JP7298706B2 - 光パルス試験方法及び光パルス試験装置 - Google Patents

光パルス試験方法及び光パルス試験装置 Download PDF

Info

Publication number
JP7298706B2
JP7298706B2 JP2021552052A JP2021552052A JP7298706B2 JP 7298706 B2 JP7298706 B2 JP 7298706B2 JP 2021552052 A JP2021552052 A JP 2021552052A JP 2021552052 A JP2021552052 A JP 2021552052A JP 7298706 B2 JP7298706 B2 JP 7298706B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
optical
pulse
light
optical fiber
time
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2021552052A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2021075015A1 (ja
Inventor
佳史 脇坂
大輔 飯田
博之 押田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Original Assignee
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Telegraph and Telephone Corp filed Critical Nippon Telegraph and Telephone Corp
Publication of JPWO2021075015A1 publication Critical patent/JPWO2021075015A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7298706B2 publication Critical patent/JP7298706B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01HMEASUREMENT OF MECHANICAL VIBRATIONS OR ULTRASONIC, SONIC OR INFRASONIC WAVES
    • G01H9/00Measuring mechanical vibrations or ultrasonic, sonic or infrasonic waves by using radiation-sensitive means, e.g. optical means
    • G01H9/004Measuring mechanical vibrations or ultrasonic, sonic or infrasonic waves by using radiation-sensitive means, e.g. optical means using fibre optic sensors

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Testing Of Optical Devices Or Fibers (AREA)

