JP7276771B2 - 多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法 - Google Patents

多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法に関する。
表面に直径がミクロン又はナノメーターオーダーの細孔を有し、高い比表面積を有する多孔質炭素は、吸着材として有用である。この多孔質炭素の製造方法としては、例えばフェノール樹脂等を炭素原料として、水蒸気やアルカリ性物質により賦活して比表面積を増大させる方法(特開2012-41199号公報)、有機質樹脂を酸化マグネシウム等の酸化物(鋳型粒子)と混合し炭素化した後、上記酸化物を取り除く方法(特開2016-41656号公報)などが挙げられる。
上記従来の多孔質炭素の製造方法では、原料を炭素化する工程に加えて、アルカリ性物質による賦活処理や鋳型粒子の除去処理を行う工程が必要であり、製造効率が低下すると共に製造コストも上昇する。
上記従来の多孔質炭素の製造方法では、炭素を浸食処理することでその表面に空隙を形成する。このような方法にあっては、比表面積は概ね浸食の程度に比例する。一方、比表面積を大きくすべく浸食の程度を大きくすると、内部に形成される空間も大きくなり、多孔質炭素自体の嵩が増す。このように嵩の増した、つまり嵩密度の低下した多孔質炭素では、単位質量当たりの比表面積が大きくなったとしても、単位体積当たりの比表面積はむしろ減少する傾向にある。
ここで、多孔質炭素の使用状態を考えると、例えば蓄電池に用いる場合であれば、多孔質炭素は一定体積の容器に多孔質炭素を充填して用いられる。つまり、多孔質炭素には単位質量当たりの比表面積が大きいこともさることながら、単位体積当たりの比表面積が大きいことが求められる。このため、多孔質炭素は嵩密度が大きいことが好ましい。
さらに、嵩密度の低下は多孔質炭素の強度の低下を意味するから、耐久性の観点からも多孔質炭素の嵩密度は大きいことが求められる。
特開2012-41199号公報 特開2016-41656号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、低い製造コストで、嵩密度が大きく、かつ単位体積当たりの比表面積が大きい多孔質炭素を製造できる多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法の提供を目的とする。
上記従来の多孔質炭素の製造方法では、一般に多孔質炭素の製造原料には、フェノール樹脂等の難黒鉛化炭素原料が用いられる。これは主として、安価な易黒鉛化炭素原料を用いた場合、多孔質体が得られないことに起因していると考えられる。この差異が生じる原因は明確ではないが、本発明者らは以下のように推察している。まず、難黒鉛化炭素原料を用いる場合、芳香環同士の積層構造が少ないランダムに架橋した芳香族高分子が、直接固相炭素化する。その過程で、炭素網面の間にできる空隙がミクロ孔としての機能を発し、多孔質体が得られると考えられる。一方、易黒鉛化炭素原料を用いると、融液を経て炭素化する。融液においては、芳香環同士は平行配向(積層)するのが安定であるため、芳香族分子間の積層構造(メソフェーズ、液晶)が生成する。その後、易黒鉛化炭素原料は、不融化し固相で炭素化する。このメソフェーズで芳香族分子間の空隙が最小化するため、固相炭素化しても、多孔質にはならないと考えられる。上述の考察にもとづき、本発明者らは、易黒鉛化性炭素原料を用いる場合であっても、融液を経由せずに固相炭素化すれば、多孔質炭素が生成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の多孔質炭素の製造方法は、易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する工程と、上記固形化工程後の固形分を固相炭素化する工程とを備える。
当該多孔質炭素の製造方法は、融液を経ずに易黒鉛化炭素原料を固形化するので、易黒鉛化炭素原料を用いても固形分として多孔質体が得られる。従って、この固形分を固相炭素化することで、低い製造コストで、単位体積当たりの比表面積が大きい多孔質炭素を製造することができる。また、当該多孔質炭素の製造方法により製造される多孔質炭素は、直径2nm未満の細孔であるミクロ孔の占める割合が高く、嵩密度を高められる。
上記易黒鉛化炭素原料が無灰炭を含むとよい。一般的に1000℃以上で行われる石炭の乾留及び蒸留を経て得られる石炭ピッチに比べ、石炭から400℃以下の抽出により得られる無灰炭は、酸素等のヘテロ原子を多く含み、積層構造となり難い。このため、上記易黒鉛化炭素原料に無灰炭を含めることで、単位体積当たりの比表面積が大きい多孔質炭素を得易い。また、無灰炭はヘテロ原子の含有量が大きいことに加え、分子量も大きいため、固相炭素化工程での歩留まりを高められる。
上記固形化工程が、上記易黒鉛化炭素原料をその良溶媒に溶解させる工程と、上記溶解工程で得られた溶液を上記易黒鉛化炭素原料の貧溶媒と混合する工程と、上記貧溶媒混合工程で得られた混合液から固形分を析出させる工程とを有するとよい。このように上記固形化工程に、上述の工程を有する、いわゆる貧溶媒法を用いることで、容易に多孔質炭素を製造できるうえ、特別な装置等を必要としないため、多孔質炭素の製造コストをさらに低減できる。
上記固形化工程が、石炭を無灰炭の良溶媒と混合する工程と、上記良溶媒混合工程で得られたスラリーの加熱により上記石炭から無灰炭を上記良溶媒に溶出させる工程と、上記溶出工程で得られたスラリーを固液分離する工程と、上記固液分離工程で得られた溶液を上記無灰炭の貧溶媒と混合する工程と、上記貧溶媒混合工程で得られた混合液から固形分を析出させる工程とを有するとよい。上記溶出工程での石炭の溶媒抽出処理により無灰炭を良溶媒に溶出できる。従って、この無灰炭が良溶媒に溶出した溶液を上記貧溶媒混合工程の溶液に用いることで、無灰炭を固形物として取り出す必要がなくなるため、多孔質炭素の製造コストをさらに低減できる。
上記良溶媒が含窒素化合物を含み、上記貧溶媒が含窒素化合物を含まないとよい。このように良溶媒に含窒素化合物を含めることで、易黒鉛化炭素原料の溶解度を高めることができる。また、貧溶媒に含窒素化合物を含めないことで、固形分の析出効率を高めることができる。従って、良溶媒及び貧溶媒を上述の組み合わせとすることで、多孔質炭素の製造効率を高められる。
上記溶液中の上記易黒鉛化炭素原料の含有量としては、5質量%以上50質量%以下が好ましく、上記貧溶媒混合工程で混合される上記溶液に対する上記貧溶媒の質量比としては、3倍以上20倍以下が好ましい。このように易黒鉛化炭素原料の含有量を上記範囲内とすることで、未溶解の易黒鉛化炭素原料を低減しつつ、多孔質炭素の製造効率を高めることができる。また、貧溶媒の質量比を上記範囲内とすることで、不必要な貧溶媒の使用を抑止しつつ、多孔質炭素の製造効率を高めることができる。
上記固形化工程が、上記易黒鉛化炭素原料を含む溶液を凍結する工程と、上記凍結工程後の易黒鉛化炭素原料を凍結状態で乾燥する工程とを有するとよい。このように上記固形化工程に、上述の工程を有する、いわゆるフリーズドライ法を用いることで、容易に多孔質炭素を製造できるうえ、塊状のバルクを得やすい。
上記固形化工程が、上記易黒鉛化炭素原料を含む紡糸液を調製する工程と、上記紡糸液の凝固液への吐出により上記易黒鉛化炭素原料を繊維化する工程とを有するとよい。このように上記固形化工程に、上述の工程を有する、いわゆる湿式紡糸法を用いることで、容易に多孔質炭素を製造できるうえ、繊維状の多孔質炭素を容易に得ることができる。
