この出願は、2020年6月23日に日本に出願された特許出願第2020-107961号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。図1は、本開示に係る障害物情報配信システム100の概略的な構成の一例を示す図である。図1に示すように、障害物情報配信システム100は、複数の車両Ma,Mbの各々に構築されている複数の車載システム1と、地図サーバ2と、を備える。なお、図1では、便宜上、車載システム1が搭載されている車両として、車両Maと車両Mbの2台しか図示していないが、実際には3台以上存在する。車載システム1は、道路上を走行可能な車両に搭載可能であって、車両Ma、Mbは、四輪自動車のほか、二輪自動車、三輪自動車等であってもよい。原動機付き自転車も二輪自動車に含めることができる。以降では車載システム1から見て、当該システム(つまり自分自身)が搭載されている車両のことを自車両とも記載する。
<全体構成の概要>
各車両に搭載されている車載システム1は、広域通信網3に無線接続可能に構成されている。ここでの広域通信網3とは、携帯電話網やインターネット等の、電気通信事業者によって提供される公衆通信ネットワークを指す。図1に示す基地局4は、車載システム1が広域通信網3に接続するための無線基地局である。
各車載システム1は、自車両の状態を示す通信パケットである車両状態報告を、所定の周期で、基地局4及び広域通信網3を介して地図サーバ2へ送信する。車両状態報告には、その通信パケットを送信した車両(つまり送信元車両)を示す送信元情報の他、当該データの生成時刻、送信元車両の現在位置などが含まれる。送信元情報とは、送信元車両に対して予め割り当てられた、他の車両と区別するための識別情報(いわゆる車両ID)である。車両状態報告には、上記情報の他、自車両の進行方向や、走行レーンID、走行速度、加速度、ヨーレートなどが含まれていても良い。走行レーンIDは、左端または右端の道路端から何番目のレーンを自車両が走行しているかを示す。さらに、車両状態報告には、方向指示器の点灯状態や、レーン境界線をまたいで走行しているか否かなどの情報が含まれていてもよい。
また、各車載システム1は、地図サーバ2から通知された障害物地点に関連する情報を示す通信パケット(以降、障害物地点報告)を地図サーバ2にアップロードする。障害物地点に関連する情報とは、路上の障害物の存続状況を地図サーバ2が判断するための判断材料として使用される情報である。障害物地点報告は、車両状態報告に含められてもよい。障害物地点報告と車両状態報告とは別々に送信されても良い。
地図サーバ2は、各車両からアップロードされてくる障害物地点報告に基づいて障害物が存在する位置や、障害物が消失した地点などを検出する。そして、障害物の出現/消失に関する情報を、当該情報を配信すべき車両へマルチキャスト配信する。
地図サーバ2は、障害物の出現/消失についての情報の配信先を決定するためのサブ機能として、各車両の現在位置を管理する機能を備える。各車両の現在位置の管理は、後述する車両位置データベースを用いて実現されればよい。当該データベースにおいて各車両の現在位置は、車両IDなどと対応付けられて保存されている。地図サーバ2は、車両状態報告を受信する度に、その内容を参照して、データベースに登録されている送信元車両の現在位置を更新する。なお、障害物情報をプル配信する構成においては、例えば車両位置ベースなど、障害物情報の配信先を決定するための構成は必ずしも必要ではない。配信先を決定するための各車両の位置を管理する機能は任意の要素である。車載システム1における車両状態報告の送信も任意の要素である。
<車載システム1の概要>
図2に示すように車載システム1は、前方カメラ11、ミリ波レーダ12、車両状態センサ13、ロケータ14、V2X車載器15、HMIシステム16、地図連携装置50、及び運転支援ECU60を備える。なお、部材名称中のECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。また、HMIは、Human Machine Interfaceの略である。V2XはVehicle to X(Everything)の略で、車を様々なものをつなぐ通信技術を指す。
車載システム1を構成する上記の種々の装置またはセンサは、ノードとして、車両内に構築された通信ネットワークである車両内ネットワークNwに接続されている。車両内ネットワークNwに接続されたノード同士は相互に通信可能である。なお、特定の装置同士は、車両内ネットワークNwを介することなく直接的に通信可能に構成されていてもよい。例えば地図連携装置50と運転支援ECU60とは専用線によって直接的に電気接続されていても良い。また、図2において車両内ネットワークNwはバス型に構成されているが、これに限らない。ネットワークトポロジは、メッシュ型や、スター型、リング型などであってもよい。ネットワーク形状は適宜変更可能である。車両内ネットワークNwの規格としては、例えばController Area Network(以降、CAN:登録商標)や、イーサネット(イーサネットは登録商標)、FlexRay(登録商標)など、多様な規格を採用可能である。
以降では自車両の運転席に着座している乗員である運転席乗員をユーザとも記載する。なお、以下の説明における前後、左右、上下の各方向は、自車両を基準として規定される。具体的に、前後方向は、自車両の長手方向に相当する。左右方向は、自車両の幅方向に相当する。上下方向は、車両高さ方向に相当する。別の観点によれば、上下方向は、前後方向及び左右方向に平行な平面に対して垂直な方向に相当する。
<車載システム1の構成要素について>
前方カメラ11は、車両前方を所定の画角で撮像するカメラである。前方カメラ11は、例えばフロントガラスの車室内側の上端部や、フロントグリル、ルーフトップ等に配置されている。前方カメラ11は、画像フレームを生成するカメラ本体部と、画像フレームに対して認識処理を施す事により、所定の検出対象物を検出するECUと、を備える。カメラ本体部は少なくともイメージセンサとレンズとを含む構成であって、所定のフレームレート(例えば60fps)で撮像画像データを生成及び出力する。カメラECUは、CPUや、GPUなどを含む画像処理チップを主体として構成されており、機能ブロックとして識別器を含む。識別器は、例えば画像の特徴量ベクトルに基づき、物体の種別を識別する。
前方カメラ11は、所定の検出対象物を検出するとともに、当該検出物の自車両に対する相対位置等を特定する。ここでの検出対象物とは、例えば、歩行者、他車両、ランドマークとしての地物、道路端、路面標示などである。他車両には自転車や原動機付き自転車、オートバイも含まれる。ランドマークは、道路沿いに設置されている立体構造物である。道路沿いに設置される構造物は、例えば、ガードレール、縁石、樹木、電柱、道路標識、信号機などである。道路標識には、方面看板や道路名称看板などの案内標識などが含まれる。ランドマークとしての地物は、後述するローカライズ処理に利用される。路面標示とは、交通制御、交通規制のための路面に描かれたペイントを指す。例えば、車線の境界を示す車線区画線や、横断歩道、停止線、導流帯、安全地帯、規制矢印などが路面標示に含まれる。車線区画線には、黄色又は白色の塗料を用いて破線又は連続線状に形成されているペイントの他、チャッターバーやボッツドッツなどの道路鋲によって実現されるものも含まれる。車線区画線はレーンマークやレーンマーカとも称される。
また、前方カメラ11は、動物の死骸、倒木、落下物等の障害物を検出する。ここでの障害物とは道路上に存在し、車両の通行を妨げる立体物を指す。障害物には、走行車両からの落下物としての箱やはしご、袋、スキー板の他、タイヤ、事故車両、事故車両の破片などが含まれる。また、例えば矢印板や、コーン、案内板といった車線規制のための規制資器材などや、工事現場、駐車車両、渋滞の末尾なども障害物に含めることができる。障害物には、車両の通行を妨げる静止物に加えて、準静的な地図要素を含めることができる。例えば前方カメラ11は、画像認識により落下物等の障害物の種別を識別して出力する。出力データには、識別結果の尤もらしさを示す正解確率値が含まれていても良い。正解確率値は、1つの側面において特徴量の一致度合いを示すスコアに相当する。前方カメラ11は自車両が走行しているレーンだけでなく、隣接レーンに相当する領域に存在する障害物も検出可能に構成されていることが好ましい。ここでは一例として、前方カメラ11は自車走行レーンと、左右の隣接レーン上の障害物を検出可能に構成されているものとする。
前方カメラ11が備える画像プロセッサは、色、輝度、色や輝度に関するコントラスト等を含む画像情報に基づいて、撮像画像から背景と検出対象物とを分離して抽出する。例えば、前方カメラ11は、レーン境界線や道路端、障害物といった検出対象物の自車両からの相対距離および方向(つまり相対位置)、移動速度などを、SfM(Structure from
Motion)処理等を用いて画像から算出する。自車両に対する検出物の相対位置は、画像内における検出物の大きさや傾き度合いに基づいて特定してもよい。そして、検出物の位置や種別等を示す検出結果データを、地図連携装置50及び運転支援ECU60に逐次提供する。
ミリ波レーダ12は、車両前方に向けてミリ波又は準ミリ波を送信するとともに、当該送信波が物体で反射されて返ってきた反射波の受信データを解析することにより、自車両に対する物体の相対位置や相対速度を検出するデバイスである。ミリ波レーダ12は、例えば、フロントグリルや、フロントバンパに設置されている。ミリ波レーダ12には、検出物体の大きさや移動速度、受信強度に基づいて、検出物の種別を識別するレーダECUが内蔵されている。レーダECUは、検出結果として、検出物の種別や、相対位置(方向と距離)、受信強度を示すデータを地図連携装置50等に出力する。ミリ波レーダ12もまた、前述の障害物の一部又は全部を検出可能に構成されている。例えばミリ波レーダ12は、検出物の位置や、移動速度、大きさ、反射強度に基づいて、障害物かどうかを判別する。車両か看板かなどといった障害物の種別は、例えば検出物の大きさや反射波の受信強度から大まかに特定可能である。
前方カメラ11及びミリ波レーダ12は、認識結果を示すデータ以外に、例えば画像データなど、物体認識に用いた観測データも車両内ネットワークNwを介して運転支援ECU60等に提供するように構成されていても良い。例えば前方カメラ11にとっての観測データとは、画像フレームを指す。ミリ波レーダの観測データとは、検出方向及び距離毎の受信強度及び相対速度を示すデータ、または、検出物の相対位置及び受信強度を示すデータを指す。観測データは、センサが観測した生のデータ、あるいは認識処理が実行される前のデータに相当する。なお、前方カメラ11及びミリ波レーダ12は何れも車両の外界をセンシングするセンサに相当する。故に、前方カメラ11及びミリ波レーダ12を区別しない場合には周辺監視センサとも記載する。
周辺監視センサが生成する観測データに基づく物体認識処理は、運転支援ECU60など、センサ外のECUが実行しても良い。前方カメラ11やミリ波レーダ12の機能の一部は、運転支援ECU60に設けられていても良い。その場合、前方カメラ11としてのカメラやミリ波レーダは、画像データや測距データといった観測データを検出結果データとして運転支援ECU60に提供すればよい。
車両状態センサ13は、自車両の走行制御に関わる物理状態量を検出するセンサである。車両状態センサ13には、例えば3軸ジャイロセンサ及び3軸加速度センサなどの慣性センサが含まれる。3軸加速度センサは、自車両に作用する前後、左右、上下方向のそれぞれの加速度を検出するセンサである。ジャイロセンサは検出軸回りの回転角速度を検出するものであって、3軸ジャイロセンサは互いに直交する3つの検出軸を有するものを指す。また、車両状態センサ13にはシフトポジションセンサ、操舵角センサ、車速センサなども含めることができる。シフトポジションセンサは、シフトレバーのポジションを検出するセンサである。操舵角センサは、ハンドルの回転角(いわゆる操舵角)を検出するセンサである。車速センサは、自車両の走行速度を検出するセンサである。
車両状態センサ13は、検出対象とする項目の現在の値(つまり検出結果)を示すデータを車両内ネットワークNwに出力する。各車両状態センサ13の出力データは、車両内ネットワークNwを介して地図連携装置50等で取得される。なお、車両状態センサ13として車載システム1が使用するセンサの種類は適宜設計されればよく、上述した全てのセンサを備えている必要はない。
ロケータ14は、複数の情報を組み合わせる複合測位により、自車両の高精度な位置情報等を生成する装置である。ロケータ14は、例えば図3に示すように、GNSS受信機141、慣性センサ142、地図記憶部143、及び位置演算部144を用いて実現されている。
GNSS受信機141は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星から送信される航法信号を受信することで、当該GNSS受信機141の現在位置を逐次検出するデバイスである。例えばGNSS受信機141は4機以上の測位衛星からの航法信号を受信できている場合には、100ミリ秒ごとに測位結果を出力する。GNSSとしては、GPS、GLONASS、Galileo、IRNSS、QZSS、Beidou等を採用可能である。慣性センサ142は、例えば3軸ジャイロセンサ及び3軸加速度センサである。
地図記憶部143は、高精度地図データを記憶している不揮発性メモリである。ここでの高精度地図データは、道路構造、及び、道路沿いに配置されている地物についての位置座標等を、自動運転に利用可能な精度で示す地図データに相当する。高精度地図データは、例えば、道路の3次元形状データや、車線データ、地物データ等を備える。上記の道路の3次元形状データには、複数の道路が交差、合流、分岐する地点(以降、ノード)に関するノードデータと、その地点間を結ぶ道路(以降、リンク)に関するリンクデータが含まれる。リンクデータには、自動車専用道路であるか、一般道路であるかといった、道路種別を示すデータも含まれていてもよい。ここでの自動車専用道路とは、歩行者や自転車の進入が禁止されている道路であって、例えば高速道路などの有料道路などを指す。道路種別は、自律走行が許容される道路であるか否かを示す属性情報を含んでもよい。車線データは、車線数や、車線区画線の設置位置座標、車線ごとの進行方向、車線レベルでの分岐/合流地点を示す。地物データは、一時停止線などの路面表示の位置及び種別情報や、ランドマークの位置、形状、及び種別情報を含む。ランドマークには、交通標識や信号機、ポール、商業看板など、道路沿いに設置された立体構造物が含まれる。
位置演算部144は、GNSS受信機141の測位結果と、慣性センサ142での計測結果とを組み合わせることにより、自車両の位置を逐次測位する。例えば、位置演算部144は、トンネル内などGNSS受信機141がGNSS信号を受信できない場合には、ヨーレートと車速を用いてデッドレコニング(Dead Reckoning/自律航法)を行う。デッドレコニングに用いるヨーレートは、SfM技術を用いて前方カメラ11で算出されたものでもよいし、ヨーレートセンサで検出されたものでもよい。測位した車両位置情報は車両内ネットワークNwに出力され、地図連携装置50等で利用される。また、位置演算部144は、上記構成で特定された自車位置座標に基づいて、道路において自車両が走行しているレーン(以降、走行レーン)のIDを特定する。
なお、ロケータ14は、ローカライズ処理を実施可能に構成されていても良い。ローカライズ処理は、前方カメラ11で撮像された画像に基づいて特定されたランドマークの座標と、高精度地図データに登録されているランドマークの座標とを照合することによって自車両の詳細位置を特定する処理を指す。ローカライズ処理は、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)が出力する3次元の検出点群データと、3次元地図データとの照合により実施されても良い。また、ロケータ14は、前方カメラ11やミリ波レーダ12で検出されている道路端からの距離に基づいて走行レーンを特定するように構成されていても良い。ロケータ14が備える一部又は全部の機能は、地図連携装置50又は運転支援ECU60が備えていてもよい。
