実施例1における周囲物体認識方法及び周囲物体認識装置は、自動運転モードを選択すると目標軌跡が生成され、生成された目標軌跡に沿って走行するように速度及び舵角による車両運動が制御される自動運転車両(走行支援車両の一例)に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「全体システム構成」、「自動運転コントローラの制御ブロック構成」、「周囲物体認識部の詳細構成」、「周囲物体認識制御処理構成」に分けて説明する。
[全体システム構成(図1)]
自動運転車両ADは、図1に示すように、車載センサ1と、ナビゲーション装置2と、車載制御ユニット3と、アクチュエータ4と、HMIモジュール5と、を備えている。なお、「HMI」は「Human Machine Interface」の略称である。
車載センサ1は、自車周辺の物体や道路形状などの周辺環境、自車の状態などを認識するために自車に搭載された各種のセンサである。この車載センサ1は、外部センサ11、GPS受信機12、内部センサ13を有する。なお、車載センサ1では、複数の異なるセンサを用いて必要な情報を取得するセンサフュージョンを行ってもよい。
外部センサ11は、自車周辺の環境情報を検出する検出機器である。この外部センサ11は、例えば、カメラ、レーダー(「Radar」:Radio Detection and Rangingの略)、ライダー(「Lidar」:Light Detection and Rangingの略)、ソナー(「Sonar」:Sound Navigation and Rangingの略)などから構成される。
GPS受信機12は、GNSSアンテナ12aにより3個以上のGPS衛星からの信号を受信して、自車位置を示す位置データ(緯度及び経度)を取得する装置である。なお、「GNSS」は「Global Navigation Satellite System」の略称、「GPS」は「Global Positioning System」の略称である。また、GPS受信機12による信号受信が不良のときには、内部センサ13やオドメーター(車両移動量計測装置)を利用してGPS受信機12の機能を補完してもよい。
内部センサ13は、自車の速度・加速度・姿勢データなどの自車情報を検出する検出機器である。例えば、6軸慣性センサ(IMU:Inertial Measurement Unit)を有し、自車の移動方向、向き、回転を検出することができる。さらに、内部センサ13の検出結果に基づいて移動距離や移動速度などを算出できる。6軸慣性センサは、前後、左右、上下の三方向の加速度を検出できる加速度センサと、この三方向の回転の速さを検出できるジャイロセンサを組み合わせることで実現される。なお、内部センサ13には、車輪速センサやヨーレイトセンサやアクセル操作量センサ、などの必要なセンサを含むことができる。
さらに、この車載センサ1では、図示していない外部データ通信器との間で無線通信を行うことで、必要な情報を外部から取得してもよい。即ち、外部データ通信器が、例えば、他車に搭載されたデータ通信器の場合、自車と他車の間で車車間通信を行う。この車車間通信により、他車が保有する様々な情報から必要な情報を取得することができる。また、外部データ通信器が、例えば、インフラ設備に設けられたデータ通信器の場合、自車とインフラ設備の間でインフラ通信を行う。このインフラ通信により、インフラ設備が保有する情報の中から必要な情報を取得することができる。この結果、例えば、自動運転コントローラ31が有する高精度地図データでは不足する情報や変更された情報がある場合に必要な地図データを補うことができる。また、自車が走行を予定している経路上での渋滞情報や走行規制情報などの交通情報を取得することもできる。
ナビゲーション装置2は、施設情報データを内蔵し、目的地までの自車が走行する経路を案内する装置である。ナビゲーション装置2は、道路の車線の位置情報が含まれる高精度地図データを内蔵するようにしても良い。このナビゲーション装置2では、目的地が入力されると、自車の現在地(或いは任意に設定された出発地)から目的地までの案内経路が生成される。生成された案内経路の情報は、高精度地図データと合成されてHMIモジュール5のディスプレイに表示される。尚、目的地は、車両の乗員が車内で設定したものを用いてもよいし、或いは、ユーザー端末(例えば、携帯電話、スマートフォン)によりユーザーが設定した目的地を、無線通信を介して自車で受信し、受信した目的地を用いてもよい。また案内経路は、自車に備わるコントローラを用いたナビゲーション装置により算出してもよいし、或いは、車外のコントローラを用いたナビゲーション装置により算出してもよい。
車載制御ユニット3は、CPUやメモリを備えており、車載センサ1によって検出された各種の検出情報や、ナビゲーション装置2によって生成された案内経路情報、必要に応じて適宜入力されるドライバ入力情報を統合処理する。そして、この車載制御ユニット3は、階層処理により車両運動を制御するコントローラである。なお、「階層処理」とは、入力情報に対して複数の処理を順に(階層的に)実行して最終的な出力情報を演算することであり、上位階層の処理にて出力された出力値(演算値)が下位階層の処理での入力値となる関係になる。
この車載制御ユニット3は、目標車速プロファイルを含む目標軌跡を生成する自動運転コントローラ31と、生成された目標軌跡に基づいて車両運動を制御するための指令値を演算する車両運動コントローラ32と、を有している。ここで、第1制御周期にて演算を行う自動運転コントローラ31によって上位階層の処理を行い、第1制御周期よりも短い第2制御周期にて演算を行う車両運動コントローラ32によって下位階層の処理を行う。
自動運転コントローラ31では、車載センサ1やナビゲーション装置2からの入力情報や高精度地図データなどに基づき、目標車速プロファイルを含む目標軌跡を階層処理により生成する。ここで、「目標軌跡」とは、自車を自動運転走行させる際に目標とする走行軌跡であり、例えば、自車が車線幅内で走行する軌跡や、自車周囲の走行可能領域の中での走行する軌跡や、障害物を回避する軌跡などを含む。生成された目標車速プロファイルを含む目標軌跡の情報は車両運動コントローラ32に出力される。生成された目標軌跡の情報は、高精度地図データと合成されてHMIモジュール5のディスプレイに表示されるようにしてもよい。