本発明の多孔質炭素成型体の製造方法は、易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する工程と、上記固形化工程後の固形分を固相炭素化する工程と、上記固形化工程後の多孔質炭素を嵩密度が0.8g/cm以上となるように加圧成型する工程とを備える。
当該多孔質炭素成型体の製造方法は、融液を経ずに易黒鉛化炭素原料を固形化するので、易黒鉛化炭素原料を用いても固形分として多孔質体が得られる。従って、この固形分を固相炭素化することで、低い製造コストで、単位体積当たりの比表面積が大きい多孔質炭素成型体を製造することができる。また、当該多孔質炭素成型体の製造方法は、直径2nm未満の細孔であるミクロ孔の占める割合が高く、嵩密度を高められる。その嵩密度を加圧成型工程で上記下限以上とすることで、例えば電気二重層キャパシタとして利用した際に単位体積に対して高い静電容量が得られる。
ここで、「易黒鉛化炭素原料」とは、常圧で2500℃以上の高温で加熱処理を行うと黒鉛化する炭素材料を指す。また、「固相炭素化」とは、軟化(溶融)させることなく炭素化することを言う。
ある物質に対する「良溶媒」とは、25℃においてその物質の溶解度が5質量%以上である溶媒を指し、「貧溶媒」とは、25℃においてその物質の溶解度が5質量%未満である溶媒を指す。
「無灰炭」(ハイパーコール、HPC)とは、石炭を改質した改質炭の一種であり、溶剤を用いて石炭から灰分と非溶解性成分とを可能な限り除去した改質炭である。しかしながら、無灰炭の流動性や膨張性を著しく損ねない範囲で、無灰炭は灰分を含んでもよい。一般に石炭は7質量%以上20質量%以下の灰分を含むが、無灰炭においては2質量%程度、場合によっては5質量%程度の灰分を含んでもよい。なお、「灰分」とは、JIS-M8812:2004に準拠して測定される値を意味する。
また、成型体の「嵩密度」は、成型後の質量をその容積で除した値をいう。
以上説明したように、本発明の多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法は、低い製造コストで、嵩密度が大きく、かつ単位体積当たりの比表面積が大きい多孔質炭素及び多孔質炭素成型体を製造できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る多孔質炭素の製造方法を示すフロー図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る多孔質炭素成型体の製造方法を示すフロー図である。 図3は、図1及び図2の固形化工程を示す詳細フロー図である。 図4は、図3とは異なる固形化工程を示す詳細フロー図である。 図5は、図3及び図4とは異なる固形化工程を示す詳細フロー図である。 図6は、図3、図4及び図5とは異なる固形化工程を示す詳細フロー図である。 図7は、図6の固形化工程で用いる湿式紡糸装置の概略構成を示す模式図である。
[第一実施形態]
以下、本発明に係る多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法の第一実施形態について説明する。
当該多孔質炭素の製造方法は、図1に示すように、固形化工程S1と、固相炭素化工程S2とを備える。また、当該多孔質炭素成型体の製造方法は、図2に示すように、上述の固形化工程S1及び固相炭素化工程S2に加えて、加圧成型工程S3を備える。
〔固形化工程〕
固形化工程S1では、融液を経ずに易黒鉛化炭素原料を固形化する。
上記易黒鉛化炭素原料としては、石炭ピッチ、石油アスファルト、無灰炭等を挙げることができる。これらの原料は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記易黒鉛化炭素原料は、融液を経て製造されたものであってもよい。
上記易黒鉛化炭素原料は、無灰炭を含むことが好ましく、無灰炭を単独で用いることがさらに好ましい。一般的に1000℃以上で行われる石炭の乾留及び蒸留を経て得られる石炭ピッチに比べ、石炭から400℃以下の抽出により得られる無灰炭は、酸素等のヘテロ原子を多く含み、積層構造となり難い。このため、上記易黒鉛化炭素原料に無灰炭を含めることで、単位体積当たりの比表面積が大きい多孔質炭素を得易い。また、無灰炭はヘテロ原子の含有量が大きいことに加え、分子量も大きいため、固相炭素化工程での歩留まりを高められる。
ここで、無灰炭についてさらに詳説すると、無灰炭は、石炭抽出物のため、多種の分子からなる混合物であり、酸素や窒素等のヘテロ原子を有する多環芳香族を基本構造としている。このような無灰炭の分子は、多環芳香族が平面であることから、比較的平面性を有しており、また、高い軟化溶融性を有している。無灰炭を炭化するための昇温過程では、通常、400℃前後で軟化溶融した液体状態をとなり、約900℃で炭化反応(液相炭化)が進む。この液相炭化過程では、系全体の安定化に向けて、無灰炭分子の平面部の積層が進み、配向した分子集合体となる。すなわち、無灰炭は、黒鉛化性を有する炭素原料(易黒鉛化性炭素原料)である。
当該多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法では、固形化工程S1が、図3に示すように、溶解工程S11と、貧溶媒混合工程S12と、析出工程S13とを有する。
<溶解工程>
溶解工程S11は、上記易黒鉛化炭素原料をその良溶媒に溶解させる。
上記良溶媒としては、上記易黒鉛化炭素原料が溶解可能であれば特に限定されないが、上記良溶媒が含窒素化合物を含むとよい。このように上記良溶媒に含窒素化合物を含めることで、上記易黒鉛化炭素原料の溶解度を高めることができる。
上記含窒素化合物としては、ピリジン(CN)、キノリン(CN)、N-メチルピロリドン(CNO)等を挙げることができる。中でも高い溶解力を有し、かつ比較的沸点が低いため取り扱いが容易であるピリジンが好ましい。
溶解後の溶液中の上記易黒鉛化炭素原料の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、上記易黒鉛化炭素原料の含有量の上限としては、40質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記易黒鉛化炭素原料の含有量が上記下限未満であると、良溶媒が過剰となり、多孔質炭素の製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記易黒鉛化炭素原料の含有量が上記上限を超えると、未溶解の易黒鉛化炭素原料が増加し、多孔質炭素の収率が低下するおそれがある。
<貧溶媒混合工程>
貧溶媒混合工程S12では、溶解工程S11で得られた溶液を上記易黒鉛化炭素原料の貧溶媒と混合する。
上記貧溶媒としては、上記易黒鉛化炭素原料の溶解度が小さいものであれば特に限定されないが、上記良溶媒とよく混ざるものが好ましい。また、上記貧溶媒が含窒素化合物を含まないとよい。このように上記貧溶媒に含窒素化合物を含めないことで、固形分の析出効率を高めることができる。また、上記良溶媒が含窒素化合物を含み、上記貧溶媒が含窒素化合物を含まない組み合わせとすることで、多孔質炭素の製造効率を特に高められる。
