以下、本発明の一実施形態に係る接合部材、杭部材と柱部材との接合構造、及び、杭部材と柱部材との接合方法について、添付図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る接合部材1A及び接合構造100Aの一例を示し、(a)は分解斜視図、(b)は組立斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る接合部材1Aの一例を示す斜視図である。図3は、第1の実施形態に係る接合部材1A及び接合構造100Aの一例を示す縦断面図である。図4は、第1の実施形態に係る接合部材1A及び接合構造100Aの一例を示し、(a)はA-A線断面図である。(b)はB-B線断面図である。
接合部材1Aは、杭部材2の杭頭部20と、柱部材3の柱脚部30とを接合する部材である。杭部材2及び柱部材3は、例えば、鉄道用又は道路用の高架、橋、建物等のコンクリート構造体の一部を構成するものである。
杭部材2は、例えば、円柱状に形成されており、杭頭部20の上面200から上方に突設した複数の杭主鉄筋21を有する。複数の杭主鉄筋21は、鉛直方向に沿って並行に配筋されるとともに、平面視において円形状に等間隔で配筋されている。なお、杭部材2は、現場打ちコンクリート製でもよいし、プレキャストコンクリート製でもよい。
柱部材3は、プレキャストコンクリート製であって、例えば、四角柱状に形成されており、柱脚部30の下面300から下方に突設した複数の柱主鉄筋31を有する。複数の柱主鉄筋31は、鉛直方向に沿って並行に配筋されるとともに、本実施形態では、2本を1組として、平面視において矩形状に等間隔で配筋されている。また、柱部材3は、柱脚部30の下面300に、接合部材1Aが有する凸部151a(詳細は後述する)に対応する凹部(不図示)を有する。
根巻鋼管4は、杭部材2の外形よりも大きな内径を有する中空円形状の管である。根巻鋼管4は、軸方向が鉛直方向に沿って配置されるとともに、杭頭部20の外周を覆うようにして、地中に埋設される。このとき、根巻鋼管4の下端40は、杭頭部20の上面200よりも低い位置に配置されるとともに、根巻鋼管4の上端41は、杭頭部20の上面200から突設した複数の杭主鉄筋21の先端よりも高く、かつ、地面GLよりも低い位置に配置される。
接合部材1Aは、図2に示すように、複数の杭主鉄筋21と並行に配置されて複数の杭主鉄筋21に接続される複数の杭接合用鉄筋12及び複数の杭接合用鉄筋12に延設される複数の柱接合用鉄筋13を含む複数の接合用鉄筋11と、複数の柱接合用鉄筋13を複数の柱主鉄筋31に接続させる複数の柱接合用継手14と、複数の接合用鉄筋11の軸方向の一部及び複数の柱接合用継手14を埋設するプレキャストコンクリート製の本体部15とを備える。
複数の接合用鉄筋11は、鉛直方向に沿って並行に配筋されるとともに、本実施形態では、2本を1組として、平面視において矩形状に等間隔で配筋されている。
本実施形態では、接合用鉄筋11は、杭接合用鉄筋12と、柱接合用鉄筋13とを含むように連続する1本の鉄筋で構成されている。したがって、接合用鉄筋11のうち杭部材2側に位置する部分が、杭接合用鉄筋12に相当し、接合用鉄筋11のうち柱部材3側に位置する部分が、柱接合用鉄筋13に相当する。また、本実施形態では、複数の杭接合用鉄筋12及び複数の柱接合用鉄筋13の各々は、2本を1組として、平面視において矩形状に等間隔で配筋されている。
複数の柱接合用継手14は、平面視において矩形状に等間隔で配置される。本実施形態では、柱接合用継手14として、中空円形状のスリーブ140を用いたモルタル等充填式継手を採用し、スリーブ140は、軸方向が鉛直方向に沿って配置される。なお、柱接合用継手14は、柱主鉄筋31と柱接合用鉄筋13とを接続する機械式継手であればよく、モルタル等充填式継手以外に、他の形式の機械式継手を使用してもよい。
スリーブ140は、本体部15の上面151を面一とし、スリーブ140の上部には、スリーブ140の開口部を塞ぐキャップ142が装着可能である。キャップ142は、柱部材3が接合部材1Aに建て込まれる前まで装着されている。スリーブ140の下部には、底板141が設けられており、スリーブ140の内部には、2本1組の柱接合用鉄筋13が、底板141を貫通して本体部15の上面151に向かって突設するように配置される。2本1組の柱接合用鉄筋13は、溶接、接着剤等に底板141に取り付けられる。
本体部15は、図4に示すように、鉛直方向に直交する断面形状として、矩形状に形成されており、その外形は、柱部材3と略同一であって、根巻鋼管4の内径よりも小さい。本体部15は、その下面150に、中心部から外側に向かって上方に傾斜する傾斜面を有する。すなわち、本体部15の下面150は、中心部が下方に膨らむような四角錐状に形成されている。本体部15は、その上面151に、上方に円形状に突起し、せん断キー、ガイド、ストッパーとして機能する凸部151aを有し、凸部151aは、柱脚部30の下面300に形成された凹部(不図示)に対応するように形成されている。
なお、接合部材1Aの接合用鉄筋11、杭部材2の杭主鉄筋21及び柱部材3の柱主鉄筋31は、異形鉄筋を用いることが望ましいが、突起の付いた丸鋼を用いてもよいし、複数の鉄筋を束ねたものでもよい。また、接合用鉄筋11、柱接合用継手14、杭主鉄筋21及び柱主鉄筋31の配置、間隔、本数、サイズ等は、適宜変更してもよい。さらに、杭部材2及び柱部材3は、杭主鉄筋21及び柱主鉄筋31以外に、例えば、帯鉄筋等の鉄筋を備えるものであるが、各図面では図示を省略している。
図5は、第1の実施形態に係る接合部材1Aに位置調整・仮受治具16が取り付けられた状態の一例を示す縦断面図である。図6は、第1の実施形態に係る接合部材1Aに位置調整・仮受治具16が取り付けられた状態の一例を示し、(a)は拡大縦断面図、(b)は平面図である。
接合部材1Aは、図5、図6に示すように、接合部材1Aに着脱自在に取り付けられて、接合部材1Aの自重を仮受けするとともに、その仮受けした仮受状態において接合部材1Aが杭頭部20に接合されるときの接合部材1Aの水平方向及び鉛直方向の位置を調整する位置調整・仮受治具16を備える。
位置調整・仮受治具16は、根巻鋼管4からの反力を用いて、水平方向及び鉛直方向に移動可能な状態で接合部材1Aの自重を仮受けするとともに、接合部材1Aが杭頭部20に接合されるときの接合部材1Aの水平方向及び鉛直方向の位置(仮受位置)を調整する。このとき、接合部材1Aの水平方向及び鉛直方向の位置は、柱脚部30が接合部材1Aに接合されたときの柱部材3の水平方向及び鉛直方向の位置が、設計上の正規の位置に設置されるように調整される。
