JP7259805B2 - 遅れ破壊特性評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板に加工が施された際の遅れ破壊特性評価方法に関するものである。
近年、自動車の燃費向上および自動車の衝突安全性向上が望まれており、車体材料の高強度化により鋼材の薄肉化を図り、自動車に使用される鋼材を軽量化かつ高強度化しようとする動きがある。そこで、自動車用の鋼材として引張強度(TS)が1180MPa以上(例えば1500MPa級鋼)のような超高強度鋼の使用が検討されている。
超高強度鋼の実用化の大きな阻害因子の1つとして遅れ破壊が挙げられる。遅れ破壊は水素脆化の一種で、鋼板が使用開始後数ヶ月から数年後に突如破壊する現象であり、鋼板の腐食より発生する水素に起因する。鋼板の耐遅れ破壊特性を評価するためには、鋼板中に水素を導入する必要がある。そこで、非特許文献1、2のように、評価試験片をpH1~2の酸に浸漬することにより水素を導入し、破壊の有無を調査する手法が知られている。
しかし、従来のpH1~2の酸に浸漬する手法では、浸漬液のpHが変化するとともに、鋼板が多量に溶解して鋼板表層の状態が溶失する。これらの理由により、鋼板表面の状態を保ったままで試験片中心部まで平衡濃度になるまでの水素チャージが困難である。pH3程度の溶液であれば、溶失量は少ないが、チャージできる水素量が少なくなる。そこで、サンプルを陰極として水素を電気的にチャージする電気チャージ法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
一方で、電気チャージにより強制的に水素を侵入させる加速試験を行うのではなく、実際の使用環境である大気腐食環境下での腐食挙動を再現して遅れ破壊に対する特性を評価する手法が提案されている(例えば特許文献2、3参照)。特許文献2、3には、金属材料に塩化物を付着させ、乾燥工程と湿潤工程とを1回以上繰り返すことが開示されている。
特開2005-134152号公報 特開2016-99259号公報 特開2016-180658号公報
松山晋作:遅れ破壊(日刊工業新聞社,1989),p183 細谷佳弘,他:NKK技法,No.145(1994),p33-p39
ところで、鋼材が自動車用や建築用等の用途に応じた部品になるまでには熱処理が加えられることがある。これらの鋼材として引張強度(TS)が1180MPa以上の鋼材を用いる場合、熱処理によって遅れ破壊特性が変化することがある。すると、特許文献2、3では、鋼材が実環境下において遅れ破壊するかどうかを正確に判断することができない。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、鋼板の加工部の遅れ破壊特性を正確に評価することができる遅れ破壊特性評価方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1] 引張強度が1180MPa以上の鋼板に曲げ加工による塑性加工を施した加工部の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、
前記鋼板に塑性加工を施した後、100℃以上200℃以下の温度環境で5分以上60分以下保持する熱処理工程と、
前記熱処理工程後の前記鋼板の前記加工部に腐食因子を付着する付着工程と、
前記付着工程後に乾燥工程および湿潤工程を1回以上繰り返す環境下で前記鋼板を保持するサイクル工程と、
を有することを特徴とする遅れ破壊特性評価方法。
[2] 引張強度が1180MPa以上の鋼板に引張加工による加工を施した加工部の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、
前記鋼板に950MPa以上の引張加工応力で加工を施した後、100℃以上200℃以下の温度環境で5分以上60分以下保持する熱処理工程と、
前記熱処理工程後の前記鋼板の前記加工部に腐食因子を付着する付着工程と、
前記付着工程後に乾燥工程および湿潤工程を1回以上繰り返す環境下で前記鋼板を保持するサイクル工程と、
を有することを特徴とする遅れ破壊特性評価方法。
