以下、本発明の実施形態に係る導電性フィルム、センサー、タッチパネル、および画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。本明細書における「光透過性」とは、光を透過させる性質を意味する。また「光透過性」とは、必ずしも透明である必要はなく、半透明であってもよい。図1は、本実施形態に係る導電性フィルムの概略構成図であり、図2は、図1に示される導電性フィルムの一部の平面図であり、図3は、図2の導電性フィルムの一部の拡大平面図である。図4は、実施形態に係る他の導電性フィルムの概略構成図であり、図5は、図4に示される導電性フィルムの一部の平面図であり、図6は、図5の導電性フィルムの一部の拡大平面図である。図7および図8は、実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
<<<導電性フィルム>>>
図1に示される導電性フィルム10は、光透過性基材11と、光透過性基材11の第1面11A側に設けられた導電部12と、光透過性基材11の第1面11Aとは反対側の第2面11B側に設けられた光透過性機能層13とを備えている。ただし、導電性フィルム10は、光透過性基材11および導電部12を備えていればよく、光透過性機能層13を備えていなくともよい。光透過性機能層13は光透過性基材11の第2面11B側に設けられているが、光透過性基材11と導電部12との間に設けられていてもよく、また第2面11B側および光透過性基材11と導電部12との間の両方に設けられていてもよい。また、図1に示される導電性フィルム10においては、片面側のみに導電部12が設けられているが、導電性フィルムの両面側に導電部が設けられていてもよい。
図1に示される導電部12は、パターニング後の状態であり、線状となっている。導電性フィルム10の表面10Aは、導電部12の表面12Aから構成されている。なお、本明細書においては、導電性フィルムの表面は導電性フィルムの片側の表面を意味するものとして用いるので、導電性フィルムの表面とは反対側の面は、導電性フィルムの表面と区別するために裏面と称するものとする。導電性フィルム10の裏面10Bは、光透過性機能層13の表面13Aとなっている。
導電性フィルム10のヘイズ値(全ヘイズ値)は、5%以下となっていることが好ましい。導電性フィルム10のヘイズ値が5%以下であれば、充分な光学的性能を得ることができる。ヘイズ値は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(例えば、製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、測定することができる。ヘイズ値は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で、導電部側が非光源側(両面に導電部が形成されている場合はこの限りではない)となり、かつ導電部が延びる方向が水平方向となるように設置し、導電性フィルム1枚に対して3回以上測定して得られた値の算術平均値とする。本明細書における「3回測定する」とは、同じ場所を3回以上測定するのではなく、異なる3箇所以上を測定することを意味するものとする。導電性フィルム10は、目視した表面10Aは平坦であり、かつ導電部12等の積層する層も平坦であり、また膜厚のばらつきもその厚みの平均値の±10%の範囲内に収まることが実質製品の品質には望まれる。したがって、切り出した導電性フィルムの異なる3箇所以上でヘイズ値を測定することで、おおよその導電性フィルムの面内全体のヘイズ値の平均値が得られると考えられる。測定回数としては、5回、つまり異なる5箇所を測定することが好ましく、その中の最大値と最小値を除いた3箇所分の測定値から平均値を得ることが好ましい。なお、導電性フィルムを上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに導電性フィルムを適宜切り出してもよい。導電性フィルムの大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。導電性フィルム10のヘイズ値は、3%以下、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、または1.1%以下であることがより好ましい。得られるヘイズ値のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、±10%以内であり、上記好ましい範囲になる場合には、低ヘイズおよび低抵抗値がより得られやすい。なお、導電性フィルムを搭載したタッチパネルセンサーなどの複数層が重なった積層体全体においても、上記と同じヘイズ値であることが好ましい。
導電性フィルム10の全光線透過率は、80%以上であることが好ましい。導電性フィルム10の全光線透過率が80%以上であれば、充分な光学的性能を得ることができる。全光線透過率は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、JIS K7361-1:1997に準拠して、ヘイズメーター(例えば、製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、測定することができる。導電性フィルム10の全光線透過率は、85%以上、88%以上、または89%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、5箇所測定し、最大値と最小値を除いた3箇所の測定値の平均値とする。
導電性フィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが設けられている場合には、粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離してから、ヘイズ値や全光線透過率を測定し、また折り畳み試験を行うものとする。他のフィルムの剥離は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、導電性フィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが付いた積層体をドライヤーで加熱し、導電性フィルムと他のフィルムの界面と思われる部位にカッターの刃先を入れて、ゆっくりと剥離していく。このような加熱と剥離を繰り返すことで、粘着層や接着層および他のフィルムを剥離することができる。なお、このような剥離工程があったとしても、ヘイズ値等の測定や折り畳み試験には大きな影響はない。
また、上記したように、導電性フィルム10のヘイズ値、全光線透過率を測定する際、または導電性フィルム10に対し折り畳み試験を行う際には、導電性フィルム10を上記各大きさに切り出す必要があるが、導電性フィルム10の大きさが大きい場合(例えば、ロール状のような長尺の場合)には、任意の位置からA4サイズ(210mm×297mm)やA5サイズ(148mm×210mm)に切り出した後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。また、導電性フィルム10がロール状になっている場合においては、導電性フィルム10のロールから所定の長さを繰り出すとともに、ロールの長手方向に沿って延びる両端部を含む非有効領域ではなく、品質が安定している中心部付近の有効領域から切り出すものとする。また、導電性フィルム10のヘイズ値や全光線透過率を測定する際または導電性フィルム10に対し折り畳み試験を行う際には、上記装置を用いて測定するが、上記装置でなくとも、後継機種などの同程度の装置によって測定してもよい。
導電性フィルム10の厚みは、特に限定されないが、500μm以下とすることが可能である。導電性フィルム10の厚みの下限はハンドリング性等の観点か、5μm以上、10μm以上、または20μm以上であることがより好ましい。導電性フィルム10の厚みの上限は薄型化の観点から250μm以下、100μm以下、更に、フレキシブル性を重要視する場合には、78μm以下、特に45μm以下であることがより好ましい。したがって、フレキシブル性を重要視する場合には、導電性フィルム10の厚みは、5μm以上78μm以下、更には28μm以下、20μm以下が好適である。導電性フィルムの厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された導電性フィルムの断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚み中、最大値と最小値を除いた8箇所の厚みの平均値する。導電性フィルムは、一般的に厚みムラが存在する。本発明においては、導電性フィルムは光学用途であるため、厚みムラは厚み平均値±2μm以下、更には±1μm以下が好ましい。
透過型電子顕微鏡(TEM)や走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて導電性フィルムの厚みを測定する場合、導電部の膜厚の測定方法と同様の方法により測定できる。ただし、導電性フィルムの断面写真を撮影する際の倍率は、100~2万倍とする。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて導電性フィルムの厚みを測定する場合、導電性フィルムの断面は、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)などを用いて得るとよい。なお、TEMやSTEMで測定する際の測定サンプルは、上記ウルトラミクロトームを用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製する。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、測定サンプルとする。ウルトラミクロトーム切削時には、測定サンプルを樹脂包埋するなど切削しやすいような下処理をしてもよい。
導電性フィルム10の用途は、特に限定されず、例えば、透明導電膜が用いられる様々な用途(例えば、センサ用途)で用いてもよい。また、本発明の導電性フィルムは、画像表示装置(スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、デジタルサイネージ、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)、車載ディスプレイ等を含む)用途や車載(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)用途に適している。導電性フィルムを車載用途のセンサーとして用いる場合、例えば、ハンドルやシートなど人が触れる部分に配置されるセンサーが挙げられる。また、導電性フィルムは、フォルダブル、ローラブルといったフレキシブル性を必要とする用途にも好ましい。さらに住宅や車(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)で用いられる電化製品や窓に用いてもよい。特に、本発明の導電性フィルムは、透明性を重視される部分に好適に用いることができる。また、本発明の導電性フィルムは、透明性等の技術的観点のみならず、意匠性やデザイン性が求められる電化製品にも好適に用いることができる。画像表示装置の以外の導電性フィルムの具体的な用途としては、例えば、デフロスター、アンテナ、太陽電池、オーディオシステム、スピーカー、扇風機、電子黒板や半導体用のキャリアフィルム等が挙げられる。導電性フィルムの使用時の形状は、用途に応じて適宜設計されるので、特に限定されないが、例えば、曲面状になっていてもよい。
導電性フィルム10は、所望の大きさにカットされていてもよいが、ロール状であってもよい。導電性フィルムがロール状となっている場合には、この段階で所望の大きさにカットしてもよく、また例えば後工程の処理を行った後に所望の大きさにカットしてもよい。導電性フィルム10が所望の大きさにカットされている場合、導電性フィルムの大きさは、特に制限されず、画像表示装置の表示面の大きさに応じて適宜決定される。具体的には、導電性フィルムの大きさは、例えば、5インチ以上500インチ以下となっていてもよい。本明細書における「インチ」とは、導電性フィルムが四角形状である場合には対角線の長さを意味し、円形状である場合には直径を意味し、楕円形状である場合には、短径と長径の和の平均値を意味するものとする。ここで、導電性フィルムが四角形状である場合、上記インチを求める際の導電性フィルムの縦横比は、画像表示装置の表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、縦:横=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられる。ただし、特に、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横比に限定されない。また、導電性フィルム10の大きさが大きい場合には、任意の位置からA4サイズ(210mm×297mm)やA5サイズ(148mm×210mm)など適宜扱いやすい大きさに切り出した後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。なお、例えば、導電性フィルム10がロール状になっている場合においては、導電性フィルム10のロールから所定の長さを繰り出すとともに、ロールの長手方向に沿って延びる両端部を含む非有効領域ではなく、品質が安定している中心部付近の有効領域から所望の大きさに切り出すものとする。
