以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1~図12を参照して、一実施形態による流量制御弁について説明する。
図1に示すように、本実施形態による流量制御弁100は、油圧アクチュエータなどの油圧機械への作動油の供給を制御する油圧弁である。流量制御弁100は、主弁1と、パイロット弁2とを備える。主弁1は、流量制御弁100に接続された油圧機械への作動油の供給流量を制御する。パイロット弁2は、主弁1に接続され、主弁1に供給する作動油の圧力(パイロット油圧)を制御することにより主弁1の弁開度を制御する。
[油圧回路の全体構成例]
以下では、一例として、フォークリフトの昇降用油圧シリンダ(リフトシリンダ)に流量制御弁100が接続され、シリンダを昇降させるための作動油の供給制御に流量制御弁100が用いられる例について説明する。
図1に示すように、流量制御弁100は、油圧シリンダ101、油圧ポンプ102、およびオイルタンク103と、作動油の流路を介してそれぞれ接続されている。具体的には、主弁1は、第1ポートA、第2ポートB、供給ポートPおよび排出ポートTの4つの油路を備えている。パイロット弁2は、第1ポートPA、第2ポートPB、供給ポートPP、排出ポートPTの4つの油路を備えている。
油圧シリンダ101は、ピストン111と、ピストン111に接続されたロッド112とが、チューブ113内に摺動可能に設けられた構造を有する。油圧シリンダ101は、たとえば片ロッドシリンダであり、ロッド112がチューブ113の一端側から外部に突出している。チューブ113内は、ピストン111によって、ロッド側油室114と、ヘッド側油室115とに区画されている。
主弁1の第1ポートAが、チェック弁104を介してヘッド側油室115に接続されている。主弁1の第2ポートBが、ロッド側油室114に接続されている。なお、第1ポートAをロッド側油室114に接続し、第2ポートBをヘッド側油室115に接続してもよい。チェック弁104は、第1ポートAからヘッド側油室115へ向かう方向への作動油の流通を許容し、ヘッド側油室115から第1ポートAへ向かう方向への作動油の流通を防止する。チェック弁104は、パイロットチェック弁であり、パイロットポートがロッド側油室114と第2ポートBとの流路に接続されている。
主弁1の供給ポートPおよびパイロット弁2の供給ポートPPが、油圧ポンプ102の吐出側に接続されている。油圧ポンプ102は、モータ121によって駆動され、オイルタンク103中の作動油を所定の圧力で主弁1およびパイロット弁2に供給する。主弁1の排出ポートTおよびパイロット弁2の排出ポートPTが、オイルタンク103に接続されている。
流量制御弁100における作動油の圧力を比較すると、油圧ポンプ102の吐出圧が作用する供給ポートP(PP)の圧力が最も高く、オイルタンク103内に解放された排出ポートT(PT)の圧力が最も低い。第1ポートA、第2ポートB、第1ポートPA、第2ポートPBの各圧力は、供給ポートP(PP)と排出ポートT(PT)との間の大きさである。主弁1は、供給ポートPから供給された高い圧力の作動油を減圧して、第1ポートAまたは第2ポートBから送り出す。パイロット弁2は、供給ポートPPから供給された高い圧力の作動油を減圧して、第1ポートPAまたは第2ポートPBから送り出す。
パイロット弁2の第1ポートPAおよび第2ポートPBが、それぞれパイロット経路15を介して主弁1に接続されている。主弁1は、外部のパイロット弁2から供給される作動油のパイロット油圧によって、流路切替および流量制御を行う。
主弁1は、供給ポートPに対して第1ポートAおよび第2ポートBのいずれも遮断する中立状態と、供給ポートPと第1ポートAとを接続させるとともに第2ポートBと排出ポートTとを接続させるPA制御状態と、供給ポートPと第2ポートBとを接続させるとともに第1ポートAと排出ポートTとを接続させるPB制御状態とを切り替え可能な方向切換弁として機能する。
中立状態では、供給ポートP、第1ポートAおよび第2ポートBのいずれもが、主弁1によって遮断される。つまり、主弁1は、中立状態で全閉となるように構成されている。中立状態では、油圧シリンダ101内の作動油が流通しないため、ロッド112の位置が保持される。
PA制御状態では、油圧ポンプ102から供給される高圧の作動油が、主弁1の供給ポートPおよび第1ポートAを通過して油圧シリンダ101のヘッド側油室115に流入し、ロッド112を押し出す。ロッド側油室114から押し出された作動油が、主弁1の第2ポートBおよび排出ポートTを通過してオイルタンク103に戻される。昇降用油圧シリンダとしては、上昇方向(鉛直上方向)への動作となる。
PB制御状態では、油圧ポンプ102から供給される高圧の作動油が、主弁1の供給ポートPおよび第2ポートBを通過して油圧シリンダ101のロッド側油室114に流入し、ロッド112を引き込む。ヘッド側油室115から押し出された作動油が、主弁1の第1ポートAおよび排出ポートTを通過してオイルタンク103に戻される。昇降用油圧シリンダとしては、下降方向(鉛直下方向)への動作となる。
そして、PA制御状態およびPB制御状態においては、主弁1は、パイロット油圧によって移動されるスプール20(図2参照)の位置(ストローク量)に応じて、ポートからの作動油の吐出流量が制御される。スプール20のストローク量は、パイロット弁2から供給されるパイロット油圧の大きさによって決まる。パイロット弁2は、コントローラ106からの信号によりソレノイド60(図2参照)が駆動されることによって、主弁1にパイロット油圧を供給する第1ポートPAまたは第2ポートPBの弁開度を変化させる。
ここで、油圧ポンプ102から流量制御弁100への作動油の供給経路には、アキュムレータなどを含む予備圧力源105が接続されている。予備圧力源105は、たとえば油圧回路(油圧ポンプ)に対する電源喪失時などに、油圧ポンプ102からの圧力供給が停止した場合でも油圧回路への圧力供給が可能となるように構成されている。このような電源喪失時には、パイロット弁2のソレノイド60を駆動することができないことがある。本実施形態の流量制御弁100が備えるパイロット弁2は、ソレノイド60による主弁1の開度制御に代えて、ユーザが手動で開度制御の操作を行うための手動操作部70(図2参照)を備える。手動操作部70に対する操作によって、上記の中立状態、PA制御状態、PB制御状態に主弁1を切り替えることが可能である。