V2X車載器15は、自車両が他の装置と無線通信を実施するための装置である。なお、V2Xの「V」は自車両としての自動車を指し、「X」は、歩行者や、他車両、道路設備、ネットワーク、サーバなど、自車両以外の多様な存在を指しうる。V2X車載器15は、通信モジュールとして広域通信部と狭域通信部を備える。広域通信部は、所定の広域無線通信規格に準拠した無線通信を実施するための通信モジュールである。ここでの広域無線通信規格としては例えばLTE(Long Term Evolution)や4G、5Gなど多様なものを採用可能である。なお、広域通信部は、無線基地局を介した通信のほか、広域無線通信規格に準拠した方式によって、他の装置との直接的に、換言すれば基地局を介さずに、無線通信を実施可能に構成されていても良い。つまり、広域通信部はセルラーV2Xを実施するように構成されていても良い。自車両は、V2X車載器15の搭載により、インターネットに接続可能なコネクテッドカーとなる。例えば地図連携装置50は、V2X車載器15との協働により、地図サーバ2から最新の高精度地図データをダウンロードして、地図記憶部143に格納されている地図データを更新できる。
V2X車載器15が備える狭域通信部は、通信距離が数百m以内に限定される通信規格(以降、狭域通信規格)によって、自車両周辺に存在する他の移動体や路側機と直接的に無線通信を実施するための通信モジュールである。他の移動体としては、車両のみに限定されず、歩行者や、自転車などを含めることができる。狭域通信規格としては、IEEE1709にて開示されているWAVE(Wireless Access in Vehicular Environment)規格や、DSRC(Dedicated Short Range Communications)規格など、任意のものを採用可能である。狭域通信部は、例えば所定の送信周期で自車両についての車両情報を周辺車両に向けて同報送信するとともに、他車両から送信された車両情報を受信する。車両情報は、車両IDや、現在位置、進行方向、移動速度、方向指示器の作動状態、タイムスタンプなどを含む。
HMIシステム16は、ユーザ操作を受け付ける入力インターフェース機能と、ユーザへ向けて情報を提示する出力インターフェース機能とを提供するシステムである。HMIシステム16は、ディスプレイ161とHCU(HMI Control Unit)162を備える。なお、ユーザへの情報提示の手段としては、ディスプレイ161の他、スピーカや、バイブレータ、照明装置(例えばLED)等を採用可能である。
ディスプレイ161は、画像を表示するデバイスである。ディスプレイ161は、例えば、インストゥルメントパネルの車幅方向中央部(以降、中央領域)の最上部に設けられたセンターディスプレイである。ディスプレイ161は、フルカラー表示が可能なものであり、液晶ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ、プラズマディスプレイ等を用いて実現できる。HMIシステム16は、ディスプレイ161として、フロントガラスの運転席前方の一部分に虚像を映し出すヘッドアップディスプレイを備えていてもよい。また、ディスプレイ161は、メータディスプレイであってもよい。
HCU162は、ユーザへの情報提示を統合的に制御する構成である。HCU162は、例えばCPUやGPUなどのプロセッサと、RAMと、フラッシュメモリ等を用いて実現されている。HCU162は、地図連携装置50から提供される情報や、図示しない入力装置からの信号に基づき、ディスプレイ161の表示画面を制御する。例えばHCU162は、地図連携装置50又は運転支援ECU60からの要求に基づき、図4に例示する障害物通知画像80をディスプレイ161に表示する。
障害物通知画像80は、障害物に関する情報をユーザに通知するための画像である。障害物通知画像80は、例えば障害物が存在するレーンと、自車両が走行しているレーンの位置関係などの情報を含む。図4では、障害物が自車走行レーン上に存在する場合を例示している。図4中の画像81は自車両を表しており、画像82はレーン境界線を示している。画像83は障害物を示しており、画像84は道路端を示している。また、障害物通知画像80は、障害物が存在する地点までの残り距離を示す画像85を含んでいてもよい。加えて、車線変更が必要か不要であるのかを示す画像86を含んでいてもよい。図4は例えば路上駐車車両などの障害物が自車走行レーン上に存在するため、車線変更を実施するように案内しているケースを例示している。障害物の位置等を示す障害物通知画像80は、運転席乗員からみた現実世界と重なるようにヘッドアップディスプレイに表示されても良い。障害物通知画像80は、障害物の種別を示す情報が含まれていることが好ましい。
地図連携装置50は、地図サーバ2から障害物情報を含む地図データを取得するとともに、自車両で検出された障害物についての情報を地図サーバ2にアップロードするデバイスである。地図連携装置50の機能の詳細については別途後述する。地図連携装置50は、処理部51、RAM52、ストレージ53、通信インターフェース54、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として構成されている。処理部51は、RAM52と結合された演算処理のためのハードウェアである。処理部51は、CPU(Central Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。処理部51は、RAM52へのアクセスにより、障害物の存在/消失判定のための種々の処理を実行する。ストレージ53は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ53には、処理部51によって実行されるプログラムである障害物報告プログラムが格納されている。処理部51が障害物報告プログラムを実行することは、障害物報告プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。通信インターフェース54は、車両内ネットワークNwを介して他の装置と通信するための回路である。通信インターフェース54は、アナログ回路素子やICなどを用いて実現されればよい。
なお、地図連携装置50は、例えばナビゲーション装置に含まれていても良い。地図連携装置50は、運転支援ECU60や自動運転ECUに含まれていてもよい。地図連携装置50はV2X車載器15に含まれていても良い。地図連携装置50の機能配置は適宜変更可能である。地図連携装置50が車両用装置に相当する。
運転支援ECU60は、前方カメラ11及びミリ波レーダ12といった周辺監視センサの検出結果や、地図連携装置50が取得した地図情報をもとに運転席乗員の運転操作を支援するECUである。例えば運転支援ECU60は、障害物の位置等を示す障害物通知画像などの運転支援情報を提示する。また、運転支援ECU60は、周辺監視センサの検出結果と地図連携装置50が取得した地図情報をもとに、走行用のアクチュエータ類である走行アクチュエータを制御することにより、運転操作の一部または全部を運転席乗員の代わりに実行する。走行アクチュエータは、例えば、ブレーキアクチュエータ(制動装置)や、電子スロットル、操舵アクチュエータなどを含む。
運転支援ECU60は、車両制御機能の1つとして、車線変更を自動で実施する機能(以降、自動車線変更機能)を提供する。例えば運転支援ECU60は、別途生成される走行計画上の車線変更予定地点に到達すると、HMIシステム16と連携して車線変更を実施するか否かを運転席乗員に問い合わせる。そして、運転席乗員によって車線変更の実施を指示する操作が入力装置に行われたと判定した場合に、目標レーンの交通状況を鑑みて、目標レーンに向かう方向への操舵力を発生させ、自車両の走行位置を目標レーンへ移す。車線変更の予定地点は、ある程度の長さを持った区間として定義可能である。
このような運転支援ECU60は、地図連携装置50と同様に、処理部、RAM、ストレージ、通信インターフェース、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として構成されている。各要素の図示は省略している。運転支援ECU60が備えるストレージには、処理部によって実行されるプログラムである運転支援プログラムが格納されている。処理部が運転支援プログラムを実行することは、運転支援プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。
<地図連携装置50の構成について>
ここでは図5を用いて地図連携装置50の機能及び作動について説明する。地図連携装置50は、ストレージ53に保存されている障害物報告プログラムを実行することにより、図5に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、地図連携装置50は機能ブロックとして、自車位置取得部F1、地図取得部F2、自車挙動取得部F3、検出物情報取得部F4、報告データ生成部F5、及び通知処理部F6を備える。地図取得部F2は障害物情報取得部F21を備える。報告データ生成部F5は、障害有無判定部F51を備える。
自車位置取得部F1は、ロケータ14から自車両の位置情報を取得する。また、ロケータ14から走行レーンIDを取得する。なお、ロケータ14の機能の一部又は全部は、自車位置取得部F1が備えていても良い。
地図取得部F2は、地図記憶部143から、現在位置を基準として定まる所定範囲の地図データを読み出す。また、地図取得部F2は、V2X車載器15を介して地図サーバ2から自車両の前方所定距離以内に存在する障害物情報を取得する。障害物情報は別途後述するように障害物が存在する地点についてのデータであって、障害物が存在するレーンやその障害物の種別などを含む。障害物情報を取得する構成が障害物情報取得部F21及び障害物地点情報取得部に相当する。
障害物情報取得部F21は、自車両の現在位置に応じた障害物情報を地図サーバ2に要求することで取得可能である。このような配信態様はプル配信とも称される。また、地図サーバ2が障害物付近に存在する車両に対して自動的に障害物情報を配信しても良い。このような配信態様はプッシュ配信とも称される。つまり、障害物情報は、プル配信及びプッシュ配信のどちらで取得されても良い。ここでは一例として、地図サーバ2が各車両の位置情報に基づいて配信対象とする車両を選定し、当該配信対象に対してプッシュ配信するように構成されているものとする。
地図取得部F2が取得した障害物情報は、RAM52等を用いて実現されるメモリM1に一時保存される。また、メモリM1に保存されている障害物情報は、当該データに示される地点を車両が通過した場合や、一定時間経過した場合に削除されれば良い。便宜上、地図サーバ2から取得した障害物情報のことを、地図上障害物情報とも記載する。また、地図上障害物情報に示される、障害物が存在する地点のことを障害物登録地点、又は単に障害物地点とも記載する。
自車挙動取得部F3は、車両状態センサ13から、自車両の挙動を示すデータを取得する。例えば走行速度や、ヨーレート、横加速度、縦加速度などを取得する。また、自車挙動取得部F3は、前方カメラ11からレーン境界線をまたいでいるか否かを示す情報や、レーン中心に対する右又は左への走行位置のオフセット量を取得する。ここでの縦加速度は前後方向の加速度に相当し、横加速度は左右方向の加速度に相当する。自車挙動取得部F3が車両挙動検出部に相当する。
検出物情報取得部F4は、前方カメラ11やミリ波レーダ12によって検出された障害物についての情報(以降、検出障害物情報)を取得する。検出障害物情報は、例えば、障害物が存在する位置や、その種別、大きさなどを含む。周辺監視センサで検出された障害物が存在する地点のことを障害物検出位置とも記載する。障害物検出位置は、例えばWGS84(World Geodetic System 1984)など、任意の絶対座標系で表現することができる。障害物検出位置は、自車両の現在位置座標と、周辺監視センサで検出された自車両に対する障害物等の相対位置情報とを組み合わせることで算出可能である。検出物情報取得部F4は、種々の周辺監視センサによる認識結果だけでなく、例えば前方カメラ11が撮像した画像データ等、観測データそのものも取得しうる。検出物情報取得部F4は外界情報取得部と呼ぶことができる。
障害物検出位置は、例えば、障害物がどのレーンに存在するのかを示すものであってもよい。例えば障害物検出位置はレーンIDで表現されても良い。また、障害物検出位置は、レーン内における障害物の端部の横位置を含んでいることが好ましい。レーン内における障害物の端部の横位置情報は、障害物がどれくらいレーンを塞いでいるかを示す情報として使用可能である。前述の障害物登録地点は地図サーバ2が認識している障害物位置を示すのに対し、障害物検出位置は実際に車両にて観測された位置を示す。
自車位置取得部F1や、自車挙動取得部F3、検出物情報取得部F4が逐次取得する種々のデータは、RAM52等のメモリに保存され、地図取得部F2や報告データ生成部F5などによって参照により利用される。なお、各種情報は、例えばデータの取得時刻を示すタイムスタンプが付与された上で種別ごとに区分されてメモリに保存される。タイムスタンプは、同一時刻における異なる種別の情報を紐付ける役割を担う。タイムスタンプを用いることにより地図連携装置50は、例えば車外動画に同期した車両挙動等を特定可能となる。なお、タイムスタンプは取得時刻の代わりに、出力源におけるデータの出力時刻や、生成時刻などであっても良い。タイムスタンプとして出力時刻や生成時刻を採用する場合には各車載装置の時刻情報は同期されていることが好ましい。地図連携装置50が取得した種々の情報は、例えば最新のデータが先頭となるようにソートされて保存されうる。取得から一定時間が経過したデータは破棄されうる。
報告データ生成部F5は、地図サーバ2に送信するデータセットを生成し、V2X車載器15に出力する構成である。報告データ生成部F5は報告処理部と呼ぶことができる。報告データ生成部F5は例えば冒頭に記載の車両状態報告を所定の間隔で生成してV2X車載器15を介して地図サーバ2にアップロードする。また、報告データ生成部F5は、別途後述するアップロード処理として、障害物地点報告を生成して地図サーバ2にアップロードする。
障害有無判定部F51は、検出物情報取得部F4が取得している検出障害物情報及び自車挙動取得部F3が取得した自車両の挙動データに基づいて、障害物が存在するか否かを判定する構成である。例えば障害有無判定部F51は、前方カメラ11とミリ波レーダ12のセンサフュージョンにより障害物が存在するか否かを判定しても良い。例えば、ミリ波レーダ12で障害物或いは種別不明の立体静止物が検出されている地点に、前方カメラ11で障害物が検出されている場合に、障害物が存在すると判定してもよい。また、前方カメラ11で障害物が検出されている地点に、ミリ波レーダ12で障害物或いは種別不明の立体静止物が検出されていない場合には、障害物は存在しないと判定してもよい。また、障害有無判定部F51は、前方カメラ11とミリ波レーダ12の少なくとも何れか一方によって自車走行レーン上に障害物が検出されている場合に、自車両が所定の回避行動を実施したか否かによって障害物が存在するか否かを判定しても良い。
ここでの回避行動とは、例えば障害物を避けるための車両挙動であって、例えば走行位置の変更を指す。ここでの走行位置の変更とは、道路上における車両の横方向の位置を変更することを指す。走行位置の変更には、車線変更だけでなく、同一レーン内における走行位置を左右のどちらか隅部に寄せる動きや、レーン境界線をまたいで走行する態様も含まれる。なお、通常の車線変更との違いを明確とするために、回避行動は、減速及びその後の加速を伴う走行位置の変更/操舵とすることが好ましい。例えば減速操作を伴う走行位置の変更や、所定の速度以下までの減速を伴う走行位置の変更を回避行動とすることができる。なお、上記の回避行動について説明は、本開示で想定する回避行動の概念を示したものである。回避行動としての走行位置の変更を実行したか否かは、別途後述するように、走行軌跡のほか、横加速度の変化パターンや、方向指示器の作動履歴などから検出される。
障害有無判定部F51は、自車両に作用したヨーレートや操舵角の変位方向に基づいて、車両が回避した方向である回避方向を特定する。例えば自車両の走行位置が右側に移った場合、つまり、右側に操舵された場合、回避方向は右側となる。回避方向は、必然的に障害物が存在しない方向となる。回避方向は、逆説的に、障害物が存在する方向を示す指標となりえる。障害有無判定部F51は、1つの側面において回避行動判定部と呼ぶこともできる。
通知処理部F6は、地図上障害物情報に基づき、車両前方に存在する障害物についての情報をHMIシステム16と連携して運転席乗員に通知する構成である。例えば通知処理部F6は、地図上障害物情報に基づき図4に例示する障害物通知画像を生成してディスプレイ161に表示させる。なお、障害物の通知は、音声メッセージなどで通知してもよい。通知処理部F6は、運転支援ECU60が備えていてもよい。