<<光透過性基材>>
光透過性基材11としては、光透過性を有すれば特に限定されない。例えば、光透過性基材11の構成材料としては、光透過性を有する樹脂を含む基材が挙げられる。このような樹脂としては、光透過性を有すれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはポリアミドイミド系樹脂、またはこれらの樹脂を2種以上混合した混合物等が挙げられる。光透過性基材は、光透過性機能層等をコーティングする際にコーティング装置に触れるので、傷が付きやすいが、ポリエステル系樹脂からなる光透過性基材は、コーティング装置に触れても傷が付きにくいため、ヘイズ値の上昇を抑制できる点、および耐熱性、バリア性、耐水性についてもポリエステル系樹脂以外の光透過性樹脂からなる光透過性基材よりも優れている点からは、これらの中でも、ポリエステル系樹脂が好ましい。
導電性フィルムとして、折り畳み可能な導電性フィルムを得る場合には、光透過性基材を構成する樹脂としては、フレキシブル性が良好であることから、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂またはこれらの混合物を用いることが好ましい。また、これらの中でも、優れたフレキシブル性を有するだけでなく、優れた硬度および透明性をも有し、また、耐熱性にも優れ、焼成することにより、更に優れた硬度および透明性を付与することもできる観点からは、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー系樹脂等の少なくとも1種を構成成分とする樹脂が挙げられる。シクロオレフィンポリマー系樹脂としては、例えばノルボルネン骨格を有するものが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
ポリアクリレート系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル基材、ポリ(メタ)アクリル酸エチル基材、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)の少なくとも1種を構成成分とする樹脂が挙げられる。
芳香族ポリエーテルケトン系樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
ポリイミド系樹脂は、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドのみならず、芳香族ポリアミド(アラミド)を含む概念である。具体的には、ポリイミド系樹脂としては、例えば、下記化学式(1)および(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。下記化学式中、nは、繰り返し単位であり、2以上の整数を表す。なお、下記化学式(1)および(2)で表される化合物の中でも、化学式(1)で表される化合物は、低位相差および高透明であるので、好ましい。
光透過性基材11の厚みは、特に限定されないが、500μm以下とすることが可能であり、光透過性基材11の厚みの下限はハンドリング性等の観点から3μm以上、5μm以上、10μm以上、または20μm以上であることがより好ましい。光透過性基材11の厚みの上限は薄膜化の観点から250μm以下、100μm以下、80μm以下、50μm以下、更に、フレキシブル性を重要視する場合には、35μm以下、特に18μm以下であることがより好ましい。光透過性基材の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された光透過性基材の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚み中、最大値と最小値を除いた8箇所の厚みの平均値する。光透過性基材は、一般的に厚みムラが存在する。本発明においては、光透過性基材は光学用途であるため、厚みムラは厚み平均値±2μm以下、更には±1μm以下が好ましい。
透過型電子顕微鏡(TEM)や走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて光透過性基材の厚みを測定する場合、導電部の膜厚の測定方法と同様の方法により測定できる。ただし、光透過性基材の断面写真を撮影する際の倍率は、100~2万倍とする。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて光透過性基材の厚みを測定する場合、光透過性基材の断面は、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)などを用いて得るとよい。なお、TEMやSTEM用測定サンプルは、上記ウルトラミクロトームを用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製する。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、TEMやSTEM用測定サンプルとする。ウルトラミクロトーム切削時には、サンプルを樹脂包埋するなど切削しやすいような下処理をしてもよい。
銀ナノワイヤ等の導電性繊維自体は、例えば、フレキシブル性に適しているが、導電性繊維を含む導電部を積層するための光透過性基材や機能層(導電部を除く)の厚みが厚いと、折り畳み時に屈曲部における光透過性基材や機能層に割れが生じ、その割れが原因で、導電性繊維が断線してしまうおそれがあり、また屈曲部における光透過性基材や機能層に折り癖やマイクロクラックが生じてしまうことがある。上記した断線により目的とする抵抗値が得られないことに加え、外観不良、具体的には、白濁現象やクラック起因の密着不良などが生じてしまうおそれがある。このため、導電性フィルムをフレキシブル用途に用いる場合には、光透過性基材や機能層の厚み制御や各層間の密着性(材料が影響する化学的結合による密着や、クラックが生じないという物理的な密着)が重要になる。特に、光透過性基材11が、ポリエステル系樹脂を含む場合や、ポリイミド系樹脂を含む場合も、厚みによって割れにくさが変わるので、光透過性基材の厚み制御が重要となる。
光透過性基材11が、例えば、ポリエステル系樹脂を含む場合には、光透過性基材11の厚みは、45μm以下が好ましい。この光透過性基材11の厚みが45μm以下であれば、折り畳み時に屈曲部における光透過性基材11の割れを抑制でき、また屈曲部における白濁現象を抑制できる。この場合の光透過性基材11の厚みの上限は、35μm以下、29μm以下、特に18μm以下であることが好ましい。また、この場合の光透過性基材11の厚みの下限は、ハンドリング性等の観点から、5μm以上であることが好ましい。
光透過性基材11が、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、またはこれらの混合物を含む場合には、折り畳み時の光透過性基材11の割れの抑制、光学特性や機械特性の観点から光透過性基材11の厚みは、薄い方がよく、具体的には、75μm以下が好ましい。この場合の光透過性基材11の厚みの上限は、70μm以下、50μm以下、35μm以下、29μm以下、そして特に20μm以下、18μm以下であることが好ましい。また、この場合の光透過性基材11の厚みの下限は、ハンドリング性等の観点から、5μm以上であることが好ましい。
上記した各光透過性基材の厚みが35μm以下の場合、特に5μm以上20μm以下または18μm以下の場合には、製造時に保護フィルムを貼ると加工適性が向上するので、好ましい。
光透過性基材11は、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理が表面に施されたものであってもよい。また、光透過性基材11は、少なくとも一方の面側に、他の層との接着性を向上させるため、巻き取り時の貼り付きを防止するため、および/または他の層を形成する塗布液のはじきを抑制するための下地層を有するものであってもよい。ただし、導電性繊維および分散媒を含む導電性繊維含有組成物を用いて、下地層の表面に導電部を形成すると、分散系の種類によって程度は異なるが、分散媒が下地層に浸透することによって導電性繊維も下地層中に入り込んでしまい、電気抵抗値が上昇してしまうおそれがあるので、光透過性基材における導電部側には下地層を備えず、導電部は光透過性基材に直接設けられていることが好ましい。本明細書においては、光透過性基材の少なくとも一方の面側に存在し、かつ光透過性基材に接する下地層は、光透過性基材の一部をなすものとし、光透過性機能層には含まれないものとする。
下地層は、他の層との密着性を向上させる機能、巻き取り時の貼り付きを防止する機能、および/または他の層を形成する塗布液のはじきを抑制する機能を有する層である。光透過性基材が下地層を有しているか否かは、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、1000~50万倍(好ましくは2.5万倍~5万倍)にて光透過性基材と導電部の界面周辺および光透過性基材と光透過性機能層の界面周辺の断面を観察することにより確認することができる。なお、下地層には、巻き取り時の貼り付き防止のために易滑剤等の粒子を含むことがあるので、光透過性基材と光透過性機能層の間に粒子が存在することでも、この層が下地層であると判断できる。
下地層の膜厚は、10nm以上1μm以下であることが好ましい。下地層の膜厚が10nm以上であれば、下地層としての機能が充分に発揮され、また下地層の膜厚が1μm以下であれば、光学的に影響を及ぼすおそれもない。下地層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて1000~50万倍(好ましくは2.5万倍~5万倍)にて撮影された下地層の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚みの算術平均値とする。下地層の膜厚の下限は、30nm以上であることがより好ましく、上限は150nm以下であることがより好ましい。下地層の膜厚は、導電部12の膜厚と同様の方法によっても測定することができる。なお、SEM、TEM、またはSTEMで断面写真を撮影する際には、上述したようにウルトラミクロトームを用いて測定サンプルを作成することが好ましい。
下地層は、例えば、アンカー剤やプライマー剤を含んでいる。アンカー剤やプライマー剤としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、エチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸などとの共重合体、エチレンとスチレンおよび/またはブタジエンなどとの共重合体、オレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂および/またはその変性樹脂、電離放射線重合性化合物の重合体、および熱重合性化合物の重合体等の少なくともいずれかを用いることが可能である。
下地層は、上記したように巻き取り時の貼り付き防止のために、易滑剤等の粒子を含んでいてもよい。粒子としては、シリカ粒子等が挙げられる。
<<光透過性機能層>>
光透過性機能層13は、光透過性基材11の第2面11B側に設けられている。本明細書における「光透過性機能層」とは、光透過性を有し、かつ導電性フィルムにおいて、何らかの機能を発揮することを意図された層である。具体的には、光透過性機能層としては、例えば、ハードコート機能、屈折率調整機能、および/または色味調整機能を発揮するための層が挙げられる。光透過性機能層は、単層のみならず、2層以上積層されたものであってもよい。光透過性機能層が2層以上積層されたものである場合、それぞれの層が有する機能は同じであってもよいが、異なっていてもよい。本実施形態においては、光透過性機能層13が、ハードコート機能を発揮する層、すなわちハードコート層である場合について説明する。フレキシブル性を得る場合には、光透過性機能層がハードコート層以外の層であってもよい。その場合は、光透過性機能層は以下に示す鉛筆硬度や断面硬度未満であってもよい。このような場合であっても、光透過性基材単体の状態よりも機械配向強度が高くなるので、ハードコート層として機能する。
