロービームユニット31が点灯していれば、CPUは、ステップ750にて「Yes」と判定してステップ755に進み、照射角度θbを制御する。より具体的に述べると、CPUは、ピッチ角度θpを上記式(1a)に代入することによって目標照射角度θbtgtを取得(算出)する。加えて、CPUは、実際の照射角度θbが目標照射角度θbtgtと一致するようにアクチュエータ46を制御する。次いで、CPUは、ステップ795に進む。
一方、ロービームユニット31が点灯していなければ、CPUは、ステップ750にて「No」と判定してステップ795に直接進む。
(第1実施形態の第1変形例)
次に、本発明の第1実施形態の第1変形例に係る前照灯制御装置(以下、「第1変形装置」とも称呼される。)について説明する。上述した第1制御装置は、収縮長Caが基準範囲に含まれているときに取得された基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdに基づいてピッチ角度θpを取得していた。これに対し、第1変形装置は、収縮長Caが基準範囲に含まれているときに取得された基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θrefに基づいてピッチ角度θpを取得する。以下、この相違点を中心に説明する。
第1変形装置に係る前照灯制御ECU21(以下、単に、ECU21とも称呼される。)は、収縮長Caが基準範囲に含まれているとき(即ち、車両積載物が運転者のみであると判定されたとき)、基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θrefを取得して不揮発性メモリ28に記憶しておく。参照ピッチ角度θrefは、便宜上、「基準無限遠点相関値」とも称呼される。収縮長Caが基準範囲に含まれていないとき、ECU21は、基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θrefに基づいてピッチ角度θpを取得する。
図8を参照しながら具体的に説明する。収縮長Caが基準範囲に含まれているとき、ECU21は、無限遠点位置Yi及び予め取得され且つ不揮発性メモリ28に記憶されている画像基点Yoを下式(6)に代入することによって現在ピッチ角度θnを算出する。現在ピッチ角度θnは、便宜上、「無限遠点相関値」とも称呼される。式(6)は上述した式(2)と同様の関係を表している。
θn=θa×(Yo-Yi)/Yd……(6)
加えて、ECU21は、現在ピッチ角度θnを参照ピッチ角度θrefとして取得する。この場合における無限遠点位置Yiを基準無限遠点位置Ystdとして扱えば、下式(7)の関係が成立する。
θref=θa×(Yo-Ystd)/Yd……(7)
更に、ECU21は、直線Leによって表される「収縮長Ca及び推定ピッチ角度θeの関係」に収縮長Caを適用することによって推定ピッチ角度θeを取得する。加えて、ECU21は、推定ピッチ角度θeを基準ピッチ角度θstdとして取得する。
図8は、基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θrefが取得された後であって収縮長Caが基準範囲に含まれていない場合の例を示している。図8における対地水平線である水平線Lh5と、車体水平線である直線Lf3と、のなす角度が本例におけるピッチ角度θpである。図8における直線Lst2は、直線Lf3とのなす角度が基準ピッチ角度θstdである直線である。本例において、車両10は後傾しており、そのため、ピッチ角度θpが正の値になっている。
収縮長Caが基準範囲に含まれていないとき、ECU21は、式(6)に基づいて現在ピッチ角度θnを算出し、その現在ピッチ角度θnを下式(8)に代入することによって変位ピッチ角度θfoeを算出する。変位ピッチ角度θfoeは、水平線Lh5と直線Lf3とのなす角度を表している。換言すれば、変位ピッチ角度θfoeは上述した基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θrefが取得された時点におけるピッチ角度θpと、現時点におけるピッチ角度θpと、の差分に相当する。
θfoe=θn-θref……(8)
加えて、ECU21は、下式(9)に基づいてピッチ角度θpを取得(算出)する。
θp=θfoe+θstd……(9)
ここで、変位ピッチ角度θfoeを用いてピッチ角度θpを取得する理由について説明する。式(6)乃至式(9)から下式(10)が得られる。
θp=(θn-θref)+θstd
={θa×(Yo-Yi)/Yd-θa×(Yo-Yref)/Yd}
+θstd……(10)