位置調整・仮受治具16は、その具体的な構成として、固定ボルト163により本体部15の4方向の側面152にそれぞれ固定され、本体部15に対して水平方向の外側に延設された複数のブラケット160と、根巻鋼管4の上端41に載置されて、複数のブラケット160をそれぞれ支持する複数の支持体161と、ブラケット160と支持体161とを移動可能に接続する接続ボルト162とを備える。本実施形態では、ブラケット160及び支持体161の数は8つであり、本体部15の4方向の側面152に対して2つずつ配置される。
ブラケット160は、L字状に配置された第1の板状部材160a及び第2の板状部材160bと、台形状に形成されて、第1の板状部材160a及び第2の板状部材160bに対して直交するように取り付けられた第3の板状部材160cとを備える。第1の板状部材160aは、固定ボルト163が貫通可能なボルト孔を有し、固定ボルト163により本体部15の側面152に固定される。第2の板状部材160bは、接続ボルト162が貫通可能なボルト孔を有し、第1の板状部材160aが本体部15の側面152に固定されたとき、水平方向に沿って配置される。
支持体161は、例えば、H形鋼で構成されており、その上部に、接続ボルト162が貫通可能であって、接続ボルト162の直径よりも拡径された拡大孔161aを有する。
接続ボルト162は、第2の板状部材160bのボルト孔と、支持体161の拡大孔161aとを貫通し、ワッシャーやナットを介してブラケット160と支持体161とを接続する。このとき、拡大孔161aと接続ボルト162との間には、水平方向に隙間が生じているため、その隙間の範囲内で拡大孔161aに対して接続ボルト162を水平方向に移動させることで、支持体161に対するブラケット160の水平方向の位置を調整する。これにより、接合部材1Aの水平方向の位置が調整される。また、接続ボルト162の締緩に応じて、ブラケット160と支持体161との間の鉛直方向の間隔を変化させることで、支持体161に対するブラケット160の鉛直方向の位置を調整する。これにより、接合部材1Aの鉛直方向の位置が調整される。
(杭部材2と柱部材3との接合構造)
上記構成を有する接合部材1Aを介して、杭部材2の杭頭部20と、柱部材3の柱脚部30とを接合する接合構造100Aでは、接合部材1Aは、杭頭部20の外周を覆う根巻鋼管4内において、複数の杭主鉄筋21と複数の杭接合用鉄筋12とが並行に配置されたラップ部分110を形成するように、根巻鋼管4に挿入される。
その際、杭頭部20と接合部材1Aとは、接合部材1Aに取り付けられた位置調整・仮受治具16により、接合部材1Aの自重が仮受けされるとともに、接合部材1Aの水平方向及び鉛直方向の位置が調整された状態で、ラップ部分110が形成された根巻鋼管4内にコンクリートC20が打設されて硬化することにより接合される。
また、柱脚部30と接合部材1Aとは、根巻鋼管4内に打設されたコンクリートC20が硬化した後、位置調整・仮受治具16が接合部材1Aから取り外されるとともに、柱部材3が接合部材1Aに建て込まれて、複数の柱接合用継手14により複数の柱主鉄筋31と複数の柱接合用鉄筋13とが接続されることにより接合される。
(杭部材2と柱部材3との接合方法)
次に、上記構成を有する接合部材1Aを介して、杭部材2の杭頭部20と、柱部材3の柱脚部30とを接合する接合方法について説明する。
図7及び図8は、第1の実施形態に係る接合部材1Aを用いた接合方法の各工程を示す図である。ここでは、杭部材2が、地中に埋設されるとともに、根巻鋼管4が、杭頭部20の外周を覆うようにして、地面GLの直下に配置されて、杭頭部20の上面200から所定の高さ(打設高h10)まで根巻鋼管4内にコンクリートC10が打設されて硬化した状態であるものとして説明する。
まず、挿入工程では、図7(a)に示すように、接合部材1Aを根巻鋼管4に挿入する。具体的には、接合部材1Aが、例えば、揚重機(不図示)により、根巻鋼管4の上方で複数の杭接合用鉄筋12を下向きにして吊り上げられた状態から徐々に吊り下げられることで、根巻鋼管4内において複数の杭主鉄筋21と複数の杭接合用鉄筋12とが並行に配置されたラップ部分110を形成するように、根巻鋼管4に挿入されていく。
さらに、接合部材1Aが、揚重機により吊り下げられると、図7(b)に示すように、本体部15に取り付けられたブラケット160が、接続ボルト162を介して根巻鋼管4の上端41に載置された支持体161に接続され、接合部材1Aの自重分の反力を、ブラケット160を介して支持体161に伝達させることで、位置調整・仮受治具16は、接合部材1Aの仮受設備として機能する。そして、接合部材1Aは、位置調整・仮受治具16により水平方向及び鉛直方向に移動可能な状態で支持される。なお、ブラケット160は、施工現場において挿入工程が行われる前に接合部材1Aに取り付けられてもよいし、工場等で予め接合部材1Aに取り付けられていてもよい。
次に、位置調整工程では、図7(b)に示すように、接合部材1Aに取り付けられた位置調整・仮受治具16を用いて、接合部材1Aの自重を仮受けするとともに、その仮受けした仮受状態において接合部材1Aが杭頭部20に接合されるときの接合部材1Aの水平方向及び鉛直方向の位置を調整する。
具体的には、拡大孔161aに対して接続ボルト162を水平方向に移動させて、支持体161に対するブラケット160の水平方向の位置を調整することにより、接合部材1Aの水平方向の位置を調整する。また、接続ボルト162の締緩に応じて、支持体161に対するブラケット160の鉛直方向の位置を調整するにより、接合部材1Aの鉛直方向の位置を調整する。
次に、第1の接合工程では、図7(c)に示すように、ラップ部分110が形成された根巻鋼管4内にコンクリートC20を打設し硬化させる。コンクリートC20は、根巻鋼管4の上端41(=打設高h20)まで打設される。そして、コンクリートC20が硬化し、コンクリートC20の強度が発現することにより、複数の杭主鉄筋21と複数の杭接合用鉄筋12とが接続されるため、杭頭部20と接合部材1Aとが接合される。そして、コンクリートC20が硬化し、コンクリートC20の強度が発現することにより、接合部材1Aは、コンクリートC20により支持されるため、仮受設備を兼ねる位置調整・仮受治具16の撤去が可能になる。
次に、治具取り外し工程では、図8(a)に示すように、コンクリートC20が硬化した後、位置調整・仮受治具16を接合部材1Aから取り外す。具体的には、ブラケット160を本体部15から取り外すとともに、根巻鋼管4の上端41に載置された支持体161を撤去する。