車両運動コントローラ32では、目標車速プロファイルを含む目標軌跡の情報やドライバ操作による入力情報(以下、「ドライバ入力」という。)に基づいて自車を走行させるための制御指令値を演算する。演算された制御指令値はアクチュエータ4に出力される。なお、車両運動コントローラ32は、ドライバ入力の有無によって走行モードを調停し、調停結果に応じた制御指令値を演算する。
アクチュエータ4は、自車の直進走行/旋回走行/停止させるための制御アクチュエータであり、速度制御アクチュエータ41と、操舵制御アクチュエータ42と、を有する。なお、走行には、加速走行/定速走行/減速走行を含む。
速度制御アクチュエータ41は、車載制御ユニット3から入力された速度制御指令値に基づいて駆動輪へ出力する駆動トルク又は制動トルクを制御する。速度制御アクチュエータ41としては、例えば、エンジン車の場合にエンジンを用い、ハイブリッド車の場合にエンジンとモータ/ジェネレータを用い、電気自動車の場合にモータ/ジェネレータを用いる。また、制動トルクのみを制御するアクチュエータとしては、例えば、油圧ブースタや電動ブースタやブレーキモータアクチュエータなどを用いる。
操舵制御アクチュエータ42は、車載制御ユニット3から入力された操舵制御指令値に基づいて操舵輪の転舵角を制御する。なお、操舵制御アクチュエータ42としては、ステアリングシステムの操舵力伝達系に設けられる操舵モータなどを用いる。
HMIモジュール5は、自車のドライバを含む乗員と車載制御ユニット3の間で互いの意思や情報を伝達するためのインターフェイスである。HMIモジュール5は、例えば、乗員に自動運転制御状況などによる画像情報を表示するヘッドアップディスプレイやメータディスプレイ、アナウンス音声を出力するスピーカ、点灯や点滅により警告するランプ、乗員が入力操作を行う操作ボタンやタッチパネルなどから構成される。
[自動運転コントローラの制御ブロック構成(図2)]
自動運転コントローラ31は、図2に示すように、目標軌跡生成に必要な情報の取得処理部として、高精度地図データ記憶部311と、自己位置推定部312と、走行環境認識部313と、周囲物体認識部315と、を備えている。そして、目標軌跡を生成する階層処理部として、走行車線計画部316と、動作決定部317と、走行領域設定部318と、目標軌跡生成部319と、を備えている。
高精度地図データ記憶部311は、車外に存在する静止物体の三次元の位置情報(経度、緯度、高さ)が設定された高精度三次元地図データ(以下、「HDマップ」という)が格納された車載メモリである。高精度地図データの静止物体には、例えば、横断歩道、停止線、各種標識、分岐点、道路標示、信号機、電柱、建物、看板、車道やレーンの中心線、区画線、路肩線、道路と道路のつながりなどの様々な要素が含まれる。高精度地図データ記憶部311には、必ずしも上記の静止物体の全ての要素が含まれる必要はない。
自己位置推定部312は、入力情報に基づいて高精度地図上での自車の現在地(自己位置)を推定する。自己位置推定部312には、車載センサ1からのセンサ情報と、高精度地図データ記憶部311からのHDマップ情報などが入力される。そして、自己位置推定部312は、例えば、入力されたセンサ情報とHDマップ情報とをマッチングして自己位置を推定する。自己位置推定部312からは、走行環境認識部313へ自己位置情報が出力される。
走行環境認識部313は、入力情報と、自車走行環境の刻々と変化する動的な情報を用い、自車の走行環境を認識する。走行環境認識部313には、車載センサ1からのセンサ情報と、ナビゲーション装置2からの案内経路情報と、高精度地図データ記憶部311からのHDマップ情報と、自己位置推定部312からの自己位置情報などが入力される。そして、走行環境認識部313は、推定された自車の現在地を基準として自車両周囲領域の走行環境認識情報を演算する。走行環境認識部313からは、動作決定部317へ走行環境認識情報が出力される。
ここで、「動的な情報」とは、例えば、準静的データと準動的データと動的データを組み合わせた情報をいう。なお、準静的データとは、例えば、交通規制情報、道路工事情報、広域気象情報などを含むデータをいう。準動的データとは、例えば、事故情報、渋滞情報、狭域気象情報などを含むデータをいう。動的データとは、例えば、周辺車両情報、歩行者情報、信号情報などを含むデータをいう。これらの動的な情報は階層化され、変化する動的なデータほど更新頻度を高くするというように、各データの更新頻度を異ならせている。
周囲物体認識部315は、自車の周囲に存在する物体の位置、属性、挙動を検出もしくは予測する。また、周囲物体認識部315は、自車の周囲に存在する物体認識に基づいて、自車の走行領域から除外すべき車線領域として点群連結による一つの車線閉塞領域を認識する。周囲物体認識部315では、車載センサ1からのセンサ情報などが入力される。そして、周囲物体認識部315は、車線閉塞領域の開始点を認識すると、開始点からの点群データを車線進行方向に繋いで車線閉塞領域を拡張する。周囲物体認識部315からは、走行領域設定部318へ車線閉塞領域情報が出力される。
走行車線計画部316は、目的地までの案内経路上において、自車が走行すべき走行車線(以下、「目標車線」という)を計画する。走行車線計画部316には、ナビゲーション装置2からの案内経路情報と、高精度地図データ記憶部311からのHDマップ情報とが入力される。そして、走行車線計画部316は、経路案内情報から判断した目的地の方向やHDマップから目標車線を計画する。走行車線計画部316から次の階層の動作決定部317へは、目標車線情報が出力される。
動作決定部317は、目標車線に沿って走行したとき、自車が遭遇する事象の抽出し、それら事象に対する「自車の動作」を決定する。動作決定部317には、走行環境認識部313からの走行環境認識情報と、走行車線計画部316からの目標車線情報などが入力される。そして、動作決定部317は、目標車線と自車周辺の走行環境とを照合し、適切な自車の動作を決定する。ここで、「自車の動作」とは、発進、停止、加速、減速、右左折などの目標車線に沿って走行するために必要となる自車の動きをいう。動作決定部317から次の階層の走行領域設定部318へは、自車動作決定情報が出力される。