車両積載物が運転者のみであると判定されたときに取得された基準ピッチ角度θstdは、その時点における実際のピッチ角度θpとの差分の大きさが小さい可能性が高い。一方、基準ピッチ角度θstdと同じタイミングにて取得された参照ピッチ角度θrefは、画像基点Yoに基づいて算出されているため、その時点における実際のピッチ角度θpとの差分の大きさが比較的大きい可能性がある。
更に、現時点において取得された現在ピッチ角度θnは、参照ピッチ角度θrefと同様に画像基点Yoに基づいて算出されているため、現時点における実際のピッチ角度θpとの差分の大きさが比較的大きい可能性がある。しかし、変位ピッチ角度θfoeは、現時点における現在ピッチ角度θnと参照ピッチ角度θrefとの差分として取得されているため画像基点Yoの取得精度に起因する誤差が相殺されている。
換言すれば、変位ピッチ角度θfoeは、現時点におけるピッチ角度θpと、基準ピッチ角度θstdと、の差分を精度良く表している。従って、第1変形装置によれば、画像基点Yoが精度良く取得されていない場合であっても、式(9)に基づいて現時点におけるピッチ角度θpを精度良く取得することができる。
(具体的作動)
次に、オートレベリング処理に係るECU21の具体的作動について説明する。ECU21のCPU25(以下、単に「CPU」とも称呼される。)は、図9にフローチャートにより表された「オートレベリング処理ルーチン」を時間間隔Δtよりも小さい所定の時間が経過する毎に実行する。
なお、図9のフローチャートに示されたステップであって図7のフローチャートに示されたステップと同様の処理が実行されるステップには図7と同一のステップ符号が付されている。
適当なタイミングとなると、CPUは、図9のステップ900から処理を開始してステップ705に進む。CPUは、ステップ715の処理を実行すると、ステップ917に進み、上記式(6)に基づいて(即ち、画像基点Yo及び無限遠点位置Yiに基づいて)現在ピッチ角度θnを算出する。次いで、CPUは、ステップ720に進む。
CPUは、ステップ720にて「Yes」と判定すると(即ち、収縮長Caが基準範囲に含まれていれば)、ステップ925に進み、現在ピッチ角度θnを参照ピッチ角度θrefとして不揮発性メモリ28に記憶する。次いで、CPUは、ステップ730に進み、推定ピッチ角度θeを基準ピッチ角度θstdとして不揮発性メモリ28に記憶する。基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θref(即ち、基準無限遠点相関値)を取得する処理は、便宜上、「基準値取得処理」とも称呼される。更に、CPUは、ステップ935に進む。
一方、CPUは、ステップ720にて「No」と判定すると、ステップ935に直接進む。
ステップ935にてCPUは、基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θrefが取得されているか否かを判定する。即ち、CPUは、基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θrefが不揮発性メモリ28に記憶されているか否かを判定する。
基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θrefが取得されていれば、CPUは、ステップ935にて「Yes」と判定してステップ940に進み、上記式(8)に基づいて変位ピッチ角度θfoeを取得する。次いで、CPUは、ステップ942に進み、上記式(9)に基づいてピッチ角度θpを取得する。参照ピッチ角度θref、基準ピッチ角度θstd及び現在ピッチ角度θnに基づいてピッチ角度θpを取得する処理は、便宜上、「ピッチ角度推定処理」とも称呼される。更に、CPUは、ステップ750に進む。
一方、基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θrefが取得されていなければ、CPUは、ステップ935にて「No」と判定してステップ745に進む。
(第1実施形態の第2変形例)
次に、本発明の第1実施形態の第2変形例に係る前照灯制御装置(以下、「第2変形装置」とも称呼される。)について説明する。上述した第1制御装置は、上述した式(5)に基づいてピッチ角度θpを取得していた。これに対し、第2変形装置は、下式(14)に基づいてピッチ角度θpを取得する点のみにおいて相違する。従って、以下、この相違点を中心に説明する。
