JP7253954B2 - 加熱調理方法及び加工食品 - Google Patents

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Description

本発明は、L-DOPAを生成する加熱調理方法及びこの方法を利用して加工した加工食品に関する。
近年、脳内の神経伝達物質の異常が原因となって様々な疾患が発症することがわかってきている。
例えば、老化に伴って多発する代表的な運動系脳疾患であるパーキンソン病は、中脳黒質緻密質のドーパミン分泌細胞の変性によるドーパミンの減少に起因して発症することが報告されている。このパーキンソン病については、哺乳動物の神経伝達物質であるドーパミンやアドレナリンの前駆体として知られているL-DOPA(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)が治療薬として用いられている。この治療薬は、ドーパミン自体は脳内の血液脳関門を通過できないが、ドーパミンの前駆体であるL-DOPAが血液脳関門を通過できるという点に着目したものであり、この治療薬によれば、投与されたL-DOPAが血液脳関門を通過して脳内に移動し、脳内に移動したL-DOPAがドーパミンに変化し、その結果、脳内のドーパミン量を増やすことができる。
また、脳血管障害に伴う誤嚥性肺炎は、大脳基底核においてドーパミンのコントロールが適切に行われないことに起因して発症すると考えられており、L-DOPAを投与することによって疾患の直接的な原因となる嚥下反射が改善されることが報告されている。
従来から、L-DOPAの製法としては、例えば、不斉触媒を用いる有機合成による製法や、特許文献1に記載されているように、L-DOPAを蓄積する植物細胞を作製し、この細胞からL-DOPAを抽出・精製する製法が提案されている。
特許第5794606号公報
ところで、L-DOPAは、上記のように脳内の神経伝達物質の異常に起因する疾患を改善できるものであり、日常的に適切量摂取することで、種々の疾患を予防することができると考えられる。
しかしながら、L-DOPAは、一般的な食用途の植物に多量に存在することは稀であり、日常的に摂取するためには、上記のような疾患の治療薬から摂取しなければならないのが現状であるが、このような治療薬には高濃度のL-DOPAが含まれており、幻覚などの副作用が起きるとの報告もあることから、健常者が日常的に常用することはできない。
また、上記のようなL-DOPAの製法は、生産したL-DOPAを医薬品として使用することを想定したものであり、当該製法により生産したL-DOPAは、人が日常的に入手可能なものではない。
したがって、現状では、人が日常的に適切量のL-DOPAを摂取し、脳内の神経伝達物質の異常に起因する種々の疾患の発症を予防することが難しい。
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、食材の選択や加熱温度などの調理環境を調整して、調理中にL-DOPAを生成することができる加熱調理方法及びこの方法を利用して加工した加工食品の提供を、その目的とする。
本願発明者は、所定の食材中に含まれる酵素であるチロシナーゼによる酵素反応を利用することで、所定の食材中に含まれるチロシンからL-DOPAを生成できるという知見に着目し、本願発明を完成させるに至った。
上記目的を達成するための本発明に係る加熱調理方法の特徴構成は、L-DOPAを生成する加熱調理方法であって、
80℃以上の溶媒中でチロシンを含有する食材を茹でることにより当該チロシンを含有する食材からチロシンを抽出するチロシン抽出工程と、
70℃以下の溶媒中でチロシナーゼを含有する食材を茹でることにより当該チロシナーゼを含有する食材からチロシナーゼを抽出するチロシナーゼ抽出工程と、
前記チロシン抽出工程で抽出した前記チロシンを含む溶媒と、前記チロシナーゼ抽出工程で抽出した前記チロシナーゼを含む溶媒とを混ぜ合わせて、反応時間の当初から10~60℃の範囲内の温度条件を10~25分の範囲内で維持して反応させる反応工程とを実施する点にある。