走行領域設定部318は、決定した自車動作により目標車線に沿って自車を走行させることが可能な走行可能領域を設定する。走行領域設定部318には、高精度地図データ記憶部311からのHDマップ情報と、動作決定部317からの自車動作決定情報と、周囲物体認識部315からの周囲物体認識情報などが入力される。そして、走行領域設定部318は、自車の動作情報と自車の周辺環境情報とを照合し、自車が走行することが可能な領域を設定する。例えば、自車周辺に駐車車列などの物体が存在したり工事区間が存在したりするときには、当該領域との干渉や接触を回避するような走行可能領域が設定される。走行領域設定部318から次の階層の目標軌跡生成部319へは、走行可能領域情報が出力される。
目標軌跡生成部319は、設定された走行可能領域内において自車の目標軌跡を生成する。目標軌跡生成部319には、走行領域設定部318からの走行可能領域情報などが入力される。そして、目標軌跡生成部319は、現在の自車の位置から任意に設定される目標位置まで、走行可能領域内を走行することを拘束条件とし、幾何学的な手法により車線変更を含めて目標軌跡を生成する。なお、目標軌跡生成部319は、例えば複合クロソイド曲線を用いて目標軌跡を生成してもよい。また、目標軌跡生成部319は、安全、法令順守、走行効率などの基準を満たした走行が可能な目標軌跡を生成してもよい。目標軌跡生成部319からは、車両運動コントローラ32へ目標軌跡情報が出力される。
[周囲物体認識部の詳細構成(図3)]
周囲物体認識部315(コントローラ)は、図3に示すように、物体認識部315aと、車線閉塞領域開始点認識部315bと、車線閉塞領域拡張部315cと、を有する。そして、周囲物体認識部315での必要情報を取得する車載センサとして、外部センサ11に備えるカメラ111、レーダー112、ライダー113(センサ)を有する。
カメラ111は、自車周辺の画像データを取得するための撮像センサである。このカメラは、例えば、前方認識カメラ、後方認識カメラ、右方認識カメラ、左方認識カメラなどを組み合わせることで構成され、撮影した画像や映像の解析を人工知能や画像処理用プロセッサを用いてリアルタイムで行う。これにより、カメラ111では、自車走行路上物体・車線・自車走行路外物体(道路構造物、先行車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)・自車走行路(道路白線、道路境界、停止線、横断歩道)・道路標識(制限速度)などを検知できる。なお、単眼カメラでは一般的に対象物までの距離の計測はできないが、複眼カメラを用いて異なる視点から同時に撮影を行うことによって、対象物までの距離を計測することも可能となる。
レーダー112は、発射した電波の反射信号を受信して物体の方向や距離の情報を取得する測距センサである。よって、レーダー112では、自車走行路上物体・自車走行路外物体(道路構造物、先行車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)などの位置を検知できると共に、各物体までの距離を検知できる。
ライダー113は、パルス状に発光するレーザー照射に対する散乱光を測定し、レーダー112よりも遠距離にある自車走行路上物体・自車走行路外物体などの方向や距離の情報を点群データ(物体の空間位置情報)として取得する測距センサである。ここで、ライダー113は、レーダー112の電波を光に置き換えたものであり、レーザーを使って可視スペクトル外の光のパルスを発射し、そのパルスが戻ってくる時間を計測する。そして、ある特定のパルスが反射した方向と距離を、ライダーユニットを中心とした3D環境の中の点群データとして記録する。なお、ライダー113は、例えば、1秒あたり100万回を超えるパルス走査回数の送受信が可能であるため、レーザパルスからの点群データはポイントクラウドと呼ばれるように精細であり、3D環境とその中のオブジェクトの輪郭を描き出すことも可能である。
物体認識部315aは、カメラ111とレーダー112とライダー113から取得されるデータに基づいて自車の走行路上に存在している物体の認識処理を行う。この物体の認識処理では、物体が自車の走行障害とならない移動物体(例えば、走行車両や一時停止車両など)ではなく、物体が自車の走行障害となる静止物体(例えば、駐車車両や工事区間を示す工事看板やパイロンなど)であるとの認識処理を行う。
車線閉塞領域開始点認識部315bは、自車の走行障害となる静止物体によって車線が閉塞されている領域である車線閉塞領域の開始点を認識する。この場合、ライダー113により取得された点群データに基づいて車線閉塞領域の開始点を認識する第1開始点認識パターンと、物体認識部315aからの物体認識結果に基づいて車線閉塞領域の開始点を認識する第2開始点認識パターンと、を併用している。
第1開始点認識パターンでは、車線を車線進行方向に一定間隔により区切って複数のビン分割区間を設定し、複数のビン分割区間のうち、集合している点群データによって車線幅方向に障害物による所定の閉塞幅を有するビン分割区間を、車線閉塞候補として認識する。続いて、車線閉塞候補に存在する点群データのうち、自車の目標軌跡に最も近い位置のデータポイントを選択し、選択したデータポイントの地点を、車線閉塞領域の開始点と認識する。ここで、車線閉塞領域の開始点から車線幅方向に存在する点群データを連結して後端面領域を設定し、設定した後端面領域と自車から遠い側の車線境界とのオーバーラップ量が所定閾値以上である場合、認識された開始点を「駐車車両による車線閉塞領域の開始点」に設定する。
第2開始点認識パターンでは、物体認識部315aからの物体認識処理により認識された物体が自車の走行障害となる静止物体であると、静止物体の後端面領域のうち、自車の目標軌跡に最も近い位置を車線閉塞領域の開始点と認識する。ここで、静止物体とは、駐車車両や工事区間などをいう。
車線閉塞領域拡張部315cは、車線閉塞領域の開始点を起点として車線進行方向にライダー113により取得された点群データを連結することで車線閉塞領域を拡張する。車線閉塞領域を拡張する場合、ライダー113により点群データを取得できれば、取得した点群データに基づいて拡張処理が行われるもので、車線閉塞領域の拡張処理を実行する際に個々の物体認識を必要としない。
