JP7269620B2 - 多能性幹細胞から軟骨組織を製造する方法 - Google Patents
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Description
[1]次の工程を含む多能性幹細胞から軟骨組織を製造する方法:
(i)多能性幹細胞を未分化状態で培養できる培養液中で浮遊培養する工程、
(ii)前記工程(i)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質ならびにHMG-CoA還元酵素阻害薬を含み、血清を含まない培養液中で接着条件で培養する工程、および
(iii)前記工程(ii)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質ならびにHMG-CoA還元酵素阻害薬を含み、血清を含まない培養液中で浮遊条件で培養する工程。
[2]前記工程(ii)および(iii)で用いる培養液が、さらに血清アルブミン、脂肪酸およびPDGFを含む培養液である、前記[1]に記載の方法。
[3]前記工程(ii)および(iii)で用いる培養液が、さらにコレステロールを含む培養液である、前記[2]に記載の方法。
[4]前記工程(ii)および(iii)で用いる培養液が、BMP2、TGFβ、GDF5およびHMG-CoA還元酵素阻害薬を含み、血清を含まない培養液である、前記[1]から[3]のいずれか1つに記載の方法。
[5]前記HMG-CoA還元酵素阻害薬が、メバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチンおよびロバスタチンから成る群より選択される薬剤である、前記[1]から[4]のいずれか1つに記載の方法。
[6]前記HMG-CoA還元酵素阻害薬が、ロスバスタチンである、前記[5]に記載の方法。
[7]前記工程(iii)が、前記工程(ii)で得られた細胞を、分離溶液を用いずに浮遊培養を行う工程である、前記[1]から[6]のいずれか1つに記載の方法。
[8]前記工程(i)で得られた多能性幹細胞が、細胞塊の状態である、前記[1]から[7]のいずれか1つに記載の方法。
[9]前記軟骨組織が、軟骨細胞と細胞外マトリックスを含む塊である、前記[1]から[8]のいずれか1つに記載の方法。
[10]前記[1]から[9]のいずれか1つに記載の方法で製造された軟骨組織を含む医薬品。
[11]関節軟骨損傷治療用である、前記[10]に記載の医薬品。
(i)多能性幹細胞を未分化状態で培養できる培養液中で浮遊培養する工程、
(ii)前記工程(i)で得られた細胞ををBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質ならびにHMG-CoA還元酵素阻害薬を含み、血清を含まない培養液中で接着条件で培養する工程
(iii)前記工程(ii)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質ならびにHMG-CoA還元酵素阻害薬を含み、血清を含まない培養液中で浮遊条件で培養する工程
ES細胞は、ヒトやマウスなどの哺乳動物の初期胚(例えば胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。
***幹細胞は、精巣由来の多能性幹細胞であり、***形成のための起源となる細胞である。この細胞は、ES細胞と同様に、種々の系列の細胞に分化誘導可能であり、例えばマウス胚盤胞に移植するとキメラマウスを作出できるなどの性質をもつ(M. Kanatsu-Shinohara et al. (2003) Biol. Reprod., 69:612-616; K. Shinohara et al. (2004), Cell, 119:1001-1012)。神経膠細胞系由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF))を含む培養液で自己複製可能であるし、またES細胞と同様の培養条件下で継代を繰り返すことによって、***幹細胞を得ることができる(竹林正則ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊),41~46頁,羊土社(東京、日本))。
胚性生殖細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様な多能性をもつ細胞であり、LIF、bFGF、幹細胞因子(stem cell factor)などの物質の存在下で始原生殖細胞を培養することによって樹立しうる(Y. Matsui et al. (1992), Cell, 70:841-847; J.L. Resnick et al. (1992), Nature, 359:550-551)。
人工多能性幹(iPS)細胞は、特定の初期化因子を、DNAまたはタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞とほぼ同等の特性、例えば分化多能性と自己複製による増殖能、を有する体細胞由来の人工の幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.ら,Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);国際公開WO 2007/069666)。