光透過性機能層13は、JIS K5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で「H」以上の硬度を有する層となっている。鉛筆硬度を「H」以上とすることにより、導電性フィルム10が硬くなり、耐久性を向上させることができる。なお、光透過性機能層の靱性およびカールの防止の観点から、導電性フィルム10の表面10Aの鉛筆硬度の上限は2H~4H程度程とすることが好ましい。
光透過性機能層13のインデンテーション硬さ(HIT)は、100MPa以上であることが好ましい。フレキシブル性が最も重要な場合には、20~100MPa未満であることが好ましい。光透過性機能層13のインデンテーション硬さの下限は、200MPa以上または300MPa以上であってもよく、また上限は、マイクロクラックを防止し、光透過性機能層、光透過性基材、導電部の各層界面における密着性を維持する観点から、800MPa以下であってもよい。このような下限および上限にすることによって、導電性繊維などによる導電部自身のフレキブル性を維持することができる。また、導電部を有する構造において、実用化のためには折り畳み試験後も抵抗値、物理特性、光学特性が試験前とほぼ同じであることが必要とされる。また、光透過性機能層は、加工時の傷付き防止する役割の層として有効である。このようなことから、銀ナノワイヤ等の導電性繊維が持つフレキシブル性を生かしながら、かつ上述したような実用のための物性を得るためには、上記した数値範囲内にあることが好ましい。なお、用途によるが、光透過性基材の一方の面側のみに光透過性機能層が設けられる場合よりも、光透過性基材の両面側に光透過性機能層が設けられる構成が好ましい。
本明細書における「インデンテーション硬さ」とは、圧子の負荷から除荷までの荷重-変位曲線から求められる値である。上記インデンテーション硬さ(HIT)の測定は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、測定サンプルについてBruker(ブルーカー)社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて行うものとする。測定サンプルは、上記したSEMによる断面写真の撮影の際に作製されたサンプルと同じ方法で作製してもよい。光透過性機能層13の膜厚が薄い場合には、表面・界面切削試験装置(Surface And Interfacial Cutting Analysis System:SAICAS)などの斜め切削装置によって測定面積を充分に大きくすることが好ましい。通常、断面分析は表面に対して垂直に試料を切断した面(垂直断面)を分析するが、多層構造の試料で各層の層厚が薄い場合、広い分析領域を必要とする場合、特定の層を選択的に分析することは困難である。しかし、斜め切削により断面を作製した場合、垂直断面に比べて試料面を広く露出することができる。例えば、水平面に対して10°の斜面を作製すると、垂直断面に比べて試料面は6倍弱広くなる。このため、SAICASで斜め切削による断面を作製することで、垂直断面では分析困難な試料についても分析することが可能となる。次いで、得られた測定サンプルの断面において、平坦な箇所を探し、この平坦な箇所において、変位基準の測定で、最大押し込み変位が100nmとなるように、速度10nm/秒でバーコビッチ(Berkovich)圧子(三角錐、Bruker社製のTI-0039)を、10秒で変位0nmから変位100nmまで負荷を加えながら光透過性機能層13に垂直に押し込む。ここで、バーコビッチ圧子は、光透過性基材の影響を避けるためおよび光透過性機能層の側縁の影響を避けるために、光透過性基材と光透過性機能層の界面から光透過性機能層の中央側に500nm離れ、光透過性機能層の両側端からそれぞれ光透過性機能層の中央側に500nm以上離れた光透過性機能層の部分内に押し込むものとする。その後変位100nmで5秒間保持した後、10秒で変位100nmから変位0nmまで除荷する。そして、このときの押し込み荷重F(N)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成する。作成された荷重-変位曲線からインデンテーション硬さを、下記数式(1)のように最大押し込み荷重Fmax(N)を、圧子と光透過性機能層13が接している接触投影面積Ap(mm2)で除した値により求める。インデンテーション硬さは、10箇所測定して得られた値のうち、最大値と最小値を差し引いた8箇所分の測定値の算術平均値とする。Apは標準試料の溶融石英を用いて、Oliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積である。
HIT=Fmax/Ap …(1)
光透過性機能層を有する導電性フィルムの物理特性を制御するためには、光透過性機能層自身の弾性率等を測定することが考えられるが、三次元架橋構造を有する光透過性機能層は薄膜かつ脆いため単層でフィルム化は困難であり、光透過性機能層を単層として弾性率等を測定することは困難である。このため、上記においては、ナノインデンテーション法による硬さ測定によって評価を行っている。この方法によって、光透過性基材の影響によらず、薄膜高分子材料であっても膜自身の物性測定が可能となり、また弾性/塑性変形物質の、荷重変位曲線から上記したように数式(1)によって硬度の解析ができる。
光透過性機能層13の膜厚は0.2μm以上15μm以下であることが好ましい。光透過性機能層13の膜厚が0.2μm以上であれば、所望の硬度を得ることができ、また光透過性機能層13の膜厚が15μm以下であれば、導電性フィルム10の薄型化を図ることができる。光透過性機能層13の膜厚の下限は、ハードコート性の観点から、0.3μm以上、0.5μm以上、または0.7μm以上であることがより好ましい。また、光透過性機能層13の膜厚の上限は、光透過性機能層13の薄膜化を図る観点から、12μm以下、10μm以下、7μm以下、5μm以下、または2μm以下であることがより好ましい。ただし、光透過性基材の両面に光透過性機能層を積層する場合には、上記した光透過性機能層13の膜厚より薄いことが好ましい。この場合、薄膜化を図り、また良好なフレキシブル性を得る場合であれば、各光透過性機能層の膜厚は、3μm以下、1.5μm以下、1μm以下であることが好ましく、特に屈曲部であるφが2mm未満、例えばφが0.1~1mm未満の場合には、各光透過性機能層の膜厚は、0.8μm以下、0.7μm以下、さらには0.5μm以下であることがよい。なお、後述するように導電部12の線厚は300nm未満であることが好ましいが、光透過性機能層の上に導電部を積層した場合、光透過性機能層中に導電部が混在してしまう場合がある。そのような場合、機能層と導電部の界面は判別できないことがある。この場合には、光透過性機能層の上記好ましい膜厚とは、光透過性機能層と導電部の合計厚みであってもよい。
光透過性機能層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された光透過性機能層の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚み中、最大値と最小値を除いた8箇所の厚みの平均値する。光透過性機能層は、一般的に厚みムラが存在する。本発明においては、光透過性機能層は光学用途であるため、厚みムラは厚み平均値±10%以下、更には厚み平均値±5%以下が好ましい。
透過型電子顕微鏡(TEM)や走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて光透過性基材の厚みを測定する場合、導電部の膜厚の測定方法と同様の方法により測定できる。ただし、光透過性基材の断面写真を撮影する際の倍率は、100~2万倍とする。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて光透過性基材の厚みを測定する場合、光透過性基材の断面は、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)などを用いて得るとよい。なお、TEMやSTEM用測定サンプルは、上記ウルトラミクロトームを用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製する。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、TEMやSTEM用測定サンプルとする。ウルトラミクロトーム切削時には、測定サンプルを樹脂包埋するなど切削しやすいような下処理をしてもよい。
光透過性基材11の厚みが薄い場合、ラインに通しにくくなり、また避けやすくなり、傷付きやすいなど工程上の取り扱いが困難になるので、導電性フィルム10は、少なくとも光透過性基材11の片面に光透過性機能層13を設けることが好ましい。導電性フィルム10がフレキシブル用途で用いられる場合には、光透過性機能層13を光透過性基材11に密着させ、かつ折り畳み時に光透過性基材11に追随させることが重要となる。このような光透過性基材11に密着し、かつ折り畳み時に光透過性基材11に追随可能な光透過性機能層13を形成するためには、光透過性基材11の厚みに対する光透過性機能層13の膜厚のバランスも重要になる。
光透過性機能層13は、少なくとも光透過性樹脂から構成することが可能である。なお、光透過性機能層13は、光透過性樹脂の他に、無機粒子、有機粒子およびレベリング剤を含んでいてもよい。
<光透過性樹脂>
光透過性機能層13における光透過性樹脂としては、重合性化合物の重合体(硬化物、架橋物)を含むものが挙げられる。光透過性樹脂は、重合性化合物の重合体の他、溶剤乾燥型樹脂を含んでいてもよい。重合性化合物としては、電離放射線重合性化合物および/または熱重合性化合物が挙げられる。これらの中でも、硬化速度が速く、また設計しやすいことから、重合性化合物として電離放射線重合性化合物が好ましい。
電離放射線重合性化合物は、1分子中に電離放射線重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における「電離放射線重合性官能基」とは、電離放射線照射により重合反応し得る官能基である。電離放射線重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、電離放射線重合性化合物を重合する際に照射される電離放射線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマー、電離放射線重合性オリゴマー、または電離放射線重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマーと、電離放射線重合性オリゴマーまたは電離放射線重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。
電離放射線重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
電離放射線重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、電離放射線重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
電離放射線重合性プレポリマーは、重量平均分子量が1万を超えるものであり、重量平均分子量としては1万以上8万以下が好ましく、1万以上4万以下がより好ましい。重量平均分子量が8万を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる光透過性樹脂の外観が悪化するおそれがある。多官能プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
熱重合性化合物は、1分子中に熱重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における「熱重合性官能基」とは、加熱により同じ官能基同士または他の官能基との間で重合反応し得る官能基である。熱重合性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、環状エーテル基、メルカプト基等が挙げられる。
熱重合性化合物としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ウレア化合物、フェノール化合物等が挙げられる。
溶剤乾燥型樹脂は、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂である。溶剤乾燥型樹脂を添加した場合、光透過性機能層13を形成する際に、塗液の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