Description

本開示は、光ファイバ振動センシングにおける周波数多重によるサンプリングレート向上とフェーディング対策が可能な光パルス試験方法及び光パルス試験装置に関する。
光ファイバに加わった物理的な振動を、光ファイバ長手方向に分布的に計測する手段として、被測定光ファイバにパルス試験光を入射し、レイリー散乱による後方散乱光を検出するDAS(Distributed Acoustic Sensing)と呼ばれる手法が知られている(例えば、非特許文献1を参照。)。
DASでは、光ファイバに加わった物理的な振動による光ファイバの光路長変化を捉え、振動のセンシングを行う。振動を検出することで、被測定光ファイバ周辺での、物体の動き等を検出することが可能である。
DASにおける後方散乱光の検出方法として、被測定光ファイバの各地点からの散乱光強度を測定し、散乱光強度の時間変化を観測する手法があり、DAS-I(DAS-Intensity)と呼ばれている。DAS-Iは装置構成が簡便にできる特徴があるが、散乱光強度から振動によるファイバの光路長変化を定量的に計算することができないため、定性的な測定手法である(例えば、非特許文献2を参照。)。
一方で、被測定光ファイバの各地点からの散乱光の位相を測定し、位相の時間変化を観測する手法であるDAS-P(DAS-Phase)も研究開発されている。DAS-Pは、装置構成や信号処理がDAS-Iより複雑となるが、振動によるファイバの光路長変化に対して位相が線形に変化し、その変化率も光ファイバ長手方向で同一となるため、振動の定量的な測定が可能となり、被測定光ファイバに加わった振動を忠実に再現することができる(例えば、非特許文献2を参照。)。
DAS-Pによる測定では、パルス光を被測定光ファイバに入射し、パルス光を入射した時刻tでの、散乱された光の位相を、光ファイバの長手方向に分布的に計測する。つまり、光ファイバの入射端からの距離lとして、散乱光の位相θ(l、t)を測定する。パルス光を、時間間隔Tで、繰り返し被測定光ファイバに入射することで、整数nとして時刻t=nTにおける散乱された光の位相の時間変化θ(l、t)を、被測定光ファイバの長手方向の各点について測定する。ただし実際は、入射端から距離tまでパルス光が伝搬する時間だけ、距離lの地点を測定する時刻は、パルスを入射した時刻より遅れる。さらに、散乱光が入射端まで戻ってくるのに要する時間だけ、測定器で測定する時刻は遅れることに注意する。距離lから距離l+δlまでの区間に加わった物理的な振動の各時刻nTでの大きさは、距離l+δlでの位相θ(l+δl,nT)と、距離lでの位相θ(l,nT)との差分δθ(l,nT)に比例することが知られている。つまり、時刻ゼロを基準とすれば、下式を満たす。
Figure 0007298706000001
散乱光の位相を検出するための装置構成としては、被測定光ファイバからの後方散乱光を直接フォトダイオードなどで検波する直接検波の構成や、別途用意した参照光と合波させて検出するコヒーレント検波を使用した構成がある(例えば、非特許文献1を参照。)。
コヒーレント検波を行い、位相を計算する機構では、ヒルベルト変換を用いてソフトウェアベースで処理する機構と、90度光ハイブリッドを用いてハードウェアベースで処理する機構の二つに細分されるが、どちらの手法においても、散乱光の同相成分I(l,nT)と直交成分Q(l,nT)を取得し、下式により位相を計算する。
Figure 0007298706000002
ただし、4象限逆正接演算子Arctanによる出力値はラジアン単位で(-π,π]の範囲にあり、mを任意の整数として、2mπ+θ(l,nT)はxy平面上で全て同じベクトル方向となるため、2mπだけの不確定性が上記で計算したθcal(l,nT)には存在する。
したがって、θ(l,nT)のより正確な評価方法として、位相アンラップ等の信号処理がさらに行われる。一般的な位相アンラップでは、アンラップ後の位相を
Figure 0007298706000003
とすれば、任意の整数をpとして、
Figure 0007298706000004
がπラジアンより大きくなる場合に、
Figure 0007298706000005
がπラジアン以下になるような適切な整数qを選択して、アンラップ後の位相を
Figure 0007298706000006
として、次式を計算する。
Figure 0007298706000007
と計算する。なお、上添え字unwrapはアンラップ後の位相であることを表す。
DASによる測定においては、光を検出するためのPDの熱雑音や、その後の電気段での雑音、光によるショット雑音などの、測定器の雑音が存在する。したがって、測定する散乱光の強度や位相にも、測定器の雑音による影響が現れる。
特に、散乱光の位相を測定する場合、測定器の雑音の影響が大きくなってしまうと、単に位相の不確かさが増加するだけでなく、雑音がない場合の理想的な位相値と比較して、大きく異なる測定値をとる確率が大きくなる。
例えば、コヒーレント検波の場合に、同相成分を横軸に、直交成分を縦軸にした時の、測定された散乱光のベクトルについて、雑音がない時のベクトルの向きが測定したい位相に対応するが、雑音の影響が大きいと、ベクトルの向きが反対の方向を向き、雑音がない場合の理想的な位相値と比較して、実際に測定される位相値がπラジアン程度異なる値をとる確率が大きくなる。このような点においては、式(1)から振動の大きさを計算する際に、大きな物理的な力が光ファイバに加わったとする誤認識につながる。また、雑音の影響が大きくなると、式(3)で示したアンラップ処理において、整数qの選択を誤る点が増加し、選択を誤った点の前後で2π以上の実際には存在しない位相値の違いが生じてしまう。このような位相値の違いも、式(1)から振動の大きさを計算する際に、大きな物理的な力が光ファイバに加わったとする誤認識につながる。
正確に位相を測定するためには、測定器の雑音の影響を低減する必要がある。測定器の雑音の影響が大きくなるのは、測定器の雑音が各地点・各時刻について同程度あるとみなせる際には、散乱光の強度そのものが小さくなる場合であるから、散乱光の強度を各地点及び各時刻で大きくすることができれば、測定器の雑音の影響を低減することが可能となる。
散乱光の強度そのものが小さくなる原因となっているのは、プローブとなるパルス光が被測定光ファイバを伝搬するのに従って発生する吸収や散乱による損失だけではない。有限な時間幅を持ったパルス光を被測定光ファイバに入射して、パルス光の散乱を検出しているため、被測定光ファイバ上の非常に細かく分布している多数の散乱体からの散乱光の干渉が起きる。干渉の結果として、各時刻における散乱体の被測定光ファイバの長手方向での分布に応じて、散乱光の強度が小さくなる地点が発生する。この現象はフェーディングと呼ばれる(例えば、非特許文献3を参照。)。
したがって、DAS-Pにおける散乱光の位相を測定する場合、測定器の雑音の影響を低減するために、フェーディングによって、各時刻で散乱光の強度が小さくなる地点が発生することの防止が必要という課題がある。
当該課題を解決する手段として、単純に入射する光パルスのピーク強度を大きくする方法がある。しかし、ピーク強度を大きくすると、非線形効果が発生し、パルス光の特性が被測定光ファイバの伝搬に伴い変化する。このため、入射可能な光パルスのピーク強度は制限され、上記課題を十分に解決できない場合がある。
上記課題を解決するために、DAS-Pにおける散乱光の位相を測定するときに、入射する光パルスのピーク強度を大きくせずに測定器の雑音の影響を低減できる位相測定方法及び信号処理装置が提案されている(例えば、非特許文献4を参照。)。
非特許文献4では、上記課題を解決するために、振動によるファイバ状態の変化が無視できる時間間隔で、異なる光周波数成分のパルスを並べて波長多重したパルス光を被測定光ファイバに入射し、被測定光ファイバからの各波長における散乱光を、同相成分を横軸に直交成分を縦軸にした2次元平面上にプロットして得られる散乱光ベクトルを作成し、作成した散乱光ベクトルを被測定光ファイバ上の各地点で波長ごとに回転させることで向きを一致させ、向きを一致させたベクトル同士を加算平均することで新たなベクトルを生成し、生成した新たなベクトルの同相成分と直交成分の値を用いて位相を計算している。
DAS-Pにおける測定では、測定距離と測定可能な振動周波数の上限の間にトレードオフが生じる課題も存在する。単一周波数の光パルスを用いる場合、測定距離が長くなると、遠端からの散乱光が戻ってくる時刻が、パルス入射時刻に対して遅れる。したがって、遠端からの散乱光と、次の光パルスを入射した際の入射端付近からの散乱光が合波しないために、光パルスを入射する繰り返し周波数には上限が生じる。したがって、サンプリング定理から、繰り返し周波数の1/2倍のナイキスト周波数より大きい振動周波数の振動については、エイリアシングのため、正しく測定することができないという課題がある。
上記課題の解決方法として非特許文献5が提案されている。非特許文献5では、上記課題を解決するために、異なる光周波数成分のパルスを時間的に等間隔で並べて波長多重したパルス光を被測定光ファイバに入射し、被測定光ファイバからの各波長における散乱光を、同相成分を横軸に直交成分を縦軸にした2次元平面上にプロットして得られる散乱光ベクトルを作成する。異なる光周波数に対応する散乱光ベクトルの角度を、異なる時刻における光位相として連結させることにより、単一光周波数の場合に、測定距離から決まる測定可能な振動周波数fvに対して、N波多重により、測定可能な振動周波数をN×fvとすることができる。
しかし、測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフには、位相アンラップが正しく行われる必要があることから、さらに厳しい条件が加わる。隣り合う光パルスでサンプリングした際の位相変化の大きさの絶対値がπより大きく変化する場合には、位相アンラップを一意に行うことができなくなるため、位相アンラップの失敗につながってしまう(例えば、非特許文献6を参照。)。
したがって、隣り合うサンプリング点での位相変化の大きさの絶対値の上限はπという制約が生じる。つまり、ナイキスト周波数以下の範囲内であっても、振動周波数が高くなるほど、振動振幅が同じでも、隣り合うサンプリング点での位相変化量は大きくなるため、測定可能な振動周波数の上限にさらなる条件が生じる。
尚、位相変化の大きさと、振動によってファイバに加わった歪量との関係は、例えば非特許文献7で説明されている。
非特許文献7によれば、全長lのファイバが歪量εによってΔlだけ伸びた時、Δlだけ伸びた分による光が通過する際の位相変化の増加量Δφは下式となる。
Figure 0007298706000008
ここで、k=2πn/λは伝搬定数、nはファイバの実効屈折率、μはポアソン比、p11とp12はストレイン-オプティックテンソル成分である。歪量εは、ファイバの元の長さに対する変化量の割合であるΔl/lとして定義されることに注意する。例えば、通常の通信波長帯付近のλ=1555nmの場合を考えると、n=1.47、μ=0.17、p11=0.121、p12=0.271の値となるため、
Figure 0007298706000009
となることが知られている(例えば、特許文献8を参照。)。ただし、K=4.6×10-1である。この関係式を使用すれば、位相変化の大きさの条件を歪量の条件に置き替えることが可能である。
A. Masoudi, T. P. Newson, "Contributed Rview: Distributed optical fibre dynamic strain sensing," Review of Scientific Instruments, vol. 87, p. 011501 (2016) 西口憲一、李哲賢、グジクアーター、横山光徳、増田欣増、「光ファイバによる分布型音波センサの試作とその信号処理」、信学技報、115 (202), pp. 29-34 (2015) G. Yang et al., "Long-Range Distributed Vibration Sensing Based on Phase Extraction from Phase-Sensitive OTDR," IEEE Photonics Journal, vol. 8, no. 3, 2016. 脇坂佳史、飯田大輔、岡本圭司、押田博之、「周波数多重位相OTDRを用いた分布振動計測方法」、電子情報通信学会2019年ソサイエティ大会、2019年8月27日 D. Iida, K. Toge, T. Manabe, ‘Distributed measurement of acoustic vibration location with frequency multiplexed phase-OTDR’, Opt. Fiber Technol., 36 (2017) pp. 19-25, DOI: 10.1016/j.yofte.2017.02.005 Maria Rosario Fernandez-Ruiz, Hugo F. Martins, "Steady-Sensitivity Distributed Acoustic Sensors," J. Lightwave Technol. 36, 5690-5696 (2018) C. D. Butter and G. B. Hocker, " Fiber optics strain gauge," Appl. Opt. 17, 2867-2869 (1978) A. E. Alekseev et al., Laser Phys., 29 (2019) 055106
(課題1)上記の、測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフを考慮した上で、目的とする振動周波数を測定するために、非特許文献5に記載のような周波数多重の方法を実施した際に必要となる、周波数多重数についての設計方法は明らかになっていない。光周波数の多重数を増加させるには、送信系と受信系の帯域を増加させる必要があり、コストを要するため、必要最小限の周波数多重数を設計する方法が必要となる。
(課題2)非特許文献5に記載のような周波数多重の方法を行う際に、各光周波数間の角度差を補正しないと、測定される位相変化が、実際の位相変化に対して、歪んでしまうという課題が生じる。この課題に対する解決方法は今までに提案されていない。
(課題3)測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフを解決するための非特許文献5に記載のような周波数多重の方法と、フェーディング対策のための非特許文献4に記載した周波数多重の方法を、同時に実施する際の、光周波数パルスの構成方法と受信信号処理方法については今までに提案されていない。
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、次の3つを目的とする。
(目的1)上記課題1を解決すること。すなわち、上記の、測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフを考慮した上で、目的とする振動周波数を測定するために、非特許文献5に記載のような周波数多重の方法を実施した際に必要となる、周波数多重数の最小値の設計方法を提案すること。
(目的2)上記課題2を解決すること。すなわち、非特許文献5に記載のような周波数多重の方法を行う際に、各光周波数間の角度差を補正するための、光周波数パルスの構成方法と受信信号処理方法について提案すること。
(目的3)上記課題3を解決すること。すなわち、測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフを解決するための非特許文献5に記載のような周波数多重の方法と、フェーディング対策のための非特許文献4に記載した周波数多重の方法を、同時に実施する際の、光周波数パルスの構成方法と受信信号処理方法について提案すること。
上記目的1を達成するために、本発明に係る光パルス試験方法は、
異なる光周波数の光パルスを時間的に等間隔で並べた波長多重数Nの光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射すること、
前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光すること、
前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測すること、及び
前記波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定すること、
を特徴とする。
Figure 0007298706000010
なお、Fν(t)が単一の振動周波数A×sin(2πft)である場合、波長多重数Nを数C1aを満たす最小値に決定する。
Figure 0007298706000011
ただし、fは振動周波数である。
また、本発明に係る光パルス試験装置は、
異なる光周波数の光パルスを時間的に等間隔で並べた波長多重数Nの光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射する光源と、
前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光する受光器と、
前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測する信号処理部と、
前記波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定する計算部と、
を備える。
上記目的2を達成するために、本発明に係る光パルス試験方法は、
前記光パルス列を前記被測定光ファイバの一端に入射する前に、前記光パルス列の光パルス間隔より短い間隔で異なる光周波数の前記光パルスを並べた光パルス対を並べた補正用光パルス列を前記被測定光ファイバの一端に入射すること、及び
前記散乱光の位相成分の補正値を数C2で計算すること
を特徴とする。
Figure 0007298706000012
ただし、φ(i(m’),i(m))は光周波数が異なる2つの前記光パルス間の角度差、
Pは前記補正用光パルス列に含まれる前記光パルス対の数、
pは前記光パルス対の番号(1からPまでの整数)、
はp番目の前記光パルス対が前記被測定光ファイバの一端に入射される時間、
zは前記被測定光ファイバの前記一端からの距離、
i(m)(z,t+2z/ν)及びri(m’)(z,t+2z/ν)は距離zからの散乱光の複素ベクトル、
arg関数は引数の複素ベクトルの偏角を-πからπの範囲で計算し、実数を出力する関数、
R(*)は複素平面上で角度*だけ時計まわりに複素ベクトルrを回転させる演算子である。
また、本発明に係る光パルス試験装置の前記光源は、前記光パルス列を前記被測定光ファイバの一端に入射する前に、前記光パルス列の光パルス間隔より短い間隔で異なる光周波数の前記光パルスを並べた光パルス対を並べた補正用光パルス列を前記被測定光ファイバの一端に入射し、前記信号処理部は、前記散乱光の位相成分の補正値を数C2で計算することを特徴とする。
上記目的3を達成するために、本発明に係る光パルス試験方法は、光パルス列を形成する光パルスを、前記光パルス列の光パルス間隔より短い間隔で異なる光周波数の微小光パルスをM個並べて形成すること、及び雑音レベルの1/√M倍が所定値以下となるように前記微小光パルスの数Mを設定することを特徴とする。
上記目的3を達成するために、次のような方法もある。
(方法A)
本発明に係る光パルス試験方法は、
N×M+1個(NとMは自然数)の異なる光周波数の微小光パルスを並べた集団をM個形成すること、
M個の前記集団を並べて、先頭の前記集団からM個づつ前記微小光パルスを切り出して光パルス対をN×M+1個形成すること、
N×M+1個の前記光パルス対を時間的に等間隔で並べた光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射すること、
前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光すること、
前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測すること、