車線閉塞領域の開始点を起点として車線閉塞領域を拡張する場合、連結予定の2つのデータポイントが車線進行方向に乖離する縦乖離距離を算出する。そして、縦乖離距離が所定閾値未満という縦乖離距離条件が成立すると、2つのデータポイントを車線進行方向に連結して車線閉塞領域を拡張する。また、縦乖離距離が所定閾値以上で縦乖離距離条件が不成立であると、2つのデータポイントの連結による車線閉塞領域拡張はしない。なお、「所定閾値」は、例えば、2台の駐車車両の間に走行車線計画に基づいて車線変更による目標軌跡を駐車車両との接触や干渉を生じることなく描くことができる車間距離相当値に設定される。つまり、例えば、駐車車両が連なっている駐車車列の場合は、縦乖離距離が所定閾値未満という縦乖離距離条件が成立し、車線閉塞領域の拡張が許容される。複数の駐車車列が離れて存在する場合は、縦乖離距離が所定閾値以上となり、車線閉塞領域は離れた駐車車列毎にそれぞれ設定される。
ここで、車線閉塞領域の開始点を起点として車線閉塞領域を拡張する場合、連結予定の2つのデータポイントが車線幅方向であって自車の走行車線に近づく側に乖離する横乖離距離を算出する。そして、横乖離距離が所定値以上であると、縦乖離距離条件の成立/不成立にかかわらず点群データの連結対象から除外する。また、車線閉塞領域の開始点を起点として車線閉塞領域を拡張する場合、次に連結を予定しているデータポイントを取得した物体属性を判定する。そして、物体属性が静止物体(駐車車両や工事区間など)と判定されると点群データの連結対象とし、物体属性が移動物体(一時停止車両)と判定されると点群データの連結対象から除外する。さらに、車線閉塞領域の開始点を認識できないシーンのときに車線閉塞領域を拡張する場合は、過去に認識された車線閉塞領域が存在すると、過去の車線閉塞領域をベースとし、車線進行方向に点群データを連結する車線閉塞領域の拡張処理を行う。
車線閉塞領域拡張部315cにより周囲物体認識情報として車線閉塞領域情報が生成されると、車線閉塞領域拡張部315cから走行領域設定部318へ車線閉塞領域情報が出力される。走行領域設定部318では、例えば、自車周辺に駐車車列などが存在したり工事区間が存在したりすることで車線閉塞領域情報を入力すると、車線閉塞領域との干渉や接触を回避するような走行可能領域が設定される。次の目標軌跡生成部319では、走行領域設定部318では設定された走行可能領域内において自車の目標軌跡が生成される。つまり、走行車線計画に基づいて車線変更が要求される場合、車線閉塞領域を除外した走行可能領域内に目標軌跡が生成されることになる。
[周囲物体認識制御処理構成(図4)]
ステップS1では、開始に続き、ライダー113から点群データを取得し、ステップS2へ進む。
ステップS2では、S1での点群データの取得に続き、車線を車線進行方向に区切った複数のビン分割区間のうち、集合している点群データによって車線幅方向に閉塞幅を有するビン分割区間を、車線閉塞候補として認識し、ステップS3へ進む。
ステップS3では、S2での車線閉塞候補認識に続き、車線閉塞の要因は駐車車両の後端か否かを判断する。YES(車線閉塞要因は駐車車両後端である)の場合はステップS9へ進み、NO(車線閉塞要因は駐車車両後端でない)の場合はステップS4へ進む。
ステップS4では、S3での車線閉塞要因は駐車車両後端でないとの判断に続き、車線閉塞の要因は工事区間であるか否かを判断する。YES(車線閉塞要因は工事区間である)の場合はステップS9へ進み、NO(車線閉塞要因は工事区間でない)の場合は終了へ進む。
ステップS5では、開始に続き、カメラ111とレーダー112とライダー113により取得した入力情報に基づき、自車の走行路上に存在している静止物体を認識する物体認識処理を行い、ステップS6へ進む。
ステップS6では、S5での物体認識に続き、認識された静止物体が自車の走行障害となる静止車両であるか否かを判断する。YES(静止車両である)の場合はステップS7へ進み、NO(静止車両でない)の場合はステップS8へ進む。
ステップS7では、S6での静止車両であるとの判断に続き、駐車車両であるか否かを判断する。YES(駐車車両である)の場合はステップS9へ進み、NO(駐車車両でない)の場合はステップS8へ進む。
ステップS8では、S6での静止車両でないとの判断、或いは、S7での駐車車両でないとの判断に続き、認識された物体が工事区間を示す工事看板やパイロンなどであるか否かを判断する。YES(工事区間である)の場合はステップS9へ進み、NO(工事区間でない)の場合は終了へ進む。
ステップS9では、S3又はS4又はS7又はS8でのYESとの判断に続き、車線閉塞領域の開始点を認識し、ステップS10へ進む。
ここで、車線閉塞要因が駐車車両の後端、又は、車線閉塞要因が工事区間である第1開始点認識パターンでは、車線閉塞候補に存在する点群データのうち、自車の目標軌跡に最も近い位置のデータポイントを選択し、選択したデータポイントの地点を、車線閉塞領域の開始点と認識する。続いて、車線閉塞領域の開始点から車線幅方向に存在する点群データを連結して後端面領域を設定し、設定した後端面領域と自車から遠い側の車線境界とのオーバーラップ量が所定閾値以上である場合、認識された開始点を「駐車車両による車線閉塞領域の開始点」に設定する。一方、物体認識結果が駐車車両又は工事区間である第2開始点認識パターンでは、駐車車両又は工事区間を示す物体の後端面領域のうち、自車の目標軌跡に最も近い位置を車線閉塞領域の開始点と認識する。
ステップS10では、S9での車線閉塞領域の開始点の認識、或いは、S11での車線閉塞領域の拡張に続き、ライダー113により取得される点群データに連結可能な点が存在するか否かを判断する。YES(点群データに連結可能点が存在する)の場合はステップS11へ進み、NO(点群データに連結可能点が存在しない)の場合は終了へ進む。
ステップS11では、S10での点群データに連結可能点が存在するとの判断に続き、点群データの連結による車線閉塞領域の拡張処理を実行し、ステップS10へ戻る。つまり、点群データに連結可能点が存在する間は、点群データの連結による車線閉塞領域の拡張処理の実行が継続される。
次に、「背景技術の課題及び課題解決方策」を説明する。そして、実施例1の作用を、「車線閉塞領域の開始点認識作用」、「点群連結による車線閉塞領域拡張作用」に分けて説明する。
[背景技術の課題及び課題解決方策(図5~図8)]
車線閉塞領域を設定する背景技術は、例えば、図5に示すように、カメラやレーダーやライダーから取得されるデータに基づいて自車の走行路上に存在している物体の認識処理を行う。この物体の認識処理では、カメラからの画像データとレーダーやライダーからの測距データを照合し、自車の走行障害となる駐車車両や工事区間を示す工事看板やパイロンなどの静止物体をハザードとして認識する。続いて、静止物体が認識されると、静止物体の外形輪郭線を周囲物体との干渉回避幅だけ拡大し、拡大した輪郭線に囲まれる領域を車線閉塞領域として認識する。続いて、認識された車線閉塞領域を除いた領域を走行可能領域に設定し、走行可能領域内に走行車線計画を立てるのが一般的である。