なお、電源喪失時におけるパイロット弁2の手動操作は、典型的な利用形態の一例を示すものであって、電源供給がある状況下で、ソレノイド60による開度制御の代わりに手動操作部70によりパイロット弁2の手動操作が行われてもよい。
[流量制御弁の構造]
次に、図2~図12を参照して、流量制御弁100の具体的な構造の例について説明する。
図2の例では、主弁1は、スプール形(スライドスプール形)の比例流量制御弁として構成されている。比例流量制御弁は、出力される作動油の流量が、スプールの位置(ストローク量)に比例するように構成された制御弁である。パイロット弁2は、スプール形(スライドスプール形)の圧力制御弁として構成されている。
(主弁)
まず、主弁1の構造を説明する。主弁1は、作動油が出入りする油路が設けられたボディ10と、ボディ10内に移動可能に保持され、油路を開閉させるスプール20と、を備えている。図2はスプール20が中立位置S0にある状態を示している。
ボディ10は、スプール20が配置されるスプール室11と、スプール室11の両側に配置された一対のパイロット室12とを有する。スプール室11には、スプール20が軸方向(X方向)に沿って摺動可能に配置されている。スプール20が摺動するX方向を、ストローク方向という。
供給ポートP、排出ポートT、第1ポートAおよび第2ポートBの各油路は、ボディ10の外周からボディ10を貫通してスプール室11に連通している。ストローク方向(X方向)において、供給ポートPがスプール室11の中央に配置され、供給ポートPの両側にそれぞれ第1ポートAおよび第2ポートBが配置されている。第1ポートAおよび第2ポートBの外側に、それぞれ排出ポートTが配置されている。
供給ポートP、排出ポートT、第1ポートAおよび第2ポートBの各油路の間には、スプール室11(ボディ10)の内周面からなる弁座部13が設けられている。弁座部13は、スプール20が中立位置S0(図2参照)および後述するスタンバイ位置S1(図3、図5参照)にある場合に、対向するスプール20の外周面(摺動面)21によって油路を遮断する。
ストローク方向両側のパイロット室12には、それぞれ、パイロット弁2と接続するためのパイロット経路15が設けられている。一対のパイロット室12は、パイロット経路15を介してパイロット弁2の第1ポートPAに接続されたパイロット室12aと、パイロット経路15を介してパイロット弁2の第2ポートPBに接続されたパイロット室12bとを含む。パイロット室12に入力されるパイロット油圧により、スプール室11内のスプール20をストローク方向(X方向)に移動させる作動力がスプール20に作用する。
スプール20は、概略で円柱状の軸部材である。スプール20には、摺動面である外周面21と、各油路の間を連通状態に切り替えるための溝部22とが設けられている。溝部22は、スプール20の周方向に全周にわたって形成され、中立位置S0で供給ポートPおよび各排出ポートTの位置に対応して配置されている。各溝部22の間の2つの外周面21は、それぞれ、中立位置S0で第1ポートAおよび第2ポートBを塞ぐように形成されている。スプール20の両端の外周面21は、パイロット室12とスプール室11との間を塞ぐよう設けられている。溝部22は、第1ポートAまたは第2ポートBを供給ポートPまたは排出ポートTと連通させる際に、作動油の流量をスプール20のストローク量に比例させるように形成されている。
スプール20の内部には、軸方向(X方向)両側の溝部22同士を接続するバイパス通路24が形成されている。バイパス通路24は、X方向において、中立位置S0における各排出ポートTと一致する位置で、スプール20の表面(溝部22の底部)に開口している。
スプール20は、パイロット経路15からのパイロット油圧に応じて、中立位置S0と、開度制御の開始点であるスタンバイ位置S1(図3、図5参照)と、スプール移動量に応じて開度が変化する制御領域S2(図4、図6参照)とに移動するように構成されている。
(付勢手段)
主弁1は、付勢力によって、スプール20を中立位置S0に保持するための付勢手段30を備えている。付勢手段30の付勢力により、主弁1は、パイロット油圧が供給されない場合に中立状態(全閉状態)が維持される。また、付勢手段30は、付勢力によって、パイロット弁2から供給されるパイロット油圧とスプール20のストローク量とを対応付ける。
入力されるパイロット油圧が所定の閾値を越えると、スプール20は、スタンバイ位置S1に到達する。さらにパイロット油圧が上昇すると、スプール20は、制御領域S2(図4、図6参照)に到達する。制御領域S2では、スプール20のストローク量に応じて各ポートと溝部22との間の開口面積(流路断面積)が変化することにより、作動油の流量がスプール20のストローク量に比例する。
主弁1は、パイロット油圧による作動力が、スプール20を中立位置S0に保持する上限である第1閾値TH1と、第1閾値TH1よりも大きい第2閾値TH2との間の大きさで供給されると、スプール20が付勢手段30の付勢力に抗して中立位置S0からスタンバイ位置S1に移動するように構成されている。そして、主弁1は、パイロット油圧により第2閾値TH2よりも大きい作動力が供給されると、スプール20が付勢手段30の付勢力に抗して、スタンバイ位置S1から制御領域S2に移動するように構成されている。
スタンバイ位置S1は、中立位置S0と制御領域S2との間の位置であり、制御領域S2による制御が開始される直前の位置である。スタンバイ位置S1は、第1ポートA側と第2ポートB側との各々に設定されている。たとえば図3および図4に示すように、第1ポートA側のスタンバイ位置S1から、スプール20が僅かでも第1ポートA側に移動すると、スプール20が第1ポートA側の制御領域S2に進入して第1ポートAと供給ポートPとが連通する。
付勢手段30は、第1ばね31と、第2ばね32とを含む。第1ばね31および第2ばね32は、一対のパイロット室12にそれぞれ配置されている。第1ばね31および第2ばね32は、共に圧縮コイルばねであり、所定の圧縮状態で配置されることにより、中立位置S0で初期付勢力を発生するように設けられている。
また、ボディ10は、中立位置S0におけるスプール20の移動を規制する第1ストッパ33と、スタンバイ位置S1におけるスプール20の移動を規制する第2ストッパ34とを含んでいる。第1ばね31は、一端側が第1ストッパ33と当接し、他端側が第2ストッパ34と当接した状態で保持されている。第1ばね31の他端側は、第2ストッパ34を介して、第2ばね32によって支持されている。