[3] 前記腐食因子は、50mass%超100mass%以下の塩化ナトリウムを含み、塩化ナトリウムが100%未満の場合には、追加元素として塩化マグネシウム、塩化カルシウム、NO化合物、SO化合物、SiO、AlSi10(OH)から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の遅れ破壊特性評価方法。
本発明の遅れ破壊特性評価方法によれば、熱処理工程を行った後に付着工程及びサイクル工程を行うことにより、引張強度が1180MPa以上の鋼板の遅れ破壊に対する特性を正確に評価することができる。
本発明の遅れ破壊特性評価方法の好ましい実施形態を示す工程図である。 図1の遅れ破壊特性評価方法に用いられる試験片の一例を示す模式図である。
図1は、本発明の遅れ破壊特性評価方法の好ましい実施形態を示す工程図である。はじめに、遅れ破壊は、材料の種類、応力負荷量及び腐食因子の3つの因子により発生しやすさが変化する。そこで、自動車等でプレス加工等の加工処理及び熱処理が施された鋼材が遅れ破壊するか否か(以下、遅れ破壊特性)を判断する場合には、対象とする鋼材を加工し、鋼材へ水素を導入することで、鋼材の遅れ破壊特性を評価する。具体的には、図1の遅れ破壊特性評価方法は、塑性加工が施された試験片に対し、熱処理工程(ステップST1)と、付着工程(ステップST2)と、サイクル工程(ステップST3)とを行うことにより、遅れ破壊特性を評価する。
<試験片1A、1Bの構成>
図2は、図1の遅れ破壊特性評価方法に用いられる試験片の一例を示す模式図である。図2(A)、(B)の試験片1A、1Bは、引張強度が1180MPa以上の鋼板からなっており、加工された加工部2A、2Bを有する。図2(A)の試験片1Aは曲げ加工による塑性加工を施したものであり、図2(B)の試験片1Bは引張加工による加工を施したものである。このように鋼板の加工方法については、曲げ加工、引張加工などいずれの加工方法でも評価が可能であるが、引張加工の場合は、引張応力として950MPa以上の応力を付与させる必要がある。これは、発明者らが1180MPa超えの種々の材料を評価した結果、950MPa未満の応力付与条件では遅れ破壊が発生しない場合があり適切な評価結果が得られない為である。より好ましくは、曲げ加工に対する遅れ破壊評価である。これは、高強度鋼板の自動車部材に施される加工は曲げ加工が主体であるためである。
なお、図2(A)において、加工部2AはU字型に成形されている場合について例示しているが、これに限定されず、例えばハット成形されたものであってもよいし、簡便なU字型やV字型に曲げ試験を行った後に、ボルトにて所定の量だけ締めこんでもよい。さらに、荷重を負荷できる装置に平板状の試験片1A、1Bをセットして、溶液に浸漬しながら荷重を負荷する手法も挙げられる。ここで用いる試験片1A、1Bは、事前に圧延や引張加工などにより歪が付与されていてもよいし、素材のままでもよい。
<ステップST1:熱処理工程>
熱処理工程は、上述した試験片1A、1Bを100℃以上200℃以下の温度環境で5分以上60分以下保持する工程である。実際の使用環境での腐食に伴う水素侵入量で遅れ破壊が生じるか否かを判断するためには、加工後の試験片1A、1Bに100℃以上200℃以下の温度環境で5分以上60分以下保持することが必要である。
実際の車体等の自動車用部材には塗装が施されるものであり、塗装する際には塗装熱処理工程(焼付工程)がある。この塗装熱処理工程が遅れ破壊特性に大きく影響する。これは、熱処理工程によって、加工により生じた転位が鋼板成分であるカーボンに固着するためと考えられる。このような熱処理が施された後の鋼材の遅れ破壊特性を評価するためには、100℃以上でかつ5分以上保持することが必要である。200℃を超えて保持する場合、もしくは60分を超えて保持した場合、材料の特性自体に影響をきたす場合があるため、好ましくない。一方、保持する時間が100℃未満、もしくは5分未満である場合、実際に鋼板に施される熱処理とは乖離してしまうため好ましくない。
なお、上記熱処理工程の条件について、塗料の焼き付け条件にさらに近づけた条件で熱処理工程が行われても良い。この場合、低温かつ短時間で硬化する塗料が使用されることも考慮し、熱処理工程の温度範囲は120℃以上180℃以下であって、保持時間は10分以上40分以下であることがより好ましい。