上記背景技術において、図6に示すように、右車線LRを走行する自車Vが、2台の駐車車両PV1,PV2が駐車車列を作っている左車線LLへ車線変更するための目標軌跡Ttを生成するシーン例を想定する。この場合、駐車車列の1台目の駐車車両PV1に対しては自車Vからの物体認識に基づいて車線閉塞領域LSAが設定される。しかし、駐車車列の2台目の駐車車両PV2以降の車両は自車Vから死角となっており、駐車車両PV2として認識することも困難なことが多く、車線閉塞領域LSAは設定されない。駐車車両PV2のように、物体の死角に存在する物体は、物体認識の少なくとも一部は死角により隠れているため、正しく物体認識することが困難であった。その場合、自車Vからの死角に隠れた駐車車両PV2の存在を考慮しない目標軌跡Ttを生成してしまう、という課題があった。
上記課題に対して、例えば、2台目以降の駐車車両など、自車から死角となり物体認識が困難な奥の障害物に関しては、物体認識を必要条件としなくても、車線閉塞領域に奥の障害物を含めることができれば課題を解決できる点に着目した。そして、本発明者等は、上記着目点に基づいて解決手法を検証した結果、自車から死角となる物体については、物体の全体形状を認識できなくても、物体の空間位置情報を取得できると、物体の空間位置情報を用いて車線閉塞領域を拡張することが可能であることを知見した。
上記知見に基づいて本開示は、周囲環境の点群データPn(物体の空間位置情報の一例)を取得するライダー113と、ライダー113により取得された点群データPnにより、自車Vの周囲に存在する物体を認識する周囲物体認識部315と、を備える。周囲物体認識部315は、以下の手順により車線閉塞領域LSAを認識する。点群データPnにより、自車Vの走行障害となる物体によって車線が閉塞されている領域である車線閉塞領域LSAを認識する。そして、車線閉塞領域LSAの開始点SPを起点として車線進行方向に点群データPnを連結することにより、車線閉塞領域LSAを拡張する、という課題解決手段を採用した。
即ち、図7(a)に示すように、点群データ(P1,…,P9)により、自車Vの走行障害となる物体(駐車車両PV1,PV2)によって左車線LLが閉塞されている領域である車線閉塞領域LSAの開始点SP(=データポイントP3)を認識する。続いて、図7(b)に示すように、車線閉塞領域LSAの開始点SPを起点として車線進行方向に点群データ(P4,…,P9)を逐次連結することで車線閉塞領域LSAを拡張する。そして、図7(c)に示すように、二台目の駐車車両PV2など、死角となり物体認識が困難な奥の障害物に関して、ライダー113で取得される点群データ(P4,…,P9)を車線進行方向に繋げることで、一つの拡張された車線閉塞領域LSAとして認識する。
上記周囲物体認識作用において、図8に示すように、右車線LRを走行する自車Vが、2台の駐車車両PV1,PV2が駐車車列を作っている左車線LLへ車線変更するための目標軌跡Ttを生成する背景技術と同様のシーン例を想定する。この場合、駐車車列の2台目の駐車車両PV2は自車Vから死角となっているが、駐車車列の1台目の駐車車両PV1と2台目の駐車車両PV2をまとめて1つの点群データ(P1,…,P9)による駐車車列領域PVAが描かれることになる。そして、描かれた駐車車列領域PVAを、左車線LLの車線幅の全域まで拡大することで、車線閉塞領域LSAが設定されることになる。よって、自車Vの目標軌跡Ttを生成する際、自車Vからの死角に隠れることで物体認識が困難である駐車車両PV2の存在が考慮されることになり、駐車車列領域PVAより先で左車線LLへ車線変更する目標軌跡Ttが生成される。
即ち、右車線LRを走行する自車Vの左車線LLを閉塞する駐車車両PV1,PV2が存在するシーンにおいて、駐車車両PV1,PV2それぞれを区別して認識しなくても、右車線LRから左車線LLへの車線変更状況に適した自車Vの目標軌跡Ttが生成されることになる。この結果、自車Vの走行予定車線を閉塞する物体が存在する様々なシーンにおいて、物体それぞれを区別して認識しなくても、走行状況に適した走行支援(走行車線計画や目標軌跡生成など)を実行することができる。
[車線閉塞領域の開始点認識作用(図9、図10)]
車線閉塞領域LSAの開始点SPの認識作用は、点群データPnに基づく第1開始点認識パターンと、物体認識結果に基づく第2開始点認識パターンとが併用される。まず、点群データPnに基づく第1開始点認識パターンについて説明する。
ライダー113により取得された点群データPnに基づく第1開始点認識パターンのうち、駐車車両後端による場合は、図4のフローチャートにおいて、S1→S2→S3→S9へと進む流れにより車線閉塞領域LSAの開始点SPが認識される。また、ライダー113により取得された点群データPnに基づく第1開始点認識パターンのうち、工事区間による場合は、図4のフローチャートにおいて、S1→S2→S3→S4→S9へと進む流れにより車線閉塞領域LSAの開始点SPが認識される。
この第1開始点認識パターンでは、図9に示すように、左車線LLを車線進行方向に一定間隔により区切って複数のビン分割区間BD(n)が設定される。そして、複数のビン分割区間BD(n)のうち、集合している点群データP1,P2,P2によって車線幅方向に障害物OBによる所定の閉塞幅SWを有するビン分割区間BD(7)が、車線閉塞候補LSCとして認識される。
ここで、「ビン分割(binning)」とは、機械学習などでよく行われる前処理の一つであり、データを境界で区切りカテゴリデータ化することをいう。「閉塞幅SW」は、左車線LLの車線幅LWとし、右境界からの幅を第1スペースS1とし、左境界からの幅を第2スペースS2としたとき、SW=LW-(S1+S2)の式にて計算する。そして、閉塞幅SWが障害物判定閾値以上であると、閉塞幅SWを有するビン分割区間BD(7)が車線閉塞候補LSCとして認識される。これにより、左車線LLに存在する移動物体及び静止物体の全ての物体を対象として車線閉塞候補を特定する処理に比べ、演算負荷を低減しつつ、車線閉塞領域LSAの開始点SPの認識に必要な車線閉塞候補LSCを特定することができるようになる。