波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定すること、及び
雑音レベルの1/√M倍が所定値以下となるように波長多重数Mを設定すること
を特徴とする。
(方法B)
本発明に係る光パルス試験方法は、
N×M個(NとMは自然数)の異なる光周波数の微小光パルスを並べた集団をN+1個形成すること、
N+1個の前記集団を並べて、先頭の前記集団からM個づつ前記微小光パルスを切り出して光パルス対をN(N+1)個形成すること、
N(N+1)個の前記光パルス対のうち、N+1毎の前記光パルス対にいずれの前記微小光パルスの光周波数とも異なる光周波数の追加微小光パルスを追加すること、
前記追加微小光パルスが追加された前記光パルス対を含むN(N+1)個の前記光パルス対を時間的に等間隔で並べた光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射すること、
前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光すること、
前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測すること、
波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定すること、及び
雑音レベルの1/√M倍が所定値以下となるように波長多重数Mを設定すること
を特徴とする。
(方法C)
本発明に係る光パルス試験方法は、
N×M+1個(NとMは自然数)の異なる光周波数の微小光パルスを並べた集団を(N+1)M+1個形成すること、
(N+1)M+1個の前記集団を並べ、1+k(N+1)番目のパルス対にM+1個の前記微小光パルスが含まれ、他の前記パルス対にM個の前記微小光パルスが含まれるように、先頭の前記集団から前記微小光パルスを切り出して前記光パルス対を(N×M+1)(N+1)個形成すること、
(N×M+1)(N+1)個の前記光パルス対を時間的に等間隔で並べた光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射すること、
前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光すること、
前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測すること、
波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定すること、及び
雑音レベルの1/√M倍が所定値以下となるように波長多重数Mを設定すること
を特徴とする。
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
本発明は、次の光パルス試験方法及び光パルス試験装置を提供することができる。
(1)測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフを考慮した上で、目的とする振動周波数を測定するために、非特許文献5に記載のような周波数多重の方法を実施した際に必要となる、周波数多重数の最小値を設計できる。
(2)非特許文献5に記載のような周波数多重の方法を行う際に、各光周波数間の角度差を補正することができる。
(3)測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフを解決するための非特許文献5に記載のような周波数多重の方法と、フェーディング対策のための非特許文献4に記載した周波数多重の方法を、同時に実施することができる。
本発明に係る光パルス試験装置を説明する図である。 本発明に係る光パルス試験装置から被測定光ファイバに入射する光パルス列を説明する図である。 本発明に係る光パルス試験装置で測定した被測定光ファイバの位置zにおける位相変化を説明する図である。(a)は実測値である。(b)は異なる光周波数の角度差を補正した結果である。プロットの記号(○、×、△)は、光パルスの光周波数に対応している。つまり、同一の記号のプロットは光周波数が同じ光パルスで測定された位相である。 本発明に係る光パルス試験装置から被測定光ファイバに入射する光パルス列を説明する図である。 異なる光周波数の角度差を説明する図である。 本発明に係る光パルス試験装置から被測定光ファイバに入射する光パルス列を説明する図である。 本発明に係る光パルス試験装置から被測定光ファイバに入射する光パルス列を説明する図である。 本発明に係る光パルス試験装置から被測定光ファイバに入射する光パルス列を説明する図である。 本発明に係る光パルス試験装置から被測定光ファイバに入射する光パルス列を説明する図である。 本発明に係る光パルス試験装置から被測定光ファイバに入射する光パルス列を説明する図である。 本発明に関連する信号処理装置を備える振動検出装置を説明する図である。 本発明に関連する信号処理装置の構造を説明する図である。 本発明に関連する位相測定方法を説明する図である。 雑音によるベクトルの指す位置の不確かさを説明する図である。 雑音の有無によるベクトルの違いを説明する図である。 本発明に関連する位相測定方法の原理を説明する図である。 本発明に関連する位相測定方法の原理を説明する図である。 本発明に関連する位相測定方法の効果を説明する図である。 本発明に関連する信号処理装置の構造を説明する図である。 本発明に関連する位相測定方法を説明する図である。 本発明に係る光パルス試験方法を説明するフローチャートである。 本発明に係る光パルス試験方法を説明するフローチャートである。
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施形態であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
(実施形態1)
図1は、本実施形態のDAS-Pで振動検出を行う振動検出装置を説明する図である。
本振動検出装置は、光パルス試験装置であって、
異なる光周波数の光パルスを時間的に等間隔で並べた波長多重数Nの光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射する光源と、
前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光する受光器と、
前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測する信号処理部と、
前記波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定する計算部18と、
を備える。
CW光源1、カプラ2、及び光変調器3が前記光源に相当する。90度光ハイブリッド7及びバランス検出器(13、14)が前記受光器に相当する。前記受光器は、90度光ハイブリッド7を用いてコヒーレント検波を行う。信号処理装置17が前記信号処理部に相当する。
図21は、本振動検出装置が行う光パルス試験方法を説明するフローチャートである。本光パルス試験方法は、
波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定すること(ステップS21)、
異なる光周波数の光パルスを時間的に等間隔で並べた波長多重数Nの光パルス列を被測定光ファイバ6の一端に入射すること(ステップS22)、
被測定光ファイバ6の前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光すること(ステップS23)、及び
被測定光ファイバ6の振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測すること(ステップS24)
を行う。
測定器31は、次のように被測定光ファイバ6からの散乱光を測定する。CW光源1から周波数がfの単一波長の連続光が射出され、カプラ2により参照光とプローブ光に分岐される。プローブ光は、光変調器3によって、光パルス4のように波長多重の光パルスに整形される。光パルス4は、周波数がf+f(iは整数)かつパルス幅が光ファイバ長手方向での測定の空間分解能に対応する値Wに設定された微小パルス4aが、i=1、2、・・・、N(Nは整数)だけ並んだ構成である。隣り合う光周波数のパルスは等間隔Tで並べられ、i=Nのパルスの次には、i=1のパルスを同じ間隔Tで並べる。光周波数fの周波数設定は、各光周波数の散乱光の帯域が重ならないように設計する。目安として、どの光周波数の差も2/W以上となるようにする。
光変調器3の種類は光パルス4を生成できるならば具体的な指定はなく、数が複数の場合もある。例えば、SSB変調器や周波数可変なAO変調器などを用いても良いし、パルス化における消光比を大きくするためにさらにSOAなどによる強度変調を行っても良い。
光パルス4は、サーキュレータ5を介して、被測定光ファイバ6に入射される。光ファイバ6の長手方向の各点で散乱された光が、後方散乱光としてサーキュレータ5に戻り、90度光ハイブリッド7の一方の入力部に入射される。カプラ2により分岐された参照光は、90度光ハイブリッド7のもう一方の入力部に入射される。
90度光ハイブリッド7の内部構成は、90度光ハイブリッドの機能さえ備えていれば、なんでもよい。構成例を図1に示す。後方散乱光は、50:50の分岐比のカプラ8に入射され、2分岐された散乱光が、50:50の分岐比のカプラ12と、50:50のカプラ11の入力部に入射される。参照光は、50:50の分岐比のカプラ9に入射され、2分岐された参照光の一方が、カプラ11の入力部に入射され、他方が、位相シフタ10で位相をπ/2だけシフトされてカプラ12の入力部に入射される。
カプラ11の2つの出力がバランス検出器13によって検出され、アナログの同相成分Ianalogである電気信号15が出力される。カプラ12の2つの出力がバランス検出器14によって検出され、アナログの直交成分Qanalogである電気信号16が出力される。
電気信号15と電気信号16は、信号の周波数帯域をエイリアシングなくサンプリングが可能なAD変換機能素子17aとAD変換機能素子17bを備えた信号処理装置17に送られる。信号処置装置17では、AD変換機能素子17aとAD変換機能素子17bから出力されたデジタル化された同相成分Idigitalと直交成分Qdigitalの信号に対して、信号処理部17cによって光パルス4を構成する各周波数f+f(i=1、2、・・・、N)のパルスによる散乱光による信号を分離する。
つまり、信号処理部17cは、各周波数f+f成分のパルスを単独で入射した場合に得られる同相成分I measureと直交成分Q measureを、全てのiに関する同相成分の重ね合わせとなっているIdigitalと、全てのiに関する直交成分の重ね合わせとなっているQdigitalに対して信号処理を行うことで分離する。具体的な信号処理の方法は、IdigitalとQdigitalから、I measureとQ measureを正確に分離できるならどんな手法を用いても良い。例えば、IdigitalとQdigitalを、中心周波数がf+fであり通過帯域が2/Wであるデジタルバンドパスフィルタにそれぞれ通した上で位相遅延を保証することで、I measureとQ measureを計算する方法などが考えられる。
また、前記方法では、アナログの電気信号の状態にある同相成分と直交成分を、AD変換してデジタル化した後に、各周波数成分への分離を行っているが、アナログの電気信号の状態にある同相成分と直交成分をアナログ電気フィルタによって各周波数成分へ分離した後にAD変換するなどしても良い。
信号処理部17cによって取得されたI measureとQ measureを元に、信号処理部17dで位相の計算を行う。まず、同相成分をx軸(実数軸)、直交成分をy軸(虚数軸)としたxy平面上における複素ベクトルrを作成する。
Figure 0007298706000013
また複素ベクトルの角度θを以下のように計算する。
Figure 0007298706000014
ここで、各光周波数fiのパルスは時刻i×T+n×N×T(nは任意の整数)に入射していると考えると、光ファイバ上の長手方向の入射端から距離zの位置での光ファイバの状態は、光パルスの伝搬時間を考慮して時刻i×T+n×N×T+z/ν(nは任意の整数)で測定している。ここで、νは光ファイバ中での光速である。さらに、散乱された散乱光が伝搬して入射端まで戻る時間を考慮すると、測定器での測定時刻は、i×T+n×N×T+2z/ν(nは任意の整数)となる。そこで、距離zの地点での散乱光の複素ベクトルrを、測定器の測定時刻を陽に表して、
i (z,iT+nNT+2z/ν)
と記述する。
本実施形態では、測定時刻mT+2z/ν(mは整数)における位相θ(z,mT+2z/ν)を、mT+2z/ν=iT+nNT+2z/νを満たすiとnを用いて、以下のように計算する。
Figure 0007298706000015
そして、光ファイバ上での距離zから距離zの区間に加わった振動による位相変化を、数1-3aと数1-3bとの差分を数1-3cとして計算する。
Figure 0007298706000016
Figure 0007298706000017
Figure 0007298706000018
尚、光ファイバの状態を測定した瞬間の時刻は、上述のように散乱光が入射端に戻るのに要する時間は含めないので、距離zの地点では時刻mT+z/ν、距離zの地点では時刻mT+z/ν、となり、時間差(z-z)/νだけ違いがある。しかし、zとzとの距離の差は空間分解能と同等程度で、通常は数mから数十m程度に設定するため、時間差(z-z)/νは数十から数百nsとなり、測定対象となる通常の振動の時間変化のスケールに対して非常に短いため、光ファイバの状態を測定した時刻の差は無視できる。そのため、該当区間に加わった振動を正しく測定可能である。
ここで、各周波数f単体のパルス列に注目すると、NTの間隔だけ離れている。測定距離をZとすれば、光パルスの往復時間は2Z/νとなるため、NT≧2Z/νでなければならない。つまり、T≧2Z/(νN)である。測定距離Zが決まっても、多重数Nを増やせば、サンプリングの時間間隔Tを細かくすることができる。
本実施形態では、測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフを考慮した上で、必要となる周波数多重数Nについての設計方法を示す。下記する設計方法に従い必要な多重数Nを計算部18が計算し、その情報に基づき光変調器3を動作させることで、必要な多重数Nを備えた光パルス列4を作成する。
まず、単一の振動周波数の振動を測定する場合を考える。振動周波数fνがナイキスト周波数以下になるための条件は、
Figure 0007298706000019
である。また、ある時刻tから時刻t+Tの間の位相変化の絶対値C(t)は、光ファイバ上で目的とする区間での位相変化を、時間に依存しない係数Aを用いてA×sin(2πfνt)とすれば、
Figure 0007298706000020
である。ただし、位相の時間変化をA×sin(2πfνt)として、初期位相はゼロと仮定しているが、この仮定をしても、以降の議論の一般性は失われない。時刻tに依存して、C(t)の大きさも変化するが、最も大きい値は、
Figure 0007298706000021
である。位相アンラップが失敗しない条件は、
Figure 0007298706000022
である。これを変形すると、
Figure 0007298706000023
となる。π/2Aが1より大きい場合、つまりAがπ/2より小さい場合には、常に上式は成立するので、振動周波数fνがナイキスト周波数以下になるための条件のみを考えればよい。Aがπ/2以上の場合は、πfν<π/2が成立するとすれば、以下のように変形可能である。
Figure 0007298706000024
ところで、πfν<π/2が成立するという仮定は、振動周波数fνがナイキスト周波数以下になるための式(1-4)の条件と同一であり、上で得られた式(1-9)の条件はTについて、より厳しい制約である。したがって、以上の議論をまとめると、Aがπ/2より小さい場合には不等式(1-4)が成立すればよく、Aがπ/2以上の場合には不等式(1-9)が成立すればよい。ところで、多重数Nについては、測定距離Zに対して、NT≧2Z/νという条件があった。
つまり、Aがπ/2より小さい場合には、
Figure 0007298706000025
を満たすような最小のNを、使用する多重数に設定する。設定したNを使用して、TはNT≧2Z/νと不等式(1-4)を満たす範囲で設定することが可能である。測定距離を、NT≧2Z/νを満たす範囲で長くしたい場合には、Tはなるべく大きい値に設定し、サンプリングを細かく設定したい場合には、Tはなるべく小さい値に設定する。
また、Aがπ/2以上の場合には、
Figure 0007298706000026
を満たすような最小のNを、使用する多重数に設定する。設定したNを使用して、TはNT≧2Z/νと不等式(1-9)を満たす範囲で設定することが可能である。測定距離を、NT≧2Z/νを満たす範囲で長くしたい場合には、Tはなるべく大きい値に設定し、サンプリングを細かく設定したい場合には、Tはなるべく小さい値に設定する。
次に、任意の振動波形について考える。目的とする光ファイバ上での区間での位相変化の時間波形をFν(t)とする。そのフーリエ変換を
Figure 0007298706000027
とする。数1-11aが占める周波数帯域の最大値を
Figure 0007298706000028
とする。数1-11bの振動周波数がナイキスト周波数以下になるための条件は、
Figure 0007298706000029
である。また、ある時刻tから時刻t+Tの間の位相変化の絶対値C(t)は、
Figure 0007298706000030
となる。時刻tを任意に変化させた時の、C(t)の最大値をCmax(T)とすると、位相アンラップに失敗しないための条件は、
Figure 0007298706000031
となる。任意のTに対して数1-14が成立する場合は、つまりFν(t)の最大値と最小値の差の大きさがπより小さい場合は、式(1-12)の条件のみを考えれば良い。それ以外の場合には、式(1-12)が成立する条件では、CmaxはTに対して増加関数である。そこで、Cmaxの逆関数Cmax -1を式(1-14)に演算して、
Figure 0007298706000032
の条件が得られる。式(1-15)の条件は式(1-12)の条件よりもTについて、より厳しい制約となる。そこで、Fν(t)の最大値と最小値の差の大きさがπより小さい場合は式(1-12)の条件を考え、π以上の場合は式(1-15)の条件を考えればよい。
尚、逆関数の計算の方法は、解析的に計算が可能な場合は数式を使用して導く。また、解析的に計算が不可能な場合には、Tとtを十分細かく変化させながら、C(t)を数値計算する。数値計算の方法としては、様々な公知の手法を適用可能である。例えば、Tを最初は粗く変化させて、式(1-14)を満たさない最小のTと、式(1-14)を満たす最大のTを求める。その範囲内で、Tをより細かく変化させて、式(1-14)を満たさない最小のTと、式(1-14)を満たす最大のTをアップデートする。これを繰り返して、十分な精度で式(1-15)を満たす最大のTを計算することが可能である。
多重数Nについては、単一の振動周波数の振動を考えた時と同様にして、Fν(t)の最大値と最小値の差の大きさがπより小さい場合は、式(1-10)においてFνを数1-11bに置き換えた条件を満たす最小のNを、周波数多重数として設定する。Fν(t)の最大値と最小値の差の大きさがπ以上の場合は、
Figure 0007298706000033
を満たす最小のNを、周波数多重数として設定する。
の設定も単一の振動周波数の振動を考えた時と同様にすればよい。
計算部18は、上述のように設定したNに基づきパルス列信号PSを作成し、光変調器3に与える。
(実施形態2)
実施形態1の方法では、入射端から距離zの地点から散乱された散乱光ベクトルの、測定時刻mT+2z/νでの位相値θ(z,mT+2z/ν)を、mT+2z/ν=iT+nNT+2z/νを満たすiとnを用いて式(1-3)のように計算した。式(1-3)の右辺において、m=i+nNであるため、iとnを、mに依存することが分かるように、i(m)とn(m)と以降では記述する。時刻mT+2z/νから時刻m’T+2z/νでの位相変化量は、式(1-3)を用いれば、