なお、試験片1A、1Bに対し、実際の塗装と同様、塗膜を付与しても構わないが、塗膜はバリア性を発現するのみで、遅れ破壊自体には影響をきたさないと考えることができる。すなわち、塗膜を付与していない場合と遅れ破壊特性の評価結果に変化はなく、割れ発生までの試験期間が長くなるだけである。これは塗膜の存在により腐食因子をバリアする効果が発現したためと考えることができる。よって、好ましくは100℃以上200℃以下の温度環境で5分以上60分以下保持するのみで、鋼板上への塗膜は存在しない状態で評価すればよい。
また、車体または自動車部品として引張強度(TS)が1180MPa以上の高強度鋼材を用いる場合、熱間プレス工程、打ち抜き工程、熱処理工程を順に施して所望の形状に成形し、その後に電着塗装工程を行うことがある。この打ち抜き工程時もしくは熱処理工程時に遅れ破壊の特性が変化する場合がある。すなわち、1180MPa以上の引張強度(TS)を有する鋼材はマルテンサイトを主体とした組織からなり、熱処理が加わることによって鋼組織が変化し、それに伴い遅れ破壊の特性が変化する場合がある。このような熱処理後の遅れ破壊特性を評価するためにも、上述した試験片1A、1Bへの熱処理工程ST1が必要になる。
<ステップST2:付着工程>
付着工程ST2は、熱処理工程ST1後の試験片1A、1Bの加工部2A、2Bに腐食因子を付着する工程である。試験片1A、1Bの加工部2A、2Bへの腐食因子の付着させる方法はどのような方法でもよい。例えば、試験片1A、1Bを大気環境に放置して飛来する腐食因子を付着させても良いし、水溶液に腐食因子を溶解および混合し、浸漬法、スプレー法などにより腐食因子を付着させても良い。
なお、自動車分野における腐食因子は、鋼板の腐食を引き起こす化合物であれば特に限定されないが、使用環境下における腐食要因は例えば塩化ナトリウムである場合が多い。よって、付着工程ST2で用いる腐食因子も塩化ナトリウムを主体とする成分(NaClが全成分の50mass%超100mass%以下である成分)であることが好ましい。さらに、上記塩化ナトリウムが100mass%未満の場合、この他に海からの飛来塩を想定した塩化マグネシウム(MgCl)、塩化カルシウム(CaCl)を加えても良いし、工業地域を想定してNO化合物やSO化合物を加えてもよい。また、路面からの泥の飛散を考慮してSiOやAlSi10(OH)などの泥の主成分を混合してもよい。
腐食因子の付着量は、特に限定されず、対象とする環境に応じて変化させることができる。たとえば、海岸地域を対象とする場合、腐食因子としてNaClを主体とする成分を、固形分として100~5000mg/m付着させてもよい。あるいは、融雪塩地域を対象とする場合は、水などの溶媒を含まない腐食因子としてNaClを主体とする成分を5000~30000mg/m付着させてもよい。
<ステップST3:サイクル工程>
サイクル工程ST3は、付着工程ST2後に乾燥工程ST3Aおよび湿潤工程ST3Bを1回以上繰り返す環境下で鋼板を保持する工程である。遅れ破壊特性を評価するためには、適正な水素導入環境が必要である。例えば自動車は大気中で用いられることから、腐食因子が試験片1A、1Bの加工部2A、2Bに付着した状態で、実際の昼夜の湿度変化を模擬した乾燥および湿潤を繰り返す腐食環境下で遅れ破壊特性を評価することが必要となる。
ここで、乾燥工程ST3Aとは、加工部2A、2Bの表面に水分が実質的に付着していない工程(期間)を意味し、湿潤工程ST3Bとは、加工部2A、2Bの表面に水分が付着している工程(期間)を意味する。湿潤工程ST3Bにおいて水分が試験片1A、1Bの加工部2A、2Bに付着することにより腐食反応が進行し、乾燥工程ST3Aにおける濃縮が加工部2A、2Bへの水素侵入に影響を及ぼすためである。
乾燥工程ST3A及び湿潤工程ST3Bにおける温度は、5~60℃であることが好ましい。60℃を超える温度は、実際の腐食環境から離れた評価を行うことになるだけでなく、腐食メカニズムが変化することが考えられるため適当でない。一方、5℃未満の温度での評価については、現在の腐食試験を実施する腐食試験槽では5℃未満での湿度制御が困難であること、金属材料の腐食速度を著しく低下させるために評価日数が長くなること、などの観点からできれば避けた方がよい。