図6(B)における、水平線Lh4、直線Lf2及び線分Lpによって画定される直角三角形(水平線Lh4と線分Lpとのなす角度が直角である。)から理解されるように、ピッチ角度θp、画像基点Yo及び無限遠点位置Yiの間には下式(11)の関係が成立する。式(11)において、Kは正の定数である。
tan(θp)=K×(Yo-Yi)……(11)
式(11)に基準ピッチ角度θstd及び基準無限遠点位置Ystdを代入することによって下式(12)が得られる。
tan(θstd)=K×(Yo-Ystd)……(12)
更に、式(11)から式(12)を引くことにより(即ち、画像基点Yoを消去することにより)下式(13)が得られる。従って、下式(14)に基づいて、ピッチ角度θpを取得することができる。より具体的に述べると、第2変形装置に係る前照灯制御ECU22は、図7のステップ740の処理を実行するとき、基準無限遠点位置Ystd、基準ピッチ角度θstd及び無限遠点位置Yiを式(14)に代入することによってピッチ角度θpを取得(算出)する。
tan(θp)-tan(θstd)=K×(Ystd-Yi)……(13)
tan(θp)=K×(Ystd-Yi)+tan(θstd)……(14)
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1制御装置は、収縮長Caが基準範囲に含まれているとき、基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdを取得していた。一方、第2実施形態に係る前照灯制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼される。)は、収縮長Caが「基準収縮長Cstdから所定の差分閾値α(正の定数)を減じて得られる値」よりも小さいとき(即ち、Ca<Cstd-α)、基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdを取得する。以下、この相違点を中心に説明する。
基準収縮長Cstdは、基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdが取得されたときの収縮長Caである。換言すれば、収縮長Caが「基準収縮長Cstdから差分閾値αを減じて得られる値」よりも小さくなる毎に基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdが新たに取得(更新)され、且つ、その時点における収縮長Caが基準収縮長Cstdとして新たに取得(更新)される。収縮長Caが「基準収縮長Cstdから差分閾値αを減じて得られる値」よりも小さいときに成立する条件は、便宜上、「基準値取得条件」とも称呼される。
車両10が製造された時点において不揮発性メモリ28に記憶される基準収縮長Cstdは、所定の収縮長初期値Ciに等しい。収縮長初期値Ciは、「最大収縮長Cmaxに差分閾値αを加えた値」よりも大きな値である(即ち、Cmax+α<Ci)。最大収縮長Cmaxは、車高センサ61によって検出される収縮長Caの範囲の上限値に略等しい値である(図5を参照。)。なお、カメラ装置50が交換又は修理されたとき、基準収縮長Cstdは、収縮長初期値Ciに設定される。
車両10が製造された後、最初に走行しているときに取得される収縮長Caは、「収縮長初期値Ciから差分閾値αを減じて得られる値」よりも小さいので、基準値取得条件が成立する。そのため、このとき、収縮長Caが基準収縮長Cstdとして取得(記憶)され、且つ、基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdが取得される。その後、収縮長Caが「基準収縮長Cstdから差分閾値αを減じて得られる値」よりも小さくなると、基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdが新たに取得される。
差分閾値αは、例えば、乗員の数が減少した場合における収縮長Caの変化量と比較して小さな値に設定され、且つ、車両積載物が変化していないにも拘わらず車両10の走行中に基準値取得条件が繰り返し成立しないように予め定められている。
(具体的作動)
第2制御装置に係る前照灯制御ECU23(以下、単に、ECU23とも称呼される。)の具体的作動について説明する。ECU23のCPU25(以下、単に「CPU」とも称呼される。)は、図10にフローチャートにより表された「オートレベリング処理ルーチン」を時間間隔Δtよりも小さい所定の時間が経過する毎に実行する。
なお、図10のフローチャートに示されたステップであって図7のフローチャートに示されたステップと同様の処理が実行されるステップには図7と同一のステップ符号が付されている。