上記特徴構成によれば、チロシン抽出工程において、チロシンを含有する食材からチロ
シンを抽出するとともに、チロシナーゼ抽出工程において、チロシナーゼを含有する食材
からチロシナーゼを抽出する。その後、反応工程において、抽出したチロシンとチロシナ
ーゼとを反応させることで、L-DOPAが生成する。
このように、チロシンを含有する食材とチロシナーゼを含有する食材とを調理に用い、
上記各工程を実施することによって、L-DOPAを含む料理を作ることができ、当該料
理を人が日常的に摂取することで、脳内の神経伝達物質の異常に起因する疾患の発症を予
防することができる。
ここで、チロシン抽出工程においてチロシンを効率良く抽出し、抽出したチロシンを可
能な限り回収するという観点から、チロシン抽出工程は、80℃以上の溶媒中でチロシン
を含有する食材を茹でる工程である。
上記特徴構成によれば、チロシンを含有する食材を80℃以上の溶媒中で茹でることで
、当該溶媒中にチロシンが効率よく溶出し、茹で汁を回収することで、食材から抽出した
チロシンを可能な限り回収することができる。
一方、チロシナーゼ抽出工程においては、抽出するチロシナーゼが酵素であることから
、チロシナーゼが変性して失活するのを防止しつつ、チロシナーゼを効率よく抽出し、抽
出したチロシナーゼを可能な限り回収するという観点から、チロシナーゼ抽出工程は、7
0℃以下の溶媒中でチロシナーゼを含有する食材を茹でる工程である。
上記特徴構成によれば、チロシナーゼを含有する食材を70℃以下の溶媒中で茹でるこ
とで、チロシナーゼの変性を抑えながら、溶媒中にチロシンを効率良く抽出することがで
き、茹で汁を回収することで、食材から抽出したチロシナーゼを可能な限り回収すること
ができる。
また、上記特徴構成によれば、10~60℃の範囲内の温度条件下でチロシンとチロシナーゼとを反応させることにより、チロシナーゼの変性が抑えられつつ、酵素反応によってチロシンからL-DOPAが生成するため、L-DOPAをより多く生成することができる。
また、本願発明者は、反応工程におけるチロシンとチロシナーゼとの反応時間とL-D
OPAの生成量との間に非線形の関係があり、反応時間が所定範囲内である場合に、L-
DOPAの生成量が多くなることを見出した。
上記特徴構成によれば、反応時間を10~25分の範囲内とすることにより、反応時間
が上記の範囲外である場合よりもL-DOPAをより多く生成することができる。
尚、チロシン抽出工程での溶媒中へのチロシンの溶出し易さを考慮すると、溶媒のpHは6以上であることが好ましい。
即ち、本発明に係る加熱調理方法の更なる特徴構成は、前記溶媒のpHが6以上である点にある。
また、本発明に係る加熱調理方法の更なる特徴構成は、前記溶媒は、水又は食用油である点にある。
上記特徴構成によれば、調理の際に一般的に用いられる液体である水又は食用油を溶媒とするため、溶媒が料理の味に与える影響を小さくできる。
加熱温度が異なるサンプルについての反応時間とL-DOPA濃度との関係を示すグラフである。 加熱温度が異なるサンプルについての反応時間とL-DOPA濃度との関係を示すグラフである。 加熱温度が異なるサンプルについて、30分間放置後におけるL-DOPA濃度をまとめたグラフである。 加熱温度が異なるサンプルについて、30分間放置後、更に100℃に加熱し維持した状態で5分間放置した後のL-DOPA濃度をまとめたグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る加熱調理方法について説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
〔加熱調理方法〕
本発明の実施形態に係る加熱調理方法は、L-DOPA(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)を生成する加熱調理方法であって、チロシンを含有する食材(チロシン含有食材)からチロシンを抽出するチロシン抽出工程と、チロシナーゼを含有する食材(チロシナーゼ含有食材)からチロシナーゼを抽出するチロシナーゼ抽出工程と、チロシン抽出工程で抽出したチロシンとチロシナーゼ抽出工程で抽出したチロシナーゼとを反応させる反応工程とを実施する。