<無機粒子>
無機粒子は、光透過性機能層13の機械的配向強度や鉛筆配向強度を向上させるための成分であり、無機粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称:ATO)粒子、酸化亜鉛粒子等の無機酸化物粒子が挙げられる。これらの中でも、硬度をより高める観点からシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、球形シリカ粒子や異形シリカ粒子が挙げられるが、これらの中でも、異形シリカ粒子が好ましい。本明細書における「球形粒子」とは、例えば、真球状、楕円球状等の粒子を意味し、「異形粒子」とは、ジャガイモの表面状のランダムな凹凸を表面に有する形状の粒子を意味する。上記異形粒子は、その表面積が球状粒子と比較して大きいため、このような異形粒子を含有することで、上記重合性化合物等との接触面積が大きくなり、光透過性機能層13の鉛筆硬度をより優れたものとすることができる。光透過性機能層13に含まれているシリカ粒子が異形シリカ粒子であるか否かは、光透過性機能層13の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察することによって確認することができる。球形シリカ粒子を用いる場合、球形シリカ粒子の粒子径が小さいほど、光透過性機能層の硬度が高くなる。これに対し、異形シリカ粒子は、市販されている最も小さい粒子径の球形シリカ粒子ほど小さくなくとも、この球形シリカと同等の硬度を達成することができる。
異形シリカ粒子の平均粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。異形シリカ粒子の平均粒子径がこの範囲であっても、平均粒子径が1nm以上45nm以下の球形シリカと同等の硬度を達成することができる。異形シリカ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した光透過性機能層の断面の画像から粒子の外周の2点間距離の最大値(長径)と最小値(短径)とを測定し、粒子径を求め、20個の粒子の粒子径中、最大値と最小値を除き、残りの18個分の粒子径の算術平均値とする。また、球形シリカ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて倍率1万倍~10万倍で撮影した粒子の断面の画像から20個の粒子の粒子径を測定し、20個の粒子の粒子径の算術平均値とする。走査透過型電子顕微鏡(STEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、断面写真の撮影を行う際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッションを「10μA」にして観察を行う。その他のSTEMによる断面写真の撮影条件は、後述の条件を参照できる。なお、平均粒子径測定には、後述するような画像データを2値化処理して算出することもできる。
光透過性機能層13中の無機粒子の含有量は、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。無機粒子の含有量が20質量%未満であれば、十分な硬度を得ることができ、また無機粒子の含有量が70質量%以下であれば、充填率が上がりすぎず、無機粒子と樹脂成分との密着性が良好であるので、光透過性機能層の硬度を低下させることもない。
無機粒子としては、表面に光重合性官能基を有する無機粒子(反応性無機粒子)を用いることが好ましい。このような表面に光重合性官能基を有する無機粒子は、シランカップリング剤等によって無機粒子を表面処理することによって作成することができる。無機粒子の表面をシランカップリング剤で処理する方法としては、無機粒子にシランカップリング剤をスプレーする乾式法や、無機粒子を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式法等が挙げられる。
<有機粒子>
有機粒子も、光透過性機能層13の機械的配向強度や鉛筆配向強度を向上させるための成分であり、有機粒子としては、例えば、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、具体例としては、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、アクリル-スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。
光透過性機能層13は、重合性化合物等を含む光透過性機能層用組成物を用いることによって形成することが可能である。光透過性機能層用組成物は、上記重合性化合物等を含むが、その他、必要に応じて、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、光透過性機能層用組成物には、樹脂層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、または屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
<溶剤>
溶剤としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘプタノン、ジエチルケトン等)、エーテル類(1,4-ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテルジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、またはこれらの混合物が挙げられる。
<重合開始剤>
重合開始剤は、光または熱により分解されて、ラジカルやイオン種を発生させて重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。樹脂層用組成物に用いられる重合開始剤は、光重合開始剤(例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤)や熱重合開始剤(例えば、熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤)、またはこれらの混合物が挙げられる。
上記したように導電性フィルム10がフレキシブル用途で用いられる場合には、光透過性機能層13を光透過性基材11に密着させ、かつ折り畳み時に光透過性基材11に追随させることが重要となる。このような光透過性基材11に密着し、かつ折り畳み時に光透過性基材11に追随可能な光透過性機能層13を形成するためには、重合開始剤としてオキシムエステル系化合物を用いることが好ましい。オキシムエステル系化合物の市販品としては、例えば、IRGACURE(登録商標) OXE01、IRGACURE(登録商標) OXE02、IRGACURE(登録商標) OXE03(いずれもBASFジャパン社製)が挙げられる。
光透過性機能層用組成物における重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。重合開始剤の含有量をこの範囲内にすることにより、ハードコート性能を充分に保つことができ、かつ硬化阻害を抑制できる。
<<導電部>>
導電部12は、図2に示されるように、線状に延びている。本明細書における「導電部」とは、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、断面を観察したときに、導電性繊維が確認され、かつ表面から導通可能な線状の部分を意味する。導電部の界面が確認しにくい場合には、導電部の表面にスパッタ法によりPt-PdやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行うとよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋した後、染色処理を行ってもよい。
導電部12は、図3に示されるように、複数の導電性繊維14を含んでいる。本明細書における「導電性繊維」とは、導電性を有し、かつ長さが太さ(例えば直径)に比べて十分に長い形状を持つものであり、例えば、概ね長さが太さの5倍以上のものは導電性繊維に含まれるものとする。
導電性繊維14が導電部12が延びる方向Dに沿って並んでいるかは、例えば、表面繊維配向解析プログラム(V.8.03)(http://www.enomae.com/FiberOri/index.htm)を用いて確認することができる。このプログラムは、Enomae, T., Han, Y.-H. and Isogai, A., "Nondestructive determination of fiber orientation distribution of fiber surface by image analysis", Nordic Pulp and Paper Research Journal 21(2): 253-259(2006)やEnomae, T., Han, Y.-H. and Isogai, A., "Fiber orientation distribution of paper surface calculated by image analysis", Proceedings of International Papermaking and Environment Conference, Tianjin, P. R. China (May 12-14), Book2, 355-368 (2004)(http://www.enomae.com/publish.htm参考)に基づいている。このプログラムにおいて、走査型電子顕微鏡(SEM)による導電性繊維の平面写真に対し2値化処理をし、その後フーリエ変換し、そのフーリエ変換画像を極座標変換して角度に対する平均振幅を計算することによって、繊維配向分布を作成する。そして、この繊維配向分布を楕円に近似して、近似楕円の長軸と方向Dとのなす角度を配向角度とし、近似楕円の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)を配向強度として算出する。具体的には、SEMによる導電部の導電性繊維の平面写真を倍率1000倍~6000倍で10枚撮影し、10枚の写真についてそれぞれ繊維配向分布を計算し、それらの繊維配向分布を平均した平均繊維配向分布を計算する。その平均繊維配向分布から上記に従って算出されたものを配向角度および配向強度とする。導電部中の導電性繊維において、配向角度が0°±10°(ただし、算出した配向角度は0°から180°の数値となるが、180°から90°を-0°~-90°と読み替える)以内であり、かつ配向強度が1.2以上であれば、導電部が延びる方向に導電性繊維が並んでいると判断できる。配向角度は0°±5°以内であることがより好ましく、また配向強度は1.3以上、1.5以上、または1.7以上となることがより好ましい。
導電部12は、導電部12の表面から電気的に導通可能となっている。導電部12が導電部の表面から電気的に導通可能であるか否かは、導電部12の表面抵抗値を求めることによって、または線抵抗値を測定することによって判断することが可能である。
導電部12の表面抵抗値から導通を判断する場合には、導電部12の表面抵抗値が2000Ω/□未満であれば、導電部12の表面から電気的な導通が得られていると判断できる。導電部12の表面抵抗値は、以下のようにして求めるものとする。導電性フィルム10から導電部12が延びる方向Dが長手方向になるように5mm×100mmの大きさに切り出したサンプルの導電部12の両端部に、それぞれ複数本の導電部12に跨るように導電部の幅方向に延びる線状の銀ペーストを塗布する。次いで、130℃で30分加熱して、これらの銀ペーストを硬化させる。その状態で、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、テスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)のプローブ端子を接触させることによって抵抗値を測定する。具体的には、Digital MΩ Hitester 3454-11は、2本のプローブ端子(赤色プローブ端子および黒色プローブ端子、両方ともピン形)を備えているので、赤色プローブ端子を一方の硬化した銀ペーストに接触させ、かつ黒色プローブ端子を他方の硬化した銀ペーストに接触させて抵抗値を測定する。そして、以下の数式(2)から、導電部の表面抵抗値を求めるものとする。
Rs=R×(CW×CN/CL) …(2)