<アップロード処理について>
ここでは図6に示すフローチャートを用いて地図連携装置50が実行するアップロード処理について説明する。図6に示すフローチャートは例えば車両の走行用電源がオンとなっている間、所定の周期(例えば100ミリ秒毎)に実行される。走行用電源は、車両を走行可能な状態にする電源であって、例えばエンジン車両においてはイグニッション電源である。電気自動車においてはシステムメインリレーが走行用電源に相当する。アップロード処理は一例としてステップS101~S104を備える。
ステップS101では報告データ生成部F5がメモリM1に保存されている地図上障害物情報を読み出して、ステップS102に移る。なお、ステップS101は地図サーバ2から、車両前方の所定距離以内の障害物情報を取得する処理とすることができる。
ステップS102では地図上障害物情報に基づき、車両前方の所定距離(以降、参照距離)以内に障害物が存在するか否かを判定する。ステップS102は、参照距離以内に障害物登録地点が存在するか否かを判定する処理に相当する。参照距離は例えば200mや300mなどである。参照距離は、前方カメラ11が物体を認識できる距離の限界値よりも長いことが好ましい。参照距離は、車両の走行速度に応じて変更されても良い。例えば、車両の走行速度が大きいほど参照距離は長く設定されても良い。例えば30秒などの所定時間以内に到達する距離を自車両の速度に応じて算出し、当該距離を参照距離として採用しても良い。
ステップS102において参照距離以内に地図サーバ2が認識している障害物が存在しない場合、本フローを終了する。一方、参照距離以内に障害物が存在する場合、すなわち障害物登録地点が存在する場合にはステップS103を実行する。
ステップS103では、障害物登録地点の前後、所定の報告対象距離以内を走行する際の車両挙動を取得してステップS104に移る。ステップS104では、ステップS103で取得した車両挙動の時系列データと、送信元情報と、報告対象地点情報を含むデータセットを障害物地点報告して生成する。報告対象地点情報は、どの地点についての報告であるかを示す情報である。例えば報告対象地点情報には、障害物登録地点の位置座標が設定される。
報告対象距離は、運転席乗員や周辺監視センサが障害物登録地点の状況を認識可能な距離に設定されていることが好ましい。例えば報告対象距離は図7に示すように障害物登録地点の前後100mに設定されてもよい。この場合、障害物地点報告は例えば障害物登録地点の前後100m分の車両挙動を示すデータセットとなる。障害物登録地点の前後、報告対象距離以内となる区間を報告対象区間とも記載する。
障害物地点報告に含める車両挙動データは、障害物が存在するレーンを走行している車両が障害物を避ける動き(つまり回避行動)をしたかどうかを示すデータとする。例えば、車両挙動を示すデータとしては、障害物登録地点付近を通過する際の各時点における車両位置座標、進行方向、走行速度、縦加速度、横加速度、ヨーレートなどを採用することができる。障害物登録地点の付近とは、例えば、障害物登録地点の20m以内を指す。なお、障害物登録地点の前後50m以内や100m以内を障害物登録地点付近とみなしても良い。障害物登録地点付近とみなす範囲は道路種別や法定上限速度に応じて変更されてもよい。前述の報告対象距離は、どこまでを障害物登録地点の付近と見なすかに応じて決定される。また、車両挙動を示すデータとしては、操舵角や、シフトポジション、方向指示器の作動状態、ハザードランプの点灯状態、レーン境界線をまたいだか否か、車線変更を実施したか否か、レーン中心からのオフセット量を含めることができる。
障害物地点報告には、障害物登録地点付近を通過する際の各時点における走行レーンIDが含まれていることが好ましい。走行レーンIDを含めることにより、障害物が存在するレーンを走行してきた車両からの報告であるか否かを地図サーバ2が判別可能となるためである。もちろん、地図サーバ2は、障害物地点報告に含まれる位置座標の時系列データに基づいて、障害物が存在するレーンを走行してきた車両からの報告であるか否かを判別してもよい。
また、障害物地点報告には、障害物登録地点に至るまでの車両挙動だけでなく、障害物登録地点を通過した後の車両挙動情報も含めることが好ましい。或る車両によって実施された車線変更や操舵が、障害物を避けるためのものであれば、障害物通過後に元のレーンに戻る動きが行われる可能性が高いためである。つまり、障害物登録地点の通過後の車両挙動も障害物地点報告に含めることで、車両が実施した動きが障害物を避けるためのものだったのか否か、ひいては真に障害物が存在するのか否かの判定精度を高めることが可能となる。
障害物地点報告は、報告対象区間を走行している間の、例えば100ミリ秒ごとの車両状態を示すデータとすることができる。車両挙動のサンプリング間隔は、100ミリ秒に限らず、200ミリ秒などであってもよい。サンプリング間隔が短いほど、データサイズが大きくなってしまうため、通信量抑制の観点からは、サンプリング間隔は、車両の動きを解析可能な程度に長くすることが好ましい。
報告対象距離は短すぎると、例えば回避行動を実施した後のデータしか地図サーバ2に集まらなくなってしまい、回避行動が行われているのかどうかが不明となる。一方、報告対象距離を長く設定すれば回避行動を示すデータの漏れが少なくなるが、データサイズが大きくなる。報告対象距離は、障害物に対する回避行動が実施されることが想定される地点が含まれるように報告対象距離は設定されることが好ましい。例えば報告対象距離は25m以上に設定されることが好ましい。
なお、報告対象距離の長さは、一般道路か自動車専用道路かによって変更されても良い。自動車専用道路とは、歩行者や自転車の進入が禁止されている道路であって、例えば高速道路などの有料道路が含まれる。例えば、一般道における報告対象距離は自動車専用道路における報告対象距離よりも短く設定されていてもよい。具体的には自動車専用道路向けの報告対象距離は100m以上とする一方、一般道路向けの報告対象距離は30mなど、50m以下に設定されていても良い。自動車専用道路は一般道路よりも前方の視認性がよく、障害物が存在する地点から離れた地点から回避行動がなされる可能性があるためである。
サンプリング間隔もまた、自動車専用道路か一般道路かといった道路種別に応じて変更されてもよい。自動車専用道路向けのサンプリング間隔は、一般道路向けのサンプリング間隔よりも短くしても良い。サンプリング間隔を長くすることでデータサイズを抑制できる。その他、報告対象距離が長いほどサンプリング間隔を疎とするように構成されていても良い。そのような構成によれば障害物地点報告のデータサイズを一定の範囲内に収めることが可能となる。
なお、報告対象距離やサンプリング間隔は、地図サーバ2からの指示信号によって動的に決定されても良い。また、障害物地点報告に含める情報種別(換言すれば項目)もまた地図サーバ2からの指示信号によって動的に決定されても良い。
加えて、報告対象距離、サンプリング間隔、及び障害物地点報告に含める項目は、障害物の種別や大きさ、レーンの塞ぎ度合いに応じて変更されても良い。例えば障害物がレーンを半分以上塞いでいる場合など、回避挙動としての車線変更が必須となるケースにおいては、障害物地点報告は、報告車両が車線変更を実施したか否かを判定するための情報に限定されても良い。車線変更を実施したか否かは、走行軌跡や、走行レーンIDの変化の有無などから判定可能である。
なお、障害物地点報告には、周辺監視センサで障害物が検出されたか否かを示す検出結果情報を含めても良い。障害物検出結果は、前方カメラ11及びミリ波レーダ12のそれぞれの検出結果を示すものであってもよいし、障害有無判定部F51の判定結果であっても良い。周辺監視センサで障害物が検出されている場合、障害物地点報告には、検出物情報取得部F4が取得した検出障害物情報を含めても良い。例えば、障害物地点報告には、障害物登録地点から所定距離手前(例えば10m手前)で撮像された前方カメラ11の画像データを含めても良い。
なお、アップロード処理の態様は上述した内容に限定されない。例えばアップロード処理は図8に示すように、ステップS201~S206を含むように構成されていてもよい。図8に示すステップS201~S203は前述のステップS101~S101と同様である。ステップS203が完了するとステップS204を実行する。
ステップS204では検出物情報取得部F4が、障害物登録地点付近を通過する際の前方カメラ11及びミリ波レーダ12の少なくともの一方のセンシング情報を取得する。ここでのセンシング情報には、観測データに基づく認識結果のほか、観測データそのものを含めることができる。ここでは一例として、前方カメラ11とミリ波レーダ12の障害物に関する認識結果(つまり検出障害物情報)と、前方カメラ11の撮像画像を取得する。センシング情報の収集期間は例えば車両挙動情報と同様に、障害物登録地点までの残り距離が報告対象距離以下となる地点を通過してから、障害物登録地点が報告対象距離後方に位置するまでとすることができる。なお、車両後方を検出範囲とする周辺監視センサを備えない場合には、センシング情報の収集期間は、障害物登録地点までの残り距離が報告対象距離以下となってから、障害物登録地点を通過するまでとしてもよい。ステップS204が完了するとステップS205を実行する。
ステップS205ではステップS204で収集したセンシング情報に基づいて、障害物登録地点の現在の状況を示す現況データを生成する。例えば現況データには、センシング情報の収集期間における250ミリ秒毎の周辺監視センサの認識結果が含まれる。また、当該期間内において前方カメラ11にて障害物が検出されている場合には、当該障害物の検出に使用された画像データを少なくとも1フレーム含める。現況データに障害物登録地点を移した画像フレームを少なくとも1つ含めることで、地図サーバ2での解析性を高めることができる。
なお、現況データに含める画像フレームは、センシング情報の収集期間において撮像された全フレームとしてもよいし、200ミリ秒間隔で撮像された画像フレームとしてもよい。現況データに含める画像フレームの数は、多くするほど地図サーバ2での解析性が高まる一方、通信量が増大する。現況データに含める画像フレームの量はデータ量が所定の上限値以下となるように選定されても良い。また、画像フレーム全体ではなく、障害物が移っている画像領域だけを抽出して現況データに含めるように構成されていても良い。
ステップS205が完了するとステップS206を実行する。ステップS206では、ステップS203で取得した車両挙動を示すデータと、ステップS205で生成した現況データを含むデータセットを障害物地点報告として生成し、地図サーバ2にアップロードする。
上記の構成によれば、車両挙動だけでなく、周辺監視センサの認識結果や、画像データも地図サーバ2に集めることができる。その結果、障害物がまだ存続しているのか、消失したのかをより一層精度良く検証可能となる。また、障害物が存在するレーンの隣接レーンを走行する車両である隣接レーン走行車両は、障害物が存在することによる回避行動は行わないが、当該車両の前方カメラ11やミリ波レーダ12でも障害物は観測されうる。つまり、障害物が存在するレーン(以降、障害物レーン)の様子は、隣接レーン走行車両でも観測されうる。上記の構成によれば地図サーバ2は、隣接レーン走行車両の周辺監視センサのセンシング情報も収集可能となるため、障害物が存在するのか否かをより一層精度よく検証可能となる。
その他、以上ではアップロード処理として、自車両の前方に障害物登録地点付近を走行したときの状況を障害物地点報告としてアップロードする態様を開示したがこれに限らない。地図連携装置50は、障害物登録地点が存在しない場合にも、例えば障害物の存在を示唆する車両挙動またはセンシング情報が得られた場合に障害物地点報告をアップロードするように構成されていても良い。
例えば地図連携装置50は、図9に示すように、ステップS301~S303を含む処理を実行するように構成されていても良い。図9に示す処理フローは例えば所定の実行間隔でアップロード処理とは独立して実行される。なお、図9に示す処理フローは例えばアップロード処理において障害物登録地点がない(ステップS102又はステップS202 NO)と判断された場合に実行されても良い。
ステップS301では直近所定時間(例えば10秒間)の車両挙動を取得してステップS302を実行する。ステップS302では、ステップS301で取得した車両挙動データを解析することにより、回避行動を実施したか否かを判定する。例えば減速や停止を伴う走行位置の変更や、急な操舵などが実施されている場合に、回避行動を実施したと判定する。走行位置を変更したかどうかは、自車位置の軌跡から判断しても良いし、ヨーレートや操舵角、横加速度の経時変化、方向指示器の点灯状態などから判別可能である。また、レーン境界線をまたいだか否かに基づいて走行位置を変更したか否かを判定しても良い。また、ヨーレートや操舵角、横加速度が所定値以上となったことに基づいて回避行動を実施したと判定してもよい。
ステップS302において回避行動が行われたと判定した場合には、ステップS303に移り、前述のステップS103やステップS206等と同様に、障害物地点報告を生成及び送信する。ステップS303でアップロードする障害物地点報告には、回避行動が行われてから所定時間以内に撮像された画像フレームを含めてもよい。回避行動をトリガとして地図サーバ2に送信する画像データを以降では報告画像とも称する。報告画像は、車両が回避した障害物を地図サーバ2が特定したり、真に障害物があるのか否かを検証するための画像に相当する。ステップS303で送信される障害物地点報告は、まだ地図サーバ2が認識していない障害物の存在を示唆するデータに相当する。ステップS303で生成する障害物地点報告の報告地点情報には、回避行動を実施したと判定する直前の車両位置が設定されればよい。回避行動を実施する前の車両位置を設定することにより、障害物が存在するレーンが誤特定されるおそれを低減できる。なお、回避行動を実施する前の車両位置から所定距離(例えば20m)進行方向側の地点を報告地点に設定しても良い。
報告画像のアップロードに関し、地図連携装置50は、急操舵又は急制動が行われた時点又は直後に撮影された画像の中でも、画像内に設定される所定の基準点よりも、操舵方向とは反対側の領域を含む所定範囲を切り出してなる部分画像を、報告画像として送信してもよい。より具体的には、報告データ生成部F5は、回避方向が右側である場合には、基準点よりも左側に位置する部分画像を報告画像として送信しても良い。基準点は、動的に定まる消失点であっても良いし、予め設定された画像の中心点であってもよい。また、基準点は、画像の中心点から所定量上側となる点であっても良い。なお、消失点はオプティカルフローなどの技術によって算出可能である。報告画像としての切り出し範囲としては、後述する検証エリアを適用することができる。上記構成によれば、地図連携装置50においてリアルタイムに障害物を特定できない場合であっても、地図サーバ2によって回避行動の原因となった障害物を特定可能となりうる。また、撮影された画像データの一部のみを送信する構成によれば、地図サーバ2へアップロードするデータ量を抑える事も可能となる。
上記構成に関連し、報告データ生成部F5は、急操舵又は急制動が行われた時点又は直後に撮影された画像の中でも、基準点よりも回避方向とは反対側にあって、かつ、障害物として登録されている物体が写っている部分を切り出し、報告画像として送信してもよい。なお、障害物として登録されている物体が写っている部分に代わって、ミリ波レーダ12で立体物が検出されている画像領域を報告画像として抽出して送信してもよい。
なお、例えば渋滞末尾に対する認識が遅れて急減速/急操舵などの回避行動が行われた場合、障害物地点報告の送信条件の設定によっては、実際には障害物としての静止物が存在しないにも関わらず、障害物地点報告を送信することになりうる。障害物地点報告に回避行動が行われた際の画像フレームを含める構成によれば、障害物の誤検出を抑制可能となる。
その他、地図連携装置50は、回避行動が行われた時点を基準として定まる所定期間内に撮像された複数の画像フレームの中から、回避行動の原因である障害物を示す画像フレームを車両挙動に基づき絞り込んで送信するように構成されていても良い。例えば、地図連携装置50は、図10に示すように、ステップS311~S314を含む処理を実行するように構成されていてもよい。図10に示す処理フローは図9に示す処理の代替処理として実行されうる。