次に、図10(a)に示すように、車線閉塞候補LSCに存在する点群データPnのうち、自車Vが走行を予定している目標軌跡Ttに最も近い位置のデータポイントを選択し、選択したデータポイントの地点(点A)を、車線閉塞領域LSAの開始点SPと認識する。これにより、物体の後端部形状を点群データPnにより把握した上で車線閉塞領域の開始点を設定する場合に比べ、ライダー113により点群データPnを取得する走査回数を低減しつつ、車線閉塞領域LSAの開始点SPを設定することができるようになる。
ここで、図10(b)に示すように、車線閉塞領域LSAの開始点SPから車線幅方向に存在する点群データPnを連結して後端面領域RAを設定する。そして、図10(c)に示すように、設定した後端面領域RAと自車Vから遠い側の車線境界とのオーバーラップ量OAが所定閾値以上の場合、認識された開始点SAを「駐車車両PVによる車線閉塞領域LSAの開始点SA」に設定する。これにより、点群データPnに基づいて車線閉塞領域LSAの開始点SAを認識する際、道路上に存在する障害物から駐車車両PVを切り分けて「駐車車両PVによる車線閉塞領域LSAの開始点SA」を設定することができる。即ち、後端面領域RAのオーバーラップ量OAを用いた判定としているため、例えば、工事現場を示す看板やポールなど、道路上に存在する駐車車両PV以外の物体を駐車車両PVの後端部と誤認識することが抑制される。
次に、物体認識結果に基づく第2開始点認識パターンについて説明する。物体認識部315aからの物体認識結果に基づく第2開始点認識パターンのうち、駐車車両による場合は、図4のフローチャートにおいてS5→S6→S7→S9へと進む流れにより、「駐車車両による車線閉塞領域LSAの開始点SP」が認識される。また、物体認識部315aからの物体認識結果に基づく第2開始点認識パターンのうち、工事区間による場合は、図4のフローチャートにおいてS5→S6→S7→S8→S9へと進む流れ、又は、図4のフローチャートにおいてS5→S6→S8→S9へと進む流れにより「工事区間による車線閉塞領域LSAの開始点SP」が認識される。
このように、第2開始点認識パターンでは、物体認識部315aからの物体認識処理により認識された物体が自車の走行障害となる静止物体であると、静止物体が静止車両であるか否かが判断され、静止車両が駐車車両であるか否かが判断される。そして、駐車車両と認識した場合、車両後端面領域のうち、自車Vの目標軌跡に最も近い位置が「駐車車両による車線閉塞領域LSAの開始点SP」と認識される。一方、工事区間と判断された場合、工事区間を示す物体の後端面領域のうち、自車Vの目標軌跡に最も近い位置が「工事区間による車線閉塞領域LSAの開始点SP」と認識される。これにより、車線閉塞領域LSAの開始点SPを認識する際、予め物体認識結果を取得できる場合、ライダー113からの点群データPnを用いることなく、物体認識結果を用いて車線閉塞領域LSAの開始点SPを設定することができることになる。
なお、車線閉塞領域の開始点認識作用においては、上記内容に加え、下記の点を考慮した制御を行う。
・駐車車両と認識した場合、車両後端面領域に限らず、駐車車両の外周面であれば、前端面領域や側面領域に基づいて車線閉塞領域の開始点を認識するようにしても良い。
・車両のハザードがついている場合は駐車車両とみなす確率を上げる。
・右側車線が混んでいる場合は駐車車両とみなす確率を上げない。
・車両のブレーキランプが点灯している場合は駐車車両とみなす確率を下げる。
・車両の左境界のオーバーラップ量が大きい場合に駐車車両とみなす確率を上げる。さらに、路肩幅に応じて確率の上げ方を変える。
・画像処理に基づいて、三角板、発煙筒、パトカーの電子看板案内、交通管理者などを認識した場合に、駐車車両とみなす確率を上げる。
・空間位置情報の地図上における分布から駐車車両を認識する。
・駐車車両の認識に通信を用いる。
・少なくとも走行状態にある車両を駐車車両と判定しない。
・前方車両が一定時間以上静止状態で、右側車線が空いている場合に駐車車両とみなす確率を上げる。
・画像処理に基づいて、工事看板やパイロンによる車線封鎖を認識したら、車線閉塞領域の開始点とする。
・地図上における空間位置情報の分布から工事区間の開始を認識する。
・左路端から車線の右側まで、車線全体を塞ぐような面が検出できた場合は、工事区間による封鎖であると認識する。
[点群連結による車線閉塞領域拡張作用(図11~図14)]
車線閉塞領域LSAの開始点SPが設定された後、ライダー113からの点群データPnの連結による車線閉塞領域LSAの拡張作用は、図4のフローチャートにおいて、S9からS10→S11へと進み、S10→S11へと進む流れを繰り返すことで行われる。
まず、車線閉塞領域LSAの拡張において、点群データPnから、同一車線の点で、かつ、点同士の車線進行方向に乖離する縦乖離距離Lxが所定閾値B未満の点を連結する。具体的には、車線閉塞領域LSAの開始点SAを起点として車線閉塞領域LSAを拡張する場合、図11に示すように、連結予定の点群データPnのうち、隣接していなく乖離している2つのデータポイントP6とP7、2つのデータポイントP9とP10が車線進行方向に乖離する縦乖離距離Lx1,Lx2が算出される。そして、縦乖離距離Lx1については、所定閾値B未満という縦乖離距離条件が成立するため、第1駐車車両PV1と第2駐車車両PV2による2つのデータポイントP6とP7を車線進行方向に連結することで車線閉塞領域LSAが拡張される。一方、縦乖離距離Lx2については、所定閾値Bを超えていて縦乖離距離条件が成立しないため、第2駐車車両PV2と一時停止車両SVによる2つのデータポイントP9とP10は車線進行方向に連結されない。これにより、狭い車間距離にて複数台の駐車車両が並んでいる駐車車列や工事区間の場合、開始点SPを起点とする点群連結により車線閉塞領域LSAを拡張することができることになる。また、駐車車列の先頭車両から離れた位置に一時停止車両SVが存在する場合などにおいては、縦乖離距離条件が不成立になることで、車線閉塞に含むことができない領域までの車線閉塞領域LSAの拡張を防止することができることになる。