上記式(2)中、Rsは表面抵抗値(Ω/□)であり、Rは測定された抵抗値(Ω)であり、CWは導電部1本の線幅(μm)であり、CNは導電部の本数であり、CLは導電部の線長(μm)である。
導電部12の表面抵抗値は3Ω/□以上1000Ω/□以下となっていることが好ましい。導電部12の表面抵抗値が3Ω/□以上であれば、光学的性能が充分であり、また導電部12の表面抵抗値が1000Ω/□以下であれば、特にタッチパネル用途において、応答速度が遅くなる等の不具合を抑制できる。導電部12の表面抵抗値の下限は、5Ω/□以上、または10Ω/□以上であることがより好ましく、また導電部12の表面抵抗値の上限は、100Ω/□以下、70Ω/□以下、60Ω/□以下、または50Ω/□以下であることがより好ましい。
導電部12の線抵抗値から導通を判断する場合には、導電部12の線抵抗値が20000Ω未満であれば、導電部12の表面から電気的な導通が得られていると判断できる。導電部12の線抵抗値は、以下のようにして求めるものとする。まず、導電部12の表面抵抗値と同様にしてサンプルの抵抗値を測定する。そして、以下の数式(3)から、導電部12の線抵抗値を求める。
RL=R×CN …(3)
上記式(3)中、RLは線抵抗値(Ω)であり、Rは測定された抵抗値(Ω)であり、CNは導電部の本数である。
導電部12の線抵抗値は、15000Ω以下となっていることが好ましい。導電部12の線抵抗値が15000Ω以下であれば、特にタッチパネル用途において、応答速度が遅くなる等の不具合を抑制できる。導電部12の線抵抗値の下限は、20Ω以上、100Ω以上、または200Ω以上であることがより好ましく、また導電部12の線抵抗値の上限は、12000Ω以下、10000Ω以下、または8000Ω以下であることが好ましい。
導電部12の線幅W(図3参照)は、200μm以上4000μm以下となっていることが好ましい。導電部12の線幅Wが200μm以上であれば、センサーとして必要である抵線抵抗値を発現することができ、また導電部12の線幅Wが4000μm以下であれば、導電部12が細いので、導電部12が存在する箇所と導電部12が存在しない箇所のヘイズ値相違による骨見えを抑制できる。導電部12の線幅Wの下限は、250μm以上、300μm以上、または350μm以上であることが好ましく、また導電部12の線幅W1の上限は、3800μm以下、3600μm以下、または3400μm以下であることが好ましい。導電部の線幅は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された導電部の平面写真からランダムに10箇所線幅を測定し、測定された10箇所の線幅中で、最大値と最小値除く8箇所の線幅の算術平均値とする。
導電部の厚みが大きくなればなるほど、導電性繊維同士が重なる部分が増えるために、低線抵抗値も達成することが可能であるが、導電性繊維が重なり過ぎるとコスト上昇および低ヘイズ値の維持が困難になる場合もある。このため、導電部12の線厚の線厚は300nm以下が好ましい。なお、低線抵抗値が維持できる限り導電部の線厚は薄い方が光学特性、薄膜化の観点から好ましい。導電部12の線厚の上限は、薄型化を図る観点および低ヘイズ値等良好な光学特性を得る観点から、200nm以下、145nm、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、または50nm以下であることがより好ましい。また、導電部12の線厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。導電部12の線厚が10nm以上であれば、安定した電気的導通を得ることができる。より安定な電気的導通を得るためには、導電性繊維が2本以上重なって接触していることが望ましいため、導電部12の膜厚の下限は、20nm以上または30nm以上であることがより好ましい。
導電部12の線厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影された導電部12の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚み中で、最大値と最小値除く8箇所の厚みの算術平均値とする。
具体的な断面写真の撮影方法を以下に記載する。まず、上記と同様の方法にて導電性フィルムから断面観察用のサンプルを作製する。なお、このサンプルにおいて導通が得られないとSTEMによる観察像が見えにくい場合があるため、Pt-Pdを20秒程度スパッタすることが好ましい。スパッタ時間は、適宜調整できるが、10秒では少なく、100秒では多すぎるためスパッタした金属が粒子状の異物像になるため注意する必要がある。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影する。この断面写真の撮影の際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッションを「10μA」にしてSTEM観察を行う。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節する。好ましい倍率は、1万倍~10万倍、更に好ましい倍率は1万倍~5万倍であり、最も好ましい倍率2.5万倍~5万倍である。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、ビームモニタ絞りを3、対物レンズ絞りを3にし、またW.D.を8mmにしてもよい。導電部の膜厚を測定する際には、断面観察した折に、導電部と他の層(光透過性基材や包埋樹脂等)との界面コントラストが可能な限り明確に観察できることが重要となる。仮に、コントラスト不足でこの界面が見え難い場合には、導電部の表面にスパッタ法によりPt-Pd、PtやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行ってもよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、染色処理を行ってもよい。また、界面のコントラストは高倍率である方が分かりにくい場合がある。その場合には、低倍率も同時に観察する。例えば、2.5万倍と5万倍や、5万倍と10万倍など、高低の2つの倍率で観察し、両倍率で上記した算術平均値を求め、更にその平均値を導電部の線厚の値とする。
<導電性繊維>
導電性繊維14は導電部12中にそれぞれ複数本存在している。導電部12の表面から電気的に導通可能となっているので、導電部12の厚み方向において導電性繊維14同士が接触している。
導電部12においては、導電性繊維14同士が接触することによって導電部12の平面方向(2次元方向)にネットワーク構造(網目構造)を形成していることが好ましい。導電性繊維14がネットワーク構造を形成することによって、導電経路を形成することができる。
導電性繊維14の平均繊維径は30nm以下であることが好ましい。導電性繊維14の平均繊維径が30nm以下であれば、導電性フィルム10のヘイズ値の上昇を抑制でき、また光透過性能が充分となる。導電性繊維14の平均繊維径の下限は導電部12の導電性の観点から5nm以上、7nm以上、10nm以上であることがより好ましい。また、導電性繊維14の平均繊維径の上限は、28nm以下、25nm以下、または20nm以下であることがより好ましい。導電性フィルム10のヘイズ値を好ましい範囲に制御するため、導電性繊維14の繊維径のより好ましい範囲は7nm以上25nm以下である。
導電性繊維14の平均繊維径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば、製品名「H-7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めるものとする。上記H-7650を用いて、繊維径を測定する際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」にする。また、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)によっても導電性繊維の繊維径を測定することが可能である。STEMを用いる場合には、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、STEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として導電性繊維の平均繊維径を求めるものとする。上記S-4800(TYPE2)を用いて、繊維径を測定する際には、信号選択を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「0°」にする。
導電性繊維14の繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。ここで、TEM測定は高倍率のため、導電性繊維ができる限り重ならないように導電性繊維分散液の濃度をできる限り低下させることが重要である。具体的には、導電性繊維分散液を、分散媒に合わせて水またはアルコールで導電性繊維の濃度を0.05質量%以下に希釈し、または固形分が0.2質量%以下に希釈することが好ましい。さらに、この希釈した導電性繊維分散液をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ上に1滴滴下し、室温で乾燥させて、上記条件で観察し、観察画像データとする。これを元に算術平均値を求める。カーボン支持膜付きグリッドメッシュとしては、Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」が好ましく、また電子線照射量に強く、電子線透過率がプラスチック支持膜より良いため高倍率に適し、有機溶媒に強いものが好ましい。また、滴下の際には、グリッドメッシュだけであると微小すぎ滴下しにくいため、スライドガラス上にグリッドメッシュを載せて滴下するとよい。
上記繊維径は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。実測する場合、写真を印刷し適宜拡大してもよい。その際、導電性繊維は他の成分よりも黒さの濃度が濃く写り込む。測定点は、輪郭外側を起点、終点として測定する。導電性繊維の濃度は、導電性繊維分散液の全質量に対する導電性繊維の質量の割合で求めるものとし、また固形分は、導電性繊維分散液の全質量に対する分散媒以外の成分(導電性繊維、樹脂成分、その他の添加剤)の質量の割合によって求めるものとする。導電性繊維含有組成物を用いて求められた繊維径と、写真を元にして実測して求めた繊維径は、ほぼ同じ値となる。
導電性繊維14の平均繊維長は白濁感を抑制するためには15μm以上20μm以下であることが好ましい。導電性繊維14の平均繊維長が15μm以上であれば、充分な導電性能を有する導電部を形成でき、また凝集による白濁感の影響、ヘイズ値の上昇や光透過性能の低下を招くおそれもない。また、導電性繊維14の平均繊維長が20μm以下であれば、フィルターに詰まらずに塗工できる。なお、導電性繊維14の平均繊維長の下限は5μm以上、7μm以上、10μm以上としてもよく、導電性繊維14の平均繊維長の上限は40μm以下、35μm以下、または30μm以下としてもよい。
導電性繊維14の平均繊維長は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(例えば、製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)のSEM機能を用い、500~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維長を測定し、その100本中、最大値と最小値を除いた98本の導電性繊維の繊維長の算術平均値として求めるものとする。上記S-4800(TYPE2)を用いて、繊維長を測定する際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にする。なお、SEM観察時には、TE検出器は使わないので、SEM観察前にTE検出器は必ず抜いておく。上記S-4800は、STEM機能とSEM機能を選択できるが、上記繊維長の測定する際には、SEM機能を用いるものとする。
導電性繊維14の繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。まず、導電性繊維分散液をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に導電性繊維の塗布量が10mg/m2となるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製する。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出す。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728-45」、日新EM社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付ける。さらに、Pt-Pdを20秒~30秒スパッタし、導通を得る。適度なスパッタ膜がないと像が見えにくい場合があるので、その場合は適宜調整する。