ステップS311~S312についてはステップS301~S302と同様である。地図連携装置50は車両挙動データに基づき回避行動が行われたことを検出するとステップS313を実行する。ステップS313では報告データ生成部F5が、回避行動が検出された時点から前後所定時間以内に取得した画像フレームの中から、報告画像として地図サーバ2に送信するための画像フレームを絞り込む処理である絞り込み処理を行う。報告画像としては、当該障害物ができるだけ鮮明に写っている画像フレームが選択されることが好ましい。
絞り込み処理の一例を図11に示す。例えば障害有無判定部F51は、絞り込みの準備処理として、車両に作用したヨーレート等に基づいて回避方向を特定する(ステップS321)。また、報告データ生成部F5は、1次フィルタ処理として、回避行動を検出した時点を基準として定まる所定期間内に取得した画像フレームの中から、撮影時刻が1秒ずつ相違するフレームを抽出する(ステップS322)。つまり画像フレームを1秒間隔で間引く。
次に報告データ生成部F5は、2次フィルタ処理として、1次フィルタ処理で残ったフレームの中から、回避物候補が写っているフレームを抽出する(ステップS323)。換言すれば、ステップS323では回避物候補が写っていないフレームを破棄する。ここでの回避物候補とは、物体認識の辞書データ等において障害物として登録されている物体を指す。画像フレームに写っている障害物は基本的にはすべて回避物候補となりうる。例えば道路上に存在する車両や、道路規制用の資機材などが回避物候補となりうる。道路規制用の資機材とは、工事現場に設置されるコーンや、通行止め等を示す看板、右又は左に向いた矢印を示す看板(いわゆる矢印板)などを指す。
ステップS323での処理が完了すると、ステップS324に進む。ステップS324では報告データ生成部F5が、回避物候補が写っているフレームを順次比較していき、画像フレーム内における回避物候補の位置及び大きさの経時的な変化パターンと自車両の回避方向との関係に基づいて、回避物を特定する。回避物は自車両が回避したと推定される障害物、すなわち回避行動の原因を指す。例えば撮影時刻が進むにつれて画像フレーム内の位置が、回避方向とは反対方向に移動していく回避物候補を回避物と判定する。
回避物の特定が完了すると、報告データ生成部F5は、複数の画像フレームの中で回避物が最も適正に写っている画像フレームである最適フレームを選択する(ステップS325)。例えば報告データ生成部F5は、回避物が最も鮮明に写っているフレームを選択する。報告データ生成部F5は、回避物の全体が最も大きく写っているフレームを最適フレームとして選択してもよい。報告データ生成部F5は、回避物に対する識別結果の正解確率値が最も高いフレーム、換言すれば障害物のモデルデータとの適合度が最も高いフレームを最適フレームとして選択してもよい。最適フレームの選択が完了すると、当該画像フレームを報告画像として含む障害物地点報告を地図サーバ2に送信する(図10 ステップS314)。
なお、報告データ生成部F5は、最適フレームのなかでも更に、回避物が写っている部分を切り出し、報告画像として送信してもよい。当該構成によれば通信量の抑制効果が期待できる。
図12は上記の絞り込み処理の作動を概念的に示したものであり、(a)は回避行動が行われてから所定期間以内に撮像された全画像フレームを示している。(b)は1次絞り込み処理によって、所定の時間間隔で間引かれたフレーム群を示している。(c)は、回避物らしきもの、すなわち回避物候補が写っていることを条件として絞り込まれたフレームの集合を示している。(d)は最終的に選択される画像フレームを示している。(f)は、回避物が写っている部分画像を切り出した状態を示している。報告画像の絞り込み処理に1次フィルタ処理を含めることで、報告データ生成部F5の処理負荷を低減できる。また、2次フィルタ処理を行うことで回避物が写っていない画像フレームを報告画像として誤選択する恐れも低減できる。
なお、1次フィルタ処理として、画像フレームを間引く間隔は、1秒に限らず、500ミリ秒などであってもよい。また、1次フィルタ処理は必須の要素ではなく、省略可能である。ただし、1次フィルタ処理を行うことにより、報告データ生成部F5としての処理部51の処理負荷を低減可能となる。また、回避物候補を認識できた画像フレームが存在しなかった場合及び回避物を特定できなかった場合には、回避行動の検出時刻を基準として定まる、所定タイミングで撮影された画像フレームを最適フレームとして選択しても良い。
さらに、地図連携装置50は、図13に示すように、ステップS401~S403を含む処理を実行するように構成されていてもよい。図13に示す処理フローは例えば所定の実行間隔でアップロード処理とは独立して実行されてもよいし、アップロード処理において障害物登録地点がない(ステップS102又はステップS202 NO)と判断された場合に実行されても良い。
ステップS401では直近所定時間(例えば5秒間)のセンシング情報を取得してステップS402を実行する。ステップS402では障害有無判定部F51が、ステップS401で取得したセンシング情報を解析することにより、障害物が存在するのか否かを判定する。障害物が存在すると判定した場合には、ステップS206と同様に障害物地点報告を作成してアップロードする。なお、ステップS403でアップロードする障害物地点報告に含めるセンシング情報は、例えば障害物が存在すると判定した時点の各周辺監視センサの認識結果及び画像フレームなどとすることができる。ステップS403で送信される障害物地点報告もまた、ステップS303で送信される障害物地点報告と同様に、地図サーバ2がまだ認識していない障害物の存在を示唆するデータに相当する。
<地図サーバ2の構成について>
次に地図サーバ2の構成について説明する。地図サーバ2は、複数の車両から送信された障害物地点報告に基づいて、障害物の発生~消失を検出し、車両に障害物情報として配信する構成である。地図サーバ2が障害物情報管理装置に相当する。なお、地図サーバ2の通信相手としての車両との記載は車載システム1、さらには地図連携装置50と読み替えることができる。
地図サーバ2は、図14に示すように、サーバプロセッサ21、RAM22、ストレージ23、通信装置24、及び地図DB25、及び車両位置DB26を備える。部材名称中のDBはデータベース(Database)を指す。サーバプロセッサ21は、RAM52と結合された演算処理のためのハードウェアである。サーバプロセッサ21は、CPU(Central Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。サーバプロセッサ21は、RAM22へのアクセスにより、障害物の存続状態の判定など、種々の処理を実行する。ストレージ23は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ23には、サーバプロセッサ21によって実行されるプログラムである障害物情報管理プログラムが格納されている。サーバプロセッサ21が障害物情報生成プログラムを実行することは、障害物情報管理プログラムに対応する方法である障害物情報管理方法が実行されることに相当する。通信装置24は、広域通信網3を介して各車載システム1などの他の装置と通信するための装置である。
地図DB25は、例えば高精度地図データが格納されているデータベースである。また、地図DB25には、障害物が検出されている地点に関する情報を格納する障害物DB251を備える。地図DB25及び障害物DB251は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を用いて実現されるデータベースである。地図DB25及び障害物DB251は、サーバプロセッサ21によるデータの書き込み、読出、削除等が実施可能に構成されている。
障害物DB251には、障害物が検出されている地点を示すデータ(以降、障害物地点データ)が保存されている。障害物地点データは、障害物地点毎の位置座標や、障害物が存在レーン、障害物の種別、大きさ、レーン内横位置、出現時刻、最新の存続判定時刻などを示す。或る障害物地点についてのデータは、当該地点に対する車両からの障害物地点報告に基づき、障害物情報管理部G3によって例えば定期的に更新される。障害物地点データを構成する障害物地点毎のデータは、リスト形式など、任意のデータ構造によって保持されていれば良い。障害物地点ごとのデータは、例えば、所定の区画ごとに分けて保存されていても良い。区画単位は、高精度地図のメッシュであってもよいし、行政区画単位であってもよいし、他の区画単位であってもよい。例えば道路リンク単位であっても良い。地図のメッシュとは、地図を一定の規則に従って分割してなる複数の小領域を指す。メッシュはマップタイルとも言い換えることができる。
車両位置DB26は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を用いて実現されるデータベースである。車両位置DB26は、サーバプロセッサ21によるデータの書き込み、読出、削除等が実施可能に構成されている。車両位置DB26には、障害物情報配信システム100を構成する各車両の位置を含む現在の状況を示すデータ(以降、車両位置データ)が、車両IDと対応付けられて保存されている。車両位置データは、車両毎の位置座標や、走行レーン、進行方向、走行速度などを示す。或る車両についてのデータは当該車両からの車両状態報告を受信する度に、後述する車両位置管理部G2によって更新される。車両位置データを構成する車両毎のデータは、リスト形式など、任意のデータ構造によって保持されていれば良い。車両ごとのデータは、例えば、所定の区画ごとに分けて保存されていても良い。区画単位は、高精度地図のメッシュであってもよいし、行政区画単位であってもよいし、他の区画単位(例えば道路リンク単位)であってもよい。
なお、障害物が検出されている地点に関する情報を格納する記憶媒体はRAM等の揮発性メモリであってもよい。車両位置データの保存先もまた揮発性メモリであってもよい。地図DB25及び車両位置DB26は不揮発性メモリと揮発性メモリといった複数種類の記憶媒体を用いて構成されていても良い。
地図サーバ2は、サーバプロセッサ21がストレージ23に保存されている障害物情報管理プログラムを実行することにより、図15に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、地図サーバ2は機能ブロックとして、報告データ取得部G1、車両位置管理部G2、障害物情報管理部G3、及び配信処理部G4を備える。障害物情報管理部G3は、出現判定部G31、及び消失判定部G32を備える。
報告データ取得部G1は、車載システム1からアップロードされてきた車両状態報告及び障害物地点報告を、通信装置24を介して取得する。報告データ取得部G1は、通信装置24から取得した車両状態報告を車両位置管理部G2に提供する。また、報告データ取得部G1は通信装置24から取得した障害物地点報告を障害物情報管理部G3に提供する。報告データ取得部G1が車両挙動取得部に相当する。
車両位置管理部G2は、各車両から送信されてくる車両状態報告に基づいて、車両位置DB26に保存されている車両毎の位置情報等を更新する。すなわち、報告データ取得部G1が車両状態報告を受信する度に、車両位置DB26に保存されている、車両状態報告の送信元についての位置情報や、走行レーン、進行方向、走行速度などの所定の管理項目を更新する。
障害物情報管理部G3は、各車両から送信されてくる障害物地点報告に基づいて、障害物DB251に保存されている障害物地点ごとのデータを更新する。障害物情報管理部G3が備える出現判定部G31及び消失判定部G32は何れも障害物地点ごとのデータを更新するための要素である。出現判定部G31は、障害物が出現したことを検出するための構成である。障害物の有無はレーン単位で判定される。なお、他の態様として道路単位で障害物の有無が判定されても良い。消失判定部G32は、出現判定部G31によって検出された障害物がまだ存在しているか否か、換言すれば、検出済みの障害物が消失したか否かを判定する構成である。ある障害物登録地点に対する消失判定部G32による障害物の存続(消失)判定は、当該地点を障害物登録地点に設定した後に受信した車両挙動データやセンシング情報に基づいて行われる。出現判定部G31や消失判定部G32の詳細については別途後述する。
配信処理部G4は、障害物情報を配信する構成である。例えば配信処理部G4は障害物通知処理を実施する。障害物通知処理は障害物地点について情報を示す通信パケットである障害物通知パケットを、当該障害物地点を通過予定の車両に配信する処理である。障害物通知パケットは、障害物の位置座標や、障害物が存在するレーンID、障害物の種別などを示す。障害物通知パケットの宛先は、例えば、障害物地点を所定時間(1分や5分)以内に通過する予定の車両とすることができる。障害物地点を走行予定かどうかは、例えば各車両の走行予定経路を取得して判定しても良い。また、障害物が存在する道路/レーンと同一又は接続している道路/レーンを走行している車両を、障害物地点を通過予定の車両として選択しても良い。障害物地点までの到達所要時間は、車両の現在位置から障害物地点までの距離と、車両の走行速度から算出可能である。
配信処理部G4は、道路リンクや高さ情報を用いて障害物通知パケットの宛先を選定する。これにより、障害物が存在する道路の上/下側に併設されている道路を走行している車両に誤配信するおそれを低減できる。換言すれば、高架道路やダブルデッキ構造を有する道路区間における配信対象の誤特定を抑制可能となる。配信対象は、車両位置DB26に登録されている各車両の位置情報や走行速度などに基づいて抽出されれば良い。
また、配信対象の抽出条件に、障害物地点に到達するまでの時間条件を加えることで、不要な配信を抑制することができる。障害物は存続状態が動的に変化しうるため、例えば到達まで30分以上残っている車両にまで配信しても、当該車両が到達するころには障害物が消失している可能性が高いためである。なお、障害物地点に到達するまでの時間条件は任意の要素であり、配信対象の抽出条件に含めなくともよい。
配信対象は、レーン単位で判断されても良い。例えば仮に第3レーンに障害物がある場合には、第3レーンを走行中の車両を配信対象に設定する。障害物レーンと隣接しない第1レーンを走行予定の車両は配信対象から除外してもよい。障害物レーンの隣接レーンに相当する第2レーンを走行中の車両については、障害物レーンである第3レーンからの割り込みを警戒する必要があるため、配信対象に含めてもよい。もちろん、配信対象はレーン単位ではなく、道路単位で選定されてもよい。道路単位で配信対象を選定する構成によれば地図サーバ2の処理負荷を緩和することができる。
障害物通知パケットは、例えば上記配信対象の条件を満たす複数の車両に対してマルチキャストで配信可能である。なお、障害物通知パケットはユニキャストで配信してもよい。障害物通知パケットをユニキャスト配信する場合には、障害物地点に近いもの、あるいは、車速を考慮して到着時刻が早いものから優先的に順次送信してもよい。障害物の位置等を通知しても制御への反映や、報知には間に合わないほど近くにいる車両は配信対象から除外しても良い。
その他、配信処理部G4は、路側機を介して障害物通知パケットを送信するように構成されていても良い。そのような構成において路側機は、配信処理部G4から受信した障害物通知パケットを狭域通信により、当該路側機の通信エリア内に存在する車両に対してブロードキャストする。また、障害物通知パケットはジオキャスト方式で、障害物登録地点から所定距離以内の車両に配信されても良い。情報の配信方式としては多様な方式を採用可能である。
また、配信処理部G4は消失通知処理を実施する。消失通知処理は、障害物が消失したことを示す通信パケット(以降、消失通知パケット)を配信する処理である。消失通知パケットは、例えば、障害物通知パケットを送付済みの車両に対して、例えばマルチキャストで配信可能である。消失通知パケットは消失判定部G32にて障害物が消失したと判定され次第、可及的速やかに(つまり即時)配信する。なお、消失通知パケットは、障害物通知パケットと同様にユニキャストで配信してもよい。消失通知パケットをユニキャストで配信する場合には、障害物地点に近いもの、あるいは、車速を考慮して到着時刻が早いものから優先的に順次送信してもよい。障害物が消失したことを通知しても制御への反映や、報知には間に合わないほど近くにいる車両は配信対象から除外しても良い。なお、消失通知パケットの配信対象は、障害物の存在を通知済みの車両に限定されるため、道路リンクや高さ情報を用いて配信対象を選定することとなる。
