JP7249837B2 - 難燃性メタクリル系樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Description
また、メタクリル樹脂にリンを含有するコモノマーを共重合させることにより、難燃化する方法(特許文献3)も報告されている。共重合による難燃化技術は、耐熱性や強度といった物性を維持しつつ、高い難燃性を発現させることが可能だが、物性改善を目的として他の添加材料を加える際には、所望する難燃性能を得るための難燃成分量の調節が容易に行えないという課題がある。
[1]
メタクリル系樹脂(A)、リン系難燃剤(B)、及びフェノキシ樹脂(C)を含み、
上記メタクリル系樹脂(A)、上記リン系難燃剤(B)、及び上記フェノキシ樹脂(C)の合計100質量%に対して、メタクリル系樹脂(A):60~76質量%、リン系難燃剤(B):9~15質量%、及びフェノキシ樹脂(C):15~25質量%を含み、
前記メタクリル系樹脂(A)がメタクリル系樹脂100質量%に対して、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を70~100質量%、アクリル酸エステルに由来する構造単位を0~10質量%、不飽和カルボン酸、酸無水物、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミドに由来する構造単位を0~20質量%含み、
前記リン系難燃剤(B)が、ホスファゼン化合物またはリン酸エステル化合物であり、
前記フェノキシ樹脂(C)が、下記(16)式で表される構造単位を50質量%以上含み、
ことを特徴とする、難燃性メタクリル系樹脂組成物。
[2]
上記リン系難燃剤(B)がハロゲン原子を含まないリン系難燃剤である、[1]に記載の難燃性メタクリル系樹脂組成物。
[3]
上記リン系難燃剤(B)の質量割合(b)、及び上記フェノキシ樹脂(C)の質量割合(c)が、下記式(1)を満たす、[1]又は[2]に記載の難燃性メタクリル系樹脂組成物。
1≦c/b≦2 (1)
(式中、b、cは、上記難燃性メタクリル系樹脂組成物100質量%に対する質量割合(質量%)を表す。)
[4]
JIS K6911の耐熱性試験A法において、180秒以内に自己消火する、[1]~[3]のいずれかに記載の難燃性メタクリル系樹脂組成物。
[5]
JIS K7201に記載の酸素指数法で測定される酸素指数が23%以上である、[1]~[4]のいずれかにに記載の難燃性メタクリル系樹脂組成物。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の難燃性メタクリル系樹脂組成物を押出成形又は射出成形してなることを特徴とする、成形体。
[7]
透明難燃板である、[6]に記載の成形体。
本実施形態の難燃性メタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)、リン系難燃剤(B)、及びフェノキシ樹脂(C)を含有する。
上記メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を少なくとも含むことが好ましく、メタクリル酸エステルに由来する構造単位とアクリル酸エステルに由来する構造単位又は共重合可能なその他のモノマーに由来する構造単位とを含むことがより好ましく、メタクリル酸エステルに由来する構造単位、アクリル酸エステルに由来する構造単位、共重合可能なその他のモノマーに由来する構造単位を含むことがさらに好ましい。
メタクリル系樹脂(A)中の各構成単位の質量割合としては、メタクリル系樹脂(A)100質量%に対して、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を70~100質量%、アクリル酸エステルに由来する構造単位を0~10質量%、及び共重合可能なその他のモノマーに由来する構造単位を0~20質量%含むことが好ましい。なお、アクリル酸エステルに由来する構造単位、共重合可能なその他のモノマーに由来する構造単位は、含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。
メタクリル酸エステルに由来する構造単位の質量割合としては、好ましくは80~100質量%、より好ましくは80~98質量%、更に好ましくは80~95質量%である。また、アクリル酸エステルに由来する構造単位の質量割合としては、好ましくは1~8質量%、より好ましくは2~6質量%である。また、共重合可能なその他のモノマーに由来する構造単位の質量割合としては、好ましくは0~15質量%、更に好ましくは0質量%超12質量%以下、特に好ましくは1~10質量%である。
上記連鎖移動剤としては、連鎖移動を起こせる化合物であれば特に制限はなく、例えば、メルカプト基を有する化合物、α-メチルスチレンダイマー、テルピノレン等が挙げられる。中でも、メルカプト基を有する化合物が好ましい。ここでいうメルカプト基を有する化合物としては、例えば、n-オクチルメルカプタン、1-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、芳香族メルカプタン、チオグリコール酸エステル類、3-メルカプトプロピオン酸、β-メルカプトプロピオン酸エステル類等が挙げられる。また、必要に応じてそれらの2種以上が含まれていてもよい。
