JP7295629B2 - 樹脂成形体、樹脂組成物および樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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本発明の一実施形態に係る樹脂成形体は、六方晶窒化ホウ素と樹脂とを含み、前記樹脂成形体の厚さ方向の断面を走査電子顕微鏡により500倍で撮影した画像における任意の100μm四方の範囲において、前記樹脂成形体の厚さ方向に前記六方晶窒化ホウ素が連続した相が形成されており、前記画像において、前記六方晶窒化ホウ素が前記樹脂成形体に占める面積の割合が50~90%である。
本発明の一実施形態に係る樹脂成形体は、六方晶窒化ホウ素を含んでいる。当該樹脂成形体の厚さ方向の断面を走査電子顕微鏡により500倍で撮影した画像における任意の100μm四方の範囲において、樹脂成形体の厚さ方向に六方晶窒化ホウ素が連続した相が形成されている。六方晶窒化ホウ素は熱伝導性に優れる。このような六方晶窒化ホウ素から形成された高熱伝導相が、樹脂成形体の厚さ方向に連続しているため、樹脂成形体はさらに優れた熱伝導性を示す。
本発明の一実施形態に係る樹脂成形体は樹脂を含んでいる。樹脂は、特に制限されず、例えばエポキシ系樹脂であってよい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型の水素添加エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ポリテトラメチレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂、およびビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物型のエポキシ樹脂等が挙げられる。これらエポキシ樹脂の1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して使用してもよい。また、硬化剤としてアミン系樹脂、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂、イミダゾール類等を用いてもよい。これら硬化剤も1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して使用してもよい。これら、硬化剤のエポキシ樹脂に対する配合量は、エポキシ樹脂に対する当量比で、0.5~1.5当量比、好ましくは0.7~1.3当量比である。本明細書において、これらの硬化剤も樹脂に包含される。
樹脂成形体は、六方晶窒化ホウ素および樹脂以外の成分を含んでいてもよい。このような成分を本明細書において「その他の成分」と称する。
樹脂成形体は、温度波熱分析法(ISO22007-3)に準拠して測定した熱伝導率が、15W/m・K以上であることが好ましい。樹脂成形体の熱伝導率が15W/m・K以上であることにより良好な熱伝導性を有する。
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、六方晶窒化ホウ素凝集粒子および六方晶窒化ホウ素微細粒子を含む樹脂組成物であって、前記六方晶窒化ホウ素凝集粒子は、長径が10~30μmであり、厚みが1~3μmである六方晶窒化ホウ素の単粒子が凝集した粒子であり、前記六方晶窒化ホウ素微細粒子は、前記単粒子、および、前記単粒子が凝集し、粒度分布曲線における体積頻度のピーク粒子径が30μm以下の粒子の少なくともいずれか一方を含む粒子である。
本発明の一実施形態に係る樹脂成形体の製造方法は、混合工程と、塗工工程と、溶剤除去工程と、硬化工程と、を含む。
混合工程は、樹脂100体積部に対して、粒度分布曲線における累積体積頻度が50%の粒子径(D50)が10~60μmの六方晶窒化ホウ素粉末を50~200体積部混合する工程である。六方晶窒化ホウ素粉末のD50は、20~50μmであることがより好ましく、20~40μmであることがさらに好ましい。また、六方晶窒化ホウ素粉末は80~180体積部混合されることがより好ましく、100~160体積部混合されることがより好ましい。なお、樹脂と六方晶窒化ホウ素粉末との混合方法は特に限定されないが、例えば一般的の攪拌機、プラネタリーミキサー、または自点公転ミキサー等の装置を用いることができる。樹脂としては、上述の樹脂が挙げられる。また、上述のその他の成分を混合してもよい。
塗工工程は、上述の混合工程において得られた混合物を塗工する工程である。塗工工程では、フィルムまたは金属箔など基材の上に混合物を均一の厚さとなるよう塗工することが好ましい。塗工工程に用いる装置は、特に限定されない。