Figure 0007298706000034
となる。i(m)とi(m’)が表す光周波数が異なる場合、式(2-1)は、実際の位相変化量に、異なる光周波数間の角度差が加算されたものとなっている。つまり、実際の位相変化量をΔθとして、異なる光周波数間の角度差をφ(i(m’),i(m))とすれば、
Figure 0007298706000035
となる。
式(2-2)から分かるように、測定される位相変化の波形は、異なる周波数間の角度差φ(i(m’),i(m))があるため、実際の位相変化を表す波形とは、異なってしまう。この様子を図2と図3に示す。図2と図3では多重数3で正弦波の振動を測定した場合の例である。図2は、実施形態1に記載の方法により周波数多重した入射光パルス列を表している。図3(a)は、入射端から距離zの位置で測定される位相である。
本実施形態では、異なる光周波数の角度差φ(i(m’),i(m))を補正するための、周波数多重パルスの並べ方と信号処理方法について記述する。異なる光周波数の角度差を補正した場合の位相は、図3(b)となり、実際の位相変化を正しく測定することが可能となる。
異なる光周波数の角度差を補正するために、前記光源は、前記光パルス列を前記被測定光ファイバの一端に入射する前に、前記光パルス列の光パルス間隔より短い間隔で異なる光周波数の前記光パルスを並べた光パルス対を並べた補正用光パルス列を前記被測定光ファイバの一端に入射し、前記信号処理部は、前記散乱光の位相成分の補正値を数C2で計算する。
図22は、本振動検出装置が行う光パルス試験方法を説明する図である。本光パルス試験方法は、図1の光パルス試験方法に、前記光パルス列を被測定光ファイバ6の一端に入射する前に、前記光パルス列の光パルス間隔より短い間隔で異なる光周波数の前記光パルスを並べた光パルス対を並べた補正用光パルス列を被測定光ファイバ6の一端に入射すること(ステップS22a)と、前記散乱光の位相成分の補正値を数C2で計算すること(ステップS25)が付加される。
以下に詳細を説明する。
異なる光周波数の角度差は、異なる光周波数を振動による光ファイバの状態変化が無視できる時間間隔で並べて被測定光ファイバに入射し、その信号を処理することにより計算することが可能である。光ファイバの状態変化が無視できる微小パルス間の時間間隔は、振動周波数fνと振動の大きさに依存するが、通常は数ns程度としておけば十分である。そのため、図4に示すように、実施形態1で記載した測定用のメインパルス列(20など)とは異なる、使用する全ての光周波数のパルスを振動によるファイバの状態変化が無視できる時間間隔で並べた光周波数多重パルスを、NTの繰り返し間隔で並べた異なる光周波数の角度差補正用のパルス列21を入射する。パルス列21で繰り返し間隔をNTとしているのは、同じ光周波数のパルスの時間間隔は2z/ν以上でなければならないためである。
パルス列21を構成する周波数多重パルスの数がP個であるとする。第p番目(pは1からPの整数)の周波数多重パルスの先頭を入射した時刻をtとすれば、各光周波数成分fのパルスを入射した時刻はt+δtとなる。δtは周波数多重パルスの先頭と各光周波数成分のパルスの先頭との時間差であり設計時に既知である。入射端から距離zからの散乱光の複素ベクトルは、各光周波数成分の光パルスの往復時間を考えると測定時刻t+2z/ν+δtで観測される。各光周波数パルスの測定時刻t+2z/ν+δtでの散乱光ベクトルを単にr(z,t+2z/ν)と記述する。異なる光周波数の角度差φ(i(m’),i(m))を以下のように計算する。
Figure 0007298706000036
ここで、arg関数は引数の複素ベクトルの偏角を-πからπの範囲で計算する関数であり、出力は実数である。また、R(*)は、複素ベクトルrに対して作用する演算子であり、複素平面上で角度*だけ時計まわりに複素ベクトルを回転させるものである。
式(2-3)は、「付録」に記載の「第1ベクトル回転手順」と同様の原理を用いており、「第1ベクトル回転手順」における「i(m)を基準波長とみなしたi(m’)の波長の回転角度」として、異なる光周波数の角度差を計算する(ただし符号は正負逆である)。式(2-3)は、「付録」の式(11)~(13)に対応している。
角度差φ(i(m’),i(m))は、zには依存するが、レーザの周波数ドリフト等の影響を除けば、測定時刻には依存しないため、i(m’)とi(m)に対応する周波数が同じであれば、m’やmごとに個別に角度差φ(i(m’),i(m))を計算する必要はない。例えば、i(2)とi(1)に対応する周波数がfとfの場合に、式(2-3)で角度差φ(i(2),i(1))を計算すれば、i(5)とi(4)に対応する周波数がfとfの場合に、角度差φ(i(5),i(4))としてφ(i(2),i(1))の値を使用することが可能である。つまり、周波数のみが重要であるため、φ(i(m’),i(m))=φ(fi(m’),fi(m))とできる。
式(2-3)では、各光周波数の複素ベクトルの角度の差自体は、雑音を除いて一定であること利用し、複数時刻の複素ベクトルの平均をとることで、雑音の影響を低減し、φ(i(m’),i(m))を計算している。特に、複素ベクトルの回転演算子R(*)を用いて複素ベクトルの回転を行うことで、効率よく雑音の低減が可能である。
式(2-3)で計算した異なる光周波数の角度差φ(i(m’),i(m))を用いて、式(2-2)より、実際の位相変化Δθは、
Figure 0007298706000037
で計算できる。つまり、信号処理の手順としては、測定用メインパルス列(20など)で取得した信号に対して実施形態1に記載の方法によりθ(z,mT+2z/ν)を計算し、異なる光周波数の角度差補正用のパルス列で取得した信号から式(2-3)に基づいて異なる光周波数の角度差φ(i(m’),i(m))を計算し、それらの値を用いて式(2-4)から実際の位相変化量Δθを計算する。
尚、パルス列21を構成する周波数多重パルスの数Pは、式(2-3)で計算する角度差φ(i(m’),i(m))に必要な精度から設計する。数Pが増加するほど、測定対象となる振動をモニタするために必要なサンプリング間隔Tで測定できない時間帯が増加するため、数Pは必要最小限の値に設定する。
事前に、測定対象である振動を測定するために必要な角度差φ(i(m’),i(m))の精度±ξを決定する。例えば、角度差φ(i(m’),i(m))が真の値から+ξだけ異なる値で計算された場合、i(m’)とi(m)の光周波数と同じ組み合わせの光周波数に対応する、他の時刻間の位相の時間変化も全て、+ξだけ実際の位相変化に対して歪んで、測定される。そのため、測定対象である振動の大きさや波形などの事前情報に基づき、許容できる計算の精度±ξを見積もる。
一方で、周波数多重パルスの数Pと式(2-3)で計算する角度差φ(i(m’),i(m))の精度±δφの関係式は以下のように導出できる。まず、フェーディングのため、入射端からの距離zの具体的な値に依存して、散乱光の振幅の大きさに対応する各光周波数の散乱光ベクトルの大きさである|ri(m’)|と|ri(m)|にバラツキが生じるため、精度±δφも距離zによって変化してしまう。そのため、予め数Pを設定する目的のために、|ri(m’)|と|ri(m)|のそれぞれの統計的な平均値を用いて、数Pと精度±δφの統計的な平均値との関係を導出する。また、式(2-3)中では、異なる時刻t+2z/ν(p=1,・・・,P)の平均を演算しているため、異なる時刻の|ri(m’)|と|ri(m)|が計算結果に影響を与えるが、それらの値はパルス列21を入射している間に光ファイバに振動が生じることで時間的に変化してしまうため、計算結果としての角度差φ(i(m’),i(m))の精度±δφも変化する。そのため、角度差φ(i(m’),i(m))の精度±δφは、振動による|ri(m’)|と|ri(m)|の時間変化に依存するが、予め数Pを設定する際に振動による変化を考慮するのは困難なため、ここでは予め数Pを設定する目的のため、|ri(m’)|と|ri(m)|の時間変化はないものとする。|ri(m’)|と|ri(m)|のそれぞれの統計的な平均値をIi(m’)(z)とIi(m)(z)とする。これらの値は、例えば、入射光強度と光ファイバの伝搬損失値から計算して評価する、あるいは、光強度損失を測定可能なハンディタイプのコヒーレンスの良くないレーザ光源を用いたOTDR装置を用いて被測定光ファイバの光強度損失分布を予め測定する、などの方法で取得することが可能である。後者の方法では、敢えてコヒーレンスの良くないレーザ光源を用いることで、光強度損失の統計的な平均値を測定することが可能となる。得られたIi(m’)(z)とIi(m)(z)を用いて、図5に示すIQ平面上でのベクトル23とベクトル25を作成する。ベクトル23は、I軸に平行なベクトルとし、その長さはIi(m)(z)とする。ベクトル24は、式(2-3)で計算した角度差φ(i(m’),i(m))だけI軸に対して半時計回りに角度を有しており、長さをIi(m’)(z)とする。
ベクトル23とベクトル24には、測定におけるショット雑音やPDの熱雑音、その後の電気回路等での雑音などが合わさった雑音に起因する、不確かさ25と不確かさ26があると考える。シングルショット計測時での不確かさの大きさを、不確かさの円の半径として、“Noise”と表記する。Noise値は、測定器の性能のみから決まるため、事前に測定可能である。周波数多重パルスの時間間隔はNTであり、PDのインパルス応答等よりも十分に長いため、異なる時刻t+2z/ν同士の雑音には相関がなくランダムであるとみなせるため、不確かさ25と不確かさ26の大きさは、不確かさの円の半径として、周波数多重パルスの数Pを用いて、Noise/√Pと表せる。したがって、±δφの統計平均値は次のように近似できる。
Figure 0007298706000038
式(2-5)はPについて減少関数であるから、δφ≦ξを満たす最小のPを設定すればよい。
具体的手順をまとめると、測定対象である振動を測定するために必要な角度差φ(i(m’),i(m))の精度±ξを測定対象である振動の大きさや波形などの事前情報に基づき決定し、散乱光の振幅の大きさの平均であるIi(m’)(z)とIi(m)(z)、および雑音の大きさNoiseを評価/測定し、式(2-5)に代入してδφとPとの関係式を求め、最終的に、δφ≦ξを満たす最小のPを計算し、図4のパルス列21の周波数多重パルスの数として設定する。
尚、上記計算では散乱光の振幅の大きさの平均に比例するIi(m’)(z)とIi(m)(z)を用いて計算を行っているため、δφ≦ξを満たすのは統計的に全地点のうち50%の地点となる。この条件をより厳しくし、より多くの地点でδφ≦ξを満たす必要がある場合には、散乱光の振幅の大きさの平均よりも小さい数値に基づいて計算を実施することも可能である。また、入射端からの距離zについて、特に計測をしたい箇所が特定可能な場合は、事前にその箇所における|Ii(m’)(z)|と|Ii(m)(z)|を測定し、それらの値をIi(m’)(z)とIi(m)(z)に替えて式(2-5)と同様の式を導出し、数Pを決定することも可能である。
また、パルス列21を入射している間に光ファイバに振動が生じることで|Ii(m’)|と|Ii(m)|の時間変化はないものとして式(2-5)を導出したが、パルス列21を入射している間に光ファイバに振動が生じることによる|Ii(m’)|と|Ii(m)|の時間変化に関する情報が事前に得られる場合は、その情報を取り入れることも可能である。
尚、レーザの周波数ドリフトにより、各光周波数の絶対値が変化すると、角度差φ(i(m’),i(m))にも変化が生じる。この対策として、図4のパルス列21や22で示しているように、異なる光周波数の角度差補正用のパルス列を定期的に挿入し、角度差φ(i(m’),i(m))の値をアップデートする。図4の例の場合、パルス列21で異なる光周波数の角度差を取得し、その値を用いてパルス列20で測定した位相を補正し、パルス列22で改めて異なる光周波数間の角度差を取得し、その値を用いてパルス列27で測定した位相を補正する。補正用のパルス列を挿入する時間間隔(例えば、図4の例では、パルス列21とパルス列22の間隔)は、レーザの周波数ドリフトの特性から決定される。定性的には、周波数ドリフトの程度が大きい場合には、異なる光周波数の角度差補正用のパルス列を挿入する時間間隔を短く設定する。
本実施形態の方法を使用すれば、実施形態1で発生する異なる光周波数間の角度差による波形歪みを補正することが可能である。一方で、本実施形態の方法では、時間間隔がNTで測定しなければならないパルス列21や22の時間帯が発生し、常に時間間隔Tで測定可能な実施形態1と比べて、欠点となる。そのため、常に時間間隔Tで測定することを重視する場合は実施形態1を使用し、波形歪みがなるべくないように振動計測を行うことを重視する場合は本実施形態を使用する,という使い分けを行う。
(実施形態3)
実施形態1と実施形態2は、周波数多重によりサンプリング点数を向上させることで、測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフを解決する方法に関する。本実施形態は、測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフの解決と、フェーディングによる位相検出ができない地点の発生の解決を同時に行うための、周波数多重の方法について記載する。具体的には、周波数多重のパルス列の構成方法と、信号処理の方法に関する。
測定対象となる振動の特性等から、測定距離と測定可能な振動周波数の上限とのトレードオフを解決するために必要な多重数Nを決定する。多重数Nの決定の方法は実施形態1と同様である。また、フェーディング対策に必要な多重数Mを決定する。多重数Mの決定の方法は「付録」の記載の通りである。つまり、雑音レベルの1/√M倍が所定値(被測定光ファイバの種類、測定対象の振動形態、あるいは光パルス試験装置の性能等に応じて設定される値)以下となるように前記微小光パルスの数Mを設定する。
決定した多重数Nと多重数Mに基づき、周波数多重のパルス列として図6のパルス列31を被測定光ファイバに入射する。入射の方法などは実施形態1に記載した図1と同様で、変調器3を図6のパルスを生成するように動作させる。
パルス列31は、N個の異なるパルス対からなるパターンを測定時間分だけ繰り返したものである。隣り合うパルス対の間隔はTに設定し、それぞれのパルス対を入射して得られる信号から、異なる時刻のファイバの状態を測定する。各パルス対はM個の異なる光周波数パルスから構成する。M個の異なる光周波数パルスの時間間隔は、振動による光ファイバの状態変化が無視できるほど小さく設定する。したがって、M個の異なる光周波数パルスによる信号で、同じ時刻の光ファイバの状態を測定しているとみなせるため、それらM個の信号を用いてフェーディング対策をする。Nが2で、Mが2の例を、パルス列32に示した。
具体的な信号処理の手順を記す。パルス対iの先頭を入射した時刻をi×T+nNT(nは任意の整数)とする。それぞれのパルス対の先頭の光周波数を基準波長にとり、「付録」の記載の方法に従い、パルス対を構成するM個の異なる光周波数の信号を平均することで、入射端から距離zの位置で散乱された散乱光ベクトルの位相θ(iT+nT+2z/ν)を計算する。そして、実施形態1の式(1-3)のiを周波数番号ではなくパルス対番号にかえることで、実施形態1と同様にして、θ(z,mT+2z/ν)を計算する。
(実施形態4)
実施形態3は、実施形態1でフェーディング対策を実施する場合への一般化となっている。実施形態3でM=1とすると実施形態1となる。そのため、実施形態1で異なる光周波数の角度差φ(i(m’),i(m))が補正されておらず波形が歪んでしまう問題は、実施形態3でも同様に生じる。本実施形態では、実施形態2に記載した異なる光周波数の角度差補正の方法を一般化することで、実施形態3で生じる波形歪みを補正する。具体的には、周波数多重のパルス列の構成方法と、信号処理の方法に関する。
周波数多重のパルス列として図7(a)のパルス列41を被測定光ファイバに入射する。入射の方法などは実施形態1に記載した図1と同様で、変調器3を図7(a)のパルスを生成するように動作させる。
パルス列41は実施形態3で述べた測定用メインパルス列43や45の間に定期的に、異なる光周波数の角度差補正用のパルス列44や46を挿入して作成する。異なる光周波数の角度差補正用のパルス列44や46は、補正用パルス対42を繰り返し間隔NTで数Pだけ並べた物とする。補正用パルス対42は、測定用メインパルス列43(図6のパルス列31と同じ)の各パルス対の先頭の光周波数f,f(M+1),・・・,f((N-1)M+1)のパルスを、振動によるファイバの状態変化が無視可能な時間間隔で並べた構成とする。
測定用メインパルス列43を入射して、実施形態3に記載の方法で、位相θ(z,mT+2z/ν)を得る。しかし、実施形態2の式(2-2)と同様に、測定される位相変化の波形は、異なる光周波数間の角度差φ(i(m’),i(m))があるため、実際の位相変化を表す波形とは、異なってしまう。ただし、角度差φ(i(m’),i(m))は本実施形態の場合には、i(m’)に対応するパルス対の先頭の周波数と、i(m)に対応するパルス対の先頭の周波数との角度差に対応する。この角度差φ(i(m’),i(m))は、パルス列44の測定データを用いて式(2-3)を用いて計算することが可能である。計算した位相θ(z,mT+2z/ν)と角度差φ(i(m’),i(m))とを式(2-4)に代入して、異なる光周波数間の角度差を補正した位相を計算する。
尚、補正用パルス対42に替えて、図7(b)の補正用パルス対47を使用してもよい。補正用パルス対47は、全ての光周波数のパルスを、振動による被測定光ファイバの状態変化が無視できる時間間隔で並べて構成される。このパルス対47を用いても上記記載の方法と同様にして角度差φ(i(m’),i(m))が計算可能である。補正用パルス対42の使用との違いは、補正用パルス対47を構成する周波数の数が、補正用パルス対42と比べてM倍となるため、パルス列44で測定した位相の時間変化については、計算時間は増加するが、フェーディング対策に割く光周波数の数が増えているため、感度がより良い測定が可能な点である。補正用パルス対42を使うか、補正用パルス対47を使うかは、パルス列44で測定する位相の時間変化について計算時間を要しても感度よく計算したい場合は補正用パルス対47を選択し、計算時間を少しでも減らしたい場合やパルス列44を入射している時間帯では位相変化の測定は必要ない場合等は補正用パルス対42を使用する。
尚、異なる光周波数の角度差補正用のパルス列44を構成するパルス対42(あるいはパルス対47)の数Pについては、実施形態2と同様にして設定する。
また、レーザの周波数ドリフトの対策に関しても実施形態2と同様にして、異なる光周波数の角度差補正用のパルス列を定期的に挿入して、角度差φ(i(m’),i(m))を定期的に更新して使用して対応する。図7(a)のパルス列41の例の場合、パルス列43で計算した位相の補正にはパルス列44の計算結果を用い、パルス列45で計算した位相の補正にはパルス列46の計算結果を用いる。異なる光周波数の角度差補正用のパルス列を挿入する時間間隔(例えば44と46の間の時間)は、実施形態2と同様にして決定する。
(実施形態5)
実施形態4では、異なる光周波数の角度差補正用のパルス列44やパルス列47を入射している時間帯は、位相の時間変化を測定する時間間隔がNTとなってしまう。本実施形態では、使用する光周波数を実施形態4の場合より、多重数NやMの値にかかわらず、1つだけ増やすことにより、全ての時間帯で位相の時間変化を時間間隔Tで測定する方法を述べる。具体的には、周波数多重のパルス列の構成方法と、信号処理の方法に関する。
使用するパルス列の具体的な構成方法にはいくつもの種類が考えられるが、本実施形態では大きく3通りの構成方法を示す。3通りの構成方法を構成方法A、構成方法B、そして構成方法Cとして区別する。
[構成方法A]
まず、最も簡単な構成方法Aについて、信号処理の方法と合わせて述べる。