メタクリル系樹脂(A)のMwが60,000以上あることで、難燃性メタクリル系樹脂組成物を成形加工して得られる成形体の実用強度が十分に高くなる。また、メタクリル系樹脂(A)のMwが200,000以下であることで、難燃性メタクリル系樹脂組成物が、流動性と易加工性とを兼ね備えることができる。
メタクリル系樹脂(A)の分子量分布が1.2以上であることで、難燃性メタクリル系樹脂組成物の流動性が向上し、成形加工性に優れる傾向となる。分子量分布が2.4以下であることで、難燃性メタクリル系樹脂組成物を成形加工して得られる成形体が、耐衝撃性及び靭性に優れる傾向となる。
なお、Mw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したクロマトグラムを標準ポリメタクリル酸メチルの分子量で換算した値である。
メタクリル系樹脂(A)のガラス転移温度の上限は、通常130℃である。ガラス転移温度は、分子量やその立体規則性(シンジオタクティシティ(rr))を調節することによって制御することができる。ガラス転移温度がこの範囲にあると、難燃性メタクリル系樹脂組成物の耐熱性が良好になる。
メルトマスフローレートが上記範囲であると、難燃性メタクリル系樹脂組成物の成形性が良好なものとなる。
重合開始剤の添加量としては、重合に用いる単量体の総量を100質量%とした場合に、0.01~1質量%としてよく、好ましくは0.05~0.5質量%である。
また、本実施形態の難燃性メタクリル系樹脂組成物100質量%中のメタクリル系樹脂(A)の質量割合としては、65~75質量%であることが好ましい。
上記リン系難燃剤(B)は、ハロゲン原子を含まないリン系難燃剤が好ましい。
難燃剤としてハロゲン原子を含有するハロゲン系化合物を用いると、押出・射出成形時にハロゲン系化合物の分解による加工不良の発生や、成形機・金型の腐食、更には燃焼時のダイオキシンの発生等が起こることがある。ハロゲン原子を含まないリン系難燃剤を用いることにより、環境負荷の少ない難燃性メタクリル系樹脂組成物を得ることができる。
このような環状フェノキシホスファゼンとしては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120~130℃の温度で反応させて得られる環状及び直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物等が挙げられる。
このような鎖状フェノキシホスファゼンとしては、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220~250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3~10,000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、環状及び/又は鎖状フェノキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状C1-C3アルキルC6-C20アリールオキシホスファゼン、C6-C20アリールオキシC1-C3アルキルC6-C20アリールオキシホスファゼン(例えば、環状及び/又は鎖状トリルオキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状フェノキシトリルフェノキシホスファゼン等)である。
このような架橋ホスファゼン化合物としては、下記一般式(3)に示す架橋構造、例えば、4,4’-スルホニルジフェニレン(すなわち、ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2-(4,4’-ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’-オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’-チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’-ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。
リン酸エステル系化合物としては、(1)モノエチルホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート、(TEP)等のリン酸エステル、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)等の芳香族リン酸エステル、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族縮合リン酸エステル及びそれらの誘導体やそれらの縮合物;(2)ジメチルビニルホスホナート、ジエチルビニルホスホナート、ジフェニルビニルホスホナート、ジフェニルビニルホスフィンオキシド等のホスホン酸エステル及びそれらの誘導体やそれらの縮合物;下記の一般式(4)又は(5)で表されるリン酸エステル化合物;等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は、単独使用で、又は2種以上を併せて使用することができる。
本実施形態の難燃性メタクリル系樹脂組成物中のリン濃度は、好ましくは0.8~2.5質量%であり、より好ましくは1.2~2.0質量%である。
上記フェノキシ樹脂(C)は、熱可塑性を有する高分子量エポキシ樹脂であり、ヒドロキシ基含有部を有する鎖及び芳香族ユニットを有するポリヒドロキシポリエーテルのことを指す。