乾燥工程ST3Aにおける相対湿度は、40%RH以下であることが好ましい。相対湿度が40%RHを超えると、金属材料表面を十分に乾燥させるためには長時間保持する必要があり、評価期間が長くなるため好ましくない。また、加工部2A、2Bの表面に付着させる成分に塩化マグネシウムや塩化カルシウムなど、より低い湿度で潮解性を示す物質が含まれる場合は、湿度の設定を低くすることが好ましい。
湿潤工程ST3Bにおける相対湿度は、80~98%RHであることが好ましい。湿潤工程ST3Bの相対湿度が80%RH未満であると、湿潤の影響が不十分となり評価に時間がかかる。一方、相対湿度が98%RH超であっても問題はないが、加工された被試験体を評価する場合、付着させた成分による吸水量が多くなり、厚い液膜を形成するために付着成分が流されることがあるので、できれば避けた方がよい。
なお、湿潤工程ST3Bでの水分を付着させる方法として、腐食因子を含有する水溶液を滴下し、腐食因子の潮解をおこさない相対湿度の環境下で保持する方法や、腐食因子を加工された鋼板表面に付着させたのちに、当該の腐食因子が潮解する相対湿度を上回る期間(湿潤)と下回る期間(乾燥)を変化させる方法があげられる。
乾燥工程ST3Aと湿潤工程ST3Bとは、1回以上行わればよいが、複数回繰り返し行われることが好ましい。また、乾燥工程ST3Aと湿潤工程ST3Bとの間には、湿度移行期間が設けられており、所定の湿度変化速度(例えば30%RH/h未満)で湿度変化し、乾燥工程ST3Aもしくは湿潤工程ST3Bで設定されている相対湿度まで移行する。なお、湿度移行期間において、相対湿度50~60%RHに保持する湿度保持期間が0.5時間以上含まれていても良い。
乾燥工程ST3A及び湿潤工程ST3Bの期間は、それぞれ3日当たり8時間以上48時間未満であることが好適な範囲である。湿潤工程ST3Bが長くなると、局所的に腐食が進行することにより、評価結果にバラつきを生じることがあり好ましくない。また、乾燥期間が長くなる場合は、腐食の進行が遅くなるため、評価期間が長くなり好ましくない。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。商用の1.6mm厚さの冷延鋼板を対象とし、発明例及び比較例による遅れ破壊特性の評価を行った。表1に材料の特性値を示す。なお、表1において、遅れ破壊特性が、A鋼、B鋼、C鋼の順で優れているものとする。
Figure 0007259805000001
<曲げ加工を施した試験片1Aの作製>
平板状の冷延鋼板を幅35mm×長さ100mmにせん断し、せん断時の残留応力を除去するために幅が30mmとなるまで研削加工を施した。さらにこの冷延鋼板をトルエンに浸漬して5分間超音波洗浄した後、180°曲げ加工して加工部2Aを作成し、この状態でボルトとナットで拘束して試験片1Aを作製した(図2(A)参照)。このとき、試験片1Aが曲率半径5mmRで180°曲げ加工され、試験片1Aの内側間隔を10~20mmとして応力を変化させた。尚、内側間隔が狭いほど加工部2Aへの応力が高い条件である。
<引張加工を施した試験片1Bの作製>
平板状の冷延鋼板を幅35mm×長さ100mmにせん断し、せん断時の残留応力を除去するために幅が30mmとなるまで研削加工を施した。その後、冷延鋼板を中央部12mmが幅5mmとなるように左右12.5mmずつ研削加工を施した。30mm幅から5mm幅までの間の曲率は25mmである。さらに、左右から引張応力を付与して加工部2Bを有する試験片1Bを得た(図2(B)参照)。中央の幅5mmの区間の中で引張前10mmの評点の伸びから試験片1Bの負荷応力を算出した。
<ステップST1:熱処理工程>
上記試験片1A、1Bを電気炉で炉内温度を80℃~220℃まで変化させて、炉内に1~120分保持した。また、一部は比較として試験片1Aの曲げ加工を施す前に本熱処理工程を実施した。
<ステップST2:付着工程及びステップST3:サイクル工程>