周波数番号の1からNM+1をこの順に左から並べる。並べ終わったら、その右側に、再度、周波数番号の1からNM+1をこの順に左から並べる。この動作をM回繰り返して、図8に示すような周波数番号列51を作成する。周波数番号列51の最も左からM個をパルス対1で使用する周波数の組み合わせに選ぶ。その右からM個をパルス対2で使用する周波数の組み合わせに選ぶ。これを繰り返して、パルス対組み合わせ52にあるような、NM+1個のパルス対で使用する周波数の組み合わせを決定する。これらNM+1個のパルス対を用いて、パルス列53のような入射パルスを作成する。パルス列53は、NM+1個のパルス対を間隔Tで並べた一つのパターンを測定時間分だけ繰り返して構成する。
入射パルス列53で得られた信号を次のように処理することで、異なる光周波数の角度差を補正済みの、全ての時間帯において時間間隔Tで測定した位相を計算する。
パルス対iの先頭を入射した時刻をi×T+n×N×T (nは任意の整数)とする。実施形態3と同様に、それぞれのパルス対の先頭の周波数を基準波長にとり、「付録」に記載の方法に従い、パルス対を構成するM個の異なる光周波数の信号を平均することで、入射端から距離zの位置での位相θ(iT+nNT+2z/ν)を計算する。そして、実施形態1の式(1-3)のiを周波数番号ではなくパルス対番号にかえることで、実施形態1と同様にして、位相θ(z,mT+2z/ν)を計算する。
位相θ(z,mT+2z/ν)には、実施形態4の冒頭で述べたのと同様で、異なる光周波数間の角度差が含まれる。異なる光周波数間の角度差の補正を漏れなく行うためには、任意の二つのパルス対の先頭の光周波数の角度差補正を行う必要があるが、これには隣り合うパルス対の先頭の光周波数の角度差補正ができれば十分である。この理由は、任意の光周波数fとfの角度差φ(f,f)は、別の任意の光周波数fを利用して、以下のように記述できることによる。
Figure 0007298706000039
ただし、i,j及びkは任意の正の整数である。
この式を用いると、i<jを満たす正の整数iとjを任意に選んだ時に、パルス対jの先頭の光周波数をf pfとし、パルス対iの先頭の光周波数をf pfとすれば、角度差φ(f pf,f pf)は以下のように隣り合うパルス対の先頭の光周波数の角度差の和として記述可能である。
Figure 0007298706000040
ただし、iとjは任意の正の整数であり、i<jである。
そして、任意の隣り合うパルス対の先頭の光周波数の角度差φ(fi+1 pf,f pf)(iは任意の正の整数)は、パルス対iの最後尾の光周波数f prを使用して以下のように記述できる。
Figure 0007298706000041
式(5-3)中の角度差φ(fi+1 pf,f pr)と角度差φ(f pr,f pf)は次のようにして求める。まず、角度差φ(f pr,f pf)についてであるが、パルス対iは繰り返し入射しているため、パルス対iに含まれるf prとf pfの角度差φ(f pr,f pf)は式(2-3)を用いて計算できる。式(2-3)中のpは、測定時間内でp回目に登場したパルス対iに対応させる。例えば、p=1は測定時間内の最初のパルス対iで、p=Pは測定時間内の最後のパルス対iに対応させる。式(2-3)式中のtは、パルス対iが測定時間内でp回目に入射された時の時刻とする。また、角度差φ(fi+1 pf,f pr)についてであるが、fi+1 pfとf prは周波数番号が1つだけ異なるため、fi+1 pfとf prを含むパルス対が必ず一つ以上存在する。そのパルス対について、式(2-3)を同様に用いれば角度差φ(fi+1 pf,f pr)を計算できる。このようにして異なる光周波数間の角度差の補正を漏れなく行うことが可能なことが示された。
まとめると、式(5-2)と式(5-3)を用いれば、次の式が得られる。
Figure 0007298706000042
具体的計算手順としては、まず式(5-4)の各項を、適切なパルス対を用いて式(2-3)式を使用して計算し、次に式(5-4)を用いて角度差φ(f pf,f pf)を計算し、位相θ(z,mT+2z/ν)と角度差φ(f pf,f pf)を用いて式(2-4)と同様の要領で、最終的な位相変化を計算する。
尚、上記の説明では、それぞれのパルス対の先頭の光周波数を基準として位相θ(z,mT+2z/ν)を計算し、それぞれのパルス対の先頭と最後尾の光周波数を利用して式(5-4)のように角度差を計算した。しかし、パルス対の先頭や最後尾の周波数を必ず使用する必要はなく、それぞれのパルス対の先頭からx番目の光周波数を基準として位相θ(z,mT+2z/ν)を計算可能であるし、それぞれのパルス対の先頭からx番目と最後尾からy番目の光周波数を利用して式(5-4)と同様な式を作成した上で、右辺の各項の角度差を計算し、角度差補正を漏れなく行うことができる(ただし、同一パルス対において先頭からx番目と最後尾からy番目は別の光周波数に対応するようにxとyは選ぶ必要はある)。このため、装置の不具合等により、特定の光周波数の測定が困難となった場合でも、柔軟な対応が可能となる。
[構成方法B]
次に構成方法Bについて、信号処理方法と合わせて記述する。
まず、パルス列の構成方法について記述する。周波数番号の1からNMをこの順に左から並べる。並べ終わったら、その右側に、再度、周波数番号の1からNMをこの順に左から並べる。この動作をN+1回繰り返して、図9に示すような周波数番号列501を作成する。周波数番号列501の最も左からM個をパルス対1で使用する周波数の組み合わせに選ぶ。その右からM個をパルス対2で使用する周波数の組み合わせに選ぶ。これを繰り返して、パルス対組み合わせ502にあるような、N(N+1)個のパルス対で使用する周波数の組み合わせを決定する。次に、パルス対の周波数組み合わせ503に示すように、周波数fNM+1をパルス対番号が1+k(N+1)のパルス対に追加する(k=0,1,・・・,(N-1))。これにより、パルス対1+k(N+1)を構成する周波数の数がM+1個となる。これらN(N+1)個のパルス対を用いて、パルス列504のような入射パルスを作成する。パルス列504は、N(N+1)個のパルス対を先頭の時間間隔がTとなるように並べた一つのパターンを測定時間分だけ繰り返して構成する。
入射パルス列504で得られた信号を次のように処理することで、異なる光周波数の角度差を補正済みの、全ての時間帯において時間間隔Tで測定した位相を計算する。
パルス対iの先頭を入射した時刻をi×T+n×N×T (nは任意の整数)とする。実施形態3と同様に、それぞれのパルス対の先頭の周波数を基準波長にとり、「付録」に記載の方法に従い、パルス対を構成するM個の異なる光周波数の信号を平均することで、入射端から距離zの位置での位相θ(iT+nNT+2z/ν)を計算する。そして、実施形態1の式(1-3)のiを周波数番号ではなくパルス対番号にかえることで、実施形態1と同様にして、位相θ(z,mT+2z/ν)を計算する。
位相θ(z,mT+2z/ν)には、実施形態4の冒頭で述べたのと同様で、異なる光周波数間の角度差が含まれる。異なる光周波数間の角度差の補正を漏れなく行うためには、任意の二つのパルス対の先頭の光周波数の角度差補正を行う必要がある。i<jを満たす正の整数iとjを任意に選んだ時に、パルス対jの先頭の光周波数をf pfとし、パルス対iの光周波数をf pfとすれば、角度差φ(f pf,f pf)は以下のようにfNM+1を用いて展開できる。
Figure 0007298706000043
ただし、iとjは任意の正の整数であり、i<jである。
本実施形態で使用するパルス対の光周波数の組み合わせ503では、周波数fNM+1をパルス対番号が1+k(N+1)のパルス対(k=0,1,・・・,(N-1))に追加しているため、周波数fNM+1と他の周波数とは、必ず1回、同一のパルス内に存在している。そのため、式(5-5)の右辺の各項を、対応するパルス対について式(2-3)を用いることで計算可能である。得られたφ(f pf,f pf)の値を用いて、式(2-4)と同様の要領で、位相θ(z,mT+2z/ν)から最終的な位相を計算する。
尚、上記手順では、それぞれのパルス対の先頭の周波数を基準として位相θ(z,mT+2z/ν)を計算し、各パルス対の先頭の周波数とfNM+1を用いてφ(f pf,f pf)を計算し、最終的な位相を取得した。しかし、各パルス対の先頭の周波数を必ずしも使用する必要はなく、先頭からx番目(xは1≦x≦Mを満たす整数)を任意に選んで使用可能である。ただし、パルス列の構成の仕様からfNM+1は必ず使用する必要がある。
構成方法Bと構成方法Aとの違いは、構成方法Bでは(N+1)個のパルス対に1つのパルス対は、含まれる多重数の数がM+1となるため、そのパルス対で測定した時刻の位相については、フェーディング対策に使用する多重数が1つ増えており、より感度良く計算が可能となる利点がある。一方で、構成方法Bは、NM+1番目の光周波数fNM+1を必ず用いて、異なる光周波数間の角度差補正を行う必要があるため、装置の不具合等によりNM+1番目の光周波数の測定が困難となった場合には、異なる光周波数の角度差補正ができなくなる欠点がある。また、多重数Nと多重数Mに応じて、構成方法Aと構成方法Bのパターン長にも違いが生じる。
[構成方法C]
最後に構成法Cについて、信号処理方法と合わせて記述する。
まず、パルス列の構成方法について記述する。周波数番号の1からNM+1をこの順に左から並べる。並べ終わったら、その右側に、再度、周波数番号の1からNM+1をこの順に左から並べる。この動作を(N+1)M+1回繰り返して、図10に示すような周波数番号列5001を作成する。次に、パルス対1+k(N+1)に含まれる光周波数の数がM+1個、それ以外のパルス対に含まれる光周波数の数がM個、となるように、左から順番にパルス対を作成していく(k=0,1,・・・)。結果として合計(NM+1)(N+1)個のパルス対ができる。これら(NM+1)(N+1)個のパルス対を用いて、パルス列5003のような入射パルスを作成する。パルス列5003は、(NM+1)(N+1)個のパルス対を先頭の時間間隔がTとなるように並べた一つのパターンを測定時間分だけ繰り返して構成する。
パルス対iの先頭を入射した時刻をi×T+n×N×T (nは任意の整数)とする。実施形態3と同様に、それぞれのパルス対の先頭の周波数を基準波長にとり、「付録」に記載の方法に従い、パルス対を構成するM個の異なる光周波数の信号を平均することで、入射端から距離zの位置での位相θ(iT+nNT+2z/ν)を計算する。そして、実施形態1の式(1-3)のiを周波数番号ではなくパルス対番号にかえることで、実施形態1と同様にして、位相θ(z,mT+2z/ν)を計算する。
位相θ(z,mT+2z/ν)には、実施形態4の冒頭で述べたのと同様で、異なる光周波数間の角度差が含まれる。異なる光周波数間の角度差の補正を漏れなく行うためには、任意の二つのパルス対の先頭の光周波数の角度差補正を行う必要がある。構成方法Cの並べ方では、一つのパターンの中で、全ての光周波数がN+1個ずつパルス対の先頭となる。一方で、隣り合う周波数番号の光周波数が含まれるパルス対の数も、全ての周波数番号についてN+1個である。したがって、特定の周波数番号に偏ることなく、異なる光周波数間の角度差の補正を漏れなく行うことが可能である。
特に、特定の周波数番号の光周波数の測定が困難となった場合でも、その光周波数を先頭とするパルス対については別の光周波数を基準にして位相θ(iT+nNT+2z/ν)が計算でき、その周波数を使用せずに異なる光周波数間の角度差の補正を依然として行うことが可能である。
まとめると、構成方法Cは、(N+1)個のパルス対に1つのパルス対に含まれる多重数の数がM+1となるため、そのパルス対で測定した時刻の位相については、より感度良く計算が可能となるという構成方法Bの利点を残しつつ、NM+1番目の光周波数を必ず用いて、異なる光周波数間の角度差補正を行う必要があるという条件を排除した方法となる。ただし、パターン長がAやBに比べて長くなるという欠点がある。
実際の測定では、測定対象を考慮し、最も適切なパルス構成方法を選択し、そのパルス列に対応する信号PSを図1の計算部18から変調器3に送信し動作させる。信号処理方法は上記記載の通りである。
尚、本発明は、上記実施形態例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。
[付録]
(例1)
図11は、本実施形態のDAS-Pで振動検出を行う振動検出装置を説明する図である。本振動検出装置は、受信系に90度光ハイブリッドを用いてコヒーレント検波を行う測定器31と、信号処理装置17とを備える。
測定器31は、次のように被測定光ファイバ6からの散乱光を測定する。CW光源1から周波数がfの単一波長の連続光が射出され、カプラ2により参照光とプローブ光に分岐される。プローブ光は、光変調器3によって、光パルス4のように波長多重の光パルスに整形される。光パルス4は、周波数がf+f(iは整数)かつパルス幅が光ファイバ長手方向での測定の空間分解能に対応する値Wに設定された微小パルス4aが、i=1,2,・・・,N(Nは整数)だけ並んだ構成である。fは、各時刻及び各地点における散乱光の強度が、異なるi同士で無相関とみなせる程度まで十分に離れているように選択をする。
光変調器3の種類は光パルス4を生成できるならば具体的な指定はなく、数が複数の場合もある。例えば、SSB変調器や周波数可変なAO変調器などを用いても良いし、パルス化における消光比を大きくするためにさらにSOAなどによる強度変調を行っても良い。
光パルス4は、サーキュレータ5を介して、被測定光ファイバ6に入射される。光ファイバ6の長手方向の各点で散乱された光が、後方散乱光としてサーキュレータ5に戻り、90度光ハイブリッド7の一方の入力部に入射される。カプラ2により分岐された参照光は、90度光ハイブリッド7のもう一方の入力部に入射される。
90度光ハイブリッド7の内部構成は、90度光ハイブリッドの機能さえ備えていれば、なんでもよい。構成例を図11に示す。後方散乱光は、50:50の分岐比のカプラ8に入射され、2分岐された散乱光が、50:50の分岐比のカプラ12と、50:50のカプラ11の入力部に入射される。参照光は、50:50の分岐比のカプラ9に入射され、2分岐された参照光の一方が、カプラ11の入力部に入射され、他方が、位相シフタ10で位相をπ/2だけシフトされてカプラ12の入力部に入射される。
カプラ11の2つの出力がバランス検出器13によって検出され、アナログの同相成分Ianalogである電気信号15が出力される。カプラ12の2つの出力がバランス検出器14によって検出され、アナログの直交成分Qanalogである電気信号16が出力される。
電気信号15と電気信号16は、信号の周波数帯域をエイリアシングなくサンプリングが可能なAD変換機能素子17aとAD変換機能素子17bを備えた信号処理装置17に送られる。信号処置装置17では、AD変換機能素子17aとAD変換機能素子17bから出力されたデジタル化された同相成分Idigitalと直交成分Qdigitalの信号に対して、信号処理部17cによって光パルス4を構成する各周波数f+f(i=1,2,・・・,N)のパルスによる散乱光による信号を分離する。
つまり、信号処理部17cは、各周波数f+f成分のパルスを単独で入射した場合に得られる同相成分I measureと直交成分Q measureを、全てのiに関する同相成分の重ね合わせとなっているIdigitalと、全てのiに関する直交成分の重ね合わせとなっているQdigitalに対して信号処理を行うことで分離する。具体的な信号処理の方法は、IdigitalとQdigitalから、I measureとQ measureを正確に分離できるならどんな手法を用いても良い。例えば、IdigitalとQdigitalを、中心周波数がf+fであり通過帯域が2/Wであるデジタルバンドパスフィルタにそれぞれ通した上で位相遅延を保証することで、I measureとQ measureを計算する方法などが考えられる。
また、前記方法では、アナログの電気信号の状態にある同相成分と直交成分を、AD変換してデジタル化した後に、各周波数成分への分離を行っているが、アナログの電気信号の状態にある同相成分と直交成分をアナログ電気フィルタによって各周波数成分へ分離した後にAD変換するなどしても良い。
信号処理部17cによって取得されたI measureとQ measureを元に、信号処理部17dで位相の計算を行う。図12は、信号処理部17dの構造を説明する図である。信号処理部17dは、
測定器31で測定された、被測定光ファイバ6に入射した波長多重の光パルス4で発生した散乱光の同相成分と直交成分が入力される入力部21と、
入力部21に入力された前記散乱光の同相成分と直交成分のうち、任意の時刻且つ被測定光ファイバ6の任意位置における同相成分と直交成分により構成される2次元ベクトルを、光パルス4に多重される波長毎に取得するベクトル取得回路22、
ベクトル取得回路22が取得した前記2次元ベクトルのうち、基準時刻の各波長の前記2次元ベクトルを、該2次元ベクトルそれぞれが基準方向を向くように波長毎の基準回転量だけ回転し、ベクトル取得回路22が取得した前記2次元ベクトルのうち、前記基準時刻と異なる他時刻の各波長の前記2次元ベクトルを、前記波長毎の基準回転量だけそれぞれ回転するベクトル回転回路23、
ベクトル回転回路23が回転した前記基準時刻の各波長の前記2次元ベクトルを加算平均して合成基準ベクトルを計算し、ベクトル回転回路23が回転した前記他時刻の各波長の前記2次元ベクトルを加算平均して合成ベクトルを計算し、前記合成基準ベクトルと前記合成ベクトルとが成す角度から前記散乱光の位相変化量を計算する演算回路24と、
を備える。
図13は、本振動検出装置が行う位相測定方法を説明する図である。当該位相測定方法は、
被測定光ファイバ6に入射した波長多重の光パルス4で発生した散乱光の同相成分と直交成分を測定する測定手順S01と、
測定手順S01で測定した前記散乱光の同相成分と直交成分のうち、任意の時刻且つ被測定光ファイバ6の任意位置における同相成分と直交成分により構成される2次元ベクトルを、光パルス4に多重される波長毎に取得するベクトル取得手順S02と、
ベクトル取得手順S02で取得した前記2次元ベクトルのうち、基準時刻の各波長の前記2次元ベクトルを、該2次元ベクトルそれぞれが基準方向を向くように波長毎の基準回転量だけ回転し、ベクトル取得手順S02で取得した前記2次元ベクトルのうち、前記基準時刻と異なる他時刻の各波長の前記2次元ベクトルを、前記波長毎の基準回転量だけそれぞれ回転するベクトル回転手順S03と、
ベクトル回転手順S03で回転した前記基準時刻の各波長の前記2次元ベクトルを加算平均して合成基準ベクトルを計算し、ベクトル回転手順S03で回転した前記他時刻の各波長の前記2次元ベクトルを加算平均して合成ベクトルを計算し、前記合成基準ベクトルと前記合成ベクトルとが成す角度から前記散乱光の位相変化量を計算する演算手順S04と、
を行う。
まず、単一周波数のみの同相成分I measureと直交成分Q measureを用いて位相を計算する方法について説明し、位相の計算時のフェーディングの影響について説明する。
雑音がない時の同相成分I(l,nT)に雑音が加わった測定値がI measure(l,nT)であり、雑音がない時の直交成分Q(l,nT)に雑音が加わった測定値がQ measure(l,nT)である。つまり、同相成分と直交成分のそれぞれに重ね合わさる雑音を、NとNとすれば、それらは次式で表せる。
Figure 0007298706000044
Figure 0007298706000045
位相は、測定した同相成分と直交成分から、信号処理装置17により、
Figure 0007298706000046
と計算される。雑音NとNが存在するため、同相成分をx軸、直交成分をy軸としたxy平面上における、ベクトル
(x、y)=(I measure(l,nT),Q measure(l,nT))
の指す位置に不確かさが生じ、ベクトルの指す向きである位相にも不確かさが生じる。例えば、雑音がない場合には、光ファイバに振動が加わっていない状態で、位相の計算値θ cal(l,nT)は、各lについて時間変化せず一定値をとる。ところが、雑音があると、光ファイバに振動が加わっていない状態でも、位相の計算値θ cal(l,nT)は、各lについて時間変化する。
図14は、この様子を示した図である。ある位置lでのベクトル