なお、2価基を構成する2つの結合手の位置は化学的に可能な位置であれば特に限定されない。式(6)中のXは、式(7)~(13)に示す化合物中のベンゼン環上から2つの水素原子が引き抜かれてできる結合手を有する二価基であることが好ましい。特に、式(8)~(13)に示す化合物中のいずれか二つのベンゼン環上からそれぞれ1つの水素原子が引き抜かれてできる結合の手を有する二価基であることが好ましい。
式(8)(9)中、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は炭素数2~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、n及びmは、それぞれ独立に、1~4のいずれかの整数である。
式(10)、(11)、(12)及び(13)中、R4及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は炭素数2~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、q及びrは、それぞれ独立に、1~4のいずれかの整数である。
なお、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、後述する実施例記載のメタクリル系樹脂の重量平均分子量の測定方法で測定することができる。
フェノキシ樹脂(C)の質量割合は、メタクリル系樹脂(A)、リン系難燃剤(B)、フェノキシ樹脂(C)の合計100重量%に対し、15~25重量%であることが好ましく、より好ましくは15~20重量%である。
フェノキシ樹脂(C)の質量割合が15質量%以上であることにより、リン系難燃剤との相乗効果が得られ、難燃性に優れる組成物が得られる。フェノキシ樹脂(C)の質量割合が、25重量%以下であることにより、耐熱性や透明性等の物性に優れる。
フェノキシ樹脂(C)の質量割合がこの範囲にあることで、優れた難燃性と透明性を兼ね備えた難燃性メタクリル系樹脂組成物が得られる。
本実施形態の難燃性メタクリル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、フィラー、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、耐衝撃性改質剤、有機色素、光拡散剤、艶消し剤、蛍光体、帯電防止剤、染顔料、等の添加剤を含有していてもよい。
上記フィラーの質量割合としては、難燃性メタクリル系樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤を質量比で、0.2/1~2/1で使用するのが好ましく、0.5/1~1/1で使用するのがより好ましい。
上記熱劣化防止剤としては、2-t-ブチル-6-(3-tert-ブチル-5-メチル-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4-ジt-アミル-6-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、又は波長380~450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが100dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
なお、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値εmaxは、次のようにして測定する。
シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U-3410型分光光度計を用いて、波長380~450nm、光路長1cmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(MUV)と、測定された吸光度の最大値(Amax)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値εmaxを算出する。
εmax=[Amax/(10×10-3)]×MUV
難燃性メタクリル系樹脂組成物に含有される添加剤の合計量は、得られる成形体の外観不良を抑制する観点から、難燃性メタクリル系樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
本実施形態の難燃性メタクリル系樹脂組成物中のメタクリル系樹脂(A)、リン系難燃剤(B)、及びフェノキシ系樹脂(C)の合計含有量は、難燃性、透明性、流動性の観点から、95質量%以上であることが好ましく、より好ましくは97~99質量%である。
1≦c/b≦2 (1)
1.2≦c/b≦2 (1)’
1.2≦c/b≦1.8 (1)’’
(式中、b、cは、上記難燃性メタクリル系樹脂組成物100質量%に対する質量割合(質量%)を表す。)
難燃性メタクリル系樹脂組成物をGPCにて測定して決定される分子量分布Mw/Mnは、好ましくは1.2~2.5であり、より好ましくは1.3~2.0である。
Mwや分子量分布Mw/Mnがこの範囲にあると、難燃性メタクリル系樹脂組成物の成形加工性が良好となり、耐衝撃性や靭性に優れた成形体を得易くなる。