上記繊維長は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。写真を元に実測する場合、上記と同様の方法によって行うものとする。導電性繊維含有組成物を用いて求められた繊維長と、写真を元にして実測して求めた繊維長は、ほぼ同じ値となる。
導電性繊維14としては、導電性炭素繊維、金属ナノワイヤ等の金属繊維、金属被覆有機繊維、金属被覆無機繊維、およびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。
上記導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
上記金属繊維としては、例えば、ステンレススチール、Ag、Cu、Au、Al、Rh、Ir、Co、Zn、Ni、In、Fe、Pd、Pt、Sn、Ti、またはこれらの合金から構成された金属ナノワイヤが好ましく、金属ナノワイヤの中でも、低抵抗値を実現でき、酸化しにくく、また湿式塗布に適している観点から、銀ナノワイヤが好ましい。上記金属繊維としては、例えば、上記金属を細く、長く伸ばす伸線法または切削法により作製された繊維が使用できる。このような金属繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
また金属繊維として、銀ナノワイヤを用いる場合、銀ナノワイヤは、ポリオール(例えば、エチレングリコール)およびポリ(ビニルピロリドン)の存在下で、銀塩(例えば、硝酸銀)の液相還元により合成可能である。均一サイズの銀ナノワイヤの大量生産は、例えば、Xia,Y.et al.,Chem.Mater.(2002)、14、4736-4745およびXia,Y.et al.,Nanoletters(2003)3(7)、955-960に記載される方法に準じて得ることが可能である。
金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833~837;Chem.Mater.,2002,14,4736~4745等、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006-233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002-266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004-149871号公報等を参考にすることができる。
上記金属被覆合成繊維としては、例えば、アクリル繊維に金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等をコーティングした繊維等が挙げられる。このような金属被覆合成繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
<<<他の導電性フィルム>>>
導電性フィルム10においては、導電部が一方向(方向D)に延びているが、導電部が少なくとも2方向に延びていてもよい。具体的には、図4に示されるように、導電性フィルム20は、第1導電部21は第1方向D1に線状に延びており、第2導電部22は第1方向とは異なる第2方向D2に線状に延びている。
<<第1導電部および第2導電部>>
第1導電部21と第2導電部22は、図5に示されるように繋がっていてもよいが、離間していてもよい。第2方向D2は、第1方向D1と異なっていればよく、例えば、第1方向D1と第2方向D2の間の角度αは、10°以上90°以下になっていてもよい。角度α(図5参照)は、第1方向D1と第2方向D2の間の角度のうち、狭い方の角度を意味するものとする。角度αの下限は、15°以上、30°以上、または45°以上であってもよい。
第1導電部21および第2導電部22は、それぞれ複数の導電性繊維14を含んでいる。図6に示されるように、第1導電部21における導電性繊維14は、第1方向D1に沿って並んでおり、第2導電部22における導電性繊維14は、第2方向D2に沿って並んでいる。
第1導電部21および第2導電部22は、上記以外は導電部12と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
<<導電性フィルムの製造方法>>
導電性フィルム10は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、図7(A)に示されるように、光透過性基材11の第2面11Bに光透過性機能層用組成物を塗布し、乾燥させて、光透過性機能層用組成物の塗膜31を形成する。
光透過性機能層用組成物を塗布する方法としては、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
次いで、図7(B)に示されるように塗膜31に紫外線等の電離放射線を照射し、または加熱して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜31を硬化させて、光透過性機能層13を形成する。
光透過性機能層用組成物を硬化させる際の光として、紫外線を用いる場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる紫外線等が利用できる。また、紫外線の波長としては、190~380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
光透過性基材11上に光透過性機能層13を形成した後、光透過性基材11の第1面11Aに、導電性繊維14および分散媒を含む導電性繊維分散液を塗布する。導電性繊維分散液の塗布は、接触式ディスペンサを用いて行う。具体的には、図8(A)に示されるように接触式ディスペンサの吐出部32を光透過性基材11に対して相対的に方向Dに移動させながら、方向Dに沿って吐出部32から導電性繊維分散液を吐出させて、導電性繊維分散液を線状に塗布する。これにより、線状の塗工部33が形成される。本明細書における「接触式ディスペンサ」とは、被塗布面上に形成された導電性繊維分散液の液溜まりに、吐出部が直に接触する方式のディスペンサである。また、「ディスペンサの吐出部を光透過性基材に対して相対的に移動させる」とは、ディスペンサの吐出部を光透過性基材に対して移動させること、および光透過性基材をディスペンサの吐出部に対して移動させることのいずれであってもよい。吐出部32は、例えば、空圧でプランジャが押されることにより導電性繊維分散液を吐出するように構成されている。吐出部32としては、シリンジやノズル等が挙げられる。
導電性繊維分散液の吐出時においては、光透過性基材11に対する吐出部32の相対移動速度は、5mm/秒以上500mm/秒以下であることが好ましい。上記相対移動速度が、5mm/秒以上であれば、塗工部の濡れ広がりを抑制でき、500mm/秒以下であれば、液切れすることなく線状に導電性繊維分散液を吐出できる。上記相対移動速度の下限は、10mm/秒以上、15mm/秒以上、または20mm/秒以上であることがより好ましく、上限は、450mm/秒以下、420mm/秒以下、または400mm/秒以下であることがより好ましい。本明細書における「光透過性基材に対する吐出部の相対移動速度」とは、線状の塗工部を形成する方向の相対移動速度である。
導電性繊維分散液の吐出時における吐出部32と光透過性基材11の間の間隔(コーティングギャップ)は、5μm以上80μm以下であることが好ましい。上記コーティングギャップが、5μm以上であれば、吐出部32と光透過性基材11の接触を抑制でき、80μm以下であれば、液切れすることなく線状に導電性繊維分散液を吐出できる。上記コーティングギャップの下限は、10μm以上、15μm以上、または20μm以上であることがより好ましく、上限は、70μm以下、60μm以下、または50μm以下であることがより好ましい。
吐出部32の吐出口の直径は、20μm以上200μm以下であることが好ましい。上記吐出口の直径が、20μm以上であれば、吐出口での導電性繊維分散液の詰りを抑制でき、200μm以下であれば、導電性繊維分散液が流れ出ることを抑制できる。上記吐出口の直径の下限は、22μm以上、24μm以上、または25μm以上であることがより好ましく、上限は、160μm以下、120μm以下、または100μm以下であることがより好ましい。
導電性繊維分散液の吐出時における導電性繊維分散液の吐出圧は、1kPa以上50kPa以下であることが好ましい。上記吐出圧が、1kPa以上であれば、詰まることなく導電性繊維分散液を吐出でき、50kPa以下であれば、導電性繊維分散液に対して過剰に圧力が加わることを抑制できる。上記吐出圧の下限は、2kPa以上、4kPa以上、または5kPa以上であることがより好ましく、上限は、40kPa以下、30kPa以下、または20kPa以下であることがより好ましい。
導電性繊維分散液は、導電性繊維14および分散媒の他、熱可塑性樹脂や重合性化合物からなる樹脂分を含ませてもよい。本明細書における「樹脂分」とは、樹脂(ただし、導電性繊維を覆う導電性繊維同士の自己溶着や雰囲気中の物質との反応から防ぐための等の、導電性繊維の合成時に導電性繊維周辺に形成された有機保護層を構成する樹脂(例えば、ポリビニルピロリドン等)は含まない)の他、重合性化合物のように重合して樹脂となり得る成分も含む概念である。
分散媒としては、水系分散媒および有機系分散媒のいずれであってもよい。ただし、導電性繊維分散液中の樹脂分の含有量が多すぎると、導電性繊維間に樹脂分が入り込んでしまい、導電部の導通が悪化するおそれがある。特に、導電部の膜厚が薄い場合には、導電部の導通が悪化しやすい。一方で、有機系分散媒を用いた方が、水系分散媒を用いる場合よりも導電性繊維分散液中の樹脂分が少なくなる。このため、膜厚が薄い、例えば、300nmの膜厚を有する導電部12を形成する場合には、有機分散媒を用いることが好ましい。有機系分散媒は、10質量%未満の水を含んでいてもよい。
有機系分散媒としては、特に限定されないが、親水性の有機系分散媒であることが好ましい。有機系分散媒としては、例えば、ヘキサン等の飽和炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、導電性繊維分散液の安定性の観点から、アルコール類が好ましい。
導電性繊維分散液に含まれていてもよい熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリアセテート系樹脂;ポリノルボルネン系樹脂;合成ゴム;フッ素系樹脂等が挙げられる。
導電性繊維分散液に含まれていてもよい重合性化合物としては、光透過性機能層13の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
その後、図8(B)に示されるように、塗工部33を乾燥させて、線状の導電部12を得る。これにより、導電性フィルム10が得られる。
導電性フィルムを得る場合には、まず、接触式ディスペンサの吐出部32を光透過性基材11に対して相対的に第1方向D1に移動させながら、第1方向D1に沿って吐出部32から導電性繊維分散液を塗布して、線状の第1塗工部を形成する。また、同様に、吐出部32を光透過性基材11に対して相対的に第2方向D2に移動させながら、第2方向D2に沿って吐出部32から導電性繊維分散液を塗布して、線状の第2塗工部を形成する。その後、第1塗工部および第2塗工部を乾燥させて、線状の第1導電部21および線状の第2導電部22を得る。これにより、導電性フィルム20が得られる。
通常、導電性繊維分散液を塗布する際には、ダイコート法やバーコート法が用いられているが、ダイコート法やバーコート法を用いて導電層を形成すると、導電性繊維はランダムな配置となる。このため、導電層をエッチングして、パターニングされた線状の導電部を形成したとしても、導電性繊維は、ランダムな配置となる。また、導電性繊維分散液を非接触式ディスペンサやインクジェット法によって塗布して線状の導電部を形成した場合には、液滴毎に導電性繊維の方向性はあるものの、塗布された導電性繊維全体では方向性はないので、導電部中の導電性繊維はランダムな配置となる。さらに、導電性繊維分散液をスクリーン印刷法によって塗布して線状の導電部を形成した場合も、導電部中の導電性繊維はランダムな配置となる。一方で、導電性繊維がある方向に沿って並んでいる場合、導電性繊維がランダムに配置されている場合よりも線抵抗値が低くなる。本実施形態によれば、接触式のディスペンサの吐出部32を光透過性基材11に対して相対的に移動させながら、吐出部32から導電性繊維14を含む導電性繊維分散液を光透過性基材11の第1面11A側に塗布しているので、吐出部32または光透過性基材11の移動方向に沿って導電性繊維14を並ばせることができる。これは、ディスペンサの吐出部32は開口が狭いので、導電性繊維分散液が塗布される際に、導電性繊維が横たわらずに、導電性繊維14の長手方向が光透過性基材11の法線方向を向いた状態で導電性繊維が塗布されるからであると考えられる。したがって、導電部12の線抵抗値を低下させることができるので、導電部12中の導電性繊維の含有量を減らすことができる。これにより、所望の線抵抗値を実現しつつコストの低減を図ることができる。