パイロット室12には、中立位置S0に対応する第1位置決め部16と、スタンバイ位置S1に対応する第2位置決め部17とが設けられている。第1位置決め部16および第2位置決め部17は、パイロット室12の内径を減少させるように設けられた段差部である。
第1ストッパ33は、第1閾値TH1と等しい初期付勢力で第1ばね31によってスプール20側に付勢され、第1位置決め部16に押圧されている。第1ストッパ33は、第1位置決め部16により、中立位置S0におけるスプール20のストローク方向端面と略等しい位置に配置される。両側の第1ストッパ33により、スプール20が中立位置S0に保持される。第1ストッパ33は、初期付勢力によって第1閾値TH1以下の作動力では移動せず、スプール20に第1閾値TH1よりも大きい作動力が付与されると、第1ばね31を圧縮しつつ移動する。第1ストッパ33は、第1位置決め部16に押圧されているので、スプール20に対しては、第1閾値TH1よりも大きい作動力が付与される場合にのみ移動する壁面として機能する。
第2ストッパ34は、第2閾値TH2と等しい初期付勢力で第2ばね32によってスプール20側に付勢され、第2位置決め部17に押圧されている。第2ストッパ34は、第2位置決め部17により、スタンバイ位置S1にスプール20を保持するように配置されている。つまり、スプール20が移動して第1ばね31を圧縮すると、第1ストッパ33と第2ストッパ34とが当接することにより、スタンバイ位置S1(図3、図5参照)に達する。第2ストッパ34は、初期付勢力によって第2閾値TH2以下の作動力では移動せず、スプール20に第2閾値TH2よりも大きい作動力が付与されると、第2ばね32を圧縮しつつ移動する。第2ストッパ34は、第2位置決め部17に押圧されているので、第2ばね32の付勢力が第1ばね31に作用することはない。
図4および図6に示すように、スプール20に第2閾値TH2よりも大きい作動力が付与される場合、スプール20と第1ストッパ33と第2ストッパ34とが接触して一体となり、第2ばね32を圧縮する制御領域S2に到達する。制御領域S2では、第2ばね32の圧縮量(すなわち、スプール20のストローク量)が、第2閾値TH2よりも大きい作動力に対して比例する。
第1ばね31のばね定数は、第2ばね32のばね定数よりも小さい。第1ばね31は、最大限圧縮された状態(図3~図6参照)でも、発生する付勢力が第2閾値TH2未満となるように構成されている。
なお、第1ストッパ33および第2ストッパ34の各々には、作動油を通過させるための貫通孔35が設けられている。このため、作動力を付与するためにパイロット室12に作動油が供給されると、作動油が貫通孔35を介してスプール20にパイロット油圧を作用させる。
このような構成により、スプール20が、中立位置S0、スタンバイ位置S1、および制御領域S2のそれぞれに移動する。
〈第1ポートの開放動作〉
第1ポートAを開く(供給ポートPと連通させる)場合、まず、図3に示すように、スプール20が第1ポートA側のスタンバイ位置S1に移動される。具体的には、パイロット室12aに、パイロット弁2(第1ポートPA、図2参照)から作動油が供給される。パイロット油圧により第1ポートA側に向かう作動力Fがスプール20に付与される。作動力Fは、パイロット弁2の開度制御によって所定の第1作動力F1(図7参照)まで直ちに(ステップ関数的に)上昇させることができる。これにより、スプール20が第1ばね31を圧縮して中立位置S0からスタンバイ位置S1に速やかに移動し、スタンバイ位置S1で第2ストッパ34および第2ばね32によって停止される。
次に、パイロット弁2の開度制御により第2閾値TH2を越える第2作動力F2(図7参照)がスプール20へ付与される。これにより、図4に示すように第2ばね32が圧縮され、スプール20がスタンバイ位置S1から制御領域S2へ移動する。制御領域S2では、スプール20の溝部22を介して供給ポートPと第1ポートAとが連通するとともに、スプール20のストローク量に応じて連通箇所の開口面積が制御される比例流量制御が行われる。このとき、第2ポートBと排出ポートTとが、スプール20の溝部22およびバイパス通路24を介して連通し、油圧シリンダ101(図1参照)から第2ポートBに流入する作動油(戻り油)が排出ポートTから排出される。
〈第2ポートの開放動作〉
第2ポートBを開く(供給ポートPと連通させる)場合も同様である。図5に示すように、第1ポートA側のパイロット室12bにパイロット弁2(第2ポートPB、図2参照)から作動油が供給され、パイロット油圧により第2ポートB側に向かう第1作動力F1(図7参照)がスプール20に付与されると、スプール20が第1ばね31を圧縮して中立位置S0からスタンバイ位置S1に速やかに移動する。
次に、パイロット弁2の開度制御により第2閾値TH2を越える第2作動力F2(図7参照)がスプール20へ付与されることにより、図6に示すように第2ばね32が圧縮され、スプール20がスタンバイ位置S1から制御領域S2へ移動する。これにより、スプール20の溝部22を介して供給ポートPと第2ポートBとが連通し、比例流量制御が開始される。このとき、第1ポートAと排出ポートTとが、スプール20の溝部22およびバイパス通路24を介して連通し、油圧シリンダ101(図2参照)から第1ポートA側に流入する作動油(戻り油)が排出ポートTから排出される。
以上のように、主弁1のスプール20が中立位置S0からスタンバイ位置S1に移動する構成では、中立位置S0からスタンバイ位置S1までの間に十分なシールを確保できるため、スタンバイ位置S1を設けずに中立位置からすぐに制御領域S2に移動する構成と比較して、スプール20が中立位置にある状態(図7の領域C)での供給ポートPから第1ポートAまたは第2ポートBへの作動油のリークを効果的に抑制できる。
[パイロット弁]
次に、流量制御弁100のパイロット弁2の構造を説明する。図2に示すように、パイロット弁2は、ストローク方向に移動して主弁1へのパイロット経路15の弁開度を変化させる弁体50と、弁体50にストローク方向の駆動力を作用させるソレノイド60と、手動操作によって弁体50またはソレノイド60の可動片62にストローク方向の駆動力を作用させる手動操作部70とを含む。パイロット弁2は、弁体50、ソレノイド60および手動操作部70を保持するボディ40を含む。
ボディ40内には、弁体50が配置される弁体室41が軸方向に延びている。供給ポートPP、排出ポートPT、第1ポートPAおよび第2ポートPBは、ボディ40の外周からボディ40を貫通して弁体室41に連通している。供給ポートPPを中心に一方(X1側)に第1ポートPAが配置され、他方(X2側)に第2ポートPBが配置されている。第1ポートPAは、パイロット経路15を介して主弁1のパイロット室12aに連通し、第2ポートPBは、パイロット経路15を介してパイロット室12bに連通している。