上記自己消火するまでの時間及び燃焼距離は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記酸素指数は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の難燃性メタクリル系樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、フェノキシ樹脂(C)の存在下に、メタクリル酸メチル等を含む単量体混合物を重合してメタクリル系樹脂(A)を生成させる方法や、メタクリル系樹脂(A)、リン系難燃剤(B)及びフェノキシ樹脂(C)を溶融混練する方法等を挙げることができる。これらのうち溶融混練法は工程が単純であるので、好ましい。溶融混練の際に、必要に応じて他の重合体や添加剤を混合してもよいし、メタクリル系樹脂(A)を他の重合体及び添加剤と混合した後にフェノキシ樹脂(C)と混合してもよいし、フェノキシ樹脂(C)を他の重合体及び添加剤と混合した後にメタクリル系樹脂(A)と混合してもよいし、その他の方法でもよい。混練は、例えば、ニーダールーダー、単軸又は二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合装置又は混練装置を使用して行なうことができる。これらのうち、二軸押出機が好ましい。混合・混練時の温度は、使用するメタクリル系樹脂(A)及びフェノキシ樹脂(C)の溶融温度等に応じて適宜調節することができるが、好ましくは110℃~300℃である。
本実施形態の難燃性メタクリル系樹脂組成物は、通常、上記方法で製造されたペレットとして得られ、これを原料として射出成形、押出成形等、各種成形方法によって成形体を製造することができる。
混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機等を用いた方法が挙げられる。予備混合においては、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーン等により造粒を行うこともできる。混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、及びペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式二軸押出機が好ましい。
射出成形においては、通常のコールドランナー方式の成形法だけでなく、ホットランナー方式の成形法も可能である。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、及び超高速射出成形等の射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。
本実施形態の難燃性メタクリル系樹脂組成物を回転成形やブロー成形等に供することにより、中空成形品を得ることも可能である。
本実施形態の成形体は、上述の本実施形態の難燃性メタクリル系樹脂組成物を成形して得ることができる。中でも、押出成形又は射出成形してなる成形体が好ましい。
本実施形態の成形体は、透明難燃板として好適に用いられる。
本実施形態の成形体のJIS K7361に準拠して測定される厚さ3mmとしたときの全光線透過率としては、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。上記全光線透過率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の成形体のJIS K7136に準拠して測定される厚さ3mmとしたときの曇価は、3.0%以下であることが好ましく、より好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.5%以下である。上記曇価は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
後述する実施例及び比較例において使用した原料について下記に示す。
[[メタクリル系樹脂(A)を構成するモノマー]]
・(a-1)メタクリル酸メチル(MMA)
旭化成株式会社製(重合禁止剤として中外貿易(株)社製2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール(2,4-di-methyl-6-tert-butylphenol)が、MMA100質量%に対して2.5質量ppm添加されているもの)
・(a-2)アクリル酸メチル(MA):三菱化学株式会社製
・(a-3)N-シクロヘキシルマレイミド(N-CMI):株式会社日本触媒製
・(a-4)スチレン(St):旭化成株式会社製
[リン系難燃剤(B)]
・(b-1)ラビトルFP-110(ヘキサフェノキシトリシクロホスファゼン):株式会社伏見製薬所製
・(b-2)PX-200(芳香族縮合リン酸エステル化合物):大八化学工業株式会社製
[フェノキシ樹脂(C)]
・(c-1)PKHH:巴工業株式会社製(後述の(1.重量平均分子量(Mw))に記載の方法で測定したMw:61,000)
・(c-2)フェノトートYP-50:新日鉄住金化学株式会社製(高分子量フェノキシ樹脂、後述の(1.重量平均分子量(Mw))に記載の方法で測定したMw:94,000)
・ラウロイルパーオキサイド:日本油脂(株)社製、開始剤として使用。
・n-オクチルメルカプタン:アルケマ(株)社製、連鎖移動剤として使用。
・第三リン酸カルシウム:日本化学工業(株)社製、懸濁剤として使用。
・炭酸カルシウム:白石工業(株)社製、懸濁剤として使用。
・ラウリル硫酸ナトリウム:和光純薬(株)社製、懸濁助剤として使用。
・アデカスタブ2112:株式会社ADEKA社製
・アデカスタブAO-80:株式会社ADEKA社製