適当なタイミングとなると、CPUは、図10のステップ1000から処理を開始してステップ705に進む。CPUは、ステップ715の処理を実行すると、ステップ1020に進み、収縮長Caが「基準収縮長Cstdから差分閾値αを減じて得られる値」よりも小さいか否かを判定する。
収縮長Caが「基準収縮長Cstdから差分閾値αを減じて得られる値」よりも小さければ、CPUは、ステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1022に進み、収縮長Caを基準収縮長Cstdとして不揮発性メモリ28に記憶する。次いで、CPUは、ステップ725に進む。
一方、収縮長Caが「基準収縮長Cstdから差分閾値αを減じて得られる値」以上であれば、CPUは、ステップ1020にて「No」と判定してステップ735に直接進む。
CPUは、ステップ755の処理を終了したとき、ステップ1095に進み、本ルーチンの処理を終了する。加えて、ステップ705の判定条件が成立していなければ(即ち、無限遠点位置Yiを新たに受信していなければ)、ステップ705にて「No」と判定してステップ1095に直接進む。
(第2実施形態の変形例)
次に、本発明の第2実施形態の変形例に係る前照灯制御装置(以下、「第3変形装置」とも称呼される。)について説明する。上述した第2制御装置は、基準値取得条件が成立したときに取得された基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdに基づいてピッチ角度θpを取得していた。これに対し、第3変形装置は、上述した第1変形装置と同様に、基準値取得条件が成立したときに取得された基準ピッチ角度θstd及び参照ピッチ角度θrefに基づいてピッチ角度θpを取得する。
第3変形装置に係る前照灯制御ECU24(以下、単に、ECU24とも称呼される。)のCPU25(以下、単に「CPU」とも称呼される。)は、図11にフローチャートにより表された「オートレベリング処理ルーチン」を時間間隔Δtよりも小さい所定の時間が経過する毎に実行する。
なお、図11のフローチャートに示されたステップであって図7のフローチャートに示されたステップと同様の処理が実行されるステップには図7と同一のステップ符号が付されている。同様に、図11のフローチャートに示されたステップであって図9又は図10のフローチャートに示されたステップと同様の処理が実行されるステップには図9又は図10と同一のステップ符号が付されている。
適当なタイミングとなると、CPUは、図11のステップ1100から処理を開始してステップ705に進む。CPUは、ステップ917の処理を実行すると、ステップ1020に進む。CPUは、ステップ1022の処理を実行すると、ステップ925に進む。
CPUは、ステップ755の処理を終了したとき、ステップ1195に進み、本ルーチンの処理を終了する。加えて、ステップ705の判定条件が成立していなければ(即ち、無限遠点位置Yiを新たに受信していなければ)、CPUは、ステップ705にて「No」と判定してステップ1195に直接進む。
以上、説明したように、第1制御装置及び第2制御装置は、車高センサ61によって取得された収縮長Ca、及び、カメラ装置50によって取得された無限遠点位置Yiに基づいてピッチ角度θpを取得することができる。換言すれば、第1制御装置及び第2制御装置によれば、車高センサ61が車両10の後輪のサスペンション装置にのみ配設されていても、運転支援機能を提供するためのカメラ装置50を流用してピッチ角度θpを取得することが可能となる。
特に、第1制御装置(並びに第1変形装置及び第2変形装置)によれば、収縮長Caが基準範囲に含まれているときに取得された基準ピッチ角度及び基準無限遠点相関値に基づいてピッチ角度θpを精度良く取得することが可能となる。第2制御装置(及び第3変形装置)によれば、車両10が製造された後、早期に基準ピッチ角度及び基準無限遠点相関値が取得されるので、基準ピッチ角度及び基準無限遠点相関値に基づいてピッチ角度θpを取得する機会を増加させることが可能となる。
以上、本発明に係る前照灯制御装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的に逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、本実施形態において、画像処理部52が無限遠点位置Yiを取得していた。しかし、無限遠点位置Yiは、ECU20によって取得されても良い。この場合、画像処理部52は、前方画像を表す情報(即ち、静止画像データ)を時間間隔Δtが経過する毎にECU20へ出力する。