弁体50は、ボディ40(弁体室41)内で中心軸方向(X方向)に摺動可能なスプールにより構成されている。X方向が、弁体50のストローク方向である。
弁体50には、摺動面である外周面51と、各油路の間を連通状態に切り替えるための溝部52とが設けられている。弁体50の基本構造は主弁1のスプール20と同様である。溝部22は、弁体50の周方向に全周にわたって形成され、中立位置(図2参照)で供給ポートPPおよび排出ポートPTの位置に配置されている。各溝部52の間の2つの外周面51が、それぞれ、中立位置S0で第1ポートPAおよび第2ポートPBを塞ぐように形成されている。
弁体50は、X方向の移動量に応じて、供給ポートPPと、第1ポートPAまたは第2ポートPBとを溝部52を介して択一的に連通させる。つまり、弁体50の移動により、供給ポートPPと、第1ポートPAまたは第2ポートPBとの間に溝部52を介した連通箇所が形成される。弁体50は、X方向の移動量に応じて、溝部52と第1ポートPAまたは第2ポートPBとの連通箇所の開度(開口面積)を調整する。開度調整により、第1ポートPAまたは第2ポートPBから吐出される作動油のパイロット油圧が調整される。
ソレノイド60は、弁体50に対してボディ40の軸方向両側にそれぞれ設けられている。各ソレノイド60は、コイル61と、コイル61の内側に配置された鉄芯(磁性体)である可動片62とを含む。コイル61はボディ40に固定され、可動片62は、ストローク方向(X方向)に移動可能に設けられている。コイル61は、コントローラ106(図1参照)からの電流供給に応じて、可動片62にストローク方向の駆動力(電磁力)を付与する。コイル61の駆動力は、コントローラ106からの供給電流に比例する。これにより、ソレノイド60は、可動片62を介して弁体50にストローク方向の駆動力を作用させる。図2の例では、各ソレノイド60の可動片62は、弁体50のストローク方向の端部に結合されている。そのため、コイル61により可動片62に付与された駆動力がそのまま弁体50のストローク方向の駆動力となる。
中立状態から、一方(X1側)のソレノイド60に電流が供給されると、弁体50に他方(X2側)に向けた駆動力が作用して、弁体50がX2方向に移動し、供給ポートPPと第2ポートPBとが連通する。供給ポートPPの作動油は、供給ポートPPの圧力から弁体50による第2ポートPBの開口面積に応じた圧力に減圧されて、第2ポートPBに流入する。第2ポートPBはX2側の油圧室42bと連通しており、第2ポートPBを通って油圧室42bに供給された作動油の油圧により、弁体50がソレノイド60の駆動力と対向するX1側に押される。弁体50は、ソレノイド60の駆動力と油圧室42bの油圧との釣り合いにより開度調整され、駆動力に比例したパイロット圧力が第2ポートPBに供給される開度(弁体50のストローク量)に維持される。これにより、第2ポートPBを通過する作動油がパイロット経路15を介して主弁1のパイロット室12bに供給され、主弁1のスプール20を第2ポートB側に移動させる。
同様に、他方(X2側)のソレノイド60に電流が供給されると、弁体50に一方(X1側)に向けた駆動力が作用して、弁体50がX1方向に移動し、供給ポートPPと第1ポートPAとが連通する。第1ポートPAはX1側の油圧室42aと連通しており、弁体50は、ソレノイド60の駆動力と油圧室42aの油圧との釣り合いにより開度調整され、駆動力に比例した圧力が第1ポートPAに供給される開度(弁体50のストローク量)に維持される。これにより、第1ポートPAを通過する作動油がパイロット経路15を介して主弁1のパイロット室12aに供給され、主弁1のスプール20を第1ポートA側に移動させる。
手動操作部70は、ボディ40のストローク方向(X方向)の両端にそれぞれ設けられている。図2の例では、手動操作部70は、ボディ40のストローク方向の端部を覆うカバーと一体的に設けられている。一方側(X1側)の手動操作部70と、他方側(X2側)の手動操作部70とは、同一構成を有しており、X方向に対称になっている。そのため、以下では、一方側(X1側)の手動操作部70の構造を代表して説明する。
図8に示すように、手動操作部70は、把持部71と、弾性部材72と、案内部80(図10参照)とを含む。また、手動操作部70は、案内部80が形成されたカバー部73を含む。概略円筒状のカバー部73が、ボディ40の端面からストローク方向外側へ向かって突出するように設けられている。
把持部71は、カバー部73の端部を覆うように設けられている。把持部71は、一方の端部が開口し、他方の端部が塞がれた円筒状(カップ状)の部材であり、カバー部73の円筒状の端部が摺動可能に挿入されることにより、カバー部73の端部を覆っている。把持部71は、カバー部73に対して相対移動可能に設けられている。把持部71は、ストローク方向(X方向)およびストローク方向回りの回転方向に移動可能である。把持部71は、ユーザが把持して操作することにより、カバー部73に対して相対移動する。把持部71は、筒状の外周面を把持して操作可能なハンドルであり、たとえばローレット加工などの滑り止め加工がされた外周面(図10参照)を備えることが好ましい。
把持部71には、中心軸を通過するようにボディ40側へストローク方向に延びるロッド74が設けられている。ロッド74は、カバー部73の端部に開口する挿入口73aを介してカバー部73の内部に配置され、把持部71とともにストローク方向に移動可能に設けられている。ロッド74は、カバー部73の内部空間73b内に配置され、弾性部材72の端部を支持する支持部75が取り付けられた先端部を有する。
ここで、ソレノイド60の可動片62が、ボディ40の端部からカバー部73の内部空間73b内に突出するように設けられている。可動片62の端部には、弾性部材72の端部を支持可能なキャップ63が取り付けられている。カバー部73の内部空間73bにおいて、可動片62の端部(キャップ63)と、ロッド74の先端部(支持部75)とが、ストローク方向に間隔を隔てて向かい合うように設けられている。
弾性部材72は、把持部71のストローク方向の移動量Stに応じて駆動力を発生するように構成されている。弾性部材72は、圧縮によりストローク方向に反発力(復元力)を発生するように構成され、この反発力が弁体50(ソレノイド60の可動片62)に対する駆動力となる。弾性部材72は、具体的には圧縮コイルばねにより構成されている。弾性部材72は、圧縮コイルばね以外のばね部材でもよいし、ゴムなどの弾性体でもよい。