後述の製造例で製造したメタクリル系樹脂(A)及び実施例で製造した難燃性メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)を、下記の装置及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量が遅く溶出する。
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/分、内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:3.0mV/分
カラム温度:40℃
サンプル:0.02gのメタクリル系樹脂(A)、又は難燃性メタクリル系樹脂組成物のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製、PMMA Calibration Kit M-M-10)を用いた。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂(A)、又は難燃性メタクリル系樹脂組成物の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線とを基に、メタクリル系樹脂(A)、又は難燃性メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)を求めた。結果を表1に示す。
重合により得られたメタクリル系樹脂(A)について、NMR及びFT-IRの測定を実施し、単量体単位及び構造単位の組成を確認した。
NMR:日本電子株式会社製、JNM-ECA500
FT-IR:日本分光社製、IR-410、ATR法(Dura Scope(ATR結晶:ダイヤモンド/ZnSe)、分解能:4cm-1)を用いた。
(3-1.ガラス転移温度(Tg))
後述の実施例及び比較例で得られた難燃性メタクリル系樹脂組成物について、熱分析装置(Perkin Elmer社製、Diamond DSC)を用いて、ASTM-D-3418に準拠して測定を行い、中点法によりガラス転移温度(℃)を算出した。評価結果を表1に示す。
後述の実施例及び比較例で得られた難燃性メタクリル系樹脂組成物からなる成形体(3mm厚)から試験片を切り出し、JIS K7191に準拠し、HDT試験装置(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、試験荷重50N、押込み圧子が試験片に1mm侵入した時の温度をn=3で測定した時の平均値をビカット軟化温度とした。結果を表1に示す。
(4-1.全光線透過率)
後述の実施例及び比較例で得られた難燃性メタクリル系樹脂組成物からなる成形体(3mm厚)を用いて、JIS K7361に準拠して、ヘーズメーターNDH7000SPII(日本電色工業株式会社製)を用いて全光線透過率の測定を行い、透明性の指標とした。結果を表1に示す。
後述の実施例及び比較例で得られた難燃性メタクリル系樹脂組成物からなる成形体(3mm厚)を用いて、JIS K7136に準拠して、ヘーズメーターNDH7000SPII(日本電色工業株式会社製)を用いて曇価(ヘーズ)の測定を行い、透明性の指標とした。結果を表1に示す。
(5-1.メルトフローレート)
後述の実施例及び比較例で得られた難燃性メタクリル系樹脂組成物について、メルトインデクサ(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、JIS K7210に準拠し、230℃、3.8kg荷重でのメルトマスフローレート(MFR)を測定した。結果を表1に示す。
(6-1.水平燃焼試験による難燃性の評価)
後述の実施例及び比較例で得られた難燃性メタクリル系樹脂組成物からなる成形体(3mm厚)から試験片を切り出し、JIS K6911のA法に準拠して水平燃焼試験を行い、燃焼性を測定した。燃焼性の判定は以下の基準により行った。結果を表1に示す。
◎(優れる):接炎後、60秒以内に自己消火するもの
○(良好):接炎後、燃焼時間が60秒を越え、180秒以内に自己消火するもの
×(不良):接炎後、燃焼時間が180秒を越えるもの
後述の実施例及び比較例で得られた難燃性メタクリル系樹脂組成物からなる成形体(3mm厚)から試験片を切り出し、JIS K7201に準拠し、酸素指数(上端点火法)の測定を測定した。結果を表1に示す。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:20.3kg、アクリル酸メチル:1.3kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn-オクチルメルカプタン:75gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ26mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A-1)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は14.2万であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。