溶剤除去工程は、上述の塗工工程を経た混合物から溶剤を除去する工程である。溶剤の除去方法は特に限定されず、ドラフト内において常温で通風乾燥してよく、オーブン等を用いた高温での加熱乾燥、さらに、真空乾燥機を用いて高温で減圧乾燥させてもよい。溶剤除去工程で溶剤の揮発による気泡を発生させず、緻密な塗工膜を得るためには、一定の溶剤を常温通風乾燥で除去した後に、高温で真空乾燥することが好ましい。真空乾燥の際の乾燥温度と時間とは、使用する溶剤と、樹脂および硬化剤と、の組合せにより適宜選択すればよい。溶剤の除去が不十分な場合には、次の硬化工程において、溶剤の揮発による気泡が空隙(ボイド)の原因となり絶縁耐力を低下させる。また、乾燥温度が高すぎる場合、または時間が長すぎる場合には、溶剤除去工程で樹脂の硬化が一定以上進んで、硬化工程後の樹脂成形体中に亀裂等の欠陥が生じやすく、絶縁耐力を低下させる。このため、溶剤の沸点、樹脂と硬化剤の硬化温度と硬化時間により、乾燥温度を適宜選択することが好ましい。例えば、実施例に示す、溶剤:シクロヘキサノン、樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤:変性芳香族アミンの組合せでは、真空条件下、乾燥温度は80~150℃であることが好ましく、90~140℃であることがより好ましい。乾燥時間は10~60分であることが好ましく、15~40分であることがより好ましい。
硬化工程は、上述の溶媒除去工程を経た混合物を硬化させる工程である。この硬化工程により、樹脂成形体を得ることができる。硬化工程における硬化方法は特に限定されないが、高温にて加熱・加圧することにより硬化させることが好ましい。さらに、塗工により形成された膜中のガス成分を取り除き、緻密で熱伝導率および絶縁耐力の高い樹脂成形体を得るために、真空減圧下で加熱・加圧して硬化させることがより好ましい。硬化温度および時間も、使用する樹脂と硬化剤の組合せにより適宜選択すればよい。さらに、硬化の際には樹脂の収縮が起こるため、樹脂成形体中の空隙の発生を抑え、樹脂と六方晶窒化ホウ素との密着性を良好にして、熱伝導率と絶縁耐力の高い樹脂成形体を得るために長時間の加熱・加圧がさらに好ましい。
<熱伝導率>
樹脂成形体の熱伝導率(W/m・K)は、熱拡散率(m2/秒)×密度(kg/m3)×比熱(J/kg・K)で求めた。なお、熱拡散率は温度波熱分析法(アイフェイズ社製:ai-Phase Mobile u、ISO22007-3)、密度はアルキメデス法(メトラー・トレド社製:XS204V)、比熱は示差走査熱量計(DSC)法(リガク社製:Thermo Plus Evo DSC8230)を使用して測定した。
樹脂成形体の絶縁耐力(kV/mm)は、京南電機社製:耐電圧試験器YPAD-0225を使用し、JIS K6911の熱硬化性プラスチック一般試験方法に準じて測定した。
樹脂成形体の厚さ方向の断面の観察は、日立ハイテクノロジー社製:イオンミリング装置ArBlade5000を用いて断面試料を加工し、同日立ハイテクノロジー社製:走査型電子顕微鏡(SEM)SU3500を用いて観察、像撮影した。画像の解析には、旭化成エンジニアリング社製の画像解析ソフト「A像くん」の組成解析を使用した。
樹脂成形体に用いた六方晶窒化ホウ素の粒度分布の測定は、マイクロトラップ・ベル社製:粒子径分布測定装置MT3000を用い、エタノール分散媒中に六方晶窒化ホウ素を分散させ、超音波処理等の六方晶窒化ホウ素の凝集粒子を破壊する虞のある操作を行なわないで、粒度分布測定を行なった。
<六方晶窒化ホウ素粉末>
本実施例に用いた六方晶窒化ホウ素粉末は、以下に示す方法により作製した。
樹脂組成物は、上述のように混合して得られた六方晶窒化ホウ素粉末100重量部に対して、粒子径が0.4μmの酸化アルミニウム(住友化学製、アドバンストアルミナAA-04)および粒子径3μmの酸化アルミニウム(住友化学:アドバンストアルミナAA-3)を各20重量部、樹脂として液状硬化性エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量184~194g/eq)を32重量部、およびエポキシ樹脂硬化剤(三菱化学製、jER cure W、変性芳香族アミン、アミン価623~639)8重量部、溶剤として、シクロヘキサノン(和光純薬製、特級)55重量部を加え、自公転ミキサー(倉敷紡績製:マゼルスターKK-250S)を用いて、六方晶窒化ホウ素凝集粒子が破壊されないよう混合した(混合工程)。
上述のように作製された樹脂組成物を、離型性ポリイミドフィルム(宇部興産社製:ユーピレックス-50S、厚さ50μm)上に、自動塗工装置(テスター産業社製:PI-1210)を用い、バード式アプリケータで膜厚300μmとなるように塗工した(塗工工程)。そして、塗工されたフィルムをドラフト内で10分間風乾の後、真空乾燥機を用いて100℃で30分、真空乾燥した(溶剤除去工程)。
作製した樹脂成形体の厚さ方向の断面の500倍で撮影した走査電子顕微鏡画像を図1に示す。図1の(a)は本発明の実施例1に係る樹脂成形体の走査電子顕微鏡画像を示す図であり、図1の(b)は本発明の実施例1に係る樹脂成形体の走査電子顕微鏡画像の画像解析結果を示す図である。なお、図1の(a)において、暗く観える領域が六方晶窒化ホウ素で構成された領域であり、明るく観える領域が樹脂および酸化アルミニウムが含まれる領域である。特に酸化アルミニウムは白い丸のように観える。図1の(b)において、黒く表示されている領域が樹脂および酸化アルミニウムが含まれる領域であり、白く表示されている領域が六方晶窒化ホウ素で構成された領域である。画像解析により、六方晶窒化ホウ素で構成された領域の面積の割合を求めた。同様にして、合計10枚の走査電子顕微鏡画像を撮影して画像解析を行い、平均値を六方晶窒化ホウ素が樹脂成形体に占める面積の割合とした。