(I measure(l,nT),Q measure(l,nT))
をxy平面にプロットすると、雑音がない場合には、ベクトル201で示した
(x,y)=(I(l,nT),Q(l,nT))
で常に一定であり、その角度202も時間変化しない。しかし、実際には雑音が存在するため、各時刻での同相成分と直交成分から構成されるベクトルは、ベクトル203のように、ベクトル201とは異なり、その角度204も角度202とは異なる。そのため、実際の測定値から構成されるベクトルは、ベクトル201を中心としてばらつく。ばらつきの程度は、各軸方向での測定値の標準偏差を用いて評価できる。例えば、x軸方向については、測定値のx成分のばらつきから、205で表した雑音Nの標準偏差σ(N)だけ不確かさがある。
コヒーレント検波の場合、参照光の強度を十分に大きくするため、ショット雑音が支配的となり、雑音の分布も正規分布で近似できる。また、図11における二つのバランス検出器13と14に入射する光強度は同程度とみなせるため、雑音NとNの標準偏差も同じ大きさとみなすことができ、不確かさはベクトル201を中心とした円形となる。
参照光のショット雑音以外の、PDの熱雑音等の雑音が無視できない、例えばコヒーレント検波ではなくて直接検波を実施するような装置構成の場合にも、二つのバランス検出器13と14の雑音特性が同じであるとみなせるため、不確かさはベクトル201を中心とした円形と考えてよい。
ただし、直接検波を実施するような装置構成において、散乱光のショット雑音を考慮する必要がある場合などは、不確かさの程度は散乱光強度に依存して各地点で異なってくるが、散乱光強度が小さい点での不確かさは、PDの熱雑音等の電気段以降での測定器の雑音が支配的となるため、以下で説明するフェーディングの現象による影響については、直接検波を実施するような装置構成においても成立する。
フェーディングの現象により、散乱光強度が小さくなる地点が発生する。そのような地点については、位相計算時の不確かさが増加してしまうため、小さな振動の検出が困難となる。特に、SN比が1未満となるような、雑音がない時の散乱光の振幅が図15のベクトル206で示したように小さい場合には、測定されるベクトルは、ベクトル207で示したように、雑音がない時のベクトル206とは、大きく異なる値をとる確率が増加してしまい、振動の誤検知に繋がる。また、そのような点では、引き続く式(3)で示したアンラップ処理を行う場合にも、整数qの選択を誤る確率が増加するため、特に大きな振動が加わったとする誤検知に繋がってしまう。
単一波長で実験を行った際のフェーディングによる散乱光強度Pのばらつきの分布D(P)は、散乱光の強度の平均値を<P>として、以下の式を満たすことが知られている。
Figure 0007298706000047
この式のように散乱光強度Pのばらつきの分布D(P)は、散乱光強度Pが小さい程大きくなる。したがって、単一波長のパルス強度を大きくすることで、散乱光強度の小さい点を削減しようとする場合、非常に大きなピーク強度が必要となるため、非線形効果などのパルス歪を考えると、限界がある。
そこで、信号処理部17dは、以下に説明するように、i=1,2,・・・,Nの異なるN個の周波数における同相成分I measureと直交成分Q measureを用いて位相計算を行い、フェーディングによる散乱光強度が小さい点での位相の不確かさの増加を防止する。
[測定手順S01]
図11で説明した測定系を利用して被測定光ファイバ6に入射した波長多重の光パルス4で発生した散乱光の同相成分と直交成分を測定する。
[ベクトル取得手順S02]
測定手順S01で測定した前記散乱光の同相成分と直交成分のうち、任意の時刻且つ被測定光ファイバ6の任意位置における同相成分と直交成分により構成される2次元ベクトルを、光パルス4に多重される波長毎に取得する。
[ベクトル回転手順S03]
まず、時刻ゼロの時の測定値のベクトル
(I measure(l,0),Q measure(l,0))
から位相θ cal(l,0)を計算する。続いて、計算した位相値θ cal(l,0)とは逆向きの回転量で、各時刻のベクトル
(I measure(l,nT),Q measure(l,nT))
を回転させることで、各時刻及び各地点における新しいベクトルを式(F8)のように計算する。
Figure 0007298706000048
[演算手順S04]
そして、各波長に関する新しく計算したベクトルを式(F9)のように加算平均して、位相計算に直接用いるベクトルを計算する。
Figure 0007298706000049
最後に、ベクトル(Inew(l,nT),Qnew(l,nT))から式(F10)のように位相θcal(l,nT)を計算する。
Figure 0007298706000050
ベクトル(Inew(l,nT),Qnew(l,nT))を使用してθcal(l,nT)を計算することで、フェーディングにより散乱光強度が減少する地点を減らすことが可能になる。以下に原理を述べる。
i=1,2,・・・,Nの異なるN個の周波数におけるθ cal(l,nT)は互いに異なる値をとっている。例えば、N=2を例にとれば、i=1とi=2の時刻ゼロでの雑音がないときのベクトル(I(l,0),Q(l,0))は、図16のベクトル301とベクトル302のように、向きも大きさも異なる。振動によって、時刻nTにおける入射端から距離lの地点よりも手前におけるファイバの正味の伸縮量が、時刻ゼロと比較して変化しているならば、i=1とi=2の時刻nTでのベクトル(I(l,nT),Q(l,nT))は、図16のベクトル303とベクトル304のようにそれぞれ変化している。ベクトル303とベクトル304の長さは、ベクトル301とべクトル302に対してそれぞれ変化し、その変化量はi=1とi=2で異なるが、ベクトル303とベクトル304の向きは、ベクトル301とベクトル302に対して、それぞれ同じ量だけ変化する。
つまり、角度305と角度306は同一であり、この量が式(1)のθ(l,nT)に対応する。雑音がない場合には、式(F8)により、ベクトル301、ベクトル302、ベクトル303及びベクトル304は、図17のようにそれぞれベクトル307、ベクトル308、ベクトル309及びベクトル310に移される。つまり、時刻ごとに全波長のベクトルの方向を揃える。
ベクトル307とベクトル308の平均として(Inew(l,0),Qnew(l,0))がベクトル311として得られ、ベクトル309とベクトル310の平均として(Inew(l,nT),Qnew(l,nT))がベクトル312として得られる。時刻0からnTの間の位相の変化量は角度313であるが、これは角度305や角度306と同一である。
実際の測定では、雑音によりベクトル301、ベクトル302、ベクトル303、ベクトル304、ベクトル311、及びベクトル312の向きに不確かさが存在し、結果として、角度305や角度306にも不確かさが伴う。しかし、加算平均したベクトル311とベクトル312を用いて角度313を計算することで、不確かさを減少させることができる。その理由は2つある。
1つの理由は、ベクトル307とベクトル308の振幅の2乗に対応する強度の確率分布が、独立に式(F7)に従うからである。このため、ベクトル311の振幅の2乗に対応する強度の確率分布は、理論的には図18の分布402のようになり、平均値自体は同じでも、単一波長の場合にフェーディングにより散乱光強度が著しく小さくなる点を取り除くことが可能となる。比較のために、図18には、一つの波長のみの場合の確率分布を分布401として示している。
他の理由は、ベクトル311では、ベクトル307とベクトル308を平均化することにより、雑音のレベルはベクトル301やベクトル302に対して1/√2となるからである。このため、ベクトル311の長さの平均値自体は、ベクトル301やベクトル302と変わらずとも、雑音レベルが小さくなることで、位相計算時の不確かさを減少させることが可能となる。ベクトル312についても同様である。
ここではNが2つの周波数の場合について、本提案の効果を具体的に記述したが、一般化することは可能である。まず、多重数Nが大きくなる程、散乱光強度がゼロに近くなる地点の数は減少する。この様子を、N=5の場合を分布403に、N=10の場合を分布404に示した。また、雑音レベルの大きさも1/√N倍となるため、同じ平均強度でも、Nが大きくなる程、位相計算時の不確かさは減少する。
なお、本実施形態で説明した信号処理方法は、単純にθ cal(l,nT)を異なるiについて平均化する方法、例えばN=2の場合で位相305と位相306の平均を計算する方法、とは異なる。単純にθ cal(l,nT)を異なるiについて平均化する方法では、θ cal(l,nT)自体は、単一波長で計算されるため、フェーディングによる散乱光強度の小さい所では、雑音がない場合と比較すると大きく測定値が異なる。このため振動の誤検知の発生を減少させることはできない。位相の平均化で雑音がない場合の理想的な位相値と測定値との相違を減少させることはできるが、当該相違の発生頻度自体は、散乱光強度自体が小さくなる地点が波長ごとに違うため増加することになる。つまり、単純にθ cal(l,nT)を異なるiについて平均化してもフェーディングによる散乱光強度の小さい点の除去にはならない。
尚、説明のため式(F9)では右辺に1/Nを乗じているが、これを乗じなくても式(F10)で計算される位相値は変化しないため、実際の計算では1/Nを乗じなくても良い。
(例2)
例1では、式(F8)のベクトル回転の回転角度を時刻ゼロでのθ cal(l,0)とした場合の例を説明した。θ cal(l,0)を算出する際に使用する同相成分と直交成分は、(I measure(l,0),Q measure(l,0))であり雑音の影響を含んだベクトルとなっている。このため、θ cal(l,0)も雑音の影響を受けている。もし、時刻ゼロにおいて、θ cal(l,0)の値が雑音がない場合のθ(l,0)の値とが大きく異なっている場合、式(F8)でのベクトル回転の効果が得られなくなることがある。
図15で説明する。例えば、ファイバ長手方向のある地点、且つある周波数における、時刻ゼロでの散乱光のベクトルが、雑音がない場合はベクトル206となるものが、雑音によりベクトル207となっていたとする。式(F8)でベクトルを回転させた上で式(F9)でベクトルを加算平均する演算は、ベクトル長さがゼロに近い点(フェーディングの影響を受けている点)を減らす効果がある。しかし、この例の場合、ベクトル207の角度を基準としてその周波数の回転角度を決定するため、その周波数については当該効果を得られなくなる。
また、回転角度の誤りは、測定する振動の大きさを正しく評価できない場合も発生する。当該場合を図16で説明する。例えば、ベクトル301と303(波長1)及びベクトル302と304(波長2)が雑音の影響がないベクトルであったとすると、波長の異なるベクトルを一致させる回転角度はゼロとはならない。しかし、基準とした時刻ゼロにおいて、雑音の影響により波長1と波長2のベクトルの向きがたまたま同一であった場合、実施形態1の手法では波長2のベクトルを回転角度ゼロ、つまり無回転のままで、波長1のベクトルと加算平均することになる。つまり、ベクトル301とベクトル302(無回転)を加算平均したベクトルを時刻ゼロにおける平均ベクトルとし、ベクトル303とベクトル304(無回転)を加算平均したベクトルを時刻nTにおける平均ベクトルとする。このため、時刻ゼロから時刻nTへの平均ベクトルの角度変化は、もはやベクトル301からベクトル303への角度変化や、ベクトル302からベクトル304への角度変化とは一致せず、正しく位相変化を捉えることができない。
本実施形態では、上記のような不具合の発生頻度を低減する手法を説明する。
図19は、本実施形態の振動検出装置の信号処理部17dの構造を説明する図である。本実施形態の信号処理部17dは、
測定器で測定された、被測定光ファイバに入射した波長多重の光パルスで発生した散乱光の同相成分と直交成分が入力される入力部21と、
入力部21に入力された前記散乱光の同相成分と直交成分のうち、任意の時刻且つ被測定光ファイバ6の任意位置における同相成分と直交成分により構成される2次元ベクトルを、前記光パルスに多重される波長毎に取得するベクトル取得回路22と、
ベクトル取得回路22が取得した前記2次元ベクトルのうち、基準波長の各時刻の前記2次元ベクトルを、該2次元ベクトルそれぞれが基準方向を向くように時刻毎の基準回転量だけ回転し、ベクトル取得回路22が取得した前記2次元ベクトルのうち、前記基準波長と異なる他波長の各時刻の前記2次元ベクトルを、前記時刻毎の基準回転量だけそれぞれ回転する第1ベクトル回転回路23-1と、
第1ベクトル回転回路23-1が回転した前記基準波長の各時刻の前記2次元ベクトルを加算平均して第1合成基準ベクトルを計算し、第1ベクトル回転回路23-1が回転した前記他波長の各時刻の前記2次元ベクトルを加算平均して波長毎の第1合成ベクトルを計算し、前記第1合成基準ベクトルと前記第1合成ベクトルとが成す角度から波長毎の基準回転量を計算する第1演算回路24-1と、
ベクトル取得回路22が取得した前記2次元ベクトルのうち、基準時刻の各波長の前記2次元ベクトルを、第1演算回路24-1が計算した前記波長毎の基準回転量だけ回転し、ベクトル取得回路22が取得した前記2次元ベクトルのうち、前記基準時刻と異なる他時刻の各波長の前記2次元ベクトルを、第1演算回路24-1が計算した前記波長毎の基準回転量だけそれぞれ回転する第2ベクトル回転回路23-2と、
第2ベクトル回転回路23-2が回転した前記基準時刻の各波長の前記2次元ベクトルを加算平均して第2合成基準ベクトルを計算し、第2ベクトル回転回路23-2が回転した前記他時刻の各波長の前記2次元ベクトルを加算平均して第2合成ベクトルを計算し、前記第2合成基準ベクトルと前記第2合成ベクトルとが成す角度から前記散乱光の位相変化量を計算する第2演算回路24-2と、
を備える。
図20は、本振動検出装置が行う位相測定方法を説明する図である。当該位相測定方法は、
被測定光ファイバに入射した波長多重の光パルスで発生した散乱光の同相成分と直交成分を測定する測定手順S01と、
測定手順S01で測定した前記散乱光の同相成分と直交成分のうち、任意の時刻且つ前記被測定光ファイバの任意位置における同相成分と直交成分により構成される2次元ベクトルを、前記光パルスに多重される波長毎に取得するベクトル取得手順S02と、
ベクトル取得手順S02で取得した前記2次元ベクトルのうち、基準波長の各時刻の前記2次元ベクトルを、該2次元ベクトルそれぞれが基準方向を向くように時刻毎の基準回転量だけ回転し、ベクトル取得手順S02で取得した前記2次元ベクトルのうち、前記基準波長と異なる他波長の各時刻の前記2次元ベクトルを、前記時刻毎の基準回転量だけそれぞれ回転する第1ベクトル回転手順S13と、
第1ベクトル回転手順S13で回転した前記基準波長の各時刻の前記2次元ベクトルを加算平均して第1合成基準ベクトルを計算し、第1ベクトル回転手順S13で回転した前記他波長の各時刻の前記2次元ベクトルを加算平均して波長毎の第1合成ベクトルを計算し、前記第1合成基準ベクトルと前記第1合成ベクトルとが成す角度から波長毎の基準回転量を計算する第1演算手順S14と、
ベクトル取得手順S02で取得した前記2次元ベクトルのうち、基準時刻の各波長の前記2次元ベクトルを、第1演算手順S14で計算した前記波長毎の基準回転量だけ回転し、ベクトル取得手順S02で取得した前記2次元ベクトルのうち、前記基準時刻と異なる他時刻の各波長の前記2次元ベクトルを、第1演算手順S14で計算した前記波長毎の基準回転量だけそれぞれ回転する第2ベクトル回転手順S15と、
第2ベクトル回転手順S15で回転した前記基準時刻の各波長の前記2次元ベクトルを加算平均して第2合成基準ベクトルを計算し、第2ベクトル回転手順S15で回転した前記他時刻の各波長の前記2次元ベクトルを加算平均して第2合成ベクトルを計算し、前記第2合成基準ベクトルと前記第2合成ベクトルとが成す角度から前記散乱光の位相変化量を計算する第2演算手順S16と、
を行う。
入力部21、ベクトル取得回路22、測定手順S01及びベクトル取得手順S02は、実施形態1の説明と同じである。
まず、第1ベクトル回転回路23-1は次の第1ベクトル回転手順S13を行う。
i=1を基準(基準波長)にして、全てのiについて下式を計算する。
Figure 0007298706000051
続いて、第1演算回路23-1は次の第1演算手順S14を行う。
式(F11)で得られたr’(l,nT)の全ての時刻について加算平均を下式で計算する。
Figure 0007298706000052
Mは時刻方向でのサンプル数である。式(F12)で得られたr’’(l)を用いて、下式を計算する。
Figure 0007298706000053
簡潔に説明すると次のようになる。
まず、基準波長i=1について、各時刻でのベクトルがI軸を向くように回転させる。この回転角をθi=1(t)とする。θi=1(t)は時刻で変化する。また、回転後のベクトルをAtとする。
次に、他の波長について、各時刻でのベクトルをθi=1(t)で回転する。回転後の波長毎のベクトルをBtとする。
続いて、波長毎に回転後のベクトルを時間平均する。基準波長についての時間平均後のベクトルをΣAtとする。他の波長についての時間平均後のベクトルをΣBtとする。
そして、ΣAtとΣBtとの成す角度を求める。この角度が式(F13)式のθ’(l)である。θ’(l)は他の波長毎に存在する。
第2ベクトル回転回路23-2が行う第2ベクトル回転手順S15、及び第2演算回路24-2が行う第2演算手順S16は、次の点を除いて実施形態1で説明したベクトル回転手順S03及び演算手順S04とそれぞれ同じである。式(F8)の計算時に、θ cal(l,0)に替えて、式(F13)式のθ’(l)を用いてベクトル(Inew(l,nT),Qnew(l,nT))を計算し、式(F9)で位相の計算を行う。
本手法の意義を説明する。振動が起きても異なる周波数同士のベクトルのなす角度は、雑音がない場合には変化しない。例えば、2つの周波数の場合を例にとれば、基準時刻のベクトル301とベクトル302のなす角度と、時間nT後のベクトル303とベクトル304のなす角度は、雑音の影響がないならば同一となる。そこで、式(F11)によるベクトルの回転を行った上で、式(F12)でベクトルの加算平均を行い、基準時刻の加算平均ベクトルと時間nT後の加算平均ベクトルとが成す角度を回転角度θ’(l)とする。これにより、各ベクトルに付随する雑音の大きさを1/√Mにすることができる。したがって、Mを十分に大きくとることで雑音の影響を減らすことができる。
なお、本実施形態の手法は、異なる周波数同士のベクトルの位相差を各時刻で求めた上で、全ての時刻についての位相差を平均することで回転角度を求める手法(以下、比較手法と記載)と異なる。本実施形態の手法は、予め全ての波長のベクトルを波長1の回転角度で回転させている点で異なる。例えば、周波数が2つの場合に、比較手法は、単純にベクトル302とベクトル301の角度差、及びベクトル303とベクトル302の角度差を計算し、それらの平均値として回転角度を求める。比較手法は、各時刻での位相差の計算値が雑音がない場合と大きく異なる点(被測定ファイバの計測位置)の発生確率は変化しないので、式(F8)による回転の効果が十分でない。
尚、説明のため式(F12)では1/Mを右辺に乗じているが、これを乗じなくても式(F13)で計算される回転角度は変わらないので、実際の計算においては1/Mを乗じなくても良い。
例2の手法は、例1の手法と比べて、計算時間は増加するが、最終的な位相計算における不確かさを、例1より減少させることができる。
1:光源
2:カプラ
3:光変調器
4:光パルス
4a:微小パルス
5:サーキュレータ
6:被測定光ファイバ
7:90度光ハイブリッド
8、9:カプラ
10:位相シフタ
11、12:カプラ
13、14:バランス検出器
15:アナログの同相成分の電気信号
16:アナログの直交成分の電気信号
17:信号処理装置
17a、17b:AD変換素子
17c、17d:信号処理部
18:計算部
21:入力部
22:ベクトル取得回路
23:ベクトル回転回路
24:演算回路
23-1:第1ベクトル回転回路
23-2:第2ベクトル回転回路
24-1:第1演算回路
24-2:第2演算回路
31:測定器