次に、第2の接合工程では、図8(b)に示すように、コンクリートC20が硬化した後、柱部材3を接合部材1Aに建て込み、複数の柱接合用継手14により複数の柱主鉄筋31と複数の柱接合用鉄筋13とを接続することにより、柱脚部30と接合部材1Aとを接合する。
具体的には、柱部材3が、例えば、揚重機(不図示)により、接合部材1Aの上方で複数の柱主鉄筋31を下向きにして吊り上げられた状態から徐々に吊り下げられることで、2本1組の柱主鉄筋31が、各スリーブ140に挿入されていく。このとき、スリーブ140の内部には、モルタル等の硬化剤が未硬化状態で充填されている。
さらに、柱部材3が、揚重機により吊り下げられると、柱脚部30の下面が、本体部15の上面151に接触することで、柱部材3は、図8(c)に示すように、接合部材1Aの上部に設置される。そして、スリーブ140の内部に充填された硬化剤が硬化することで、複数の柱接合用継手14により2本1組の柱主鉄筋31と2本1組の柱接合用鉄筋13とがそれぞれ接続されることにより、柱脚部30と接合部材1Aとが接合される。なお、コンクリートC20が硬化した後、すなわち、コンクリートC20の強度発現後は、接合部材1Aは、コンクリートC20により支持されるため、コンクリートC20が硬化した後であれば、任意のタイミングで仮受設備を兼ねる位置調整・仮受治具16の撤去が可能になる。よって、治具取り外し工程と、第2の接合工程との順番は入れ替えてもよい。
次に、間詰め部充填工程では、図8(c)に示すように、本体部15の周囲であって、地面GLと根巻鋼管4の上端41との間に存在する空間に対して、間詰めコンクリートC30を打設し硬化させる。以上のようにして、接合部材1Aを介して、杭部材2の杭頭部20と、柱部材3の柱脚部30とが接合される。
本実施形態に係る接合部材1A及び接合構造100Aによれば、接合部材1Aは、第1の接合工程において杭主鉄筋21及び杭接合用鉄筋12を介して杭頭部20に接合されるとともに、第2の接合工程において柱接合用継手14により柱主鉄筋31及び柱接合用鉄筋13を介して柱脚部30に接合される。そのため、杭頭部20と柱脚部30とは、直接接合されるのではなく、接合部材1Aが杭頭部20に接合された状態で、柱脚部30が接合部材1Aに接合されることにより、接合部材1Aを介して接合される。
したがって、第1の接合工程において接合部材1Aが杭頭部20に接合される際、柱部材3よりも短尺で軽量な接合部材1Aを用いて、その後の第2の接合工程(柱部材3の建方作業)において柱脚部30が接合部材1Aに接合されたときの柱部材3の位置が、設計上の正規の位置に設置されるように、位置決めすることが可能になるので、杭部材2の施工誤差を吸収しつつ、柱部材3の施工性及び建方精度を向上することができる。また、柱脚部30と接合部材1Aとは、柱接合用継手14によりコンクリートの強度発現に伴う養生期間よりも短時間で接合されるので、施工中の地震に対する安全性を向上することができる。
また、接合部材1Aは、接合用鉄筋11の軸方向の一部及び柱接合用継手14を埋設するプレキャストコンクリート製の本体部15を備える。したがって、接合部材1Aは、工場等で予め製作されて施工現場に搬送されるので、施工現場での施工作業を簡略化し、工期を短縮することができる。
また、本体部15は、その下面150に、中心部から外側に向かって上方に傾斜する傾斜面を有し、下面150は、例えば、四角錐状に形成されている。したがって、第1の接合工程においてコンクリートC20が打設されたとき、コンクリートC20内の気泡が傾斜面に沿って上方に抜けやすくなるので、コンクリートC20の充填性が向上し、杭頭部20と接合部材1Aとの接合強度を向上することができる。
また、接合部材1Aは、接合部材1Aに着脱自在に取り付けられて、接合部材1Aの自重を仮受けするとともに、接合部材1Aが杭頭部20に接合されるときの接合部材1Aの水平方向及び鉛直方向の位置を調整する位置調整・仮受治具16を備える。したがって、接合部材1Aは、仮受設備を兼ねる位置調整・仮受治具16を用いて高精度かつ簡単に位置決めされるので、柱部材3の施工性及び建方精度を向上することができる。
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係る接合部材1B及び接合構造100Bの一例を示す縦断面図である。図10は、第2の実施形態に係る接合部材1Bに位置調整・仮受治具16が取り付けられた状態の一例を示し、(a)は拡大縦断面図、(b)は平面図である。
第1の実施形態に係る接合部材1A及び接合構造100Aでは、接合部材1Aの鉛直方向の位置として、本体部15の一部が根巻鋼管4に挿入されることで、本体部15の上面151が、根巻鋼管4の上端41よりも高い位置に配置されたものである。これに対し、第2の実施形態に係る接合部材1B及び接合構造100Bでは、接合部材1Bの鉛直方向の位置として、柱接合用継手14及び本体部15の全部が根巻鋼管4に挿入されることで、本体部15の上面151が、根巻鋼管4の上端41と同じ高さ、又は、根巻鋼管4の上端41よりも低い位置に配置されるように変更したものである。その他の基本的な構成は、第1の実施形態と共通するため、以下、上記変更に関連する部分を中心に説明する。
位置調整・仮受治具16は、本体部15の外形よりも大きな内径を有する中空矩形状の鋼管継材164Aをさらに備える。鋼管継材164Aは、本体部15が根巻鋼管4に挿入される分を考慮した高さを有する。
位置調整・仮受治具16が、挿入工程及び位置調整工程で使用される場合、鋼管継材164Aに挿入された本体部15の一部が、鋼管継材164Aの下端側の開口部から突出した状態を保持するように、鋼管継材164Aの下部が、固定ボルト163Aにより本体部15の側面152に固定される。また、ブラケット160が、鋼管継材164Aの4方向の側面に対して2つずつ配置されて、第1の板状部材160aが、固定ボルト163Bにより鋼管継材164Aの上部に固定される。
(杭部材2と柱部材3との接合方法)
上記構成を有する接合部材1Bを用いた接合方法では、挿入工程及び位置調整工程は、鋼管継材164A及びブラケット160が、接合部材1Aに取り付けられた状態で行われる。なお、鋼管継材164Aは、工場等で予め接合部材1Bに取り付けられ、ブラケット160は、施工現場で挿入工程が行われる前に鋼管継材164Aに取り付けられるのが好ましい。
そして、位置調整工程が、第1の実施形態と同様に行われた後、第1の接合工程では、根巻鋼管4内にコンクリートC21を打設し硬化させる。コンクリートC21は、鋼管継材164Aの下端の直下(=打設高h21)まで打設される。