上記貧溶媒としては、水(HO)、メタノール(CHO)、エタノール(CO)、アセトン(CO)、トルエン(C)、ヘキサン(C14)等を挙げることができる。上記貧溶媒としては、良溶媒として高極性の含窒素化合物を用いる場合、上記良溶媒と混合され易い酸素を含む高極性のものが好ましい。このような貧溶媒としては、水、メタノール、エタノール、アセトンが挙げられる。また、上記良溶媒としてメチルナフタレン等を用いる場合、上記貧溶媒としては、メチルナフタレン等に比べて易黒鉛化炭素原料の溶解力が十分に小さいトルエンやヘキサンが好ましい。
上記溶液と上記貧溶媒との混合方法は、特に限定されないが、上記貧溶媒に上記溶液を添加する方法が好ましい。大量の貧溶媒に、上記良溶媒に溶解した上記易黒鉛化炭素原料を加えることで、易黒鉛化炭素原料が瞬時に粉末状の固形分となるので、多孔質炭素の製造効率を高められる。
貧溶媒混合工程S12で混合される上記溶液に対する上記貧溶媒の質量比の下限としては、3倍が好ましく、5倍がより好ましい。一方、上記質量比の上限としては、20倍が好ましく、10倍がより好ましい。上記質量比が上記下限未満であると、析出しない易黒鉛化炭素原料の量が多くなり、多孔質炭素の収率が低下するおそれがある。逆に、上記質量比が上記上限を超えると、貧溶媒が不必要に多くなり、製造効率が低下するおそれや、製造コストが上昇するおそれがある。
<析出工程>
析出工程S13では、貧溶媒混合工程S12で得られた混合液から固形分を析出させる。
具体的には、上述のように上記溶液と上記溶媒とを混合すると固形分が析出するので、この析出した固形分を、例えば濾過分離し、減圧乾燥する。
このようにして析出した固形分では、直径2nm未満の細孔(ミクロ孔)が大半を占め、直径2nm以上50nm未満の細孔(メゾ孔)や直径50nm以上の細孔(マクロ孔)が比較的少ない。従って、上記固形分は、比表面積に対して緻密性が高い。
また、このように固形化工程S1に、上述の工程を有する、いわゆる貧溶媒法を用いることで、容易に多孔質炭素を製造できるうえ、特別な装置等を必要としないため、多孔質炭素の製造コストをさらに低減できる。
〔固相炭素化工程〕
固相炭素化工程S2は、固形化工程S1後の固形分を固相炭素化する。具体的には、固形化工程S1で得られる固形分を加熱処理する。この炭素化により多孔質炭素が得られる。この固相炭素化工程S2は、加熱部により行うことができる。
<加熱部>
上記加熱部は、加熱により上記固形分をその集合状態を実質的に保持したままで炭素化する(固相炭素化)。上記加熱部としては、例えば公知の電気炉等を用いることができ、低結晶性の固形分を加熱部へ挿入し、内部を不活性ガスで置換した後、加熱部内へ不活性ガスを吹き込みながら加熱を行うことで上記固形分の固相炭素化ができる。上記不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば窒素やアルゴン等を挙げることができる。中でも安価な窒素が好ましい。
固相炭素化工程S2での加熱温度の下限としては、600℃以上が好ましく、900℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、1300℃が好ましく、1100℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、炭素化と細孔の発達が不十分となるおそれがある。逆に、加熱温度が上記上限を超えると、比表面積(多孔質性)が低下し、設備の耐熱性向上や燃料消費量の観点から製造コストが上昇するおそれがある。なお、昇温速度としては、例えば0.01℃/min以上10℃/min以下とすることができる。
また、加熱時間の下限としては、10分が好ましく、20分がより好ましい。一方、加熱時間の上限としては、10時間が好ましく、8時間がより好ましい。加熱温度が上記下限未満であると、炭素化が不十分となるおそれがある。逆に、加熱時間が上記上限を超えると、多孔質炭素の製造効率が低下するおそれがある。
<不融化処理>
なお、固相炭素化を行う前に不融化を行ってもよい。この不融化処理により固形分が互いに融着することを防止できる。不融化は、例えば公知の加熱炉を用いて酸素を含む雰囲気中で加熱することにより行う。酸素を含む雰囲気としては、一般に空気が用いられる。
不融化を行う場合の不融化処理温度の下限としては、150℃が好ましく、180℃がより好ましい。一方、上記不融化処理温度の上限としては、300℃が好ましく、280℃がより好ましい。上記不融化処理温度が上記下限未満であると、不融化が不十分となるおそれや、不融化処理時間が長くなり、非効率となるおそれがある。逆に、上記不融化処理温度が上記上限を超えると、不融化される前に固形分が溶融するおそれがある。なお、昇温速度としては、例えば0.01℃/min以上10℃/min以下とすることができる。
また、不融化を行う場合の不融化処理時間の下限としては、10分が好ましく、20分がより好ましい。一方、上記不融化処理時間の上限としては、120分が好ましく、90分がより好ましい。上記不融化処理時間が上記下限未満であると、不融化が不十分となるおそれがある。逆に、上記不融化処理時間が上記上限を超えると、多孔質炭素の製造コストが不必要に増大するおそれがある。
<賦活処理>
当該多孔質炭素の製造方法では、賦活処理なしで、ミクロ孔が大半を占める多孔質炭素を得ることができるが、軽度な賦活処理を施すことで、さらにミクロ孔を増加させることができる。
上記賦活処理としては、公知の方法を用いることができる。例えば、上記加熱処理後、あるいは上記加熱処理と同時に、その不活性ガスとしてCOを含む不活性ガスを用いて、固形分の表面を部分的にガス化(C+CO→2CO↑)させるCO賦活を用いることができる。
上記不活性ガス中のCO濃度としては、特に限定されないが、上記CO濃度の下限としては、10質量%が好ましい。一方、CO濃度の上限としては、100質量%(純CO)であってもよい。上記CO濃度が上記下限未満であると、所望の賦活効果を得るために、より高温かつ長時間の処理が必要となるため、製造コストが増加するおそれや、製造効率が低下するおそれがある。
CO賦活による多孔質炭素の重量減少としては、COを含まない不活性ガス中で炭素化処理を行った場合の重量減少に対して105質量%以上150質量%以下とすることが好ましい。上記重量減少が上記下限未満であると、賦活効果(多孔質化)が不十分となるおそれがある。逆に、上記重量減少が上記上限を超えると、大きな賦活効果が得られるものの、無用に炭素を損耗し、製造効率が低下するおそれがある。
<多孔質炭素>
当該多孔質炭素の製造方法を用いることで、例えば平均径0.5nm以上2nm以下の細孔を有する多孔質炭素を製造することができる。当該多孔質炭素の製造方法で得られる多孔質炭素は粒子状である。
上記多孔質炭素は、窒素、水素、一酸化炭素等のガス吸着材、水処理用吸着材、電子部品等に好適に用いることができる。上記多孔質炭素は、その高い嵩密度によって、EDLC(Electrical Double Layer Capacitor;電気二重層キャパシタ)用電極等として用いる際に、単位容積当たりで高い性能を得ることができる。
以下、当該多孔質炭素の製造方法を用いて製造される多孔質炭素の特徴について説明する。
上記多孔質炭素の細孔容積の下限としては、0.02cm/gが好ましく、0.1cm/gがより好ましく、0.15cm/gがさらに好ましい。上記細孔容積が上記下限未満であると、多孔質材料として用いることが困難となるおそれがある。一方、上記細孔容積の上限としては、特に限定されないが、通常0.5cm/g程度である。なお、「細孔容積」とは、HK法により細孔分布を測定し、細孔を円筒形と仮定した場合の積算細孔容積を指す。