加えて、本実施形態に係る画像処理部52は、無限遠点位置Yiを時間間隔Δtが経過する毎にECU20へ出力していた。しかし、画像処理部52は、無限遠点位置Yiを精度良く取得することができなかった場合(例えば、車両10が停止している場合)、無限遠点位置YiをECU20へ出力しないように構成されても良い。
加えて、第1制御装置に係るECU20は、収縮長Caが基準範囲に含まれるか否かに依らず、基準無限遠点位置Ystd及び基準ピッチ角度θstdが取得されていれば(即ち、図7のステップ735にて「Yes」と判定されると)、基準無限遠点位置Ystd、基準ピッチ角度θstd及び無限遠点位置Yiに基づいてピッチ角度θpを取得していた。即ち、この場合、ECU20は、ステップ740の処理を実行していた。しかし、ECU20は、収縮長Caが基準範囲に含まれているとき、ステップ740とは異なる処理によってピッチ角度θpを取得しても良い。例えば、この場合、ECU20は、ピッチ角度θpを、ステップ715の処理によって取得された推定ピッチ角度θeと等しい値として取得しても良い。
加えて、第1制御装置に係るECU20は、収縮長Caが第1収縮長C1よりも大きく且つ第2収縮長C2よりも小さいとき、車両積載物が運転者のみであると判定する。換言すれば、第1収縮長C1は、車両積載物が運転者のみである場合における収縮長Caの値の範囲の下限値に略一致するように定められていた。しかし、第1収縮長C1は、車両積載物が無い場合における収縮長Caの値に略一致するように定められていても良い。
加えて、第2制御装置に係るECU23は、基準無限遠点位置Ystd、基準ピッチ角度θstd及び無限遠点位置Yiを上記式(5)に代入することによってピッチ角度θpを取得していた(図10のステップ740を参照)。しかし、ECU23は、基準無限遠点位置Ystd、基準ピッチ角度θstd及び無限遠点位置Yiを式(14)に代入することによってピッチ角度θpを取得しても良い。
加えて、本実施形態における「特定角度」は「0」であった。しかし、「特定角度」は「0」以外の値であっても良い。この場合、画像基点Yoは、ピッチ角度θpが(「0」とは異なる)その特定角度であるときに取得された無限遠点位置Yiとなる。
加えて、第2実施形態における差分閾値αは所定の正の値であった。しかし差分閾値αは「0」であっても良い。
加えて、第1制御装置に係るECU20は、収縮長Caが基準範囲に含まれているとき、直線Leによって表される「収縮長Ca及び推定ピッチ角度θeの関係」に収縮長Caを適用することによって基準ピッチ角度θstdを取得していた。しかし、ECU20は、収縮長Caが基準範囲に含まれているとき、直線Leによって表される関係とは異なる「収縮長Ca及び推定ピッチ角度θeの関係」に基づいて基準ピッチ角度θstdを取得しても良い。
この場合、例えば、ECU20は、直線Leによって表される関係に加え、車両積載物が運転者のみであり且つ体重の異なる複数の運転者が運転席に着座することによって得られる複数の「収縮長Caとピッチ角度θpとの組合せ」に基づいて取得される「収縮長Caと推定ピッチ角度θeとの関係(特定関係)」を不揮発性メモリ28に記憶している。加えて、ECU20は、収縮長Caが基準範囲に含まれているとき、特定関係に収縮長Caを適用することによって基準ピッチ角度θstdを取得しても良い。
加えて、本実施形態において、アクチュエータ46の作動によって照射角度θbが変更されていた。しかし、これとは異なる方法によって照射角度θbが変更されても良い。例えば、ロービームユニット31は、バルブ41の前方に配設された遮蔽板の位置を変更することによってバルブ41の光が照射される領域が変化し、その結果、照射角度θbが変更されるように構成されても良い。
加えて、本実施形態に係る車高センサ61は、車両10の助手席側にある後輪のサスペンション装置に配設されていた。しかし、2つの車高センサが、車両10の後輪のそれぞれに配設されたサスペンション装置に配設されていても良い。この場合、ECU20は、2つの車高センサのそれぞれによって検出された値の平均値を収縮長Caとして取得しても良い。或いは、車高センサ61は、車両10の前輪のサスペンション装置に配設されても良い。
加えて、第1制御装置及び第2制御装置は、ロービームユニット31が点灯しているか否かに拘わらずピッチ角度θpを取得していた。しかし、ECU20は、ロービームユニット31が点灯しているときにのみピッチ角度θpを取得しても良い。
加えて、本実施形態に係るカメラ装置50は、車両10の前方にある領域を撮影していた。しかし、カメラ装置50は、車両10の前方にある領域に加えて後方にある領域を撮影するように車両10に配設されていても良い。