配信処理部G4は、障害物通知パケットを送信済みの車両の情報を、障害物DB251で管理しても良い。障害物通知パケットを送信済みの車両を管理することで、消失通知パケットの配信対象の選定も容易に実行可能となる。同様に配信処理部G4は、消失通知パケットを送信した車両の情報を障害物DB251で管理しても良い。障害物通知パケット/消失通知パケットを通知済みであるか否かを地図サーバ2にて管理することで、同じ情報が繰り返し配信されることを抑制可能となる。なお、障害物通知パケット/消失通知パケットを取得済みであるか否かは、車両側にてフラグ等を用いて管理されても良い。障害物通知パケットや消失通知パケットが障害物情報に相当する。
<サーバ側処理について>
地図サーバ2が実施する障害物地点登録処理について図16に示すフローチャートを用いて説明する。図16に示すフローチャートは例えば所定の更新周期で実行されればよい。更新周期は例えば5分や10分など、相対的に短い時間とすることが好ましい。
地図サーバ2においてサーバプロセッサ21は、車両から送信される障害物地点報告を受信する処理を一定周期で繰返す(ステップS501)。ステップS501が車両挙動取得ステップに相当する。サーバプロセッサ21は、障害物地点報告を受信すると、その受信した障害物地点報告が報告対象とする地点を特定し(ステップS502)、受信した障害物地点報告を地点毎に区分して保存する(ステップS503)。なお、障害物地点報告で報告される位置情報にはばらつきがあることを考慮し、障害物地点報告は、所定の長さを有する区間ごとに保存されても良い。
そして、サーバプロセッサ21は、所定の更新条件が充足している地点を抽出する(ステップS504)。例えば、所定時間以内の報告受信回数が所定の閾値以上であって、障害物の存在/不在の判定処理を前回実施してから所定の待機時間経過している地点を、更新対象地点として抽出する。待機時間は例えば3分や5分など、相対的に短い時間とすることができる。なお、更新条件は、報告受信回数が所定の閾値以上の地点としてもよいし、前回の更新から所定の待機時間経過した地点としても良い。
後述する出現判定処理の実施条件と、消失判定処理の実施条件は異なっていても良い。出現判定処理を実行するための報告受信回数は、消失判定処理を実行するための報告受信回数よりも少なくともよい。例えば出現判定処理を実行するための報告受信回数は3回とする一方、消失判定処理を実行するための報告受信回数はその2倍の6回としてもよい。当該構成によれば迅速に障害物の出現を検出できるとともに、障害物の消失の判定精度を高めることができる。
更新対象地点の抽出が完了するとそれらのうちの任意の1つを処理対象に設定し(ステップS505)、障害物地点として登録済みの場所であるか、未登録の場所であるかを判別する。処理対象地点が障害物地点として未登録の場所である場合には、出現判定部G31が出現判定処理を実施する(ステップS507)。ステップS507が出現判定ステップに相当する。一方、処理対象地点が障害物地点として登録済みの場所である場合には、消失判定部G32が消失判定処理を実施する(ステップS508)。ステップS508が消失判定ステップに相当する。そして、出現判定処理または消失判定処理の判定結果に基づいて障害物DB251の登録内容を更新する(ステップS509)。
例えば障害物が出現したと判定された地点についてはその情報を障害物DB251に追加登録する。障害物が消失したと判定された地点については、障害物DB251から当該地点情報を削除するか、消失したこと示すフラグである消失フラグを設定する。消失フラグが設定されている障害物地点のデータについてはフラグ設定から所定時間(例えば1時間)経過したタイミングで削除されても良い。なお、存続状況に変化がない地点については登録内容の変更は省略可能である。存続状況に変化がない地点については、判定を実施した時刻情報だけ最新情報(つまり現在時刻)に更新しても良い。
ステップS504で抽出された全ての更新対象地点について、出現判定処理または消失判定処理が完了すると本フローを終了する。一方、未処理の地点が残っている場合には当該未処理地点を対象地点に設定して出現判定処理又は消失判定処理を実行する(ステップS510)。
<出現判定処理について>
ここでは出現判定部G31が実施する出現判定処理について説明する。出現判定部G31は、車線変更や、通行車両の加減速の変化パターン、カメラ画像、車載システム1による障害物の認識結果、レーンごとの通行量の変化パターンなどを用いて、判定対象とする地点に障害物が出現したかどうかを判定する。ここでの地点という表現には所定の長さを有する区間の概念が含まれる。
出現判定部G31は例えば一定時間以内に車線変更が実施された回数が所定の閾値以上となっている地点に障害物が存在すると判定する。車線変更の実施の有無は、車両での判断結果や報告を用いて判定しても良いし、車両の走行軌跡から検出してもよい。また、出現判定部G31は、車線変更が所定数(例えば3台)以上連続して実施されている地点に障害物が発生していると判定してもよい。
車線変更に基づく障害物の位置は、例えば、図17に示すように車線変更を実施した複数の車両の軌跡のうち、もっとも車線変更のタイミングが遅かった走行軌跡Tr1に基づいて決定することができる。例えば、該当レーンにおいて最も進行方向側に位置する離脱ポイント(以降、最奥離脱ポイント)Pd1からさらに所定距離(例えば5m)進行方向側の地点に障害物Obsが存在すると判定する。離脱ポイントは、操舵角が所定の閾値上となった地点としてもよいし、レーン中心からのオフセット量が所定の閾値以上となった地点としてもよい。或いはレーン境界線をまたぎ始めた地点としても良い。ここでの障害物地点は、ある程度の誤差を許容するために、前後方向に所定の幅を有するものとする。ここでの前後方向とは道路が延設されている方向に相当する。
なお、障害物の位置は、最奥離脱ポイントPd1に最も近い復帰ポイント(以降、最前復帰ポイント)Pe1の位置に基づいて決定されてもよい。例えば最奥離脱ポイントPd1と最前復帰ポイントPe1の中間点としてもよい。復帰ポイントは、障害物が存在すると推定されているレーンに車線変更で進入してきた車両の操舵角が所定の閾値未満となった地点とすることができる。なお、復帰ポイントは、障害物が存在すると推定されているレーンに車線変更で進入してきた車両のレーン中心からのオフセット量が所定の閾値未満となった地点でも良い。操舵角の代わりに道路延設方向に対する車体の角度を採用しても良い。その他、障害物の位置は、障害物地点報告に含まれる障害物検出位置情報に基づいて決定されてもよい。複数の車両から、同一障害物地点についての障害物検出位置を取得できている場合には、それらの平均位置を障害物の位置として採用しても良い。
ところで、障害物を避けるための回避行動としては、隣接レーンに離脱するための車線変更(以降、離脱用車線変更)と、元レーンに戻るための車線変更(以降、復帰用車線変更)とがセットで実施される場合が多い。しかしながら、走行軌跡Tr1に示すように、障害物の存在に起因して車線変更した車両が、必ずしも元の車線に戻るとは限らない。例えば、障害物の側方を通過後に右折する予定がある場合や、他車両によって元のレーンに戻る空きスペースが存在しない場合には、元のレーンには復帰しない。また、走行軌跡Tr2として例示するように、障害物の隣接車線を走行していた車両が障害物の横を通過後に、障害物レーンへと車線変更することも考えられる。サーバプロセッサ21は、離脱用車線変更と復帰用車線変更との両方を実施した車両の台数をカウントするのではなく、それぞれの種類の車線変更が集中している箇所を障害物地点として抽出する事により、より速やかに障害物の出現を検知可能となる。もちろん、他の態様として離脱用車線変更と復帰用車線変更との両方を実施した車両の台数に基づいて障害物地点を検出しても良い。
また、図17に示すように、障害物が存在する地点は、地図上においては、一時的に車両の走行軌跡が存在しない領域(以降、無軌道領域Sp)として現れる。出現判定部G31は、所定時間以内の複数の車両の走行軌跡をもとに無軌道領域Spの有無を判定してもよい。そして、出現判定部G31は、無軌道領域Spとなっている地点を障害物地点に設定してもよい。つまり出現判定部G31は、無軌道領域Spが発生したことに基づいて障害物が出現したことを検出しても良い。なお、障害物として落下物を想定する場合には、車線規制などと区別するために、障害物が存在するとみなす無軌道領域Spは所定の長さ(例えば20m)未満の領域に限定されることが好ましい。換言すれば出現判定部G31は、無軌道領域Spの長さが所定の閾値以上である場合には、障害物の種別は落下物ではなく、道路工事や車線規制などと判定してもよい。
また、出現判定部G31は、障害物地点報告に含まれる画像データに基づいて障害物の出現を検出しても良い。例えば複数の車両のカメラ画像から、レーン上に障害物が存在していることが確認されたことに基づいて、障害物が存在すると判定しても良い。また、出現判定部G31は、報告画像として車両から提供されたカメラ画像のうち、所定の基準点よりも回避方向とは反対側の画像領域を検証エリアに設定し、当該検証エリアに対してのみ障害物を特定するための画像認識処理を実行しても良い。車両の回避方向は、当該車両の挙動データに基づき特定されれば良い。検証エリアは、解析エリア又は探索エリアと呼ぶこともできる。
回避方向に応じた検証エリアは、例えば図18に示すように設定されうる。図18に示すPxは基準点であって、例えば固定的な画像フレームの中心点である。基準点Pxは道路端又は車線区画線の回帰線が交差する消失点であってもよい。図18のZR1及びZR2は、回避方向が右である場合に適用される検証エリアである。ZR2は、ZR1に回避物候補が発見されなかった場合に探索される範囲とすることができる。また、図18のZL1及びZL2は、回避方向が左である場合に適用される検証エリアである。ZL2は、ZL1に回避物候補が発見されなかった場合に探索される範囲とすることができる。なお、回避方向に応じた検証エリアは、図18に示す設定態様に限定されない。検証エリアは図19に例示するように、多様な設定態様を採用可能である。図中の破線は、検証エリアの境界線を概念的に示している。
上記構成によれば、障害物を特定するための画像認識を行う範囲が限定されるため、地図サーバ2での処理負荷を軽減可能となる。また、回避物の特定を速やかに実行可能となる。検証エリアの導入は、後述する消失判定部G32による障害物の消失判定にも適用可能である。検証エリア内でのみ障害物が有るか否かを判定する構成によれば、障害物の消失/不在の判定にかかる時間や処理負荷も低減可能となる。なお、地図連携装置50もまた、検証エリアの概念を用いて回避物の探索及び絞り込み処理を実施しても良い。さらに、地図連携装置50は、回避方向に応じた上記検証エリアに対応する画像領域だけを切り出して報告画像として送信するように構成されていても良い。例えば地図連携装置50は、回避方向が右方向である場合、検証エリアZL1及びZL2を含む部分的な画像領域を報告画像として送信してもよい。
また、出現判定部G31は、複数の車両からの障害物地点報告に含まれる、周辺監視センサでの障害物の検出結果に基づいて、障害物が存在すると判定しても良い。例えば直近所定時間以内において障害物が存在することを示す報告の数が所定の閾値以上となった場合に、当該報告が送信された地点に障害物が存在すると判定しても良い。
その他、出現判定部G31は、所定の加減速パターンが発生している地点を障害物地点として検出してもよい。通常、車両前方に障害物が存在することを認識した運転席乗員/自動運転システムはいったん減速し、走行位置の変更をした後に再加速を行う。つまり障害物地点付近では、減速から再加速といった加減速パターンが観測されることが想定される。逆説的に、直近所定時間以内において上記の加減速パターンの発生頻度/連続発生数が所定のしきい値以上となっているエリアを障害物地点として抽出しても良い。ここでの走行位置の変更には、車線変更だけでなく、同一レーン内における走行位置を左右のどちらか隅部に寄せる動きや、レーン境界線をまたいで走行する態様も含まれる。
なお、例えば、鳥や歩行者、野生動物などの移動体が瞬間的な障害物として存在する場合にも、一旦減速してから再加速するといった加減速パターンが観測されうる。そのような事情を踏まえると、加減速パターンを用いた障害物地点の検出は、走行位置の変更を伴うものを母集団として実行することが好ましい。換言すれば、出現判定部G31は、所定の加減速パターンが走行位置の変更と合わせて観測されているエリアを障害物地点として検出することが好ましい。
以上では前後方向の加速度を障害物地点の検出に利用する態様を開示したが、障害物を避けるための走行位置の変更をする場合には、横方向の加速度にも所定のパターンが生じることが想定される。例えば直近所定時間以内において左右方向に所定の加減速パターンが発生している頻度/連続発生数が所定のしきい値以上となっているエリアを障害物地点として抽出しても良い。
その他、障害物が存在するレーンの交通量は、隣接レーンの交通量と比べると、少なくなることが予想される。直近所定時間における交通量が所定時間前に比べて所定値/所定割合減少しているレーンを抽出するとともに、同時間帯におけるその隣接レーンの交通量が増加している場合には、当該レーンに障害物が存在すると判定しても良い。なお、上記方法によって検出したレーンのどこに障害物があるかは、当該レーンを走行した車両の走行軌跡から特定されれば良い。
また、出現判定部G31は、自動運転装置が乗員に権限移譲したこと、或いは、運転席乗員がオーバーライドしたことに基づいて、障害物地点を検出しても良い。例えば、自動運転装置が乗員に権限移譲した際、或いは、運転席乗員がオーバーライドした際の前方カメラ11の画像を取得及び解析して、その原因が障害物であるか否かを判定することにより障害物の出現を検出しても良い。
以上、障害物が出現したと判定するための観点を複数列挙したが、出現判定部G31は上記の何れか1つを用いて障害物が出現したと判定しても良い。また、複数の観点を複合的に組み合わせて用いて障害物が出現したと判定しても良い。複数の観点を複合的に組み合わせて用いて障害物が出現したと判定する場合には、判断材料の種別に応じた重みを付けて判断しても良い。例えば回避行動に対する重みを1とした場合に、カメラ単体での認識結果を1.2、フュージョンでの認識結果を1.5などとしても良い。
また、図20に示すように、車両から提供された画像をサーバプロセッサ21/オペレータが解析した結果として、障害物の存在が確認できたか否かに応じて、障害物が存在すると判定するための、回避行動を実施した車両台数についての閾値を変更してもよい。また、車両の周辺監視センサ又は障害有無判定部F51で障害物が検出されているかどうかで、障害物あり判定に要する回避行動を実施した車両の台数を変更してもよい。なお、図20における車両台数の欄は、回避行動を実施した車両の数の比率や、回避行動を実施したことを示す障害物地点報告を連続して受信した回数に置き換えることが可能である。
<消失判定処理について>
ここでは消失判定部G32が実施する消失判定処理について説明する。消失判定部G32は、出現判定部G31に検出された障害物地点にまだ障害物が存在しているかを、障害物地点報告をもとに定期的に判断する構成である。障害物がなくなったことの判断材料としては、車線変更の有無や、車両の走行軌跡、通行車両の加減速の変化パターン、カメラ画像、車載システム1による障害物の認識結果、レーンごとの通行量の変化パターンなどを採用可能である。
例えば消失判定部G32は、障害物地点において車線変更が実行された回数が減少したことに基づいて判定可能である。例えば、障害物地点付近での車線変更の回数が所定の閾値未満となった場合に、障害物がなくなったと判定しても良い。また、消失判定部G32は、車両挙動として障害物地点付近での車線変更の回数が減少したことを、障害物が検出された時点と比較して、統計的に有意な差が表れた場合に、障害物が消失したと判断してもよい。
消失判定部G32は障害物地点付近においてレーン境界線をまたいで走行する車両の数が減少したことに基づいて、障害物が消失したと判定しても良い。また、消失判定部G32は障害物レーンにおけるレーン中心からのオフセット量の平均値が所定の閾値以下となったことに基づいて障害物が消失したと判定してもよい。つまり消失判定部G32は、障害物地点付近を通行する車両の横位置変化量が所定の閾値以下となった場合に、障害物がなくなったと判定しても良い。
消失判定部G32は、障害物地点を含むレーン(つまり障害物レーン)を、車線変更等の回避行動せずにそのまま通行する車両が出現したことに基づいて、障害物がなくなったと判定してもよい。障害物地点を走行する車両の出現は、例えば走行軌跡から判断可能である。より具合的には、ある車両の走行軌跡が障害物地点上を通過している場合に、障害物はなくなったと判定しても良い。また、その台数が所定の閾値を超過した場合に障害物が消失したと判定してもよい。