初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-cording RNAまたはES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-cording RNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO 2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO 2010/111409、WO 2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D, et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al. (2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al. (2008), Nat Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A, (2008), Cell Stem Cell, 3, 132-135、Feng B, et al. (2009), Nat Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson et al., (2009), Nat. Biotech., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、Kim JB, et al. (2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al. (2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al. (2010), Nature. 463:1096-100、Mali P, et al. (2010), Stem Cells. 28:713-720、Maekawa M, et al. (2011), Nature. 474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。
ntES細胞は、核移植技術によって作製されたクローン胚由来のES細胞であり、受精卵由来のES細胞とほぼ同じ特性を有している(T. Wakayama et al. (2001), Science, 292:740-743; S. Wakayama et al. (2005), Biol. Reprod., 72:932-936; J. Byrne et al. (2007), Nature, 450:497-502)。すなわち、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚由来の胚盤胞の内部細胞塊から樹立されたES細胞がntES(nuclear transfer ES)細胞である。ntES細胞の作製のためには、核移植技術(J.B. Cibelli et al. (1998), Nature Biotechnol., 16:642-646)とES細胞作製技術(上記)との組み合わせが利用される(若山清香ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊), 47~52頁)。核移植においては、哺乳動物の除核した未受精卵に、体細胞の核を注入し、数時間培養することで初期化することができる。
Muse細胞は、WO2011/007900に記載された方法にて製造された多能性幹細胞であり、詳細には、線維芽細胞または骨髄間質細胞を長時間トリプシン処理、好ましくは8時間または16時間トリプシン処理した後、浮遊培養することで得られる多能性を有した細胞であり、SSEA-3およびCD105が陽性である。
本発明の軟骨組織の製造方法に用いる多能性幹細胞は、未分化状態を維持しながら3次元浮遊培養することにより得られた細胞である。好ましくは、3次元浮遊培養することにより細胞塊の状態になった細胞である。本発明において、3次元浮遊培養とは、細胞を非接着条件にて、培養液中で撹拌または振とうしながら培養する方法である。
工程(ii)において使用される培養液は、動物細胞の培養に用いられる基礎培地へBMP2(Bone Morphogenetic Protein-2:骨形成タンパク質-2)、TGFβ(Transforming Growth Factor-β:トランスフォーミング増殖因子β)およびGDF5(Growth Differentiation Factor-5)から成る群から選択される1以上の物質ならびにHMG-CoA還元酵素阻害薬を添加して調製することができる。工程(i)で用いる好ましい培養液は、BMP2、TGFβ、GDF5およびHMG-CoA還元酵素阻害薬が添加された基礎培地である。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium(EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium(DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、およびこれらの混合培地などが挙げられる。
工程(iii)は、前記工程(ii)で得られた細胞(細胞塊)を培養容器より剥離させ、浮遊培養することで行い得る。工程(ii)で得られた細胞(細胞塊)を培養容器より剥離させる方法は、力学的分離方法(例えば、ピペッティング、スクレーパーを用いる方法等)により行うことが好ましく、プロテアーゼ活性および/またはコラゲナーゼ活性を有する分離溶液を用いない方法が好ましい。
1-1 材料および方法
ヒトiPS細胞
Nakagawa M, et al, Sci Rep. 4:3594 (2014) に記載の方法で樹立されたFf-I01株を京都大学iPS細胞研究所より受領し、ヒトiPS細胞として用いた。