上記多孔質炭素の細孔はミクロ孔が多く、メゾ孔やマクロ孔が少ないことが好ましい。つまり、上記多孔質炭素の細孔のうち、直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積は、0.1cm/g以上が好ましく、0.15cm/g以上がより好ましい。また、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積は、0.05cm/g未満が好ましく、0.03cm/g未満がより好ましい。直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積が上記下限未満、又は直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積が上記上限以上であると、上記多孔質炭素の密度が低くなり、機械的強度が低下するおそれがある。なお、直径0.5nm以下の細孔のLog微分細孔容積の上限は、特に限定されないが、通常0.5cm/g程度である。また、直径2nm以上4nm以下の細孔のLog微分細孔容積の下限は、0cm/gが好ましく、直径2nm以上4nm以下の細孔を有さなくともよい。なお、ある直径における「細孔のLog微分細孔容積」は、次のようにして算出される値である。まず、HK法により細孔分布を測定する。この測定により、細孔を円筒形と仮定した場合の底面の直径Dに対する積算細孔容積分布Vが得られる。この分布を元に測定ポイント間の差分細孔容積dVを細孔直径Dの対数扱いでの差分値d(LogD)で割った値を求めることで、Log微分細孔容積が算出できる。
上記多孔質炭素の細孔はミクロ孔が多いため、上記多孔質炭素は緻密でありながら、単位質量当たりの比表面積が大きい。上記多孔質炭素の単位質量当たりの比表面積の下限としては、300m/gが好ましく、350m/gがより好ましく、400m/gがさらに好ましい。単位質量当たりの比表面積が上記下限未満であると、多孔質材料として用いることが困難となるおそれがある。一方、単位質量当たりの比表面積の上限としては、特に限定されないが、通常3000m/g程度である。なお、上記多孔質炭素の単位質量当たりの比表面積は、例えば溶液中の易黒鉛化炭素原料の含有量、良溶媒や貧溶媒の種類等により調整できる。
〔加圧成型工程〕
加圧成型工程S3では、固形化工程S1後である固相炭素化工程S2後の多孔質炭素を嵩密度が0.8g/cm以上となるように加圧成型する。
加圧成型工程S3での成型方法としては、公知の圧縮成型、押し出し成型、造粒法等を用いることができる。
この成型工程S3は、公知の成型機を用いて行うことができる。成型機に用いる金型のキャビティの大きさ及び形状は、多孔質炭素の使用目的に応じて適宜決定されるが、例えば直径15mm以上25mm以下、深さ25mm以上35mm以下の円筒状とできる。
また、加圧成型工程S3での成型は、上記多孔質炭素に可撓性が不足する場合は、上記多孔質炭素にバインダーを添加して行うことが好ましい。なお、上記多孔質炭素に可撓性がある場合には、バインダーを含めずに成型することもできる。
バインダーを添加して成型を行う場合、上記バインダーとしては、炭素収率が低く、多孔質炭素の細孔に浸透し難い物質、例えば水や水溶性高分子を用いるとよい。上記水溶性高分子としては、デンプン、糖蜜、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。バインダーを炭素収率が低く、多孔質炭素の細孔に浸透し難い物質とすることで、得られる多孔質炭素成型体の多孔質性の低下を抑止できる。
バインダーを添加して成型を行う場合、得られる多孔質炭素成型体に対する上記バインダーの添加量の下限としては、2質量%が好ましく、4質量%がより好ましい。一方、上記バインダーの添加量の上限としては、10質量%が好ましく、8質量%がより好ましい。上記バインダーの添加量が上記下限未満であると、成型性が不十分となるおそれがある。逆に、上記バインダーの添加量が上記上限を超えると、成型性の改善効果に対して製造コストが大きくなり過ぎるおそれがある。
加圧成型工程S3での成形後の多孔質炭素成型体の嵩密度の下限としては、0.8g/cmが好ましく、0.9g/cm以上がより好ましい。一方、上記多孔質炭素成型体の嵩密度の上限としては、1.1g/cmが好ましく、1.0g/cm より好ましい。上記多孔質炭素成型体の嵩密度が上記下限未満であると、例えばEDLC用電極として用いた場合に、単位容積当たりの静電容量が不足するおそれがある。逆に、上記多孔質炭素成型体の嵩密度が上記上限を超えると、嵩密度を高めるために成型する際にミクロ孔が潰れて、単位体積当たりの比表面積がかえって減少するおそれがある。
上記成型圧力の下限としては、0.8ton/cmが好ましく、1.0ton/cmがより好ましい。一方、上記成型圧力の上限としては、3.0ton/cmが好ましく、2.5ton/cmがより好ましい。上記成型圧力が上記下限未満であると、得られる多孔質炭素成型体の嵩密度が不足し、強度や単位体積当たりの比表面積が不足するおそれがある。逆に、上記成型圧力が上記上限を超えると、固形分の有するミクロ孔が潰れ易くなり、得られる多孔質粒子の単位体積当たりの比表面積が返って減少するおそれがある。
加圧成型工程S3での加圧時間は、成形後の多孔質炭素成型体の形状の安定化と製造効率との観点から適宜決定されるが、例えば0.5分以上3分以下とされる。
また、多孔質炭素の成型は、製造コストの観点から加温を伴わない室温(例えば25℃)で行うとよい。あるいは、成型性を改善するために加温して行ってもよい。その際の金型温度としては、200℃以下が好ましい。金型温度が上記上限を超えると、得られる多孔質炭素成型体の改善効果に対して製造コストの上昇が大き過ぎるおそれや、得られる多孔質炭素成型体の多孔質性が低下するおそれがある。
<利点>
当該多孔質炭素の製造方法及び当該多孔質炭素成型体の製造方法では、融液を経ずに易黒鉛化炭素原料を固形化するので、易黒鉛化炭素原料を用いても固形分として多孔質体が得られる。従って、この固形分を固相炭素化することで、低い製造コストで、単位体積当たりの比表面積が大きい多孔質炭素及び多孔質炭素成型体を製造することができる。また、当該多孔質炭素の製造方法及び当該多孔質炭素成型体の製造方法により製造される多孔質炭素及び多孔質炭素成型体は、直径2nm未満の細孔であるミクロ孔の占める割合が高く、嵩密度を高められる。
[第二実施形態]
以下、本発明に係る多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法の第二実施形態について説明する。
当該多孔質炭素の製造方法は、第一実施形態における多孔質炭素の製造方法と同様に、図1に示すように、固形化工程S1と、固相炭素化工程S2とを備える。また、当該多孔質炭素成型体の製造方法は、図2に示すように、上述の固形化工程S1及び固相炭素化工程S2に加えて、加圧成型工程S3を備える。
〔固形化工程〕
固形化工程S1は、易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する。
本実施形態において、上記易黒鉛化炭素原料は、無灰炭である。
当該多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法では、固形化工程S1は、図4に示すように、良溶媒混合工程S21と、溶出工程S22と、固液分離工程S23と、貧溶媒混合工程S24と、析出工程S25とを有する。
<良溶媒混合工程>