弾性部材72は、円筒形状を有する。支持部75の円柱状の先端部と、キャップ63の円柱状の先端部とが、それぞれ弾性部材72の端部から弾性部材72の内部に挿入されている。これにより、弾性部材72は、支持部75とキャップ63との間でストローク方向に圧縮可能に保持されている。支持部75とキャップ63とは、それぞれ根元部が拡径したフランジ部(ばね受部)FRを有しており、フランジ部FRによって、弾性部材72をストローク方向に圧縮することができる。
図8に示す把持部71の初期位置Q0において、支持部75およびキャップ63の各フランジ部FRの間の距離D1(以下、フランジ間距離という)が弾性部材72の自然長Lsよりも大きい。初期位置Q0におけるフランジ間距離D1と自然長Lsとの差分D2は、パイロット弁2(供給ポートPP)に供給される圧力変動に起因した可動片62の位置変動幅よりも大きい。つまり、手動操作部70には、ストローク方向に差分D2の遊び(不感帯)がある。このため、手動操作部70は、把持部71の初期位置Q0において弁体50または可動片62に対して駆動力を付与することがない。
図9に示すように、把持部71がロッド74とともにストローク方向に移動し、弾性部材72の自然長Lsよりも小さいフランジ間距離D3になる状態では、弾性部材72は、支持部75とキャップ63との間で圧縮される。これにより、弾性部材72は、可動片62(弁体50)をストローク方向に移動させる駆動力を発生する。弾性部材72は、フランジ間距離D1が弾性部材72の自然長Lsよりも小さくなる位置において、把持部71のストローク方向の移動量Stに比例した駆動力を発生する。弾性部材72が発生する駆動力の大きさは、弾性部材72のバネ定数に依存する。弾性部材72は、把持部71のストローク方向の可動範囲における駆動力の変動範囲が、ソレノイド60が発生可能な駆動力の範囲と一致または近似するように、バネ定数が設定されている。これにより、ソレノイド60に代えて弾性部材72により発生させた駆動力によって、ソレノイド60を用いた場合と同じように弁体50を駆動して、主弁1の開度制御を行うことができる。
図9は、把持部71がストローク方向の端部(後述する第2位置Q2)まで移動し、パイロット弁2を最大開度とする位置を示している。このとき、支持部75およびキャップ63の間が最小でフランジ間距離D3となるが、支持部75の先端およびキャップ63の先端は、間隔D4を隔てて離れる。このように、手動操作部70では、把持部71(ロッド74、支持部75)が、ソレノイド60の可動片62(キャップ63)と直接当接して押圧することはない。
ここで、把持部71は、単純にストローク方向に直線移動するわけではなく、案内部80に沿った軌道でのみ移動可能に構成されている。具体的には、図10に示すように、カバー部73の外周面に所定の軌跡で形成された線状の凹部(溝部)によって案内部80が構成されている。把持部71の外周から内側に貫通するねじ孔に設けられたガイド部材76が案内部80の内部に挿入される(図8参照)ことにより、把持部71が案内部80に係合している。これにより、把持部71は、ガイド部材76を案内部80に沿って移動させる経路で移動可能となっている。ガイド部材76には、把持部71のねじ孔に螺合するねじ部が形成されており、ガイド部材76は把持部71に固定されている。
図11に示すように、案内部80は、初期位置Q0から第1位置Q1を通り第1位置Q1を越えた位置へ把持部71を案内するように構成されている。そして、案内部80は、初期位置Q0から第1位置Q1の間と、第1位置Q1を越えた領域との少なくとも一方で、把持部71の案内部80に沿った移動量(Mv1、Mv2)に対してストローク方向の移動量Stが小さくなるように構成されている。
後述するように、本実施形態では、第1位置Q1を越えた領域で、把持部71の案内部80に沿った移動量Mv2に対してストローク方向の移動量St2が小さくなる。本実施形態では、初期位置Q0から第1位置Q1の間では、把持部71の案内部80に沿った移動量Mv1とストローク方向の移動量St1とが一致する。
具体的には、案内部80は、把持部71をストローク方向の初期位置Q0から第1位置Q1まで案内する第1案内部81と、第1位置Q1からストローク方向の末端の第2位置Q2へ案内する第2案内部82とを含む。これらの初期位置Q0、第1位置Q1および第2位置Q2は、ストローク方向における把持部71の位置座標と考えてよい。初期位置Q0は、ストローク方向においてボディ40から最も離れた位置であり、手動操作部70による弁体50への駆動力の付与が行われない位置である。第1位置Q1は、ストローク方向において初期位置Q0よりもボディ40側に位置し、手動操作部70による弁体50への駆動力の付与が行われる位置である。第2位置Q2は、ストローク方向におけるボディ40側への移動限度であり、手動操作部70による弁体50の開度調整における最大開度に対応する位置である。
把持部71(ガイド部材76)は、初期位置Q0から第1位置Q1まで、第1案内部81に沿う軌道で移動可能である。第1案内部81は、第1位置Q1において第2案内部82に接続している。把持部71(ガイド部材76)は、第1位置Q1から第2位置Q2まで、第2案内部82に沿う軌道で移動可能である。
そして、第1案内部81は、ストローク方向(X方向)に沿って延びるように形成されている。このため、初期位置Q0から第1位置Q1までの間では、把持部71(ガイド部材76)が第1案内部81に沿ってストローク方向に直線移動する。その結果、初期位置Q0から第1位置Q1の間では、把持部71の案内部80に沿った移動量Mv1とストローク方向の移動量St1とが一致する。
一方、第2案内部82は、ストローク方向に対して傾斜した方向に向けて把持部71を案内するように構成されている。第2案内部82は、ストローク方向に対して回転方向へ傾斜した方向に延びるように形成されている。このため、第1位置Q1から第2位置Q2までの間では、把持部71(ガイド部材76)が第2案内部82に沿って、ストローク方向および回転方向の合成方向である斜め方向に移動する。つまり、第2案内部82では、ユーザは把持部71を回転方向に捻りながらストローク方向に押し込むように移動させることにより、第2位置Q2まで把持部71を移動させる。図12に示すように、第2案内部82は、回転方向に角度θの範囲で設けられており、把持部71は第2案内部82に沿って角度θ(>0度)分だけ回転される。