次に、治具取り外し工程では、鋼管継材164A及びブラケット160を接合部材1Bから取り外すとともに、根巻鋼管4の上端41に載置された支持体161を撤去する。
その後、第2の接合工程及び間詰め部充填工程が、第1の実施形態と同様に行われることにより、接合部材1Bを介して、杭部材2の杭頭部20と、柱部材3の柱脚部30とが接合される。
本実施形態に係る接合部材1B及び接合構造100Bによれば、柱接合用継手14及び本体部15の全部が、根巻鋼管4に挿入される。したがって、杭主鉄筋21と杭接合用鉄筋12とが並行に配置されたラップ部分110だけでなく、柱主鉄筋31と柱接合用鉄筋13とを接続する柱接合用継手14についても、根巻鋼管4の内側に配置されるので、柱脚部30と接合部材1Bとの接合強度を向上することができる。
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係る接合部材1C及び接合構造100Cの一例を示す縦断面図である。図12は、第3の実施形態に係る接合部材1C及び接合構造100Cの一例を示す横断面図であり、(a)はC-C線断面図である。(b)はD-D線断面図である。
第1の実施形態に係る接合部材1A及び接合構造100Aでは、本体部15の断面形状が、矩形状に形成されたものである。これに対し、第3の実施形態に係る接合部材1C及び接合構造100Cでは、本体部15の断面形状が、円形状に形成されるように変更したものである。その他の基本的な構成は、第1の実施形態と共通するため、以下、上記変更に関連する部分を中心に説明する。
本体部15は、その下面150に、中心部から外側に向かって上方に傾斜する傾斜面を有し、例えば、下面150は、中心部が下方に膨らむような円錐状に形成されている。なお、ブラケット160及び支持体161は、本体部15の側面152に対して周方向に沿って所定の間隔で配置され、ブラケット160及び支持体161の数や配置間隔は、適宜変更してもよい。
本実施形態に係る接合部材1C及び接合構造100Cによれば、本体部15の断面形状が、円形状に形成される。したがって、本体部15が、根巻鋼管4に挿入されたとき、本体部15と根巻鋼管4とが、平面視において略同心円状に配置されて、本体部15の側面152と根巻鋼管4との内周面との距離が略均等になるので、杭頭部20と接合部材1Cとの接合強度を向上することができる。
(第4の実施形態)
図13は、第4の実施形態に係る接合部材1Dの一例を示す斜視図である。
第1の実施形態に係る接合部材1Aでは、接合用鉄筋11が、杭接合用鉄筋12と、柱接合用鉄筋13とを含むように連続する1本の鉄筋で構成されたものである。これに対し、第4の実施形態に係る接合部材1Dでは、杭接合用鉄筋12と柱接合用鉄筋13とが別々の鉄筋で構成され、接合用鉄筋11は、杭接合用鉄筋12と柱接合用鉄筋13とを、鉄筋連結部材17Aを介して連結するように変更したものである。その他の基本的な構成は、第1の実施形態と共通するため、以下、上記変更に関連する部分を中心に説明する。
鉄筋連結部材17Aは、鉄筋の端部同士を1対1で連結する機械式継手であり、例えば、ねじ節鉄筋継手、端部ねじ加工継手、鋼管圧着継手、モルタル等充填式継手等の各種の機械式継手が使用される。
接合部材1Dの本体部15は、複数の柱接合用鉄筋13及び複数の柱接合用継手14を埋設するものであり、工場等から施工現場には、複数の柱接合用鉄筋13から複数の杭接合用鉄筋12が取り外された状態で搬送される。そして、施工現場において、挿入工程が行われる前に、柱接合用鉄筋13には、鉄筋連結部材17Aを介して杭接合用鉄筋12が連結される。
本実施形態に係る接合部材1Dによれば、接合用鉄筋11は、杭接合用鉄筋12と柱接合用鉄筋13とが鉄筋連結部材17Aを介して連結されて構成されている。したがって、接合部材1Dは、柱接合用鉄筋13から杭接合用鉄筋12を取り外すことが可能になるので、例えば、搬送時等における接合部材1Dの取り扱いを容易にすることができる。
(第5の実施形態)
図14は、第5の実施形態に係る接合部材1Eの一例を示す斜視図である。図15は、第5の実施形態に係る接合部材1E及び接合構造100Eの一例を示す縦断面図である。図16は、第5の実施形態に係る接合部材1E及び接合構造100Eの一例を示し、(a)はE-E線断面図である。(b)はF-F線断面図である。
第4の実施形態に係る接合部材1Dでは、鉄筋連結部材17Aが、杭接合用鉄筋12と柱接合用鉄筋13とを1対1で連結したものである。これに対し、第5の実施形態に係る接合部材1Eでは、鉄筋連結部材17Bが、複数の杭接合用鉄筋12と、複数の柱接合用鉄筋13とを多対多で連結するとともに、平面視における複数の杭接合用鉄筋12の配置(円形配置)と、平面視における複数の柱接合用鉄筋13の配置(矩形配置)とを異なる配置に変換するように変更したものである。その他の基本的な構成は、第1及び第4の実施形態と共通するため、以下、上記変更に関連する部分を中心に説明する。
鉄筋連結部材17Bは、板厚方向が鉛直方向に沿って配置される板状部材で構成されている。鉄筋連結部材17Bは、例えば、ドーナツ状に形成されており、根巻鋼管4の内径よりも小さな外径を有する。鉄筋連結部材17Bは、板厚方向に貫通する貫通孔として、複数の杭接合用鉄筋12が取付ナット171aによりそれぞれ取り付けられる複数の第1の鉄筋取付部171と、複数の柱接合用鉄筋13が取付ナット172aによりそれぞれ取り付けられる複数の第2の鉄筋取付部172とを有し、第1の鉄筋取付部171と第2の鉄筋取付部172とは、異なる位置に形成されている。
複数の第1の鉄筋取付部171は、円形状に配置された複数の杭主鉄筋21の各位置を結ぶ円よりも径方向外側の位置に対して、円形状に等間隔で形成されている。複数の第2の鉄筋取付部172は、矩形状に配置された複数の柱接合用鉄筋13の各位置に合わせて、矩形状に等間隔で形成されている。
鉄筋連結部材17Bは、複数の柱接合用鉄筋13による矩形配置を、複数の杭接合用鉄筋12による円形配置に変換することにより、複数の杭主鉄筋21と複数の杭接合用鉄筋12とが並行に配置されたとき、複数の杭接合用鉄筋12は、円形状に配置された複数の杭主鉄筋21の外側を円形状に囲むように配置される。
本実施形態に係る接合部材1E及び接合構造100Eによれば、鉄筋連結部材17Bが有する第1の鉄筋取付部171と第2の鉄筋取付部172とは、異なる位置に形成されており、鉄筋連結部材17Bは、例えば、複数の柱接合用鉄筋13による矩形配置を、複数の杭接合用鉄筋12による円形配置に変換する。したがって、鉄筋連結部材17Bは、複数の杭主鉄筋21と複数の杭接合用鉄筋12とが並行に配置される際、両鉄筋が干渉せずに十分な間隔を確保するように、複数の杭接合用鉄筋12の配置を変換することが可能になるので、挿入工程や位置調整工程の作業性を向上することができる。