実施例2では、六方晶窒化ホウ素粉末Bと六方晶窒化ホウ素粉末Cとを75:25で混合して使用した。このように混合して得られた六方晶窒化ホウ素粉末100重量部に対して、粒子径0.4μmの酸化アルミニウム(住友化学アドバンストアルミナAA-04)10重量部、粒子径1.5μmの酸化アルミニウム(住友化学アドバンストアルミナAA-1.5)10重量部、D50が33.5μmの窒化アルミニウム粉末を65.5重量部、
液状硬化性エポキシ樹脂(三菱化学jER828、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量184~194g/eq)32重量部、エポキシ樹脂硬化剤(三菱化学jER cure W、変性芳香族アミン、アミン価623~639)8重量部、を配合したこと以外は実施例1と同様に樹脂成形体を作製した。樹脂組成物における窒化アルミニウムの体積分率(%)は、窒化アルミニウムの密度を3.26g/cm3、酸化アルミニウムの密度を3.98g/cm3、また、前記の六方晶窒化ホウ素2.27g/cm3、エポキシ樹脂1.17g/cm3より計算により算出した。窒化アルミニウムの体積分率は19.4%であった。
実施例3では、六方晶窒化ホウ素粉末100重量部に対して、D50が33.5μmの窒化アルミニウム粉末を91.7重量部加えた。窒化アルミニウム粉末を加えた量以外は、実施例2と同様に樹脂成形体を作製した。
実施例4では、六方晶窒化ホウ素粉末100重量部に対して、D50が33.5μmの窒化アルミニウム粉末を196.5重量部加えた。窒化アルミニウム粉末を加えた量以外は、実施例2と同様に樹脂成形体を作製した。
実施例5では、硬化工程の二段目のプレスの温度を150℃から170℃としたこと以外は、実施例4と同様に樹脂成形体を作製した。
実施例6では、窒化アルミニウム粉末として、D50が62.8μmの窒化アルミニウム粉末を配合したこと以外は実施例2と同様に樹脂成形体を作製した。
実施例7では、窒化アルミニウム粉末として、D50が62.8μmの窒化アルミニウム粉末を配合したこと以外は実施例3と同様に樹脂成形体を作製した。
六方晶窒化ホウ素凝集粒子を含む六方晶窒化ホウ素粉末D(D50が19.3μm)を使用して、実施例1と同様の分級操作を行ない、六方晶窒化ホウ素粉末Eを得た。六方晶窒化ホウ素粉末Eと六方晶窒化ホウ素粉末Cとを重量比で75:25となるように混合した粉末を用いたこと以外は実施例6と同様に樹脂成形体を作製した。
比較例1では、六方晶窒化ホウ素として六方晶窒化ホウ素粉末Aを用いたこと以外は、実施例1と同様に樹脂成形体を作製した。図3の(a)は本発明の比較例1に係る樹脂成形体の走査電子顕微鏡画像を示す図であり、図3の(b)は本発明の比較例1に係る樹脂成形体の走査電子顕微鏡画像の画像解析結果を示す図である。
比較例2では、六方晶窒化ホウ素として六方晶窒化ホウ素粉末Aを用いたこと以外は、実施例2と同様に樹脂成形体を作製した。図4の(a)は本発明の比較例2に係る樹脂成形体の走査電子顕微鏡画像を示す図であり、図4の(b)は本発明の比較例2に係る樹脂成形体の走査電子顕微鏡画像の画像解析結果を示す図である。
六方晶窒化ホウ素として六方晶窒化ホウ素粉末Dを用いたこと以外は、実施例8と同様に樹脂成形体を作製した。
実施例および比較例の結果を以下に示す。
Claims (4)
- 六方晶窒化ホウ素粉末と樹脂とを含む樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体の厚さ方向の断面を走査電子顕微鏡により500倍で撮影した画像における任意の100μm四方の範囲において、前記樹脂成形体の厚さ方向に前記六方晶窒化ホウ素粉末が連続した相が形成されており、
前記画像において、前記六方晶窒化ホウ素粉末が前記樹脂成形体に占める面積の割合が50~90%であり、
前記六方晶窒化ホウ素粉末は、六方晶窒化ホウ素凝集粒子および六方晶窒化ホウ素微細粒子を含み、
前記六方晶窒化ホウ素凝集粒子は、粒度分布曲線における体積頻度のピーク粒子径が40~150μmであり、
前記六方晶窒化ホウ素微細粒子は、単粒子が凝集した凝集体を含み、粒度分布曲線における体積頻度のピーク粒子径が10~30μmであり、
前記六方晶窒化ホウ素粉末のD90/D10が3~15である、樹脂成形体。 - 前記画像における任意の100μm四方において、前記樹脂成形体の幅方向に連続した前記樹脂の長さが70μm以下である、請求項1に記載の樹脂成形体。
- 前記樹脂成形体はさらに、長径が20~80μmである窒化アルミニウム粒子を含み、
前記画像において、前記窒化アルミニウム粒子が前記樹脂成形体に占める面積の割合が15~60%である、請求項1または2に記載の樹脂成形体。 - 温度波熱分析法にて測定された熱伝導率が15W/m・K以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
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