このような構成により、図11に示す第1位置Q1を越えた領域では、把持部71の案内部80(第2案内部82)に沿った移動量Mv2に対してストローク方向の移動量St2が小さくなる。
また、案内部80は、ストローク方向における初期位置Q0において、第3案内部83を含む。第3案内部83は、ストローク方向における初期位置Q0のまま、把持部71のストローク方向への移動を規制する第1規制位置Q0Aから、ストローク方向への移動を許容する第1可動位置Q0Bへの把持部71の移動を案内するように構成されている。つまり、第3案内部83は、第1規制位置Q0Aと第1可動位置Q0Bとの間で回転方向に沿って延びる溝部により構成されている。第3案内部83は、第1可動位置Q0Bにおいて、第1案内部81と接続している。
ユーザは、ストローク方向における初期位置Q0では、把持部71(ガイド部材76)を第1規制位置Q0Aから第1可動位置Q0Bへ移動するように回転させる(捻る)ことで、初めて把持部71をストローク方向へ移動させることが可能となる。
また、図8に示すように、手動操作部70は、把持部71を第1可動位置Q0Bから第1規制位置Q0Aへ向かう方向に付勢する付勢部材77を含んでいる。付勢部材77は、把持部71内に収容され、把持部71とカバー部73との間に配置されている。付勢部材77は、具体的にはねじりコイルばねにより構成され、一端が把持部71に固定され、他端がカバー部73に固定されている。そして、付勢部材77は、把持部71をカバー部73に対して第1規制位置Q0Aへ向かう方向に付勢している。これにより、ストローク方向における初期位置Q0では、ユーザが把持部71を回転方向に操作しない限り、把持部71は付勢部材77の付勢力によって第1規制位置Q0Aに位置付けられる。ユーザは、付勢部材77の付勢力に抗して把持部71を第1可動位置Q0Bまで回転させることにより、把持部71をストローク方向へ操作することが可能となる。
また、図11に示すように、案内部80は、ストローク方向における第2位置Q2において、第4案内部84を含む。第4案内部84は、ストローク方向における第2位置Q2のまま、把持部71のストローク方向への移動を許容する第2可動位置Q2Bから、ストローク方向への移動を規制する第2規制位置Q2Aへの把持部71の移動を案内するように構成されている。つまり、第4案内部84は、第2可動位置Q2Bと第2規制位置Q2Aとの間で回転方向に沿って延びる溝部により構成されている。第4案内部84は、第2可動位置Q2Bにおいて、第2案内部82と接続している。
ユーザは、ストローク方向における第2位置Q2では、把持部71(ガイド部材76)を第2可動位置Q2Bから第2規制位置Q2Aへ移動させることで、把持部71のストローク方向の位置を第2位置Q2に固定しておくことが可能となる。つまり、パイロット弁2を最大開度にした状態(主弁1に供給するパイロット油圧を最大にした状態)で操作を固定することができる。
なお、第3案内部83の第1規制位置Q0Aと、第4案内部84の第2規制位置Q2Aとは、それぞれ、第1可動位置Q0Bおよび第2可動位置Q2Bに対して回転方向の同じ側に設けられている。そのため、付勢部材77は、初期位置Q0においては把持部71を第1規制位置Q0Aに向けて付勢し、第2位置Q2においては把持部71を第2規制位置Q2Aに向けて付勢するように構成されている。
これにより、ストローク方向における第2位置Q2では、ユーザが把持部71を回転方向に操作しない限り、把持部71が第2可動位置Q2Bに移動することが防止される。ユーザは、付勢部材77の付勢力に抗して把持部71を第2可動位置Q2Bまで回転させることにより、把持部71をストローク方向へ操作することが可能となる。
手動操作部70では、第2位置Q2から第1位置Q1を経由して初期位置Q0へ、第4案内部84、第2案内部82、第1案内部81、第3案内部83の順に把持部71を移動させることにより、パイロット弁2の開度を絞る方向に変化させることができる。
(案内部と主弁の開度変化との関係)
本実施形態では、手動操作部70を操作して把持部71を初期位置Q0から第1位置Q1へ移動させると、弾性部材72を介して弁体50が移動して、把持部71のストローク方向の移動量Stに応じた開度で、パイロット油圧が供給される。
パイロット弁2は、把持部71が第1位置Q1に移動したときに、主弁1のスプール20がスタンバイ位置S1(図3、図5参照)に移動する弁開度まで弁体50を移動させるように構成されている。すなわち、初期位置Q0から第1位置Q1へのストローク方向の移動量St1に対応した開度により供給されるパイロット油圧が、スプール20がスタンバイ位置S1に移動するときの第1作動力F1(図7参照)を生じさせるように、ストローク方向の移動量St1(つまり、第1案内部81の長さ)が設定されている。
このため、ユーザは、把持部71をストローク方向に第1位置Q1まで真っ直ぐ押し込むだけで、主弁1(スプール20)を正確にスタンバイ位置S1(図3、図5参照)に切り替えることができる。
また、パイロット弁2は、把持部71が第1位置Q1を超えた領域に移動したときに、主弁1のスプール20が制御領域S2(図4、図6参照)に移動する弁開度まで弁体50を移動させるように構成されている。すなわち、第1位置Q1から第2位置Q2までの間のストローク方向の移動量St2に対応した開度により供給されるパイロット油圧の変動範囲が、主弁1が制御領域S2において作動油の流量を比例制御するための圧力範囲に一致するように、ストローク方向の移動量St2(つまり、第2案内部82の長さ)が設定されている。つまり、本実施形態では、把持部71を第2案内部82に沿って移動させる範囲で、主弁1の制御領域S2における流量制御が可能となる。
この第2案内部82において、把持部71の案内部80(第2案内部82)に沿った移動量Mv2(実操作量)に対してストローク方向の移動量St2が小さくなる(図7参照)ので、手動操作の際に、主弁1の流量制御を精密に行うことが可能となる。