良溶媒混合工程S21では、石炭を無灰炭の良溶媒と混合する。
上記良溶媒としては、第一実施形態と同様の溶媒を用いることができる。
この良溶媒混合工程S21は、例えば石炭投入部、溶媒供給部、及び混合部により行える。
(石炭投入部)
石炭投入部は、石炭を混合部へ投入する。石炭投入部としては、常圧状態で使用される常圧ホッパー、常圧状態及び加圧状態で使用される加圧ホッパー等の公知の石炭ホッパーを用いることができる。
石炭投入部から投入する石炭は、無灰炭の原料となる石炭である。上記石炭としては、様々な品質の石炭を用いることができる。例えば無灰炭の抽出率の高い瀝青炭や、より安価な低品位炭(亜瀝青炭や褐炭)が好適に用いられる。また、石炭を粒度で分類すると、細かく粉砕された石炭が好適に用いられる。ここで「細かく粉砕された石炭」とは、例えば石炭全体の質量に対する粒度1mm未満の石炭の質量割合が80%以上である石炭を意味する。また、石炭投入部から投入する石炭として塊炭を用いることもできる。ここで「塊炭」とは、例えば石炭全体の質量に対する粒度5mm以上の石炭の質量割合が50%以上である石炭を意味する。塊炭は、細かく粉砕された石炭に比べて未溶解な固体の石炭の粒度が大きく保たれるため、後述する分離部での分離を効率化することができる。ここで、「粒度(粒径)」とは、JIS-Z8815:1994のふるい分け試験通則に準拠して測定した値をいう。なお、石炭の粒度による仕分けには、例えばJIS-Z8801-1:2006に規定する金属製網ふるいを用いることができる。
上記低品位炭の炭素含有率の下限としては、70質量%が好ましい。一方、上記低品位炭の炭素含有率の上限としては、85質量%が好ましく、82質量%がより好ましい。上記低品位炭の炭素含有率が上記下限未満であると、溶媒可溶成分の溶出率が低下するおそれがある。逆に、上記低品位炭の炭素含有率が上記上限を超えると、投入する石炭のコストが高くなるおそれがある。
なお、石炭投入部から混合部へ投入する石炭として、少量の溶媒を混合してスラリー化した石炭を用いてもよい。石炭投入部からスラリー化した石炭を混合部へ投入することにより、混合部において石炭が溶媒と混合し易くなり、石炭をより早く溶解させることができる。ただし、スラリー化する際に混合する溶媒の量が多いと、後述する昇温部でスラリーを溶出温度まで昇温するための熱量が不必要に大きくなるため、製造コストが増大するおそれがある。
(溶媒供給部)
溶媒供給部は、溶媒を混合部へ供給する。上記溶媒供給部は、溶媒を貯留する溶媒タンクを有し、この溶媒タンクから溶媒を混合部へ供給する。上記溶媒供給部から供給する溶媒は、石炭供給部から投入する石炭と混合部で混合される。
溶媒供給部から供給する溶媒は、上述した良溶媒である。上記易黒鉛化炭素原料として無灰炭を用いる場合、上記良溶媒としては、上述の溶媒に加えて、石炭を乾留してコークスを製造する際の副生油の蒸留油であるメチルナフタレン油、ナフタレン油等を用いることもできる。
(混合部)
混合部は、石炭投入部から投入する石炭及び溶媒供給部から供給する溶媒を混合する。
上記混合部としては、調製槽を用いることができる。この調製槽には、供給管を介して上記溶媒が供給され、この供給された溶媒に石炭が投入される。上記調製槽では、この石炭及び溶媒が混合され、スラリーが調製される。また、上記調製槽は、攪拌機を有しており、混合したスラリーを攪拌機で攪拌しながら保持することによりスラリーの混合状態を維持する。
調製槽におけるスラリー中の無水炭基準での石炭濃度は、溶媒の種類等により適宜決定されるが、上記石炭濃度の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、上記石炭濃度の上限としては、65質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。上記石炭濃度が上記下限未満であると、溶出工程S22で溶出される溶媒可溶成分の溶出量がスラリー処理量に対して少なくなるため、液体分に含まれる無灰炭の含有量が不十分となるおそれがある。逆に、上記石炭濃度が上記上限を超えると、溶媒中で上記溶媒可溶成分が飽和し易いため、上記溶媒可溶成分の溶出率が低下するおそれがある。
なお、混合部の調製槽で調製されたスラリーは、無灰炭溶出工程S22で処理される。
<溶出工程>
溶出工程S22では、良溶媒混合工程S21で得られたスラリーの加熱により上記石炭から無灰炭を上記良溶媒に溶出させる。溶出工程S22は、昇温部及び溶出部により行うことができる。
(昇温部)
昇温部は、良溶媒混合工程S21で得られたスラリーを昇温する。
昇温部としては、内部を通過するスラリーを昇温できるものであれば特に限定されないが、例えば抵抗加熱式ヒーターや誘導加熱コイルが挙げられる。また、昇温部は、熱媒を用いて昇温を行うよう構成されていてもよく、例えば内部を通過するスラリーの流路の周囲に配設される加熱管を有し、この加熱管に蒸気、油等の熱媒を供給することでスラリーを昇温可能に構成されていてもよい。
昇温部による昇温後のスラリーの温度は、使用する溶媒に応じて適宜決定されるが、少なくとも溶媒の沸点以下とされる。例えば溶媒としてメチルナフタレンを用いる場合であれば、耐圧容器内において300℃以上400℃以下とされる。上記スラリーの温度が上記下限未満であると、溶出率が低下するおそれがある。逆に、上記スラリーの温度が上記上限を超えると、溶媒が気化し過ぎるためスラリーの濃度を制御することが困難となるおそれがある。
また、昇温部の圧力としては、特に限定されないが、常圧(0.1MPa)とできる。なお、例えば溶媒としてメチルナフタレンを用いる場合であれば、耐圧容器内において2MPa以下の圧力としてもよい。
(溶出部)
溶出部は、上記混合部で得られ、上記昇温部で昇温されたスラリー中の石炭から溶媒に可溶な石炭成分を溶出させる。この溶媒可溶成分の主成分は無灰炭である。ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分を意味し、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
溶出部としては、抽出槽を用いることができ、この抽出槽に上記昇温後のスラリーが供給される。上記抽出槽では、このスラリーの温度及び圧力を保持しながら溶媒に可溶な石炭成分を石炭から溶出させる。また、上記抽出槽は、攪拌機を有している。この攪拌機によりスラリーを攪拌することで上記溶出を促進できる。
なお、溶出部での溶出時間としては、特に限定されないが、溶媒可溶成分の抽出量と抽出効率との観点から10分以上120分以下が好ましい。
<固液分離工程>
固液分離工程S23では、溶出工程S22で得られたスラリーを固液分離する。具体的には、固液分離工程S23では、上記スラリーを溶媒可溶成分が溶出した溶液と、抽出残渣とに分離する。この固液分離工程S23は、分離部により行うことができる。なお、抽出残渣は、抽出用溶媒に不溶な灰分と不溶石炭とを主として含み、これらに加え抽出用溶媒をさらに含む。
(分離部)
分離部における上記液体分及び抽出残渣を分離する方法としては、例えば重力沈降法、濾過法、遠心分離法を用いることができ、それぞれ沈降槽、濾過器、遠心分離器が使用される。
以下、重力沈降法を例にとり分離方法について説明する。重力沈降法とは、沈降槽内で重力を利用して抽出残渣を沈降させて固液分離する分離方法である。重力沈降法により分離を行う場合、無灰炭が溶存する液体分は、沈降槽の上部に溜まる。この液体分は必要に応じてフィルターユニットを用いて濾過した後、排出される。一方、抽出残渣は、分離部の下部から排出される。