また、消失判定部G32は、障害物地点報告にカメラ画像が含まれる場合、当該カメラ画像を解析することにより、障害物がまだあるかどうかを判定しても良い。消失判定部G32は複数の車両からの画像データの解析結果を統計的に処理して、障害物が存続しているか否かを判断しても良い。ここでの統計的な処理には多数決や平均化が含まれる。
消失判定部G32は、障害物地点報告に、周辺監視センサが障害物を検出したか否かを示す情報(つまり障害物の検出結果)が含まれている場合には、当該情報を統計的に処理することにより、障害物がまだ存在するか消失したかを判定しても良い。例えば障害物を検出しなかったことを示す報告の受信回数が所定の閾値以上となった場合に、障害物は消失したと判定しても良い。
消失判定部G32は、障害物地点付近を通行する車両の挙動として、所定の加減速パターンが観測されなくなった場合に、障害物は消失したと判定してもよい。また、障害物レーンと、その左右の隣接レーンとの間で交通量に有意な差がなくなったことや、その差が縮まったこと、障害物レーンの通行量が増加したことに基づいて、障害物が消失したと判定してもよい。通行量は、例えば障害物地点からその手前400mまでの道路区間における単位時間の通過車両数とすることができる。
以上、障害物が消失した判定するための観点を複数列挙したが、消失判定部G32は上記の何れか1つを用いて障害物が消失したと判定しても良いし、複数の観点を複合的に組み合わせて用いて障害物が消失したと判定しても良い。複数の観点を複合的に組み合わせて用いて障害物が消失したと判定する場合には、判断材料の種別に応じた重みを付けて判断しても良い。車両挙動に対する重みを1とした場合に、カメラ単体での認識結果を1.2、フュージョンでの認識結果を1.5などとしても良い。
また、図21に示すように、車両から提供された画像をサーバプロセッサ21/オペレータが解析した結果として、障害物の消失が確認できたか否かに応じて、障害物が消失したと判定するための、該当地点を直進した車両台数についての閾値を変更してもよい。また、車両の周辺監視センサ又は障害有無判定部F51で障害物が検出されているかどうかで、障害物消失判定に要する、該当地点を直進した車両台数の閾値を変更してもよい。なお、図21における車両台数の欄は、該当地点を直進した台数の比率や、障害物が存在しないことを示す障害物地点報告を連続して受信した回数に置き換えることができる。ここでの直進とは、車線変更等の走行位置の変更をせずに、それまで走行してきたレーンを道なりに沿って走行することを指す。ここでの直進とは必ずしも操舵角を0°に維持して走行するものではない。
<障害物の出現/消失の判定方法の補足>
道路構造などの静的な地図要素は経時的な変化が乏しい地図要素であるため、それらについての地図データの更新には、1週間から1ヶ月の間に蓄積された多数の走行軌跡を用いることができる。多数の車両からの報告を母集団として地図データを更新する構成によれば、精度を高めることが期待できる。
しかしながら、落下物等の障害物は、道路構造等に比べて存続状態が相対的に短い時間で変化する、動的な地図要素に相当する。そのため、障害物の発生及び消失の検知は、より一層のリアルタイム性が要求される。障害物の存続状態や位置等の情報の精度を高めるためには、多数の車両からの報告を母集団とすることが好ましいが、車両からの報告をより多く集めようとすると時間がかかり、リアルタイム性が損なわれる。つまり、障害物の存在/消失を検出する構成においては、静的地図を生成する場合よりもリアルタイム性を確保するために、より少ない車両報告から、できる限り精度よく判定して配信する必要がある。
そのような事情から、上記の出現判定部G31は、例えば、現時点から所定の第1時間以内に取得された障害物地点報告に基づいて障害物地点の検出を行う。また、消失判定部G32は、所定の第2時間以内に取得された障害物地点報告を元に障害物の消失/存続判定を行う。第1時間、及び第2時間は何れもリアルタイム性を確保するために、例えば90分よりも短い時間に設定されていることが好ましい。例えば第1時間は、10分や、20分、30分などに設定される。第2時間もまた、10分や、20分、30分とすることができる。第1時間と第2時間は同じ長さであっても良いし、異なる長さとなっていても良い。第1時間や第2時間は5分や1時間などであってもよい。
また、障害物が出現したとの情報は、障害物が消失したとの情報よりも、走行制御上の有用性が大きいとの考え方がある。障害物が存在するレーンについての情報が地図データとして事前に取得できれば、余裕を持った回避行動を計画及び実施可能となるためである。これに伴い、障害物が存在することについては、より早く検出して配信したいといった需要も想定される。そのような事情から、障害物が存在することの検出及び配信開始を早期に実施可能とするために、第1時間は第2時間よりも短く設定されていても良い。
また、障害物がまだ存在しているにもかかわらず障害物がなくなったと誤判定及び誤配信することは避けたいといった需要も想定される。そのような需要を鑑みて、第2時間は第1時間よりも長く設定されても良い。第2時間は第1時間よりも長く設定した構成によれば、障害物の発生を迅速に通知可能となるとともに、障害物が消失したと誤判定するおそれも低減可能となる。
出現判定部G31及び消失判定部G32は、取得時刻が新しい報告に示される情報を、例えば重みを大きくするなど、優先的に用いて障害物の出現/存続状態を判定するように構成されていても良い。例えば10分以内に取得した情報の重みを1とした場合に、30分以内であって10分以上過去に取得した情報の重みは0.5、それよりも過去に取得した情報の重みは0.25など、情報の鮮度に応じた重み係数をかけて統計処理しても良い。そのような構成によれば、最新の状態をより強く判断結果に反映させることができ、リアルタイム性を高めることができる。
また、報告元の特性に応じて重みをかけて統計処理しても良い。例えば自動運転車からの報告の重みは大きく設定されても良い。自動運転車は相対的に高性能なミリ波レーダ12や前方カメラ11、LiDARなどを搭載していることが期待できる。また、自動運転車は不必要に走行位置の変更する可能性は低い。自動運転車による走行位置の変更は、相対的に障害物を回避するための動きである可能性が高い。よって、自動運転車からの報告を優先的に使用することにより、障害物の有無の判定精度を高めることができる。
また、出現判定部G31及び消失判定部G32は、車線変更などの走行位置の変更を頻繁に実施する車両である走行位置不安定車両からの報告はノイズとみなして判定処理に使用しないように構成されていても良い。走行位置不安定車両は、車両位置管理部G2が、逐次アップロードされてくる車両状態報告に基づき特定され、フラグ等により管理されれば良い。そのような構成によれば、車線変更を頻繁に実施するユーザが運転する車両からの報告に基づいて障害物の有無を誤判定するおそれを低減できる。走行位置不安定車両とみなす条件は多様な条件を適用できる。例えば一定時間以内の車線変更の実施回数が所定の閾値以上となっている車両を、走行位置不安定車両として抽出しても良い。ここでの閾値は、障害物回避のための車線変更(離脱と復帰の2回)を除くため、3回以上に設定されていることが好ましい。例えば走行位置不安定車両は、例えば10分などの一定時間以内に車線変更を4回以上実施している車両とすることができる。
また、図20及び図21に例示したように、障害物が出現したと判定する条件(例えば閾値など)と、障害物が消失したと判定する条件は異なっていても良い。例えば障害物が消失したと判定する条件は障害物が出現した判定する条件よりも厳しく設定されていても良い。障害物が出現したことの判断材料と、障害物が消失したことの判断材料は相違していてもよい。また、出現判定時と消失判定時とで、情報種別毎の重みは異なっていても良い。例えば障害物が出現したことの判定時には、カメラ画像の解析結果の重みを車両挙動データよりも大きくする一方、障害物が消失したと判定する場合には、車両挙動データの重みをカメラ画像の解析結果よりも大きくしても良い。カメラ画像は物体があることの検証には向いている一方、物体がないことの検証には、例えば別の場所を撮像している可能性を考慮すると信頼度が劣るためである。
その他、出現判定部G31及び消失判定部G32の少なくとも何れか一方は、複数の車両から報告された障害物検出位置のばらつきに基づいて、障害物が、例えば発泡スチロールなどといった、風で移動しうる軽量物であるかどうかを判定しても良い。
<車両制御への適用例>
次に障害物情報を用いた車両制御例について図22を用いて説明する。図22は例えば前述のアップロード処理などとは独立して実行されれば良い。図22に示す車両制御処理は例えば運転支援ECU60による自動車線変更機能がユーザ操作に基づいて有効化されている場合に、所定の周期で実行されればよい。なお、自動車線変更機能が有効化されている状態には、所定の走行計画に従って車両を自律的に走行させる自動運転中も含まれる。図22に示す車両制御処理は一例としてステップS601~S605を含む。ステップS601~S605は運転支援ECU60及び地図連携装置50が連携して実行される。
まずステップS601では、地図連携装置50がメモリM1に保存されている地図上障害物情報を読み出し、運転支援ECU60に提供してステップS602に移る。ステップS602では運転支援ECU60が、地図上障害物情報に基づき、自車両の走行レーン上、前方所定距離以内に障害物が存在するか否かを判定する。当該処理は、所定距離以内に地図サーバ2が認識している障害物が存在するか否か、つまり障害物登録地点が存在するか否かを判定する処理に相当する。自車走行レーン上に障害物が存在しない場合ステップS602を否定して本フローを終了する。その場合、別途作成されている走行計画に基づいた走行制御を継続する。一方、自車走行レーン上に障害物が存在する場合、ステップS602を肯定判定してステップS603を実行する。
ステップS603では、走行計画を修正する。すなわち、障害物が存在する現レーンから隣接レーンへと車線変更する内容を含む走行計画を作成する。修正後の走行計画には、現レーンから離脱するポイント(つまり車線変更点)の設定も含まれる。ステップS603が完了するとステップS604を実行する。
ステップS604ではHMIシステム16と連携して、修正後の走行計画に関する情報を提示する。例えば図4に例示されるような画像を表示し、障害物を避けるための車線変更を実施することを乗員に通知する。ステップS604が完了するとステップS605に移る。ステップS605では車線変更を実行して本フローを終了する。
なお以上では、障害物レーンが自車走行レーンではない場合には、特段の処理を実施しない構成を開示したがこれに限らない。自車レーンの隣接レーンに障害物が存在する場合には、当該障害物レーンを走行している他車両が自車レーンに車線変更してくる可能性が高い。そのような事情を鑑みて、隣接レーンに障害物が存在する場合には、先行車両との車間距離を長めに設定したり、隣接レーンからの割り込みに注意するように乗員に通知したりするなど、所定の割り込み警戒処理を実行することが好ましい。
<上記システムの作動とその効果の一例について>
上記のシステム構成によれば、まず地図連携装置50が、回避行動が行われたことをトリガとして障害物地点報告をアップロードする。地図サーバ2は、車両からアップロードされてくる情報に基づいて路上に障害物が存在する地点を検出する。そして、当該障害物が存在する地点を走行予定の車両に対して、当該障害物の存在を通知する。また、地図連携装置50は、地図サーバ2から通知された障害物登録地点付近を通過する際の自車両の挙動を示す車両挙動データを地図サーバ2に送信する。
ここで、仮に障害物が残存しており、自車両が障害物のあるレーンを走行している場合には、地図連携装置50が地図サーバ2に送信する車両挙動データは、回避行動が行われたことを示すデータとなる。また、仮に自車両が障害物のないレーンを走行している場合であっても、障害物を避けるために車線変更してきた他車両との衝突を避けるために減速しうる。つまり、割り込み車両との衝突を避けるための急減速といった、障害物が存在しない時には生じ難い、特異な挙動が観測されうる。一方、障害物が消失している場合には、障害物や割り込み車両を避けるための車両挙動は観測されなくなる。このように障害物登録地点付近を通過する際の車両挙動データは、障害物が残存しているか否かの指標として機能する。
故に、地図サーバ2は、複数の車両から提供される車両挙動データに基づき、障害物登録地点にまだ障害物が残存しているのか、消失したのかを特定可能となる。また、障害物登録地点を通行する車両からの報告に基づいて、障害物の消失を検知した場合には、当該障害物の情報を配信済みの車両に対し、当該障害物が消失したことを通知する。
図23は地図上障害物情報の有無による車両の挙動の変化を概念的に示した図である。地図上障害物情報が存在しない場合には、図23の(A)に示すように、前方カメラ11が障害物を認識可能な位置に達してから、車線変更等の回避行動が実施される。地図サーバ2はそのような車両挙動を収集することで、障害物の存在/出現を検知し、障害物情報として配信し始める。認識可能位置は、前方カメラ11やミリ波レーダ12の性能及び障害物の大きさ等によって変動しうる。認識可能位置は、晴天時など良好な環境下において、障害物から例えば100mから200m程度手前の地点となる。
図23の(B)は、地図上障害物情報を取得済みの車両の挙動を概念的に示している。地図サーバ2から地図上障害物情報を取得済みの車両は、図23(B)に示すように、認識可能な位置に達する前から車線変更を実施可能となる。つまり、事前に余裕をもって車線変更や、ハンドオーバー等の対応を実施可能となる。
一方、障害物は時間の経過に伴い、撤去されるなどして消失する。現実世界において障害物が消失してからそのことを地図サーバ2が検知するまでには所定の時間差(すなわち遅延)が存在する。そのため、現実世界において障害物が消失した直後においては図23の(C)に示すように、実際には障害物が存在しないにも関わらず、地図上障害物情報に基づいて車線変更を実施した車両が通過するケースが発生する。
しかしながら、本実施形態の地図サーバ2は、障害物登録地点付近を通過する車両から、障害物地点報告を取得可能に構成されているため、当該障害物地点報告に基づいて速やかに障害物の消失を認識できる。その結果、障害物の消失を車両に速やかに配信可能となり、車両側にて不要な車線変更やハンドオーバー等が実施されるおそれを低減できる。図23の(D)は障害物の消失が地図サーバ2で確認された後の様子を示している。
また、本開示の地図サーバ2は、複数の車両からの報告に基づいて、及び/又は、複数の観点で障害物が真に消失したか否かを検証する。このような構成によれば、実際には障害物が存在しているにも関わらず、障害物が消失したと誤配信するおそれを低減できる。
また本開示の構成によれば、車両からアップロードされた画像の解析結果として障害物が消失したとの判定結果が得られている場合には、障害物が消失したと判定するための、回避行動をしなかった車両の台数に対する閾値を低減する。例えば、サーバプロセッサ21での画像解析の結果からも障害物が消失したことが確認できている場合には、1台から数台程度の車両挙動情報から障害物が消失したと判定してもよい。また、複数の車両での障害物認識結果を統計処理することにより障害物が消失したとの判定結果が得られている場合には、障害物が消失したと判定するための、回避行動をしなかった車両の台数に対する閾値を低減する。当該構成によれば、より迅速に障害物が消失したとの判定を確定できる。その結果、例えば図23の(C)から(D)への移行期間を短縮可能となる。車両挙動と画像解析を組み合わせて障害物の存続状況を判定する構成によれば、リアルタイム性と情報の信頼性を両立可能となる。
加えて、地図サーバ2は、車両が当該障害物を回避するための行動をしなくなったことを要件として、障害物が消失したとの判定を確定する。画像だけでは判断しないため、障害物が偶発的にカメラに写っていない場合に、障害物が消失したと誤判定するおそれも低減できる。
また上記構成では落下物だけでなく、一般道路における駐車車両(路上駐車車両)も障害物として検出する。路上駐車車両は、車線を半分近く塞ぐように存在していることがあり、一般道路における自動運転/運転支援機能の障害となりうる。例えば、路上駐車車両がレーンを塞いでいることに基づいて、自動運転等のサービスが中断される可能性がある。上記のように路上駐車車両の位置を配信する構成によれば、余裕をもってハンドオーバーを実行したり、路上駐車車両が存在しない経路を採用したりすることが可能となる。