(第6の実施形態)
図17は、第6の実施形態に係る接合部材1Fの一例を示す斜視図である。図18は、第6の実施形態に係る接合部材1F及び接合構造100Fの一例を示す縦断面図である。図19は、第6の実施形態に係る接合部材1Fに位置調整・仮受治具16が取り付けられた状態の一例を示し、(a)は拡大縦断面図、(b)は平面図である。
第1の実施形態に係る接合部材1A及び接合構造100Aでは、接合部材1Aが、複数の柱接合用鉄筋13及び複数の柱接合用継手14を埋設するプレキャストコンクリート製の本体部15を備えたものである。これに対し、第6の実施形態に係る接合部材1F及び接合構造100Fでは、接合部材1Aが、プレキャストコンクリート製の本体部15に代えて、複数の接合用鉄筋11及び複数の柱接合用継手14を所定の配置状態(本実施形態では、矩形状に配置)に保持するアンカーフレーム部18Aを備えることで、アンカーフレーム構造を採用するように変更したものである。その他の基本的な構成は、第1の実施形態と共通するため、以下、上記変更に関連する部分を中心に説明する。
アンカーフレーム部18Aは、鉛直方向に所定の間隔をあけて配置される上部フレーム部180A及び下部フレーム部180Bを備え、上部フレーム部180A及び下部フレーム部180Bは、板厚方向が鉛直方向に沿って配置される。なお、本実施形態では、フレーム部180A、180Bの数は、2つであるが、3つ以上でもよい。
上部フレーム部180A及び下部フレーム部180Bは、平面視において、例えば、ロ字状に形成されており、根巻鋼管4の内径よりも小さな外径を有する。上部フレーム部180A及び下部フレーム部180Bは、板厚方向に貫通する貫通孔として、複数のスリーブ140がそれぞれ取り付けられる複数の継手取付部181を有する。なお、本実施形態では、アンカーフレーム部18Aは、複数のスリーブ140が複数の継手取付部181に、例えば、溶接、接着剤等によりそれぞれ取り付けられることで、複数の接合用鉄筋11及び複数の柱接合用継手14を所定の配置状態に保持する。
位置調整・仮受治具16は、アンカーフレーム部18Aの外周を矩形状に囲むように組立・分解可能な鋼製型枠165Aをさらに備える。鋼製型枠165Aは、スリーブ140の高さと同程度の高さを有する。鋼製型枠165Aは、その上部に、上部フレーム部180Aを上下から挟持する上部挟持ブロック166Aを備えるとともに、その下部に、下部フレーム部180Bを上下からそれぞれ挟持する下部挟持ブロック166Bを備える。
位置調整・仮受治具16が、挿入工程及び位置調整工程で使用される場合、鋼製型枠165Aは、その上端及び下端が柱接合用継手14と一致するような高さに配置されるとともに、アンカーフレーム部18Aの外周を囲むように矩形状に組み立てられる。このとき、上部挟持ブロック166A及び下部挟持ブロック166Bが、上部フレーム部180A及び下部フレーム部180Bをそれぞれ挟持することにより、鋼製型枠165Aが、接合部材1Fに固定される。また、ブラケット160が、鋼製型枠165Aの4方向の側面に対して2つずつ配置されて、第1の板状部材160aが、固定ボルト163により鋼製型枠165Aの上部に固定される。
(杭部材2と柱部材3との接合方法)
図20及び図21は、第6の実施形態に係る接合部材1Fを用いた接合方法の各工程を示す図である。
上記構成を有する接合部材1Fを用いた接合方法では、図20(a)に示す挿入工程、及び、図20(b)に示す位置調整工程は、鋼製型枠165A及びブラケット160が、接合部材1Fに取り付けられた状態で行われる。なお、鋼製型枠165Aは、工場等で予め接合部材1Fに取り付けられ、ブラケット160は、施工現場で挿入工程が行われる前に鋼製型枠165Aに取り付けられるのが好ましい。
そして、位置調整工程が、図20(b)に示すように、第1の実施形態と同様に行われた後、第1の接合工程では、図20(c)に示すように、根巻鋼管4及び鋼製型枠165A内にコンクリートC22、C23を2段階で打設し硬化させる。1段階目のコンクリートC22は、根巻鋼管4の上端41(=打設高h22)まで打設される。そして、1段階目のコンクリートC22が硬化した後、2段階目のコンクリートC23は、鋼製型枠165A内に対して、鋼製型枠165Aの上端(=打設高h23)まで打設される。
次に、治具取り外し工程では、図21(a)に示すように、鋼製型枠165A及びブラケット160を接合部材1Fから取り外すとともに、根巻鋼管4の上端41に載置された支持体161を撤去する。
その後、図21(b)に示す第2の接合工程、及び、図21(c)に示す間詰め部充填工程が、第1の実施形態と同様に行われることにより、接合部材1Fを介して、杭部材2の杭頭部20と、柱部材3の柱脚部30とが接合される。
本実施形態に係る接合部材1E及び接合構造100Eによれば、接合部材1Eが、複数の接合用鉄筋11及び複数の柱接合用継手14を所定の配置状態に保持するアンカーフレーム部18Aを備える。したがって、接合部材1Eは、アンカーフレーム構造により剛性が高くなるので、杭頭部20と接合部材1Aとの接合強度、及び、柱脚部30と接合部材1Eとの接合強度を向上することができる。
(第7の実施形態)
図22は、第7の実施形態に係る接合部材1G及び接合構造100Gの一例を示す縦断面図である。図23は、第7の実施形態に係る接合部材1Gに位置調整・仮受治具16が取り付けられた状態の一例を示し、(a)は拡大縦断面図、(b)は平面図である。
第6の実施形態に係る接合部材1F及び接合構造100Fでは、接合部材1Fの鉛直方向の位置として、柱接合用継手14の下端が、根巻鋼管4の上端41と同じ高さに配置されたものである。これに対し、第7の実施形態に係る接合部材1F及び接合構造100Fでは、接合部材1Fの鉛直方向の位置として、柱接合用継手14及びアンカーフレーム部18Aが、根巻鋼管4に挿入されることで、柱接合用継手14の上端が、根巻鋼管4の上端41と同じ高さ、又は、根巻鋼管4の上端41よりも低い位置に配置されるように変更したものである。その他の基本的な構成は、第6の実施形態と共通するため、以下、上記変更に関連する部分を中心に説明する。
鋼製型枠165Bは、柱接合用継手14及びアンカーフレーム部18Aが根巻鋼管4に挿入される分を考慮した高さを有する。鋼製型枠165Bは、その下部に、上部挟持ブロック166A及び下部挟持ブロック166Bを備える。