また、重力沈降法により分離を行う場合、スラリーを分離部内に連続的に供給しながら上記液体分及び抽出残渣を沈降槽から排出することができる。これにより連続的な固液分離処理が可能となる。
分離部内でスラリーを維持する時間は、特に限定されないが、例えば30分以上120分以下とでき、この時間内で分離部内の沈降分離が行われる。なお、石炭として塊炭を使用する場合には、沈降分離が効率化されるので、分離部内でスラリーを維持する時間を短縮できる。
なお、分離部内の温度及び圧力としては、昇温部による昇温後のスラリーの温度及び圧力と同様とできる。
<貧溶媒混合工程>
貧溶媒混合工程S24では、固液分離工程S23で得られた溶液を上記無灰炭の貧溶媒と混合する。
上述のようにこの溶液に溶出される溶媒可溶成分の主成分は無灰炭である。つまり、上記溶液は、無灰炭の良溶媒に、易黒鉛化炭素原料である無灰炭が溶解したものである。
上記溶液中の上記易黒鉛化炭素原料(無灰炭)の含有量は、第一実施形態における溶液中の易黒鉛化炭素原料の含有量と同様とできる。また、上記貧溶媒としては、第一実施形態と同様の溶媒を用いることができる。
上記溶液と上記貧溶媒との混合方法は、第一実施形態における貧溶媒混合工程S12と同様である。
<析出工程>
析出工程S25では、貧溶媒混合工程S24で得られた混合液から固形分を析出させる。析出工程S25は、第一実施形態における析出工程S13と同様であるので、詳細説明を省略する。
〔固相炭素化工程及び加圧成型工程〕
固相炭素化工程S2及び加圧成型工程S3は、第一実施形態における固相炭素化工程S2及び加圧成型工程S3と同様であるので、詳細説明を省略する。また、得られる多孔質炭素についても、第一実施形態における多孔質炭素と同様である。
<利点>
当該多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法では、溶出工程S21での石炭の溶媒抽出処理により無灰炭を良溶媒に溶出できる。従って、この無灰炭が良溶媒に溶出した溶液を貧溶媒混合工程S24の溶液に用いることで、無灰炭を固形物として取り出す必要がなくなるため、多孔質炭素の製造コストをさらに低減できる。
[第三実施形態]
以下、本発明に係る多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法の第三実施形態について説明する。
当該多孔質炭素の製造方法は、第一実施形態における多孔質炭素の製造方法と同様に、図1に示すように、固形化工程S1と、固相炭素化工程S2とを備える。また、当該多孔質炭素成型体の製造方法は、図2に示すように、上述の固形化工程S1及び固相炭素化工程S2に加えて、加圧成型工程S3を備える。
〔固形化工程〕
固形化工程S1は、易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する。
上記易黒鉛化炭素原料としては、第一実施形態における多孔質炭素の製造方法で説明したものを用いることができる。以下、第一実施形態と同様に、上記易黒鉛化炭素原料として、無灰炭を単独で用いる場合を例にとり説明するが、上記易黒鉛化炭素原料が無灰炭に限定されることを意味するものではない。
当該多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法では、固形化工程S1が、図5に示すように、凍結工程S31と、乾燥工程S32とを有する。
<凍結工程>
凍結工程S31では、上記易黒鉛化炭素原料を含む溶液を凍結する。
この凍結工程S31では、まず上記易黒鉛化炭素原料を溶媒に溶解した溶液を準備する。上記溶媒としては、ピリジン(CN)、テトラヒドロフラン(CO)、ジメチルホルムアミド((CHNCHO)、N-メチルピロリドン(CNO)などが挙げられる。中でも無灰炭と親和性が高く、かつ後述する乾燥工程S32の負荷を小さくできる低沸点のピリジン及びテトラヒドロフランが好ましい。
上記溶液中の上記易黒鉛化炭素原料(当該多孔質炭素の製造方法では無灰炭)の含有量としては、第一次実施形態の溶液中の易黒鉛化炭素原料と同様とできる。また、易黒鉛化炭素原料である無灰炭をその良溶媒に溶出する方法は、第一次実施形態の溶出方法と同様とできる。
次に、上記溶液を溶媒の融点以下の温度にまで冷却し、凍結する。例えばテトラヒドロフラン(融点-108℃)を用いる場合、-130℃まで冷却し、凍結する。
上記溶媒の融点と冷却温度との温度差としては、特に限定されるものではないが、例えば10℃以上50℃以下とできる。上記温度差が上記下限未満であると、凍結に時間を要するため製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記温度差が上記上限を超えると、冷却のために不必要にエネルギーを必要とするため、製造コストが上昇するおそれがある。
<乾燥工程>
乾燥工程S32は、凍結工程S31後の易黒鉛化炭素原料を凍結状態で乾燥する。
この工程では、凍結工程S31での凍結温度を維持したまま減圧することで、上記溶媒を、融液を経ることなく昇華させる。その後、常温(例えば25℃)に戻せば、乾燥した固形分が得られる。この固形分の主成分は、易黒鉛化炭素原料である無灰炭である。
減圧する際の圧力は、上記溶媒を昇華可能な圧力であれば特に限定されないが、上記溶媒にテトラヒドロフランを用いる場合であれば、例えば10Pa以上100Pa以下とできる。上記圧力が上記下限未満であると、減圧のためのコストが上昇し、多孔質炭素の製造コストが上昇するおそれがある。逆に、上記圧力が上記上限を超えると、融液を経て蒸発する溶媒の量が増加し、得られる多孔質炭素の多孔質性が低下するおそれがある。
〔固相炭素化工程及び加圧成型工程〕
固相炭素化工程S2及び加圧成型工程S3は、第一実施形態における固相炭素化工程S2及び加圧成型工程S3と同様であるので、詳細説明を省略する。また、得られる多孔質炭素についても、第一実施形態における多孔質炭素と同様である。
<利点>
このように凍結工程S31で凍結固化させると、易黒鉛化性炭素原料の積層(結晶化)が進み難い。そして、乾燥工程S32で融液を経ずに易黒鉛化性炭素原料の固体を得るため、易黒鉛化性炭素原料であるにも関わらず、結晶化が進んでいない賦形固体を得ることができる。
また、固形化工程S2に、凍結工程S31及び乾燥工程S32を有する、いわゆるフリーズドライ法を用いることで、容易に多孔質炭素を製造できるうえ、塊状のバルクを得やすい。
[第四実施形態]
以下、本発明に係る多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法の第四実施形態について説明する。
当該多孔質炭素の製造方法は、第一実施形態における多孔質炭素の製造方法と同様に、図1に示すように、固形化工程S1と、固相炭素化工程S2とを備える。また、当該多孔質炭素成型体の製造方法は、図2に示すように、上述の固形化工程S1及び固相炭素化工程S2に加えて、加圧成型工程S3を備える。
〔固形化工程〕
固形化工程S1は、易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する。
上記易黒鉛化炭素原料としては、第一実施形態における多孔質炭素の製造方法で説明したものを用いることができる。以下、第一実施形態と同様に、上記易黒鉛化炭素原料として、無灰炭を単独で用いる場合を例にとり説明するが、上記易黒鉛化炭素原料が無灰炭に限定されることを意味するものではない。