この加熱調理方法では、チロシン抽出工程において、チロシン含有食材からチロシンを抽出するとともに、チロシナーゼ抽出工程において、チロシナーゼ含有食材からチロシナーゼを抽出する。その後、反応工程において、抽出したチロシンとチロシナーゼとを反応させることで、L-DOPAが生成する。
したがって、この加熱調理方法によれば、チロシン含有食材とチロシナーゼ含有食材とを調理に用いて上記チロシン抽出工程、チロシナーゼ抽出工程及び反応工程を実施し、L-DOPAを含む加工食品を作ることができる。そして、この加工食品を人が日常的に摂取することによって、脳内の神経伝達物質の異常に起因する疾患の発症を予防することができる。
〔チロシン抽出工程〕
チロシン抽出工程においては、具体的に、一般の調理において使用される水や食用油などに、チロシン含有食材を浸漬させて常温下で放置したり、チロシン含有食材を水や食用油の存在下で、蒸す、茹でる、炒めるといった手法で加熱したりすることで、溶媒としての水や食用油中にチロシンを抽出する。
尚、チロシンは、チロシン含有食材の加熱温度が高い方が早く抽出することができることから、チロシン抽出工程においてチロシンを効率良く抽出するという観点からすれば、チロシン含有食材の加熱温度は高温であることが好ましく、例えば、80℃以上であれば、チロシン含有食材から短時間で効率良くチロシンを抽出することができ、より好ましい範囲としては、90~105℃である。また、チロシン含有食材を茹でて加熱すれば、チロシンが茹で汁に溶出した状態となるため、茹で汁を回収することで、抽出したチロシンを可能な限り無駄なく回収することができるため好ましい。
チロシン含有食材は、チロシンの含有量の多少は問わず、チロシンを含有する食材であれば、特に限定されるものでなく、例えば、たけのこ、小麦、麺類、イモ類、豆類、乳製品、肉類、魚類などである。また、チロシンを短時間で効率良く抽出するという観点から、チロシン抽出工程では、チロシン含有食材を粉砕・細断したものを用いることが好ましい。
チロシンを抽出するための溶媒としては、水や食用油を例示することができ、これらの混合物であっても良いし、酒、酢などの各種調味料が含まれていても良い。尚、本願発明者は、チロシンを抽出するための溶媒(水や食用油)のpHが6以上である場合に、チロシンが効率良く抽出できることを実験的に確認している。
〔チロシナーゼ抽出工程〕
チロシナーゼ抽出工程においては、具体的に、水や食用油などにチロシナーゼ含有食材を浸漬させて常温下で放置したり、チロシン含有食材を水や食用油の存在下で蒸す、茹でる、炒めるといった手法で加熱したりすることで、チロシナーゼを抽出する。
尚、チロシナーゼは、チロシンと同様、チロシナーゼ含有食材の加熱温度が高い方が早く抽出することができるが、チロシナーゼは酵素であり、高温に加熱することで変性して失活してしまう。そこで、チロシナーゼ抽出工程では、チロシナーゼの変性を抑えつつ、当該チロシナーゼを効率良く抽出するために、チロシナーゼ含有食材の加熱温度は、70℃以下であることが好ましく、10~30℃の範囲内であることがより好ましい。また、チロシナーゼ含有食材を茹でて加熱すれば、チロシナーゼ茹で汁に溶出した状態となるため、茹で汁を回収することで、抽出したチロシナーゼを可能な限り無駄なく回収することができるため好ましい。
チロシナーゼ含有食材は、チロシナーゼの含有量の多少は問わず、チロシナーゼを含有する食材であれば、特に限定されるものではなく、例えば、マッシュルームなどのきのこ類、酒粕などである。また、チロシナーゼを短時間で効率良く抽出するという観点から、チロシナーゼ抽出工程では、チロシナーゼ含有食材を粉砕・細断したものを用いることが好ましい。上記のように、チロシナーゼ抽出工程での食材の加熱温度は、チロシナーゼの変性を抑えるという観点から、チロシン抽出工程での食材の加熱温度よりも低くすることが好ましいため、チロシナーゼ抽出工程において粉砕・細断したチロシナーゼ含有食材を用いることは、チロシン抽出工程において粉砕・細断したチロシン含有食材を用いることよりも意義が大きい。