位置調整・仮受治具16が、挿入工程及び位置調整工程で使用される場合、鋼製型枠165Bは、その下端が柱接合用継手14の下端よりも高い位置に配置されるとともに、アンカーフレーム部18Aの外周を囲むように矩形状に組み立てられる。このとき、上部挟持ブロック166A及び下部挟持ブロック166Bが、上部フレーム部180A及び下部フレーム部180Bをそれぞれ挟持することにより、鋼製型枠165Bが、接合部材1Fに固定される。また、ブラケット160が、鋼製型枠165Bの4方向の側面に対して2つずつ配置されて、第1の板状部材160aが、固定ボルト163により鋼製型枠165Bの上部に固定される。
(杭部材2と柱部材3との接合方法)
上記構成を有する接合部材1Gを用いた接合方法では、挿入工程及び位置調整工程は、鋼製型枠165B及びブラケット160が、接合部材1Gに取り付けられた状態で行われる。なお、鋼製型枠165Bは、工場等で予め接合部材1Gに取り付けられ、ブラケット160は、施工現場で挿入工程が行われる前に鋼製型枠165Bに取り付けられるのが好ましい。
そして、位置調整工程が、第1の実施形態と同様に行われた後、第1の接合工程では、根巻鋼管4及び鋼製型枠165B内にコンクリートC24、C25を2段階で打設し硬化させる。1段階目のコンクリートC24は、鋼製型枠165Bの下端(=打設高h24)まで打設される。そして、1段階目のコンクリートC24が硬化した後、2段階目のコンクリートC25は、鋼製型枠165B内に対して、根巻鋼管4の上端41(=打設高h25)まで打設される。
次に、治具取り外し工程では、鋼製型枠165B及びブラケット160を接合部材1Gから取り外すとともに、根巻鋼管4の上端41に載置された支持体161を撤去する。
その後、第2の接合工程及び間詰め部充填工程が、第1の実施形態と同様に行われることにより、接合部材1Gを介して、杭部材2の杭頭部20と、柱部材3の柱脚部30とが接合される。
本実施形態に係る接合部材1F及び接合構造100Fによれば、柱接合用継手14及びアンカーフレーム部18Aが、根巻鋼管4に挿入される。したがって、杭主鉄筋21と杭接合用鉄筋12とが並行に配置されたラップ部分110だけでなく、柱主鉄筋31と柱接合用鉄筋13とを接続する柱接合用継手14についても、根巻鋼管4の内側に配置されるので、柱脚部30と接合部材1Bとの接合強度を向上することができる。
(第8の実施形態)
図24は、第8の実施形態に係る接合部材1H及び接合構造100Hの一例を示す縦断面図である。図25は、第8の実施形態に係る接合部材1Hに位置調整・仮受治具16が取り付けられた状態の一例を示し、(a)は拡大縦断面図、(b)は平面図である。
第7の実施形態に係る接合部材1G及び接合構造100Gでは、接合部材1Fの鉛直方向の位置として、柱接合用継手14の上端が、根巻鋼管4の上端41と同じ高さに配置されるように、位置調整・仮受治具16が、鋼製型枠165Bを備えたものである。これに対し、第8の実施形態に係る接合部材1F及び接合構造100Fでは、位置調整・仮受治具16が、鋼製型枠165Bに代えて、鋼管継材164Bを備えるとともに、複数の接合用鉄筋11及び複数の柱接合用継手14と、アンカーフレーム部18Bとを、ロック機構19を介して組立・分解可能な構造に変更したものである。その他の基本的な構成は、第7の実施形態と共通するため、以下、上記変更に関連する部分を中心に説明する。
鋼管継材164Bは、第2の実施形態に係る鋼管継材164Aと同様に構成されている。鋼管継材164Bは、その内面に、上部フレーム部180Aを支持する支持ブロック167を備える。
位置調整・仮受治具16が、挿入工程及び位置調整工程で使用される場合、鋼管継材164Bに挿入された柱接合用継手14の一部が、鋼管継材164Bの下端側の開口部から突出した状態を保持するように、支持ブロック167が、上部フレーム部180Aを支持する。また、ブラケット160が、鋼管継材164Bの4方向の側面に対して2つずつ配置されて、第1の板状部材160aが、固定ボルト163により鋼管継材164Bの上部に固定される。
図26は、第8の実施形態に係るアンカーフレーム部18Bの一例を示し、(a)は第1のプレート部材182の平面図、(b)は第2のプレート部材183の平面図、(c)は、第1のプレート部材182及び第2のプレート部材183の積層状態を示す平面図、(d)はG-G線断面図である。図27は、第8の実施形態に係るスリーブ140の一例を示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。図28は、第8の実施形態に係る接合部材1Hの組立方法の各工程の一例を示す図である。
上部フレーム部180A及び下部フレーム部180Bの各々は、第1のプレート部材182と、第2のプレート部材183とを備える。第1のプレート部材182は、第2のプレート部材183の上面に積層された状態で、複数組の固定ボルト184及び固定ナット185により固定される。
第1のプレート部材182は、板厚方向に貫通する貫通孔として、複数のスリーブ140がそれぞれ挿入される複数の第1の長円孔182aと、固定ボルト184が貫通可能な複数の第1のボルト孔182bとを有する。第2のプレート部材183は、板厚方向に貫通する貫通孔として、複数のスリーブ140がそれぞれ挿入される複数の第2の長円孔183aと、固定ボルト184が貫通可能な第2のボルト孔183bとを有する。固定ナット185は、第2のプレート部材183の下面の第2のボルト孔183bに対応する位置に取り付けられている。本実施形態では、複数の第1の長円孔182a及び複数の第2の長円孔183aが、所定の配置状態(矩形状に配置)にスリーブ140を保持することで、複数の接合用鉄筋11及び複数の柱接合用継手14を所定の配置状態に保持するように配置された複数の保持部として機能する。
スリーブ140は、その側面の一方側に固定された2つのスリーブ脱落防止ブロック143A、143Bと、その側面の他方側に固定された2つのプレート脱落防止ブロック144A、144Bとを有する。スリーブ脱落防止ブロック143A、143B及びプレート脱落防止ブロック144A、144Bは、鋼製であり、例えば、溶接、接着剤等によりスリーブ140に固定されている。
1組のスリーブ脱落防止ブロック143A及びプレート脱落防止ブロック144Aは、上部フレーム部180Aに対応する高さに配置されるとともに、スリーブ脱落防止ブロック143Aは、プレート脱落防止ブロック144Aの上側に、上部フレーム部180Aの厚さ分に相当する間隔をあけて配置される。別の1組のスリーブ脱落防止ブロック143B及びプレート脱落防止ブロック144Bは、下部フレーム部180Bに対応する高さに配置されるとともに、スリーブ脱落防止ブロック143Bは、プレート脱落防止ブロック144Bの上側に、下部フレーム部180Bの厚さ分に相当する間隔をあけて配置される。