上記したように、ダイコート法やバーコート法で導電性分散液を塗布した場合、層状に導電部が形成されるので、線状の導電部を形成するには、エッチングによるパターニングが必要となる。エッチングによるパターニングは、不要な導電部の部分を除去するものであるので、エッチングにより除去される部分に含まれる導電性繊維は無駄になる。これに対し、本実施形態によれば、直接、導電性繊維分散液を線状に塗布しているので、エッチングによるパターニングをする必要がない。これにより、導電性繊維14の無駄を削減できるので、コスト低減を図ることができる。また、エッチングが不要になるので、工程数が減り、製造時間の短縮化も図ることができる。
本実施形態によれば、導電部12中の導電性繊維14は、導電部12が延びる方向Dに沿って並んでいるので、導電部12の線抵抗値を低下させることができ、この結果、導電部12中の導電性繊維14の含有量を減らすことができる。これにより、所望の線抵抗値を実現しつつコストの低減を図ることができる。
本実施形態によれば、導電性繊維14を用いているので、ITOとは異なり、屈曲させたとしても割れ難い導電性フィルム10を提供することができる。
本実施形態に係る導電性フィルムの用途は特に限定されないが、タッチパネルを備える画像表示装置に組み込んで使用することが可能である。図10は本実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
<<<画像表示装置>>>
導電性フィルム10や導電性フィルム20は、画像表示装置に組み込んで使用することが可能である。図9は、本実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。図9に示される画像表示装置40は、観察者側に向けて、表示素子50と、円偏光板60と、タッチセンサ70と、カバー部材80とをこの順で備えている。表示素子50と円偏光板60の間、円偏光板60とタッチパネル70の間、タッチパネル70とカバー部材80との間は、接着層91~93を介して接着されている。本明細書における「接着」とは粘着を含む概念である。
<<表示素子>>
表示素子50としては、液晶素子、有機発光ダイオード素子(以下、「OLED素子」と称することもある。)、無機発光ダイオード素子、マイクロLED、プラズマ素子等が挙げられる。有機発光ダイオード素子としては、公知の有機発光ダイオード素子を用いることができる。また、液晶表示素子は、タッチパネル機能を素子内に備えたインセルタッチパネル液晶表示素子であってもよい。
<<円偏光板>>
円偏光板60は、外光反射を抑制する機能を有するので、表示素子としてOLED素子を用いる場合に、円偏光板60は、特に有効である。円偏光板60は、例えば、観察者側に向けて、第1位相差フィルムと、接着層と、第2位相差フィルムと、接着層と、偏光板とを、この順で備えている。
円偏光板60の厚みは、薄型化を図る観点から、100μm以下であることが好ましい。円偏光板60の厚みの下限は、強度低下による加工性の観点から、20μm以上、30μm以上、または50μm以上であることが好ましい。また、円偏光板60の厚みの上限は、95μm以下、90μm以下、80μm以下であることがより好ましい。円偏光板60の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、円偏光板60の断面を撮影し、その断面の画像において円偏光板60の厚みを10箇所測定し、その10箇所の膜みの算術平均値を求めることによって求めることができる。
円偏光板60は、チップカット方式やロール・トゥ・パネル方式のいずれの方式によって画像表示装置に組み込んでもよい。チップカット方式は、画像表示装置のサイズに合わせてロール状の円偏光板から所定の大きさの円偏光板を切り出して、接着層を介してガラス等のカバー部材に貼り付ける方式である。また、ロール・トゥ・パネル方式は、画像表示装置の製造ラインにおいてロール状の円偏光板を送り出しながら切断し、接着層を介してガラス等のカバー部材に貼り合わせる方式である。
<<タッチパネル>>
タッチパネル70は、導電性フィルム71と、導電性フィルム71より観察者側に配置された導電性フィルム10とを備えている。導電性フィルム71は、導電性フィルム10とほぼ同様の構造となっており、光透過性基材72と、導電部73および光透過性機能層74とを備えている。光透過性基材72は光透過性基材11と同様のものであり、導電部73は導電部12と同様のものであり、光透過性機能層74は光透過性機能層13と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。
<<カバー部材>>
カバー部材80の表面80Aは、画像表示装置40の表面40Aとなっている。カバー部材80は、カバーガラスまたは樹脂からなるカバーフィルムであってもよい。画像表示装置40が、屈曲性を有する場合には、カバー部材80は屈曲性を有するガラスや屈曲性を有する樹脂から構成されていることが好ましい。屈曲性を有する樹脂としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンナフタレート樹脂)、またはこれらの樹脂を2以上混合した混合物等が挙げられる。
<<接着層>>
接着層91~93は、重合性化合物を含む液状の電離放射線硬化性接着剤(例えば、OCR:Optically Clear Resin)の硬化物や粘着剤(例えば、OCA:Optical Clear Adhesive)から構成することが可能である。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
<ハードコート層用組成物の調製>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、ハードコート層用組成物1を得た。
(ハードコート層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(商品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬株式会社製):30質量部
・重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):1.5質量部
・メチルエチルケトン(MEK):50質量部
・シクロヘキサノン:18.5質量部
<銀ナノワイヤ分散液の調製>
(銀ナノワイヤ分散液1)
アルコール溶媒としてエチレングリコール、銀化合物として硝酸銀、塩化物として塩化ナトリウム、臭化物として臭化ナトリウム、アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウム、アルミニウム塩として硝酸アルミニウム九水和物、有機保護剤としてビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマー(ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%でコポリマー作成、重量平均分子量130,000)を用意した。
室温にて、エチレングリコール540g中に、塩化ナトリウム0.041g、臭化ナトリウム0.0072g、水酸化ナトリウム0.0506g、硝酸アルミニウム九水和物0.0416g、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイトのコポリマー5.24gを添加して溶解させ、溶液Aをとした。これとは別の容器中で、エチレングリコール20g中に硝酸銀4.25gを添加して溶解させ、溶液Bとした。この例では、Al/OHモル比は0.0876、OH/Agモル比は0.0506であった。
溶液Aの全量を常温から115℃まで撹拌しながら昇温したのち、溶液A中に、溶液Bの全量を1分かけて添加した。溶液Bの添加終了後、さらに撹拌状態を維持して115℃で24時間保持した。その後、反応液を室温まで冷却した。冷却後に、反応液にアセトンを反応液の10倍量添加し、10分撹拌後に24時間静置を行った。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を、ピペットにて丁寧に除去し、濃縮物を得た。
得られた濃縮物に500gの純水を添加し、10分撹拌を行い、濃縮物を分散させた後、さらにアセトンを10倍量添加し、さらに撹拌後に24時間静置を行った。静置後、新たに濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を、ピペットにて丁寧に除去を行った。過剰な有機保護剤は良好な導電性を得るためには不要なものであるため、この洗浄操作を必要に応じて1~20回程度行い、固形分を十分に洗浄した。
洗浄後の固形分に純水を加えてこの固形分の分散液を得た。この分散液を分取し、溶媒の純水を観察台上で揮発させたのち高分解能FE-SEM(高分解能電界放出形走査電子顕微鏡)により観察した結果、固形分は銀ナノワイヤであることが確認された。
上記洗浄後の銀ナノワイヤに、イソプロピルアルコールを添加して銀ナノワイヤ分散液1を得た。銀ナノワイヤ分散液1中における銀ナノワイヤの平均繊維径および平均繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの平均繊維径は45nmであり、平均繊維長は15μmであった。また、銀ナノワイヤ分散液1中の銀ナノワイヤの濃度は、1.5mg/mlであった。
銀ナノワイヤの平均繊維径は、透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名「H-7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めた。上記繊維径の測定の際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」とした。また、銀ナノワイヤの平均繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、500~2000万倍にて100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の中で、最大値と最小値を除いた98本の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA」、SE検出器を「混合」とした。銀ナノワイヤの繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)のSEM機能を用い、500~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の中で、最大値と最小値を除いた98本の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にした。なお、TE検出器は予め抜いておいた。銀ナノワイヤの繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ分散液1を、分散媒に合わせてエタノールで銀ナノワイヤの濃度を0.05質量%以下に希釈した。さらに、この希釈した銀ナノワイヤ分散液1をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ(Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」)上に1滴滴下し、室温で乾燥させ、上記条件で観察し、観察画像データとした。これを元に算術平均値を求めた。銀ナノワイヤの繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ分散液1をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に銀ナノワイヤの塗布量が10mg/m2となるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製した。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出した。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728-45」、日新EM社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付けた。さらに、Pt-Pdを20秒~30秒スパッタして、導通を得た。なお、以下の銀ナノワイヤの繊維径および繊維長も同様にして求めた。