また、上記の構成では複数の車両の挙動をベースに障害物の発生から消失を検出する。このような構成によれば、特許文献1に開示の構成に比べて、雨天時や夜間、逆光時に落下物の有無を誤判断するおそれを低減できる。
加えて、障害物として落下物を想定した場合、画像認識だけでは、落下物が走行に支障のある物体であるのか、避けなくともよいものなのかまでは判断することが難しい。故に画像認識だけで落下物等の障害物を検出する構成では、車両が避けなくともよいものまで、障害物として検出して配信してしまうおそれがある。ひいては、障害物の存在を通知した車両に対して不要な車線変更等の回避行動を実施させてしまうおそれが生じる。なお、走行に支障のある物体とは例えばレンガやタイヤなどの立体物を指す。避けなくともよいものとは、例えば折り畳まれた段ボールなどの平坦なごみを指す。
これに対して本開示の構成では、複数の車両の挙動をベースに障害物の有無を判定する。路上に存在する障害物らしき物体が、車両が避けなくともよいものであれば、複数の車両の中には、回避行動をせずに、当該物体の上を通行する車両が存在する可能性が高い。故に、本開示の構成によれば、平坦なごみを障害物として検出して配信するおそれを低減できる。
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
<障害物の消失判定処理について>
消失判定部G32は、車両状態報告に基づいて、障害物登録地点を直進する車両が出現したかを判定し、障害物登録地点の上を直進する車両が生じたことに基づいて、障害物が消失したと判定してもよい。そのような構成によれば、車両状態報告とは別に障害物地点報告を送信させる必要はない。その結果、車両側での処理が簡略化される。つまり、各車両に車両状態報告を送信させる構成においては、当該車両状態報告の内容を車両挙動データとして援用できるため、障害物地点報告は任意の要素となる。
<障害物の出現/消失の判定材料について>
以上では車載システム1は、前方カメラ11を用いて障害物を検出する構成を開示したが、これに限らない。車両の側方を撮像する側方カメラや、後方を撮像する後方カメラを用いて、障害物を検出するように構成されていても良い。同様に、車両の側方に向けて探査波を送信する側方ミリ波レーダや、後側方(換言すれば斜め後ろ)を検知範囲とする後側方ミリ波レーダを用いて、障害物を検出するように構成されていても良い。
例えば、車載システム1または地図サーバ2は、側方カメラの画像を用いて障害物の有無を判断してもよい。障害物がレーンを塞ぐ場合、車線変更の実施が予想されるが、車線変更後は障害物レーンを走行しないので、前方カメラ11に障害物が写りにくい。その結果、車線変更後は障害物がないと判定されてしまう恐れがある。障害物が存在する方の側方カメラの画像データを障害物の有無の判断に使用する構成によれば、障害物の側方通過時に障害物を見失うおそれを低減できる。なお、側方カメラは、サイドミラーに設けられた後側方をみるものでもよい。加えて、側方カメラと前方カメラ11は相補的に使用されても良い。例えば報告データ生成部F5は、障害物登録地点接近中に撮像された前方カメラ11の画像と、走行位置変更後に撮像された側方カメラの画像とを含む障害物地点報告をアップロードするように構成されていてもよい。報告画像は、側方カメラや後方カメラの画像から選択されてもよい。前方カメラ11や、側方カメラ、後方カメラなど、車外を撮像する車載カメラで撮影された車外画像に相当する。
また、車両が複数のカメラを備える場合には、車両の周辺環境に応じて、障害物認識に使用するカメラや、アップロードするカメラ画像を切り替えてもよい。例えば、前方車間距離が所定の閾値未満であって、且つ後方車間距離が所定の閾値以上である場合には、前方カメラ11の画像の代わりに、後方カメラや側方カメラの画像を車載システム1又は地図サーバ2による障害物の有無の判断材料として使用してもよい。また、先行車両がトラックや消防車などの大型車両であり、且つ、後続車両が軽自動車などの小型車両である場合も同様に、後方カメラや側方カメラを、障害物の有無判定に使用するカメラとして採用してもよい。つまり、前方の視界が開けているか否かに応じて、障害物の有無判定に使用するカメラを使い分けても良い。ミリ波レーダについても同様に、複数のミリ波レーダを備える場合には、それら複数のミリ波レーダを周辺環境に応じて使い分けても良い。
また、障害物を検出するためのデバイスとしては、カメラ、ミリ波レーダのほかに、LiDARや、ソナーなどを使用してもよい。ミリ波レーダや、LiDAR、ソナーなどが測距センサに相当する。地図連携装置50は、複数種類のデバイスを併用して障害物等を検出するように構成されていてもよい。すなわち、地図連携装置50はセンサフュージョンにより、障害物を検出してもよい。
障害有無判定部F51または障害物情報管理部G3は、図24に示すようにDSM(Driver Status Monitor)17が検出する運転席乗員の目の動きから、障害物の有無を判定しても良い。DSM17は、近赤外カメラを用いて運転席乗員の顔部を撮影し、その撮像画像に対して画像認識処理を施すことで、運転席乗員の顔の向きや視線方向、瞼の開き度合い等を逐次検出するデバイスである。DSM17は、運転席乗員の顔を撮影可能なように、例えば運転席のヘッドレスト部に近赤外カメラを向けた姿勢にて、ステアリングコラムカバーの上面や、インストゥルメントパネルの上面、ルームミラー等に配置されている。
例えば障害有無判定部F51または障害物情報管理部G3は、障害物の側方を通行する際に、障害物があると判断されている方向に運転席乗員の視線が向けられたことに基づいて障害物があると判定してもよい。また、障害物の隣接レーンを走行している車両の乗員が、障害物が存在する方向を見なくなったことに基づいて、障害物は消失したと判定しても良い。つまり、障害物の側方を通行する際の運転席乗員の目の動きもまた、障害物の有無の判断材料となりうる。車載システム1は、障害物の側方を通行する際の運転席乗員の視線方向の時系列データを障害物地点報告としてアップロードしても良い。また、車載システム1は障害物の側方を通行する際、障害物登録地点に運転席乗員の視線が向けられたか否かの判定結果をアップロードしても良い。障害物情報管理部G3は、乗員の視線情報に基づいて障害物が存在するのか否かを判定しても良い。
なお、障害物の種別がわかりにくいものであるほど、人の目を惹きつける可能性が高い。故に、上記方法によれば画像認識などで障害物であると判別しづらい物体を、障害物として検出しやすくなるといった利点がある。また、障害物が駐車している大型車両である場合にも、当該駐車車両の影から人が飛び出してこないかを確認するために、運転席乗員は駐車車両の方に視線を向けることが期待できる。つまり、上記構成によれば障害物としての駐車車両の検出精度も向上可能となる。
その他、地図連携装置50は、検出している障害物の種別に応じて、アップロードする障害物地点報告の内容やフォーマットを変更しても良い。例えば、障害物が落下物などのポイント的な物体である場合に、位置情報や種別、大きさ、色合いなどをアップロードする。一方、障害物が車線規制や工事など、道路延設方向に所定の長さを有するエリア的な事象である場合には、当該障害物区間の始端と終端位置、及び障害の種別をアップロードしてもよい。
また、地図連携装置50は、周辺車両の挙動を障害物が存在するか否かの判断材料として地図サーバ2にアップロードしても良い。例えば先行車両も車線変更している場合には自車両挙動と合わせて先行車両の挙動データも地図サーバ2にアップロードしてもよい。具体的には前方カメラ11で前方の車両のレーン中心に対するオフセット量をデータ化し、障害物登録地点の手前で車線変更したか否かを判定し、その判定結果を含む障害物地点報告を送信しても良い。
周辺車両の挙動は、周辺監視センサからの入力信号に基づき特定可能である。より具体的には周辺車両の挙動はSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などの技術を援用して特定可能である。周辺車両の挙動は、車々間通信による受信データに基づいて特定されても良い。また、上記の先行車両に限らず、後続車両が車線変更したか否かをアップロードしても良い。アップロードする周辺車両の挙動は、車線変更に限らず、同一レーン内における走行位置の変化などであってもよい。また、隣接車線からの割り込みを、隣接車線に障害物があることの指標としてアップロードしてもよい。車々間通信や周辺監視センサなどからの信号に基づき、自車両周辺を走行する他車両の挙動を取得する構成もまた車両挙動検出部に相当する。周辺車両の挙動を示すデータが他車挙動データに相当する。以降では他車挙動データとの区別のため、自車両についての車両挙動データを自車挙動データとも称する。
ところで、地図連携装置50を搭載している車両である搭載車両は、地図サーバ2から障害物情報を取得できている場合、事前に障害物がないレーン等に車線変更した上で、障害物の側方を通過することが想定される。故に、或る地点に障害物が存在することを地図サーバ2が認識している状態においては、搭載車両は当該障害物登録地点付近で回避行動を行いにくくなる。障害物登録地点の直前で回避行動を行う車両は、せいぜい地図連携装置50を搭載していない車両である非搭載車両となりうる。もちろん、障害物情報の配信開始後においても、例えば非搭載車両の割り込みに由来する減速など、搭載車両もまた障害物の存在を示唆する挙動を行いうる。しかしながら、割り込み車両に対する減速がいつも行われるわけではない。ある地点に障害物が存在するとの情報の配信開始後は、配信開始前よりも、該当地点における搭載車両の自車挙動データの有用性は相対的に下がってしまう。
そのような事情に基づき、地図連携装置50は、障害物登録地点を通過する場合には、障害物地点報告として、自車挙動データよりも、周辺車両の挙動データ(つまり他車挙動データ)や、周辺監視センサの検出結果を優先的に送信するように構成されていても良い。例えば地図連携装置50は、障害物登録地点通過時、自車挙動データは送らずに、他車挙動データ及び周辺監視センサの検出結果の少なくとも何れか一方を送信するように構成されていてもよい。ここで報告対象とする周辺車両とは、障害物レーンを走行する他車両とすることが好ましい。障害物レーンが最も障害物の影響を受けやすく、障害物が残存しているか否かの指標として有用性が高いためである。上記の構成によれば、障害物の消失検知に関して、有用性の低い情報のアップロードを抑制できる。また、障害物の消失検知に際して有用性の高い情報を優先的に智頭サーバ2に集めることが可能となる。
なお、障害物登録地点に接近中であっても、ドライバの指示に基づき、自車走行レーンとして障害物レーンが採用されることもありえる。地図連携装置50は、障害物登録地点よりも所定距離手前となる判定ポイントにおいて、自車走行レーンが障害物レーンであった場合には、周辺車両の挙動データよりも優先的に自車両の挙動データをアップロードするように構成されていても良い。地図連携装置50は、判定ポイントでの自車走行レーンが障害物レーンである場合には障害物地点報告として自車挙動データを含むデータセットを送信する一方、自車走行レーンが障害物レーンではない場合には自車挙動データを含まないデータセットを送信しても良い。判定ポイントは、例えば障害物登録地点から報告対象距離だけ自車両側となる地点に設定されうる。
地図連携装置50は、判定ポイントでの自車走行レーンが障害物レーンではない場合には障害物レーンである場合に比べて、障害物登録地点付近を通過した際に送信する障害物地点報告に含める自車挙動データの情報量を削減するように構成されていても良い。挙動データの情報量の削減は、例えばサンプリング間隔を長くしたり、自車挙動データとして送信する項目数を削減したりすることによって実現されうる。障害物地点報告に含まれる自車挙動データの情報量を削減した態様には、障害物地点報告が自車挙動データを一切含まない場合も含まれる。
さらに、地図連携装置50は、地図サーバ2から通知されていない障害物を発見した場合と、受信済みの障害物登録地点を通過した場合とで、地図サーバ2に送信するデータセットの中身を変更するように構成されていても良い。便宜上、地図サーバ2から通知されていない障害物を発見した場合に送信する、障害物地点報告としてのデータセットのことを未登録地点報告とも記載する。また、地図サーバ2から通知されている障害物の付近を通過した際に地図サーバ2に送信する、障害物地点報告としてのデータセットのことを登録済み地点報告とも記載する。未登録地点報告は、例えば自車挙動データと周辺監視センサから入力データとを含むデータセットとする一方、登録済み地点報告は、例えば他車挙動データと周辺監視センサから入力データとを含むデータセットとすることができる。登録済み地点報告は、未登録地点報告よりも、自車挙動データのサイズが例えば半分以下に抑制されたデータセットとする事ができる。当該構成によれば、障害物の出現判定及び消失判定のそれぞれの特性に応じた情報を効率的に地図サーバ2に集める事が可能となる。
なお、周辺車両の挙動をアップロードする構成では、地図サーバ2に同一車両の挙動が多重報告される可能性が生じる。同一車両の挙動が地図サーバ2で多重にカウントされることを防ぐため、自車両及び周辺車両の挙動はそれぞれの車両IDと対応づけてアップロードすることが好ましい。周辺車両の車両IDは、車車間通信で取得したものであってもよいし、ナンバープレートを画像認識することで取得したものであってもよい。
<地図連携装置50による検出信頼度の算出について>
障害有無判定部F51は、前方カメラ11で検出されているか否か、ミリ波レーダ12で検出されているか、及び回避行動の有無の組み合わせによって、障害物が実際に存在する可能性を検出信頼度として算出しても良い。例えば図25に示すように障害物が存在することを示唆する観点(センサや挙動など)が多いほど、検出信頼度を高く算出するように構成されていても良い。なお、図25に示す検出信頼度の決定態様は一例であって適宜変更可能である。
なお、図25の車両挙動は、障害物が自車両の走行レーン上の前方に存在する場合には、自車両の回避行動を指すものとなる。障害物が隣接レーンに存在する場合には、障害物レーンを走行する周辺車両の挙動を検出信頼度の算出に代用可能である。例えば、障害物レーンから自車走行レーンへの割り込みの有無を、検出信頼度を算出するための観点として採用可能である。また、障害物レーンから自車走行レーンへの割り込みがある場合には、自車走行レーンの車の流れも遅くなることが見込まれる。故に、障害物レーンの隣接レーンを走行している場合において、障害物登録地点の手前で自車両の走行速度の低下が見られた場合には、周辺車両の回避行動が行われていると判定しても良い。
障害物地点報告には障害有無判定部F51が算出した検出信頼度が含まれていても良い。地図サーバ2は複数の車両からの報告に含まれる検出信頼度を統計処理して、障害物が存在するか否かを判定してもよい。検出信頼度は、DSM等にて検出される乗員の視線情報を併用して評価されても良い。例えば障害物の側方を通行する際に、障害物があると判断されている方向に運転席乗員の視線が向けられていた場合には検出信頼度をより高く設定しても良い。
上記の検出信頼度は、障害物が存在するという報告の信頼度を示す。故に、上記の検出信頼度は存在報告信頼度とも呼ぶことができる。なお、障害有無判定部F51は、前方カメラ11で検出されているか否か、ミリ波レーダ12で検出されているか、及び回避行動の有無の組み合わせによって、障害物が存在しない可能性を不検出信頼度として算出しても良い。不検出信頼度は、上記検出信頼度の裏返しに相当する。検出信頼度が高いほど、不検出信頼度は低く設定されれば良い。不検出信頼度は、障害物が存在しないという報告の信頼度を示す。故に、上記の不検出信頼度は不在報告信頼度とも呼ぶことができる。
<地図サーバ2による実在確度の算出について>
地図サーバ2は、障害物が存在する可能性を実在確度として算出して配信するように構成されていても良い。実在確度は、障害物が存在するという判定結果、及び、配信情報の信頼度に相当する。例えば障害物情報管理部G3は、図26に示すように障害物が存在するとの判定結果の信頼度を実在確度として算出する確度算出部G33を備えていてもよい。
確度算出部G33は、複数の車両の挙動データをもとに、回避行動を実施した車両の割合等に基づいて実在確度を算出する。例えば確度算出部G33は、図27に示すように、障害物の存在を報告した車両の台数が多いほど、実在確度を高く設定する。障害物の存在を報告した車両とは、回避行動を実施した車両のほか、例えば障害物レーンの隣接レーンを走行していた車両であって、検出障害物情報をアップロードした車両が含まれる。また、確度算出部G33は、サーバプロセッサ21による画像解析またはオペレータの目視によって障害物の存在を確認できた場合を100として、障害物の存在を示す報告の数や種類に応じて実在確度を算出しても良い。例えば、回避行動を実施した車両の数や、周辺監視センサで障害物を検出した車両の数が多いほど、実在確度を高く設定しても良い。