腐食因子として主体成分にNaClを選定し、一部評価にはMgCl、CaCl、NaSOを添加した。さらに、一部は比較として、5%NaCl溶液に鋼板を浸漬させた評価を行った。恒温恒湿機を用い、評価期間中温度を30℃とし、相対湿度を乾燥期間40%RH、湿潤工程90%RHとし、それぞれの期間の移行期間を設け、それぞれの期間を変化させた。本試験では、乾燥工程から湿潤工程、湿潤工程から乾燥工程までの時間は同じ時間に設定した。表2中には試験片1A、1B表面の濡れ時間として、湿度が75%RHを超えている時間を3日あたりで記載した。
<遅れ破壊特性判定>
腐食試験開始から所定時間経過後に割れ発生状況を評価した。試験はいずれの場合も5検体(表2の検体N1~N5)ずつ実施し、5検体のうちの割れ発生数を比較することで材料の遅れ破壊特性を判定した。なお、No.1~No.54において、割れ発生数の差が2検体未満の場合は、同一結果として判断した。
上述したように、遅れ破壊特性はA鋼、B鋼、C鋼の順に優れている。このため、各A鋼、B鋼、C鋼の5検体の試験が同一条件下で行われたとき、割れ発生数はA鋼が最も少なくC鋼が最も多ければ、遅れ破壊特性の評価方法として正確と言える。一方、A鋼、B鋼、C鋼の割れ発生数に差がない場合、遅れ破壊特性の評価方法としては好ましくないと言える。
Figure 0007259805000002
尚、表2中において、「-」は実施していないことを示し、特に遅れ破壊評価結果の欄に記載の「-」は、所定期間中に割れが発生しなかったことを示す。また、表2中下線が引かれた数値は本発明の数値範囲から外れていることを示す。
表2において、No.4~6は、A鋼~C鋼のそれぞれに対し、曲げ加工した試験片1Aに熱処理工程として150℃で20分実施した実施例である。No.4のA鋼においては割れが発生していない。一方、No.5のB鋼とNo.6のC鋼はいずれも割れが発生しているが、B鋼の方がC鋼より割れ発生数が少ない。よって、A鋼の方がB鋼より耐遅れ破壊特性に優れており、B鋼の方がC鋼より耐遅れ破壊特性に優れている、と判断でき、この評価結果は、A鋼、B鋼、C鋼の順に遅れ破壊特性が優れている状態と一致している。したがって、No.4~6の評価方法は、遅れ破壊評価方法として好適であることがわかる。
No.1~3は加工部2Bを有する試験片1Bに熱処理工程を施さなかった比較例である。No.1~3において、鋼種A、B、Cのいずれもほぼ同数の割れが発生している。このように、熱処理工程がないと、試験結果として実環境では使用できない鋼板として判断されてしまうため、遅れ破壊評価方法として好ましくない。
No.7~9、No.13~15、No.16~18は、熱処理工程の温度を100℃以上200℃以下の温度環境で変更し、時間を5分以上60分以下の範囲内で変更したものである。この場合でもNo.4~6と同様の評価結果が得られることから、遅れ破壊評価方法として好適であることがわかる。
No.10~No.12は、熱処理工程の熱処理温度が100℃未満である場合の比較例である。No.10~No.12において、A鋼、B鋼において割れ発生数が増加しており、遅れ破壊を引き起こさない材料として評価できていない。よって、遅れ破壊評価方法として好ましくない。
No.19~No.21は熱処理時間が60分より長い比較例であり、No.22~No.24は熱処理温度が200℃より高い比較例である。この場合、C鋼の割れ発生数が著しく減少している。これは、鋼材の特性に影響をきたしたことに起因と考えられ、遅れ破壊評価方法として好ましくない。
No.25~27、No.28~30は、No.4~6に対して、それぞれ曲げ加工の加工量を変化させた例である。加工量の違いによって、同じA鋼~C鋼であったとしても割れの発生数が変化することがわかる。このように、自動車用部材として適用できる加工限界が評価できるため、このことからも遅れ破壊評価方法として好適であることがわかる。