次に、開始点SPを起点として車線閉塞領域LSAを拡張する場合、点群データP3~P6と点群データP7~P10との横乖離距離Lyが所定値C以上であると連結対象から除外する。具体的には、車線閉塞領域LSAの開始点SAを起点として車線閉塞領域LSAを拡張する場合、図12に示すように、連結予定の2つの点群データP3~P6と点群データP7~P10とが車線幅方向であって自車Vの走行車線(右車線LR)に近づく側に乖離する最大の横乖離距離Lyが算出される。そして、横乖離距離Lyが所定値C(車線幅方向のマージン分)以上であると、縦乖離距離条件の成立/不成立にかかわらず一時停止車両SVによる点群データP7~P10が、駐車車両PVによる点群データP3~P6との連結対象から除外される。これにより、縦乖離距離条件が成立する場合、動き出す可能性がある一時停止車両SVを駐車車両PVと誤認し、点群連結により車線閉塞領域LSAを拡張するのを防止することができることになる。即ち、自車Vの走行車線(右車線LR)に近づく側に乖離する静止車両が存在する場合、静止車両は駐車車両PVではなく左車線LLの車線中央部位置への一時停止車両SVである可能性が高い。
次に、開始点SPを起点として車線閉塞領域LSAを拡張する場合、次に連結を予定している点群データP10,P11を取得した物体属性が移動物体であると連結対象から除外する。具体的には、車線閉塞領域LSAの開始点SAを起点として車線閉塞領域LSAを拡張する場合、図13に示すように、点群データP1~P9の次に連結を予定している点群データP10,P11を取得した物体の属性が判定される。そして、物体の属性が静止物体(駐車車両PV)と判定されると点群データP10,P11が連結対象とされる。一方、物体の属性が移動物体(一時停止車両SV)と判定されると点群データP10,P11が連結対象から除外される。これにより、動き出す可能性が高い一時停止車両SVを駐車車両PVと誤認識し、車線閉塞領域LSAを拡張してしまうことを防止することができることになる。この結果、自車Vが誤って一時停止車両SVの前方に車線変更を行おうとすることや一時停止車両SVの走行を阻害することを抑制することができる。
次に、車線閉塞領域LSAを拡張する場合、起点となる開始点SPが認識できないとき、過去の車線閉塞領域LSA(n-1)をベースとして車線閉塞領域LSA(n)の拡張処理を行う。具体的には、図14に示すように、自車Vが駐車車列PV1,PV2,PV3,PV4の横を走行していて車線閉塞領域LSAの開始点SPを認識できないシーンのときに車線閉塞領域LSAを拡張する場合、過去に認識された車線閉塞領域LSA(n-1)が存在すると、過去の車線閉塞領域LSA(n-1)がベースとされる。そして、自車Vが駐車車列PV1,PV2,PV3,PV4に到達する前の過去の車線閉塞領域LSA(n-1)のデータポイントP9から車線進行方向に点群データP10~P15を連結し、1つの領域による車線閉塞領域LSA(n)とする拡張処理が行われる。これにより、車線閉塞領域LSAの開始点SPを認識できないシーンのとき、開始点SPを過去の車線閉塞領域LSA(n-1)に置き換えて用いることにより、車線閉塞領域LSA(n)の拡張処理を継続することができる。これによって、ライダー113による点群データPnの取得範囲を超える長い駐車車列の場合や長距離にわたる工事区間の場合であって、既に設定されている車線閉塞領域LSA(n-1)の横を自車Vが走行するとき、車線閉塞領域LSA(n-1)を拡張させた1つの領域による車線閉塞領域LSA(n)を設定することができることになる。
なお、点群連結による車線閉塞領域拡張作用においては、上記内容に加え、下記の点を考慮した制御を行う。
・車線閉塞領域LSAの拡張では、空間位置情報の分布を基に連結可否判断を行う。
・車線縦方向の距離が閾値以上の空間位置情報は連結しない。
・車線横方向の位置が閾値以上の空間位置情報(及び周辺の空間位置情報)は連結しない。
・物体認識結果及び通信、その他の手段によって、物体の種類・状態に関する情報が取得可能な場合、物体近傍の空間位置情報と関連付けを行い、連結可否判断に反映する。
・連結可否判断の閾値を動的に変更する。
・車線閉塞の要因によって連結可否判断の閾値を分ける。例えば、工事区間だったらパイロン間の距離が長いことが想定されるので距離の閾値を大きくする。
・過去の車線閉塞領域に対して現在の空間位置情報を連結して領域拡張する場合、過去の車線閉塞領域から移動体が発生した場合、過去の車線閉塞領域を使用しない。
以上説明したように、実施例1の自動運転車両ADにおける周囲物体認識方法及び周囲物体認識装置にあっては、下記に列挙する効果を奏する。
(1) 周囲環境の点群データPn(物体の空間位置情報の一例)を取得するセンサ(ライダー113)と、センサ(ライダー113)により取得された点群データPnにより、自車Vの周囲に存在する物体を認識するコントローラ(周囲物体認識部315)と、を備える周囲物体認識方法において、コントローラ(周囲物体認識部315)は、点群データPnにより、自車Vの走行障害となる物体(駐車車両PV1,PV2)によって車線(左車線LL)が閉塞されている領域である車線閉塞領域LSAを認識し、車線閉塞領域LSAの開始点SPを起点として車線進行方向に点群データPnを連結することにより、車線閉塞領域LSAを拡張する(図8)。
このため、自車Vの走行予定車線を閉塞する物体(駐車車両PV1,PV2)が存在するシーンにおいて、物体(駐車車両PV1,PV2)それぞれを区別して認識しなくても、走行状況に適した走行支援を実行する周囲物体認識方法を提供することができる。
(2) 車線閉塞領域LSAの開始点SPを認識する際、車線を車線進行方向に一定間隔により区切って複数のビン分割区間BD(n)を設定し、複数のビン分割区間BD(n)のうち、集合している点群データPnによって車線幅方向に障害物OBによる所定の閉塞幅SWを有するビン分割区間BD(7)を、車線閉塞候補LSCとして認識する(図9)。
このため、自車Vの走行予定車線に存在する移動物体及び静止物体の全ての物体を対象として車線閉塞候補を特定する処理に比べ、演算負荷を低減しつつ、車線閉塞領域LSAの開始点SPの認識に必要な車線閉塞候補LSCを特定することができる。
(3) 車線閉塞候補LSCに存在する点群データPnのうち、自車Vの目標軌跡Ttに最も近い位置のデータポイントP3を選択し、選択したデータポイントP3の地点Aを、車線閉塞領域LSAの開始点SPと認識する(図10)。
このため、物体の後端部形状を点群データPnにより把握した上で車線閉塞領域の開始点を設定する場合に比べ、点群データPnを取得する走査回数を低減しつつ、車線閉塞領域LSAの開始点SPを設定することができる。