確度算出部G33は、障害物が存在するとの報告の数と、障害物が存在しなかったとの報告の数の差分に基づいて算出されても良い。例えば障害物が存在するとの報告の数と、障害物が存在しなかったとの報告の数が同数である場合を実在確度50%としてもよい。確度算出部G33は、複数の車両からの報告に含まれる検出信頼度を統計処理して、実在確度を算出してもよい。確度算出部G33は、実在確度を定期的に算出してもよい。
配信処理部G4は、上述した実在確度を含む障害物通知パケットを配信しても良い。配信処理部G4は、ある地点における障害物の実在確度が変化した場合には、当該地点についての障害物通知パケットを配信済みの車両に対しても、更新された実在確度を含む障害物通知パケットを配信しても良い。配信処理部G4は、例えば、障害物の存在する確率を含む情報とともに定期的に障害物通知パケットを配信しても良い。例えば、実在確度を「まだ有る」、「まだある可能性が高い」、「無くなった可能性が高い」などの3段階で表した障害物通知パケットを一定間隔で配信してもよい。
ところで、実在確度を100%から引いた値は、障害物が消失した確率を示す消失確度に相当する。配信処理部G4は、障害物の消失確度を含む消失通知パケットを送信しても良い。また、障害物を撤去した人物(例えば作業者)や車両が、障害物を撤去した旨の報告を地図サーバ2に送信可能に構成されていても良い。地図サーバ2は、作業者等から障害物を撤去した旨の報告を受信した場合には、消失確度を高く設定した消失通知パケットを即時配信してもよい。
<障害物情報の配信態様について>
障害物通知パケットには、障害物の位置、種別、大きさが含まれていることが好ましい。また、障害物の位置情報には、位置座標だけでなく、車線内の詳細位置として障害物の端部の横位置が含まれていても良い。障害物通知パケットには、障害物によって塞がれている部分を除いた、障害物レーンにおいて車両が走行可能な領域の幅情報が含まれていても良い。
障害物通知パケットに障害物端部の横位置情報や障害物レーンの走行可能幅が含まれている構成によれば、障害物通知パケットを受信した車両は、車線変更が必要なのか、横位置調整で回避可能なのかが判別可能となる。また、レーン境界線をまたいで走行する場合においても、隣接レーンへのはみ出し量を演算可能となる。障害物を避けるための隣接レーンのはみ出し量を算出できれば、隣接レーンを走行する車両に対して自車両のはみ出し量を車々間通信で通知可能となり、周辺車両と走行位置の協調を図ることが可能となる。
また、障害物通知パケットには、障害物が発生したと判定した時刻情報や、当該障害物がまだ存在していると判定した最新(換言すれば最終)時刻が含まれていても良い。これらの判定時刻が含まれていることにより、情報の受け手側である車両は受信した情報の信頼性を推定可能となる。例えば最終判定時刻からの経過時間が少ないほど信頼性が高い。障害物通知パケットは、当該障害物の存在を確認した車両の台数などの情報が含まれていても良い。障害物の存在を確認した台数が多いほど、当該障害物情報の信頼性を高く見積もることができる。なお、障害物情報の信頼性が高さに応じて、車両制御に用いるか、乗員への通知に留めるかといった車両での制御態様を変更してもよい。
障害物通知パケットには、障害物の色合いや、特徴が含まれていても良い。また、或る車両で撮像された障害物の画像が含まれていても良い。当該構成によれば、障害物登録地点を通過予定の車載システム1又は乗員は、地図サーバ2から通知されている障害物と現実世界との障害物との対応付けが容易となる。またその結果として、地図サーバ2から通知されている障害物がまだ存在するのか消失したのかの判定精度が向上する。
配信処理部G4は、障害物レーンにおいて、障害物登録地点の所定距離手前の地点に、車線変更推奨POI(Point of Interest)を設定して配信してもよい。車線変更推奨POIは、車線変更の実行を推奨する地点を指す。このように地図サーバ2にて車線変更推奨POIを設定して配信する構成によれば、車両側にて車線変更点を算出する処理を省略可能となり、処理部51や運転支援ECU60の処理負荷を低減できる。車線変更をユーザに提案する構成においても、車線変更推奨POIを用いて障害物通知画像を表示するタイミングを決定可能となる。
障害物通知パケットには、障害物がなくなったのか、移動したのかなどといった、その場所でのリスクが残っていそうかを示す情報を含めてもよい。その場所にリスクが残っていそうかは前述の実在確度によって表現されても良い。障害物消失パケットもまた、障害物通知パケットと同様に、障害物の特徴や、消失判定した時刻などが含まれていることが好ましい。
また配信処理部G4は、自動運転アプリなどの所定のアプリケーションを実行中の車両に対してのみ、障害物通知パケットを配信するように構成されていても良い。所定のアプリケーションとしては自動運転アプリの他、ACC(Adaptive Cruise Control)、LTC(Lane Trace Control)、ナビゲーションアプリなどを採用可能である。また、障害物情報をプル配信する構成においては、地図連携装置50は、特定のアプリケーションを実行中であることを条件として地図サーバ2に対して障害物情報を要求するように構成されていても良い。上記構成によれば、過剰な情報配信を抑制しつつ、運転支援ECU60による制御の安定性を高めることができる。また、配信処理部G4は、ユーザ設定に基づき、障害物情報の受信設定として自動的に受信するように設定されている車両に対してのみ、障害物通知パケットをプッシュ配信するように構成されていても良い。そのような構成によれば、ユーザの意図に反して、地図サーバ2と地図連携装置50とが無線通信するおそれを低減できる。
さらに、配信処理部G4は、メッシュ/マップタイル単位で障害物情報を配信してもよい。例えばマップタイルにおける障害物情報を、当該マップタイルに存在する車両や、当該マップタイルの地図を要求している車両に向けて配信しても良い。当該構成は、1つの観点において障害物通知パケットをマップタイル単位で配信する構成に相当する。そのような構成によれば、配信対象の選定が簡略化されるとともに、複数の障害物登録地点の情報を一括して配信可能となる。その結果、地図サーバ2の処理負荷を低減可能となる。なお、受信した障害物情報をどのように使うかは車載システム1でどのようなアプリが起動しているかに依る。上記構成によれば、車載システム1での障害物情報の使い途の多様性、柔軟性を高めることができる。
<地図連携装置50によるアップロード処理について>
地図連携装置50は、障害物情報として、地図に登録されている内容と、車両が観測した内容とが相違する場合のみ、障害物地点報告を送信するように構成されていても良い。換言すれば、地図の内容と実際の状況が一致している場合には障害物地点報告を送信しないように構成されていてもよい。例えば障害物の存在が地図に登録されていない地点に障害物を観測した場合や、障害物があると地図に登録されている地点で障害物が存在しなかった場合に障害物地点報告を送信する。上記の構成によれば通信量を抑制できる。また、現実世界と地図登録内容とが一致している部分については、サーバプロセッサ21は障害物の有無に関わる判定処理を実施しなくてよくなる。つまり、サーバプロセッサ21の処理負荷も軽減可能となる。
また、以上では地図連携装置50は、障害物付近を通行する際に自発的に車両挙動データを地図サーバ2にアップロードする構成を開示したが、地図連携装置50の構成はこれに限らない。他の態様として、地図連携装置50は、車線変更や急減速などの所定の動きを実施した場合にのみ車両挙動データを地図サーバ2にアップロードする構成も考えられる。各車両が特定の動きをした場合にのみ車両挙動データをアップロードする構成では、地図サーバ2に障害物が消失したのか否かを判断するための情報が集まりにくくなってしまうといった課題が懸念される。障害物が消失すると車両は特別な動きをしなくなるためである。
上記懸念を踏まえ、サーバプロセッサ21は、障害物登録地点を通過中/通過予定の車両に対して、障害物地点報告をアップロードするように指示する制御信号であるアップロード指示信号を送信しても良い。換言すれば地図連携装置50は、地図サーバ2からの指示に基づいて、障害物地点報告をアップロードするか否かを決定するように構成されていてもよい。そのような構成によれば、地図サーバ2の判断により、各車両による障害物地点報告のアップロード状況を制御可能となり、不要な通信を抑制可能となる。例えば障害物の出現や消失に関する情報を十分に収集できている場合には、車両からのアップロードを抑制するといった対応も採用可能となる。
加えてサーバプロセッサ21は、車両状態報告を元に障害物の存在を示唆する車両挙動が見られた地点を検証地点に設定し、検証地点を通過予定の車両に対して、アップロード指示信号を送信しても良い。障害物の存在を示唆する車両挙動が見られた地点とは、例えば2、3台の車両が連続して車線変更を行った地点である。当該構成によれば、障害物が存在する疑いがある地点についての情報を集中的にかつ迅速に収集可能となり、障害物の存続状態をリアルタイムに検出可能となる。
また、障害物地点報告をアップロードするか否かは、車両側で設定可能に構成されていても良い。例えばユーザが入力装置を介して障害物地点報告をアップロードするか否かを設定可能に構成されていても良い。さらに、障害物地点報告としてアップロードする情報項目もまたユーザが設定変更可能に構成されていてもよい。そのような構成によれば、ユーザが意図せずに車両挙動データを地図サーバ2にアップロードしたり、通信量が増加したりするおそれを低減できる。なお、プライバシー保護の観点から、送信元情報は所定の暗号化コードを用いて、実際の車両IDとは相違する番号に書き換えて地図サーバ2にアップロードするように構成されていても良い。
また、障害物情報配信システム100は、障害物に関する情報を積極的にアップロードしたユーザに対してインセンティブを付与するように構成されていても良い。障害物地点報告の送信にインセンティブを設けることで、障害物に関する情報を収集しやすくなり、障害物情報配信システム100の実効性を向上させることができる。インセンティブとしては、自動車に関わる税金の軽減や、地図サービスの利用料金の低減、物品の購入やサービス利用に使用可能なポイントの付与などとすることができる。所定の物品の購入やサービスの利用に使用可能なポイントには、電子マネーの概念も含まれる。
<自動運転への適用例>
地図サーバ2が生成した障害物情報は、例えば、自動運転の実行の可否判断に利用されても良い。自動運転するための道路条件としては、車線数が所定数n以上であることが規定されている構成もあり得る。所定数nは「2」以上の整数であり、例えば「2」、「3」、「4」等である。そのような構成では、落下物、工事区間、路上駐車車両等の路上障害物により有効な車線数がn未満となっている区間が自動運転不可区間となりうる。有効車線数とは、車両が実質的に走行可能な車線の数である。例えば片側2車線の道路において1車線が路上障害物により塞がっている場合であれば、当該道路の有効車線数は「1」となる。
自動運転不可区間に該当するか否かは、例えば運転支援ECU60や自動運転ECUなどの車載装置で判断するように構成されていても良い。また、地図サーバ2が障害物情報に基づいて自動運転不可区間を設定し、当該自動運転不可区間を配信してもよい。例えば、地図サーバ2において、路上障害物による有効車線数が不足している区間を自動運転不可区間に設定して配信するとともに、当該路上障害物の消失が確認された場合に、自動運転不可設定を解除して配信する。なお、自動運転不可区間の設定等を配信するサーバは、自動運転管理サーバ7として、図28に示すように、地図サーバ2とは別に設けられていても良い。自動運転管理サーバは、自動運転可能/不可能な区間を管理するサーバに相当する。上記のように、障害物情報は、車両毎に設定されている運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)を充足しているか否かの判断に利用可能である。図28に示すように、路上障害物情報に基づいて自動運転の可否に関する情報を車両に配信するシステムを自動運転不可区間配信システムと称する。
<付言(1)>
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。例えば、地図連携装置50及び地図サーバ2が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供できる。地図連携装置50及び地図サーバ2が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。例えばサーバプロセッサ21は、CPUの代わりに、MPUやGPUを用いて実現されていてもよい。また、サーバプロセッサ21は、CPUや、MPU、GPUなど、複数種類の演算処理装置を組み合せて実現されていてもよい。さらに、ECUは、FPGA(field-programmable gate array)や、ASIC(application specific integrated circuit)を用いて実現されていても良い。処理部51も同様である。各種プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。プログラムの保存媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、USBメモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等、多様な記憶媒体を採用可能である。
<付言(2)>
本開示には以下の構成も含まれる。
・出現判定部及び消失判定部の少なくとも何れか一方は、複数車両の車両挙動データに加えて、車両で撮像されたカメラ画像を用いて、障害物が存在するか否かを判定するように構成されている地図サーバ。
・障害物の出現判定時と消失判定時とで障害物が存在すると判断するための情報種別の組み合わせを変更するように構成されている地図サーバ。
・出現判定時は車載カメラで撮像された画像の解析結果を併用する一方、消失判定時は車載カメラで撮像された画像の解析結果を使用しないように構成された地図サーバ。
・障害物の出現判定時と消失判定時とで障害物が存在すると判断するための情報種別ごとの重みを変更するように構成されている地図サーバ。
・障害物が存在するか否かの判断材料として、車載カメラで撮像された画像の解析結果を使用する構成において、消失判定時には出現判定時よりも、画像の解析結果の重みを小さくするように構成されている地図サーバ。
・レーン毎の通行量を比較することで障害物の出現及び消失を判定するように構成されている地図サーバ。
・減速後に実行された車線変更を回避行動として採用するように構成されている地図サーバ。なお、当該構成によれば追い越しのための車線変更を除外することが可能となる。
・カメラで障害物が検出されている場合であっても、測距センサで立体物が検出されていない場合には、障害物が存在するとは判定しない障害有無判定装置または地図サーバ。
・障害物が存在するレーンとは隣接しないレーン、換言すれば1レーン以上離れたレーンを走行中/走行予定の車両には当該障害物についての情報を配信しない地図サーバ。
・地図サーバから通知されている障害物登録地点から一定範囲を走行する場合に、車両挙動を含む障害物地点報告を、地図サーバからの指示に基づき、又は自発的に地図サーバにアップロードするように構成されている、車両用装置としての地図連携装置。
・地図サーバから障害物が存在すると通知されている地点を通過する際に、通知されている障害物を周辺監視センサからの入力信号に基づき検出できなかった場合に、障害物が存在しないことを示す障害物地点報告を送信する車両用装置としての地図連携装置。
・地図サーバから取得した障害物情報をナビゲーション装置または自動運転装置に出力する地図連携装置。
・地図サーバから取得した障害物情報に基づいて生成される障害物通知画像をディスプレイに表示するHMIシステム。
・障害物が存在するレーンとは隣接しないレーン、換言すれば1レーン以上離れたレーンを走行中/走行予定である場合には当該障害物についての情報を乗員に通知しないHMIシステム。
・地図サーバから通知された障害物の実在確度に基づいて、当該情報に基づいた車両制御を実行するか、情報提示に留めるかを切り替えるように構成されている運転支援装置。