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、手動操作により把持部71を移動させる際に、把持部71の第1位置Q1を越えた領域で、案内部80に沿った移動量Mv2に対してストローク方向の移動量St2が小さくなる。つまり、ユーザが実際に把持部71を案内部80に沿って動かした距離(実操作量)Mv2に比べて、弁開度の変化に寄与するストローク方向への移動量St2が小さくなる領域が、把持部71の移動経路に設けられる。そのため、ユーザが意図せずに把持部71を大きく移動させてしまった場合でも、実操作量と比べてパイロット経路15の弁開度を小さく変化させることができるので、手動操作によっても、主弁1の弁開度を細かく制御することができる。その結果、手動操作時に、意図せずに急激な開度調整が行われることを抑制することができる。また、案内部80に沿った移動量に対してストローク方向の移動量Stが小さくなる領域(Q1-Q2)では、手動操作でありながら細かな開度調整が可能となるので、手動操作時でも、ソレノイド60を機能させた場合の制御に近づけた精密な開度調整(流量制御)を可能とすることができる。なお、この効果は、把持部71の初期位置Q0から第1位置Q1までの間で、案内部80に沿った移動量Mv1に対してストローク方向の移動量St1が小さくなるように構成した場合でも、同様に得ることができる。
本実施形態では、上記のように、案内部80は、第1案内部81と第2案内部82とを含み、第2案内部82が、ストローク方向に対して傾斜した方向に向けて把持部71を案内するように構成されているので、把持部71をストローク方向に対して傾斜した方向に向けて案内するという簡単な構成で、把持部71の案内部80に沿った移動量Mv2に対してストローク方向の移動量St2を小さくすることができる。また、ストローク方向に対する案内方向の傾斜角度θを大きくするほど、ストローク方向の移動量Stを相対的に小さくすることができるので、実操作量に対するストローク方向の移動量Stの関係を容易に設定することができる。
本実施形態では、上記のように、第1案内部81は、ストローク方向(X方向)に沿って延びるように形成され、第2案内部82は、ストローク方向に対して回転方向へ傾斜した方向に延びるように形成されているので、第2案内部82において、ユーザは、把持部71を回転方向にひねりつつストローク方向に移動させる操作を行うことになる。ひねる操作と押し込む操作との複合操作によれば、把持部71を単に押し込む操作と比べて、操作量を誤ることを効果的に抑制できる。また、たとえば油圧シリンダ101の動作制御を考えると、弁開度が小さい第1案内部81(初期位置Q0から第1位置Q1までの)よりも、弁開度が大きくなる第2案内部82(第1位置Q1から末端の第2位置Q2)における制御において、油圧シリンダ101の伸縮速度が増大し繊細な制御が必要となるため、弁開度が大きくなる第2案内部82において実操作量(Mv2)に対するストローク方向の移動量St2を小さくすることが可能な上記構成が有用である。
本実施形態では、上記のように、案内部80が、ストローク方向における初期位置Q0のまま、把持部71のストローク方向への移動を規制する第1規制位置Q0Aからストローク方向への移動を許容する第1可動位置Q0Bへの把持部71の移動を案内する第3案内部83を含むので、初期位置Q0において、第1規制位置Q0Aでは手動操作による開度調整が禁止され、第1規制位置Q0Aから第1可動位置Q0Bへ把持部71を操作して、初めて手動操作による開度調整が可能となる。そのため、たとえば把持部71に触れないようにするカバーや複雑な安全機構などを設けなくても、ユーザが誤って把持部71を動かして手動操作を行ってしまうことを抑制できる。
本実施形態では、上記のように、手動操作部70が、把持部71を第1可動位置Q0Bから第1規制位置Q0Aへ向かう方向に付勢する付勢部材77を含むので、ユーザが付勢部材77の付勢力に抗して、意図的に把持部71を第1可動位置Q0Bへ移動させない限り、手動操作による開度調整が行われないようになる。これにより、より確実に、ユーザの誤操作を抑制することができる。
本実施形態では、上記のように、案内部80が、第2位置Q2のまま、把持部71のストローク方向への移動を許容する第2可動位置Q2Bからストローク方向への移動を規制する第2規制位置Q2Aへの把持部71の移動を案内する第4案内部84を含むので、把持部71を第2位置Q2へ移動させて弁開度を最大にした場合に、把持部71を第2規制位置Q2Aへ移動させることによって、第2位置Q2(最大開度)のまま固定して、第1位置Q1側へ戻ることを回避できる。そのため、手動操作時に最大開度のままにしておきたい場合に、ユーザが把持部71を操作し続けなくてもよくなるので、手動操作時の流量制御弁の利便性を向上させることができる。
本実施形態では、上記のように、主弁1においては、中立位置S0からスタンバイ位置S1までの間で流量制御を行わない構造となっているので、中立位置S0と制御領域S2との間での作動油のリーク(漏れ)を効果的に抑制できる。また、把持部71が第1位置Q1に移動したときに、主弁1のスプール20がスタンバイ位置S1に移動する弁開度まで弁体50を移動させ、把持部71が第1位置Q1を超えた領域に移動したときに、主弁1のスプール20が制御領域S2に移動する弁開度まで弁体50を移動させるようにパイロット弁2が構成されているので、手動操作時に、ユーザが把持部71を第1位置Q1まで移動させることにより、主弁1をスタンバイ状態にし、第1位置Q1を超えた領域から流量制御を開始できる。把持部71を操作する際、把持部71を初期位置Q0から第1位置Q1へ移動させる場合と、第1位置Q1を越えて把持部71を移動させる場合とで、把持部71の実操作量(Mv1、Mv2)に対する弁体50の開度変化速度(ストローク方向の移動量St1、St2)を変化させることができる。これにより、手動操作時でも、把持部71の可動範囲のうちどの位置までがスタンバイ位置S1で、どの位置からが制御領域S2であるかをユーザが容易に把握して操作することができる。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、スプール20の動作範囲において、中立位置S0と制御領域S2との間にスタンバイ位置S1を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図13に示す変形例による主弁201のように、中立位置S0と制御領域S2との間にスタンバイ位置S1を設けなくてもよい。この場合、主弁201のパイロット室12には、第1ばね31および第2ばね32に代えて1つのばね231を設けるだけでよい。
図13では、中立位置S0と制御領域S2との間にスタンバイ位置S1が設けられていないので、スプール220が中立位置S0からX2方向に移動すれば直ちに制御領域S2(第2ポートB側)に到達してPB制御状態となり、スプール220が中立位置S0からX1方向に移動すれば直ちに制御領域S2(第1ポートA側)に到達してPA制御状態となる。