また、チロシナーゼを抽出するための溶媒としては、チロシンを抽出するための溶媒と同様に、水や食用油を例示することができ、これらの混合物であっても良いし、酒、酢などの各種調味料が含まれていても良い。
〔反応工程〕
反応工程においては、具体的に、抽出したチロシンと同じく抽出したチロシナーゼとを調理容器内で混ぜ合わせるとともに、必要に応じて、チロシン抽出工程後のチロシン含有食材やチロシナーゼ抽出工程後のチロシナーゼ含有食材、これら以外の食材を加え、チロシンとチロシナーゼとを反応させてL-DOPAを生成する。
この反応工程において、チロシンとチロシナーゼとを反応させる際の反応温度は特に限定されるものではないが、温度が低すぎると酵素反応が進み難くなってL-DOPAの生成量が減少し、温度が高すぎるとチロシナーゼが変性して失活することでL-DOPAの生成量が減少するため、チロシンとチロシナーゼとを10~60℃の範囲内の温度条件下で反応させることが好ましく、10~40℃の範囲内の温度条件下で反応させることがより好ましい。
また、反応工程におけるチロシンとチロシナーゼとの反応時間についても特に限定されるものではないが、本願発明者は、反応工程におけるチロシンとチロシナーゼとの反応時間とL-DOPAの生成量との間に非線形の関係があり、反応時間が10~25分の範囲内である場合に、L-DOPAの生成量が多くなることを見出した。したがって、反応工程におけるチロシンとチロシナーゼとの反応時間は、10~25分であることが好ましい。
また、本発明に係る加熱調理方法における反応工程は、別々の工程で抽出したチロシン及びチロシナーゼを反応させるようにしていることで、以下のような利点がある。
例えば、チロシン含有食材及びチロシナーゼ含有食材を同じ調理容器内に入れて、チロシン含有食材からチロシンを抽出しつつ、チロシナーゼ含有食材からチロシナーゼを抽出し、これら抽出したチロシンとチロシナーゼとを反応させるような場合、言い換えれば、本願におけるチロシン抽出工程、チロシナーゼ抽出工程及び反応工程を同じ調理容器内で同時並行で行うような場合には、チロシン含有食材の加熱温度とチロシナーゼ含有食材の加熱温度とを同じにせざるを得ない。そのため、チロシン含有食材の加熱温度を高くすればチロシンを効率良く抽出できるにもかかわらず、チロシナーゼの変性を考慮すると、加熱温度をあまり高くすることはできず、加熱温度を高くした場合と同程度のチロシンを抽出したい場合には、加熱時間を長くしたり、チロシン含有食材を粉砕・細断したりすることが必要となる。
これに対して、本発明における反応工程では、例えば、チロシンについては、チロシン抽出工程においてチロシン含有食材の加熱温度を80℃以上にして抽出したものを使用し、一方、チロシナーゼについては、チロシナーゼ抽出工程においてチロシナーゼ含有食材の加熱温度を70℃以下にしてチロシナーゼの変性を抑えつつ抽出したものを使用するといったことが可能である。
〔加工食品〕
本発明の加熱調理方法によれば、L-DOPAを含んだ加工食品を製造することができる。この加工食品中に有効成分として含まれるL-DOPAの量は、0.2~1mMであることが好ましく、0.2~0.6mMであることがより好ましい。また、L-DOPAを含んだ加工食品を製造することができる。この加工食品としては、パスタ製品類や、タケノコなどを利用した惣菜製品類、うどん製品類などが考えられる。
〔実食材を用いた試験〕
以下、L-DOPAを生成するための条件を検証するために実食材を用いて行った試験の方法及び結果について説明する。尚、以下で説明する試験においては、チロシン含有食材として「タケノコ」、チロシナーゼ含有食材として「マッシュルーム」を使用した。
1-1.チロシン抽出条件に関する検証試験
市販品のタケノコの水煮を5mm四方程度の大きさに細断し、細断後のタケノコ0.5gを、2.5mlの蒸留水に添加したサンプルを2つ、2.5mlの0.1%酢酸に添加したサンプルを2つ作成し、溶媒の異なる各サンプルのうちの一方を常温下で30分放置し、他方を100℃に加熱した状態で30分放置した。その後、各サンプル中のチロシンの濃度を測定した。