(4) 車線閉塞領域LSAの開始点SPから車線幅方向に存在する点群データPnを連結して後端面領域RAを設定し、設定した後端面領域RAと自車Vから遠い側の車線境界とのオーバーラップ量OAが所定閾値以上である場合、認識された開始点SPを駐車車両PVによる車線閉塞領域LSAの開始点SPに設定する(図10)。
このため、点群データPnに基づいて車線閉塞領域LSAの開始点SAを認識する際、道路上に存在する障害物から駐車車両PVを切り分けて「駐車車両PVによる車線閉塞領域LSAの開始点SA」を設定することができる。
(5) センサ(ライダー113)により取得される空間位置情報(点群データPn)を含んで車載センサ(カメラ111、レーダー112)から取得される入力情報に基づいて自車Vの走行路上に存在している物体の認識処理を行い、物体の認識処理により認識された物体が自車Vの走行障害となる静止物体(駐車車両、工事区間など)であると認識した場合に、静止物体の後端面領域のうち自車Vの目標軌跡Ttに最も近い位置を車線閉塞領域LSAの開始点SPと認識する(図4のS5~S9)。
このため、車線閉塞領域LSAの開始点SPを認識する際、予め物体認識結果を取得できる場合、点群データPnを用いることなく、物体認識結果を用いて車線閉塞領域LSAの開始点SPを設定することができる。
(6) 車線閉塞領域LSAの開始点SPを起点として車線閉塞領域LSAを拡張する場合、連結予定の2つのデータポイントP6,P7が車線進行方向に乖離する縦乖離距離Lx1を算出し、縦乖離距離Lx1が所定閾値B未満という縦乖離距離条件が成立すると、2つのデータポイントP6,P7を車線進行方向に連結して車線閉塞領域LSAを拡張する(図11)。
このため、駐車車列や工事区間の場合、開始点SPを起点とする点群連結により車線閉塞領域LSAを拡張することができるとともに、車線閉塞に含むことができない領域までの車線閉塞領域LSAの拡張を防止することができる。
(7) 車線閉塞領域LSAの開始点SPを起点として車線閉塞領域LSAを拡張する場合、連結予定の2つの点群データP3~P6と点群データP7~P10が車線幅方向であって自車Vの走行車線に近づく側に乖離する横乖離距離Lyを算出し、横乖離距離Lyが所定値C以上であると、縦乖離距離条件の成立/不成立にかかわらず点群データP7~P10を点群データP3~P6との連結対象から除外する(図12)。
このため、縦乖離距離条件が成立する場合、動き出す可能性がある一時停止車両SVを駐車車両PVと誤認し、点群連結により車線閉塞領域LSAを拡張するのを防止することができる。
(8) 車線閉塞領域LSAの開始点SPを起点として車線閉塞領域LSAを拡張する場合、次に連結を予定しているデータポイントP10,P11を取得した物体属性を判定し、物体属性が静止物体と判定されると点群データPnの連結対象とし、物体属性が移動物体と判定されると点群データPnの連結対象から除外する(図13)。
このため、動き出す可能性が高い一時停止車両SVを駐車車両PVと誤認識し、車線閉塞領域LSAを拡張してしまうことを防止することができる。
(9) 車線閉塞領域LSAの開始点SPを認識できないシーンのときに車線閉塞領域LSAを拡張する場合、過去に認識された車線閉塞領域LSA(n-1)が存在すると、過去の車線閉塞領域LSA(n-1)をベースとし、車線進行方向に点群データPnを連結する車線閉塞領域LSA(n)の拡張処理を行う(図14)。
このため、点群データPnの取得範囲を超える長い駐車車列の場合や長距離にわたる工事区間の場合であって、既に設定されている車線閉塞領域LSA(n-1)の横を自車Vが走行するとき、車線閉塞領域LSA(n-1)を拡張させた1つの領域による車線閉塞領域LSA(n)を設定することができる。
(10) 周囲環境の点群データPn(物体の空間位置情報の一例)を取得するセンサ(ライダー113)と、センサ(ライダー113)により取得された点群データPnにより、自車Vの周囲に存在する物体を認識するコントローラ(周囲物体認識部315)と、を備える周囲物体認識装置において、コントローラ(周囲物体認識部315)は、点群データPnにより、自車Vの走行障害となる物体(駐車車両PV1,PV2)によって車線(左車線LL)が閉塞されている領域である車線閉塞領域LSAを認識する車線閉塞領域開始点認識部315bと、車線閉塞領域LSAの開始点SPを起点として車線進行方向に点群データPnを連結することにより、車線閉塞領域LSAを拡張する車線閉塞領域拡張部315cと、を有する(図3)。
このため、自車Vの走行予定車線を閉塞する物体(駐車車両PV1,PV2)が存在するシーンにおいて、物体(駐車車両PV1,PV2)それぞれを区別して認識しなくても、走行状況に適した走行支援を実行する周囲物体認識装置を提供することができる。
以上、本開示の周囲物体認識方法及び周囲物体認識装置を、実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
実施例1では、周囲環境の物体の空間位置情報を取得するセンサとして、点群データPnを取得するライダー113を用いる例を示した。しかし、周囲環境の物体の空間位置情報を取得するセンサとしては、ライダーに限られるものではなく、レーダーや組み合わせ測距センサなどによる例であっても良い。
実施例1では、自車Vが右車線LRを走行していて左車線LLに車線変更する際に左車線LLに障害物が存在する場合に車線閉塞領域を設定する例を示した。しかし、自車の走行車線上に障害物が存在する場合に車線閉塞領域を設定し、設定された車線閉塞領域を迂回するように、車線閉塞領域の手前と先で自車を車線変更する例であっても良い。さらに、自車の走行車線に隣接する車線上に障害物が存在する場合に車線閉塞領域を設定し、車線閉塞領域の区間で自車と他車が競合する場合に先行車両を決定する例としても良い。
実施例1では、本開示の周囲物体認識方法及び周囲物体認識装置を、目標軌跡に沿って走行するように速度及び舵角による車両運動が制御される自動運転車両ADに適用する例を示した。しかし、本開示の周囲物体認識方法及び周囲物体認識装置は、自動運転車両に限らず、オートクルーズ機能やレーンキープ機能などを備え、少なくともステアリング操作/アクセル操作/ブレーキ操作の何れか一つの運転操作を支援する運転支援車両に対しても適用することができる。要するに、走行ルート生成や車線変更制御やそれ以外の制御において、自車が走行する車線の周囲物体情報を入力情報として用いる制御システムを搭載した車両であれば適用できる。