この場合、パイロット弁2の手動操作部70(図11参照)では、把持部71を初期位置Q0から第1位置Q1へ移動させることにより、主弁201のスプール20を所定の開度まで速やかに(ステップ関数的に)変化させることができる。つまり、油圧シリンダ101が低速で動作する低開度の範囲では、所定開度まで段階的な開度変化が可能である。そして、把持部71を第1位置Q1から第2位置Q2までの間は、把持部71の案内部80(第2案内部82)に沿った移動量Mv2に対してストローク方向の移動量St2が小さくなるので、手動操作の際に、主弁1の流量制御を精密に行うことが可能となる。つまり、油圧シリンダ101の動作が早くなる中~最大開度の範囲では、手動操作でも急激な開度変化を抑制した緻密な開度制御が可能である。
また、上記実施形態では、案内部80が、第1位置Q1を越えた領域(第2案内部82)で、把持部71の案内部80に沿った移動量Mv2に対してストローク方向の移動量St2が小さくなるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図14に示す変形例のように、案内部80が、初期位置Q0から第1位置Q1の間(第1案内部81)で、把持部71の案内部80に沿った移動量Mv1に対してストローク方向の移動量St1が小さくなるように構成されていてもよい。図14では、第1案内部81が、ストローク方向に対して傾斜し、第2案内部82が、ストローク方向に延びている。この場合、たとえば図13の主弁201の例では、手動操作の開始初期において、把持部71の案内部80(第2案内部82)に沿った移動量Mv1に対してストローク方向の移動量St1が小さくなるので、ユーザが手動操作に習熟していない場合でも、急激な開度変化を抑制した開度制御が可能である。手動操作の開始後、たとえば所定位置まで油圧シリンダ101を動作させる場合などでは、第1位置Q1から第2位置Q2へ把持部71をストローク方向に押し込むだけで最大開度にできるので、利便性が高い。
この他、図15に示すように、案内部80は、初期位置Q0から第1位置Q1の間と、第1位置Q1を越えた領域との両方で、把持部71の案内部80に沿った移動量Mv1、Mv2に対してストローク方向の移動量St1、St2がそれぞれ小さくなるように構成されていてもよい。つまり、第1案内部81と第2案内部82との両方が、ストローク方向(X方向)に対して傾斜した方向に把持部71を案内するように構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、第2案内部82が、ストローク方向に対して回転方向へ傾斜した方向に延びることにより、案内部80に沿った移動量Mvに対してストローク方向の移動量Stを小さくした例を示したが、本発明はこれに限られない。案内部80に沿った移動量Mvに対してストローク方向の移動量Stを小さくする場合、案内部80は、ストローク方向以外のどの方向に傾斜していてもよい。把持部71を、水平面内で、ストローク方向に対して傾斜した方向に案内してもよい。
また、上記実施形態では、図12の角度θだけ把持部71が回転方向に移動可能な例を示したが、本発明はこれに限られない。角度θの大きさは、図12に示した例に限られない。把持部71の回転角度は任意である。把持部71は360度以上回転してもよい。
また、図16に示すように、案内部80は、ストローク方向(X方向)に対して直交する方向に把持部71を案内してもよい。図16では、第2案内部82が、ストローク方向(X方向)に延びる部分と、回転方向に延びる部分とを含んだ階段状に形成されており、把持部71のストローク方向の移動量Stを段階的に変化させることができる。
また、上記実施形態では、第1可動位置Q0Bから第1規制位置Q0Aへ向かう方向に付勢する付勢部材77を手動操作部70に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、付勢部材77を設けなくてもよい。
また、上記実施形態では、案内部80が第3案内部83を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第3案内部83を設けなくてもよい。
また、上記実施形態では、案内部80が第4案内部84を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第4案内部84を設けなくてもよい。
この他、上記実施形態では、第2案内部82が主弁1の制御領域S2に対応した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば第1案内部81と第2案内部82との間に、別の案内部(第5案内部)を設けてもよい。この場合、主弁1の制御領域S2のうち、低~中開度の領域に対応して第5案内部を設け、中~最大開度の領域に対応して第2案内部82を設ける事ができる。そして、第5案内部と第2案内部82とで、ストローク方向に対する傾斜角度を異ならせてもよい。
また、上記実施形態では、パイロット弁2の弁体50が、ソレノイド60の可動片62を一体的に含む構成であって、手動操作部70が弾性部材72によって弁体50に駆動力を作用させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、弁体50とソレノイド60の可動片62とが別個独立した部材であって、手動操作部70が弾性部材72によって可動片62に駆動力を作用させる構成であってもよい。たとえば、弾性部材72によって可動片62をストローク方向に移動させて弁体50と可動片62との間の隙間の大きさを変化させることにより、この隙間における圧力を変化させて弁体50を移動させる構成であってもよい。
また、上記実施形態では、弁体50がスプールであるスライドスプール式のパイロット弁2を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、弁体50がポペットであるポペット式のパイロット弁2であってもよい。
また、上記実施形態では、付勢部材77がねじりコイルばねである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、付勢部材77が、板ばね、その他の弾性材料によって構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、把持部71がカバー部73を覆う円筒状部材により構成された例を示したが、本発明はこれに限られない。把持部71は、たとえば円筒状部材に固定されたレバーであってもよい。