第1の長円孔182a及び第2の長円孔183aの長軸は、スリーブ脱落防止ブロック143A、143B又はプレート脱落防止ブロック144A、144Bが設けられた部分のスリーブ140を挿入可能な程度に、スリーブ140の直径に対してスリーブ脱落防止ブロック143A、143B又はプレート脱落防止ブロック144A、144Bの厚さ分だけ大きく設定されている。
第1のプレート部材182が第2のプレート部材183の上面に積層されて、側面同士が揃うように位置合わせされたとき、第1のボルト孔182b及び第2のボルト孔183bは、同軸上に配置される。このとき、第1の長円孔182a及び第2の長円孔183aは、同軸上に配置されず、第1の長円孔182a及び第2の長円孔183aの長軸方向に対してスリーブ脱落防止ブロック143A、143B又はプレート脱落防止ブロック144A、144Bの厚さ分だけずれた状態で配置される。
ロック機構19は、複数のスリーブ140と、複数の第1の長円孔182a及び複数の第2の長円孔183aとの間において、複数のスリーブ140を所定の配置状態に保持するロック状態と、そのロック状態を解除する非ロック状態とを切り換える。本実施形態では、ロック機構19は、第1の長円孔182a及び第2の長円孔183aとともに、これらに係合するスリーブ脱落防止ブロック143A、143B及びプレート脱落防止ブロック144A、144Bにより構成される。
(接合部材1Hの組立方法及び分解方法)
次に、複数の接合用鉄筋11及び複数の柱接合用継手14と、アンカーフレーム部18Bとを組み立てて、接合部材として一体化する接合部材1Hの組立方法と、その分解方法とについて説明する。上部フレーム部180A及び下部フレーム部180Bは、同様の手順で組み立てられるため、ここでは、上部フレーム部180Aが備える第1のプレート部材182及び第2のプレート部材183について説明する。
まず、図28(a)に示すように、矩形状に配置された複数のスリーブ140の上方から、第2のプレート部材183の複数の第2の長円孔183aにスリーブ140をそれぞれ挿通する。そして、第2のプレート部材183をスリーブ脱落防止ブロック143A側(図28の紙面右側)に寄せて、第2の長円孔183aにスリーブ脱落防止ブロック143Aを挿通させた後、第2のプレート部材183の下面がプレート脱落防止ブロック144Aにより支持されるように、第2のプレート部材183を配置する。
次に、図28(b)に示すように、複数のスリーブ140の上方から、第1のプレート部材182の複数の第1の長円孔182aにスリーブ140をそれぞれ挿通する。そして、第2のプレート部材183と同様に、第1のプレート部材182をスリーブ脱落防止ブロック143A側(図28の紙面右側)に寄せて、第1の長円孔182aにスリーブ脱落防止ブロック143Aを挿通させた後、第1のプレート部材182の下面が第2のプレート部材183の上面に接触するように、第1のプレート部材182を配置する。
次に、図28(c)に示すように、第1のプレート部材182を、プレート脱落防止ブロック144A側(図28の紙面左側)に寄せるようにスライド移動させて、第1のプレート部材182及び第2のプレート部材183の側面同士が揃うように位置合わせすることで、第1のボルト孔182b及び第2のボルト孔183bを同軸上に配置する。
次に、図28(d)に示すように、固定ボルト184を、第1のプレート部材182の上方から第1のボルト孔182b及び第2のボルト孔183bに挿通し、固定ナット185に締結することで、ロック機構19がロック状態に切り換えられる。そして、第1のプレート部材182及び第2のプレート部材183が、上部フレーム部180Aとして組み立てられる。
このとき、第1のプレート部材182及び第2のプレート部材183は、プレート脱落防止ブロック144A、144Bにより支持されることで、スリーブ140に対して第1のプレート部材182及び第2のプレート部材183が脱落することが防止される。また、スリーブ140は、スリーブ脱落防止ブロック143A、143Bにより支持されることで、第1のプレート部材182及び第2のプレート部材183に対してスリーブ140が脱落することが防止される。
そして、下部フレーム部180Bについても、同様の手順で、ロック機構19がロック状態に切り換えられることにより、上部フレーム部180A及び下部フレーム部180Bからなるアンカーフレーム部18Bが、複数のスリーブ140を所定の配置状態に保持することで、接合部材1Hとして一体化される。なお、接合部材1Hの分解方法は、図28に示す上記の手順を逆に行い、ロック機構19が、図28(a)、図28(b)に示すように、非ロック状態に切り換えられるようにすればよいため、説明を省略する。
(杭部材2と柱部材3との接合方法)
上記構成を有する接合部材1Hを用いた接合方法では、挿入工程及び位置調整工程は、鋼管継材164B及びブラケット160が、接合部材1Hに取り付けられた状態で行われる。なお、鋼管継材164Bは、工場等で予め接合部材1Hに取り付けられ、ブラケット160は、施工現場で挿入工程が行われる前に鋼管継材164Bに取り付けられるのが好ましい。
そして、位置調整工程が、第1の実施形態と同様に行われた後、第1の接合工程では、根巻鋼管4内にコンクリートC26、C27を2段階で打設し硬化させるとともに、1段階目のコンクリートC26が硬化した後であって2段階目のコンクリートC27を打設する前に、治具取り外し工程を行う。
具体的には、1段階目のコンクリートC26を、鋼管継材164Bの下端(=打設高h26)まで打設し硬化させる。1段階目のコンクリートC26が硬化した後、すなわち、1段階目のコンクリートC26の強度発現後は、接合部材1Hは、1段階目のコンクリートC26により支持されるため、治具取り外し工程により、鋼管継材164B及びブラケット160を接合部材1Hから取り外すとともに、根巻鋼管4の上端41に載置された支持体161を撤去する。その際、アンカーフレーム部18Bの上部フレーム部180Aは、固定ボルト184が取り外されて、ロック機構19が非ロック状態に切り換えられる。そして、上部フレーム部180Aは、第1のプレート部材182と第2のプレート部材183とに分解されて、スリーブ140から抜き取られることにより、鋼管継材164Bを接合部材1Hから取り外すことが可能となる。そして、2段階目のコンクリートC27を、根巻鋼管4の上端41(=打設高h27)まで打設し硬化される。