ヒトiPS細胞は、0.5X TrypLE Selectを添加し、インキュベーションの後、セルスクレーパーを用いて細胞を剥離させた。細胞を計数し、0.5~1.0×107個を 100 mLバイオリアクター(BWV-S10A、エイブル)へ移し、10 nM Y-27632(Wako)を添加したStemFit AK03(Ajinomoto)を100 mLを加えて、6cm magnetic stirrer(BWS-S03NOS-6、エイブル)により60 rpmで回転させ、37 ℃、CO2 5%の条件下で、5日間培養した。その結果、直径50μmから300μmのiPS細胞塊が得られた。
工程(ii)
上記工程(i)で得られたiPS細胞塊を回収し、軟骨分化培地を5 mLを入れた10cm suspension culture dish(sumitomo)へiPS細胞塊を播種した。播種後、37℃、CO2 5%条件下で培養した。1~3日後に、新しい軟骨分化培地へ交換し、以後、2~5日の間隔で培地交換を行い、2~3週間培養を継続した。iPS細胞塊は次第にdishへ接着して結節(nodule)が形成された。
上記工程(ii)で得られた結節をセルスクレーパーで剥がし、6cm suspension culture dish(sumitomo)へ移し、37℃、CO2 5%条件下で培養した。1~5日後に、新しい軟骨分化培地へ交換した。以後、2~7日ごとに培地交換を行った。なお、培地交換時に、dishに貼付いた結節があればセルスクレーパーで剥がして浮遊させた。
バイオリアクターでの培養を開始してから84日目(血清含有培地の場合)または104日目(無血清培地の場合)に得られた組織塊を組織学的分析に供した。組織塊を4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンブロックに包埋した。Semi-serial 切片を用意し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色およびサフラニンO染色(サフラニンO・ファーストグリーン・鉄ヘマトキシリン染色)を行った。また、抗体を用いて免疫染色を行った。一次抗体の検出はCSA II Biotin-free Tyamide Signal Amplification System Kit (Agilent Technologies, CA, USA)を用いて行い、DABで発色させた。
バイオリアクターでの培養を開始してから13~14週目(血清含有培地の場合)または104日目(無血清培地の場合)に得られた組織塊をグリコサミノグリカンの定量に供した。グリコサミノグリカンは、軟骨組織に存在する主要な細胞外マトリックスの1つである。サンプルを乾燥し、質量を測定した後、Multi Beads Shocker (Yasui Kikai)で粉砕した。粉砕したサンプルのグリコサミノグリカン量を、Blyscan Glycosaminoglycan Assay Kit (Biocolor)を用いて測定した。グリコサミノグリカン量を乾燥重量で除した。
バイオリアクターでの培養を開始してから13~14週目(血清含有培地の場合)または104日目(無血清培地の場合)に得られた組織塊を軟骨特異的遺伝子の発現解析に供した。RT-PCRを実施するためのRNAを、各組織塊からRNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて製造業者のプロトコールに従って回収した。得られたトータルRNAをReverTra Ace(TOYOBO)を用いてcDNAへ変換した。リアルタイムPCRは、KAPA SYBR FAST qPCR kit Master Mix ABI prism(KAPA BIOSYSTEMS)を用いてStep One system(ABI)にて行われた。PCRに用いたプライマーを以下に示す。
SOX9 F AGACCTTTGGGCTGCCTTAT(配列番号:1)
SOX9 R TAGCCTCCCTCACTCCAAGA(配列番号:2)
COL1A1 F GTCGAGGGCCAAGACGAAG(配列番号:3)
COL1A1 R CAGATCACGTCATCGCACAAC(配列番号:4)
COL2A1 F TTTCCCAGGTCAAGATGGTC(配列番号:5)
COL2A1 R CTTCAGCACCTGTCTCACCA(配列番号:6)
AGGRECAN F TGAGGAGGGCTGGAACAAGTACC(配列番号:7)
AGGRECAN R GGAGGTGGTAATTGCAGGGAACA(配列番号:8)
組織学的分析
血清含有軟骨分化培地および無血清軟骨分化培地を用いて、それぞれ得られた組織塊をHE染色およびサフラニンO染色した結果を図1に示した。血清含有軟骨分化培地および無血清軟骨分化培地で誘導した塊はともに、サフラニンOで赤く染色される細胞外マトリックス中に細胞が散在する構造をとり、軟骨様の組織像を呈した。
血清含有軟骨分化培地および無血清軟骨分化培地を用いて、それぞれ得られた組織塊におけるグリコサミノグリカンを定量した結果を図3に示した。血清含有軟骨分化培地および無血清軟骨分化培地で誘導した塊はともに、グリコサミノグリカンの含有量が100 mg/gを超えており、軟骨に似た組成を持っていた。
血清含有軟骨分化培地および無血清軟骨分化培地を用いて、それぞれ得られた組織塊におけるSOX9、I型コラーゲン(COL1A1)、II型コラーゲン(COL2A1)およびアグリカン(ACAN)の発現をRT-PCRで測定した結果を図4に示した。血清含有軟骨分化培地および無血清軟骨分化培地で誘導した塊は、iPS細胞に比べてCOL2A1遺伝子、ACAN遺伝子の発現が著しく上昇しており、軟骨に分化したものであることが示唆された。無血清軟骨分化培地で誘導した塊におけるCOL2A1遺伝子の発現は、血清含有軟骨分化培地に比べて低く、軟骨への分化の程度が未熟である可能性が示唆された。