No.31~33、No.34~36は引張加工で応力を変化させた例である。No.31~33のように、負荷応力が小さい場合(例えば950MPa未満)、A鋼~C鋼の割れ発生数がいずれもゼロであり、遅れ破壊評価方法として好ましくない。一方、No.34~36のように、負荷応力が大きい場合(例えば950MPa以上)、材料の優劣が評価できるとともに、A鋼は遅れ破壊を引き起こさない材料として評価できるため、遅れ破壊評価方法として好適である。しかしながら、腐食試験を実施するための簡便な装置では負荷応力をさらに増加させることが困難であったため、簡便な評価法としては曲げ加工がより好ましいことがわかる。
No.37~39は乾湿環境ではなく、乾燥させることなくぬれ続けている環境内での評価結果である。鋼板表面での濡れの不均一さに起因すると考えられるが、B鋼とC鋼との間で有意差が評価できなくなっていることから、遅れ破壊評価方法として好ましくない。
No.40~42は塩酸へ浸漬した場合の比較例である。鋼板の溶解量の差に起因すると考えられるが、B鋼とC鋼の割れ発生数が逆転しており、適正な評価が出来ていないと考えられることから、遅れ破壊評価方法として好ましくない。
No.43~45、No.46~48は腐食試験溶液内に重量として10%のMgCl2、およびCaCl2を含有させた場合の本発明例であるが、いずれもNo.4~6と同様の結果が得られており、遅れ破壊評価方法として好適であることがわかる。
No.49~54は曲げ加工前に熱処理を施した比較例であるが、いずれもNo.1~3の比較例と同様の結果となっており、加工前の熱処理では適正な遅れ破壊特性を評価できないことがわかる。
上記実施形態によれば、大気腐食環境下で用いられる金属材料について、腐食に伴って金属材料内部に侵入する水素により引き起こされる遅れ破壊に対する特性(遅れ破壊発生の有無及びその程度)を正確かつ簡便に評価することができる。このため、実際の使用環境での腐食に伴う水素侵入量で遅れ破壊が生じるか否かを判断するために必要な情報を得ることができるため、産業上の利用価値は非常に大きい。
なお、上記実施の形態において、自動車部品に用いる鋼材を例示して説明しているが、これに限定されず、例えば橋梁、建築、土木等の分野で使用される引張強度1180MPa以上の鋼板、鋼材およびそれらより製造された部品等の遅れ破壊特性評価にも適用することができる。
1A、1B 試験片
2A、2B 加工部

Claims (3)

  1. 引張強度が1180MPa以上の鋼板に曲げ加工による塑性加工を施した加工部の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、
    前記鋼板に塑性加工を施した後、100℃以上200℃以下の温度環境で5分以上60分以下保持する熱処理工程と、
    前記熱処理工程後の前記鋼板の前記加工部に腐食因子を付着する付着工程と、
    前記付着工程後に乾燥工程および湿潤工程を1回以上繰り返す環境下で前記鋼板を保持するサイクル工程と、
    前記付着工程及び、前記サイクル工程が行われた後に、前記加工部の遅れ破壊特性を評価する評価工程と、
    を有することを特徴とする遅れ破壊特性評価方法。
  2. 引張強度が1180MPa以上の鋼板に引張加工による加工を施した加工部の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、
    前記鋼板に950MPa以上の引張加工応力で加工を施した後、100℃以上200℃以下の温度環境で5分以上60分以下保持する熱処理工程と、
    前記熱処理工程後の前記鋼板の前記加工部に腐食因子を付着する付着工程と、
    前記付着工程後に乾燥工程および湿潤工程を1回以上繰り返す環境下で前記鋼板を保持するサイクル工程と、
    前記付着工程及び、前記サイクル工程が行われた後に、前記加工部の遅れ破壊特性を評価する評価工程と、
    を有することを特徴とする遅れ破壊特性評価方法。
  3. 前記腐食因子は、50mass%超100mass%以下の塩化ナトリウムを含み、塩化ナトリウムが100%未満の場合には、追加元素として塩化マグネシウム、塩化カルシウム、NO化合物、SO化合物、SiO、AlSi10(OH)から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の遅れ破壊特性評価方法。
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