当該多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法では、固形化工程S1が、図6に示すように、調製工程S41と、繊維化工程S42とを有する。
<調製工程>
調製工程S41では、上記易黒鉛化炭素原料を含む紡糸液を調製する。
具体的には、上記易黒鉛化炭素原料を溶媒に溶解した紡糸液を準備する。上記溶媒としては、第一実施形態で述べた良溶媒を用いることができる。
また、上記溶液中の上記易黒鉛化炭素原料(当該多孔質炭素の製造方法では無灰炭)の含有量としては、第一次実施形態の溶液中の易黒鉛化炭素原料と同様とできる。また、易黒鉛化炭素原料である無灰炭をその良溶媒に溶出する方法は、第一次実施形態の溶出方法と同様とできる。
<繊維化工程>
繊維化工程S42では、上記紡糸液の凝固液への吐出により上記易黒鉛化炭素原料を繊維化する。上記凝固液としては、第一実施形態で述べた貧溶媒を用いることができる。
繊維化工程S42は、例えば図7に示すような湿式紡糸装置を用いて行うことができる。まず、図7に示すように、紡糸液Xを凝固液Y中でシリンジNから吐出する。吐出された紡糸液Xのうち、溶媒は凝固液Yに溶解し、その結果、易黒鉛化性炭素原料が凝固液Yに覆われる。これにより易黒鉛化性炭素原料が急激に凝固し固形分Wとなる。この固形分Wは、ローラーRによって引き取られて繊維化する。
〔固相炭素化工程及び加圧成型工程〕
固相炭素化工程S2及び加圧成型工程S3は、第一実施形態における固相炭素化工程S2及び加圧成型工程S3と同様であるので、詳細説明を省略する。また、得られる多孔質炭素についても、繊維状である点を除き、第一実施形態における多孔質炭素と同様であるので、詳細説明を省略する。
<利点>
このように繊維加工程S42での急激な凝固によって、易黒鉛化性炭素原料の積層(結晶化)が進み難い。従って、易黒鉛化性炭素原料であるにも関わらず、積層の少ない状態で繊維状に賦形された賦形固体を得ることができる。
また、このように固形化工程S1に、調製工程S41及び繊維化工程S42を有する、いわゆる湿式紡糸法を用いることで、繊維状の多孔質炭素を容易に得ることができる。
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記第二実施形態では、良溶媒混合工程の混合部が調製槽を有する構成について説明したが、混合部はこの構成に限らず、溶媒と、石炭との混合ができれば、調製槽を省略してもよい。例えばラインミキサーにより上記混合が完了するような場合には、調製槽を省略して供給管と分離部との間にラインミキサーを備える構成としてもよい。このように各工程で用いられる装置構成は、上記実施形態に限定されない。
また、上記実施形態では固形化工程として、貧溶媒法、フリーズドライ法及び湿式紡糸法を用いる場合について説明したが、融液を経ずに易黒鉛化炭素原料を固形化できる限り、他の手法を用いることもできる。
上記実施形態では、多孔質炭素成型体の製造方法として、固形化工程、固相炭素化工程及び加圧成型工程をこの順で行う場合を説明したが、固相炭素化工程及び加圧成型工程は順番を入れ替えてもよい。つまり、本発明の多孔質炭素成型体の製造方法は、固形化工程、加圧成型工程及び固相炭素化工程をこの順で行う場合を含む。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
易黒鉛化炭素原料として、瀝青炭の溶媒抽出により製造された無灰炭を準備した。この無灰炭の元素分析値を表1に示す。また、良溶媒としてピリジン(CN、沸点115℃)を準備した。上記無灰炭を上記良溶媒に溶解し、溶液中の無灰炭の含有量が15質量%となるように調製した。
Figure 0007276771000001
なお、表1において、無灰炭の酸素量は、炭素、水素、窒素及び硫黄以外の成分量を意味し、100質量%から炭素、水素、窒素及び硫黄の成分量を引いたものである。
貧溶媒として水2.0Lを準備した。攪拌した上記貧溶媒に上記溶液100gを加え、固形分を析出させた。次いで、析出した固形分を濾過分離し、減圧乾燥させた。
さらに、窒素雰囲気で5℃/分の昇温速度で900℃まで昇温し、30分間の加熱処理(固相炭素化)を行い、実施例1の炭素材料を製造した。
[実施例2]
良溶媒としてキノリン(CN、沸点238℃)、貧溶媒としてエタノール(CO、沸点78℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の炭素材料を製造した。
[実施例3]
実施例1と同種の無灰炭をピリジンに溶解した紡糸液を準備した。なお、紡糸液の無灰炭の含有量は30質量%とした。この紡糸液100gを内径1.1mmのシリンジから2.0Lのエタノール中に吐出して繊維状の固形分を得た。得られた固形分を実施例1と同条件で固相炭素化を行い実施例3の炭素材料を製造した。
[比較例1]
実施例1と同種の無灰炭を250μm以下の粒度に破砕した後、窒素雰囲気で5℃/分の昇温速度で900℃まで昇温し、30分間の加熱処理(炭素化)を行い、比較例1の炭素材料を製造した。
[比較例2]
実施例1と同種の無灰炭を窒素雰囲気で280℃に加温し、無灰炭を溶融させた(融液化)。この融液を加圧して0.5mm径のノズルから吐出し、吐出した繊維を巻き取って繊維状の固形分を得た。得られた固形分を実施例1と同条件で炭素化を行い比較例2の炭素材料を製造した。
[参考例1]
市販のヤシガラ活性炭粉末を準備し、これを参考例1の炭素材料とした。ヤシガラは難黒鉛化炭素であり、の活性炭粉末は賦活処理により比表面積が高められている。
[評価方法]
得られた実施例1~実施例3、比較例1、比較例2及び参考例1の炭素材料について、以下の測定を行った。結果を表2に示す。
<比表面積>
比表面積は、BET法により測定した。
<静電容量>
得られた炭素材料と、導電助剤としてのアセチレンブラックと、粘結剤としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを、質量比で8:1:1で混合し、コイン状に成型してEDLC用電極を作製した。
得られた電極の厚みを測定し、電極面積を乗じることで容積を算出した。また、電池充放電装置(北斗電工株式会社製の「HJ1001SD8」)を用いて、40質量%硫酸電解液中での充電特性を測定し、50mA/hにおける静電容量を求めた。
Figure 0007276771000002
表2で、比表面積の「ND」は測定限界以下であったことを意味する。また、「-」は未測定であることを意味する。
表2から、融液を経由せず易黒鉛化炭素を固相炭素化した実施例1~実施例3の炭素材料は、融液を経由して易黒鉛化炭素を炭素化した比較例1~比較例2の炭素材料に比べて比表面積が大きく、多孔質炭素となっていることが分かる。
これに対し、比較例1の炭素材料では、融液を経由する通常の炭素化を行っているため、細孔を有する炭素が得られなかったと考えられる。また、比較例2の炭素材料では、炭素化自体は、軟化(溶融)させることなく行われているが、その前段階として溶融させて紡糸しており、この過程で融液を経由するため、細孔を有する炭素が得られなかったと考えられる。
以上から、易黒鉛化性炭素原料を用いる場合であっても、融液を経由せずに固相炭素化すれば、多孔質炭素が生成できると言える。
また、実施例1と参考例1とを比較すると、実施例1の方が比表面積は小さいものの、EDLC用電極を作製した場合の静電容量はむしろ大きい。このことから、易黒鉛化性炭素原料を用い、融液を経由せずに固相炭素化して得られる多孔質炭素の方が、ミクロ孔に富み、充電に適したEDLC用電極を製造できることが分かる。