Claims (8)

  1. 光パルス試験方法であって、
    異なる光周波数の光パルスを時間的に等間隔で並べた波長多重数Nの光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射すること、
    前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光すること、
    前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測すること、及び
    前記波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定すること、
    を特徴とする光パルス試験方法。
    Figure 0007298706000054
  2. 前記光パルスを、前記光パルス列の光パルス間隔より短い間隔で異なる光周波数の微小光パルスをM個並べて形成すること、及び
    雑音レベルの1/√M倍が所定値以下となるように前記微小光パルスの数Mを設定すること
    を特徴とする請求項1に記載の光パルス試験方法。
  3. 光パルス試験方法であって、
    N×M+1個(NとMは自然数)の異なる光周波数の微小光パルスを並べた集団をM個形成すること、
    M個の前記集団を並べて、先頭の前記集団からM個づつ前記微小光パルスを切り出して光パルス対をN×M+1個形成すること、
    N×M+1個の前記光パルス対を時間的に等間隔で並べた光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射すること、
    前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光すること、
    前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測すること、
    波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定すること、及び
    雑音レベルの1/√M倍が所定値以下となるように波長多重数Mを設定すること
    を特徴とする光パルス試験方法。
    Figure 0007298706000055
  4. 光パルス試験方法であって、
    N×M個(NとMは自然数)の異なる光周波数の微小光パルスを並べた集団をN+1個形成すること、
    N+1個の前記集団を並べて、先頭の前記集団からM個づつ前記微小光パルスを切り出して光パルス対をN(N+1)個形成すること、
    N(N+1)個の前記光パルス対のうち、N+1毎の前記光パルス対にいずれの前記微小光パルスの光周波数とも異なる光周波数の追加微小光パルスを追加すること、
    前記追加微小光パルスが追加された前記光パルス対を含むN(N+1)個の前記光パルス対を時間的に等間隔で並べた光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射すること、
    前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光すること、
    前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測すること、
    波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定すること、及び
    雑音レベルの1/√M倍が所定値以下となるように波長多重数Mを設定すること
    を特徴とする光パルス試験方法。
    Figure 0007298706000056
  5. 光パルス試験方法であって、
    N×M+1個(NとMは自然数)の異なる光周波数の微小光パルスを並べた集団を(N+1)M+1個形成すること、
    (N+1)M+1個の前記集団を並べ、1+k(N+1)番目のパルス対にM+1個の前記微小光パルスが含まれ、他の前記パルス対にM個の前記微小光パルスが含まれるように、先頭の前記集団から前記微小光パルスを切り出して前記光パルス対を(N×M+1)(N+1)個形成すること、
    (N×M+1)(N+1)個の前記光パルス対を時間的に等間隔で並べた光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射すること、
    前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光すること、
    前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測すること、
    波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定すること、及び
    雑音レベルの1/√M倍が所定値以下となるように波長多重数Mを設定すること
    を特徴とする光パルス試験方法。
    Figure 0007298706000057
  6. 前記光パルス列を前記被測定光ファイバの一端に入射する前に、前記光パルス列の光パルス間隔より短い間隔で異なる光周波数の前記光パルスを並べた光パルス対を並べた補正用光パルス列を前記被測定光ファイバの一端に入射すること、及び
    前記散乱光の位相成分の補正値を数C2で計算すること
    を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載する光パルス試験方法。
    Figure 0007298706000058
    ただし、φ(i(m’),i(m))は光周波数が異なる2つの前記光パルス間の角度差、
    Pは前記補正用光パルス列に含まれる前記光パルス対の数、
    pは前記光パルス対の番号(1からPまでの整数)、
    はp番目の前記光パルス対が前記被測定光ファイバの一端に入射される時間、
    zは前記被測定光ファイバの前記一端からの距離、
    i(m)(z,t+2z/ν)及びri(m’)(z,t+2z/ν)は距離zからの散乱光の複素ベクトル、
    arg関数は引数の複素ベクトルの偏角を-πからπの範囲で計算し、実数を出力する関数、
    R(*)は複素平面上で角度*だけ時計まわりに複素ベクトルrを回転させる演算子である。
  7. 光パルス試験装置であって、
    異なる光周波数の光パルスを時間的に等間隔で並べた波長多重数Nの光パルス列を被測定光ファイバの一端に入射する光源と、
    前記被測定光ファイバの前記一端に戻ってきた各波長の散乱光を受光する受光器と、
    前記被測定光ファイバの振動を前記散乱光の位相成分の時間変化として観測する信号処理部と、
    前記波長多重数Nを数C1を満たす最小値に決定する計算部と、
    を備えることを特徴とする光パルス試験装置。
    Figure 0007298706000059
  8. 前記光源は、前記光パルス列を前記被測定光ファイバの一端に入射する前に、前記光パルス列の光パルス間隔より短い間隔で異なる光周波数の前記光パルスを並べた光パルス対を並べた補正用光パルス列を前記被測定光ファイバの一端に入射し、
    前記信号処理部は、前記散乱光の位相成分の補正値を数C2で計算すること
    を特徴とする請求項7に記載する光パルス試験装置。
    Figure 0007298706000060
    ただし、φ(i(m’),i(m))は光周波数が異なる2つの前記光パルス間の角度差、
    Pは前記補正用光パルス列に含まれる前記光パルス対の数、
    pは前記光パルス対の番号(1からPまでの整数)、
    はp番目の前記光パルス対が前記被測定光ファイバの一端に入射される時間、
    zは前記被測定光ファイバの前記一端からの距離、
    i(m)(z,t+2z/ν)及びri(m’)(z,t+2z/ν)は距離zからの散乱光の複素ベクトル、
    arg関数は引数の複素ベクトルの偏角を-πからπの範囲で計算し、実数を出力する関数、
    R(*)は複素平面上で角度*だけ時計まわりに複素ベクトルrを回転させる演算子である。
JP2021552052A 2019-10-17 2019-10-17 光パルス試験方法及び光パルス試験装置 Active JP7298706B2 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2019/040821 WO2021075015A1 (ja) 2019-10-17 2019-10-17 光パルス試験方法及び光パルス試験装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2021075015A1 JPWO2021075015A1 (ja) 2021-04-22
JP7298706B2 true JP7298706B2 (ja) 2023-06-27