その後、第2の接合工程及び間詰め部充填工程が、第1の実施形態と同様に行われることにより、接合部材1Hを介して、杭部材2の杭頭部20と、柱部材3の柱脚部30とが接合される。
本実施形態に係る接合部材1H及び接合構造100Hによれば、複数の接合用鉄筋11及び複数の柱接合用継手14と、アンカーフレーム部18Bとは、ロック機構19を介して組立・分解可能に構成されている。そのため、接合部材1Hは、分解された状態で施工現場に搬送され、施工現場にて接合部材1Hとして組み立てることが可能となる。また、治具取り外し工程において、アンカーフレーム部18Bだけを分解することにより、治具取り外し工程の作業性を向上したり、位置調整・仮受治具16の構成を簡素化したりすることが可能となる。さらに、コンクリート構造体の解体時には、接合部材1Hを分解することが可能となる。
(第9の実施形態)
図29は、第9の実施形態に係る接合部材1I及び接合構造100Iの一例を示す縦断面図である。図30は、第9の実施形態に係る接合部材1Iに位置調整・仮受治具16が取り付けられた状態の一例を示し、(a)は拡大縦断面図、(b)は平面図である。
第6の実施形態に係る接合部材1F及び接合構造100Fでは、接合部材1Fの鉛直方向の位置として、柱接合用継手14の下端が、根巻鋼管4の上端41と同じ高さに配置されたものである。これに対し、第9の実施形態に係る接合部材1I及び接合構造100Iでは、接合部材1Iの鉛直方向の位置として、柱接合用継手14の一部が、根巻鋼管4に挿入されることで、柱接合用継手14の下端が、根巻鋼管4の上端41よりも低い位置に配置されるように変更したものである。その他の基本的な構成は、第6の実施形態と共通するため、以下、上記変更に関連する部分を中心に説明する。
ブラケット160の第1の板状部材160aは、その下部に、上部フレーム部180Aを上下からそれぞれ挟持して固定する固定ブロック160dを備える。
位置調整・仮受治具16が、挿入工程及び位置調整工程で使用される場合、ブラケット160の第1の板状部材160aは、固定ブロック160dが上部フレーム部180Aを挟持するような高さに配置されるとともに、アンカーフレーム部18Bの4方向の側面に2つずつ配置されて、固定ブロック160dが、上部フレーム部180Aを挟持して固定することにより、ブラケット160が、接合部材1Iに固定される。
(杭部材2と柱部材3との接合方法)
上記構成を有する接合部材1Iを用いた接合方法では、挿入工程及び位置調整工程は、ブラケット160が、接合部材1Iに取り付けられた状態で行われる。なお、ブラケット160は、施工現場で挿入工程が行われる前に接合部材1Iに取り付けられるのが好ましい。
そして、位置調整工程が、第1の実施形態と同様に行われた後、第1の接合工程では、根巻鋼管4及び設置型枠内にコンクリートC28、C29を2段階で打設し硬化させるとともに、1段階目のコンクリートC26が硬化した後であって2段階目のコンクリートC27を打設する前に、治具取り外し工程を行う。
具板的には、1段階目のコンクリートC28を、根巻鋼管4の上端41(=打設高h28)まで打設し硬化させる。1段階目のコンクリートC28が硬化した後、すなわち、1段階目のコンクリートC28の強度発現後は、接合部材1Iは、1段階目のコンクリートC28により支持されるため、治具取り外し工程により、ブラケット160を接合部材1Iから取り外すとともに、根巻鋼管4の上端41に載置された支持体161を撤去する。そして、1段階目のコンクリートC28の上にアンカーフレーム部18Bの外周を囲むように矩形状に設置型枠を組み立て、2段階目のコンクリートC29を、設置型枠内に対して、柱接合用継手14の上端(=打設高h29)まで打設し硬化させる。
その後、第2の接合工程及び間詰め部充填工程が、第1の実施形態と同様に行われることにより、接合部材1Iを介して、杭部材2の杭頭部20と、柱部材3の柱脚部30とが接合される。
本実施形態に係る接合部材1I及び接合構造100Iによれば、柱接合用継手14の一部が、根巻鋼管4に挿入される。したがって、杭主鉄筋21と杭接合用鉄筋12とが並行に配置されたラップ部分110だけでなく、柱主鉄筋31と柱接合用鉄筋13とを接続する柱接合用継手14についても、根巻鋼管4の内側に配置されるので、柱脚部30と接合部材1Bとの接合強度を向上することができる。
(他の実施形態)
本発明の一実施形態として、上記実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第1乃至第9の実施形態は任意に組み合わせることが可能であり、2つの実施形態を組み合わせるだけでなく、3つ以上の実施形態を組み合わせるようにしてもよい。例えば、第6乃至第9の実施形態に係る接合部材1F~1Iが、第4又は第5の実施形態に係る鉄筋連結部材17A、17Bを備えるようにしてもよい。
また、第1乃至第3、第6乃至第9の実施形態では、1本の鉄筋(接合用鉄筋11)で構成される杭接合用鉄筋12及び柱接合用鉄筋13は、柱接合用継手14に対して2本1組として配置されるものとして説明したが、1本ずつ単体で配置するようにしてもよいし、3本以上の任意の本数を1組として配置するようにしてもよい。第4の実施形態では、鉄筋連結部材17Aにより連結される杭接合用鉄筋12及び柱接合用鉄筋13は、柱接合用継手14に対して2本1組として配置されるものとして説明したが、1本ずつ単体で配置するようにしてもよいし、3本以上の任意の本数を1組として配置するようにしてもよい。第5の実施形態では、鉄筋連結部材17Bに連結される柱接合用鉄筋13は、柱接合用継手14に対して2本1組として配置されるものとして説明したが、1本ずつ単体で配置するようにしてもよいし、3本以上の任意の本数を1組として配置するようにしてもよい。さらに、いずれの場合でも、柱接合用継手14として、モルタル等充填式継手を使用してもよいし、モルタル等充填式継手に代えて他の形式の機械式継手を使用してもよい。
また、第1乃至第5の実施形態において、本体部15の断面形状は、矩形状又は円形状であるものとして説明したが、本体部15の形状は、これらに限られず、任意の形状でよい。本体部15の下面150は、傾斜面ではなく、水平面にしてもよい。本体部15の上面151に形成された凸部151aは、省略してもよい。
また、第1、第2、第4乃至第9の実施形態では、位置調整・仮受治具16として、8つのブラケット160及び支持体161が、本体部15の4方向の側面152に対して2つずつ配置されるものとして説明したが、ブラケット160及び支持体161の数や配置は、適宜変更してもよく、例えば、4つのブラケット160及び支持体161を、4方向の側面152に対して1つずつ配置するようにしてもよい。