(銀ナノワイヤ分散液2)
合成条件や添加剤を調整して、平均繊維径35nmおよび平均繊維長15μmの銀ナノワイヤを得たこと以外は、銀ナノワイヤ分散液1と同様にして、銀ナノワイヤ分散液2を得た。
(銀ナノワイヤ分散液3)
合成条件や添加剤を調整して、平均繊維径30nmおよび平均繊維長15μmの銀ナノワイヤを得たこと以外は、銀ナノワイヤ分散液1と同様にして、銀ナノワイヤ分散液3を得た。
<実施例1>
まず、光透過性基材としての片面に下地層を有する厚さ48μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)を準備し、このポリエチレンテレフタレートフィルムの下地層側に、ハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、光透過性機能層としての膜厚2μmのハードコート層を形成した。
ハードコート層を形成した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおけるハードコート層が形成された面と反対側の未処理面上に、接触式ディスペンサ(製品名「SuperΣ(登録商標)CMIII」、武蔵エンジニアリング株式会社製)を用いて、以下の条件で、ディスペンサの吐出部から銀ナノワイヤ分散液1を塗布時の線厚が182μmとなるように吐出させて、線状に塗布して、互いに平行な直線状の塗工部を90本形成した。
(吐出条件)
・吐出圧:5kPa
・吐出口径:100μm
・コーティングギャップ:50μm
・PETフィルム移動速度:20mm/秒
その後、形成した塗工部に対して、0.5m/sの流速で40℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに15m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させ、乾燥させることにより塗工部中の溶剤を蒸発させた。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥させた塗工部からなる互いに平行な導電部を90本形成し、導電性フィルムを得た。各導電部は、線長100mmおよび線幅280μmであった。導電部間の間隔(導電部を形成しない部分の幅)は、280μmであった。
実施例1に係る導電部の線幅は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された導電部の平面写真からランダムに10箇所線幅を測定し、測定された10箇所の線幅中で、最大値と最小値除く8箇所の線幅の算術平均値とした。具体的な平面写真の撮影は、以下の方法によって行われた。まず、導電性フィルムから平面観察用のサンプルを作製した。詳細には、10mm×10mmの大きさに切り出した導電性フィルムを、導電テープ(製品名「SEM用カーボン両面テープ」、日新EM株式会社製)を介して、アルミ試料台へ設置した。観察部位以外には、導電性コロイド状グラファイト(製品番号「16053」、Pella Inc., Redding CA, USA)を塗布し、イオンスパッタ装置(製品名「E-1030」、会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて白金の蒸着層を形成して、SEM用サンプルとした。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)のSEM機能を用いて、SEM用サンプルの平面写真を撮影した。この平面写真を測定する際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にした。なお、SEM観察時には、TE検出器は使わないので、SEM観察前にTE検出器は抜いておいた。上記S-4800は、STEM機能とSEM機能を選択できるが、上記線幅を測定する際には、SEM機能を用いるものとした。また、実施例1に係る導電部の線長も線幅と同様にして測定された。さらに、実施例1のみならず、以降の実施例および比較例も全て、導電部の線幅および線長はこの方法によって測定された。
<実施例2>
実施例2においては、銀ナノワイヤ分散液1の代わりに銀ナノワイヤ分散液2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
<実施例3>
実施例3においては、銀ナノワイヤ分散液1の代わりに銀ナノワイヤ分散液3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
<実施例4>
実施例4においては、PETフィルム移動速度を5mm/秒とし、また導電部の線幅および導電部間の間隔を620μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
<比較例1>
比較例1においては、ディスペンサに代えてバーコーターを用いて銀ナノワイヤ分散液1を塗布し、その後、レーザーエッチングしたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性フィルムを得た。具体的には、まず、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおけるハードコート層が形成された面と反対側の未処理面上に、バーコーターを用いて、銀ナノワイヤ分散液1を塗布して、ポリエチレンテレフタレートフィルム全面に塗膜を形成した。
次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で40℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに15m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させ、乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥させた導電部を形成した。
導電層を形成した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの流れ方向に沿って延びる直線状の導電部が形成されるように、以下の条件でレーザー光を照射して、導電層に存在する銀ナノワイヤを昇華させて除去することにより、導電層をパターニングした。これにより、パターニングされた導電部を有する導電性フィルムを得た。なお、比較例1に係る導電性フィルムの導電部の寸法は、実施例1に係る導電性フィルムの導電部の寸法と同様であった。
(レーザー光照射条件)
・種類:YVO4
・波長:1064nm
・パルス幅:8~10ns
・周波数:100kHz
・スポット径:30μm
・パルスエネルギー:16μJ
・加工速度:1200mm/秒
<銀ナノワイヤ並び評価>
実施例1~4および比較例1に係る導電性フィルムにおける導電部中の銀ナノワイヤが、導電部が延びる方向に沿って並んでいるか評価した。具体的には、まず、走査透過型電子顕微鏡(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)のSEM機能を用い、導電部の写真を1000倍~6000倍にて10枚撮影した。そして、導電部の各写真において、上記表面繊維配向解析プログラム(V.8.03)を用いて配向角度および配向強度を算出した。そして、導電部において、銀ナノワイヤの配向角度が0°±10°以内で、かつ配向強度が1.2以上である場合には、導電部が延びる方向に銀ナノワイヤが並んでいるとし、配向角度が0°±10°以内であるが配向強度が1.2未満である場合または配向角度が1.2以上であるが配向角度が0°±10°を超える場合または配向角度が0°±10°を超え配向強度が1.2未満である場合には、導電部が延びる方向に銀ナノワイヤが並んでいないとした。評価基準は、以下の通りとした。
○:導電部中の銀ナノワイヤが、導電部が延びる方向に沿って並んでいた。
×:導電部中の銀ナノワイヤが、導電部が延びる方向に沿って並んでいなかった。
<表面抵抗値・線抵抗値測定>
実施例1~4および比較例1に係る導電性フィルムにおいて、導電部の表面抵抗値および線抵抗値をそれぞれ測定した。具体的には、まず、導電性フィルムから導電部全てが入るように、かつ、導電部が延びる方向に100mmの長さおよび導電部を10本(実施例4においては4本)含む幅の長方形形状に切り出したサンプルの長手方向の両端部に、それぞれ全ての導電部に跨るように導電部の幅方向に延びる線状の銀ペーストを塗布した。次いで、130℃で30分加熱して、これらの銀ペーストを硬化させた。その状態で、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、テスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)のプローブ端子を接触させることによって測定することができる。具体的には、Digital MΩ Hitester 3454-11は、2本のプローブ端子(赤色プローブ端子および黒色プローブ端子、両方ともピン形)を備えているので、赤色プローブ端子を導電部の一方の硬化した銀ペーストに接触させ、かつ黒色プローブ端子を導電部の他方の硬化した銀ペーストに接触させて導電部の抵抗値Rを測定した。そして、実施例1~3および比較例1においては、導電部1本の線幅CWを280μmとし、導電部の本数CNを10本とし、導電部の線長CLを100000μm(100mm)とし、実施例4においては、導電部1本の線幅CWを620μmとし、導電部の本数CNを4本とし、導電部の線長CLを100000μm(100mm)として、上記数式(2)に基づいて表面抵抗値を求めた。また、実施例1~3および比較例1においては、導電部の本数CNを10本、実施例4においては導電部の本数CNを4本として、上記数式(3)に基づいて線抵抗値を求めた。表面抵抗値は5回中、最大値と最小値を除いた3回の表面抵抗値の算術平均値とし、また線抵抗値は5回中、最大値と最小値を除いた3回の線抵抗値の算術平均値とした。
<ヘイズ値測定>
実施例1~4および比較例1に係る導電性フィルムにおいて、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、JIS K7136:2000に従って導電性フィルムのヘイズ値(全ヘイズ値)を測定した。ヘイズ値は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また導電部全てが入るように50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で、実施例1~4および比較例1に係る導電性フィルムにおいては導電部側が非光源側となるように、かつ、導電部の長手方向が水平方向となるように設置して測定された。ヘイズ値は、導電性フィルム1枚に対して5回測定し、最大値と最小値を除いた3回測定して得られた値の算術平均値とした。
表1に示されるように、実施例1~4に係る導電性フィルムにおいては、導電部中の銀ナノワイヤが、導電部が延びる方向に沿って並んでいたため、比較例1に比べて導電部における線抵抗値が低くかった。これにより、実施例1~4に係る導電性フィルムにおける導電部中から銀ナノワイヤを削減することができるので、所望の線抵抗値や表面抵抗値を実現しつつコストの低減を図ることできる。
なお、上記実施例1~4に係る導電性フィルムの銀ナノワイヤの繊維径について、各導電性フィルムを以下のように走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、上記した組成物から求めた結果と比較し、1~2nm程度のズレはあったが、ほぼ同じであった。
走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)のSEM機能を用い、1万倍~20万倍にて50枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を測定し、その100本中、最大値と最小値を除いた98本の導電性繊維の繊維径の算術平均値として求めた。繊維径を測定する際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にした。なお、SEM観察時には、TE検出器は使わないので、SEM観察前にTE検出器は必ず抜いておく。上記S-4800は、STEM機能とSEM機能を選択できるが、上記繊維径の測定する際には、SEM機能を用いるものとした。