また、構造単位はMMA/MA=94/6質量%であった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:90g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.52gを投入し、混合液(b)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(b)、メタクリル酸メチル:20.4kg、N-シクロヘキシルマレイミド:1.39kg、スチレン:1.39kg、ラウロイルパーオキサイド:41g、及びn-オクチルメルカプタン:49gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ26mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A-2)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は12.3万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.87であった。また、構造単位はMMA/N-CMI/St=88/6/6質量%であった。
n-オクチルメルカプタンの添加量を32gに変えた以外は、製造例2と同様の原料及び方法を用いて、〔メタクリル系樹脂(A―3)〕を得た。得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は15.5万であった。
n-オクチルメルカプタンの添加量を70gに変えた以外は、製造例2と同様の原料及び方法を用いて、〔メタクリル系樹脂(A―4)〕を得た。得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は7.8万であった。
製造例1で得られたメタクリル系樹脂(A-1)73質量%に対し、リン系難燃剤(FP-110)9質量%、フェノキシ樹脂(PKHH)18質量%、さらにメタクリル系樹脂(A)、リン系難燃剤(B)、フェノキシ樹脂(C)の合計100質量%に対してアデカスタブ2112とアデカスタブAO-80を0.05質量%ずつ加えてハンドブレンドにより混合した後、東芝機械株式会社製のベント付(3か所)Φ26mm二軸押出機TEM-26SS(L/D=48)を用いて溶融混錬した。押出温度は、C1/C2/C3/C4~H=150℃/190℃/210℃/230℃とし、メインスクリュー回転数は150rpm、吐出量は10kg/hにて溶融混錬し、ペレット状の難燃性メタクリル系樹脂組成物を製造した。
得られたペレットを80℃で12時間、熱風循環式乾燥機により乾燥し、射出成形機(東芝機械株式会社製:EC-100SX)にて厚さ3mmの試験片を成形し、上記評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1中の重量平均分子量は、難燃性メタクリル系樹脂組成物の重量平均分子量である。
表1に記載の樹脂及び添加剤を用いて、実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂組成物をペレット化し、評価を実施した。結果を表1に示す。
表1に示す通り、メタクリル系樹脂(A)、リン系難燃剤(B)、フェノキシ樹脂(C)の質量割合が所定の範囲内にあり、リン系難燃剤(B)の質量割合(b)とフェノキシ樹脂(C)の質量割合(c)との比(c/b)が一定の範囲にある場合は、透明性を維持しつつ、難燃性、耐熱性、流動性に特に優れる、難燃性メタクリル系樹脂組成物、及びそれからなる成形体を提供することができる。
Claims (7)
- メタクリル系樹脂(A)、リン系難燃剤(B)、及びフェノキシ樹脂(C)を含み、
前記メタクリル系樹脂(A)、前記リン系難燃剤(B)、及び前記フェノキシ樹脂(C)の合計100質量%に対して、メタクリル系樹脂(A):60~76質量%、リン系難燃剤(B):9~15質量%、及びフェノキシ樹脂(C):15~25質量%を含み、
前記メタクリル系樹脂(A)がメタクリル系樹脂100質量%に対して、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を70~100質量%、アクリル酸エステルに由来する構造単位を0~10質量%、不飽和カルボン酸、酸無水物、芳香族ビニル化合物、N-置換マレイミドに由来する構造単位を0~20質量%含み、
前記リン系難燃剤(B)が、ホスファゼン化合物またはリン酸エステル化合物であり、
前記フェノキシ樹脂(C)が、下記(16)式で表される構造単位を50質量%以上含み、
ことを特徴とする、難燃性メタクリル系樹脂組成物。 - 前記リン系難燃剤(B)がハロゲン原子を含まないリン系難燃剤である、請求項1に記載の難燃性メタクリル系樹脂組成物。
- 前記リン系難燃剤(B)の質量割合(b)、及び前記フェノキシ樹脂(C)の質量割合(c)が、下記式(1)を満たす、請求項1又は2に記載の難燃性メタクリル系樹脂組成物。
1≦c/b≦2 (1)
(式中、b、cは、前記難燃性メタクリル系樹脂組成物100質量%に対する質量割合(質量%)を表す。) - JIS K6911の耐熱性試験A法において、180秒以内に自己消火する、請求項1~3のいずれか一項に記載の難燃性メタクリル系樹脂組成物。
- JIS K7201に記載の酸素指数法で測定される酸素指数が23%以上である、請求項1~4のいずれかに一項に記載の難燃性メタクリル系樹脂組成物。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の難燃性メタクリル系樹脂組成物を押出成形又は射出成形してなることを特徴とする、成形体。
- 透明難燃板である、請求項6に記載の成形体。
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