Family

ID=75538709

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021552052A Active JP7298706B2 (ja) 2019-10-17 2019-10-17 光パルス試験方法及び光パルス試験装置

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20230175884A1 (ja)
JP (1) JP7298706B2 (ja)
CN (1) CN114556058A (ja)
WO (1) WO2021075015A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7111045B2 (ja) * 2019-04-03 2022-08-02 日本電信電話株式会社 位相測定方法及び信号処理装置
EP4354100A1 (en) * 2021-06-09 2024-04-17 Nippon Telegraph And Telephone Corporation Vibration measurement device and vibration measurement method
JPWO2022259436A1 (ja) * 2021-06-09 2022-12-15

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008191370A (ja) 2007-02-05 2008-08-21 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 分散方式高速波長掃引光源及び分散方式高速波長掃引光発生方法
JP2014157134A (ja) 2013-02-18 2014-08-28 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 光パルス試験装置及び光パルス試験方法
JP2017026503A (ja) 2015-07-24 2017-02-02 日本電信電話株式会社 振動分布測定方法及び振動分布測定装置
JP2018036107A (ja) 2016-08-30 2018-03-08 沖電気工業株式会社 干渉型光ファイバセンサ
CN109210385A (zh) 2018-06-08 2019-01-15 张益平 一种基于Phase-OTDR的分布式光纤传感***及方法
US20190238178A1 (en) 2018-01-26 2019-08-01 Nec Laboratories America, Inc High speed frequency hopping das interrogation using aom-gated re-circulating loop and frequency-shifted receiver lo

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001066221A (ja) * 1999-08-30 2001-03-16 Ando Electric Co Ltd 光パルス試験器
FR2889305B1 (fr) * 2005-07-28 2007-10-19 Sercel Sa Reseau d'interferometres a fibre optique
CN101555990A (zh) * 2008-04-11 2009-10-14 电子科技大学 长距离管线安全监测***
US8928868B2 (en) * 2011-05-31 2015-01-06 Nippon Telegraph And Telephone Corporation Optical fiber line characteristic analysis apparatus and analysis method thereof
JP5948035B2 (ja) * 2011-10-05 2016-07-06 ニューブレクス株式会社 分布型光ファイバ音波検出装置
CN102706475B (zh) * 2012-05-25 2014-06-18 中国计量学院 采用循环脉冲编码解码和瑞利解调的分布式光纤拉曼温度传感器
CN102928063B (zh) * 2012-11-20 2014-02-26 重庆大学 基于波分复用技术的分布式光纤振动传感***
CN106052842B (zh) * 2016-08-05 2022-03-15 上海交通大学 可消衰落噪声的分布式光纤振动传感***及其解调方法
CN107894276A (zh) * 2017-12-08 2018-04-10 威海北洋光电信息技术股份公司 一种高频响的分布式光纤振动传感装置和实现方法
CN108594253B (zh) * 2018-04-11 2024-01-05 深圳市镭神智能***有限公司 光脉冲测距方法、装置、激光雷达和存储介质

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008191370A (ja) 2007-02-05 2008-08-21 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 分散方式高速波長掃引光源及び分散方式高速波長掃引光発生方法
JP2014157134A (ja) 2013-02-18 2014-08-28 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 光パルス試験装置及び光パルス試験方法
JP2017026503A (ja) 2015-07-24 2017-02-02 日本電信電話株式会社 振動分布測定方法及び振動分布測定装置
JP2018036107A (ja) 2016-08-30 2018-03-08 沖電気工業株式会社 干渉型光ファイバセンサ
US20190238178A1 (en) 2018-01-26 2019-08-01 Nec Laboratories America, Inc High speed frequency hopping das interrogation using aom-gated re-circulating loop and frequency-shifted receiver lo
CN109210385A (zh) 2018-06-08 2019-01-15 张益平 一种基于Phase-OTDR的分布式光纤传感***及方法

Also Published As

Publication number Publication date
US20230175884A1 (en) 2023-06-08
EP4047333A1 (en) 2022-08-24
EP4047333A4 (en) 2023-06-21
WO2021075015A1 (ja) 2021-04-22
CN114556058A (zh) 2022-05-27
JPWO2021075015A1 (ja) 2021-04-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7111045B2 (ja) 位相測定方法及び信号処理装置
JP7298706B2 (ja) 光パルス試験方法及び光パルス試験装置
JP6921236B2 (ja) 分散型音響センシング
JP6893137B2 (ja) 光ファイバ振動検知センサおよびその方法
JP2017026503A (ja) 振動分布測定方法及び振動分布測定装置
WO2018083732A1 (ja) ブリルアン散乱測定方法およびブリルアン散乱測定装置
US11725965B2 (en) Method and device for reconstructing a backscattered electromagnetic vector wave
US11522606B2 (en) Phase measurement method, signal processing device, and program
WO2016193524A1 (es) Sistema y método de caracterización distribuida de perfil de dispersión de una fibra óptica
EP3922964B1 (en) Vibration detection method, signal processing device, and program
WO2022259437A1 (ja) 振動測定器及び振動測定方法
JP7173313B2 (ja) 位相測定方法及び信号処理装置
EP4047333B1 (en) Optical pulse testing method and optical pulse testing device
WO2022259436A1 (ja) 信号処理装置、振動検出システム及び信号処理方法
JP2018021890A (ja) 空間チャネル間伝搬遅延時間差測定装置及び空間チャネル間伝搬遅延時間差測定方法
EP4296624A1 (en) Signal processing method and signal processing device
JP5927079B2 (ja) レーザ光特性測定方法及び測定装置
WO2022054254A1 (ja) 振動検出装置及び振動検出方法
BR112021005987B1 (pt) Aparelho de sensoreação distribuída

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220215

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230307

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230414

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230516

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230529

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7298706

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150