以上説明したように、本発明の多孔質炭素の製造方法及び多孔質炭素成型体の製造方法は、低い製造コストで、嵩密度が大きく、かつ単位体積当たりの比表面積が大きい多孔質炭素及び多孔質炭素成型体を製造できる。
X 紡糸液
Y 凝固液
N シリンジ
R ローラー
W 固形分

Claims (10)

  1. 易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する固形化工程と、
    上記固形化工程後の固形分を、大気圧下で固相炭素化する固相炭素化工程と
    を備え、
    上記易黒鉛化炭素原料として、石炭ピッチ、石油アスファルト及び無灰炭が単独で、又は2種以上を混合して用いられており、
    上記固形化工程が、
    上記易黒鉛化炭素原料をその良溶媒に溶解させる溶解工程と、
    上記溶解工程で得られた溶液を上記易黒鉛化炭素原料の貧溶媒と混合する貧溶媒混合工程と、
    上記貧溶媒混合工程で得られた混合液から粉末状の固形分を析出させる析出工程と
    を有する多孔質炭素の製造方法。
  2. 易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する固形化工程と、
    上記固形化工程後の固形分を、大気圧下で固相炭素化する固相炭素化工程と
    を備え、
    上記易黒鉛化炭素原料として、石炭ピッチ、石油アスファルト及び無灰炭が単独で、又は2種以上を混合して用いられており、
    上記固形化工程が、
    石炭を無灰炭の良溶媒と混合する良溶媒混合工程と、
    上記良溶媒混合工程で得られたスラリーの加熱により上記石炭から無灰炭を上記良溶媒に溶出させる溶出工程と、
    上記溶出工程で得られたスラリーを固液分離する固液分離工程と、
    上記固液分離工程で得られた溶液を上記無灰炭の貧溶媒と混合する貧溶媒混合工程と、
    上記貧溶媒混合工程で得られた混合液から粉末状の固形分を析出させる析出工程と
    を有する多孔質炭素の製造方法。
  3. 上記良溶媒が含窒素化合物を含み、
    上記貧溶媒が含窒素化合物を含まない請求項1又は請求項2に記載の多孔質炭素の製造方法。
  4. 上記溶液中の上記易黒鉛化炭素原料の含有量が5質量%以上50質量%以下であり、
    上記貧溶媒混合工程で混合される上記溶液に対する上記貧溶媒の質量比が3倍以上20倍以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の多孔質炭素の製造方法。
  5. 易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する固形化工程と、
    上記固形化工程後の固形分を固相炭素化する固相炭素化工程と
    を備え、
    上記易黒鉛化炭素原料として、石炭ピッチ、石油アスファルト及び無灰炭が単独で、又は2種以上を混合して用いられており、
    上記固形化工程が、
    上記易黒鉛化炭素原料を含む溶液を凍結する凍結工程と、
    上記凍結工程後の易黒鉛化炭素原料を凍結状態で乾燥する乾燥工程と
    を有する多孔質炭素の製造方法。
  6. 易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する固形化工程と、
    上記固形化工程後の固形分を、細孔容積が0.02cm /g以上となるように固相炭素化する固相炭素化工程と
    を備え、
    上記易黒鉛化炭素原料として、石炭ピッチ、石油アスファルト及び無灰炭が単独で、又は2種以上を混合して用いられており、
    上記固形化工程が、
    上記易黒鉛化炭素原料を含む紡糸液を調製する調製工程と、
    上記紡糸液の凝固液への吐出により上記易黒鉛化炭素原料を繊維化する繊維化工程と
    を有する多孔質炭素の製造方法。
  7. 易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する固形化工程と、
    上記固形化工程後の固形分を、大気圧下で固相炭素化する固相炭素化工程と、
    上記固形化工程後の多孔質炭素を嵩密度が0.8g/cm以上となるように加圧成型する加圧成型工程と
    を備え、
    上記易黒鉛化炭素原料として、石炭ピッチ、石油アスファルト及び無灰炭が単独で、又は2種以上を混合して用いられており、
    上記固形化工程が、
    上記易黒鉛化炭素原料をその良溶媒に溶解させる溶解工程と、
    上記溶解工程で得られた溶液を上記易黒鉛化炭素原料の貧溶媒と混合する貧溶媒混合工程と、
    上記貧溶媒混合工程で得られた混合液から粉末状の固形分を析出させる析出工程と
    を有する多孔質炭素成型体の製造方法。
  8. 易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する固形化工程と、
    上記固形化工程後の固形分を、大気圧下で固相炭素化する固相炭素化工程と、
    上記固形化工程後の多孔質炭素を嵩密度が0.8g/cm以上となるように加圧成型する加圧成型工程と
    を備え、
    上記易黒鉛化炭素原料として、石炭ピッチ、石油アスファルト及び無灰炭が単独で、又は2種以上を混合して用いられており、
    上記固形化工程が、
    石炭を無灰炭の良溶媒と混合する良溶媒混合工程と、
    上記良溶媒混合工程で得られたスラリーの加熱により上記石炭から無灰炭を上記良溶媒に溶出させる溶出工程と、
    上記溶出工程で得られたスラリーを固液分離する固液分離工程と、
    上記固液分離工程で得られた溶液を上記無灰炭の貧溶媒と混合する貧溶媒混合工程と、
    上記貧溶媒混合工程で得られた混合液から粉末状の固形分を析出させる析出工程と
    を有する多孔質炭素成型体の製造方法。
  9. 易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する固形化工程と、
    上記固形化工程後の固形分を固相炭素化する固相炭素化工程と、
    上記固形化工程後の多孔質炭素を嵩密度が0.8g/cm以上となるように加圧成型する加圧成型工程と
    を備え、
    上記易黒鉛化炭素原料として、石炭ピッチ、石油アスファルト及び無灰炭が単独で、又は2種以上を混合して用いられており、
    上記固形化工程が、
    上記易黒鉛化炭素原料を含む溶液を凍結する凍結工程と、
    上記凍結工程後の易黒鉛化炭素原料を凍結状態で乾燥する乾燥工程と
    を有する多孔質炭素成型体の製造方法。
  10. 易黒鉛化炭素原料を、融液を経ずに固形化する固形化工程と、
    上記固形化工程後の固形分を、細孔容積が0.02cm /g以上となるように固相炭素化する固相炭素化工程と、
    上記固形化工程後の多孔質炭素を嵩密度が0.8g/cm以上となるように加圧成型する加圧成型工程と
    を備え、
    上記易黒鉛化炭素原料として、石炭ピッチ、石油アスファルト及び無灰炭が単独で、又は2種以上を混合して用いられており、
    上記固形化工程が、
    上記易黒鉛化炭素原料を含む紡糸液を調製する調製工程と、
    上記紡糸液の凝固液への吐出により上記易黒鉛化炭素原料を繊維化する繊維化工程と
    を有する多孔質炭素成型体の製造方法。
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