1-2.チロシン抽出条件に関する検証試験の結果
表1は、上記各サンプルの中のチロシンの濃度の測定結果をまとめたものである。表1に示すように、サンプル中のチロシンの濃度は、溶媒として蒸留水を用いて常温下に放置したサンプルでは120mg/L、100℃に加熱したサンプルでは508mg/L、溶媒として酢酸を用いて常温下に放置したサンプルでは80mg/L、100℃に加熱した場合には390mg/Lであった。溶媒の種類にかかわらず、高温である方が溶媒中にチロシンを抽出し易いことが分かる。また、中性に近い蒸留水を使用した場合の方が酢酸(即ち、弱酸性)を使用した場合よりもチロシンを抽出し易いことが分かる。この結果から、中性に近い溶媒を用いて高温に加熱して行うことで、効率良くチロシンを抽出できることが確認できた。
Figure 0007253954000001
2-1.L-DOPAを生成するための条件に関する検証試験
市販品のタケノコの水煮を5mm四方程度の大きさに細断し、細断後のタケノコ0.6gを3mlの蒸留水に添加して、100℃に加熱した状態で30分間放置したものを抽出液とした。また、常温下において、マッシュルーム1gを10mlの蒸留水に添加した後にミキサーで粉砕して懸濁液とし、この懸濁液の上清を酵素液とした。そして、抽出液3mlと酵素液1mlをネジ蓋付ガラスチューブに入れた10個のサンプル(サンプル1~10)を作製した。
次に、サンプル1は10℃、サンプル2は25℃、サンプル3は30℃、サンプル4は40℃、サンプル5は50℃、サンプル6は60℃、サンプル7は70℃、サンプル8は80℃、サンプル9は100℃にそれぞれ加熱し維持した状態で放置し、適宜高速液体クロマトグラフィーにてL-DOPAの濃度を測定した。尚、10℃に加熱したサンプル1と40℃に加熱したサンプル4については、各温度に維持した状態で15分間放置し、25℃に加熱したサンプル2、30℃に加熱したサンプル3、50℃に加熱したサンプル5、60℃に加熱したサンプル6、70℃に加熱したサンプル7、80℃に加熱したサンプル8及び100℃に加熱したサンプル9については、各温度に維持した状態で30分間放置した。
また、サンプル10は、温度が100℃となるように5分間加熱処理した上で、温度を40℃まで下げた状態で15分間放置し、その後、高速液体クロマトグラフィーにてL-DOPAの濃度を測定した。
更に、サンプル2,3及び5~8については、30分間放置した後、続けて100℃に加熱し維持した状態で5分間放置し、その後、高速液体クロマトグラフィーにてL-DOPAの濃度を測定した。
2-2.L-DOPAを生成するための条件に関する検証試験の結果
図1は、サンプル1,2,4,6及び9についての反応時間(放置時間)とL-DOPAの濃度との関係を示すグラフである。また、図2は、サンプル4及び10についての反応時間とL-DOPAの濃度との関係を示すグラフであるが、サンプル10の反応時間には100℃となるように加熱した5分間は含まれていない。更に、図3は、サンプル2,3及び5~8についての30分間放置後のL-DOPAの濃度をまとめたグラフであり、図4は、サンプル2,3及び5~8についての100℃で5分間放置した後のL-DOPAの濃度をまとめたグラフである。
まず、図1及び図3に示すように、15分放置後のL-DOPA濃度は、サンプル1で0.371mM、サンプル2で0.400mM、サンプル4で0.338mM、サンプル6で0.197mM、サンプル9で0.196mMとなっており、30分放置後のL-DOPA濃度は、サンプル2で0.354mM、サンプル3で0.270mM、サンプル5で0.188mM、サンプル6で0.181mM、サンプル7で0.177mM、サンプル8で0.148mM、サンプル9で0.144mMとなっており、全てのサンプルにおいて、L-DOPAが生成しているが確認できる。このことから、チロシン含有食材としてタケノコ、チロシナーゼ含有食材としてマッシュルームを使用した場合に、L-DOPAを生成できることが実験的に確認できた。