2-1 材料および方法
ヌードラットの関節軟骨欠損部位への移植
雌性ヌードラット(F344/NJc1-rnu rnu/rnu、CLEA Japan、Inc.)を使用した。4週齢のヌードラットの両膝関節の皮膚および関節包を開いた。大腿骨溝に直径1 mm、深さ0.5 mmの穴を開けることにより、各膝に1つの骨軟骨欠損を形成した。本発明の製造方法により、無血清培地を用いて製造したヒトiPS細胞由来軟骨組織(1個)をトリミングして欠損部位に移植した。使用した軟骨組織はバイオリアクターでの培養を開始してから105日に得られたものである。移植後関節包および皮膚を閉じ、1か月後および6か月後にラットを安楽死させ、膝サンプルを回収した。
膝サンプルを4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンブロックに包埋した。Semi-serial 切片を用意し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)またはサフラニンO染色(サフラニンO・ファーストグリーン・鉄ヘマトキシリン染色)を行った。
パラフィン包埋切片を脱パラフィンし、1 mMのEDTA緩衝液(pH8.0)中で80 ℃で15分間インキュベートして抗原を賦活化した。その後、切片を10 mg/mlヒアルロニダーゼで室温にて40分間処理した。緩衝液中の3%過酸化水素溶液および無血清タンパク質でペルオキシダーゼおよびタンパク質をブロッキングした後、切片を一次抗体とともに4 ℃で一晩インキュベートした。
使用した一次抗体は、マウス抗COL2抗体(Thermo Scientific, 1:1000)、ヤギ抗COL1抗体(Southern Biotech, 1:1500)、マウス抗COL10抗体(Invitrogen, 1:1000)、マウス抗LUBRICIN抗体(抗PRG4抗体)(Millipore, 1:500)およびウサギ抗ヒトビメンチン抗体(Abcam, 1:200)である。一次抗体は、CSA IIビオチンフリーTyamideシグナル増幅システムキット(Agilent Technologies、CA、USA)および色素原としてDABを用いて検出した。免疫蛍光染色には、Alexa Fluor 488 または 546(Life Technologies, 1:1000)にコンジュゲートした二次抗体を用いた。DAPIを含むFluoroshield Mounting Medium(Abcam)を使用した。TRAP染色キット(コスモバイオ)を用いてTRAP染色を行った。分析には、BZ-X analyzer(KEYENCE)またはImageJ ver1.51を使用した。
移植後1か月
移植後1か月目に回収した膝サンプルの組織学的分析結果を図5に示した。ヒトビメンチン陽性のヒト由来移植軟骨が欠損部位を充填していることが示された。移植組織はラット関節軟骨と比較してサフラニンO染色性は少し低いが、II型コラーゲンは同程度に発現していた。移植組織の表層はルブリシンを発現していた。
移植後1か月目に回収した膝サンプルの組織学的分析結果を図6および7に示した。ヒトビメンチン陽性のヒト由来移植軟骨が欠損部位を充填していることが示された。移植組織はラット関節軟骨と比較して、サフラニンO染色性は同程度以上、II型コラーゲン発現は同程度であり、I型コラーゲン発現は同程度に低く、軟骨の形質を有していた。また、移植組織の表層はルブリシンを発現し、深層はX型コラーゲンを発現しており、関節軟骨の構造を獲得していた。
Claims (7)
- 多能性幹細胞から軟骨組織を製造する方法であって、
(i)多能性幹細胞を未分化状態で培養できる培養液中で浮遊培養する工程、
(ii)前記工程(i)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質ならびにHMG-CoA還元酵素阻害薬を含み、血清を含まない培養液中で接着条件で培養する工程、および
(iii)前記工程(ii)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質ならびにHMG-CoA還元酵素阻害薬を含み、血清を含まない培養液中で浮遊条件で培養する工程
を含み、
前記工程(ii)および(iii)で用いる培養液が、さらに血清アルブミン、脂肪酸、PDGFおよびコレステロールを含む培養液である、方法。 - 前記工程(ii)および(iii)で用いる培養液が、BMP2、TGFβ、GDF5およびHMG-CoA還元酵素阻害薬を含み、血清を含まない培養液である、請求項1に記載の方法。
- 前記HMG-CoA還元酵素阻害薬が、メバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチンおよびロバスタチンから成る群より選択される薬剤である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記HMG-CoA還元酵素阻害薬が、ロスバスタチンである、請求項3に記載の方法。
- 前記工程(iii)が、前記工程(ii)で得られた細胞を、分離溶液を用いずに浮遊培養を行う工程である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記工程(i)で得られた細胞が、細胞塊の状態である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記軟骨組織が、軟骨細胞と細胞外マトリックスを含む組織塊である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
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