また、図1に示すように、サンプル1,2及び4(即ち、加熱温度が10~40℃)において、L-DOPA濃度が高くなっていることから、加熱温度が10~40℃である場合に、特に有意なL-DOPAの生成が認められる。
更に、図1に示すように、サンプル1,2,4,6及び9についてみると、時間経過とともに徐々にL-DOPA濃度が高くなり、15分の時点でL-DOPA濃度が最も高くなった。更に、サンプル2,6及び9についてみると、30分経過時において、15分の時点よりもL-DOPA濃度が低くなっており、チロシンとチロシナーゼとの反応時間が10~20分程度である場合に、有意なL-DOPAの生成が認められ、また、反応時間が長すぎると逆にL-DOPAが減少することが分かった。
以上のことから、チロシン含有食材とチロシナーゼ含有食材とを用いてL-DOPAを生成する加熱調理方法においては、反応温度を10~40℃(特に25℃付近)とし、反応時間を10~25分(特に15分付近)とすることで、L-DOPAを効率よく生成できることが分かった。
また、図2に示すように、サンプル4とサンプル10とについて、L-DOPA濃度を比較すると、サンプル10のL-DOPA濃度は、サンプル4のL-DOPA濃度の60%程度になっている。このことから、一度100℃まで加熱した場合には、その後にL-DOPAの有意な生成が認められる温度まで下げた状態で所定時間放置しても、100℃まで加熱せずにL-DOPAの有意な生成が認められる温度を維持した場合と比較して、L-DOPAの生成量が大きく減少することがわかった。
更に、図3及び図4に示すように、比較的高温に加熱した状態で30分間放置したサンプル7及び8については、その後に100℃まで加熱してもL-DOPA濃度の減少は見られない。これに対して、比較的低温に加熱した状態で30分間放置したサンプル2,3,5及び6については、その後に100℃まで加熱することによって、100℃に加熱する前と比較して、サンプル2は77%、サンプル3は78%、サンプル5は86%、サンプル6は90%までL-DOPA濃度が減少した。
以上のことから、L-DOPAの生成量を多くするためには、反応工程において、L-DOPAの有意な生成が認められる温度を維持し続けることが重要であることが分かった。例えば、調理中において、一度高温で食材を茹でた後に、L-DOPAの有意な生成が認められる温度にまで冷ましたり、L-DOPAの有意な生成が認められる温度で食材を所定時間茹でた後に高温で茹で直したりしたとしても、L-DOPAの量はL-DOPAの有意な生成が認められる温度を維持し続けた場合よりも極端に少なくなるのである。したがって、L-DOPAの生成量を十分に確保するという観点からすれば、反応工程において一貫して、反応温度をL-DOPAの有意な生成が認められる温度に維持することが好ましい。
本発明は、L-DOPAを生成する加熱調理方法及びこの方法を利用して加工した加工食品に用いることができる。

Claims (3)

  1. L-DOPAを生成する加熱調理方法であって、
    80℃以上の溶媒中でチロシンを含有する食材を茹でることにより当該チロシンを含有する食材からチロシンを抽出するチロシン抽出工程と、
    70℃以下の溶媒中でチロシナーゼを含有する食材を茹でることにより当該チロシナーゼを含有する食材からチロシナーゼを抽出するチロシナーゼ抽出工程と、
    前記チロシン抽出工程で抽出した前記チロシンを含む溶媒と、前記チロシナーゼ抽出工程で抽出した前記チロシナーゼを含む溶媒とを混ぜ合わせて、反応時間の当初から10~60℃の範囲内の温度条件を10~25分の範囲内で維持して反応させる反応工程とを実施する加熱調理方法。
  2. 前記チロシン抽出工程における溶媒のpHが6以上である請求項に記載の加熱調理方法。
  3. 前記溶媒は、水又は食用油である請求項1又は2に記載の加熱調理方法。
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